JP5800566B2 - ゼオライト複合膜 - Google Patents

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本発明は、二酸化炭素(CO)を含む混合ガス中から二酸化炭素を回収する二酸化炭素選択的透過分離膜に有用なゼオライト複合膜に関するものである。
近年、代表的な地球温暖化ガスである二酸化炭素は、発電所、セメントプラント、鉄鋼プラント、および化学プラントなどから排出されているが、地球温暖化防止の観点から、二酸化炭素の高効率回収技術の開発が急務となっている。また、二酸化炭素は、メタンを主成分とする天然ガス中にも含まれており、パイプライン腐食防止の観点から、メタンから二酸化炭素を回収除去する必要がある。
従来、二酸化炭素の回収法としては、アミン吸収法などの化学吸収法、PSA(圧力変動吸着法)などの物理吸着法などの技術が利用されているが、吸収液または吸着剤の再生に伴うエネルギー消費が大きく、より高効率な回収法の開発が期待されている。
ところで、ゼオライト膜による膜分離法は、連続的操作が可能で、吸収液または吸着剤の再生が不要であることから、高効率な二酸化炭素回収技術として期待が高まっている。
現在、除二酸化炭素を行うための膜分離技術としては、下記の特許文献1に記載のように、多孔質基材の表面に形成したY型ゼオライト分離膜により、水の存在下、すなわち、ゼオライト分離膜に水が吸着している状態において、二酸化炭素と窒素とを含むガスの混合体から、二酸化炭素を分離する方法が提案されている。
また、下記の特許文献2に記載のように、ガス分離用ゼオライト膜複合体において、DDR型またはY型のガス分離用ゼオライト膜複合体の片側(ゼオライト膜側)に炭酸混合ガスを置き、その反対側(多孔質支持体表面側)の二酸化炭素分圧を、ゼオライト膜側の二酸化炭素分圧以下にすれば、ガス分離用ゼオライト膜複合体中を二酸化炭素が選択的に透過し、炭酸混合ガス中にある二酸化炭素を多孔質支持体表面側に分離することができることが記載されている(特許文献2の段落番号[0023]参照)。そして、前記炭酸混合ガスとしては、二酸化炭素を含有しているガスであれば特に限定されず、例えば二酸化炭素と、水素、酸素、窒素、ヘリウム、および水(水蒸気)などとの混合ガスが挙げられている(特許文献2の段落番号[0024]参照)。
また、特許文献3には、水分を含む混合ガスから特定のガスを細孔を透過させて分離する際において、混合ガス中の水分に影響されることなく高い分離効率、および透過率で特定のガスを分離できる積層無機分離膜が開示されている。
さらに、非特許文献1には、疎水的なシリカライト(Silicalite-1)膜について開示されており、特許文献4には、シリカライト膜の製造方法が開示されている。
特開平10−36113号公報 特開2009−11980号公報 特許第3297542号公報 特開2007−63259号公報 J. Lindmark et al., Journal of Membrane Science 360 (2010) 284-291.
しかしながら、本発明者らが、上記特許文献に記載のように、多孔質基体上にゼオライト膜を形成したゼオライト分離膜を用いて、水素、メタン、一酸化炭素、窒素、および酸素などのガスと二酸化炭素との混合ガスから、二酸化炭素を除去する実験を試みたところ、水の存在下、すなわち、ゼオライト膜に水が吸着している状態においては、二酸化炭素の透過量が小さく、混合ガス中の二酸化炭素を低減させる効果は、ほとんど得られないという結果に至った。
一方で、疎水的なシリカライト(Silicalite-1)膜では、水分による二酸化炭素透過阻害の影響は少ないものの、例えば、上記非特許文献1では、二酸化炭素(CO)/水素(H)の分離選択性は、3以下と、満足な分離性能が得られないとの報告がある。
また、特許文献3では、水分を含む混合ガスから特定のガスを細孔を透過させて分離する際において、混合ガス中の水分に影響されることなく、高い分離効率および透過率で特定のガスを分離できる積層無機分離膜が開示されているが、例えば、二酸化炭素(CO)/窒素(N)の分離選択性は、0.9から1.3〜1.7に向上する程度であり(特許文献3の公開公報明細書の段落番号[0034]および[0040]参照)、その効果は乏しいことが記載されている。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、水蒸気存在下でも、顕著なガス分離特性を発揮できる、二酸化炭素選択的透過分離膜に有用なゼオライト複合膜を提供することにある。
本発明者らは、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、多孔質基体上に設けたゼオライト膜の表面を疎水化したゼオライト複合膜の中でも、ゼオライト骨格の化学組成が、
AlSi192−n384
式中、48≦n≦86である
フォージャサイト(FAU)型ゼオライト膜の表面に、撥水被膜層が設けられたゼオライト複合膜が、水蒸気存在下でも顕著なガス分離特性を発揮できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
上記の目的を達成するために、請求項1のゼオライト複合膜の発明は、多孔質基体上に、下記組成のゼオライト骨格を有するフォージャサイト(FAU)型ゼオライト膜が設けられ、
AlSi192−n384
式中、48≦n≦86である
FAU型ゼオライト膜の表面に、撥水被膜層が設けられていることを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1に記載のゼオライト複合膜であって、撥水被膜層が、シリカ(Si)/アルミニウム(Al)≧100の組成比を有する疎水性ゼオライト膜よりなるものであること特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のゼオライト複合膜であって、撥水被膜層の表面がシリル化されて、シリル基(−O−Si−R)が形成されていることを特徴としている。
上記式中、Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシド基、ビニル基、またはアミノ基を表わす。
請求項1のゼオライト複合膜の発明は、多孔質基体上に、下記組成のゼオライト骨格を有するFAU型ゼオライト膜が設けられ、
AlSi192−n384
式中、48≦n≦86である
FAU型ゼオライト膜の表面に、撥水被膜層が設けられているもので、請求項1の発明によれば、親水性のFAU型ゼオライト膜の膜表面を撥水被膜化することにより、FAU型ゼオライト膜の細孔の水(水蒸気)による閉塞を緩和することができ、水蒸気存在下でも、顕著なガス分離特性を発揮できる、二酸化炭素選択的透過分離膜に有用なゼオライト複合膜を得ることができるという効果を奏する。
請求項2の発明は、請求項1に記載のゼオライト複合膜であって、撥水被膜層が、シリカ(Si)/アルミニウム(Al)≧100の組成比を有する疎水性ゼオライト膜よりなるもので、請求項2の発明によれば、FAU型ゼオライト膜表面に疎水性ゼオライトを堆積させることにより、水蒸気によるガス透過度低下を大幅に緩和することが可能であるという効果を奏する。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のゼオライト複合膜であって、撥水被膜層の表面がシリル化されて、シリル基(−O−Si−R)が形成されているもので(上記式中、Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシド基、ビニル基、またはアミノ基を表わす)、請求項3の発明によれば、FAU型ゼオライト膜の表面に疎水性ゼオライトを堆積させた後、さらに、シリル化によってシリル基(−O−Si−R)を形成して、ゼオライト膜表面のシラノール基を除去し、疎水性を向上させたゼオライト複合膜では、水蒸気によるガス透過度低下をさらに大幅に緩和することが可能であるという効果を奏する。
本発明品であるゼオライト複合膜と、従来品であるゼオライト膜(Y型)の分離性能の違いを説明するための模式図である。
つぎに、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明によるゼオライト複合膜は、多孔質基体上に、下記組成のゼオライト骨格を有するフォージャサイト(FAU)型ゼオライト膜が設けられ、
AlSi192−n384
式中、48≦n≦86である
FAU型ゼオライト膜の表面に、撥水被膜層が設けられていることを特徴としている。
ところで、ゼオライト膜は一般的に多結晶体膜であるが、結晶間の空隙といった膜欠陥の少ない、緻密なゼオライト膜を基体として用いるのが望ましい。
ここで、上記ゼオライト膜としては、管状または中空糸状多孔質基体上にゼオライトを製膜させたもののどちらも用いることができるが、高圧条件であれば膜エレメントの耐圧性の観点から、管状の方が好ましい。逆に、低圧条件では単位体積当りの膜面積向上といった観点から、中空糸状の膜エレメントを用いることもできる。
ゼオライト膜を構成するゼオライト種の候補としては、LTA型、FAU型、CHA型、MOR型、ZSM−5型、BEA型などが挙げられるが、双極子、あるいは四重極子をもつガスとの強い相互作用を有しており、かつ広い孔入口径(0.74 nm)をもつゼオライト骨格の化学組成が、
AlSi192−n384
式中、48≦n≦86
であるFAU型ゼオライト膜が好ましい。
基体となるFAU型ゼオライト膜としては、膜欠陥が少なければ特に限定されないが、例えば日立造船製NaY型ゼオライト膜などを用いることができる。
ここで、多孔質基体としては、例えば、アルミナ、シリカ、コージェライト、ジルコニア、チタニア、バイコールガラス、焼結金属などの多孔質体が挙げられるが、これらに限らず、種々の多孔質体を用いることができる。
また、本発明によるゼオライト複合膜は、撥水被膜層が、
シリカ(Si)/アルミニウム(Al)≧100の組成比を有する疎水性ゼオライト膜よりなるものであることが好ましい。
ここで、シリカ(Si)/アルミニウム(Al)≧100の組成比を有する疎水性ゼオライト膜としては、シリカライト膜、DDR型ゼオライト膜などが考えられる。
例えばシリカライト膜では、SiO:0.005TPABr:0.05NaOH:100HOの組成に調製した反応溶液中にて、シリカライト種結晶を、170℃、48時間、水熱合成により結晶成長させる方法により製膜することができる(例えば、上記特許文献4参照)。
また、DDR膜については、モル比にて(1−アダマンタンアミン/シリカ)=0.125、(エチレンジアミン/1−アダマンタンアミン)=16、(水/シリカ)=56に調製した反応溶液中にて、DDR種結晶を48時間、160℃にて水熱合成させ結晶成長させる方法により製膜することができる(例えば、上記特許文献2参照)。
ここで、ゼオライト膜表面を疎水化する方法としては特に限定されるものではないが、後処理によってゼオライト骨格内のアルミニウム(Al)を除去する方法、ゼオライト膜表面のシラノール基(-OH)を修飾して疎水基によって被膜する、および疎水層を堆積させるといった方法が考えられる。
しかし、ゼオライト骨格内のAlを除去する方法では、脱Alに伴い、ゼオライト膜の結晶粒界に空隙が生じやすく、これによってゼオライト膜の分離能の低下が引き起こされるため、ゼオライト膜表面を疎水基によって被膜する、あるいは疎水層を堆積させるといった、撥水被膜層設けることが好ましい。
本発明によるゼオライト複合膜では、撥水被膜層の表面がシリル化されて、シリル基(−O−Si−R)が形成され、膜表面のシリル化により、撥水性を向上させることが好ましい。
上記式中、Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシド基、ビニル基、またはアミノ基を表わす。
仮に、ゼオライト膜表面にシラノール基(−OH)が残存していると、ゼオライト骨格が、シリカ(Si)/アルミニウム(Al)≧100の組成比である場合でも、疎水性が低下する。ゼオライト膜表面のシラノール基(−OH)の除去には、シラノール基と反応できる官能基を有するアルキルシランやアルコールとの反応によるアルキル基の導入が効果的である。
本発明によるゼオライト複合膜において、撥水被膜層の表面をシリル化には、例えば60℃にて3時間、膜表面にトリメチルクロロシランの蒸気を供給する方法により行うことができる(例えば、上記特許文献4参照)。
図1は、本発明品であるゼオライト複合膜と、従来品であるゼオライト膜(Y型)の分離性能の違いを説明するための模式図である。
同図において、本発明のゼオライト膜の従来型のゼオライト膜と違いの模式図を示す。従来のY型などの親水性ゼオライト膜では、水蒸気存在下ではゼオライト膜の細孔表面に水分が吸着することによる細孔閉塞で、二酸化炭素(CO)などのガス透過性の低下が著しかった。
これに対し、本発明のゼオライト複合膜によれば、親水性FAU型ゼオライト膜の膜表面を撥水被膜化することにより、FAU型ゼオライト膜の細孔の水(水蒸気)による閉塞を緩和することができ、水蒸気存在下でも、顕著なガス分離特性を発揮できた。特に、FAU型ゼオライト膜表面に疎水性ゼオライトを堆積させたゼオライト複合膜、およびさらに撥水被膜層表面のシリル化によって、ゼオライト膜表面のシラノール基を除去し、疎水性を向上させた複合膜では、水蒸気によるガス透過度低下を大幅に緩和することが可能であった。
本発明のゼオライト複合膜は、上記のような特性を有するものであるため、例えば、水蒸気を含む排ガスからの二酸化炭素(CO)の回収、水蒸気含有バイオガスからの二酸化炭素(CO)の回収、および水蒸気改質後の水蒸気を含む高圧水素ガスからの二酸化炭素(CO)の回収など、種々ガス分離膜としての新規用途が期待できるものである。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
本発明によるゼオライト複合膜を、つぎのようにして製造した。
まず、FAU型ゼオライト膜には、多孔質アルミナ管上に製膜されたFAU型ゼオライト膜(NaY型ゼオライト膜、日立造船製)を用いた。
ここで、FAU型ゼオライト膜のゼオライト骨格の組成は、
AlSi192−n384
式中、48≦n≦86であった。
つぎに、このFAU型ゼオライト膜の表面に、シリカ(Si)/アルミニウム(Al)≧100の組成比を有する疎水性ゼオライト膜(DDR膜)よりなる撥水被膜層を、モル比にて(1−アダマンタンアミン/シリカ)=0.125、(エチレンジアミン/1−アダマンタンアミン)=16、(水/シリカ)=56に調製した反応溶液中にて、FAU型ゼオライト膜上に密に塗付したDDR種結晶を48時間、160℃にて水熱合成させ結晶成長させる方法により設けた。
こうして得られた本発明によるゼオライト複合膜について、気体透過試験を行った。
(気体透過試験)
上記実施例1で得た本発明によるゼオライト複合膜、および従来のFAU型ゼオライト膜を用いて気体透過試験を行った。
ガス分離モジュール(図示略)内に本発明によるゼオライト複合膜を設置し、二酸化炭素/水蒸気/窒素比(CO/HO/N=20:2:78)の混合ガスを、温度40℃で、ガス分離モジュール内に通過させて、ゼオライト複合膜にCO/N混合ガスを接触させた。なお、ゼオライト複合膜の透過側は、アルゴンガスによってスウィープした。そして、ゼオライト複合膜を透過した二酸化炭素ガス(透過ガス)をサンプリングして、下記の条件にてガスクロマトグラフィ(GC)測定を行った。
ガス分析:ガスクロマトグラフィ;GC(TCD)
カラム:ポラパックQ
キャリアガス:Ar
テストガス:CO/HO/N=20:2:78
ガス流量:100ml/min
入口ガス圧力:101kPa
透過側圧力:大気圧(101kPa)
透過側スウィープArガス流量:100ml/min
また、比較のために、従来品であるゼオライト膜(Y型)について、上記の場合と同様に、気体透過試験を実施し、ゼオライト複合膜を透過した二酸化炭素ガス(透過ガス)をサンプリングして、同様に、ガスクロマトグラフィ(GC)測定を行った。
その結果、本発明によるゼオライト複合膜は、従来のFAU型ゼオライト膜に比べて、明らかに気体分離特性が優れており、親水性のFAU型ゼオライト膜の膜表面を撥水被膜化することにより、FAU型ゼオライト膜の細孔の水(水蒸気)による閉塞を緩和することができ、水蒸気存在下でも、顕著なガス分離特性を発揮できる、二酸化炭素選択的透過分離膜に有用なゼオライト複合膜が得られることを確認することができた。
つぎに、本発明による上記撥水被膜層するゼオライト複合膜の表面を、トリメチルクロロシランによりシリル化し、シリル基、−O−Si−(CHを形成することにより、ゼオライト膜表面のシラノール基(−OH)を除去した、
こうして得られた撥水被膜層の表面がシリル化された本発明のゼオライト複合膜について、上記の場合と同様に気体透過試験を行ったところ、二酸化炭素の分離特性がさらに優れており、シリル化によって、ゼオライト膜表面のシラノール基を除去し、疎水性を向上させたゼオライト複合膜では、水蒸気によるガス透過度低下をさらに大幅に緩和することが可能であることを確認することができた。

Claims (3)

  1. 多孔質基体上に、下記組成のゼオライト骨格を有するフォージャサイト(FAU)型ゼオライト膜が設けられ、
    AlSi192−n384
    式中、48≦n≦86である
    FAU型ゼオライト膜の表面に、撥水被膜層として、疎水性ゼオライト膜が設けられていることを特徴とする、水蒸気存在下でのガス分離用ゼオライト複合膜。
  2. 疎水性ゼオライト膜がシリカ(Si)/アルミニウム(Al)≧100の組成比を有する、シリカライト膜またはDDR型ゼオライト膜であることを特徴とする、請求項1に記載の水蒸気存在下でのガス分離用ゼオライト複合膜。
  3. 疎水性ゼオライト膜の表面がシリル化されて、シリル基(−O−Si−R)が形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の水蒸気存在下でのガス分離用ゼオライト複合膜。
    上記式中、Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシド基、ビニル基、またはアミノ基を表わす。
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