以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
(第1の実施形態)
本実施形態では、無線LANのアクセスポイントが、携帯端末による無線接続可能な接続対象の識別に用いられる第1識別情報と、第1識別情報とは異なる、携帯端末の特定の処理に用いられる特定情報と、を組み合わせた情報をESSIDとして携帯端末に送信する。携帯端末は、受信したESSIDに含まれる第1識別情報を用いて、接続する接続対象を決定し、ESSIDを用いて、決定した接続対象へ接続するとともに、ESSIDに含まれる特定情報を用いて特定の処理を行う。
図1は、通信システム100の概略構成の一例を示す図である。
通信システム100は、無線LANのアクセスポイント1a〜1bと、無線LAN通信機能を有する携帯端末2a〜2dとを有する。アクセスポイント1aはサービスエリア101a内で携帯端末2a〜2bと無線LAN通信方式に従った無線通信を行うことができ、アクセスポイント1bはサービスエリア101b内で携帯端末2c〜2dと無線LAN通信方式に従った無線通信を行うことができる。
アクセスポイント1a〜1bは、バックボーンネットワーク102に接続される。バックボーンネットワーク102には、イーサネット(登録商標)等の有線LANにより、バックボーンネットワーク102とインターネット103とを中継するゲートウェイ104が接続される。インターネット103には配信サーバ105が接続され、アクセスポイント1a〜1bは、配信サーバ105と通信を行うことができる。本実施形態のアクセスポイント1a〜1bは、固定式のアクセスポイントであるが、移動可能なモバイルWiFiルータであってもよい。
さらに、バックボーンネットワーク102には、イーサネット(登録商標)等の有線LANにより、携帯端末2a〜2dのユーザを認証するための認証サーバ106が接続される。携帯端末2a〜2dは、認証サーバ106によってユーザが認証されることにより、ゲートウェイ104を介して、インターネット103に接続することができる。
図2は、アクセスポイント1aの概略構成の一例を示す図である。
アクセスポイント1aと1bの構成は同じであるため、以下では代表してアクセスポイント1aについて説明する。
アクセスポイント1aは、携帯端末2a、2bと無線接続し、携帯端末2a、2bと、バックボーンネットワーク102又はインターネット103に接続された装置との間の通信を中継する通信装置である。アクセスポイント1aは、無線通信部11と、有線通信部12と、インターフェース部13と、記憶部14と、制御部15とを備える。
無線通信部11は、主に2.4GHz帯、5GHz帯等を感受帯域とするアンテナを含む、通信インターフェース回路を有し、携帯端末2a、2bとの間で、IEEE802.11又はIEEE802.11u規格の無線通信方式に基づいて無線通信を行う。そして、無線通信部11は、携帯端末2a、2bから受信したデータを、制御部15に与える。また、無線通信部11は、制御部15から与えられたデータを、携帯端末2a、2bに送信する。
有線通信部12は、イーサネット(登録商標)などの有線の通信インターフェース回路を有し、バックボーンネットワーク102を介して、配信サーバ105、認証サーバ106等と通信を行う。そして、有線通信部12は、配信サーバ105、認証サーバ106等から受信したデータを、制御部15に与える。また、有線通信部12は、制御部15から与えられたデータを、配信サーバ105、認証サーバ106等に送信する。
インターフェース部13は、例えばUSB(Universal Serial Bus)等のシリアルバスに準じるインターフェース回路を有し、アクセスポイント1aの各種設定を行うためのパーソナルコンピュータ(不図示)(以下、設定用PCと称する)と接続して各種の情報を送受信する。なお、アクセスポイント1aは、有線通信部12により、有線LAN又はLANケーブルを介して設定用PCと接続するようにしてもよい。
記憶部14は、例えば、半導体メモリ、磁気ディスク装置、及び光ディスク装置のうちの少なくともいずれか一つを有する。記憶部14は、制御部25での処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、記憶部14は、ドライバプログラムとして、無線通信部11を制御する無線通信デバイスドライバプログラム、有線通信部12を制御する有線通信デバイスドライバプログラム、インターフェース部13を制御するインターフェースデバイスドライバプログラム等を記憶する。また、記憶部14は、オペレーティングシステムプログラムとして、IEEE802.11又はIEEE802.11u規格の無線通信方式による接続制御プログラム等を記憶する。また、記憶部14は、アプリケーションプログラムとして、ESSIDの生成、記憶、及び送信を行うデータ処理プログラム等を記憶する。また、記憶部14は、データとして、携帯端末2a、2bによる無線接続可能な接続対象の識別に用いられる第1識別情報、アクセスポイント1aのESSID及びBSSID(Basic Service Set Identifier)等を記憶する。ESSIDは、携帯端末2a、2bが接続対象と接続するために必要な第2識別情報の一例である。さらに、記憶部14は、所定の処理に係る一時的なデータを一時的に記憶してもよい。
制御部15は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。制御部15は、アクセスポイント1aの全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。即ち、制御部15は、アクセスポイント1aの各種の処理が記憶部14に記憶されているプログラム等に応じて適切な手順で実行されるように、無線通信部11、有線通信部12、インターフェース部13等の動作を制御する。制御部15は、記憶部14に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、制御部15は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行することができる。
制御部15は、生成処理部151と、送信制御部152とを有する。制御部15が有するこれらの各部は、制御部15が有するプロセッサ上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、制御部15が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、又はファームウェアとしてアクセスポイント1aに実装されてもよい。
図3は、制御部15のESSID生成処理の動作フローの一例を示す図である。なお、以下に説明する動作フローは、予め記憶部14に記憶されているプログラムに基づいて、主に制御部15により、アクセスポイント1aの各要素と協働して実行される。なお、図3に示す動作フローが実行される前に、記憶部14には、インターフェース部13を介して設定用PCから設定された第1識別情報、及びその第1識別情報のみから構成されるESSIDが記憶されているものとする。
最初に、生成処理部151は、有線通信部12を介して配信サーバ105から、第1識別情報以外の情報であって且つ携帯端末2a、2bの特定の処理に用いられる特定情報を新たに受信しているか否かを判定する(ステップS300)。
特定情報は、アクセスポイント1aと無線通信する携帯端末2a、2bの動作を規定する指示を示す情報である。特定情報は、例えば、携帯端末2a、2bに格納されている文字、画像等の表示、映像、音声等の再生等、携帯端末2a、2bに表示内容を変更させる指示とすることができる。なお、特定情報は、携帯端末2a、2bが有する、電子メール送受信、通話、Webアクセス等の特定の機能のON/OFFを切り替えさせる指示としてもよい。また、特定情報は、携帯端末2a、2bに、無線LAN機能のON/OFFを切り替えさせる指示としてもよい。また、特定情報は、第1識別情報に示される接続対象との接続を開始又は終了させる指示としてもよい。また、特定情報は、特定の通信の開始、又はその通信の開始の契機(所定時間経過後に通信を開始させる予約)の指示としてもよい。
また、特定情報は、携帯端末2a、2bの通信ポリシーを更新させる指示としてもよい。更新される通信ポリシーは、例えば、携帯端末2a、2bが複数の無線ネットワークと接続可能な状態である場合に、接続する無線ネットワークの優先順位とすることができる。また、携帯端末2a、2bが、無線LANのネットワーク以外に、LTE(Long Term Evolution)、3G(3rd Generation)、2G(2nd Generation)等の通信方式により携帯電話のネットワークへも接続可能である場合、更新される通信ポリシーは、携帯端末2a、2bが接続すべき、それらのネットワークの優先順位としてもよい。
また、更新される通信ポリシーは、アクセスポイントと接続する際の通信速度、又はアクセスポイントと接続するか否かを判定するための受信強度(Received Signal Strength Indication, RSSI)の閾値としてもよい。また、更新される通信ポリシーは、アクセスポイントに認証要求を送信してから認証応答を受信するまでのタイムアウト時間、又はタイムアウトした場合に認証要求を送信するリトライ回数としてもよい。また、更新される通信ポリシーは、アソシエーション(接続)要求を送信してからアソシエーションを受信するまでのタイムアウト時間、又はIPアドレスの払い出しがなされるまでのタイムアウト時間としてもよい。
なお、配信サーバ105は、予め定められた間隔ごとに、又は操作者により指示されたタイミングで、各アクセスポイント1a、1bに特定情報を送信する。また、配信サーバ105は、各アクセスポイント1a、1bに対してそれぞれ異なる特定情報を送信する。これにより、通信システム100は、アクセスポイントが設置されている地域ごとに、その地域に位置する携帯端末の動作を異ならせることができる。また、配信サーバ105は、各アクセスポイント1a、1bに対して同一の特定情報を送信してもよい。これにより、通信システム100は、全ての携帯端末の動作を同一にすることができる。
また、各アクセスポイント1a、1bは、配信サーバ105に対して、配信サーバ105を識別するための情報及びパスワード等を要求し、認証成功となった場合に限り、配信サーバ105から特定情報を受信してもよい。これにより、特定情報を誤って受信することを防ぐことができる。
生成処理部151は、配信サーバ105から特定情報を新たに受信していない場合(ステップS300−No)、処理をステップS312へ移行させる。
一方、生成処理部151は、配信サーバ105から特定情報を新たに受信している場合(ステップS300−Yes)、受信した特定情報を暗号化する(ステップS302)。生成処理部151は、AES(Advanced Encryption Standard)等の公知の暗号化方式により特定情報を暗号化する。
なお、特定情報を暗号化するための暗号化鍵の値として、アクセスポイント1aのBSSID、又はBSSIDにビット逆転(上位から下位へのビットの並びを逆にする)、ビット反転(0を1に、1を0に変換する)、ビットシフト等の所定のビット演算を適用した値を用いてもよい。また、これらの値に固定値を連結させた値、これらの値のビットの並びの途中に固定値を挿入した値、又はこれらの値に固定値を乗じた値を暗号化鍵の値としてもよい。BSSIDはアクセスポイントごとに一意の値であるため、これにより、暗号化鍵の値をアクセスポイントごとに異ならせることが可能となる。したがって、BSSIDに基づく暗号化鍵を用いることにより、暗号化鍵の設定に係るユーザのわずらわしさを低減しつつ、セキュリティ性を向上させることが可能となる。また、携帯端末2a、2bは、後述するようにビーコンを受信したときに、ESSIDとともにBSSIDを取得できるため、暗号化された情報とその暗号を復号するための暗号化鍵を同時に取得することができる。
次に、生成処理部151は、暗号化した特定情報のデータ圧縮を行う(ステップS304)。生成処理部151は、ハフマン符号化等の公知のデータ圧縮方式により特定情報を可逆圧縮する。
次に、生成処理部151は、圧縮した特定情報を文字変換する(ステップS306)。生成処理部151は、Base64等の公知の文字変換方式により、特定情報を、印字可能な英数字を表すコードに変換する。なお、生成処理部151は、特定情報の1バイトごとの値を16進数に対応する英数字を表すコード(00〜FF)に変換することにより、特定情報を文字変換してもよい。
IEEE802.11規格において、ESSIDは、ユーザが視認可能なように、印字可能な英数字を表すコードで各オクテットを構成するように規定されている。したがって、特定情報を文字変換することにより、特定情報をIEEE802.11規格に従ったESSIDに利用することが可能となる。
次に、生成処理部151は、記憶部14から第1識別情報を読み出し、読み出した第1識別情報と、文字変換した特定情報とを結合し、ESSIDとして生成する(ステップS308)。
IEEE802.11規格において、ESSIDのサイズは最大32バイトと規定されている。通信システム100では、例えば、第1識別情報のサイズを32バイト未満の所定サイズ(例えば、24バイト)とし、特定情報のサイズを、圧縮及び文字変換後の特定情報が空きスペースのサイズ(例えば、8バイト)以下となるように定める。そして、生成処理部151は、先頭に第1識別情報が配置され、先頭から所定サイズ以降に特定情報が配置されるように、ESSIDを生成する。
また、生成処理部151は、複数のESSIDを生成してもよい。その場合、生成処理部151は、各ESSIDに番号を割り当てて、その番号を各ESSIDに格納する。生成処理部151は、1番目のESSIDに第1識別情報を格納し、1番目のESSIDの空きスペース及び2番目以降のESSIDに特定情報を格納する。なお、生成処理部151は、第1識別情報を複数のESSIDに分散して格納してもよい。これにより、例えば画像データ、所定情報を記述したXML(Extensible Markup Language)等を含む、大きいサイズの特定情報をESSIDに含ませることが可能となる。
なお、生成処理部151は、特定情報のサイズが1番目のESSIDの空きスペースより大きい場合、特定情報のうち1番目のESSIDに格納できない部分を、ビーコンに含まれるVenderSpecific領域等の他の領域に格納してもよい。または、特定情報のうち1番目のESSIDに格納できない部分を配信サーバ105に送信して格納させ、携帯端末2a、2bが、ESSIDを受信した後でその部分を配信サーバ105から取得できるようにしてもよい。なお、アクセスポイント1aにNAS(Network Attached Storage)機能等のサーバ機能を設けて、特定情報のうち1番目のESSIDに格納できない部分をアクセスポイント1aに格納しておき、携帯端末2a、2bが、ESSIDを受信した後でその部分をアクセスポイント1aから取得できるようにしてもよい。これらの場合、配信サーバ105、アクセスポイント1aから後で取得する情報が格納されているアドレスを特定情報に含ませてもよい。これにより、後から取得する情報のアドレス、ファイル名等を動的に変更して携帯端末2a、2bにブロードキャスト送信することが可能となる。
次に、生成処理部151は、生成したESSIDを記憶部14に記憶し、記憶部14に記憶されていたESSIDを更新する(ステップS310)。
次に、送信制御部152は、記憶部14に記憶されたESSIDを含むビーコンを無線通信部11を介して携帯端末2a、2bにブロードキャスト送信する(ステップS312)。
なお、生成処理部151が複数のESSIDを生成した場合、送信制御部152は、各ESSIDを含むビーコンを同時に送信する。または、送信制御部152は、各ESSIDを含むビーコンを所定の時間間隔ごとに順次送信してもよい。
次に、制御部15は、一定時間待機してから、処理をステップS300へ戻し、以降、ステップS300〜S312の処理を繰り返す。
図4は、携帯端末2aの概略構成の一例を示す図である。
携帯端末2a〜2dの構成は同じであるため、以下では代表して携帯端末2aについて説明する。
携帯端末2aは、無線通信機能を有する通信装置であり、例えば携帯電話、携帯情報端末(Personal Digital Assistant, PDA)、携帯ゲーム機、携帯音楽プレーヤ、タブレットPC等である。携帯端末2aは、無線通信部21と、操作部22と、表示部23と、記憶部24と、制御部25とを有する。
無線通信部21は、アクセスポイント1aの無線通信部11と同様に、主に2.4GHz帯、5GHz帯等を感受帯域とするアンテナを含む、通信インターフェース回路を有し、アクセスポイント1aとの間でIEEE802.11規格の無線通信方式に基づいて無線通信を行う。そして、無線通信部21は、アクセスポイント1aから受信したデータを、制御部25に与える。また、無線通信部21は、制御部25から与えられたデータを、アクセスポイント1aに送信する。
操作部22は、携帯端末2aの操作が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、タッチパッド、キーボード等である。ユーザは、このデバイスを用いて、文字、数字等を入力することができる。操作部22は、ユーザにより操作されると、その操作に対応する信号を発生する。そして、発生した信号は、ユーザの指示として、制御部25に入力される。
表示部23も、映像、画像等の表示が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイ等である。表示部23は、制御部25から供給される映像データに応じた映像、画像データに応じた画像等を表示する。
記憶部24は、例えば、半導体メモリ、磁気ディスク装置、及び光ディスク装置のうちの少なくともいずれか一つを有する。記憶部24は、制御部25での処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、記憶部24は、ドライバプログラムとして、無線通信部21を制御する無線通信デバイスドライバプログラム、操作部22を制御する入力デバイスドライバプログラム、表示部23を制御する出力デバイスドライバプログラム等を記憶する。また、記憶部24は、オペレーティングシステムプログラムとして、IEEE802.11規格の無線通信方式を実行する接続制御プログラム等を記憶する。また、記憶部24は、アプリケーションプログラムとして、ウェブページを取得及び表示するウェブブラウザプログラム、電子メールを送信及び受信する電子メールプログラム等を記憶する。また、記憶部24は、データとして、アクセスポイント1aのBSSID、携帯端末2aが無線接続可能な無線ネットワークについての第1識別情報、映像データ、画像データ等を記憶する。さらに、記憶部24は、所定の処理に係る一時的なデータを一時的に記憶してもよい。
制御部25は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。制御部25は、携帯端末2aの全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。制御部25は、携帯端末2aの各種処理が記憶部24に記憶されているプログラム、操作部22の操作等に応じて適切な手順で実行されるように、無線通信部21、表示部23等の動作を制御する。制御部25は、記憶部24に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、制御部25は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行することができる。
制御部25は、解析部251と、接続制御部252と、処理部253とを有する。制御部25が有するこれらの各部は、制御部25が有するプロセッサ上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、制御部25が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、又はファームウェアとして携帯端末2aに実装されてもよい。
図5は、制御部25のESSID解析処理の動作フローの一例を示す図である。なお、以下に説明する動作フローは、予め記憶部24に記憶されているプログラムに基づいて、主に制御部25により、携帯端末2aの各要素と協働して実行される。
最初に、解析部251は、無線通信部21を介してアクセスポイント1aからビーコンを新たに受信するまで待機する(ステップS500−No)。
解析部251は、アクセスポイント1aからビーコンを新たに受信すると(ステップS500−Yes)、受信したビーコンからESSIDを抽出する(ステップS502)。
次に、解析部251は、抽出したESSIDを第1識別情報と特定情報に分離する(ステップS504)。
次に、解析部251は、ESSIDに含まれる第1識別情報を用いて、携帯端末2aが接続する接続対象を決定する。解析部251は、ESSIDに含まれる第1識別情報が、記憶部24に記憶されている、携帯端末2aが接続可能な無線ネットワークについての第1識別情報と一致するか否かを判定する(ステップS506)。
ESSIDに含まれる第1識別情報が、記憶部24に記憶されている第1識別情報と一致する場合(ステップS506−Yes)、接続制御部252は、その第1識別情報に示される無線ネットワークを接続する接続対象に決定する。接続制御部252は、ESSIDを用いて、決定した接続対象である無線ネットワークへの接続処理を行う(ステップS508)。
なお、記憶部24に複数の第1識別情報が記憶されているときは、ESSIDに含まれる第1識別情報が、記憶部24に記憶されている第1識別情報のうちの一つと一致する場合に、接続制御部252は、その第1識別情報に示される無線ネットワークへの接続処理を行う。また、複数の第1識別情報について優先順位が定められているときは、接続制御部252は、一定期間内に受信したESSIDに含まれる第1識別情報のうち、記憶部24に記憶されている第1識別情報のうちの一つと一致し且つ最も優先順位の高い第1識別情報に示される無線ネットワークへの接続処理を行う。
また、接続制御部252は、自動的に無線ネットワークへの接続処理を行うのではなく、受信したESSIDを表示部23に表示させ、ユーザにより操作部22を介して接続の指示がされてから無線ネットワークへの接続処理を行ってもよい。
接続制御部252は、接続処理において、無線通信部11を介してアクセスポイント1aに認証要求を送信する。アクセスポイント1aは、所定のアルゴリズムを用いて携帯端末2aの認証処理を行い、その結果を含む認証応答を返信する。一般に、携帯端末2aのMAC(Media Access Control)アドレスを識別子として認証処理が行われる。接続制御部252は、アクセスポイント1aによる認証が成功したことを確認した後に、無線通信部11を介してアクセスポイント1aにアソシエーション要求を送信する。アソシエーション要求には、ESSID、サポートレート、ポーリング利用要否等のパラメータが含まれる。アクセスポイント1aは、携帯端末2aのMACアドレスが認証成功となったMACアドレスであり、受信したアソシエーション要求に含まれる、ESSID等のパラメータがすべて自身に対応していることを確認した後に、アソシエーション応答を返信する。
以上の手順により、無線ネットワークへの接続処理は完了し、携帯端末2aは、データフレームを送受信できるようになる。なお、各データフレームは、WEP(Wired Equivalent Privacy)、TKIP(Temporal Key Integrity Protocol)、CCMP(Counter Mode with Cipher Block Chaining Message Authentication Code Protocol)等の公知の暗号化アルゴリズムにより暗号化されて送受信される。
接続制御部252は、ESSIDに含まれる第1識別情報が、記憶部24に記憶されている第1識別情報と一致した場合、そのESSIDを無線通信部11にプロファイル情報として設定する。これにより、無線通信部11は、設定されたESSIDに基づいて、送受信するパケットを処理することが可能となる。
解析部251は、ESSIDに含まれる第1識別情報が、記憶部24に記憶されている第1識別情報と一致しない場合(ステップS506−No)、又は無線ネットワークへの接続処理(ステップS508)の後、ESSIDに含まれる、文字変換されている特定情報に対してその逆変換を行う(ステップS510)。解析部251は、アクセスポイント1aの生成処理部151が行った文字変換方式の逆変換を特定情報に対して行う。
次に、解析部251は、変換した特定情報のデータ解凍を行う(ステップS512)。解析部251は、アクセスポイント1aの生成処理部151が行ったデータ圧縮方式に対応するデータ解凍処理を特定情報に対して行う。
次に、解析部251は、データ解凍を行った特定情報の復号を行う(ステップS514)。携帯端末2aは、アクセスポイント1aの生成処理部151が暗号化時に用いた暗号鍵と同じ鍵又は対応する鍵を予め記憶部24に記憶し、又は公知の手法により取得し、解析部251は、暗号化された特定情報を、記憶部24に記憶された又は取得した鍵を用いて復号する。
次に、処理部253は、復号された特定情報に示される情報を用いて特定の処理を行う(ステップS516)。
処理部253は、特定情報に示される、携帯端末2aの動作を規定する指示に従って特定の処理を行う。例えば、特定情報が、携帯端末2aに表示内容を変更させる指示である場合、処理部253は、表示部23の表示内容を特定情報により指定された表示内容に変更させる。特定情報が、特定の機能のON/OFFを切り替えさせる指示である場合、処理部253は、特定情報により指定された特定の機能のON/OFFを切り替える。特定情報が、無線LAN機能のON/OFFを切り替えさせる指示である場合、処理部253は、無線LAN機能のON/OFFを切り替える。特定情報が、第1識別情報に示される接続対象との接続を開始又は終了させる指示である場合、処理部253は、第1識別情報に示される接続対象との接続を開始又は終了する。
また、特定情報が、携帯端末2aの通信ポリシーを更新させる指示である場合、処理部253は、特定情報により指定された通信ポリシーを更新する。特定情報を、通信ポリシーを更新させる指示とした場合、通信システム100は、アクセスポイントが設置されている地域ごと又は建物ごとに、その地域又は建物に存在する携帯端末の通信ポリシーを変更できる。通信システム100は、時刻又はネットワークの混雑状況等に応じて、各アクセスポイントの特定情報を変更することにより、各携帯端末の通信ポリシーを柔軟に変更することができる。
以上説明してきたように、携帯端末が接続対象と接続するために必要な情報であるESSIDに、携帯端末の特定の処理に用いられる特定情報を含ませる(またはESSIDを置き換えて設定する)ことにより、携帯端末は、ESSIDを用いて接続対象の識別及び受信したフレームの正当性の判定以外の特定の処理を実施することが可能となる。
アクセスポイントにおいて特定情報がESSIDに組み込まれると、以後、その特定情報はESSIDとしてアクセスポイントからサービスエリア内の各携帯端末に送信される。したがって、配信サーバは、特定情報を一度だけアクセスポイントに送信すれば、以後、その特定情報は、アクセスポイントから各携帯端末に定期的に送信されるので、配信サーバとアクセスポイントとの間の通信負荷を低減することが可能となる。つまり、アクセスポイントを配信サーバの代わりに利用することが可能となる。
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、配信サーバ105がアクセスポイント1a、1bに特定情報を送信するものとしたが、アクセスポイント1a、1bに特定情報を送信するのは設定用PCとしてもよい。その場合、アクセスポイント1a、1bは、インターフェース部13又は有線通信部12を介して設定用PCから受信した特定情報を記憶部14に記憶する。これにより、設定用PCを用いて特定情報を設定することが可能となり、配信サーバ105を省略することが可能となる。
また、本実施形態では、特定情報が携帯端末の動作を規定する指示を示す情報であるものとしたが、特定情報は、携帯端末が利用する情報が格納されているアドレスとしてもよい。その場合、特定情報は、画像、映像、文書等のファイルを格納している装置、フォルダ名及びファイル名等を表すURL(Uniform Resource Locator)とすることができる。また、そのファイルを格納している装置がイントラネット内に存在する場合、そのファイルを格納している装置、フォルダ名及びファイル名等を表すパス情報としてもよい。この特定情報を含むESSIDを受信した携帯端末は、特定情報に示されるアドレスを表示部23に表示し、操作部22を介したユーザによる指示に従ってそのアドレスにアクセスし、そのアドレスに格納されている情報を取得する。なお、携帯端末は、自動的に特定情報に示されるアドレスにアクセスし、そのアドレスに格納されている情報を取得してもよい。これにより、ESSIDに含めることができない大容量の情報を補完することが可能となり、携帯端末は、ESSIDを利用して大容量の情報を取得することが可能となる。
また、特定情報に、所定の情報が格納されているアドレスを含める場合、さらにその特定情報に、携帯端末2a、2bがそのアドレスにアクセスする場合に接続する無線ネットワーク、又はその優先順位を含めてもよい。これにより、通信システム100は、携帯端末2a、2bが、所定の情報が格納されているアドレスにアクセスする場合に利用する無線ネットワークを、他の場合に利用する無線ネットワークと異ならせることが可能となる。
なお、各ファイルを格納する装置は、配信サーバ105、又はインターネット103上の他のサーバもしくはPCとすることができる。この場合、インターネット103にアクセス可能なPC等から容易に各ファイルを更新することができる。また、各ファイルを格納する装置は、設定用PC、又はアクセスポイントが接続する有線LAN上の他のPCとしてもよい。この場合、携帯端末は、インターネット103を介さずに各ファイルを受信できるため、インターネット103の通信負荷を低減することができる。また、アクセスポイント1aのインターフェース部13にフラッシュメモリ等を接続し、そのフラッシュメモリに各ファイルを格納してもよい。この場合、アクセスポイント1aが各ファイルを直接送信するため、コアネットワーク側の通信負荷を低減することができる。
また、アクセスポイントごとに異なる特定情報を設定することにより、各アクセスポイントのサービスエリアごとに、そのサービスエリア内に存在する携帯端末に通知する特定情報を異ならせることが可能となる。したがって、例えば地域ごとに内容の異なる天候情報、災害情報等について各携帯端末に適切な情報を通知することが可能となる。また、アクセスポイントごとに、そのアクセスポイント、又はそのアクセスポイントが接続されているネットワークの通信品質に応じて通信ポリシーを変更することも可能となる。
また、生成処理部371は、特定情報に、アクセスポイント1aが接続する複数の携帯端末2a、2bのうち、その特定情報を利用可能な携帯端末を示す情報を含ませてもよい。その場合、携帯端末2a、2bは、受信したESSIDに含まれる特定情報が、自端末が利用可能であることを示す場合に限り、その特定情報を用いて特定の処理を行う。これにより、通信システム100は、特定情報を利用可能な携帯端末を限定することが可能となる。
また、アクセスポイント1aの生成処理部151は、特定情報の暗号化、圧縮、及び/又は文字変換の処理を省略してもよい。また、生成処理部151は、特定情報へのハッシュ値の付加、チェックサムの付加、特定情報を複数のESSIDに分割して含ませる場合の各ESSIDの有効期限の付加等、さらなる処理を追加してもよい。特定情報へハッシュ値を付加する場合、ハッシュ関数として、MD5(Message Digest Algorithm 5)、SHA−256(Secure Hash Algorithm 256bit)等の公知のハッシュ関数を利用することができる。携帯端末2aの解析部251は、受信した特定情報に含まれるハッシュ値、チェックサム、有効期限等を用いて、受信した特定情報が正当なものであるか否かを判定し、正当でないと判定した場合はその特定情報を破棄する。これにより、通信システム100は、アクセスポイント1aが送信した情報の信頼性を高めることが可能となる。
さらに、生成処理部151は、特定情報に、暗号化の有無及びその方式、圧縮の有無及びその方式、並びに/又は文字変換の有無及びその方式を示す情報を含めてもよい。その場合、携帯端末2aの解析部251は、特定情報に含まれる各情報に従って、特定情報の復号、解凍、及び/又は文字逆変換の処理を実行又は省略することができる。
また、アクセスポイント1aではなく、配信サーバ105又は設定用PCが、特定情報の暗号化、圧縮、文字変換の処理、及び/又は上記した追加の処理を行い、処理後の特定情報をアクセスポイント1aに送信してもよい。この場合、アクセスポイント1aは、受信した処理後の特定情報を記憶部14に記憶し、その特定情報を含むESSIDを生成して各携帯端末に送信する。これにより、アクセスポイント1aと、配信サーバ105又は設定用PCとの間の通信におけるセキュリティ性を向上させるとともに、通信データ量を低減させることが可能となる。さらに、配信サーバ105又は設定用PCが、ESSID自体を生成し、生成したESSIDをアクセスポイント1aに送信してもよい。この場合、アクセスポイント1aは、受信したESSIDを記憶部14に記憶し、各携帯端末に送信する。
また、特定情報を複数のESSIDに分割して含ませる場合、複数のESSIDを一つのアクセスポイントが生成して送信するのではなく、複数のアクセスポイントが所定数(例えば1つ)ずつ生成して送信してもよい。その場合、配信サーバ105が、特定情報を分割して各アクセスポイントに送信し、各アクセスポイントは受信した特定情報を用いてESSIDを生成する。携帯端末は、各アクセスポイントから受信した複数のESSIDからそれぞれ特定情報を抽出して結合する。これにより、大容量の特定情報を複数のアクセスポイントによって分割して配信することが可能となり、無線ネットワークの通信負荷を分散させることが可能となる。
また、本実施形態では、アクセスポイントがESSIDを含むビーコンを各携帯端末にブロードキャスト送信する場合について説明したが、携帯端末がESSIDを含むプローブ要求をアクセスポイントに送信し、アクセスポイントがそのプローブ要求に応じてプローブ応答を返信する場合にも本発明を適用することができる。その場合、携帯端末の制御部25がESSIDを生成する。
制御部25は、現在の日時、アクセスポイントのBSSID、携帯端末が存在する地域を示す情報、固定文字列等を特定情報とし、記憶部24に記憶された第1識別情報と組み合わせてESSIDを生成し、記憶部24に記憶する。同様に、アクセスポイントの制御部15も、現在の日時、アクセスポイントのBSSID、アクセスポイントが存在する地域を示す情報、固定文字列等を特定情報とし、記憶部14に記憶された第1識別情報と組み合わせてESSIDを生成し、記憶部14に記憶する。なお、携帯端末の制御部25及びアクセスポイントの制御部15は、特定情報の暗号化、圧縮、文字変換、及び/又はハッシュ値、チェックサム等の付加を行ってもよい。
次に、携帯端末の制御部25は、記憶部24に記憶されたESSIDを含むプローブ要求を無線通信部21を介してアクセスポイントに送信する。アクセスポイントの制御部15は、無線通信部11を介してプローブ要求を受信すると、受信したプローブ要求に含まれるESSIDの第1識別情報及び特定情報が記憶部14に記憶されたESSIDの第1識別情報及び特定情報と一致するか否かを判定し、一致する場合、プローブ応答をその携帯端末に返信する。つまり、特定情報は、アクセスポイントが携帯端末を判別し、プローブ応答を返信するか否か、すなわち接続を許可するか否かを決定する処理に用いられる。
携帯端末の制御部25は、無線通信部21を介してアクセスポイントからプローブ応答を受信すると、そのアクセスポイントに対して接続要求を行うとともに、表示部23の表示内容の変更、特定の機能のON/OFFの切り替え、通信ポリシーの変更等の、予め定められた特定の処理を実施する。なお、制御部25は、アクセスポイントからプローブ応答を受信した場合、さらに、WEP等を用いてアクセスポイントに認証を要求し、認証に成功した場合に限り、特定の動作を行ってもよい。
また、制御部25は、複数のESSIDを生成し、各ESSIDをそれぞれ含む複数のプローブ要求を送信し、受信したプローブ応答の数、または受信したプローブ応答に対応するESSIDのパターンに応じて、実施する特定の処理を決定してもよい。
また、アクセスポイントにおいて、ESSIDの生成処理を実施するプログラムを、他のプログラムと分離しておいてもよい。アクセスポイントにおいてそのプログラムを更新することにより、ESSIDの生成処理のみを容易に変更することが可能となる。同様に、携帯端末において、ESSIDの解析処理を実施するプログラムを、他のプログラムと分離しておいてもよい。携帯端末においてそのプログラムを更新することにより、ESSIDの解析処理のみを容易に変更することが可能となる。
また、制御部15又は制御部25が備える各機能をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラムは、磁気記録媒体、光記録媒体等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録された形で提供されてもよい。
(第2の実施形態)
本実施形態では、地震の発生直後に、緊急地震速報が、地震速報配信サーバを介して該当地域のユーザの携帯端末に配信される。携帯端末は、緊急地震速報を受信した場合において、待機時間内に解除が指示されないときに、テザリング機能を有効にして無線LANの基地局装置として機能し、特定情報として救難信号を含むESSIDの送信を開始する。
なお、本実施形態では、災害情報として、緊急地震速報が配信される例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。災害情報として、例えば、津波予測の情報、台風警報、火災に関する情報等、種々の災害に関する情報が配信されてもよい。また、災害情報の配信方式として、ETWS(Earthquake and Tsunami Warning System)を想定するが、本発明はこれに限定されるものではない。配信方式は、災害情報を配信できればよく、例えば、CBS(Cell Broadcast Service)、PWS(Public Warning Service)、SMS(Short Message Service)等でもよい。
図6は、第2の実施形態による通信システム200の概略構成の一例を示す図である。
通信システム200では、不図示の交換機が、広域通信回線網である通信ネットワーク201を介して相互に接続される。交換機は、ある地域をカバーする無線通信ネットワークを通信ネットワーク201に接続する。無線通信ネットワークには、それぞれ地域内をカバーする無線ゾーン202を管理するように複数の基地局203が配置される。各基地局203は、それぞれが属する不図示の無線ネットワーク制御装置を介して交換機に接続される。そして、ある地域内の携帯電話3aが、その地域内外の他の携帯電話3b、3c等と通信を行う際に、携帯電話3aは、基地局203を介して交換機に接続され、さらに通信ネットワーク201に接続される。
通信ネットワーク201には、緊急地震速報を配信する地震速報配信サーバ204が接続される。地震速報配信サーバ204は、地震の発生直後に、気象庁等の機関により解析された震源地、地震の規模(マグニチュード)等の情報を受信すると、地震の影響が及ぶ地域(例えば、震度5弱以上の地域)の基地局203を介して、地震に関する情報を、緊急地震速報として一斉配信する機能を備える。緊急地震速報等の災害情報の配信方法については、公知であるので、以下では説明を省略する。
携帯電話3a〜3cは、テザリング機能を備える。テザリング機能とは、無線通信ネットワークへの接続機能を備える携帯端末を介して、他の携帯端末を無線通信ネットワークに接続させる機能である。携帯電話3a〜3cは、テザリング機能が有効にされると、無線LANルータとして動作し、ESSIDを含むビーコンの送信を開始する。また、携帯電話3a〜3cは、他の携帯電話からの接続が確立されると、他の携帯電話と無線通信ネットワークとの間の通信の中継を開始する。
なお、本実施形態では、ユーザとしてユーザa〜cを想定し、ユーザaを被災者とし、ユーザb、cを確認者とする。また、被災者により所持され、無線通信ネットワークに接続可能な状態にある携帯電話を携帯電話3aとし、確認者により所持され、無線LANに接続可能な状態にある携帯電話を携帯電話3b、3cとする。
図7は、携帯電話3aの概略構成の一例を示す図である。
携帯電話3a〜3cの構成は同じであるため、以下では代表して携帯電話3aについて説明する。
携帯電話3aは、例えば多機能携帯電話(所謂「スマートフォン」)であり、無線通信ネットワークへの接続、緊急地震速報の受信、他の携帯電話3b、3cからの接続、ビーコンのブロードキャスト送信等を可能とする。そのために、携帯電話3aは、無線通信部31と、携帯電話通信部32と、操作部33と、表示部34と、各種センサ35と、記憶部36と、制御部37とを備える。
無線通信部31は、主に2.4GHz帯、5GHz帯等を感受帯域とするアンテナを含む、通信インターフェース回路を有し、他の携帯電話3b、3cとの間でIEEE802.11規格の無線通信方式に基づいて無線通信を行う。そして、無線通信部31は、他の携帯電話3b、3cから受信したデータを、制御部37に供給する。また、無線通信部31は、制御部37から供給されたデータを、他の携帯電話3b、3cに送信する。
携帯電話通信部32は、主に2.1GHz帯を感受帯域とするアンテナを含む、通信インターフェース回路を有し、携帯電話3aを無線通信ネットワークに接続する。携帯電話通信部32は、基地局203により割り当てられるチャネルを介して、基地局203との間でCDMA(Code Division Multiple Access)方式等による無線信号回線を確立し、基地局203との間で通信を行う。そして、携帯電話通信部32は、地震速報配信サーバ204等から受信したデータを、制御部37に供給する。また、携帯電話通信部32は、制御部37から供給されたデータを、地震速報配信サーバ204等に送信する。さらに、携帯電話通信部32は、テレビ放送を受信するアンテナ、GPS(Global Positioning System)信号を受信するアンテナ等を備えてもよい。
そして、携帯電話3aは、テザリング機能が有効にされると、無線通信部31及び携帯電話通信部32を制御し、他の携帯電話3b、3cと無線通信ネットワークとの間の通信を中継(テザリング)する無線LANルータとして動作する。
操作部33及び表示部34は、第1の実施形態の携帯端末2aの操作部22及び表示部23と同様の構成であるため、説明を省略する。
各種センサ35は、携帯電話3aの加速度、傾き、振動、方角等を示すデータを出力するものであり、例えば、加速度センサ、地磁気センサ等である。各種センサ35の出力データは、制御部37によるユーザの移動状態の判定に利用される。
記憶部36は、例えば半導体メモリを有する。記憶部36は、制御部37での処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、記憶部36は、ドライバプログラムとして、無線通信部31を制御する無線通信デバイスドライバプログラム、携帯電話通信部32を制御する携帯電話通信デバイスドライバプログラム、操作部33を制御する入力デバイスドライバプログラム、表示部34を制御する出力デバイスドライバプログラム等を記憶する。また、記憶部36は、アプリケーションプログラムとして、緊急地震速報の受信及び救難信号の送信を行うアプリケーションプログラム、電話の発信、着信、及び通話を行うアプリケーションプログラム、電話番号の登録及び編集を行うアプリケーションプログラム、電子メール及び/又はショートメッセージの送信及び受信を行うアプリケーションプログラム、ウェブページの取得及び表示を行うアプリケーションプログラム等を記憶する。また、記憶部36は、データとして、携帯電話3b、3cによる無線接続可能な接続対象の識別に用いられる第1識別情報、携帯電話3aのESSID及びBSSID、救難信号の送信開始までの待機時間、アドレス帳データ、文字変換用の辞書データ、映像データ、画像データ等を記憶する。さらに、記憶部14は、所定の処理に係る一時的なデータを一時的に記憶してもよい。
制御部37は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を備える。制御部37は、携帯電話3aの全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。制御部37は、携帯電話3aの各種処理が記憶部36に記憶されているプログラム、操作部33の操作等に応じて適切な手順で実行されるように、無線通信部31、携帯電話通信部32、表示部34等の動作を制御する。制御部37は、記憶部36に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、制御部37は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行することができる。
制御部37は、生成処理部371と、送信制御部372と、解析部373と、接続制御部374と、処理部375とを備える。これらの各部は、制御部37が備えるプロセッサ上で実行されるプログラムによって実現される機能モジュールである。あるいは、これらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、又はファームウェアとして携帯電話3aに実装されてもよい。
図8は、制御部37のESSID生成処理の動作フローの一例を示す図である。なお、以下に説明する動作フローは、予め記憶部36に記憶されているプログラムに基づいて、主に制御部37により、携帯電話3aの各要素と協働して実行される。なお、図8に示す動作フローが実行される前に、記憶部36には、操作部33を介してユーザから設定された第1識別情報、及びその第1識別情報のみから構成されるESSIDが記憶されているものとする。図8に示すステップS814〜S822の処理は、図3に示すステップS302〜S310の処理と同じであり、生成処理部371により実行される。以下では、ステップS814〜S822の処理の説明を省略し、ステップS800〜S812、S824の処理についてのみ説明する。
最初に、生成処理部371は、携帯電話通信部32を介して地震速報配信サーバ204から緊急地震速報を受信するまで待機する(ステップS800)。
生成処理部371は、地震速報配信サーバ204から緊急地震速報を受信すると(ステップS800−Yes)、受信した緊急地震速報の内容を表示部34に表示させる(ステップS802)。
図9は、携帯電話3aにおける緊急地震速報の表示画面の一例を示す。画面上部には地震による揺れに備えるべき旨が、画面下部には「解除」ボタンがそれぞれ表示される。
次に、生成処理部371は、記憶部36から救難信号の送信開始までの待機時間を読み出し、読み出した待機時間の計時を開始する(ステップS804)。
次に、生成処理部371は、ユーザにより操作部33を介して、救難信号の送信開始の解除が指示されたか否かを判定する(ステップS806)。図9に示す表示画面の「解除」ボタンの押下により、救難信号の送信開始の解除が生成処理部371に指示される。
生成処理部371は、救難信号の送信開始の解除が指示された場合(ステップS806−Yes)、計時を終了し(ステップS808)、再度、処理をステップS800へ戻し、地震速報配信サーバ204から緊急地震速報を受信するまで待機する。
一方、生成処理部371は、救難信号の送信開始の解除が指示されていない場合(ステップS806−No)、待機時間が経過したか否かを判定する(ステップS810)。
生成処理部371は、待機時間が経過していない場合(ステップS810−No)、ステップS806へ処理を戻し、ステップS806〜S810の処理を繰り返す。
一方、生成処理部371は、待機時間が経過した場合(ステップS810−Yes)、救難信号を特定情報として生成する(ステップS812)。
生成処理部371は、例えば、「SOS−」+ユーザの名前、又は「SOS−」+ユーザの電話番号を特定情報として生成する。また、生成処理部371は、不図示のGPSユニットから取得したデータに基づいて携帯電話3aの現在位置を算出し、算出した現在位置を特定情報に含めてもよい。さらに、生成処理部371は、不図示の温度センサから取得したデータに基づいて携帯電話3a周辺の気温、又は携帯電話3aを保持しているユーザの体温を算出し、算出した気温、又は体温を特定情報に含めてもよい。さらに、生成処理部371は、携帯電話3aの最終操作日時、又は電池残量等の情報を特定情報に含めてもよい。
ステップS822において、生成処理部371がESSIDを更新すると、送信制御部372は、テザリングを開始し、更新されたESSIDを含むビーコンを無線通信部31を介して他の携帯電話3b、3cにブロードキャスト送信し(ステップS824)、一連のステップを終了する。これにより、救難信号を含むESSIDを含むビーコンが送信され始める。
図8に示す動作フロー後、送信制御部372は更新されたESSIDを含むビーコンを定期的にブロードキャスト送信し、制御部37は他の携帯電話3b、3cからの接続が可能なように無線通信部31を制御する。また、他の携帯電話3b、3cからの接続が確立された場合に、制御部37は、他の携帯電話3b、3cと無線通信ネットワークとの間の通信を中継するように無線通信部31及び携帯電話通信部32を制御する。
なお、携帯電話3b、3cは、少なくとも携帯電話3aからESSIDを受信可能であればよく、必ずしも携帯電話3aと接続しなくてもよい。
また、制御部37は、各種センサ35から定期的に携帯電話3aの加速度、傾き、振動、方角等を示すデータを取得し、取得したデータに基づいて携帯電話3aのユーザが移動状態にあるか否かを判定する。制御部37がユーザが移動状態にあると判定すると、送信制御部372はテザリングを終了し、制御部37は他の携帯電話3b、3cと無線通信ネットワークとの間の通信の中継を終了する。また、ユーザにより操作部33を介して、テザリング機能の無効化が指示された場合も、送信制御部372はテザリングを終了し、制御部37は他の携帯電話3b、3cと無線通信ネットワークとの間の通信の中継を終了する。
なお、ユーザの移動状態の判定には、特開2011−180023号公報、特開2011−171908号公報、特開2009−204429号公報等に記載されている方法を利用することが可能である。
また、制御部37は、不図示のGPSユニットから取得したデータに基づいて携帯電話3aのユーザが移動状態にあるか否かを判定してもよい。これにより、ユーザが移動状態にあるか否かをより正確に判定することが可能となる。
なお、ユーザの移動状態の判定機能は必ずしも必要ではなく、各種センサ35を省略してもよい。
以下、携帯電話3b、3cの制御部37のESSID解析処理について説明する。制御部37のESSID解析処理は、図3に示したESSID解析処理と同様である。ただし、ステップS500〜S506、S510〜S516の処理は解析部373により実行され、ステップS508の処理は接続制御部374により実行され、ステップS516の処理は処理部375により実行される。
ステップS516において、処理部375は、特定情報に含まれる救難信号を表示部34に表示させる。
図10は、携帯電話3b、3cにおける無線LANの設定画面の一例を示す。ネットワーク毎に、画面左部にはESSIDが、画面右部には受信強度が、それぞれ表示されている。各ESSIDの記述形式から、一つ目のESSID(「device1 SOS−Yamada」)が救難信号であることが分かり、受信強度の値から、携帯電話3aが近くに存在することが分かる。
以上説明してきたように、ESSIDに救難信号を含ませることにより、携帯電話は、ESSIDを用いて、ユーザの安否をより確実に他の携帯電話に通知することが可能となる。
なお、本実施形態では、通信システム200における通信装置として、携帯電話を用いる例を説明したが、本発明はこれに限定されない。通信装置は、無線通信機能を備えていればよく、例えば、携帯電話の代わりに、携帯情報端末、携帯ゲーム機、携帯音楽プレーヤ、タブレットPC等を用いてもよい。
また、本実施形態では、携帯電話3aが無線LANルータとして動作する例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。携帯電話3aは、無線LAN端末として動作して、アドホックモードで携帯電話3b、3cと接続してもよい。
また、救難信号の送信契機となる災害情報(例えば、所定の震度以上の緊急地震速報)、救難信号の送信開始までの待機時間、救難信号の送信開始の解除操作、救難信号の送信方式(例えば、無線LANルータ)、救難信号のフォーマット等は、ユーザ及び/又はシステムにより変更可能としてもよい。これにより、様々な災害、被災状況等に対応することが可能となる。
また、ESSIDを送信する側の携帯電話と、ESSIDを受信する側の携帯電話が別々に提供される場合、ESSIDを送信する側の携帯電話から、解析部373、接続制御部374及び処理部375を省略することができ、ESSIDを受信する側の携帯電話から、生成処理部371及び送信制御部372を省略することができる。
また、通信システム200における通信装置を、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Z−Wave(登録商標)等の近距離無線通信方式での被探索デバイスとし、探索要求の受信に応じて送信する探索応答に含まれるDeviceIDに災害信号を含めるようにしてもよい。この場合、被探索デバイスの相手通信装置である探索デバイスが、接続対象である被探索デバイスと接続するために必要な第2識別情報は、DeviceIDとなる。第1識別情報は探索デバイスによる無線接続可能な被探索デバイスの識別に用いられる情報であり、特定情報は救難信号となる。
つまり、被探索デバイスの送信制御部は、探索デバイスによる無線接続可能な被探索デバイスの識別に用いられる第1識別情報と、救難信号である特定情報と、を含む情報を、DeviceIDとして探索応答に含めて探索デバイスに送信する。一方、探索デバイスの接続制御部は、被探索デバイスからDeviceIDを受信すると、DeviceIDに含まれる第1識別情報を用いて接続する被探索デバイスを決定し、そのDeviceIDを用いて、決定した被探索デバイスへの接続処理を行う。さらに、処理部は、DeviceIDに示される救難信号を表示部に表示させる。これにより、救難信号が受信される可能性を高めることが可能となる。
また、第1の実施形態と同様に、ESSIDの生成処理又は解析処理を実施するプログラムを、他のプログラムと分離しておいてもよい。それらのプログラムを更新することにより、ESSIDの生成処理のみ又は解析処理のみを容易に変更することが可能となる。
また、携帯端末がテザリング機能を有効にして無線LANの基地局装置として機能する場合、ESSIDに含まれる特定情報は、救難信号に限定されない。例えば、特定情報は、第1の実施形態と同様に、他の携帯端末の通信ポリシーを更新させる指示としてもよい。これにより、イベント会場、初詣の神社等の局所的且つ通信状況が随時変化する環境等において複数の携帯端末のネットワーク制御を容易に行うことが可能となる。
また、制御部37が備える各機能をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラムは、磁気記録媒体、光記録媒体等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録された形で提供されてもよい。
当業者は、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。