JP5797143B2 - エチレンオキシド製造用触媒およびそれを用いたエチレンオキシド製造方法。 - Google Patents

エチレンオキシド製造用触媒およびそれを用いたエチレンオキシド製造方法。 Download PDF

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Description

本発明は、エチレンオキシド製造用触媒および酸化エチレン製造方法に関する発明である。
エチレンを銀触媒の存在下で分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化してエチレンオキシドを製造することは工業的に広く行われている。この接触気相酸化に用いる銀触媒については、その担体、担持方法、反応促進剤の種類やその添加量などに関し、多くの技術が提案されている。
銀を主成分に用い他成分として、レニウム/その化合物及びアルカリ金属等の他の金属/その化合物を用いるものが多く提案されている(引用文献1)。
特開昭63−126552号公報
上記技術にあっては、Reなどの反応促進剤を添加することで、非Re添加触媒と比較して、エチレンオキシドへの選択率を高めることができているが、反応温度も同時に高くなる問題があった。反応温度が高くなると、運転コストが上がるだけでなく、装置仕様も変更する必要があるため、高い選択率を発現しながら反応温度を低減させる技術の開発が望まれている。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討の結果、下記技術を見出し発明を完成するに至ったものである。本発明は以下のように特定されるものである。
本発明は、銀(Ag)と、担体とを含むエチレンオキシド製造用触媒において、塩素原子を含むアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を担持することを特徴とするエチレンオキシド製造用触媒であり、更に当該触媒の存在下にエチレンをエチレンオキシドに酸化することを特徴とするエチレンオキシドの製造方法である。
エチレンを銀触媒の存在下で分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化してエチレンオキシドを製造することにおいて、高い選択率を維持しながら、低い反応温度で反応させることができるものである。
本発明を詳細に説明するが本発明の効果を奏するものであれば以下の記載に限定するものではない。
本発明は、銀(Ag)と、担体とを含むエチレンオキシド製造用触媒において、塩素原子を含むアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を添加することを特徴とするエチレンオキシド製造用触媒であり更に塩素原子を含まないアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を添加するものであり、更にレニウム(Re)含み、当該触媒に おけるCl/Re(元素比)が0.04〜1.2である。当該触媒における塩素含有量が3〜120質量ppm(Cl換算)である。



(塩素含有量測定方法)
ここで当該触媒における塩素含有量は下記条件により測定されるものである。
(1)触媒3.0gを100mlの純水に投入し100℃で30分間煮沸した後、液1を除き、更に新たに純水100mlを投入し100℃で30分間煮沸した後、液2を除き、更に新たに純水100mlを投入し100℃で30分間煮沸し、液3を除くこと。
(2)液1〜3を集めて、200mlに調整すること。
(3)当該調整した液を陰イオンクロマトグラフィーにより、塩素イオンの濃度を測定すること。
本発明で定めた塩素濃度は、一般的に市販されている陰イオンクロマトグラフ装置によって定量することができる。
(担体)
本発明において、担体組成は、α−アルミナを主成分とするものであればよく、α−アルミナの他、ケイ素(Si)を、SiO換算で0.1〜5.0質量%、ナトリウム(Na)を、NaO換算で0.001〜1.0質量%含むものであっても良い。以下、「%」で表示するが特に記載しないかぎりは担体全体で100質量%とする。また、担体が「α−アルミナを主成分とする」とは、担体におけるα−アルミナの含有量が、担体の全質量100質量%に対して、70質量%以上(上限=100質量%)であることを意味する。担体におけるα−アルミナの含有量は、好ましくは90質量%以上(上限=100質量%)であり、より好ましくは95質量%以上(上限=100質量%)である。担体は、α−アルミナを主成分とし、上記含有量でSi及びNaを含むのであれば、さらにその他の成分を含んでもよい。
上記成分以外に他の成分としては、特に制限されないが、例えば、アルカリ金属(Naを除く)及びアルカリ土類金属ならびにこれらの酸化物、遷移金属およびこれらの酸化物などが挙げられる。これらの含有量については、特に制限はない。このうち、ナトリウム及びセシウム以外のアルカリ金属を実質的に含まないことが好ましく、より好ましくはナトリウム及びセシウム以外のアルカリ金属の含有量(酸化物換算)は、担体の全質量100質量%に対して、0.001〜5質量%である。また、アルカリ土類金属の好ましい含有量(酸化物換算)は、担体の全質量100質量%に対して、0.001〜5質量%である。また、遷移金属の好ましい含有量(酸化物換算)は、担体の全質量100質量%に対して、0〜5質量%である。
上記担体原料であるα−アルミナは通常粉体であり、その純度は90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上、特に好ましくは99.5%以上のものが用いられる。α−アルミナ粉体のほかに、酸化アルミナ、特に無定形のアルミナ、シリカ、シリカアルミ、ムライト、ゼオライトなど(これらを「無定形アルミナ等」と総称する);酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化セシウムなどのアルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物など(これらを「アルカリ等」と総称する);酸化鉄、酸化チタンなどの遷移金属酸化物を含んでいてもよい。なお、担体を成型体にする前の原料α−アルミナ粉体には、微量ながらナトリウム(酸化ナトリウム)が含まれていることがある。この場合には、予めその粉体中のナトリウム量を把握することにより、特定量のナトリウム含有量となるように、担体調製時にナトリウム化合物を添加し、担体を得ることができる。
担体原料のα−アルミナ粉体の粒径に関しても特に制限はないが、α−アルミナ粉体の一次粒子径は、好ましくは0.01〜100μmであり、より好ましくは0.1〜20μmであり、さらに好ましくは0.5〜10μmであり、特に好ましくは1〜5μmである。また、α−アルミナ粉体の二次粒子径は、好ましくは0.1〜1,000μmであり、より好ましくは1〜500μmであり、さらに好ましくは10〜200μmであり、特に好ましくは30〜100μmである。
担体原料のα−アルミナ粉体の比表面積に関しても特に制限はないが、α−アルミナ粉体の比表面積は、好ましくは0.01〜20m/gであり、より好ましくは0.1〜10m/gであり、さらに好ましくは0.1〜5m/gであり、特に好ましくは0.3〜4m/gである。
また、担体原料のα−アルミナ粉体の線収縮率は12〜20%のものが好適に用いられる。ここで示す「線収縮率」とは、α−アルミナ粉体に約1〜5質量%のフラックスを添加し、約50MPaの圧力で成形した後、約1600〜1700℃で2〜3時間焼成したときの長さ方向の収縮率を指す。
担体は、ケイ素(Si)を、SiO換算で0.1〜5.0質量%含むこともできる。このような量でケイ素を含むことにより、レニウムおよびタングステンの触媒機能低下を抑制・防止でき、高選択率を長期間安定的に維持できるという利点がある。好ましくは、担体中のSi含有量(SiO換算)は、担体の全質量100質量%に対して、0.1〜3.0質量%、さらに好ましくは0.5〜2.5質量%である。なお、担体中のSi含有量(SiO換算)が上記下限を下回る場合には、十分な寿命安定性が得られないおそれがあり、逆に上限を超える場合には、初期から高い選択率が得られないおそれがある。
また、当該ケイ素原料としては、酸化ケイ素、シリカゾル、窒化ケイ素、炭化ケイ素、シラン、硫化ケイ素などの共有結合化合物;ケイ酸ナトリウム、ケイ酸アンモニウム、アルミノケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸アンモニウム、リンケイ酸ナトリウム、リンケイ酸アンモニウムなどのケイ酸塩類;長石、粘土などのケイ素を含むシリカの複塩;およびシリカ混合物を挙げることができる。このなかでも、酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、粘土などのケイ素を含むシリカの複塩などを使用することが好ましい。ここで、ケイ素化合物の添加量は、上記したようなSi含有量(SiO換算)となるような量に調節される。
担体に含まれるナトリウム(Na)は、NaO換算で0.001〜1.0質量%含まれていてもよく、このような量でナトリウムを含むことにより、触媒性能の低下を抑制・防止できる利点がある。好ましくは、担体中のNa含有量(NaO換算)は、担体の全質量100質量%に対して、0.001〜0.9質量%、より好ましくは0.001質量%以上0.8質量%未満、さらにより好ましくは0.001〜0.75質量%、特に好ましくは0.005〜0.7質量%である。なお、担体中のNa含有量(NaO換算)が上記下限を下回る場合には、十分な寿命安定性が得られないおそれがあり、逆に上限を超える場合には、初期から高い選択率が得られないおそれがある。また、このような量で含まれたナトリウムは、担体焼成時に融剤として働き、担体の微細細孔容積を本発明の範囲内に収める働きもある。
ナトリウム原料としては、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどの無機塩、および酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどの有機酸、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの高分子カルボン酸塩を用いることができる。
なお、上述した担体の組成や各成分の含有量は、蛍光X線分析法を用いて決定できる。より具体的には、測定装置としてRIGAKU製RIX2000を用い、ファンダメンタルパラメータ法(FP法)或いは検量線法にて測定することができる。
担体は上記成分を混合し一定の形状に成形し製造するものであるが、成形する際にバインダーを添加して製造することもできる。例えば、当該バインダーは、滑性を付与することによって押出工程を容易にせしめる。無機バインダーには、特に硝酸または酢酸のようなペプタイザーと組合せたアルミナゲルが含まれる。有機バインダーとしては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチまたはそのアルカリ金属塩などを挙げることができる。この中でも、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどを使用することが好ましい。
当該担体を製造する際に気孔形成剤を添加することも好ましい。当該気孔形成剤は、焼成時に担体から完全に除去されて、該担体中に制御された気孔が残るように混合物に添加される材料である。これらの材料は、コークス、炭素粉末、グラファイト、(ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート等のような)粉末プラスチック、セルロースおよびセルロース基材料、おが屑、ならびに粉砕堅果穀、カシュー、くるみ)のような他の植物材料、のような炭質材料である。炭素基材バインダーもまた気孔形成剤として役に立つことができる。
担体は以下のような方法により調製される。少なくともα−アルミナを主成分とするα−アルミナ粉体およびバインダーと、シリカを提供する原料としてのケイ素化合物、他に気孔形成剤と、適当量の水とを加えて十分混練し、押出成形法等により所定の形状、例えば、球状、ペレット状等に成形したのち、必要に応じ乾燥し、ヘリウム、窒素、アルゴン等の不活性ガスおよび/または空気等のガス雰囲気下で1,000〜1,800℃、好ましくは1,400〜1,700℃で焼成することにより、本発明に係る担体を製造することができる。
本発明による微細細孔容積を持つ担体を得るためには、(1)特定の比表面積を持つ原料α−アルミナ粉体の選定、(2)特定の微細細孔容積を持つα−アルミナ粉体の選定、(3)焼成温度の調整、および(4)焼成時間の調整、などの方法をそれぞれ単独で行うか、或いは適宜組み合わせても良い。
担体中のシリカ含有量は、α−アルミナを主成分とする粉体およびケイ素化合物に含まれるシリカ量から算出することができる。担体中のナトリウム含有量は、ケイ素化合物、有機バインダーおよびα−アルミナに含まれるナトリウム量を勘案し調整すればよい。更には、このようにして得られたSiO、NaOを含有する担体に、ケイ素化合物、ナトリウムを含有する化合物を後添加することで含有量を調整してもよいが、担体調製時にシリカおよびナトリウム化合物を添加することもできる。
担体の比表面積(窒素ガスを用いたBET法による測定、以下、BET比表面積と略して記載する。)は、0.5〜3.0m/gである。このような担体を使用することにより、触媒成分を十分量担持しつつ、レニウムおよびタングステン等の触媒成分の移動を抑制・防止でき、性能低下を抑えることができる利点がある。好ましくは、担体のBET比表面積は、0.5〜2.5m/g、より好ましくは0.5〜2.0m/gである。
なお、担体のBET比表面積が上記下限を下回ると、吸水率が充分に確保できず、触媒成分の担持が困難になるおそれや触媒成分の分散状態が悪化し性能が低下しやすくなるおそれがある。逆に、担体のBET比表面積が上記上限を超える場合には、熱的な劣化などで触媒成分が移動し、反応前と比較して反応中の触媒の担持状態が変化しやすいため、触媒性能の低下度合いが大きくなるおそれがある。
(担体の形状)
担体の形状は、特に制限されず、リング状、球状、円柱状、ペレット状のほか、従来公知の知見が適宜参照されうる。また、担体のサイズ(平均直径)についても特に制限はなく、好ましくは3〜20mmであり、より好ましくは4〜10mmである。
(触媒成分)
本発明の触媒は、上述した担体上に、少なくとも銀(Ag)と、塩素原子を含むアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物(以下、「アルカリ金属等A」とも称する)を担持させたものである。更に、塩素原子を含まないアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物(以下「アルカリ金属等B」とも称する)を担持させることができる(これらアルカリ金属等Aとアルカリ金属等Bを総称して「アルカリ金属等」と称することもある)。アルカリ等金属Aとアルカリ金属等Bのモル比(アルカリ等金属A/アルカリ金属等B)とは、0.005〜0.24(モル比)、好ましくは0.03〜0.22である。アルカリ金属等Aが多くなると、活性は向上するが選択率が低下するためであり、アルカリ金属等Bが多くなると活性が低下するためである。
当該物質を担持させる方法および担持後の後処理方法については、従来公知の方法が使用できる。担持させる順序については、特に、限定されたものではなく、Agや、その他成分と同時に担持させてもよいし、Agや、その他成分を含有する触媒に、当該物質を担持させてもよい。また、担持した後に、加熱処理を施してもよい。
当該触媒における塩素含有量は、3〜130質量ppm(Cl換算質量)であることが好ましく、次に好ましくは3〜120質量ppm、更に好ましくは30〜100質量ppm、最も好ましくは40〜95質量ppm。3質量ppm未満であるとアルカリ金属等Aを添加する効果が乏しいためであり、120質量ppmを超えると十分な選択率が得られないためだからである。
上記触媒成分のうち、銀は、主として触媒活性成分としての役割を担う。ここで、銀の含有量(担持量)は、特に制限されず、エチレンオキシドの製造に有効な量で担持すればよい。また、銀の含有量(担持量)は、特に制限されないが、エチレンオキシド製造用触媒の質量基準で(担体及び触媒成分の合計質量基準で;以下、同様)、1〜30質量%であり、好ましくは5〜20質量%である。このような範囲であれば、エチレンを分子状酸素含有ガスにより気相酸化してエチレンオキシドを製造する反応を効率よく触媒化できる。
また、アルカリ金属等A,Bは、一般に、銀の反応促進剤として作用する。また、他の触媒成分としてレニウム(Re)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)を含むこともできる。
特に、アルカリ金属等Aが含まれていることで、当該触媒のエチレンからエチレンオキシドへの選択性が高く維持されたまま、活性が向上するものである。塩素原子を含むアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物において、好ましくはアルカリ金属化合物が、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウムであり、アルカリ土類金属が塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウムであり、更に好ましくはアルカリ金属が塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化セシウムであり、アルカリ土類金属が塩化マグネシウム、塩化カルシウムであり、最も好ましくは塩化セシウムである。
一方、塩素原子を含まないアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を含むアルカリ金属等Bの原料は、アルカリ金属の硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、硫酸塩、過レニウム酸塩、タングステン酸塩などが挙げられ、アルカリ土類金属の硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、硫酸塩、過レニウム酸塩、タングステン酸塩などが挙げられる。これらのうち、硝酸セシウム、炭酸セシウム、過レニウム酸セシウム、タングステン酸セシウムが好ましい。
アルカリ金属等Aの触媒含有量は、特に制限されず、エチレンオキシドの製造に有効な量で担持すればよいが、エチレンオキシド製造用触媒の質量基準で、1〜1000質量ppmであり、好ましくは2〜600質量ppm、さらに好ましくは3〜500質量ppmである。このような範囲であれば、エチレンを分子状酸素含有ガスにより気相酸化してエチレンオキシドを製造する反応において本発明の効果を発現することができる。
本発明における本発明におけるReの触媒含有量は、特に制限されず、エチレンオキシドの製造に有効な量を含有すればよいが、エチレンオキシド製造用触媒の質量基準で、100〜2000質量ppmであり、好ましくは200〜1000質量ppm、さらに好ましくは300〜700質量ppmである。Reが上記範囲より低いと、十分な選択率が得られない。一方、上記範囲を超えると、選択率の上昇が認められなくなるだけでなく、反応温度が高くなる可能性がある。を高くする必要がある。
更に、触媒に含まれるReとClの元素比Cl/Re(元素比)が0.04〜1.2であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜1.2である。0.04未満であれば、アルカリ金属等Aを添加する効果に乏しいためであり、1.2を超えるときは、活性が高くなるが選択率は低下するためだからである。
タングステン、モリブデンは、レニウムの補助促進剤として作用する。このように各触媒成分が相互に作用することによって、本発明の触媒は、高い選択性を発揮できる。W,Moの含有量(担持量)は、特に制限されず、エチレンオキシドの製造に有効な量で担持すればよい。タングステンの含有量(担持量)は、特に制限されないが、エチレンオキシド製造用触媒の質量基準で、好ましくは10〜2000質量ppmであり、より好ましくは50〜1000質量ppmである。このような範囲であれば、エチレンを分子状酸素含有ガスにより気相酸化してエチレンオキシドを製造する際に、レニウムの効果(触媒の選択性の向上効果)を促進できる。
本発明の触媒は、上記触媒成分に加えて、他の触媒成分を含んでもよい。ここで、他の触媒成分としては、特に制限されないが、例えば、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ニオブ(Nb)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、タンタル(Ta)、ビスマス(Bi)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)などが挙げられる。また、このような他の触媒成分の含有量(担持量)は、本発明による触媒成分の効果を阻害しない限り特に制限されないが、好ましくはエチレンオキシド製造用触媒の質量基準で、10〜1000質量ppmである。
(触媒の製造方法)
次に、上記したようにして製造された本発明に係る担体を用いて、本発明のエチレンオキシド製造用触媒を製造するが、その製造方法は、上記したような担体を使用する以外は、従来公知のエチレンオキシド製造用触媒の製造方法に従って調製されうる。以下、本発明にかかる好ましい触媒の実施形態を記載する。しかし、本発明は、下記の好ましい実施形態に限定されず、適宜修飾してあるいは他の公知の方法に本発明に係る担体を使用することによって、触媒を製造できる。
まず、各触媒成分の前駆体を適当な溶媒に溶解して、触媒前駆体溶液を調製する。ここで、各触媒成分の前駆体としては、溶媒に溶解する形態であれば特に制限されないが、例えば、銀の場合には、例えば、硝酸銀、炭酸銀、シュウ酸銀、酢酸銀、プロピオン酸銀、乳酸銀、クエン酸銀、ネオデカン酸銀などが挙げられる。これらのうち、シュウ酸銀、硝酸銀が好ましい。
アルカリ金属等Aは、塩化アルカリであり、好ましくは塩化リチウム、塩化セシウム、塩化ナトリウム、更に好ましくは塩化セシウムである。
レニウムの場合には、過レニウム酸アンモニウム、過レニウム酸ナトリウム、過レニウム酸カリウム、過レニウム酸、塩化レニウム、酸化レニウム、過レニウム酸セシウムなどが挙げられる。これらのうち、過レニウム酸アンモニウム、過レニウム酸セシウムが好ましい。タングステンの場合には、酸化タングステン、タングステン酸、タングステン酸塩、リンタングステン酸、ケイタングステン酸などのヘテロポリ酸および/またはヘテロポリ酸の塩などが挙げられる。これらのうち、メタタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸セシウム、パラタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸セシウム、リンタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸セシウム、ケイタングステン酸アンモニウム、ケイタングステン酸セシウムが好ましい。上記各触媒成分は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、上記各触媒成分の添加量は、上記した所定の触媒組成となるように適宜決定できる。
上記各成分の前駆体を溶解する溶媒もまた、各触媒成分を溶解できるものであれば特に制限されない。具体的には、水、メタノールおよびエタノールなどのアルコール類、トルエンの芳香族化合物などが挙げられる。これらのうち、水、エタノールが好ましい。
ここで、触媒前駆体溶液は、上記触媒成分に加えて、必要に応じて、錯体を形成するための錯化剤をさらに溶媒に添加してもよい。錯化剤としては、特に制限されないが、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどが挙げられる。上記錯化剤単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
次いで、このように調製された触媒前駆体溶液を、上記で準備した担体に含浸させる。ここで、上記触媒前駆体溶液は、触媒前駆体溶液毎に別々に調製して、担体に順次含浸してもあるいは各触媒前駆体を一つの溶媒に溶解して、一つの触媒前駆体溶液とし、これを担体に含浸してもよい。
続いて、含浸後の担体を乾燥し、焼成する。乾燥は、空気、酸素、または不活性ガス(例えば、窒素)の雰囲気中で、必要であれば減圧下で、80〜120℃の温度で行うことが好ましい。また、焼成は、空気、酸素、または不活性ガス(例えば、窒素)の雰囲気中で、100〜800℃の温度で、好ましくは100〜600℃の温度で0.1〜100時間、好ましくは0.1〜10時間程度行うことである。なお、焼成は、1段階のみ行われてもよいし、2段階以上行われてもよい。好ましい焼成条件としては、1段階目の焼成を空気雰囲気中で100〜250℃にて0.1〜10時間行い、2段階目の焼成を空気雰囲気中で250〜450℃にて0.1〜10時間行う条件が挙げられる。さらに好ましくは、かような空気雰囲気中での焼成後にさらに、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンなど)雰囲気中で450〜800℃にて0.1〜10時間、焼成を行ってもよい。
このようにして得られた本発明の触媒は、選択性および触媒寿命(耐久性)に優れる。したがって、本発明のエチレンオキシド製造用触媒を使用することによって、エチレンオキシドを長期に亘って高選択率で製造でき、産業上非常に有益である。
ゆえに、本発明はまた、本発明の触媒の存在下に分子状酸素含有ガスを用いエチレンを気相酸化するエチレンオキシドの製造方法もまた提供される。
(エチレンオキシドの製造方法)
本発明のエチレンオキシドの製造方法は、触媒として本発明のエチレンオキシド製造用触媒を使用する点を除けば、常法に従って行われうる。
例えば、工業的製造規模における一般的な条件、すなわち反応温度150〜300℃、好ましくは180〜280℃、反応圧力0.2〜4MPa、好ましくは0.9〜3MPaであり、空間速度は1,000〜30,000hr−1(STP)、好ましくは3,000〜8,000hr−1(STP)である。
触媒に接触させる原料ガスとしては、エチレン0.5〜40容量%、酸素3〜10容量%、炭酸ガス1〜30容量%、残部の窒素、アルゴン、水蒸気等の不活性ガスおよびメタン、エタン等の低級炭化水素類からなり、さらに反応抑制剤としてのエチルクロライド、エチレンジクロライド、ビニルクロライド、メチルクロライドなどの有機塩素化合物を0.1〜10容量ppm含有するものが挙げられる。本発明の製造方法において使用される分子状酸素含有ガスとしては、空気、酸素および富化空気が挙げられる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の効果を奏するものであれば、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、本発明にかかる触媒の代表例として、アルカリ金属等Aには塩化セシウム、アルカリ金属等Bには硝酸セシウムを用いて触媒を得た。
(触媒A〜Fの調製)
表1に示す組成となるように、シュウ酸銀、硝酸セシウム、塩化セシウム、過レニウム酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウムを秤量し、水に溶解し、さらに錯化剤としてエチレンジアミンを加え、触媒前駆体溶液を調製した。次に、上記触媒前駆体溶液を、α−アルミナ担体(比表面積=0.7m/g)に含浸した後、空気気流中300℃で0.25時間加熱処理した。更に、窒素気流中550℃で3時間熱処理し、触媒A〜Fを得た。触媒組成を表1に示す。
Figure 0005797143
(触媒評価)
上記触媒A〜Fを、それぞれ、600〜850μmに粉砕し、それぞれの粉砕物1.2gを、内径3mm、管長300mmの外部が加熱式の二重管式ステンレス製反応器に充填した。次に、各触媒に対して最適なビニルクロライド濃度を調べるために、この充填層にエチレン24容量%、酸素7容量%、二酸化炭素2.1容量%、残余が窒素と微量の反応促進剤(ビニルクロライド)からなるガスを導入し、反応圧力1.6MPaG、空間速度5500hr−1の条件で、エチレン転化量が2.5容量%となるようにして反応を行った。ビニルクロライド濃度は、1.5molppmから4.5molppmの範囲で変化させ、各触媒において最も高い選択率が得られるビニルクロライド濃度を求めた。表2に、反応から100時間経過時の選択率および反応温度を示す。なお、選択率は、下記数式1に従って算出した。また、「エチレン転化量2.5容量%」は、エチレン転化率8.3%に相当する(下記数式2に従って算出)。
塩素を含まない触媒Fは転化率を触媒Aと同程度に設定すると反応温度を高くすることを要する。つまり、触媒活性的には触媒Aに比べ劣ることが分かる他、高温で反応する必要のある触媒Fは製造コストが高くなること、高温にさらされるため触媒の耐久性に劣り製造時間が短くなることが多く、この点においても製造コストが高くなるものである。
Figure 0005797143
Figure 0005797143
Figure 0005797143
本発明は、エチレンを酸化しエチレンオキシドを製造する技術に用いる触媒を提供するとともに、エチレンオキシドを製造することができる方法を提供するものである。

Claims (3)

  1. 銀(Ag)と担体とを含むエチレンオキシド製造用触媒において、塩素原子を含むアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物と、更に塩素原子を含まないアルカリ金属 化合物またはアルカリ土類金属化合物を担持したエチレンオキシド製造用触媒であり、更 に当該触媒はレニウム(Re)含み、かつCl/Re(元素比)が0.04〜1.2であ ことを特徴とするエチレンオキシド製造用触媒。
  2. 請求項1記載の触媒における塩素含有量が3〜130質量ppm(Cl換算質量)であることを特徴とする請求項1記載のエチレンオキシド製造用触媒。
  3. 請求項1〜記載の触媒の存在下にエチレンをエチレンオキシドに酸化することを特徴とするエチレンオキシドの製造方法。
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