JP5656708B2 - 使用後のエチレンオキシド製造用触媒からの活性成分の回収方法及び回収された成分を用いた触媒の製造方法。 - Google Patents

使用後のエチレンオキシド製造用触媒からの活性成分の回収方法及び回収された成分を用いた触媒の製造方法。 Download PDF

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Description

本発明は、使用後のエチレンオキシド製造用触媒からの活性成分の回収方法、特に助触媒成分の回収方法及び当該回収方法により回収された助触媒成分を用いた触媒の製造方法に関するものである。
エチレンを銀触媒の存在下で分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化してエチレンオキシドを製造することは工業的に広く行われている。この接触気相酸化に用いる銀触媒については、その担体、担持方法、反応促進剤の種類やその添加量などに関し、多くの技術が提案されている。銀を主成分に用い他成分として、レニウムその化合物及びアルカリ金属等の他の金属、その化合物を用いるものが多く提案されている(引用文献1)。触媒成分と担体との組合せとして、銀金属と、レニウム、タングステン、モリブデンまたはその化合物と、ルビジウムまたはセシウムの一部をカリウムで置換した成分とを、500m/kg以上の表面積を有する担体上に堆積してなるエチレンオキシド製造用触媒組成物が開示される(引用文献2)。
これらの触媒は使用により劣化し活性および選択性が低下するものであるが、活性および選択性が劣化した触媒を単純に交換することは触媒製造の費用が掛かり、省エネルギーおよび省資源が期待される現在にあっては好ましい手段とはいえないものである。当該省エネルギーおよび省資源を目的とし触媒を回収し再使用する技術が提案されている。例えば、使用により一定量エチレンオキシドを製造した触媒を劣化したものと考え、当該触媒を水、酸、塩基、過酸化物、有機希釈剤などの水性媒体を用いて助触媒成分であるレニウムを回収し、イオン交換しレニウムを抽出し、単独又は他の成分と共に触媒担体に堆積させることで触媒を調製するものである(引用文献3)。しかし、当該文献には現実に触媒が劣化しているか否かまでは検証せず、アルキレンオキシドの製造量により触媒回収とするか否かを決定しているので、触媒自体は劣化しておらず不要の処理をしているおそれがある。
また、触媒が劣化した場合、劣化要因により再生すべき触媒成分が新たな化合物を形成し触媒成分の回収が困難となることが生じるおそれがある。
特開昭63−126552号 特表2006−521927号 特表2009−521322号
本発明は、触媒劣化時期の適切な把握、劣化した触媒成分の回収方法、触媒への再使用について、好適な方法を提案することにある。特に適切な触媒劣化時点を把握し、劣化要因を除去し再度、触媒原料として再生することにある。
本発明者らは、当該課題を解決するために鋭意検討の結果、下記手順を見出し、触媒を再生使用することができる技術を完成した。以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、銀と、レニウムと、アルミナと、シリカおよびセシウムと、さらにタングステン、モリブデン、クロムおよびバナジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素(活性助剤A)とを含むエチレンオキシド製造用触媒を用いて、エチレン、分子状酸素及び塩素化合物を含む原料ガスを流通させてエチレンオキシドを製造した後の使用済み触媒からレニウム及びセシウムを回収する方法であって、当該使用済み触媒に含まれる塩素量(Cl換算)が0.05質量%以上となった触媒を、25℃での比抵抗が1μS/cm未満である水を用い、20〜100℃の水で0.1〜10時間処理し、水で回収されたレニウム及びセシウムが分離あるいは精製されないことを特徴とするレニウム及びセシウムを回収する方法である。更に、当該方法により回収した成分を用いて触媒を製造するものである。

本発明は、適切な触媒劣化時点を把握し、劣化要因を除去し再度、触媒原料として再生することにある。
本発明を更に詳細に説明するが、本発明の効果を奏するものであれば以下に特定されるものに限定されるものではない。
本発明の回収対象となる触媒は、銀と、レニウムと、アルミナと、シリカおよびセシウムと、さらにタングステン、モリブデン、クロムおよびバナジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素(活性助剤A)とを含むエチレンオキシド製造用触媒に、エチレン、分子状酸素及び塩素化合物を含む原料ガスを流通させてエチレンオキシドを製造した後の使用済み触媒であって、当該使用済み触媒に含まれる塩素量(Cl換算)が0.05質量%以上となった触媒である。
触媒の技術的な特徴は、触媒に対して塩素(Cl換算)が0.05質量%以上、好ましくは0.05〜5質量%、更に好ましくは0.06〜2質量%付着したことで触媒の活性および選択性が低下したことにある。当該エチレンオキシド製造において、塩素化合物は触媒性能を制御するために不可欠な成分ではあるが、その一方で、塩素化合物の継続的な供給は触媒表面に塩素化合物を過剰に堆積させ、これが触媒性能を低下させる因子となっている。そこで、使用した触媒の塩素量を測定し、触媒劣化について的確に把握することができる。塩素付着量の測定方法は、随時触媒を抜き出し塩素量を測定すること、予め同一触媒組成の触媒に反応と同一条件で付着させた塩素量を測定し、Cl換算で0.05質量%以上付着する条件を予想し、触媒を抜き取り触媒中の塩素量を測定することができる。なお、当該触媒中の塩素量は後述する諸数値の項に記載された手法により測定された値である。
当該エチレンオキシドの製造に使用する触媒は、エチレン、分子状酸素及び塩素化合物を含む原料ガスを用いてエチレンオキシドを製造する触媒であって、銀と、レニウムと、アルミナと、シリカ及びセシウムと、さらにタングステン、モリブデン、クロムおよびバナジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素(活性助剤A)とを含むエチレンオキシド製造用触媒であれば何れの触媒であっても良い。
−担体−
具体的には、アルミナ及びシリカを主成分とするものである。これらを含むものであれば何れのもであってもよいが、担体におけるアルミナはα−アルミナが好ましく、その含有量は担体全質量に対して70質量%以上であることが好ましく、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上である。α−アルミナが担体に含まれる上限値はケイ素(Si)など担体に含まれる他の成分を除いた量であり、担体全質量に対して99.85%である。
当該担体に含まれるα−アルミナ、Si分以外の成分としては、本発明にかかる触媒に悪影響を及ぼさないものであれば何れのものであっても良く、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属ならびにこれらの酸化物、遷移金属およびこの酸化物などが挙げられる。これらの含有量については、特に制限はない。
担体は、ケイ素(Si)を、全担体質量に対してSiO換算で0.1〜3.0質量%含むものであり、このような量でケイ素を含むことにより、レニウム、セシウム、タングステン、モリブデン、クロム、バナジウムの触媒機能低下を抑制・防止でき、高選択率を長期間安定的に維持できるという利点がある。好ましくは、担体中のSi含有量(SiO換算)は、担体の全質量100質量%に対して、0.1〜2.7質量%、より好ましくは0.5〜2.5質量%である。なお、担体中のSi含有量(SiO換算)が上記下限を下回る場合には、十分な寿命安定性が得られないおそれがあり、逆に上限を超える場合には、初期から高い選択率が得られないおそれがある。
担体の比表面積(BET比表面積)は、0.6〜3.0m/gである。このような担体を使用することにより、触媒成分を十分量担持しつつ、レニウム、セシウム、タングステン、モリブデン、クロム、バナジウムの触媒成分の移動を抑制・防止でき、性能低下を抑えることができる利点がある。好ましくは、担体の比表面積(BET比表面積)は、0.6〜2.5m/g、更に好ましくは0.65〜2.0m/gである。なお、担体の比表面積が上記下限を下回ると、吸水率が充分に確保できず、触媒成分の担持が困難になるおそれがある。逆に、担体の比表面積が上記上限を超える場合には、熱的な劣化などで触媒成分が移動し、反応前と比較して反応中の触媒の担持状態が変化しやすいため、触媒性能の低下度合いが大きくなるおそれがある。なお、本明細書において、「比表面積」は、BET比表面積を表わす。ここで、「BET比表面積」は、B.E.T.法により測定され、具体的には、後述する諸数値測定の項に記載された手法により測定される値である。
なお、上述した担体の組成や各成分の含有量は、蛍光X線分析法を用いて決定できる。具体的には、後述する諸数値の項に記載された手法により測定された値である。
担体の形状は、特に制限されず、リング状、球状、円柱状、ペレット状のほか、従来公知の知見が適宜参照されうる。また、担体のサイズ(平均直径)についても特に制限はなく、好ましくは3〜20mmであり、より好ましくは4〜10mmである。
担体の細孔容積も特に制限されないが、好ましくは0.1〜1.0mL/gであり、より好ましくは0.2〜0.8mL/gであり、さらに好ましくは0.3〜0.6mL/gである。担体の細孔容積が0.1mL/g以上であれば、触媒成分の担持が容易となるという点で好ましい。一方、担体の細孔容積が1.0mL/g以下であれば、担体の強度が実用的な程度に確保されうるという点で好ましい。なお、担体の細孔容積の値としては、水銀圧入法により、200℃にて少なくとも30分間脱気した担体をサンプルとし、測定装置としてオートポアIII9420W(株式会社島津製作所製)を用い、1.0〜60,000psiaの圧力範囲及び60個の測定ポイントで測定される値を採用するものとする。
担体の有する細孔のサイズも特に制限されないが、平均細孔直径は、好ましくは0.1〜10μmであり、より好ましくは0.2〜4.0μmであり、さらに好ましくは0.3〜3.0μmである。平均細孔直径が0.1μm以上であれば、エチレンオキシド製造時の生成ガスの滞留に伴うエチレンオキシドの逐次酸化が抑制されうる。一方、平均細孔直径が10μm以下であれば、担体の強度が実用的な程度に確保されうる。なお、平均細孔直径の値としては、担体の細孔容積の測定方法として上述した手法(水銀圧入法)と同様の手法により測定される値を採用するものとする。
担体の吸水率についても特に制限はないが、好ましくは10〜70%であり、より好ましくは20〜60%であり、さらに好ましくは30〜50%である。担体の吸水率が10%以上であれば、触媒成分の担持が容易となる。一方、担体の吸水率が70%以下であれば、担体の強度が実用的な程度に確保されうる。なお、担体の吸水率の値としては、後述する諸数値測定の項に記載された手法により測定された値である。
−触媒成分−
本発明の触媒は、上述した担体上に、少なくとも銀(Ag)、セシウム(Cs)及びレニウム(Re)を含む触媒成分が担持されてなる構成を有する。
上記触媒成分のうち、銀が、主として触媒活性成分としての役割を担う。ここで、銀の含有量(担持量)は、特に制限されず、エチレンオキシドの製造に有効な量で担持すればよい。また、銀の含有量(担持量)は、特に制限されないが、エチレンオキシド製造用触媒の質量基準で(担体及び触媒成分の合計質量基準で;以下、同様)、1〜30質量%であり、好ましくは5〜20質量%である。このような範囲であれば、エチレンを分子状酸素含有ガスにより気相酸化してエチレンオキシドを製造する反応を効率よく触媒化できる。
レニウム(Re)、セシウム(Cs)は、一般に、銀の反応促進剤として作用する。
レニウムの含有量(担持量)は、特に制限されないが、エチレンオキシド製造用触媒の質量基準で、50〜2000ppmであり、好ましくは100〜1000ppmである。このような範囲であれば、エチレンを分子状酸素含有ガスにより気相酸化してエチレンオキシドを製造する反応を有効に促進できる。特にレニウムは触媒の選択性の点で重要な要素であると考えられる。このため、上記範囲にレニウム量を制御することによって、触媒の選択性を有効に向上できる。Reが上記範囲を超えると、選択率の上昇が認められなくなるだけでなく、反応温度を高くする必要があるため、寿命性能に悪影響を及ぼす可能性がある。
セシウムの含有量(担持量)は、特に制限されないが、エチレンオキシド製造用触媒の質量基準で、100〜5000ppmであり、好ましくは500〜4000ppmである。このような範囲であれば、エチレンを分子状酸素含有ガスにより気相酸化してエチレンオキシドを製造する反応を有効に促進できる。
本発明の触媒は、上記触媒成分に加えて、他の触媒成分を含んでもよい。ここで、他の触媒成分としては、特に制限はなく、例えばタングステン、モリブデン、クロム、バナジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素(活性助剤A)である。これら活性助剤Aも銀の反応促進剤として作用する。このような他の触媒成分の含有量(担持量)は、本発明による触媒成分の効果を阻害しない限り特に制限されないが、好ましくはエチレンオキシド製造用触媒の質量基準で、10〜1000ppmである。
−担体調製手順−
本発明に係る担体の調製方法としては、特に制限されないが、例えば、次のような調製方法を採用することで、担体の物性が制御できる。すなわち、(1)α−アルミナを主成分とする母粉体に、所望のサイズおよび量の気孔形成剤を添加する方法、(2)物性の異なる少なくとも2種の母粉体を所望の混合比で調合する方法、(3)担体を所望の温度にて所望の時間焼成する方法、などが挙げられる。なお、これらの方法は、単独で使用されてもよいが、これらを適宜組合せてもよい。これらの調製方法については、例えば、「多孔質体の性質とその応用技術」竹内雍監修、株式会社フジ・テクノシステム発行(1999年)に記載されている。また、特開平5−329368号公報、特開2001−62291号公報、特開2002−136868号公報、特許第2983740号公報、特許第3256237号公報、特許第3295433号公報なども参照されうる。または、本発明に係る特定の組成および物性を有する担体を担体の製造業者に注文することによって得てもよい。
以下、本発明に係る担体の調製方法の好ましい形態を記載する。しかし、本発明は、下記の好ましい実施形態に限定されず、適宜修飾してあるいは他の公知の方法に本発明に係る担体を製造できる。
少なくともα−アルミナを主成分とするα−アルミナ粉体およびバインダーと、シリカを提供する原料としてのケイ素化合物、他に気孔形成剤と、適当量の水とを加えて十分混練し、押出形成法等により所定の形状、例えば、球状、ペレット状等に成形したのち、必要に応じ乾燥し、ヘリウム、窒素、アルゴン等の不活性ガスおよび/または空気等のガス雰囲気下で焼成することにより担体前駆体が得られる。
α−アルミナ源としては、α−アルミナ粉体を用いることができ、純度が90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上、特に好ましくは99.5%以上のものである。なお、純度が100%であっても良い。α−アルミナ粉体のほかに、酸化アルミナ、特に無定形のアルミナ、シリカ、シリカアルミ、ムライト、ゼオライトなど(これらを「無定形アルミナ等」と総称する);酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化セシウムなどのアルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物など(これらを「アルカリ等」と総称する);酸化鉄、酸化チタンなどの遷移金属酸化物を含んでいてもよい。
なお、担体を成型体にする前の原料α−アルミナ粉体には、微量ながらナトリウム(酸化ナトリウム)が含まれていることがある。この場合には、予めその粉体中のナトリウム量を把握することにより、特定量のナトリウム含有量となるように、担体調製時にナトリウム化合物を添加し、担体を得ることができる。同様に本発明で特定するSi含有量となるように下記ケイ素化合物を考慮しつつ上記アルミナ源を選定することも必要である。
また、担体原料のα−アルミナ粉体の粒径に関しても特に制限はないが、α−アルミナ粉体の一次粒子径は、好ましくは0.01〜100μmであり、より好ましくは0.1〜20μmであり、さらに好ましくは0.5〜10μmであり、特に好ましくは1〜5μmである。また、α−アルミナ粉体の二次粒子径は、好ましくは0.1〜1,000μmであり、より好ましくは1〜500μmであり、さらに好ましくは10〜200μmであり、特に好ましくは30〜100μmである。
上記ケイ素化合物としては、酸化ケイ素、シリカゾル、窒化ケイ素、炭化ケイ素、シラン、硫化ケイ素などの共有結合化合物;ケイ酸ナトリウム、ケイ酸アンモニウム、アルミノケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸アンモニウム、リンケイ酸ナトリウム、リンケイ酸アンモニウムなどのケイ酸塩類;長石、粘土などのケイ素を含むシリカの複塩;およびシリカ混合物を挙げることができる。このなかでも、酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、粘土などのケイ素を含むシリカの複塩などを使用することが好ましい。ここで、ケイ素化合物の添加量は、上記したようなSi含有量(SiO換算)となるような量に調節される。
上記バインダーは、滑性を付与することによって押出工程を容易にせしめる。無機バインダーには、特に硝酸または酢酸のようなペプタイザーと組合せたアルミナゲルが含まれる。有機バインダーとしては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチまたはそのアルカリ金属塩などを挙げることができる。この中でも、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどを使用することが好ましい。
気孔形成剤は、焼成時に担体から完全に除去されて、該担体中に制御された気孔が残るように混合物に添加される材料である。これらの材料は、コークス、炭素粉末もしくはグラファイトのような炭素系材料、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンもしくはポリカーボネート等のような粉末プラスチック、セルロースもしくはセルロース基を含む材料のような多糖類、おが屑もしくは堅果の殻(カシュー、くるみ等の殻)のような他の植物材料、のような炭質材料である。炭素基材バインダーもまた気孔形成剤として役に立つことができる。
これらの材料を上記手順により担体前駆体とした後、これを、ヘリウム、窒素、アルゴン等の不活性ガスおよび空気等のガス雰囲気下で1,000〜1,800℃、好ましくは1,400〜1,700℃で焼成することにより、本発明に係る担体を製造することができる。
担体の表面積は、α−アルミナを主成分とする粉体の表面積、バインダー成分、焼成温度等を適宜選択することにより、適宜本発明の範囲内に収まるように調整すればよい。
また、担体中のシリカ含有量は、α−アルミナを主成分とする粉体およびケイ素化合物に含まれるシリカ量から算出することができる。担体中のナトリウム含有量は、ケイ素化合物、有機バインダーおよびα−アルミナに含まれるナトリウム量を勘案し調整すればよい。更には、このようにして得られたSiO、NaOを含有する担体に、ケイ素化合物、ナトリウムを含有する化合物を後含浸することで含有量を調整してもよいが、担体調製時にシリカおよびナトリウム化合物を添加することもできる。
また、本発明のエチレンオキシド製造触媒用担体の形状には特に制限はなく、エチレンオキシド製造触媒の調製に一般に用いられている担体の形状、例えば、リング状、サドル状、球状、ペレット状などから、圧力損失、強度などの工業的なポイントを考慮して適宜選択することができる。
−諸数値測定−
(1)担体の比表面積の測定
担体を粉砕した後、0.85〜1.2mmの粒径に分級したもの約2.0gを正確に秤量した。秤量したサンプルを200℃にて少なくとも30分間脱気した後、BET(Brunauer−Emmet−Teller)法により測定できる。
(2)シリカ(SiO)等含有量の測定
蛍光X線分析法を用いて行った。測定装置としてRIX2000(株式会社リガク製)を用いて、ファンダメンタルパラメータ法(FP法)および検量線法にて測定した。
(3)銀、レニウム、セシウム、活性助剤A(タングステン、モリブデン等)、および塩素の含有量(担持量)の測定
上記と同じ蛍光X線分析法を用いて行った。
(4)担体の吸水率の測定
日本工業規格(JIS R 2205(1998))に記載の方法に準拠して、以下の手法により測定した。
a)担体を、120℃に保温した乾燥機中に入れ、恒量に達した際の質量を秤量した(乾燥質量:W1(g))。
b)上記a)で秤量した担体を水中に沈めて30分間以上煮沸した後、室温の水中にて冷却し、飽水サンプルとした。
c)上記b)で得た飽水サンプルを水中から取り出し、湿布ですばやく表面を拭い、水滴を除去した後に秤量した(飽水サンプル質量:W2(g))。
d)上記で得られたW1およびW2を用い、下記数式1に従って、吸水率を算出した。
−使用後にレニウムおよびセシウム回収に供する触媒の製造方法−
次に、上記したように製造された本発明に係る担体を用いて、使用後にレニウムおよびセシウム回収に供するエチレンオキシド製造用触媒を製造するが、その製造方法は、上記したような担体を使用する以外は、従来公知のエチレンオキシド製造用触媒の製造方法に従って製造されうる。以下、本発明にかかる好ましい触媒の実施形態を記載する。しかし、本発明は、下記の好ましい実施形態に限定されず、適宜修飾してあるいは他の公知の方法に本発明に係る担体を使用することによって、触媒を製造できる。
まず、各成分の前駆体を適当な溶媒に溶解し触媒前駆体溶液を調製する。ここで、各成分の前駆体としては、溶媒に溶解する形態であれば特に制限されないが、例えば、銀の場合には、硝酸銀、炭酸銀、シュウ酸銀、酢酸銀、プロピオン酸銀、乳酸銀、クエン酸銀、ネオデカン酸銀などが挙げられる。これらのうち、シュウ酸銀、硝酸銀が好ましい。
また、レニウムの場合には、過レニウム酸アンモニウム、過レニウム酸ナトリウム、過レニウム酸カリウム、過レニウム酸、酸化レニウム、過レニウム酸セシウムなどが挙げられる。これらのうち、過レニウム酸アンモニウム、過レニウム酸セシウムが好ましい。
セシウムの場合には、セシウムの、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、硫酸塩、過レニウム酸塩、モリブデン酸塩などが挙げられる。これらのうち、硝酸セシウム、過レニウム酸セシウム、タングステン酸セシウム、モリブデン酸セシウムが好ましい。
タングステンの場合は、酸化タングステン、タングステン酸、タングステン酸塩、リンタングステン酸、ケイタングステン酸などのヘテロポリ酸および/またはヘテロポリ酸の塩などが挙げられる。これらのうち、メタタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸セシウム、パラタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸セシウム、リンタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸セシウム、ケイタングステン酸アンモニウム、ケイタングステン酸セシウムが好ましい。
モリブデンの場合には、酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸塩、その他、ケイモリブデン酸、リンモリブデン酸などのヘテロポリ酸および/またはヘテロポリ酸の塩などが挙げられる。これらのうち、パラモリブデン酸アンモニウム、パラモリブデン酸セシウム、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸セシウム、ケイモリブデン酸アンモニウム、ケイモリブデン酸セシウムが好ましい。
クロムの場合は、酸化クロム、クロム酸、クロム酸塩、二クロム酸、二クロム酸塩などが挙げられる。これらのうちクロム酸アンモニウム、クロム酸セシウム、二クロム酸アンモニウム、二クロム酸セシウムが好ましい。
バナジウムの場合は、五酸化バナジウム、メタバナジン酸、メタバナジン酸塩が挙げられる。これらのうち、メタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸セシウムが好ましい。
上記の活性助剤(タングステン、モリブデン、クロム、バナジウム)は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、上記各触媒成分の添加量は、上記した所定の触媒組成となるように適宜決定できる。
上記各触媒成分の前駆体を溶解する溶媒もまた、各触媒成分を溶解できるものであれば特に制限されない。具体的には、水、メタノール、エタノールなどのアルコール類、トルエンの芳香族化合物などが挙げられる。これらのうち、水、エタノールが好ましい。
ここで、触媒前駆体溶液は、上記触媒成分に加えて、必要に応じて、錯体を形成するための錯化剤をさらに溶媒に添加してもよい。錯化剤としては、特に制限されないが、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどが挙げられる。上記錯化剤単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
次いで、このように調製された触媒前駆体溶液を、上記で準備した担体に含浸させる。ここで、上記触媒前駆体溶液は、触媒前駆体溶液毎に別々に調製して、担体に順次含浸してもあるいは各触媒前駆体を一つの溶媒に溶解して、一つの触媒前駆体溶液とし、これを担体に含浸してもよい。
続いて含浸後の担体を乾燥し、焼成する。乾燥は、空気、酸素、または不活性ガス(例えば、窒素)の雰囲気中で、必要であれば減圧下で、80〜120℃の温度で行うことが好ましい。また、焼成は、空気、酸素、または不活性ガス(例えば、窒素)の雰囲気中で、100〜800℃の温度で、好ましくは100〜600℃の温度で0.1〜100時間、好ましくは0.1〜10時間程度行うことである。なお、焼成は、1段階のみ行われてもよいし、2段階以上行われてもよい。好ましい焼成条件としては、1段階目の焼成を空気雰囲気中で100〜250℃にて0.1〜10時間行い、2段階目の焼成を空気雰囲気中で250〜450℃にて0.1〜10時間行う条件が挙げられる。さらに好ましくは、かような空気雰囲気中での焼成後にさらに、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンなど)雰囲気中で450〜800℃にて0.1〜10時間、焼成を行ってもよい。
−エチレンオキシドの製造方法−
エチレン、分子状酸素及び塩素化合物を含む原料ガスを、気相酸化によりエチレンオキシドを製造するものである。本発明のエチレンオキシドの製造方法は、触媒として本発明のエチレンオキシド製造用触媒を使用する点を除けば、常法に従って行われうる。なお、レニウムの回収に供する触媒によるエチレンオキシドの製造方法も、同様に常法に従って行われうる。
例えば、工業的製造規模における一般的な条件、すなわち反応温度150〜300℃、好ましくは180〜280℃、反応圧力0.2〜4MPa、好ましくは0.9〜3MPa、最も好ましくは1.1〜2.9MPaであり、空間速度は1,000〜30,000hr−1(STP)、好ましくは3,000〜8,000hr−1(STP)である。
触媒に接触させる原料ガスとしては、エチレン0.5〜40容量%、分子状酸素3〜10容量%、塩素化合物0.1〜10容量ppmを含み、他に炭酸ガス1〜30容量%、残部の窒素、アルゴン、水蒸気等の不活性ガスおよびメタン、エタン等の低級炭化水素類を共存させることもできる。
分子状酸素含有ガスとしては、空気、酸素および富化空気が挙げられる。
塩素化合物としては、反応抑制剤として用いられ、例えばエチルクロライド、エチレンジクロライド、ビニルクロライド、メチルクロライドなどの塩化アルキルが挙げられる。
−レニウム及びセシウムの回収方法−
本発明の回収方法は、上記の触媒を用いて、エチレンオキシドを製造し、触媒に塩素量(Cl換算)が0.05質量%以上に達したとき、20〜100℃の水で0.1〜10時間処理するものである。好ましくは、50〜100℃の水で0.1〜3時間処理するものである。水温が20℃未満の場合は、回収効率が低下するだけでなく、使用後の触媒から水に溶出した塩素化合物が低減されず、回収された成分を用いて製造した触媒の性能を低下させるおそれがある。または処理時間が0.1時間未満の場合、回収効率が低下するおそれがある。逆に、処理時間が10時間より長い場合は、回収に多大のエネルギーを要しコスト面で不利となる。
本発明で回収に用いる水は、電解質を実質的に含まないことが好ましい。ここで述べる電解質とは、特に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属およびその塩に由来するイオン種を指す。当該水の比抵抗は25℃で1μS/cm未満であることが好ましく、このような水は脱イオン水、純水、蒸留水などが挙げられる。当該水の比抵抗が25℃で1μS/cmより大きい場合、当該水に回収された成分が当該電解質と不溶性の塩を形成する、あるいは触媒製造工程に当該電解質が持ち込まれ、回収された成分を用いた触媒の性能を低下させるおそれがある。
また回収に用いる水の量は、特に制限はないが、使用後の触媒の質量に対して0.6〜15倍であり、好ましくは0.6〜10倍、より好ましくは0.6〜6倍である。当該水の量が使用後の触媒質量に対して0.6倍未満であれば、回収対象成分の水への溶出が不十分となり回収効率が低下し、15倍より大きければ水を除去するために多大なエネルギーを要しコスト面で不利となる。
このような回収の工程は1回でも良いが、回収効率と回収に要するコストを考慮し、適宜繰り返して行うことも出来る。
水で回収されたレニウムおよびセシウム成分は分離あるいは精製することなく、次の触媒製造工程に供することができる。好ましくは当該触媒製造工程に供するに先立ち回収された液を加熱処理することで回収されたレニウムおよびセシウムを触媒成分として有効に再利用できるものである。当該処理により回収された液に含まれる塩素化合物の影響を最小限にできるものと考えられる。以下に手順を示すと、過剰の水は除去し、次の触媒製造工程で用いる担体の吸水量未満まで濃縮する必要がある。
また、水を完全に除去して蒸発乾固させても良い。過剰の水を除去する工程は、常圧で70〜95℃に加熱して徐々に水を蒸発させても良いが、ロータリーエバポレーターなどの装置を用い、0.001〜0.08MPaの減圧下、40〜60℃の温度で水を蒸発させても良い。水を完全に除去する場合は、上記の工程に加え、さらに、ヘリウム、窒素、アルゴン等の不活性ガスおよび空気等のガス雰囲気下、70〜300℃の温度で乾燥すればよい。当該乾燥温度が70℃未満であれば乾燥が不十分となるおそれがあり、300℃以上であれば回収された成分に含まれるレニウムが昇華するおそれがある。当該乾燥時間は、特に制限はなく、水を除去するために最低限必要な時間だけ実施すればよい。なお、回収されたレニウムおよびセシウム成分の各々の量はICP発光分析法および陽イオンクロマトグラフなどの既知の方法によって決定することが出来る。
−回収されたレニウムおよびセシウム成分を用いた触媒の製造方法−
次に、上記したように製造された本発明に係る回収されたレニウムおよびセシウム成分を用いて、本発明のエチレンオキシド製造用触媒を製造するが、その製造方法は、上記したような担体および回収されたレニウムおよびセシウム成分を使用する以外は、従来公知のエチレンオキシド製造用触媒の製造方法に従って製造されうる。以下、本発明にかかる好ましい触媒の実施形態を記載する。しかし、本発明は、下記の好ましい実施形態に限定されず、適宜修飾してあるいは他の公知の方法に本発明に係る担体および回収されたレニウムおよびセシウム成分を使用することによって、触媒を製造できる。
まず、回収されたレニウムおよびセシウム成分の各々の量を把握し、目的の触媒組成に対して回収した当該成分が不足する場合は、不足分を補う必要がある。なお、回収した当該成分が目的の触媒組成に対して過剰である場合、必要量を適宜分取することもできる。当該不足分の各触媒成分、活性助剤の前駆体を適当な溶媒に溶解して、触媒前駆体溶液を調製する。ここで、各触媒成分、活性助剤の前駆体としては、溶媒に溶解する形態であれば特に制限されない。
例えば、銀の場合には、例えば、硝酸銀、炭酸銀、シュウ酸銀、酢酸銀、プロピオン酸銀、乳酸銀、クエン酸銀、ネオデカン酸銀などが挙げられる。これらのうち、シュウ酸銀、硝酸銀が好ましい。
レニウムの場合は、過レニウム酸アンモニウム、過レニウム酸ナトリウム、過レニウム酸カリウム、過レニウム酸、酸化レニウム、過レニウム酸セシウムなどが挙げられる。これらのうち、過レニウム酸アンモニウム、過レニウム酸セシウムが好ましい。
セシウムの場合には、セシウムの、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、硫酸塩、過レニウム酸塩、タングステン酸塩、モリブデン酸塩などが挙げられる。これらのうち、硝酸セシウム、過レニウム酸セシウム、タングステン酸セシウム、モリブデン酸セシウムが好ましい。
タングステンの場合は、酸化タングステン、タングステン酸、タングステン酸塩、リンタングステン酸、ケイタングステン酸などのヘテロポリ酸および/またはヘテロポリ酸の塩などが挙げられる。これらのうち、メタタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸セシウム、パラタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸セシウム、リンタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸セシウム、ケイタングステン酸アンモニウム、ケイタングステン酸セシウムが好ましい。
モリブデンの場合には、酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸塩、その他、ケイモリブデン酸、リンモリブデン酸などのヘテロポリ酸および/またはヘテロポリ酸の塩などが挙げられる。これらのうち、パラモリブデン酸アンモニウム、パラモリブデン酸セシウム、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸セシウム、ケイモリブデン酸アンモニウム、ケイモリブデン酸セシウムが好ましい。
クロムの場合は、酸化クロム、クロム酸、クロム酸塩、二クロム酸、二クロム酸塩などが挙げられる。これらのうちクロム酸アンモニウム、クロム酸セシウム、二クロム酸アンモニウム、二クロム酸セシウムが好ましい。
バナジウムの場合は、五酸化バナジウム、メタバナジン酸、メタバナジン酸塩が挙げられる。これらのうち、メタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸セシウムが好ましい。
上記活性助剤(タングステン、モリブデン、クロム、バナジウム)は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、上記各成分の添加量は、上記した所定の触媒組成となるように適宜決定できる。
上記各成分の前駆体を溶解する溶媒もまた、各成分を溶解できるものであれば特に制限されない。具体的には、水、メタノール、エタノールなどのアルコール類、トルエンの芳香族化合物などが挙げられる。これらのうち、水、エタノールが好ましい。
ここで、触媒前駆体溶液は、必要に応じて、錯体を形成するための錯化剤をさらに溶媒に添加してもよい。錯化剤としては、特に制限されないが、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどが挙げられる。上記錯化剤単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
次いで、得られた各々の触媒前駆体溶液を混合して1つの溶液とし、この混合された触媒前駆体溶液に回収されたレニウムおよびセシウム成分の溶液を加えて、最終段階の触媒前駆体溶液が得られる。回収されたレニウムおよびセシウム成分が乾燥された固体である場合、混合された触媒前駆体溶液で、乾燥され固化した当該成分を溶解して、最終段階の触媒前駆体溶液を得ることも出来る。
次いで、このように調製された最終段階の触媒前駆体溶液を、上記で準備した担体に含浸させた後、含浸後の担体を乾燥し、焼成する。乾燥は、空気、酸素、または不活性ガス(例えば、窒素)の雰囲気中で、必要であれば減圧下で、80〜120℃の温度で行うことが好ましい。また、焼成は、空気、酸素、または不活性ガス(例えば、窒素)の雰囲気中で、100〜800℃の温度で、好ましくは100〜600℃の温度で0.1〜100時間、好ましくは0.1〜10時間程度行うことである。なお、焼成は、1段階のみ行われてもよいし、2段階以上行われてもよい。好ましい焼成条件としては、1段階目の焼成を空気雰囲気中で100〜250℃にて0.1〜10時間行い、2段階目の焼成を空気雰囲気中で250〜450℃にて0.1〜10時間行う条件が挙げられる。さらに好ましくは、かような空気雰囲気中での焼成後にさらに、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンなど)雰囲気中で450〜800℃にて0.1〜10時間、焼成を行ってもよい。
以下に実施例により更に発明を説明するが、本発明の趣旨に反さない限り以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
−劣化触媒−
エチレンオキシドの製造に用いて劣化した触媒(A)を用意した。当該劣化触媒の組成は、当該触媒1gに対して、触媒成分である銀が14.8質量%(金属換算)、レニウムが360質量ppm(金属換算)、セシウムが2580質量ppm(金属換算)、担体成分として、酸化ナトリウムが0.14質量%、シリカが1.77質量%、及びα−アルミナ(残余成分)である。また当該劣化触媒には塩素化合物が0.12質量%(Cl換算)付着していた。
−回収・触媒調製手順−
(1)当該劣化触媒30gを150mLの沸騰した脱イオン水に投入し100℃で30分間煮沸した後、液(1)を除き、更に新たに沸騰した脱イオン水150mLを投入し100℃で30分間煮沸した後、液(2)を除き、更に新たに沸騰した脱イオン水150mLを投入し100℃で30分間煮沸した後、液(3)を除く。
(2)1Lのフラスコに液(1)〜(3)を集め、ロータリーエバポレーターで水を除去した。さらに、このフラスコを窒素雰囲気下120℃で12時間乾燥し、レニウムおよびセシウムを回収した。回収されたレニウムおよびセシウムは使用後の触媒1gあたり、それぞれ350質量ppm(金属換算)および750質量ppm(金属換算)であった。
(3)10gのシュウ酸銀に、6mLの水、0.0684gの硝酸セシウム、3.4mLのエチレンジアミンを加え、触媒前駆体溶液を調製した。
(4)(2)で乾燥したフラスコに(3)で得られた溶液を入れ、フラスコに付着したレニウムおよびセシウム成分を触媒前駆体溶液に溶解させ、最終段階の触媒前駆体溶液を得た。当該溶液に、担体(シリカを1.91質量%、酸化ナトリウムを0.19質量%含有し、残余がα−アルミナ、吸水率=37.1%)担体26.1gを加え、担体に触媒成分を含浸し、90℃で減圧乾燥した後、空気雰囲気下300℃で0.2時間焼成し、さらに窒素雰囲気下570℃で3時間焼成し回収触媒(B)を得た。当該担体の吸水率は数1により求めることができる。当該触媒Bの銀含有率は14.8質量%(金属換算)、セシウム含有率は2340質量ppm(金属換算)、レニウム含有率は340質量ppm(金属換算)であった。
−触媒評価−
劣化触媒(A)および回収触媒(B)を、それぞれ、0.85〜1.18mmに破砕した。次に、破砕した触媒1.5gを、それぞれ、内径5mm、管長300mmの外部が加熱式の二重管式ステンレス製反応器に充填し、この充填層にエチレン23容量%、酸素7.6容量%、二酸化炭素2.0容量%、エチルクロライド3.2容量ppm、残余が窒素からなるガスを導入し、0.7MPaGで、空間速度5500hr−1の条件で、エチレン転化率が9.0モル%となるようにして反応を行った。下記数式2および数式3に従って、エチレンオキシド製造時の転化率(数式2)および選択率(数式3)を算出した。各触媒の性能を下記表1に示す。
Figure 0005656708
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本発明は触媒成分の回収再使用に関する技術である。特にエチレンオキシドの製造用触媒の助触媒成分を回収し再利用する分野に展開することができる。

Claims (3)

  1. 銀と、レニウムと、アルミナと、シリカおよびセシウムと、さらにタングステン、モリブデン、クロムおよびバナジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素(活性助剤A)とを含むエチレンオキシド製造用触媒を用いて、エチレン、分子状酸素及び塩素化合物を含む原料ガスを流通させてエチレンオキシドを製造した後の使用済み触媒からレニウム及びセシウムを回収する方法であって、当該使用済み触媒に含まれる塩素量(Cl換算)が0.05質量%以上となった触媒を、25℃での比抵抗が1μS/cm未満である水を用い、20〜100℃の水で0.1〜10時間処理し、水で回収されたレニウム及びセシウムが分離あるいは精製されないことを特徴とするレニウム及びセシウムを回収する方法。
  2. 請求項1に記載の方法により回収された分離あるいは精製されないレニウム及びセシウムと、活性助剤Aと、銀とを、溶媒に溶解して触媒前駆体溶液を調製し、次いでアルミナ及びシリカとを含む担体に含浸させた後、含浸後の担体を乾燥し、焼成することにより被覆することを特徴とするエチレンオキシド製造用触媒。
  3. 請求項2で得られた触媒を用いて、エチレン、分子状酸素及び塩素化合物を含む原料ガスを流通させてエチレンオキシドを製造することを特徴とするエチレンオキシドの製造方法。
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