以下、図面を参照して、本発明に係る運転支援装置及び運転支援方法の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施の形態では、本発明を、車両に搭載される運転支援装置に適用する。本実施の形態に係る運転支援装置は、自車両が前方の駐車車両等によって死角ができる危険な場所の側方を通過する際に、死角から飛び出してくる可能性のある仮想の移動体(例えば、人、自転車)との衝突を回避するために、HMI出力や車両制御(ブレーキ制御、操舵制御)等の運転支援を行う。本実施の形態には、2つの形態があり、第1の実施の形態が衝突可能性領域のみを求める形態であり、第2の実施の形態が衝突可能性領域と減速回避可能領域を求める形態である。
図1〜図8を参照して、第1の実施の形態に係る運転支援装置1について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る運転支援装置の構成図である。図2は、運転支援対象の走行シーンの一例である。図3は、側方間隔と通過速度との関係を示す熟練ドライバマップと目標走行状態の一例である。図4は、衝突可能性領域の説明図である。図5は、衝突可能性領域と熟練ドライバマップとの関係図である。図6は、衝突可能性領域の算出方法の説明図である。図7は、側方間隔と飛び出し位置までの距離との関係における衝突可能性領域の一例である。図8は、先行車両が存在する場合の衝突可能性領域の算出方法の説明図である。
運転支援装置1は、熟練ドライバによる運転行動から作成したマップを利用して、駐車車両等の側方を通過する場合の目標走行状態(通過速度、側方間隔)を設定し、自車両が目標走行状態で側方を通過するように運転支援を行う。特に、運転支援装置1では、自車両の車速と仮想移動体の飛び出し速度に基づいて衝突可能性領域を算出し、衝突可能性領域に基づいて運転支援の有無や支援内容を判断する。そのために、運転支援装置1は、環境・操作認識部10とECU[Electronic Control Unit]21(衝突可能性算出部30、目標走行状態決定部31、衝突可能性領域算出部32、自己運転推定部33、支援内容決定部34、制御・支援生成部35、熟練ドライバマップデータベース40)を備えている。
なお、第1の実施の形態では、環境・操作認識部10及び衝突可能性算出部30が特許請求の範囲に記載する移動体特定手段に相当し、衝突可能性領域算出部32が特許請求の範囲に記載する衝突可能性判断情報算出手段に相当し、支援内容決定部34及び制御・支援生成部35が特許請求の範囲に記載する運転支援手段に相当する。
図2には、運転支援装置1による運転支援が適用される走行シーンの一例を示している。自車両MVが走行中に前方の駐車車両PVが存在すると、自車両MVから見て駐車車両PVによって死角領域BAができる。このような死角領域BAに歩行者等の移動体が存在しても、ドライバは視認できない。そこで、このような死角領域BAができるような場所を特定すると、死角領域BAから仮想の移動体が飛び出してくると仮定する。ある時点t0での車速がV0で駐車車両PVとの側方間隔がW0であったとすると、駐車車両PVの側方を安全に通過できる目標走行状態(目標の通過速度Vtと側方間隔Wt)を設定し、通過時にはその目標の通過速度Vtと側方間隔Wtになるように運転支援を行う。
しかし、自車両の車速が低速度になっても飛び出してきた移動体と物理的に衝突してしまうタイミングは存在する。そこで、通過過程において本当に衝突する可能性のあるタイミングの領域と衝突する可能性のないタイミングの領域を設定する。そして、ドライバに特に気をつけて欲しいタイミングにおいて強い運転支援を行い、それ以外のタイミングにおいてはドライバに違和感を与えないような弱い運転支援を行う(あるいは、運転支援を止める)。
なお、自車両から見て死角領域ができるような物体は、駐車車両以外にもある。このような駐車車両以外の物体によってできる死角領域からも、同様に、移動体が飛び出してくる可能性がある。したがって、駐車車両以外のそのような物体も対象とする。また、車道以外の歩道にそのような物体が存在する場合も死角領域はできるので、歩道に存在する物体も対象とする。また、基本的には自車両前方の左側にできる死角領域が対象となるが、道路が対向車線を区画する中央線がないような狭い道路の場合には右側の死角領域から飛び出してくることも考えられるので、自車両前方の右側に死角領域ができるような物体も対象とする。
環境・操作認識部10は、自車両前方の走行環境や自車両の操作状態及び走行状態を認識するセンサ類である。認識対象の自車両前方の走行環境としては、例えば、駐車車両等の死角を形成する物体、先行車両や対向車両があり、自車両との相対的な位置関係(自車両からの奥行き方向の距離、横方向の間隔等)及び物体の大きさ、先行車両や対向車両の場合には移動速度や移動方向等を認識する。それらの走行環境を認識するための外界センサとしては、例えば、レーザレーダ、カメラと画像処理装置がある。認識対象の自車両の操作状態としては、例えば、アクセル開度、ブレーキ油圧、ステアリングホイールの操舵角あるいは転舵輪の舵角がある。これらの操作状態を認識するためのセンサとしては、例えば、アクセル開度センサ、ブレーキの油圧センサ、操舵角センサあるいは舵角センサがある。認識対象の自車両の走行状態としては、例えば、車速、加速度、現在位置、ヨーレートがある。これら走行状態を認識するセンサとしては、例えば、車速センサ(車輪速センサ)、GPS[Global Positioning System]受信装置(あるいは、ナビゲーションシステム)、ヨーレートセンサがある。環境・操作認識部10の各センサでは、一定時間毎に、対象を認識し、その認識情報をECU21に出力する。
ECU21は、CPU[CentralProcessing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等からなる電子制御ユニットであり、運転支援装置1を統括制御する。ECU21には、各アプリケーションプログラムを実行することによって衝突可能性算出部30、目標走行状態決定部31、衝突可能性領域算出部32、自己運転推定部33、支援内容決定部34、制御・支援生成部35が構成され、熟練ドライバマップデータベース40を予め保持している。ECU21は、一定時間毎に、環境・操作認識部10から各種センサからの認識情報を入力し、その認識情報に基づいて各処理部30,31,32,33,34,35での処理を行い、必要に応じてHMI装置やブレーキ制御や操舵制御の車両制御装置(ECU)に運転支援の指令情報を出力する。
熟練ドライバマップデータベース40は、熟練ドライバマップを格納したデータベースである。熟練ドライバマップは、図3に示すように、駐車車両等の側方を通過するときの側方間隔と通過速度との関係を示す曲線Mからなるマップであり、曲線Mの下側の領域内に含まれる側方間隔と通過速度の関係であれば駐車車両等の側方を安全に通過できる。この熟練ドライバマップを作成する場合、安全に駐車車両等の側方を通過する熟練のドライバが駐車車両等の側方を通過する毎に駐車車両等との側方間隔と通過速度を検出し、多数の検出データを用いて側方間隔と通過速度との規範となる関係を求める。単一の熟練ドライバによるデータでもよいが、複数の熟練ドライバによるデータを収集したほうがよい。
衝突可能性算出部30では、環境・操作認識部10による自車両前方の走行環境の認識情報に基づいて自車両前方に死角できるような物体(駐車車両等)が存在するか否かを判断する。そして、衝突可能性算出部30では、自車両前方に死角できるような物体が存在すると判断した場合にはその危険な場所を特定し、自車両との相対的な位置関係(自車両から物体までの奥行き方向の距離、自車両と物体との側方間隔等)及び仮想移動体の飛び出し位置(自車両からの奥行き方向の距離)を算出する。仮想移動体の飛び出し位置は、死角領域における自車両側に最も近い位置までの距離とし、例えば、駐車車両の場合、駐車車両における自車両から奥側の先端位置までの距離とする(自車両から駐車車両までの奥行き方向の相対距離に駐車車両の全長を加算した距離とする)。そして、衝突可能性算出部30では、その仮想移動体の飛び出し位置と自車両の現在の車速に基づいて飛び出し位置に自車両が到達するまでの時間を算出し、その時間に基づいて死角領域から仮想移動体が飛び出してきた場合の衝突の可能性を示す衝突確率を算出する。この衝突確率を算出する手法は、従来の手法を適用する。
目標走行状態決定部31では、衝突可能性算出部30で算出した衝突確率が所定の確率以上の場合(例えば、衝突確率が0%でない場合)、熟練ドライバマップデータベース40を参照し、危険な場所を通過するときの目標走行状態(側方間隔、通過速度)を設定する。例えば、目標の側方間隔を現在の側方間隔とし、目標の通過速度として熟練ドライバマップの曲線の下側の領域内に入る通過速度を設定したり、現在の側方間隔が所定の間隔よりも狭い場合には目標の側方間隔をその所定の間隔よりも広くなる側方間隔とし、その目標の側方間隔に応じて目標の通過速度として熟練ドライバマップの曲線の下側の領域内に入る通過速度を設定する。図3に示す例の場合、現在の側方間隔がW0、通過速度がV0であり、目標の側方間隔をW0よりも広げたWtとし、その目標の側方間隔Wtに応じて目標の通過速度を熟練ドライバマップの曲線Mの下側の領域内に入るVtとしている。なお、図3に示すWmは、自車両が最大横移動可能な側方間隔である。
ここで、図4を参照して、衝突可能性領域について説明する。自車両MVの現在の車速V0、仮想移動体IMの飛び出し速度VI、側方間隔の関係によって、仮想移動体IMが飛び出した場合に自車両MVと衝突する可能性のあるタイミングがあり、その可能性のあるタイミングの領域を衝突可能性領域CAとする。この衝突可能性領域CA内を自車両MVが走行している場合、仮想移動体IMが飛び出すと自車両MVと衝突する可能性があるので、強い運転支援が必要となる。衝突可能性領域CAよりも手前側の領域は、仮想移動体IMが飛び出しても仮想移動体IMが先に自車両MVの前を通過する領域AAである。この領域AA内を自車両MVが走行している場合、自車両MVが車速を上げたりすると衝突する可能性がでてくるので、ある程度の運転支援が必要となる。また、衝突可能性領域CAよりも奥側の領域は、仮想移動体IMが飛び出しても自車両MVが先に仮想移動体IMの前を通過する領域PAである。この領域PA内を自車両MVが走行している場合、仮想移動体IMが飛び出しても自車両MVが先に通過しているので、運転支援を止めるかあるいはドライバに違和感を与えない程度の弱い注意喚起程度でよい。なお、図4には、自車両MVの現在の側方間隔W0のときの衝突可能性領域CA、領域AA、領域PAを示しており、自車両の現在の車速V0が同じ場合でも側方間隔が変わると衝突可能性領域の位置が変わる。
衝突可能性領域は、自車両MVの現在の車速V0と仮想移動体IMの飛び出し速度VIを用いて求めることができ、側方間隔と飛び出し位置までの距離との関係において領域が設定される。仮想移動体IMの飛び出し速度VIについては、実験等によって予め求めた固定値を設定する。この飛び出し速度VIが速い速度に設定するほど、衝突可能性領域は飛び出し位置から近い位置となり、領域の長さが短くなる。また、自車両MVの現在の車速V0が速い速度ほど、衝突可能性領域は飛び出し位置から遠い位置となり、領域の長さが長くなる。側方間隔が広いほど、衝突可能性領域は飛び出し位置から遠い位置となる。
図5に、衝突可能性領域と熟練ドライバマップとの関係を示す。衝突可能性領域は、上記したうように、側方間隔と飛び出し位置までの距離との関係において設定され、側方間隔が広いほど飛び出し位置から離れた位置となる。したがって、熟練ドライバマップMに基づいて目標走行状態として広い側方間隔が設定されるほど、衝突可能性領域は飛び出し位置から離れた位置となる。また、熟練ドライバマップMに基づいて目標走行状態として低い通過速度が設定されるほど、自車両の車速が低くなるので、衝突可能性領域は飛び出し位置から近い位置となり、領域の長さが短くなる。
衝突可能性領域算出部32では、環境・操作認識部10で認識した自車両の現在の車速V0と予め設定されている仮想移動体の飛び出し速度VIを用いて、衝突可能性領域を算出する。ここでは、一定時間毎に環境・操作認識部10から現在の車速V0が出力される毎あるいは現在の車速V0の値が変わる毎に、衝突可能性領域を算出する。
図6を参照して、駐車車両PVの死角から仮想移動体IMが飛び出してくる場合の衝突可能性領域の算出方法の一例を説明する。ここでは、簡単にするために、自車両MVと仮想移動体IMとの衝突は自車両MVの先端部のみで起こることとする。自車両MVの左側端と駐車車両PVの右側端との間隔をd1とし、自車両MVの右側端と駐車車両PVの右側端との間隔をd2とする。この場合、仮想移動体IMが飛び出してから衝突するまでの最短時間をtminとすると、最短時間は自車両MVの先端部における左側端で衝突する場合であるので、tmin=d1/VIとなる。また、衝突するまでの最長時間をtmaxとすると、最長時間は自車両MVの先端部における右側端で衝突する場合であるので、tmax=d2/VIとなる。その各時間tmin,tmaxの間に自車両MVの先端部が飛び出し位置SPに到達すると、自車両MVと仮想移動体IMとが衝突する。そこで、衝突する場合の最短時間tminに対する飛び出し位置SPからの最短距離をLminとすると、Lmin=V0×tminとなる。また、衝突する場合の最長時間tmaxに対する飛び出し位置SPからの最長距離をLmaxとすると、Lmax=V0×tmaxとなる。この場合、衝突可能性領域は、飛び出し位置SPからの距離がLmin〜Lmaxの範囲となる。自車両MVがLmin〜Lmaxの間を走行している場合、仮想移動体IMが飛び出してくと正面衝突する。この算出方法に従って、各側方間隔(例えば、0.5m毎の側方間隔)でLminとLmaxをそれぞれ算出し、その側方間隔毎のLminとLmaxから側方間隔と飛び出し位置までの距離との関係における衝突可能性領域を求めることができる。ちなみに、側方間隔は上記のd1であり、側方間隔+自車両MVの全幅がd2である。
図7には、自車両MVの現在の車速V0が50km/h、仮想移動体IMの飛び出し速度VIが0.5m/sの場合の側方間隔と飛び出し位置までの距離との関係における衝突可能性領域CAを示している。図7に示す黒三角が各側方間隔における飛び出し位置SPからの最短距離Lminであり、黒四角が各側方間隔における飛び出し位置SPからの最長距離Lmaxである。その各側方間隔の最短距離Lminを結んだ線と各側方間隔の最長距離Lmaxを結んだ線とによって衝突可能性領域CAは形成される。衝突可能性領域CAよりも飛び出し位置からの距離が遠い側の領域が、仮想移動体IMが飛び出しても仮想移動体IMが先に自車両MVの前を通過する領域AAである。また、衝突可能性領域CAよりも飛び出し位置からの距離が近い側の領域が、仮想移動体IMが飛び出しても自車両MVが先に仮想移動体IMの前を通過する領域PAである。
上記のように自車両の現在の車速V0から衝突可能性領域を算出できるが、自車両前方の先行車両や対向車両が存在する場合、移動体が飛び出せないタイミングがあり、この飛び出せないタイミングを考慮すると衝突可能性領域が変わる。例えば、自車両前方に先行車両が存在する場合、先行車両が目の前を通過しているときや先行車両と自車両との間隔が狭いときには、移動体は飛び出さない。自車両前方に対向車両が存在する場合も、同様に、移動体は飛び出さない。このような場合を考慮すると、先行車両や対向車両と自車両との位置関係によっては、上記で算出した領域よりも衝突可能性領域は狭くなる場合がある。そこで、衝突可能性領域算出部32では、環境・操作認識部10で先行車両又は/及び対向車両を認識している場合、自車両と先行車両又は/及び対向車両との相対距離を用いて衝突可能性領域を再算出(補正)する。
図8を参照して、先行車両が存在する場合の衝突可能性領域の再算出方法の一例を説明する。ここでは、自車両MVと先行車両FVとの車速距離をd3とする。自車両MVと仮想移動体IMとが正面衝突するのは、車間距離d3が広く、車間距離d3内に最短距離Lmin〜最長距離Lmaxが入ってしまった場合である。そこで、先行車両FVが仮想移動体IMの前を通過し、車間距離d3内に最短距離Lmin〜最長距離Lmaxが入っているときには、仮想移動体IMが飛び出さないと仮定し、衝突可能性領域を再算出する。車間距離d3が最長距離Lmaxより長い場合、衝突可能性領域をLmin〜Lmaxの範囲とする。車間距離d3が最長距離Lmax以下かつ最短距離Lminより長い場合、衝突可能性領域をLmin〜d3の範囲とする。車間距離d3が最短距離Lmin以下の場合、衝突可能性領域な無しとする。この再算出方法に従って、各側方間隔でのLminとLmaxに対して衝突可能性領域の各範囲を再算出し、その側方間隔毎のその各範囲から側方間隔と飛び出し位置までの距離との関係における衝突可能性領域を求めることができる。なお、対向車両が存在する場合も自車両と対向車両との相対距離を用いて上記と同様に衝突可能性領域の再算出できる。
なお、各側方間隔についてLmin,Lmaxを算出して、側方間隔と飛び出し位置からの距離との関係における領域として衝突可能性領域を算出したが、少なくとも自車両MVの現在の側方間隔W0での飛び出し位置からの最短距離Lminと最長距離Lmaxからなる範囲の衝突可能性領域だけ判ればよいので、自車両MVの現在の側方間隔W0での最短距離Lminと最長距離Lmaxだけを算出するようにしてもよい。
自己運転推定部33では、環境・操作認識部10で認識した自車両の操作状態や走行状態に基づいて、自車両のドライバの運転状態を推定する。運転支援装置1における運転支援では目標走行状態決定部31で設定した目標走行状態になるように減速や操舵に対する支援を行う。この際、自車両のドライバの運転状態によっては、運転支援を変える必要がある。例えば、減速支援している場合、ドライバが減速操作を行っているときと加速操作を行っているときとでは減速を促すHMIやアシストブレーキのブレーキ制御が異なる。そこで、ドライバの運転状態を推定しておく。推定するドライバの運転状態としては、例えば、ドライバが減速操作中かあるいは加速操作中かあるいは無操作中、右操舵操作中かあるいは左操舵操作中かあるいは直進操作中かがある。
支援内容決定部34では、基本的には、目標走行状態決定部31で目標走行状態が設定されている場合、目標走行状態になるための運転支援を行うと決定し、目標走行状態が設定されたときに運転支援を開始し、目標走行状態が達成されると運転支援を終了する。目標の通過速度になるための運転支援としては減速を促すHMI、HMIよりより強い支援としてブレーキ制御によるブレーキアシストがある。また、目標の側方間隔になるための運転支援としては前方の駐車車両等から離れて走行することを促すHMI、HMIより強い支援として操舵制御による操舵アシストがある。また、最も弱い運転支援としては、例えば、前方の駐車車両を注意して走行することを注意喚起するHMIがある。
特に、支援内容決定部34では、衝突可能性領域算出部32で算出した衝突可能性領域における自車両の現在の側方間隔W0での衝突可能性領域に基づいて、自車両の現在位置(飛び出し位置からの距離)が衝突可能性領域の手前側の領域かあるいは衝突可能性領域かあるいは衝突可能性領域の奥側の領域かを判定する。衝突可能性領域の手前側の領域の場合、実際に飛び出しがあったとしても移動体が先に前方を通過するので、支援内容決定部34では、HMI等の弱い運転支援を行うと決定する。これによって、衝突の可能性が無いタイミングで、強い運転支援が行われることがない。衝突可能性領域の場合、実際に飛び出しがあると衝突する可能性があるので、支援内容決定部34では、車両制御等の強い運転支援を行う。これによって、衝突の可能性があるタイミングで、実際に飛び出しがあっても衝突を回避できる。衝突可能性領域の奥側の領域の場合、実際に飛び出しがあったとしても自車両が先に通過するので、支援内容決定部34では、運転支援を終了するかあるいは最も弱い運転支援(注意喚起程度)を行う。これによって、衝突の可能性が無くなっているタイミングで、運転支援が続けられることが無くなる。
制御・支援生成部35では、支援内容決定部34で運転支援を行うと判断し、支援内容がHMIの場合、目標走行状態になるように促す音声や画像等を生成し、その音声情報や画像情報をHMI装置に出力する。また、制御・支援生成部35では、支援内容決定部34で運転支援を行うと判断し、支援内容が車両制御の場合には自車両の現在の走行状態と目標走行状態との差に応じてブレーキ制御量又は/及び操舵制御量を生成し、そのブレーキ制御量又は/及び操舵制御量を車両制御装置に出力する。この際、自己運転推定部33で推定している自車両のドライバの運転状態に応じて制御量を変える。なお、HMI装置としては、音声出力装置、画像出力装置、警報装置等がある。車両制御装置としては、ブレーキ制御ECU、操舵制御ECUがある。
図1〜図8を参照して、運転支援装置1における動作を図9のフローチャートに沿って説明する。図9は、第1の実施の形態に係る運転支援装置における動作の流れを示すフローチャートである。運転支援装置1では以下に説明する動作を所定時間毎に繰り返し行っている。
環境・操作認識部10では、センサによって外界(特に、自車両前方)の走行環境(駐車車両等の死角領域を形成する物体、先行車両、対向車両等)を認識する(S10)。また、環境・操作認識部10では、センサによって自車両のドライバの操作状態(アクセル開度、ブレーキ油圧、操舵角、舵角等)を認識する。また、環境・操作認識部10では、センサによって自車両の走行状態(車速、現在位置等)を認識する。
ECU21では、環境・操作認識部10で認識した外界の走行環境に基づいて自車両から見て死角領域が形成されるか否かを判断し、死角領域が形成される場合には死角領域から仮想移動体が飛び出すと想定し、その危険な場所を特定する(S11)。なお、危険な場所がない場合、以下の動作は行わない。
ECU21では、熟練ドライバマップを参照し、危険な場所の側方を安全に通過できる目標走行状態を決定する(S12)。ECU21では、自車両の現在の走行状態(車速等)に基づいて衝突可能性領域を算出する(S13)。この際、先行車両及び/又は対向車両を認識している場合、ECU21では、先行車両と自車両との相対距離及び/又は対向車両と自車両との相対距離を用いて衝突可能性領域を再計算(補正)する(S13)。
そして、ECU21では、目標走行状態になるための運転支援において現在の側方間隔に応じた衝突可能性領域を考慮して、支援の開始終了タイミングと支援内容を決定する(S14)。さらに、ECU21では、支援を行うと決定している場合、決定している支援内容に応じてHMIの支援情報及び/又は車両制御の制御量を生成し、その支援情報をHMI装置に出力したり、制御量を車両制御装置に出力する(S15)。
この運転支援装置1によれば、自車両の現在の車速に応じて衝突可能性領域を算出し、自車両が衝突可能性領域を走行中かあるいは衝突可能性領域の前後の領域を走行中かによって運転支援の有無や支援内容を決定することにより、適切なタイミングで適切な運転支援を行うことができる。その結果、死角が形成される危険な場所を通過するときの安全性を確保できる。また、不要な運転支援の作動を抑制できるとともにドライバの感覚に合った運転支援をでき、ドライバが違和感を受けない。
さらに、運転支援装置1によれば、先行車両や対向車両が存在する場合には先行車両や対向車両を考慮して衝突可能性領域を補正することにより、より適切なタイミングでより適切な運転支援を行うことができる。特に、先行車両や対向車両と自車両との位置関係によって飛び出しがないようなタイミングで運転支援(少なくともドライバが違和感を受ける強い運転支援)が行われることがなく、ドライバが違和感を受けない。
なお、先行車両との車間距離が短いほど、衝突可能性領域が限定されるので、衝突の可能性があるタイミングが少なくなることを表している。したがって、先行車両との安全な車間距離を確保しつつ、飛び出しが予想される危険な場所では車間距離を長く取りすぎないように運転支援することも、死角からの飛び出しに対する衝突回避の有効な運転支援となる。
図10〜図13を参照して、第2の実施の形態に係る運転支援装置2について説明する。図10は、第2の実施の形態に係る運転支援装置の構成図である。図11は、減速回避可能領域も加味した衝突可能性領域と熟練ドライバマップとの関係図である。図12は、側方間隔と飛び出し位置までの距離との関係における衝突可能性領域と減速回避可能性領域の一例である。図13は、側方間隔と通過速度との関係を示す熟練ドライバマップと減速回避可能領域も考慮した目標走行状態の一例である。
運転支援装置2は、第1の実施の形態に係る運転支援装置1と比較すると、自車両の減速能力に基づいて減速回避可能領域を算出し、衝突危険領域に減速回避可能領域も加味して運転支援の有無や支援内容を判断する。そのために、運転支援装置2は、環境・操作認識部10とECU22(衝突可能性算出部30、目標走行状態決定部31、衝突可能性領域算出部32、自己運転推定部33、制動回避性能算出部36、支援内容決定部37、制御・支援生成部35、熟練ドライバマップデータベース40)を備えている。
なお、第2の実施の形態では、環境・操作認識部10及び衝突可能性算出部30が特許請求の範囲に記載する移動体特定手段に相当し、衝突可能性領域算出部32及び制動回避性能算出部36が特許請求の範囲に記載する衝突可能性判断情報算出手段に相当し、支援内容決定部37及び制御・支援生成部35が特許請求の範囲に記載する運転支援手段に相当する。
ECU22は、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットであり、運転支援装置2を統括制御する。ECU22は、各アプリケーションプログラムを実行することによって衝突可能性算出部30、目標走行状態決定部31、衝突可能性領域算出部32、自己運転推定部33、制動回避性能算出部36、支援内容決定部37、制御・支援生成部35が構成され、熟練ドライバマップデータベース40を予め保持している。ECU22は、第1の実施の形態に係るECU21と比較すると、制動回避性能算出部36と支援内容決定部37の処理だけが異なる。そこで、この制動回避性能算出部36と支援内容決定部37についてのみ説明する。
車両には減速能力があり、減速能力に応じて制動距離が決まる。したがって、車両の減速能力に応じて、車両に減速によって危険な場所までで停止できる領域(減速によって衝突を回避できる領域)と、減速しても危険な場所までで停止できない領域(減速によって衝突を回避できない領域)がある。この危険な場所までで停止できる領域は、車両の車速によって変わり、車速が低いほど危険な場所に近づく。危険な場所での衝突を回避するためには、減速しても危険な場所までで停止できない領域に車両が入らないように運転支援する必要があるし、減速しても危険な場所までで停止できない領域に車両が入っている場合には減速以外の操舵等も用いた運転支援が必要となる。
制動回避性能算出部36では、環境・操作認識部10で認識した自車両の現在の車速V0と自車両の減速能力に応じた加速度aを用いて、減速回避可能領域を算出する。加速度aは、マイナス値の減速度である。加速度aは、予め設定され、ドライバが減速行動を起こすことを想定した少し低めの値(例えば、−0.3G=−2.94m/s2)を設定してもよいし、もう少し高めの値を設定してもよい。
減速回避可能領域の算出方法の一例を説明する。車速V0の自車両が加速度aで減速を開始した時に停止するまでに要する時間をTstopとすると、Tstop=V0/|a|となる。このとき、停止するまでに走行する距離(制動距離)をLstopとすると、Lstop=V0×Tstop+1/2×a×Tstop 2となる。飛び出し位置(危険な場所)からLstopまでの領域が減速回避不可領域であり、飛び出し位置からLstopより離れた領域が減速回避可能領域である。例えば、V0=50km/h、a=−0.3Gとした場合、Lstop=32.8mとなる。
図11に、衝突可能性領域と熟練ドライバマップとの関係に減速回避可能領域に加えた関係を示す。衝突可能性領域CAは側方間隔によって変わるが、減速回避可能領域RAは側方間隔によって変わらない。そのため、衝突可能性領域CAと減速回避可能領域RAとが重なる位置は側方領域によって変わる。自車両MVが衝突可能性領域CA内を走行している場合でも自車両MVが減速回避可能領域RA内を走行している間は、減速によって飛び出し位置までで停止することが可能である。しかし、自車両MVが衝突可能性領域CA内を走行している場合に自車両MVが減速回避可能領域RAより飛び出し位置側に入ると、減速を行っても飛び出し位置までで停止することができない。そこで、熟練ドライバマップMに基づいて目標走行状態を変更して、減速回避可能領域RAに入る前に側方間隔をより広くとって衝突可能性領域CAよりも飛び出し位置側の自車両MVが先に通過する領域PAに入るか、あるいは、自車両の車速を事前に減速して減速回避可能領域RAを飛び出し位置側により近づける等の運転支援が必要となる。
図12には、自車両MVの現在の車速V0が50km/h、仮想移動体IMの飛び出し速度VIが0.5m/sの場合の衝突可能性領域CA(CA1、CA2)と車速V0が50km/hの場合の減速回避可能領域RA(太線で示す矩形領域)の一例を示している。この例の場合、衝突可能性領域CAは、側方間隔がWbのところで減速回避可能領域RAとの境界となり、減速回避可能領域RA内の領域CA1と減速回避可能領域RA外の領域CA2に分かれる。領域CA1は、衝突可能性領域であるが、強い運転支援による減速によって衝突を回避できる領域である。領域CA2は、強い運転支援による減速を行っても飛び出し位置までで停止できず、衝突の可能性が残る領域である。なお、自車両MVが先に仮想移動体IMの前を通過する領域PAも減速回避可能領域RAによって2つの領域PA1,PA2に分かれ、領域PA2の場合には減速によって飛び出し位置までで自車両が停止できないが、実際に移動体の飛び出しがあっても先に自車両MVが通過しているので問題ない。
支援内容決定部37では、基本的には、目標走行状態決定部31で目標走行状態が設定されている場合、目標走行状態になるための運転支援を行うと決定し、目標走行状態が設定されたときに運転支援を開始し、目標走行状態が達成されると運転支援を終了する。しかし、支援内容決定部37では、制動回避性能算出部36で算出した減速回避可能領域と衝突可能性領域算出部32で算出した衝突可能性領域との関係及び自車両の走行状態(車速、側方間隔、飛び出し位置までの距離)に基づいて、目標走行状態を変更する必要がある場合には目標走行状態を変更する。
図13に示す例の場合、減速回避可能領域と衝突可能性領域との境界の側方間隔Wb以上の側方間隔をとるように、目標の側方間隔をWt1とし、その目標の側方間隔Wt1に応じて目標の通過速度を熟練ドライバマップの曲線Mの下側に入る通過速度Vt1とする目標走行状態に変更する。このような目標走行状態とすることにより、自車両が減速回避不可領域に入った場合でも、飛び出しがあっても自車両が先に通過する領域となる。あるいは、車速を下げて停止するまでに走行する距離Lstopを短くして、減速回避可能領域と衝突可能性領域との境界の側方間隔Wbも狭くするために、目標の通過速度を低い速度Vt2とし、その目標の通過速度Vt2に応じて目標の側方間隔を熟練ドライバマップの曲線Mの下側に入る側方間隔Wt2とする目標走行状態に変更する。このような目標走行状態とすることにより、減速回避可能領域を飛び出し位置側に近づけることができ、自車両が減速回避不可領域に入り難くなる。
さらに、支援内容決定部37では、制動回避性能算出部36で算出した減速回避可能領域と衝突可能性領域算出部32で算出した衝突可能性領域に基づいて、支援内容や支援の終了タイミングを決定する。基本的には、第1の実施の形態に係る支援内容決定部34と同様の方法で決定するが、減速回避不可領域に入らないような(減速回避可能領域に導くような)支援内容を決定する。例えば、自車両の現在位置が衝突可能性領域内の場合には、減速回避可能領域に入る可能性があるような状況のときには第1の実施の形態の場合よりも強い運転支援を行うと決定する。そのために、より大きな減速度で車速を低下させたり、あるいは、より大きな操舵で側方間隔を広げる。また、自車両の現在位置が衝突可能性領域の手前側の領域内の場合(特に、現在の車速が高い場合や側方間隔が狭い場合)も、減速回避可能領域に入らないように、第1の実施の形態の場合よりも強い運転支援を行うと決定する。これによって、自車両が減速回避不可領域に入ることを防止でき、自車両の減速能力によって衝突を回避できる状況となる。
図10〜図13を参照して、運転支援装置2における動作を図14のフローチャートに沿って説明する。図14は、第2の実施の形態に係る運転支援装置における動作の流れを示すフローチャートである。運転支援装置2では以下に説明する動作を所定時間毎に繰り返し行っている。
運転支援装置2におけるS23までの動作については、第1の実施の形態で説明したS13までの動作と同様の動作なので、説明を省略する。
ECU22では、自車両の現在の車速に基づいて、自車両の減速能力を考慮した減速回避可能領域を算出する(S24)。ECU22では、衝突可能性領域と減速回避可能領域との関係に基づいて、S22で決定されている目標走行状態を変更する必要がある場合には目標走行状態を変更する(S25)。そして、ECU22では、目標走行状態になるための運転支援において現在の側方間隔に応じた衝突可能性領域及び減速回避可能領域を考慮して、支援の開始終了タイミングと支援内容を決定する(S25)。さらに、ECU22では、支援を行うと決定している場合、決定している支援内容に応じてHMIの支援情報及び/又は車両制御の制御量を生成し、その支援情報をHMI装置に出力したり、制御量を車両制御装置に出力する(S26)。
この運転支援装置2は、第1の実施の形態に係る運転支援装置1と同様の効果を有する上に、以下の効果も有している。運転支援装置2によれば、自車両の減速能力に応じた減速回避可能領域を算出し、減速回避可能領域も考慮して運転支援の有無や支援内容を判断したりあるいは目標走行状態を変更することにより、より適切なタイミングでより適切な運転支援を行うことができる。自車両の減速能力も考慮しているので、自車両の減速能力によって衝突を回避できないような状況を極力無くすことができ、安全性が向上する。また、目標走行状態を変更することによって、減速回避可能領域を飛び出し位置に近づけたり、あるいは、飛び出しがあっても自車両が先に通過する領域に入るようにすることができ、安全性が向上する。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、本実施の形態では駐車車両等を検出して死角ができる危険な場所を特定し、死角から仮想移動体が飛び出してくることを仮定し、その危険な場所側方を通過する場合に運転支援を行う構成としたが、実際に歩行者等をセンサで検出し、実際の歩行者等の側方を通過する場合に運転支援を行う構成としてもよいし、また、交差点等で仮想移動体が飛び出してくることを仮定し、交差点を通過する場合に運転支援を行う構成としてもよい。
また、本実施の形態では予め生成した熟練ドライバマップを利用して目標走行状態を設定する構成としたが、他の手法によって目標走行状態を設定してもよいし、また、そのようなマップを走行中に生成するようにしてもよい。
また、本実施の形態では衝突可能性領域をリアルタイムで算出する構成としたが、車速毎(例えば、1km/h毎の車速)に側方間隔と飛び出し位置までの距離との関係における衝突可能性領域を示すマップを予め算出しておき、その車速毎の衝突可能性領域マップをデータベースとして保持する構成としてもよい。
また、本実施の形態では先行車両又は/及び対向車両が存在する場合には先行車両や対向車両を考慮して衝突可能性領域を算出する構成したが、先行車両や対向車両を考慮しない構成としてよい。