JP5786746B2 - 資源配分評価指標提示方法、資源配分評価指標提示装置、及びコンピュータプログラム - Google Patents
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Description
本実施形態では、高炉で生産され、製鋼工場に運ばれた成分調整前の(チャージ単位の)銑鉄を、各熱間工場及び他の製鉄所にどのように配分するのかを計算すると共に、計算した結果に対する評価指標を計算し、その評価指標を表示することにより、鉄鋼製品の生産計画の作成を支援する場合を例に挙げて説明する。
図1において、第1製鋼工場110aは、高炉100a、100bで生産された銑鉄から鋳片を製造する工場である。第2製鋼工場110bは、高炉100b、100cで生産された銑鉄から鋳片を製造する工場である。
製鋼工場110a、110bでは、溶銑予備処理と、一次精錬と、二次精錬と、連続鋳造(CC)とが行われる。
溶銑予備処理は、溶銑中の燐や硫黄を除去する処理である。一次精錬は、溶銑予備処理後の溶鋼中の炭素の除去等を、転炉111a、111bにより行う工程である。
熱間工場120で加工された鉄鋼製品は、ヤード140に置かれた後、需要者等に供給される。
(1)二次精錬の配分に着目し、物流等の他の要素を考慮しない。
(2)時間の概念を取り入れない。すなわち、ある限られた一定時間(例えば1日)における配分を求める。
(3)製鋼工場110a、110bよりも下工程では、他の工程は自工程の評価関数に影響を与えない。
尚、溶鋼・鋼片の製造調整を行うために製鋼工場110a、110bで使用される設備(製鋼工場110a、110bで行われる工程)も資源に含まれるものである。本実施形態では、チャージ(銑鉄)の属性情報としてそのチャージを処理するのに必要な製鋼工場110a、110bの設備(工程)の情報(具体的には二次精錬工程の情報)を含めることにより、チャージ(銑鉄)が各工場120a〜120d及び他の製鉄所(鋼片・分譲)130に割り当てられると、その設備も割り当てられることになる。
(I)プレイヤ
意思決定する主体として熱延工場120a、厚板工場120b、大形工場120c、線材工場120d、鋼片・分譲130をそれぞれ、プレイヤA、プレイヤB、プレイヤC、プレイヤD、プレイヤEとする。尚、意思決定を実際に行うのは、これらの工場の関係者となる。以下の説明では、プレイヤとなる「熱延工場120a、厚板工場120b、大形工場120c、線材工場120d、鋼片・分譲130」を、必要に応じてそれぞれ「工場A、B、C、D、E」と称する。
(II)生産単位
生産単位をチャージ単位(取鍋1杯単位(250〜300[ton]単位))とする。例えば、工場Aで要求するna(naは正の整数)個のチャージ(同一種類のチャージを含んでいてもよい。以下同じ)をa1,a2,・・・,ana、同様に、工場Bで要求するnb(nbは正の整数)個のチャージをb1,b2,・・・,bnb、工場Cで要求するnc(ncは正の整数)個のチャージをc1,c2,・・・,cnc、工場Dで要求するnd(ndは正の整数)個のチャージをd1,d2,・・・,dnd、工場Eで要求するne(neは正の整数)個のチャージをe1,e2,・・・,eneと表現する。尚、以下の説明では、「工場A〜Eで要求するチャージ」を、必要に応じて「要求チャージ」と称する。また、「工場A〜Eで要求するチャージの数na〜ne」を、必要に応じて「要求チャージ数」と称する。
本実施形態では、これらの各要求チャージが特定されると、その要求チャージが通過する二次精錬工程の情報も特定されるようにしている。すなわち、それぞれの要求チャージの属性情報には、その要求チャージから溶鋼を生産するのに使用される二次精錬工程の情報が含まれているものとする。
工場A〜E毎に、要求チャージの要求の優先順序(選好順序)を、消費者選択理論に倣って表現する。それぞれの要求チャージの属性情報には、当該要求チャージを要求する工場における要求の優先順序の情報が含まれているものとする。
(IV)二次精錬処理
1KIP、4KIP、REDA、VKIP、2KIP、3KIP、RH、2RHの8種類の二次精錬工程をそれぞれ、S1〜S8と表記する。Sk(ai)を、二次精錬工程Skがチャージaiに施す処理回数(チャージaiの二次精錬工程Skの通過回数)を与える関数とする。チャージaiに二次精錬工程Skを施す必要がない場合には、Sk(ai)の値は「0」となる。例えば、S1(a1)=S3(a1)=1であり、S2(a1)=S4(a1)=S5(a1)=S6(a1)=S7(a1)=S8(a1)=0である場合、チャージa1から溶鋼を生産するには、S1に対応する1KIPと、S3に対応するREDAを1回ずつ使用する必要がある。
工場i∈{A,B,C,D,E}へのチャージの配分を以下の(1)式で表現する。
xi=(δ1 i,δ2 i,・・・) ・・・(1)
(1)式において、δj iは、0及び1の何れかをとる変数である。δj iの値が「1」であるならば、工場iがj番目に要求するチャージが工場iに配分され、δj iの値が「0」であるならば、工場iがj番目に要求するチャージが工場iに配分されないことを意味する。このように、δj iは、工場iで要求するチャージの割り当ての有無を示すものであり、xiは、δj iを、工場iにおける資源の要求の優先順序の順に配置した配列である。
的とする計算を行う。
(i)各工場A〜Eの処理能力による制約
各工場A〜Eの処理能力による制約を以下の(2a)式〜(2e)式で表す。
FA≦FAmax ・・・(2a)
FB≦FBmax ・・・(2b)
FC≦FCmax ・・・(2c)
FD≦FDmax ・・・(2d)
FE≦FEmax ・・・(2e)
(2a)〜(2e)式において、FA〜FEは、それぞれ、工場A〜Eで要求するチャージの総数である。例えば、工場Aで要求するチャージの総数は、(1)式のxAを構成する変数δj Aのうち、値が「1」となっている変数δj Aの総数である。工場B〜Eについてもこれと同じである。
また、(2a)〜(2e)式において、FAmax〜FEmaxは、それぞれ、工場A〜Eで処理することが可能なチャージ数の上限値である。前述したように、本実施形態では、ある限られた一定時間(例えば1日)における配分xiを求める。よって、工場A〜Eで処理することが可能なチャージ数の上限値は、この一定時間(例えば1日)における上限値となる。
各二次精錬工程S1〜S8の使用可能回数による制約を以下の(3a)〜(3h)式で表す。
S1^≦S1 max ・・・(3a)
S2^≦S2 max ・・・(3b)
S3^≦S3 max ・・・(3c)
S4^≦S4 max ・・・(3d)
S5^≦S5 max ・・・(3e)
S6^≦S6 max ・・・(3f)
S7^≦S7 max ・・・(3g)
S8^≦S8 max ・・・(3h)
総出鋼量制約を以下の(4)式で表す。
FA+FB+FC+FD+FE=R ・・・(4)
(4)式において、FA〜FEは、それぞれ、工場A〜Eから要求されるチャージ数である。よって、(4)式の左辺は、全ての工場A〜Eから要求されるチャージ数となる。また、(4)式において、Rは、転炉111a、111bから出鋼される溶鋼のチャージ数である。本実施形態では、ある限られた一定時間(例えば1日)における配分xiを求める。よって、これらのチャージ数は、この一定時間(例えば1日)におけるチャージ数となる。
本実施形態では、以下のパターン1〜9の9種類のアルゴリズムに従って、工場別のチャージの配分xi(i∈{A,B,C,D,E})をそれぞれ計算する。以下に、パターン1〜9の9種類のアルゴリズムについて説明する。尚、以下の説明において、制約条件を満たさないとは、(i)〜(iii)の制約条件のうち、少なくとも1つの制約条件を満た
さないことをいう。
パターン1のアルゴリズムは、以下の通りである。
<1>未選択の工場A〜Eの何れか1つをランダムに選択する。
<2>選択した工場に対して、当該工場の全ての要求チャージを割り当てる(ただし、制約条件を満たさない場合には、当該制約条件を満たさなくなった時点で要求チャージの割り当てを止める)。
<3>制約条件を満たさなくなるまで<1>及び<2>を繰り返し行う。
パターン2のアルゴリズムは、以下の通りである。
<1>未選択の工場A〜Eの何れか1つをランダムに選択する。
<2>選択した工場の未割当の要求チャージのうち要求の優先順序が最も高い要求チャージを当該工場に割り当てる。
<3>制約条件を満たさなくなるまで<1>及び<2>を繰り返し行う。
パターン3のアルゴリズムは、以下の通りである。
<1>工場Aを選択する。
<2>工場Aの未割当の要求チャージのうち要求の優先順序が最も高い要求チャージを工場Aに割り当てる。
<3>工場Bの未割当の要求チャージのうち要求の優先順序が最も高い要求チャージを工場Bに割り当てる。
<4>工場Cの未割当の要求チャージのうち要求の優先順序が最も高い要求チャージを工場Bに割り当てる。
<5>工場Dの未割当の要求チャージのうち要求の優先順序が最も高い要求チャージを工場Bに割り当てる。
<6>工場Eの未割当の要求チャージのうち要求の優先順序が最も高い要求チャージを工場Bに割り当てる。
<7>制約条件を満たさなくなるまで<2>〜<6>を繰り返し行う。
パターン4のアルゴリズムは、以下の通りである。
<1>予め決められた順で工場A〜Eの何れか1つを選択する。ここでは、工場A、B、C、D、Eの順で工場A〜Eの何れか1つを選択するものとする。
<2>選択した工場に対して、当該工場の全ての要求チャージを割り当てる(ただし、制約条件を満たさない場合には、当該制約条件を満たさなくなった時点で要求チャージの割り当てを止める)。
<3>制約条件を満たさなくなるまで<1>及び<2>を繰り返し行う。
パターン5のアルゴリズムは、以下の通りである。
<1>工場A〜Eの要求チャージの全てを、当該要求チャージから溶鋼を生産するのに必要な二次精錬の回数である二次精錬必要回数毎に分類する。ここでは、二次精錬必要回数が、「0」、「1」、「2」、「3」の何れかであるものとする。したがって、工場A〜Eの要求チャージは、二次精錬回数が「0」、「1」、「2」、「3」の4つのグループの何れかに分類される。
<2>二次精錬必要回数が最も多い「3」のグループを選択する。
<3>選択したグループに分類された要求チャージを、当該要求チャージを要求する工場に割り当てる。当該要求チャージを要求する工場が複数ある場合には、当該要求チャージに対する要求の優先順序が高い工場に優先的に当該要求チャージを割り当てる。また、当該要求チャージに対する要求の優先順序が同じである工場が複数ある場合には、工場A、B、C、D、Eの優先順位で当該要求チャージを割り当てる。
<4>二次精錬必要回数が2番目に多い「2」のグループを選択する。
<5>前記<3>と同じようにして、選択したグループに分類された要求チャージを、当該要求チャージを要求する工場に割り当てる。
<6>二次精錬必要回数が3番目に多い「1」のグループを選択する。
<7>前記<3>と同じようにして、選択したグループに分類された要求チャージを、当該要求チャージを要求する工場に割り当てる。
<8>二次精錬必要回数が「0」のグループを選択する。
<9>前記<3>と同じようにして、選択したグループに分類された要求チャージを、当該要求チャージを要求する工場に割り当てる。
パターン5では、二次精錬必要回数が「3」、「2」、「1」、「0」のグループの順にグループを選択するのに対し、パターン6では、二次精錬必要回数が「1」、「2」、「3」、「0」のグループの順にグループを選択する。パターン6のその他のアルゴリズムは、パターン5と同じである。
パターン7のアルゴリズムは、以下の通りである。
<1>全ての要求チャージについて、二次精錬工程の使用回数を計数する。
<2>工場A〜Eの要求チャージの全てを、計数した二次精錬工程の使用回数のグループ毎に分類する。
<3>未選択のグループのうち、計数した二次精錬工程の使用回数が最も多いグループを選択する。
<4>選択したグループに分類された要求チャージを、当該要求チャージを要求する工場に割り当てる。当該要求チャージを要求する工場が複数ある場合には、当該要求チャージに対する要求の優先順序が高い工場に優先的に当該要求チャージを割り当てる。また、当該要求チャージに対する要求の優先順序が同じである工場が複数ある場合には、工場A、B、C、D、Eの優先順位で当該要求チャージを割り当てる。
<5>制約条件を満たさなくなるまで<3>及び<4>を繰り返し行う。
パターン7では、二次精錬工程の使用回数が多いグループから順にグループを選択するのに対し、パターン8では、二次精錬工程の使用回数が少ないグループから順にグループを選択する。パターン8のその他のアルゴリズムは、パターン7と同じである。
パターン9のアルゴリズムは、以下の通りである。
<1>全ての要求チャージについて、二次精錬工程の使用回数を計数する。
<2>工場A〜Eの要求チャージの全てを、工場A〜E毎の5つのグループに分類する。
<3>工場A〜Eのグループのそれぞれにおいて、未選択の要求チャージのうち、二次精錬工程の使用回数が最も多い要求チャージを選択する。二次精錬工程の使用回数が同数の要求チャージが複数ある場合には、当該複数の要求チャージのうち、要求の優先順序が高い方の要求チャージを優先的に選択する。
<4>選択した要求チャージを、当該要求チャージを要求する工場に割り当てる。
<5>制約条件を満たさなくなるまで<3>及び<4>を繰り返し行う。
〜9の9種類のアルゴリズムのそれぞれに従って、工場別のチャージの配分xi(i∈{A,B,C,D,E})をそれぞれ計算する(以下の説明では、「xi(i∈{A,B,C,D,E})」を必要に応じて「xi」又は「xA〜xE」と表記する)。よって、本実施形態では、工場別のチャージの配分xA〜xEが9組得られることになる。
ゲーム理論の分野においては、パレート効率性は、他のどのプレイヤの効用をも犠牲にすることなく、これ以上誰かの効用を上げることができないような状態として知られるものである。本実施形態では、パレート効率性を、他の工場での処理量を低下させることなく、自工場における要求チャージの配分を増加させることができない状態であるか否かを示すものとして定義する。より具体的に、本実施形態では、他の工場で要求するチャージ数と、他の工場における二次精錬工程の使用回数とを減らすことなく、自工場の配分を望ましい配分に改善することができない場合に、パレート効率性が満たされ、そうでない場合に、パレート効率性が満たされないものとする。尚、配分の値の変更を試行した結果、他の工場で要求するチャージの数と、他の工場における二次精錬工程の使用回数を減らすことなく、自工場の配分を望ましい配分に変更することができても、変更後の配分が制約条件を満たさない場合には、自工場の配分を望ましい配分に改善することにはならないものとする。
ゲーム理論の分野においては、独裁は、あるプレイヤが無条件に自分にとって最も望ましい結果を得られるような状態であるとして知られている。本実施形態では、独裁性を、要求チャージが全て割り当てられている工場があるかどうかを示すものとして定義する。独裁性のある工場iの数は少ないほど望ましい。本実施形態では、要求チャージが全て割り当てられている工場がある場合、その工場については独裁性があることになる。すなわち、工場別のチャージの配分xiにおいて、要求チャージについての値が全て「1」になっている場合、その工場iについては独裁性があることになる。全ての工場について、要求する資源が全て割り当てられていることを「充足」という。この充足となっている状態が望ましい状態となる。
ゲーム理論の分野においては、公平性は、他のプレイヤへの配分を選好(羨望)する状況の度合いであるとして知られている。本実施形態では、公平性を、自工場の配分xiの値(自工場に配分された要求チャージ)のうち、他の工場の配分xiの値(他工場に配分された要求チャージ)をより選好(羨望)することとなる自工場の配分xiの値(要求チャージ)の数を示すものである。本実施形態において、選好(羨望)とは、同一の要求の優先順序において、自工場の配分xiの値よりも他の工場の配分xiの値の方が自工場の要求に合っており(すなわち、それらの値を入れ替えることを試行すると少なくとも自工場の配分xiの値が改善し)、且つ、自工場の配分xiと他の工場の配分xiとの間で、それらの値を入れ替えることを試行しても全ての制約条件を満たすことを指す。よって、自工場の配分xiの値よりも他の工場の配分xiの値の方が自工場の要求に合っていたとしても、それらの値を入れ替えることを試行すると制約条件を満たさなくなる場合には、他の工場の配分xiの値を選好(羨望)することにはならない。また、自工場の配分xiの値と他の工場の配分xiの値とを入れ替えることを試行すると、当該他の工場の配分xiが当該他の工場の要求に合わなくなる方向に変更されたとしても、自工場の配分xiが自工場の要求に合う方向に変更(改善)されていれば、当該他の工場の配分xiの値を選好(羨望)することになる。公平性を示す評価値は、他の工場の配分xiの値を選好(羨望)する自工場の配分xiの値の数が少ないほど、高い評価を示す値となる。他の工場の配分xiの値を選好(羨望)する自工場の配分xiの値の数が「0」である場合には、完全に公平となり、公平性を示す評価値は、最も高い評価を示す値となる。
二次精錬独裁性とは、前述した独裁性を二次精錬工程の割り当てに対して適用したものである。本実施形態では、まず、要求する二次精錬工程を全ての資源について使用することができる工場(二次精錬独裁性を満たす工場)を、それぞれの二次精錬工程において調べる。そして、そのような工場がある二次精錬工程の数を二次精錬独裁性の値とする。
・二次精錬公平性
二次精錬公平性とは、前述した公平性を二次精錬工程の割り当てに対して適用したものである。本実施形態では、他の工場で使用する二次精錬工程を選好(羨望)することとなる工場を、それぞれの二次精錬工程において調べる。そして、そのような工場がある二次精錬工程の数を二次精錬公平性の値とする。
生産管制の要求順序との整合性とは、前述したパターン1〜9のアルゴリズムにより導出された工場別のチャージの配分xA〜xEのそれぞれと、生産管制の要求の優先順序との、マッチングの度合い(類似度)を示すものである。本実施形態では、パターン9のアルゴリズムにより導出された工場別のチャージの配分xA〜xEが、生産管制の選好する工場別のチャージの配分xA〜xEであるとする。よって、本実施形態では、生産管制の要求の優先順序との整合性とは、前述したパターン1〜9のアルゴリズムにより導出された工場別のチャージの配分xA〜xEのそれぞれと、前述したパターン9のアルゴリズムにより導出された工場別のチャージの配分xA〜xEとのマッチングの度合い(類似度)を示すものである。生産管制の要求の優先順序との整合性を示す評価値は、生産管制の要求の優先順序とマッチしている(類似度が高い)パターンであるほど高い評価を示す値となる。
尚、前述したように、本実施形態では、パターン9のアルゴリズムにより導出された工場別のチャージの配分xA〜xEが、生産管制の選好する工場別のチャージの配分xA〜xEであるとする。よって、パターン1〜9における評価値のうち、パターン9における評価値が最も高い評価を示す値となる。
図2は、以上のようにして工場別のチャージの配分xA〜xEを導出し、導出した工場別のチャージの配分xA〜xEに対する評価指標を導出して表示する資源配分評価指標提示装置の機能的な構成の一例を示す図である。図2に示す資源配分評価指標提示装置200のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、各種のインターフェース、及びコンピュータディスプレイを備えたコンピュータシステムを用いることにより実現することができる。
チャージ情報取得部201は、各工場A〜Eの要求チャージの属性情報を取得する。要求チャージの属性情報には、その要求チャージを要求する工場の情報と、その要求チャージを生産するのに使用される二次精錬工程の情報と、その要求チャージを要求する工場における当該要求チャージの要求の優先順序の情報とが含まれる。要求チャージの属性情報の数を計数することにより、各工場A〜Eの要求チャージ数を導出することができる。尚、これらの情報が個別に取得されるようにしてもよい。
チャージ情報取得部201は、例えば、CPUが、各種のインターフェースを介して入力した前述した情報をRAM又はHDDに記憶することにより実現される。尚、要求チャージの属性情報は、ユーザによるキーボード等の操作の内容に基づいて入力されても、外部装置との通信に基づいて入力されても、外部の記憶媒体から入力されてもよい。
制約条件設定部202は、前述した(i)〜(iii)の制約条件を示す情報を設定する。
図3は、各工場A〜Eにおける要求チャージ数と、各工場A〜Eで処理することが可能なチャージ数の上限値(処理可能回数の上限値)FAmax〜FEmaxの一例を示す図である。また、図4は、二次精錬工程S1〜S8の使用回数の上限値S1 max〜S8 maxの一例を示す図である。
ケース1は、平時の操業における、ある期間の操業実績データの平均値から、要求チャージ数を設定したケースである。すなわち、ケース1は、標準的な操業が行われる場合を想定したケースである。
ケース2は、安定操業時における、ある期間の操業実績データの平均値から、要求チャージ数を設定したケースである。すなわち、ケース2は、余裕を持って操業が行われる場合を想定したケースである。
ケース3は、逼迫した操業時における、ある期間の操業実績データの平均値から、要求チャージ数を設定したケースである。すなわち、ケース3は、熱延工場120dに大量の鋼片を供給することや、納期までの期間が短いことといった事情が重なった状況で操業が行われる場合を想定したケースである。
制約条件設定部202は、工場A〜Eで処理することが可能なチャージ数の上限値(処理可能回数の上限値)FAmax〜FEmaxの情報と(図3を参照)、二次精錬工程S1〜S8の使用回数の上限値S1 max〜S8 maxの情報と(図4を参照)、転炉111a、111bから出鋼されるチャージ数Rの情報とを、チャージ情報取得部201で説明したのと同様の方法で取得し、(2)式、(3)式、(4)式に、それらの値を設定する。
制約条件設定部202は、例えば、CPUが、各種のインターフェースを介して入力した前述した情報をRAM又はHDDに記憶することにより実現される。
工場別チャージ配分導出部203は、前述したパターン1〜9のそれぞれのアルゴリズムに従って、工場別のチャージの配分xA〜xEを導出する。
図5は、ケース1における工場別のチャージの配分xA〜xEの導出結果の一例を示す図である。尚、紙面の都合上、ケース1における工場別のチャージの配分xA〜xEのうち、パターン1、2、6〜8における工場別のチャージの配分xA〜xEと、ケース2、3における工場別のチャージの配分xA〜xEの図示を省略する。
例えば、工場別のチャージの配分xAを示す配列では、要求チャージ数が「50」であるのに対し、工場Aで処理することが可能なチャージ数の上限値FAmaxは「65」であるので、先頭から50番目目までの範囲が、評価指標を導出する際に考慮する対象となる。同様に、工場別のチャージの配分xB、xC、xD、xEを示す配列では、先頭から、それぞれ34番目、4番目、18番目、15番目の範囲が、評価指標を導出する際に考慮する対象となる。
評価指標導出部204は、工場別チャージ配分導出部203で導出された工場別のチャージの配分xA〜xEの評価指標として、パレート効率性、独裁性、公平性、二次精錬独裁性、二次精錬公平性、及び生産管制の要求順序との整合性の6つの評価指標をパターン毎に導出する。
図6〜図8は、それぞれ、ケース1〜3における工場別のチャージの配分xA〜xEの評価指標の導出結果の一例を示す図である。
尚、図6〜図8において、パレート効率性が満たされる場合に、パレート効率性の欄に「○」を付し、そうでない場合に、パレート効率性の欄に「×」を付している。また、図6〜図8では、各欄に示す数字が小さいほど高い評価であることを示している。
図5において、工場別のチャージの配分xCを示す配列では、先頭から4番目までの範囲の値が全て「1」である。同様に、工場別のチャージの配分xD、xEを示す配列では、先頭から、それぞれ18番目、15番目までの範囲の値が、それぞれ全て「1」である。よって、図6に示すように、ケース1では、工場C、D、Eについて、独裁性があることになる(図6のパターン3の独裁性の欄に示す「C,D,E独裁」を参照)。
このように、独裁性を導出する場合には、評価指標導出部204は、工場別のチャージの配分xA〜xEの値を確認することになる。
このように公平性を導出する際には、評価指標導出部204は、工場別のチャージの配分xA〜xEの値のうち、自工場の配分xiの値よりも自工場の要求に合っている他の工場の配分xiの値と、当該自工場の配分xiの値とを入れ替えることを試行し、当該試行がなされた後の自工場の配分xA〜xEの値を確認することになる。
また、パレート効率性を導出する際には、評価指標導出部204は、他の工場の配分xiの値のうち、評価指標を導出する際に考慮する対象となる範囲の値を変えずに、自工場の配分xA〜xEの値を変更することを試行し、当該試行がなされた後の自工場の配分xA〜xEの値を確認することになる。
評価指標表示部205は、評価指標導出部204で導出された工場別のチャージの配分xA〜xEの情報と、工場別のチャージの配分xA〜xEの評価指標の情報と、をコンピュータディスプレイに表示する。
出鋼スケジュールの意思決定を行う者は、工場別のチャージの配分xA〜xEの評価指標の情報から、各工場へのチャージの配分の妥当性を判断することができる。
また、出鋼スケジュールの意思決定を行う者は、図7に示す工場別のチャージの配分xA〜xEの評価指標から、ケース2では、ケース1と同様に、パターン3とパターン5で公平な配分になっていると認識することができる。また、操業に余裕があるケース2では、ケース1とは異なり、パターン4で生産管制の要求の優先順序との整合性が優れていると認識することができる。
次に、図9のフローチャートを参照しながら、資源配分評価指標提示装置200における処理の一例を説明する。尚、ここでは、各工場A〜Eの要求チャージの属性情報が既に取得されていると共に、制約条件の設定が既に行われているものとして説明を行う。
次に、ステップS902において、工場別チャージ配分導出部203は、制約条件の設定情報を読み出す。
次に、ステップS904において、工場別チャージ配分導出部203は、ステップS903で選択したパターンのアルゴリズムに従って、工場別のチャージの配分xA〜xEを導出する。
次に、ステップS907において、評価指標導出部204は、ステップS906で選択した評価指標を、パターン1〜9における工場別のチャージの配分xA〜xEのそれぞれについて導出する。
次に、ステップS908において、評価指標導出部204は、前述した評価指標の全てを導出したか否かを判定する。この判定の結果、前述した評価指標の全てを導出していない場合には、ステップS906に進む。そして、前述した評価指標の全てを導出するまで、ステップS906〜S908の処理を繰り返し行う。
前述した評価指標の全てを導出すると、ステップS909に進む。ステップS909に進むと、評価指標表示部205は、工場別のチャージの配分xA〜xEの情報と、工場別のチャージの配分xA〜xEの評価指標の情報と、をコンピュータディスプレイに表示する。
以上のように本実施形態では、工場別のチャージの配分xA〜xEのそれぞれの評価指標を導出して表示する。評価指標として、他の工場での処理量を低下させることなく、自工場における要求チャージの配分を増加させることができない状態であるか否かを示すパレート効率性と、要求チャージが全て割り当てられている工場があるかどうかを示す独裁性と、自工場の配分xiの値のうち、他の工場の配分xiの値をより選好(羨望)することとなる自工場の配分xiの値の数を示す公平性と、を含む評価指標を導出する。したがって、出鋼スケジュールの意思決定を行う者が、工場別のチャージの配分xA〜xEを決定する際に、その工場別のチャージの配分xA〜xEの客観的な評価指標を、出鋼スケジュールの意思決定を行う者に提示することができる。よって、出鋼スケジュールの意思決定を行う者の意図との差が小さい出鋼スケジュールを容易に且つ確実に作成することを支援することができる。
このように、本実施形態では、工場別のチャージの配分xA〜xEを導出するようにした。しかしながら、必ずしも工場別のチャージの配分xA〜xEを導出する必要はない。例えば、日別調整会議で決められた内容から定められる工場別のチャージの配分xA〜xEを資源配分評価指標提示装置200に入力してもよい。このようにする場合、図2に示した資源配分評価指標提示装置200に対して、チャージ情報取得部201、制約条件設定部202と、工場別チャージ配分導出部203とを削除すると共に、工場別のチャージの配分xA〜xEの情報をチャージ情報取得部201が情報を取得するのと同様の手法で取得する構成を追加することになる。また、出鋼スケジュールの意思決定を行う者は、工場別のチャージの配分xA〜xEを事前に知ることができるので、工場別のチャージの配分xA〜xEについては必ずしも表示しなくてもよい。
また、本実施形態では、半製品の一例であるチャージ(銑鉄)を資源の一例として工場A〜Eに割り当てる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、工場A〜Eに割り当てる資源は半製品に限定されない。例えば、原材料、輸送手段、処理工程(処理設備)、置き場といった、複数の工場A〜Eが処理を行う際に、少なくとも2つの工場で競合し得る資源を含む複数の資源を複数の工場A〜Eに割り当てるものであれば、どのような資源を工場A〜Eに割り当ててもよい。
[請求項1、7]
工場別配分取得工程は、例えば、チャージ情報取得部201による処理と、工場別チャージ配分導出部203による図9のステップS901〜S905の処理とを実行することにより実現される。
制約条件設定工程は、例えば、制約条件設定部202による処理を実行することにより実現される。
評価指標導出工程は、例えば、評価指標導出部204による図9のステップS906〜S908の処理を実行することにより実現される。
評価指標表示工程は、例えば、評価指標表示部205による図9のステップS909の処理を実行することにより実現される。
[請求項2]
資源情報取得工程は、例えば、チャージ情報取得部201による処理を実行することにより実現される。
工場別資源配分導出工程は、例えば、工場別チャージ配分導出部203による図9のステップS901〜S905の処理を実行することにより実現される。
[請求項4]
工場別配分取得手段は、例えば、チャージ情報取得部201と、工場別チャージ配分導出部203とを用いることにより実現される。
制約条件設定手段は、例えば、制約条件設定部202を用いることにより実現される。
評価指標導出手段は、例えば、評価指標導出部204を用いることにより実現される。
評価指標表示手段は、例えば、評価指標表示部205を用いることにより実現される。
[請求項5]
資源情報取得手段は、例えば、チャージ情報取得部201を用いることにより実現される。
工場別資源配分導出手段は、例えば、工場別チャージ配分導出部203を用いることにより実現される。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
Claims (7)
- 複数の工場での処理に使用される複数の資源であって、少なくとも2つの工場で競合する関係にある資源を含む資源の配分結果を評価するための評価指標を導出して提示する資源配分評価指標提示方法であって、
前記複数の工場別の資源の配分結果を示す情報として、前記工場で要求する資源の割り当ての有無を示す値が、当該工場における資源の要求の優先順序に応じて配置された工場別資源配分情報を取得する工場別資源配分取得工程と、
前記複数の工場で処理をする際に満たすべき制約を示す制約条件を設定する制約条件設定工程と、
前記工場で要求する資源の割り当ての変更を、前記制約条件を満たす範囲で試行することと、当該試行がなされた後の前記工場別資源配分情報を確認することと、を含む処理を行うことによって、前記工場別資源配分情報の評価指標を導出する評価指標導出工程と、
前記評価指標を表示する評価指標表示工程と、を有し、
前記評価指標は、
他の工場での処理量を低下させることなく、自工場で要求する資源の配分を増加させることができない状態であるか否かを示す評価指標であるパレート効率性と、
要求する資源が全て割り当てられている工場があるかどうかを示す評価指標である独裁性と、
自工場への資源の配分の値のうち、他の工場への資源の配分の値をより選好するものの数を示す評価指標である公平性と、を含むことを特徴とする資源配分評価指標提示方法。 - 前記工場別資源配分取得工程は、
前記複数の工場で要求する資源の属性情報を取得する資源情報取得工程と、
前記複数の工場で要求する資源の属性情報に基づいて各工場へ資源を割り当てる方法が規定されたアルゴリズムに従い、前記複数の工場に資源を割り当てる処理を、前記制約条件を満たす範囲で行って、前記工場別資源配分情報を導出する工場別資源配分導出工程と、をさらに有し、
前記評価指標導出工程は、前記工場別資源配分導出工程により導出された工場別資源配分情報の評価指標を導出することを特徴とする請求項1に記載の資源配分評価指標提示方法。 - 前記複数の工場は、熱間圧延工場を含み、
前記資源は、チャージ単位の銑鉄を含み、
前記制約は、前記複数の工場の処理能力による制約と、前記銑鉄から溶鋼を生産する際に製鋼工場で行われる二次精錬工程の使用可能回数による制約と、総出鋼量の制約とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の資源配分評価指標提示方法。 - 複数の工場での処理に使用される複数の資源であって、少なくとも2つの工場で競合する関係にある資源を含む資源の配分の結果を評価するための評価指標を導出して提示する資源配分評価指標提示装置であって、
前記複数の工場別の資源の配分結果を示す情報として、前記工場で要求する資源の割り当ての有無を示す値が、当該工場における資源の要求の優先順序に応じて配置された工場別資源配分情報を取得する工場別資源配分取得手段と、
前記複数の工場で処理をする際に満たすべき制約を示す制約条件を設定する制約条件設定手段と、
前記工場で要求する資源の割り当ての変更を、前記制約条件を満たす範囲で試行することと、当該試行がなされた後の前記工場別資源配分情報を確認することと、を含む処理を行うことによって、前記複数の工場別の資源の配分を示す情報の評価指標を導出する評価指標導出手段と、
前記評価指標を表示する評価指標表示手段と、を有し、
前記評価指標は、
他の工場での処理量を低下させることなく、自工場で要求する資源の配分を増加させることができない状態であるか否かを示す評価指標であるパレート効率性と、
要求する資源が全て割り当てられている工場があるかどうかを示す評価指標である独裁性と、
自工場への資源の配分の値のうち、他の工場への資源の配分の値をより選好するものの数を示す評価指標である公平性と、を含むことを特徴とする資源配分評価指標提示装置。 - 前記工場別資源配分取得手段は、
前記複数の工場で要求する資源の属性情報を取得する資源情報取得手段と、
前記複数の工場で要求する資源の属性情報に基づいて各工場へ資源を割り当てる方法が規定されたアルゴリズムに従い、前記複数の工場に資源を割り当てる処理を、前記制約条件を満たす範囲で行って、前記工場別資源配分情報を導出する工場別資源配分導出手段と、をさらに有し、
前記評価指標導出手段は、前記工場別資源配分導出手段により導出された工場別資源配分情報の評価指標を導出することを特徴とする請求項4に記載の資源配分評価指標提示装置。 - 前記複数の工場は、熱間工場を含み、
前記資源は、チャージ単位の銑鉄を含み、
前記制約は、前記複数の工場の処理能力による制約と、前記銑鉄から溶鋼を生産する際に製鋼工場で行われる二次精錬手段の使用可能回数による制約と、総出鋼量の制約とを含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の資源配分評価指標提示装置。 - 請求項1〜3の何れか1項に記載の資源配分評価指標提示方法の各工程をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
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