JP5783452B2 - 車両の操舵抵抗付与装置 - Google Patents

車両の操舵抵抗付与装置 Download PDF

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Description

本発明は、ステアリングホイールによって操作されるステアリングシャフトの回転に抵抗力を付与するための車両の操舵抵抗付与装置に関するものである。
車両の操舵はステアリングホイール(ハンドル)を回転操作することによってなされるが、ステアリングホイールは、筒状のステアリングコラム内に挿通するステアリングシャフトの一端に取り付けられており、ステアリングホイールの回転はステアリングシャフトを介してステアリングギヤボックス等の操舵系に伝達される。
ところで、車両には運転者の操舵力をアシストするためのパワーステアリング装置が設けられているが、このパワーステアリング装置によるアシスト力の大きさは車速に応じて変化するよう制御される。具体的には、高速走行中に操舵力が軽過ぎると、必要以上にステアリングホイールを回してしまうため、進路を保持するために微小(操舵角±10°程度)で済む修正操舵を切り過ぎてしまい、逆方向の修正操舵が必要になる場合がある。高速走行中に操舵力が軽過ぎると、この修正操舵の繰り返しが頻繁に発生して操縦性が悪化するため、パワーステアリング装置のアシスト力を小さくして運転者の手応えを大きくし(ハンドルを重くし)、急激な操作(急ハンドル)を抑制しつつ、必要以上にステアリングホイールを回してしまうことを抑制して車両の走行安定性を高めるようにしている。又、低速走行時においては、小さな操舵力で操舵を可能とするようアシスト力を大きくし(ハンドルを軽くし)、ステアリングホイールを大きく回転させるような操舵を容易に行うことができるとともに、クイック感が高められるようにしている。
ところで、特許文献1には、車両の高速直線走行時のシミーの発生を防ぐため、押圧部材によって摩擦付与部材を径方向に移動させてこれをステアリングシャフトに押圧することによって、ステアリングシャフトに回転方向のフリクションを付与し、車両の高速直線走行時には押圧部材の移動量を大きく設定してステアリングシャフトに大きな回転方向のフリクションを付与するようにした車両用ステアリング装置が提案されている。
又、特許文献2には、ステアリングシャフトのスラスト力受け面にスラストワッシャを介して押圧される押圧部材と、ステアリングシャフトに軸方向に移動可能に設けられたスプリングを介して前記押圧部材を前記スラスト受け面に押圧することによってステアリングシャフトに回転方向のフリクションを付与するフリクション調節部材を設け、フリクション調節部材のステアリングシャフトに対する移動量によって操舵フリクションを調節し、操舵角に対する操舵力の位相と操舵感を変えるようにしたステアリング装置が提案されている。
更に、特許文献3には、ステアリングシャフト上の回転体に接触子を接触させて摩擦力を付与する摩擦力付与装置と、車速信号及び操舵角信号を入力してステアリングハンドルの中立時では操舵時よりも大きな摩擦力を付与し且つ車速の増加に応じて摩擦力が増加するよう前記摩擦力付与装置を制御する電気制御装置を設けて成るステアリング装置の操舵力制御装置が提案されている。
特開2007−083940号公報 特許第2800526号公報 特開昭60−042156号公報
ところで、ステアリング装置における微小操舵時の手応えで体感上敏感な領域は、ステアリングの切り始めと戻し始めの領域であり、その領域での運転者の手応えは、パワーステアリング装置によるアシスト部よりもステアリングハンドルに近い側の操舵系の特性(回転抵抗と捩り剛性)に依存する。従って、パワーステアリング装置のアシスト特性だけでは良好な操舵感(フィーリング)が得られないという問題がある。
又、操舵系の抵抗(フリクション)やアシスト部がステアリングハンドルから離れた位置に存在すると、その位置とステアリングハンドルの間で捩れが生じるためにステアリングの剛性感が低下するという問題もある。
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、操舵の切り始めと戻し始めの微小操舵域において良好な操舵感が得られるとともに、ステアリングの剛性感を高めて高速走行時の安心感の向上を図ることができる車両の操舵抵抗付与装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、筒状のステアリングコラム内に挿通する回転可能なステアリングシャフトの回転に抵抗力を付与する抵抗付与手段を設け、該抵抗付与手段によって付与される抵抗力を車速に応じて変更する車両の操舵抵抗付与装置において、前記抵抗付与手段をステアリングホイールの近傍に配置するとともに、操舵角に基づいて算出される操舵速度の変化によってステアリングの切り始めを検知し、ステアリングの切り始め領域において前記抵抗付与手段によって付与される抵抗力を他の領域において付与される抵抗力よりも大きく設定し、操舵角に基づいて算出される操舵速度の変化によってステアリングの戻し始めを検知し、ステアリングの戻し始め領域において前記抵抗付与手段によって付与される抵抗力を他の領域において付与される抵抗力よりも小さく設定することを特徴とする。
請求項記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記抵抗付与手段によって付与される抵抗力を車速によって変化させ、車速が大きい場合の抵抗力を車速が小さい場合の抵抗力よりも大きく設定することを特徴とする。
請求項記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記抵抗付与手段によって付与される抵抗力を操舵角によって変化させ、操舵角の増加と共に抵抗力を小さくすることを特徴とする。
請求項記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の発明において、前記抵抗付与手段による抵抗力付与の要否を選択する切替スイッチを設けたことを特徴とする。
請求項1記載の発明によれば、ステアリングシャフトに回転方向の抵抗力を付与する抵抗付与手段をステアリングホイールの近傍に配置したため、抵抗力の付与と操舵力(操舵角)の関係においてステアリングシャフトの捩れの影響が発生せず、捩れや操舵系部品のガタによるフニャフニャ感を抑制することが可能となり、ステアリングの剛性感が高められて車両の高速走行時の安心感の向上が図られる。又、ステアリングの切り始めにおいてステアリングシャフトに比較的大きな抵抗力が付与されるため、転舵に必要な操舵力が比較的大きくなり、ステアリングの切り始めの微小操舵域での操舵に手応え(しっかり感)が付与されて良好な操舵感(フィーリング)が得られる。
また、請求項記載の発明によれば、ステアリングの戻し始めにおいてステアリングシャフトに付与される抵抗力が小さくなるため、操舵角が増加する方向(切る方向)から操舵角が減少する方向(戻し方向)への操作でのステアリングホイールの引っ掛かり感を抑制して、ステアリングホイールを速やかに戻すことができ、戻し始めの微小領域において良好な操舵感(フィーリング)が得られる。更に、ステアリングホイールを中立位置(直進位置)まで速やかに戻すことができる。
請求項記載の発明によれば、車速が大きい場合の抵抗力を車速が小さい場合の抵抗力よりも大きく設定するため、高速走行時の修正操舵を切り過ぎることや修正操舵の繰り返しが頻繁に発生することによる操縦性の悪化が防がれる。つまり、高速走行時の運転者の必要操舵力を大きくし、急激な操作を抑制しつつ、必要以上にステアリングホイールを回してしまうことを抑制して、車両の走行安定性を高めることができる。又、低速走行時においては、小さな操舵力で操舵を可能とし、ステアリングホイールを大きく回転させるような操舵を容易に行うことができるとともに、クイック感を高め、車両の商品性を向上させることができる。
請求項記載の発明によれば、操舵角の増加と共に抵抗力を小さくするため、操舵角が小さな直進付近において運転者に比較的大きな手応えを与えることができるとともに、切られた状態から更にステアリングホイールを切り込む操作(操舵角が増加する方向の操作)におけるステアリングの切り始めにおいて、ステアリングシャフトに付与される抵抗力を小さくするため、運転者に過度の負担を強いることなく追加の操舵(増し切り)が容易となって、操縦性を向上させることができる。更に、大きく切られた状態では抵抗力が小さくなるため、ステアリングホイールを中立位置まで速やかに戻すことができる。
請求項記載の発明によれば、切替スイッチによって抵抗付与手段による抵抗力付与の要否を選択することができるため、運転者の好みに応じた操舵感を得ることができる。
本発明に係る操舵抵抗付与装置の基本構成を示す車両のステアリングハンドル周りの図である。 本発明に係る操舵抵抗付与装置を備えたステアリング装置の操舵力と操舵角との関係を示す図である。
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る操舵抵抗付与装置の基本構成を示す車両のステアリングハンドル周りの図であり、同図において、1は車体側に取り付けられた円筒状のステアリングコラムであって、その内部にはステアリングシャフト2が回転可能に挿通している。このステアリングシャフト2の一端(上端)はボールベアリング3によってステアリングコラム1に回転可能に支持されており、該ステアリングシャフト2のステアリングコラム1から突出する端部にはステアリングホイール4が取り付けられている。
そして、ステアリングホイール4の近傍の前記ステアリングコラム1の端部(上端部)には、ステアリングシャフト2の回転に抵抗力を付与するための抵抗付与手段5が取り付けられている。又、ステアリングホイール4の基端部には操舵角センサ6と操舵力センサ7が組み込まれている。尚、図示しないが、ステアリングシャフト2の他端(下端)は、ユニバーサルジョイント等を経てステアリングギヤボックス等の操舵系に連結されており、運転者がステアリングホイール4を左右に回転操作すると、その回転はステアリングシャフト2を経て操舵系に伝達され、操舵輪である前輪が左右に転舵されて車両が左右何れかの方向に旋回する。
上記抵抗付与手段5は、ステアリングコラム1の端部に取り付けられたハウジング8を備えており、このハウジング8の先端部には摩擦体9がステアリングシャフト2の径方向(図1の上下方向)に移動可能に保持されており、ハウジング8の内部にはスライダ10が摩擦体9の移動方向(図1の上下方向)と同方向に摺動可能に収容されている。そして、ハウジング8内のスライダ10と摩擦体9との間にはスプリング11が縮装されており、摩擦体9はスプリング11によってステアリングシャフト2の外周面に押圧されている。詳細には、摩擦体9は、ステアリングシャフト2の一端(上端)に配置されたボールベアリング3よりもステアリングホイール4が取り付けられる側となるステアリングシャフト2の外周面に押圧されている。尚、スライダ10は、その外周がハウジング8の内部に形成されたガイド溝に嵌合しており、非回転状態を保ってハウジング8内を摺動する。
又、ハウジング8にはアクチュエータとしての電動モータ12が取り付けられており、この電動モータ12からハウジング8内へと延びるネジ軸13は前記スライダ10の中心部に螺合している。
而して、以上のように構成された抵抗付与手段5においては、摩擦体9がスプリング11によってステアリングシャフト2の外周面に押圧されているため、該摩擦体9とステアリングシャフト2の間の摩擦力がステアリングシャフト2の回転の抵抗として作用する。この結果、抵抗付与手段5によってステアリングシャフト2の回転に抵抗力が付与されるが、この抵抗力は電動モータ12を駆動することによってその大きさが調整される。
即ち、電動モータ12を駆動すれば、そのネジ軸13が回転し、このネジ軸13に螺合するスライダ10がハウジング8内でネジ軸13の軸方向(図1の上下方向)に摺動してスプリング11を圧縮又は伸長させるため、スプリング11の摩擦体9に対する押圧力が変化し、この押圧力の変化によって摩擦体9のステアリングシャフト2に対する押圧力が変化し、摩擦体9とステアリングシャフト2の間に発生する摩擦力が変化してステアリングシャフト2に付与される抵抗力が変化する。具体的には、スプリング11による摩擦体9の押圧力が大きいほど、ステアリングシャフト2に付与される抵抗力も大きくなる。
ところで、抵抗付与手段5の電動モータ12は、コントローラ14によってその駆動が制御され、コントローラ14は、前記操舵角センサ6によって検出される操舵角と前記操舵力検出センサ7によって検出される操舵力及び車速センサ15によって検出される車速に基づいて電動モータ12を駆動制御してステアリングシャフト2に付与する抵抗力を調整する。
具体的には、コントローラ14は、操舵角に基づいて算出される操舵速度の変化によってステアリングホイール4の切り始めを検知し、ステアリングホイール4の切り始め領域においてステアリングシャフト2に付与される抵抗力を他の領域(その後の切り込み方向の領域)において付与される抵抗力よりも大きく設定する。又、コントローラ14は、操舵速度の変化によってステアリングホイール4の戻し始めを検知し、ステアリングホイール4の戻し始め領域においてステアリングシャフト2への抵抗力を他の領域(切り込み方向の領域)において付与される抵抗力よりも小さく設定する。
又、コントローラ14は、操舵角に基づいて、操舵速度の変化によって検出するステアリングホイール4の切り始めが、中立位置からのものか、或る程度ステアリングが切られた状態からの増し切りかを判断する。増し切りの場合は、中立位置から切り始めに付与される抵抗力よりも弱い抵抗力とする。尚、本実施の形態では、操舵角に基づいて算出される操舵速度の変化によってステアリングホイール4の切り始めを検知し、ステアリングホイール4に切り始め領域での抵抗力を付与しているため、操舵角に基づいて算出される操舵速度が略0の場合(操舵すれば必ず操舵速度の変化が起こる)は、その次に起こるであろう操舵に備えて、予め抵抗付与手段5の電動モータ12を駆動制御してステアリングシャフト2に抵抗力を付与しておくこともできる。このようにすることによって、ステアリングホイール4の切り始めに対して遅れることなく抵抗力を付与することが可能となる。更に、車両が直進走行状態で操舵速度が略0の場合において、抵抗付与手段5にて予めステアリングシャフト2に抵抗力を付与しておくと、車両のフラツキが抑制され、車両の走行安定性を高めることができる。
ここで、例えば、車両の停止状態でステアリングを右に切った後に左に切って元の中立点に戻す操作(所謂据え切り操作)を行った場合の操舵角との関係を図2に示す特性に基づいて以下に説明する。尚、ここで、図2の横軸はステアリングホイール4の操舵角(回転角度)を示し、原点Oが転舵していない状態(車両が直進する状態)であり、原点Oよりも右側が右に転舵した状態を示し、原点Oよりも左側が左に転舵した状態を示している。又、図2の縦軸はステアリングホイール4に加えられる運転者の操舵力(ステアリングホイール4を回転させるのに必要な力)を示し、原点Oよりも上側が右に転舵させる方向の力の大きさを示し、原点Oよりも下側が左に転舵させる方向の力の大きさを示している。
図2に示す中立点(原点)Oにおいては、タイヤの転がり方向が車両の前方を向いた直進状態にあり、この状態では操舵角と操舵力は共に0になっている。
ステアリングホイール4が中立点Oに位置している状態から運転者がステアリングホイール4を右方向に切ると、コントローラ14は、前述のように操舵角に基づいて算出される操舵速度の変化によってステアリングの切り始めを検知し、抵抗付与手段5によってステアリングシャフト2に抵抗力を付与する。ここで、ステアリングの切り始め領域(図2の中立点O〜変曲点Aまでの微小領域)においては、ステアリングシャフト2に付与される抵抗力を他の領域(その後の切り増し方向の操舵操作領域)において付与される抵抗力よりも高める。ステアリングの切り始め領域である中立点O〜変曲点Aまでの微小領域では、運転者がステアリングホイール4を回そうとするが、ステアリングシャフト2に付与される抵抗力によってステアリングホイール4は殆ど動かないため、運転者が操舵力を強める。尚、この例では、前述した車両が直進状態で操舵速度が略0の場合となるため、抵抗付与手段5にて予めステアリングシャフト2に抵抗力を付与しておく。
そして、運転者の操舵力が強まった変曲点Aにおいて、運転者の操舵力がステアリングシャフト2に付与される抵抗力に打ち勝ってステアリングホイール2が回り始める。
図2に示す変曲点A〜変曲点Bの領域においては、合計で抵抗付与手段5によってステアリングシャフト2に付与される抵抗力とほぼ同程度となる操舵系の各部品の摩擦に抗するだけの大きさの操舵力が必要となるために、操舵力が増加する。つまり、徐々に強まる運転者の操舵力が操舵系の各部品の抵抗力に勝り、ステアリングホイール2が回転し、ステアリングホイール4の回転が操舵系の部品に順次伝達されていく。変曲点Bにおいては、ステアリングホイール4の回転が不図示のタイロッドまで伝わり、タイロッドが左右の前輪(ナックル及びホイール)を動かし始める。
図2に示す変曲点B〜変曲点Cの領域においては、タイロッドに押されて(詳細には、前輪の一方は押されて、他方は引っ張られる)左右の前輪(ナックル及びホイール)が動き始めるが、タイヤの接地部分は動かない状態にあり、タイヤがそれ自身の弾性によって捩れる。そして、操舵角が増加するに伴いタイヤの弾性変形に操舵力が蓄積され、操舵力が徐々に増大する。変曲点Cにおいては、操舵力がタイヤの接地部分の摩擦力を含めた操舵系の部品の摩擦力に達し、この操舵力が操舵系の部品の摩擦力に打ち勝ってタイヤが地面に対して動き始める。
図2に示す変曲点C〜変曲点Dの領域においては、サスペンションのアライメントによる力(車両の進行方向を直進方向に戻そうとする力)に抗するために操舵力は徐々に増大する。変曲点Dは、運転者がステアリングホイール4を右に転舵するのを止めて戻し方向に転舵をはじめる点であって、ステアリングホイール4の回転が停止する。
図2に示す変曲点D〜変曲点Eの領域はステアリングを戻し始める領域であって、前述のように、コントローラ14は、操舵速度の変化(操舵方向の変化)によってステアリングの戻し始めを検知すると、ステアリングシャフト2に付与される抵抗力をステアリングホイール4の切り始め領域で付与される抵抗力よりも小さく設定する。この領域では抵抗付与手段5によってステアリングシャフト2に付与される抵抗力に抗してステアリングホイール4を右に回そうとする力が不要となるとともに、摩擦に抗して逆方向(左方向)にステアリングホイール4を回そうとするため、操舵力が急速に減少する(操舵角度の変化に対して、操舵力の低下が著しい)。尚、操舵速度の変化は、減速を検知してステアリングの戻し始めに備えても良い。つまり、操舵速度の減少で運転者の操舵終了を予測し、ステアリングシャフト2に付与される抵抗力をそれまでに付与されている抵抗力よりも小さく設定することもできる。
更に、走行時であって左右の前輪からのステアリングホイール4を戻り方向に回そうとする力が大きな場合は、逆に抵抗付与手段5によってステアリングシャフト2に付与される抵抗力を比較的大きく設定し、この抵抗力で戻り方向に回そうとする力に対抗させて、戻り方向の挙動を緩慢にするとともに、運転者の操作力を軽減することができる。変曲点Eにおいては、抵抗付与手段5によってステアリングシャフト2に付与される抵抗力に打ち勝ってステアリングホイール4が左に回り始める。
図2に示す変曲点E〜変曲点Fの領域は、ステアリングホイール4の回転が操舵系の部品に伝達され、右に回そうとする力から左に回そうとする力に変わっていく領域、つまり、右に回そうとする力の開放と左に回そうとする力の伝達領域である。変曲点Fにおいては、ステアリングホイール4の回転がタイロッドまで伝わり、タイロッドが動き始める。
図2に示す変曲点F〜変曲点Hの領域においては、タイロッドが戻り始めて車輪が動き始める。但し、タイヤの接地部分は動かない。つまり、タイヤの捩れが元に戻る過程と、逆方向(左方向)に捩れる過程であって、ステアリングホイール4が左方向に回転するとともに、ステアリングホイール4を右に切った状態を維持しようとする運転者の右方向への力が減少し、ステアリングホイール4を左に切ろうとする運転者の左方向への力が増加する。変曲点Hにおいては、タイヤの接地面が動き始め、タイヤが左方向に動き始める。つまり、左方向への操舵力がタイヤの接地部分の摩擦力を含めた操舵系の部品の摩擦力に達し、これらの摩擦力に打ち勝って地面に対してタイヤが動き始める。
図2に示す変曲点H〜変曲点Iの領域においては、サスペンションのアライメントによる力(車両の進行方向を直進方向に戻そうとする力)に抗するため、操舵力は徐々に増加する。尚、操舵角が0に近づく過程でステアリングシャフト2に付与される抵抗力を0にする。
以上、図2に示す例(据え切り)に沿って動作を説明したが、車両が走行している状態では、変曲点B〜変曲点Cの領域及び変曲点F〜変曲点Hの領域(タイヤの変形領域)は顕著に現れず、代わりに、サスペンションのアライメントによる力(車両の進行方向を直進方向に戻そうとする力)が大きくなる。そして、戻り方向への操舵角の変化において、操舵角が0に近づく過程でステアリングシャフト2に付与される抵抗力を0にするため、サスペンションのアライメントによる直進性に影響を及ぼすことがない。
ところで、図2に示す破線は、抵抗付与手段5によってステアリングシャフト2に付与される抵抗力を大きくした状態を示しており、具体的には、中立点O〜変曲点Aの領域での操舵力の上昇分が大きくなる。本実施の形態では、コントローラ14は、抵抗付与手段5によってステアリングシャフト2に付与される抵抗力を車速によって変化させ、例えば図2に破線にて示すように、車速が大きい場合の抵抗力を車速が小さい場合の抵抗力よりも大きく設定することによって高速走行時の操舵力が大きくなるようにしている。
又、コントローラ14は、抵抗付与手段5によって付与される抵抗力を操舵角によって変化させ、操舵角の増加と共に抵抗力を小さく設定する。
更に、本実施の形態では、図1に示すように抵抗付与手段5によるステアリングシャフト2への抵抗力付与の要否を選択する切替スイッチ16が設けられている。これにより、運転者は切替スイッチ16によって抵抗付与手段5による抵抗力付与の有無状態を選択することができるため、運転者の好みに応じた操舵感を得ることができる。尚、切替スイッチ16を変更し、付与される抵抗力の大きさを調整可能とすることもできる。
而して、本発明によれば、ステアリングシャフト2に回転方向に抵抗力を付与する抵抗付与手段5をステアリングホイール4の近傍に配置したため、ステアリングシャフト2の捩れの影響が発生せず、ステアリングの剛性感が高められて車両の高速走行時の安心感の向上が図られる。
又、本発明によれば、ステアリングの切り始めにおいてステアリングシャフト2に大きな抵抗力が付与されるため、ステアリングの切り始めの微小操舵域での操舵に手応え(しっかり感)が付与されて良好な操舵感(フィーリング)が得られる。そして、ステアリングの戻し始めにおいてステアリングシャフト2に付与される抵抗力が下げられるため、ステアリングホイール4が中立位置(直進位置)まで速やかに戻り、戻し始めの微小領域において良好な操舵感(フィーリング)が得られる。
更に、本発明によれば、車速が大きい場合の抵抗力を車速が小さい場合の抵抗力よりも大きく設定するため、高速走行時の修正操舵を切り過ぎることによる操縦性の悪化が防がれる。
又、本発明によれば、操舵角の増加と共に抵抗力を小さくするため、操舵角が小さな直進付近において運転者に大きな手応えを与えることができるとともに、大きく切られたステアリングホイール4を中立位置まで速やかに戻すことができる。
その他、本実施の形態では、切替スイッチ16によって抵抗付与手段5によるステアリングシャフト2への抵抗力付与の要否を選択することができるため、運転者の好みに応じた操舵感を得ることができる。
1 ステアリングコラム
2 ステアリングシャフト
4 ステアリングホイール
5 抵抗付与手段
6 操舵角センサ
7 操舵力センサ
9 摩擦体
10 スライダ
11 スプリング
12 電動モータ
14 コントローラ
15 車速センサ
16 切替スイッチ

Claims (4)

  1. 筒状のステアリングコラム内に挿通する回転可能なステアリングシャフトの回転に抵抗力を付与する抵抗付与手段を設け、該抵抗付与手段によって付与される抵抗力を車速に応じて変更する車両の操舵抵抗付与装置において、
    前記抵抗付与手段をステアリングホイールの近傍に配置するとともに、操舵角に基づいて算出される操舵速度の変化によってステアリングの切り始めを検知し、ステアリングの切り始め領域において前記抵抗付与手段によって付与される抵抗力を他の領域において付与される抵抗力よりも大きく設定し、
    操舵角に基づいて算出される操舵速度の変化によってステアリングの戻し始めを検知し、ステアリングの戻し始め領域において前記抵抗付与手段によって付与される抵抗力を他の領域において付与される抵抗力よりも小さく設定する車両の操舵抵抗付与装置。
  2. 前記抵抗付与手段によって付与される抵抗力を車速によって変化させ、車速が大きい場合の抵抗力を車速が小さい場合の抵抗力よりも大きく設定する請求項1記載の車両の操舵抵抗付与装置。
  3. 前記抵抗付与手段によって付与される抵抗力を操舵角によって変化させ、操舵角の増加と共に抵抗力を小さくする請求項1又は2記載の車両の操舵抵抗付与装置。
  4. 前記抵抗付与手段による抵抗力付与の要否を選択する切替スイッチを設けた請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両の操舵抵抗付与装置。
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