JP5782881B2 - トナーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、トナーの製造方法に関する。
近年、電子写真方式の画像形成装置は、省エネルギーの観点から、トナーの低温定着化が進んでいる。また、カラー電子写真方式の画像形成装置の高速化により、カラー商業印刷領域への進出が目覚しい。
このようなトナーの低温定着化とともに高い画像光沢も得られるようになった(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、低温定着化の促進に従い、画像光沢が過度にならないように抑制したい場合もあり、例えば、特許文献2では光沢を抑制する技術が開示されている。
上記特許文献2では、水性媒体中で微分散されたトナーの各原材料粒子を凝集させる工程で、水溶性ラジカル重合性開始剤を添加し、架橋された樹脂を含有するトナーの製造方法に関するものである。
特開2006−154816号公報 特開2010−55092号公報
しかしながら、前記凝集工程では、トナーの外殻を構成するシェル部分を架橋するため、水溶性重合性開始剤とトナー(中間体)粒子との接触面積が小さく、水溶性ラジカル重合性開始剤の影響力が弱くなるため、ロットによって光沢が安定しないという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ポリエステル樹脂粒子の架橋を安定したものとし、製造ロットによるトナーの光沢度のばらつきを抑制し、安定した生産が可能なトナーの製造方法を提供することを目的としている。
本発明の一の態様によれば、少なくとも、架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子と結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液とを混合し、架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子及結晶性ポリエステル樹脂粒子を凝集させることによりトナー粒子を形成するトナーの製造方法において、
下記(1)〜(3)の工程を備えることを特徴とする。
(1)ポリエステル鎖中に、不飽和ジカルボン酸モノマーユニットを有する非結晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解した樹脂溶液と水性媒体を混合し、非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を形成する工程と、
(2)前記(1)の工程で得られた非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液にラジカル重合開始剤を添加し、非結晶性ポリエステル樹脂を架橋することにより、架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液を形成する工程と、
(3)少なくとも前記(2)の工程で得られた架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液とを混合し、架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子及び結晶性ポリエステル樹脂粒子を凝集させることによりトナー粒子を形成する工程
請求項2の発明は、請求項1に記載のトナーの製造方法において、
前記(3)の工程では、非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、前記(2)の工程で得られた前記架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と混合し、それぞれの樹脂粒子を凝集させることによりトナー粒子を形成することを特徴とする。
本発明によれば、非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液にラジカル重合開始剤を添加して、予め架橋された非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を形成し、その後、架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液とを凝集してトナー粒子を形成するので、非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液とラジカル重合開始剤の接触する比表面積は、凝集後のトナーの中間体粒子の比表面積に対して格段に大きくなる。そのため、非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液中の粒子の架橋は、迅速に進行し、かつ、架橋度は安定したものとなる。したがって、製造ロットによるトナーの光沢度のばらつきは抑制され、安定した生産が可能となる。
以下、本発明に係るトナーの製造方法について説明する。
本発明のトナーの製造方法は、下記(1)〜(3)の工程を備える。
具体的には、
(1)ポリエステル鎖中に、不飽和ジカルボン酸モノマーユニットを有する非結晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解した樹脂溶液と水性媒体を混合し、非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を形成する工程と、
(2)前記(1)の工程で得られた非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液にラジカル重合開始剤を添加し、非結晶性ポリエステル樹脂を架橋することにより、架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を形成する工程と、
(3)少なくとも前記(2)の工程で得られた架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液とを混合し、架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子及び結晶性ポリエステル樹脂粒子を凝集させることによりトナー粒子を形成する工程
トナーの製造には、非結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、ラジカル重合開始剤、着色剤の他に、必要に応じて離型剤、外添剤等が用いられる。以下、これらについて説明する。
<非結晶性ポリエステル樹脂>
本発明に係るトナーは、結着樹脂として非結晶性ポリエステル樹脂を含有する。非結晶性ポリエステル樹脂を含有することにより、トナー粒子内での着色剤の分散性、トナーの耐フィルミング性の向上を実現する。なお、非結晶性ポリエステル樹脂とは、示差走査熱量測定法(DSC)において、吸熱量変化で吸熱ピークを有さないポリエステル樹脂をいう。
本発明に係るトナーに使用可能な非結晶性ポリエステル樹脂は、非結晶性を有するものであれば特に限定されるものではなく、公知のポリエステル樹脂を用いることができる。
例えば、非結晶性ポリエステル樹脂は、公知の多価カルボン酸と多価アルコールとを合成することにより得ることができる。市販の非結晶性ポリエステル樹脂を用いてもよいし、適宜合成によって得られた非結晶性ポリエステル樹脂を用いてもよい。
非結晶性ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールAのような2価アルコールが挙げられる。また、3価以上のアルコールとしては、例えばグリセリン、ソルビトール、1,4−ソルビタン、トリメチロールプロパンが挙げられる。
非結晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えばシュウ酸、
コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸が挙げられる。また、これらジカルボン酸の二塩基酸塩や酸無水物、低級アルキルエステルのような誘導体を用いてもよい。
なお、請求項1、(1)の工程における不飽和カルボン酸モノマーユニットとしては、
架橋反応性の高さから、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸が好ましい。このうち特に好ましいのはフマル酸である。
ただし、不飽和カルボン酸モノマーユニットの使用量は、架橋度を制御するためポリエステル樹脂を構成する全酸モノマーユニット中の1質量%以上10質量%以下の範囲とすることが好ましい。1質量%未満であれば、本発明の効果が表れにくく、10質量%より大きいと架橋過多により生産性を低下させる恐れがある。
3価以上のカルボン酸は、ポリエステル樹脂が前記(1)の工程で、溶剤可溶となる範囲で使用することができる。3価以上のカルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸及びこれらの酸無水物や低級アルキルエステルが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
3価以上のカルボン酸を含有することにより、高分子鎖が架橋構造をとることができ耐オフセット性を改善できるものの、溶剤不溶分の発生により生産性を低下させる恐れがあるため、3価以上のカルボン酸モノマーは非晶性ポリエステルに用いられる全酸モノマーの10質量%とすることが好ましい。さらに好ましくは、非晶性ポリエステルは3価以上のカルボン酸を含有しない線状ポリエステルとし、トナー溶融時の弾性率付与は、ラジカル重合開始剤を添加し、非結晶性ポリエステル樹脂を架橋することに達成することが好ましい。
また、非結晶性ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分は、前述した脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を有するジカルボン酸成分を含むことが好ましい。スルホン酸基を有するジカルボン酸は、顔料等の着色剤の分散性向上に寄与することから有効である。また、樹脂粒子を水性媒体中に乳化或いは懸濁分散させて樹脂粒子分散液を作製する際、ジカルボン酸成分がスルホン酸基を有することにより界面活性剤を使用せずに乳化或いは懸濁分散させることが可能である。
非結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量としては、THF(テトラヒドロフラン)可溶分にして、2000〜60000が好ましく、さらに低温定着性を向上させる観点から、3000〜20000であることが好ましい。ここで、重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)によって測定したものをいう。具体的な装置条件を下記に示す。濃度1mg/mlになるように測定試料をテトラヒドロフランに溶解させる。溶解条件としては、室温にて超音波分散機を用いて5分間行う。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理した後、GPCへ10μL試料溶解液を注入する。GPCの測定条件の具体例を下記に示す。
GPCの装置:HLC-8220GPC(東ソー社製)
カラム:TSKgelG2000HXL(内径7.8mm×30cm)3連(東ソー社製)
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0ml/min
試料の濃度:0.1%(v/w)
試料の注入量:100μl
検出器:屈折率検出器(RI検出器)
試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。
トナー中の結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂の質量比率(結晶性ポリエステル樹脂:非結晶性ポリエステル樹脂)は、定着特性獲得の観点より、2:98〜60:40であることが好ましく、5:95〜40:60であることがより好ましい。
上記非結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、特に限定されず、酸成分とアルコール成分とを反応させる公知のポリエステル樹脂重合法により製造することができる。具体的には、直接重縮合、エステル交換法等、モノマーの種類に応じてその製造方法を使い分けて選択できる。また、酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分:アルコール成分)は、反応条件等によって異なるので一概にはいえないが、通常1:1である。
非結晶性ポリエステル樹脂を製造する際、重合温度は180〜230℃とすることが好ましく、必要に応じて反応系内を減圧し、重合時に発生する水やアルコールを反応系より除去しながら反応させることが好ましい。また、モノマーが反応温度下で溶解又は相溶しない場合は高沸点溶剤を溶解補助剤として添加することによりこのようなモノマーを溶解させることができる。なお、重合反応を行う際、溶解補助溶剤を留去しながら反応を行うことが好ましい。また、共重合反応を行う際に相溶性の悪いモノマーが存在する場合、相溶性の悪いモノマーと当該モノマーと反応させる酸又はアルコールとを先に反応させておいてから、主成分とともに重合させることが好ましい。
また、非結晶性ポリエステル樹脂を製造する際に触媒を添加して重合反応を行うことが好ましい。使用可能な触媒としては、例えばスズ化合物、ジルコニウム化合物、ゲルマニウム化合物が挙げられる。具体的には、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニル、酢酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミンが挙げられる。また、重合温度を低下させて製造することにより発生する炭酸ガス排出量を削減する観点から、希土類金属、ドデシルベンゼンスルホン酸のようなルイス酸を使用することもできる。
<結晶性ポリエステル樹脂>
本発明で用いられるトナーは、定着助剤として結晶性ポリエステル樹脂を含有するものである。本発明において、結晶性ポリエステル樹脂とは示差走査熱量測定法(DSC)において明確な吸熱ピークを有するポリエステル樹脂をいう。結晶性ポリエステル樹脂の含有により低温定着性を実現させることができる。
結晶性ポリエステル樹脂としては、上記のように吸熱ピークを有するポリエステル樹脂であれば特に限定されるものではない。例えば、結晶性ポリエステル樹脂主鎖に対して他の成分を共重合させた構造のポリマーが存在する場合、このポリマーよりなる樹脂が吸熱ピークを示すのであれば、本発明でいう結晶性ポリエステル樹脂に該当する。
結晶性ポリエステル樹脂を構成する酸成分としては、種々のジカルボン酸が挙げられ、その中でも離型剤を被覆又は内包し、さらにマトリクスとなる非結晶性ポリエステル樹脂からの離脱を防止するという観点から、脂肪族ジカルボン酸が好ましく、直鎖型の脂肪族ジカルボン酸が特に好ましい。
本発明で使用される結晶性ポリエステル樹脂を形成する脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸が挙げられる。また、これら脂肪族ジカルボン酸の低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。上記脂肪族ジカルボン酸の中でも、低温定着の観点から、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、ドデセニルコハク酸が好ましい。
また、脂肪族ジカルボン酸に芳香族ジカルボン酸を添加して結晶性ポリステルを作成することも可能である。使用可能な芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸が好ましい。芳香族ジカルボン酸の添加量は20構成モル%以下とすることが好ましく、より好ましくは10構成モル%以下、さらに好ましいのは5構成モル%以下である。芳香族ジカルボン酸の添加量を20構成モル%以下にすることにより、作成時に乳化が確実に行えるとともに、ポリエステル樹脂の結晶性を確保でき、結晶性ポリエステル樹脂特有の画像光沢性を得るうえで好ましいものである。また、融点降下による画像保存性低下の懸念もなくなるので好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂のアルコール成分を構成するアルコール化合物としては脂肪族ジオールが好ましく、その中でも主鎖を構成する炭素原子の数が2〜22の範囲にある直鎖型の脂肪族ジオールがより好ましい。さらに、入手容易性や確実な低温定着性の発現、高い光沢性を有する画像の獲得という観点からすれば、主鎖を構成する炭素原子の数が2〜14の範囲にある直鎖型の脂肪族ジオールが特に好ましい。また、分岐型の脂肪族ジオールを用いることもできるが、ポリエステル樹脂の結晶性を確保する上で直鎖型の脂肪族ジオールの割合を高めにすることが好ましい。直鎖型の脂肪族ジオールの割合を高めにすることで、結晶性を確保でき、融点降下による画像保存性低下の問題もなく、さらには耐トナーブロッキング性や低温定着性の安定化にも効果的である。
脂肪族ジオールの主鎖を構成する炭素原子の数を2〜22の範囲にすることにより、芳香族ジカルボン酸を併用しても低温定着を阻害するような融点のポリエステル樹脂が形成されることはなく、低温定着時に十分に溶融させることができる。また、高い光沢性を有するトナー画像を形成することができる。トナー画像はトナーを用いて形成された画像である。
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールが挙げられるが、これらに限定されない。なお、ここに挙げた中でも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分は、脂肪族ジオール成分の含有量を80構成モル%以上とすることが好ましく、90構成モル%以上とすることがより好ましい。アルコール成分には、必要に応じて脂肪族ジオール以外の他のジオール成分を含有させてもよい。脂肪族ジオール成分の含有量を80構成モル%以上とすることにより、ポリエステル樹脂の結晶性や形成されるトナー画像の高光沢性、さらには低温定着性を実現するうえで有効である。
本発明で使用される結晶性ポリエステル樹脂は、その融点が60℃〜98℃の範囲であることが好ましく、70℃〜92℃の範囲であることがより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の融点を60℃〜98℃とすることにより、ポリエステル樹脂の融点に起因するフィルミング発生や定着処理されたトナー画像の保存性低下といった問題は生じない。また、融点が高すぎることによる画像荒れや光沢低下の問題も生じない。
結晶性ポリエステルの重量平均分子量としては、耐フィルミング性を確保する観点から、10000〜20000が好ましく、さらに好ましくは15000〜19000である。ここで、重量平均分子量は、前述の非結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量と同様に、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)によって測定したものをいう。
結晶性ポリエステル樹脂のトナー全体における含有量は、1〜40質量%の範囲であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が1〜40質量%であることにより、所望の低温定着性が得られ、また着色剤の分散性が阻害されることもない。また、結晶性ポリエステル樹脂に起因するトナー破砕が発生せず、フィルミングの発生もない。
<着色剤>
着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料等の公知の着色剤を任意に用いることができる。
黒の着色剤としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックの他、マグネタイト、フェライト等の磁性粉を用いることができる。
カラーの着色剤としては、C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントブルー15;3、同60、同76等の顔料が挙げられる。また、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同68、同11、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82,同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同69、同70、同93、同95等の染料を挙げることができる。また、これらを混合してもよい。
<外添剤>
外添剤としては、公知の疎水性シリカ、疎水性金属酸化物の他に、酸化セリウム粒子、チタン酸塩粒子、或いは炭素数20〜50の脂肪酸金属塩を添加することが耐フィルミング性の観点から好ましい。
<離型剤>
本発明で使用される離型剤は特に限定されるものではなく、公知の離型剤を使用することができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、合成エステルワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物、石油系ワックス、或いはこれらの変性物が挙げられる。
上記離型剤の中でも、融点が70℃〜95℃の合成エステルワックスはフィルミング防止の観点から特に好ましく用いられる。上記合成エステルワックスの例としては、ベヘン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、クエン酸トリベエニルが挙げられる。また、ベヘン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、クエン酸トリベへニルのような合成エステルワックスと、融点が75〜100℃のパラフィンワックスを併用することにより、トナー画像の光沢性向上と耐フィルミング性向上とを両立することができる。
パラフィンワックスの中でも、融点が75〜100℃のワックスを使用すると、低速領域から高速領域のいかなるプロセススピードでも、高温領域でのオフセット性を向上できる。加えて、クリーニングブレードをクリーニング手段とする画像形成装置では良好なブレードクリーニング性能を発現することができる。
これら離型剤のトナー中の含有量は5〜20質量%が好ましく、7〜13質量%がより好ましい。5質量%未満の場合は高温領域でオフセットが発生することがあり、20質量%を超える場合はトナー内部に離型剤が取り込まれにくくなる傾向がある。
<トナーの製造方法>
以下、本発明の製造方法について、具体例を挙げて説明する。
(1)不飽和ジカルボン酸モノマーユニットを有する非結晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解した樹脂溶液と水性媒体を混合し、非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を形成する工程
ポリエステル樹脂を、酢酸エチルやメチルエチルケトン等の有機溶媒に溶解し、水性媒体中に分散機を用いて乳化分散させた後、脱溶剤処理をしてもよい。もしくは、特開2006−337995号公報に開示されているように、ドデシルベンゼンスルフォン酸などの強酸とともに水性媒体中で多価アルコールおよび多価カルボン酸の液滴を形成したのち、縮合させてなるポリエステル樹脂粒子分散液を作製してもよい。ポリエステル樹脂粒子は、体積基準のメディアン径として、50〜400nmであることが好ましい。特に好ましくは、250nm〜360nmである。生産設備に余裕があれば、ポリエステル樹脂粒子分散液を作製する際に、ポリエステル樹脂(溶液)にあらかじめ、離型剤、着色剤、荷電制御剤などのトナー内部添加剤を含有、分散させておいてもよい。
ここで、水性媒体とは、界面活性剤などの分散剤を含む水をいうが、アルコールやケトン類など有機溶剤を50%未満、水に溶解されていてもよい。
(2)(1)の工程で得られた前記非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液にラジカル重合開始剤を添加し、非結晶性ポリエステル樹脂を架橋することにより、架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液を形成する工程
ラジカル重合開始剤としては、水溶性のラジカル重合開始剤が製造安定性の観点から特に好ましい。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素と、アスコルビン酸、エリソルビン酸、第一鉄塩等の還元剤と組み合わせたレドックス開始剤などの水溶性ラジカル重合開始剤が本発明の効果を得るために好ましく用いられる。反応性が高く生産性に優れるため、特に好ましいのは、過硫酸塩である。
(3)(2)の工程で得られた前記架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、を混合した水性媒体中に、凝集剤を添加し、温度調整することにより、トナー粒子を形成する工程
着色剤粒子分散液は、着色剤を水性媒体中に分散させることによって得る。この着色剤粒子分散液を作製する工程では、機械的エネルギーによって分散を行うが、その分散機としては特に限定されるものではなく、高速回転するローターを備えた攪拌装置クレアミックス(エムテクニック社製)、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、キャビトロン、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザー等を用いることができる。
着色剤微粒子分散液の作製工程において調製される分散液中の着色剤粒子は、その体積基準のメディアン径が10〜300nmであることが好ましく、より好ましくは100〜200nm、さらに好ましくは100〜150nmである。例えば、上述の機械的エネルギーの大きさを調整することにより、体積基準のメディアン径を上記範囲内に制御することができる。
凝集剤としては 、例えばアルミニウム金属塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。これら塩類のアルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられる。また、これら塩類のアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。このうち、特に好ましいのはカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムである。前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の対イオン(塩を構成する陰イオン)としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、炭酸イオン、硫酸イオン等が挙げられる。凝集剤としては、アルコール、テトラヒドロフラン、ケトンなどの水溶性のある有機溶剤を用いることも可能である。ポリエステル樹脂粒子分散液の調 製時に、ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させる工程を経る場合は、ポリエステル樹脂粒子に5〜20%程度の有機溶剤を残存させておけば、凝集剤の添加量をごく微量にするか、省くことができるが、トナー粒子として所望の粒径まで凝集した後に脱溶剤する工程が必要になる。
なお、トナー粒子の好ましい粒径、すなわち体積基準のメディアン径D50は、画質とハンドリングを両立する観点から、4.0〜9.0μmであることが好ましい。
トナー粒子体積基準のメディアン径D50は、コールターマルチサイザー3(ベックマン・コールター製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター製)を接続した装置を用いて測定、算出する。
測定手順としては、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を作成する。このトナー分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター製)の入ったビーカーに、測定器表示濃度が5%〜10%になるまでピペットにて注入する。この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値が得られる。測定機において、測定粒子カウント数を25000個、アパチャ−径を100μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出する。体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準メディアン径とする。
離型剤を添加する場合、この工程において上記水性媒体中に離型剤粒子の分散液(ワックスエマルジョン)を添加し、樹脂粒子、着色剤粒子及び離型剤粒子を塩析、凝集させればよい。或いは、前述のように上記(1)または(2)の工程において離型剤粒子の分散液を添加し、樹脂粒子と離型剤粒子の分散液を調製しておき、(4)の工程において凝集させてもよい。
(4)水性媒体からトナー粒子を濾別し、洗浄処理によって当該トナー粒子から界面活性剤等の不要物を除去する工程
(5)洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する工程
(6)乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程
必要に応じて、疎水性シリカ、金属酸化物粒子などの外添剤と(5)の工程で得られたトナー粒子と乾式混合する。
なお、上記の(3)の工程では、(2)の工程で得られた前記架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、を混合した水性媒体中に、凝集剤を添加し、温度調整することにより、トナー粒子を形成するとしたが、上記の(3)の工程で、非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、前記(2)の工程で得られた前記架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、着色剤を添加し、これらを混合した水性媒体中に凝集剤を添加し、トナー粒子を形成するようにしても構わない。
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.非結晶性ポリエステル樹脂の合成、非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の調 製
(1−1)非結晶性ポリエステル樹脂(A1)の合成
フマル酸:4.2質量部
テレフタル酸:78質量部
(多価アルコール単量体)
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンプロピレンオキサイド2モル付加物 :152質量部
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンエチレンオキサイド2モル付加物 :48質量部
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた反応容器に、上記多価カルボン酸単量体及び多価アルコール成分を仕込み、1時間を要して190℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認した後、触媒Ti(OBu)4(多価カルボン酸単量体全量に対し、0.006質量%)を投入した。
更に、生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに6時間脱水縮合反応を継続し重合を行い、非結晶性ポリエステル樹脂(A1)を得た。
得られた非結晶性ポリエステル樹脂(A1)の樹脂の分子量をGPCにて測定したところ、重量平均分子量8100であった。
(1−2)非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A1)の調製
樹脂の合成で得られた樹脂をハンマーミルで粗粉砕したものを用い、樹脂粒子分散液を調製した。
攪拌動力を与えるアンカー翼の備えられた反応容器にメチルエチルケトン180質量部、IPA60質量部を添加、Nを送気し、系内の空気をNで置換した。
次いで、系内オイルバス装置により60℃に加熱しながら非結晶性ポリエステル樹脂(A1)291質量部をゆっくりと添加し、攪拌しながら溶解させた。
次いで、これに10%アンモニア水20質量部を添加したのち、定量ポンプを用い、攪拌しながらこれに脱イオン水1500質量部を投入した。乳化系内が乳白色を呈し、且つ攪拌粘度が低下した時点を乳化終了とした。
次いで、遠心力に基づく差圧によって樹脂粒子分散液を汲み上げ、反応槽内壁上に濡れ壁を形成する攪拌翼、還流装置、および真空ポンプによる減圧装置の備えられた反応槽へ樹脂粒子分散液を移し、反応槽内壁温度を58℃、反応槽内圧8kPa[abs]の減圧下で攪拌した。樹脂粒子分散液が650質量部に達した際、これを終点とし、反応槽内圧を常圧にして、攪拌しながら常温まで冷却した。得られた樹脂粒子分散液(A1)中に分散する樹脂粒子の体積基準のメディアン径は、262nmであった。
(1−3)非結晶性ポリエステル樹脂(A2)の合成
非結晶性ポリエステル樹脂(A1)の合成で、フマル酸 4.2質量部を用いたところをイタコン酸 4.7質量部とした以外は同様にして合成した。得られた非結晶性ポリエステル樹脂(A1)の樹脂の重量平均分子量は8000であった。
(1−4)非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A2)の調製
非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A1)の調製で、用いる樹脂を非結晶性ポリエステル樹脂(A2)に変更した以外は同様にして調製した。得られた樹脂粒子分散液(A2)中に分散する樹脂粒子の体積基準のメディアン径は、255nmであった。
2.架橋ポリエステル樹脂粒子分散液の調製
(2−1)架橋ポリエステル樹脂粒子分散液B1の調製
上記で得られた「非結晶性ポリエステル樹脂(A1)分散液」 2100質量部とイオン交換水1250質量部に、過硫酸カリウム10.3質量部をイオン交換水210質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下で、2時間にわたり加熱攪拌を行って架橋反応を行い、反応終了後、28℃に冷却して「架橋ポリエステル樹脂粒子分散液B1」を作製した。「架橋ポリエステル樹脂粒子分散液B1」を固液分離し、架橋ポリエステル樹脂粒子B 1のテトラヒドロフラン可溶分について重量平均分子量を測定したところ28700であった。
なお、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルター上に残存したテトラヒドロフラン不溶分、すなわちゲル分は架橋ポリエステル樹脂粒子 B1(の固形分)に対し、6.4質量%であった。ゲル分を固体C13NMRで分析したところ、定量比較は困難であったものの、非結晶性ポリエステル樹脂分散液(A1)の固形分より、3級炭素のピークが上昇していることが確認された。
(2−2)架橋ポリエステル樹脂粒子分散液B2の調製
架橋ポリエステル樹脂粒子分散液B1の調製で非結晶性ポリエステル樹脂(A1)分散液を用いたところを、非結晶性ポリエステル樹脂(A2)分散液とした以外は同様にして架橋ポリエステル樹脂粒子分散液B2を調製した。「架橋ポリエステル樹脂粒子分散液B2」を固液分離し、架橋ポリエステル樹脂粒子B2のテトラヒドロフラン可溶分について重量平均分子量を特定したところ30200であった。なお、テトラヒドロフラン不溶分について、架橋ポリエステル樹脂粒子B1と同様に測定したところ、架橋ポリエステル樹脂粒子B2(の固形分)に対し、6.1質量%であった。
3.結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(C1)の調製
非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A1)の調製において、非結晶性ポリエステル樹脂(A1)291質量部用いたところを1,10-デカンジオールとセバシン酸からなる、結晶性ポリエステル樹脂(C1)を用いた以外は同様にして、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(C1)を得た。得られた乳化樹脂粒子の体積基準のメディアン径は、207nmであった。
4.シアン着色剤分散液の調製
銅C.I.ピグメントブルー15:3 50質量部
イオン性界面活性剤 (ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム) 5質量部
脱イオン水 195質量部
以上を混合溶解し、ホモジナイザー(IKA製ウルトラタラックス)により10分間分散し、中心粒径150nm、固形分量20重量%のシアン着色剤分散液を得た。
5.離型剤分散液の調製
パラフィンワックスFNP92(融点91℃、日本精蝋社製) 50質量部
イオン性界面活性剤 (ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)5質量部
脱イオン水 195質量部
以上を60℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、中心径170nm固形分量20重量%のワックス分散液を得た。以上で調製した材料を用い、凝集合一法により、トナー粒子を作製した。
6.トナー粒子の製造
(6−1)トナー粒子1の製造
非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A1) 500質量部
架橋ポリエステル樹脂粒子分散液(B1) 510質量部
結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(C1)200質量部
シアン着色剤分散液 100質量部
離型剤分散液 150質量部
脱イオン水 790 質量部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中においてウルトラタラックスT50で十分に混合・分散した。次いで、これに硫酸アルミニウム0.98質量部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら47℃まで加熱した。47℃で60分保持した。
その後、0.5Mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを8.0にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら90℃まで加熱し、3時間保持した。反応終了後、冷却し、濾過、脱イオン水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これを更に40℃の脱イオン水5000質量部に再分散し、300rpmで15分攪拌・洗浄した。これを更に5回繰り返し、濾液のpHが7.01、電気伝導度9.8μS/cm、表面張力が71.1Nmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo.5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を40℃で12時間継続し、トナー粒子1を得た。
得られたトナー粒子1の体積平均粒径を測定したところ体積基準のメディアン径D50は6.3μmであった。
(6−2)トナー粒子2の製造
架橋ポリエステル樹脂粒子分散液(B1) 1360質量部
結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(C1)200質量部
シアン着色剤分散液 100質量部
離型剤分散液 150質量部
脱イオン水 440 質量部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中においてウルトラタラックスT50で十分に混合・分散し、以後の操作はトナー粒子製造例1と同様にしてトナー粒子2を作製した。得られたトナー粒子2の体積平均粒径を測定したところ体積基準のメディアン径D50は6.4μmであった。
(6−3)トナー粒子3の製造
トナー粒子製造例2において、架橋ポリエステル樹脂粒子分散液(B1)を架橋ポリエステル樹脂粒子分散液(B2)に変更したこと以外、前記トナー粒子2の製造と同様にしてトナー粒子3を作製した。得られたトナー粒子3の体積平均粒径を測定したところ体積基準のメディアン径D50は、6.3μmであった。
(6−4)トナー粒子4の製造(特開2010−55092号 実施例1の様態)
非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A1) 500質量部
結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(C1)200質量部
シアン着色剤分散液 100質量部
離型剤分散液 150質量部
脱イオン水 1000 質量部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中においてウルトラタラックスT50で十分に混合・分散した。次いで、これに硫酸アルミニウム0.98質量部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら47℃まで加熱した。粒子サイズが6.3μmに達するまでコールターカウンタを用いて粒子径をモニタした。次いで、非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A1) 300質量部と過硫酸カリウム2.5質量部との混合物を約45℃で粒子に添加してシェルを形成し、その後約50℃で約2時間以上加熱した。得られたトナー粒子中間体の体積基準のメディアン径は8.3μmであった。その後、NaOHを添加して反応スラリーのpHを約6.3に上げ、次いで約2.0質量部のエチレンジアミンテトラカルボン酸(EDTA)を添加してトナー成長を停止させた。トナー粒子の成長を停止させた後、反応混合物を69℃に加熱し、0.3MのHNO3溶液を用いて反応スラリーのpHを約6.2に下げた。次いでこのスラリーを、生じた架橋を確実にするために約90℃で約2時間加熱した。反応スラリーのpHは、NaOHを加えて6〜6.3に維持した。反応終了後の洗浄、固液分離はトナー製造例1と同様に行った。
得られたトナー粒子4の体積基準のメディアン径D50は8.4μmであった。
(6−5)トナー粒子5の製造
トナー粒子1において、ポリエステル樹脂粒子分散液A1 500質量部、架橋ポリエステル樹脂粒子分散B1 510質量部用いたところを、ポリエステル樹脂粒子分散液A1 800質量部用いて架橋ポリエステル樹脂粒子分散B1を用いなかった以外は同様にして、トナー粒子5を得た。得られたトナー粒子4の体積基準のメディアン径D50は6.4μmであった。
7.光沢度評価
トナー粒子1〜5について、それぞれ10ロットの試作を行い、下記の要領で光沢度と光沢度のばらつきを測定した。
<光沢度評価法>
画像形成装置として、市販の複合機「bishub PRO C6501」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を用い、この複合機にトナー1〜5 の各ロットを各々投入し、熱ローラ定着方式による定着装置の加熱部材の表面温度を150℃として、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下において、「POD128gグロスコート(128g/m2 )」(王子製紙社製)上に、転写紙上のトナー量0.5mg/cm2に設定したベタ画像を形成した。なお、光沢度は、光沢度計「Gloss Meter」(村上色彩工学研究所製)を用い、屈折率1.567のガラス表面を基準として入射角75°で測定した。
トナー1〜5それぞれ10ロットについて、光沢度と最大値と最小値、さらに光沢度の算術平均値を測定した。光沢度の算術平均値が40~60にあり、同一トナー処方中の光沢度の最大値と最小値の差が6以下であれば合格とする。
評価結果を表1に示した。
Figure 0005782881
なお、表1には、実施例1〜3、比較例1〜2の各トナーを構成する樹脂の種類等についても示している。
表1の結果より、実施例1〜3は、比較例1〜2に比べて、光沢度平均値が適度な範囲に制御され、製造のばらつきも少なく安定していることが認められる。

Claims (10)

  1. 少なくとも、架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子と結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液とを混合し、架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子及結晶性ポリエステル樹脂粒子を凝集させることによりトナー粒子を形成するトナーの製造方法において、
    下記(1)〜(3)の工程を備えることを特徴とするトナーの製造方法。
    (1)ポリエステル鎖中に、不飽和ジカルボン酸モノマーユニットを有する非結晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解した樹脂溶液と水性媒体を混合し、非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を形成する工程と、
    (2)前記(1)の工程で得られた非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液にラジカル重合開始剤を添加し、非結晶性ポリエステル樹脂を架橋することにより、架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液を形成する工程と、
    (3)少なくとも前記(2)の工程で得られた架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液とを混合し、架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子及び結晶性ポリエステル樹脂粒子を凝集させることによりトナー粒子を形成する工程
  2. 前記(3)の工程では、非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、前記(2)の工程で得られた前記架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と混合し、前記非結晶性ポリエステル樹脂粒子、結晶性ポリエステル樹脂粒子、及び前記架橋非結晶性ポリエステル樹脂粒子を凝集させることによりトナー粒子を形成することを特徴とする請求項1記載のトナーの製造方法。
  3. 前記不飽和ジカルボン酸モノマーユニットが、前記非結晶性ポリエステル樹脂を構成する全酸モノマーユニットの1質量%以上10質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のトナー製造方法。
  4. 前記不飽和ジカルボン酸モノマーユニットがフマル酸由来であることを特徴とする請求項1に記載のトナー製造方法。
  5. 前記ラジカル重合開始剤が水溶性ラジカル重合開始剤であることを特徴とする請求項1に記載のトナー製造方法。
  6. 前記ラジカル重合開始剤が過硫酸塩であることを特徴とする請求項1に記載のトナー製造方法。
  7. 前記有機溶媒がメチルエチルケトン、酢酸エチルであることを特徴とする請求項1に記載のトナー製造方法。
  8. 前記(1)の工程の非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液中の非結晶性ポリエステル樹脂粒子の体積基準のメディアン径が、250nm〜360nmであることを特徴とする請求項1に記載のトナー製造方法。
  9. 前記(1)の工程において用いる非結晶性ポリエステル樹脂が、三価以上のカルボン酸モノマーを含有しない線状ポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載のトナーの製造方法。
  10. 前記(1)の工程において用いる非結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が、3000〜20000であることを特徴とする請求項1に記載のトナーの製造方法。
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