JP5718684B2 - トナー用結着樹脂 - Google Patents

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Description

本発明は、結晶性ポリエステルを含有するトナー用結着樹脂及びその製造方法、並びに電子写真用トナー及びその製造方法に関する。
結晶性ポリエステルは、ポリエチレン等の他の結晶性樹脂と異なり、非晶質ポリエステルとの相容性が高く、分散が容易であるという特徴や、結晶部分が発現する明確な融点を有するという特徴により、トナーの低温定着性向上に適した結着樹脂として、近年注目されている。
特許文献1には、低温定着が可能であると共に、十分な帯電性を有する静電荷像現像用トナーを提供することを課題として、少なくとも、結着樹脂として結晶性ポリエステルと無定形高分子とを含み、表面が前記無定形高分子を主成分とする表面層で被覆された静電荷像現像用トナーにおいて、前記結晶性ポリエステルの含有量が30〜80重量%の範囲内であり、前記静電荷像現像用トナーの最表面に含まれる前記結晶性ポリエステルの割合が15atomic%以下であり、且つ、前記表面層の平均厚みが0.01μm以上0.5μm以下である静電荷像現像用トナーが開示されている。
特許文献2には、長期使用において安定な画像を形成可能な静電潜像現像用トナーを提供することを課題として、非晶性ポリエステル樹脂粒子を分散した非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、結晶性ポリエステル樹脂粒子を分散した結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、着色剤粒子を分散した着色剤粒子分散液と、離型剤粒子を分散した離型剤粒子分散液とを混合して、前記非晶性ポリエステル樹脂粒子と前記結晶性ポリエステル樹脂粒子と前記着色剤粒子と前記離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する凝集工程と、前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度以上に前記凝集粒子を加熱して前記凝集粒子を融合・合一する融合合一工程と、を少なくとも有し、前記非晶性ポリエステル樹脂と前記結晶性ポリエステル樹脂との混合物が、特定の分子量を満たす、静電潜像現像用トナーの製造方法が開示されている。
特開2004−191927号公報 特開2008−158197号公報
炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物をカルボン酸成分の主成分として用いて得られる結晶性ポリエステルを含むトナー用結着樹脂は、低温定着性に優れるものの、加圧保存安定性や環境安定性に劣るという問題があった。
特許文献1及び2は、いずれも結晶性ポリエステルの水系分散液を用いる、いわゆるケミカル法について開示しているが、上記の問題点及びその解決手段については何ら開示していない。
本発明の課題は、上記問題を解決し、優れた低温定着性を保ちつつ、加圧保存安定性及び環境安定性に優れた電子写真用トナーを得ることである。更には、これらの特性を有する電子写真用トナーを得るためのトナー用結着樹脂及びその製造方法、並びに電子写真用トナー及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記問題が生じる理由として、溶媒中に溶解する低融点の低分子量成分(例えば重量平均分子量500以下の低分子量成分、以下同様)が、乳化されず溶剤・あるいは水中に溶け残り、それが溶剤除去・乾燥等の時に、トナー粒子表面に付着することが原因と推測した。
本発明者らは、溶媒中に溶解する低分子量成分であっても、結晶性ポリエステルの融点よりもやや低い低分子量成分の場合に、意外なことに、トナー用結着樹脂の加圧保存安定性や環境安定性をほとんど低下させることなく、低温定着性を改善することを見出した。これは、トナー表面に付着した低分子量成分が結晶性ポリエステルより、先に融解することで、トナーの結晶性ポリエステルの融解を誘発しているのではないかと考えられる。更に、本発明者らは、当該低分子量成分は、末端がカルボキシ基である低分子のポリエステルが主成分であることを見出した。
本発明は、下記[1]〜[5]に関する。
[1]少なくとも、炭素数2〜12の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物を70〜100モル%含むカルボン酸成分とを縮重合して得られる結晶性ポリエステルを含有するトナー用結着樹脂であって、
該結晶性ポリエステルのメチルエチルケトン可溶成分(20℃)の量が結晶性ポリエステルの0.5〜7重量%であり、且つ「(該結晶性ポリエステルの融点)−(該メチルエチルケトン可溶成分のDSC測定のピークトップ温度)」が1〜15℃の範囲内である、トナー用結着樹脂。
[2]上記[1]に記載のトナー用結着樹脂を含有する、電子写真用トナー。
[3]少なくとも、炭素数2〜12の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物を70〜100モル%含むカルボン酸成分とを縮重合し、結晶性ポリエステルを得る工程を有する、結晶性ポリエステルを含有するトナー用結着樹脂の製造方法であって、
前記アルコール成分と前記カルボン酸成分とのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)が1.03〜1.20であり、
130〜160℃の温度範囲で、理論反応水量の排出時を反応率100%とした場合に、排出された反応水量から求められる反応率が40%以上になるまで縮重合する工程を含む、トナー用結着樹脂の製造方法。
[4]下記工程1〜工程4を有する、トナーの製造方法。
工程1:少なくとも、炭素数2〜12の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物を70〜100モル%含むカルボン酸成分とを縮重合して、結晶性ポリエステルを得る工程であって、該結晶性ポリエステルのメチルエチルケトン可溶成分(20℃)の量が結晶性ポリエステルの0.5〜7重量%であり、且つ「(該結晶性ポリエステルの融点)−(該メチルエチルケトン可溶成分のDSC測定のピークトップ温度)」が1〜15℃の範囲内である、結晶性ポリエステルを得る工程。
工程2:工程1で得られた結晶性ポリエステルを含む水系分散液を得る工程。
工程3:工程2で得られた結晶性ポリエステルを含む水系分散液及び非晶質樹脂を含む水系分散液を混合し、次いで凝集工程に付すことにより凝集粒子の水系分散液を得る工程。
工程4:工程3で得られた凝集粒子の水系分散液を合一工程に付すことにより合一粒子の水系分散液を得る工程。
[5]上記[4]に記載の製造方法により得られる、電子写真用トナー。
本発明において「結晶性ポリエステルのメチルエチルケトン可溶成分(20℃)」とは、結晶性ポリエステルにおいて20℃のメチルエチルケトンに実施例に記載の条件で溶解しうる成分をいう。本明細書では、メチルエチルケトンをMEKと表すこともある。
本発明のトナー用結着樹脂を含有する電子写真用トナーは、トナーの低温定着性、加圧保存安定性、及び環境安定性に優れる。
製造例1及び比較製造例1の結晶性ポリエステルのMEK可溶成分について、示差走査熱量計によって測定された吸熱ピークを示す図である。 図1の10〜40℃の範囲部分の拡大図である。
[トナー用結着樹脂]
本発明のトナー用結着樹脂(以下、単に結着樹脂と称することがある)は、少なくとも、炭素数2〜12の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物を70〜100モル%含むカルボン酸成分とを縮重合して得られる結晶性ポリエステルを含有するトナー用結着樹脂であって、該結晶性ポリエステルのメチルエチルケトン可溶成分(20℃)の量が結晶性ポリエステルの0.5〜7重量%であり、且つ「(該結晶性ポリエステルの融点)−(該メチルエチルケトン可溶成分のDSC測定のピークトップ温度)」が1〜15℃の範囲内である。
以下、これについて説明する。
ここで、ポリエステル等の樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最大ピーク温度との比、即ち、「軟化点/吸熱の最大ピーク温度」で定義される結晶性指数によって表される。一般に、この結晶性指数が1.4を超えると樹脂は非晶質であり、0.6未満では結晶性が低く非晶質部分が多い。本発明において、「結晶性ポリエステル」とは、結晶性指数が0.6〜1.4、好ましくは0.8〜1.2、更に好ましくは0.9〜1.1であるポリエステルをいい、「非晶質樹脂」とは、結晶性指数が1.4を超えるか、0.6未満の樹脂をいう。
上記の「吸熱の最大ピーク温度」とは、実施例に記載する測定方法の条件下で観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度のことを指す。最大ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば、最大ピーク温度を結晶性樹脂(結晶性ポリエステル)の融点とし、軟化点との差が20℃を超えるピークは非晶質樹脂のガラス転移に起因するピークとする。
前記樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。
<アルコール成分>
結晶性ポリエステルの原料モノマーであるアルコール成分は、ポリエステルの結晶性を高める観点から、炭素数2〜12の脂肪族ジオールを含有する。
炭素数2〜12の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,4−ブテンジオール等が挙げられる。これらの中でも、トナーの低温定着性、加圧保存安定性、及び環境安定性(以下単に、低温定着性、加圧保存安定性、及び環境安定性ともいう)の観点からは、炭素数5〜9の脂肪族ジオールが好ましく、炭素数5〜6の脂肪族ジオールがより好ましく、また、結晶性の観点からは、炭素数2〜12のα,ω−直鎖アルカンジオールが好ましく、炭素数5〜9のα,ω−直鎖アルカンジオールがより好ましく、1,6−ヘキサンジオールが更に好ましい。
上記炭素数2〜12、好ましくは炭素数5〜9、更に好ましくは炭素数5〜6の脂肪族ジオールの含有量は、結晶性ポリエステルの結晶性をより高める観点から、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80〜100モル%、更に好ましくは90〜100モル%であり、炭素数2〜12、好ましくは炭素数5〜9、更に好ましくは炭素数5〜6のα,ω−直鎖アルカンジオールのアルコール成分中における含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは70〜100モル%、更に好ましくは90〜100モル%である。前記α,ω−直鎖アルカンジオールは、結晶性ポリエステルの結晶性をより高める観点から、1種類のアルコールであることが好ましい。
アルコール成分として使用し得る、炭素数2〜12の脂肪族ジオール以外の多価アルコール成分としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等を含む下記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコールが挙げられる。
Figure 0005718684
(式中、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基を示す。x及びyは、正の数を示し、xとyの和は、1〜16、好ましくは1.5〜5である。)
<カルボン酸成分>
結晶性ポリエステルの原料モノマーであるカルボン酸成分としては、トナーの低温定着性、加圧保存安定性、及び環境安定性の観点から、少なくとも炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物を使用する。
なお、本発明においては、カルボン酸並びにその酸無水物及びそのアルキル(炭素数1〜3)エステル等の誘導体等を、カルボン酸化合物と総称する。なお、アルキルエステルのアルキル基は炭素数に含めない。
炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、トナーの低温定着性、加圧保存安定性、及び環境安定性の観点から、炭素数10〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物が好ましく、セバシン酸がより好ましい。
炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、70〜100モル%であり、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは実質的に100モル%である。当該含有量が、カルボン酸成分中、70モル%未満であると、トナーの低温定着性が低下する。
本発明では、炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物以外のカルボン酸成分を併用することができる。例えば、芳香族ジカルボン酸化合物、炭素数2〜7の脂肪族ジカルボン酸化合物、3価以上の芳香族多価カルボン酸化合物等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
芳香族ジカルボン酸化合物には、縮合反応により芳香族ジカルボン酸由来の構成単位と同じ構成単位となり得る芳香族ジカルボン酸誘導体も含まれる。芳香族ジカルボン酸化合物の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらの酸の無水物、並びにそれらのアルキル(炭素数1〜3)エステルが好ましく挙げられる。該アルキルエステル中のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。
炭素数2〜7の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸等;ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等のコハク酸誘導体;それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、及びこれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等の誘導体が挙げられる。
<アルコール成分とカルボン酸成分とのモル比>
縮重合反応の原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分とのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、後述するMEK(メチルエチルケトン)可溶成分の末端をカルボキシ基が主とし、低温定着性、加圧保存性及び環境安定性を向上させるために、好ましくは1.03〜1.20であり、より好ましくは1.03〜1.15であり、更に好ましくは1.04〜1.12であり、より更に好ましくは1.05〜1.10である。モル比(カルボン酸成分/アルコール成分)が1.03以上であれば、MEK可溶成分の水酸基末端割合が少なくなり、該MEK可溶成分(20℃)のDSC測定の吸熱ピークのピークトップ温度が上昇し、低温定着性、加圧保存性、環境安定性が向上する。モル比(カルボン酸成分/アルコール成分)が1.20以下であれば、MEK可溶成分の量が増えすぎることなく、加圧保存性及び環境安定性が向上する。
<複合樹脂>
本発明に用いられる結晶性ポリエステルは、(i)スチレン系樹脂の原料モノマー、及び(ii)該スチレン系樹脂の原料モノマーと前記アルコール成分のいずれとも反応し得る両反応性モノマーを用いて縮重合反応に加えて付加重合反応に付すことにより、結晶性ポリエステルを複合樹脂とすることもできる。
スチレン系樹脂成分の原料モノマーとしては、スチレン、又はα−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体(以下、スチレンとスチレン誘導体をまとめて「スチレン誘導体」と称する)が用いられる。
スチレン系樹脂の原料モノマーと前記アルコール成分のいずれとも反応し得る両反応性モノマーとしては、分子内に、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物が挙げられる。これらの中でも、水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物が好ましく、カルボキシル基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物がより好ましい。このような両反応性モノマーを用いることにより、分散相となる樹脂の分散性をより向上させることができる。
両反応性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、縮重合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸又はフマル酸がより好ましい。
<結晶性ポリエステルの物性>
本発明に用いられる結晶性ポリエステルの物性は以下の通りである。
本発明に用いられる結晶性ポリエステルの軟化点は、トナーの低温定着性、加圧保存安定性、及び環境安定性の観点から、60〜160℃が好ましく、60〜120℃がより好ましく、65〜100℃が更に好ましく、65〜90℃がより更に好ましい。
本発明に用いられる結晶性ポリエステルの融点は、トナーの低温定着性、加圧保存安定性、及び環境安定性の観点から、好ましくは60〜130℃、より好ましくは65〜110℃、更に好ましくは65〜90℃である。
本発明に用いられる結晶性ポリエステルの数平均分子量は、トナーの低温定着性と加圧保存安定性の観点から、通常好ましくは1,000以上、より好ましくは1,500以上である。ただし、結晶性ポリエステルの生産性を考慮すると、数平均分子量は6,000以下が好ましく、5,000以下がより好ましく、4,500以下が更に好ましい。上記観点から、本発明に用いられる結晶性ポリエステルの数平均分子量は、1,000〜6,000が好ましく、1,000〜5,000がより好ましく、1,500〜4,500が更に好ましい。
また、重量平均分子量も、数平均分子量と同様の観点から、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは8,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは30,000以下、より更に好ましくは20,000以下である。上記観点から、本発明に用いられる結晶性ポリエステルの重量平均分子量は、3,000〜100,000が好ましく、5,000〜50,000がより好ましく、5,000〜30,000が更に好ましく、8,000〜20,000がより更に好ましい。
なお、本発明において、結晶性ポリエステルの数平均分子量及び重量平均分子量は、いずれもクロロホルム可溶分を測定した値をいう。
なお、結晶性ポリエステルを前記複合樹脂とした場合には、結晶性ポリエステル中のスチレン系樹脂成分の数平均分子量は、複合樹脂である結晶性樹脂における分散性の観点から、400〜7,000が好ましく、1,000〜4,000がより好ましく、1,500〜3,000が更に好ましい。本発明において、スチレン系樹脂の数平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分を測定した値をいう。
また、本発明に用いられる結晶性ポリエステルの酸価は、MEK可溶成分の物性を制御し、トナーの低温定着性、加圧保存安定性及び環境安定性を向上する観点より、10〜40mgKOH/gが好ましく、15〜35mgKOH/gがより好ましく、20〜30mgKOH/gが更に好ましい。
本発明に用いられる結晶性ポリエステルの水酸基価は、MEK可溶成分の物性を制御し、トナーの低温定着性、加圧保存安定性及び環境安定性を向上する観点より、1〜20mgKOH/gが好ましく、5〜15mgKOH/gがより好ましく、7〜13mgKOH/gが更に好ましい。
なお、軟化点、融点、数平均分子量、重量平均分子量、酸価及び水酸基価は、原料モノマー組成、重合開始剤、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により容易に調整することができる。
<結晶性ポリエステルのMEK可溶成分の物性>
本発明に用いられる結晶性ポリエステルのMEK可溶成分(20℃)の量は、結晶性ポリエステルの0.5〜7重量%であり、好ましくは0.5〜6重量%、より好ましくは1〜5重量%、更に好ましくは1〜4重量%である。0.5重量%未満であると、トナーの低温定着性が低下し、7重量%を超えると、末端水酸基の可溶成分の量が増加するため、トナーの加圧保存安定性及び環境安定性が低下する。MEK可溶成分(20℃)の量は、後述するように、(a)結晶性ポリエステルの縮重合反応時の昇温過程(130〜160℃)において、所定の反応率に達するまで縮重合反応する方法、(b)エステル化触媒を縮重合反応の反応率70%以上の反応後期に添加する方法、(c)縮重合反応の反応率90%以上で減圧反応させる方法、(d)前述のアルコール成分とカルボン酸成分とのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)を1.03〜1.20にする方法等により減少させることができる。
「(該結晶性ポリエステルの融点)−(該MEK可溶成分のDSC測定のピークトップ温度)」は、トナーの低温定着性、加圧保存安定性及び環境安定性の観点から、1〜15℃であり、好ましくは1.5℃〜12℃、より好ましくは3℃〜11℃、更に好ましくは3℃〜9℃である。「(該結晶性ポリエステルの融点)−(該MEK可溶成分のピークトップ温度)」が15℃を超えると、誘発効果による低温定着性が低下すると共に、加圧保存安定性及び環境安定性も低下し、一方、1℃未満では、誘発効果による低温定着性の向上が低下する。「(該結晶性ポリエステルの融点)−(該MEK可溶成分のDSC測定のピークトップ温度)」は、該MEK可溶成分のピークトップ温度を上昇させることで、制御することができる。
また、該MEK可溶成分(20℃)のDSC測定のピークトップ温度は、好ましくは50℃以上、更に好ましくは53℃以上、より好ましくは55℃以上である。50℃未満であると、トナーの加圧保存安定性及び環境安定性が低下する。また、当該吸熱ピークのピークトップ温度は、低温定着性の観点から、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。これらの観点から、該MEK可溶成分(20℃)の吸熱ピークのピークトップ温度は、50〜90℃が好ましく、53〜80℃が更に好ましく、55〜80℃がより好ましい。
該MEK可溶成分(20℃)の吸熱ピークのピークトップ温度は、前記(a)〜(d)の方法等により上昇させることができる。
更に、該MEK可溶成分(20℃)の10〜40℃の範囲で吸熱ピーク(好ましくは吸熱量1J/g以上の吸熱ピーク)が後述する測定条件において観測されないことが、トナーの加圧保存安定性及び環境安定性の観点から好ましい。前記(a)〜(d)の方法等を採用することにより、10〜40℃の範囲の吸熱ピークが観測されないようにすることができる。
MEK可溶成分の融点を結晶性ポリエステルの融点よりやや低くするためには、MEK可溶成分の末端がカルボキシ基であることが好ましい。そのため、トナーの低温定着性の観点から、MEK可溶成分(20℃)の酸価は、40〜100mgKOH/gが好ましく、50〜90mgKOH/gがより好ましく、60〜80mgKOH/gが更に好ましい。
また、トナーの加圧保存性及び環境安定性の観点から、MEK可溶成分(20℃)の水酸基価は、40mgKOH/g以下が好ましく、35mgKOH/g以下がより好ましく、30mgKOH/g以下が更に好ましく、下限は1mgKOH/g以上が好ましく、5mgKOH/g以上がより好ましく、これらの観点から1〜40mgKOH/gが好ましく、5〜35mgKOH/gがより好ましく、5〜30mgKOH/gが更に好ましい。MEK可溶成分の末端に水酸基を多く有する場合は、上記MEK可溶成分(20℃)の10〜40℃の範囲で(吸熱量1J/g以上の)吸熱ピークが観測され、トナーの加圧保存性及び環境安定性の低下をもたらす。
<結晶性ポリエステルの製造方法>
本発明に用いられる結晶性ポリエステルの製造方法は、少なくとも、炭素数2〜12の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物を70〜100モル%含むカルボン酸成分とを縮重合する工程を有する製造方法であって、縮重合反応の原料モノマーである、アルコール成分とカルボン酸成分とのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)が1.03〜1.20であり、130〜160℃の温度範囲で、理論反応水量の排出時を反応率100%とした場合に、排出された反応水量から求められる反応率が40%以上になるまで縮重合する工程を含む、製造方法が好ましい。
アルコール成分及びカルボン酸成分の種類並びにそのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)については、前述の通りである。
アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応は、例えば、錫化合物、チタン化合物等の後述するエステル化触媒等の存在下、不活性ガス雰囲気中で行うことができ、温度条件は、130〜250℃が好ましく、昇温後の最終到達温度としては、180〜250℃が好ましく、190〜230℃がより好ましい。
また、昇温の過程にて、130〜160℃、好ましくは130〜150℃の温度範囲で、理論反応水量の排出時を反応率100%とした場合に、排出された反応水量から求められる縮重合反応の反応率が好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上になるまで縮重合反応させることが好ましい。
130〜160℃の比較的低い温度を考慮し、結晶性ポリエステルの生産性を向上する観点から、反応率は80%以下が好ましく、したがって好ましくは40〜80%、更に好ましくは50〜80%、より更に好ましくは60〜80%になるまで、前記温度範囲で縮重合反応させることが好ましい。
すなわち、アルコール成分とカルボン酸成分との混合物を、昇温して縮重合反応を行なう過程において、130〜160℃の比較的低い温度範囲で、反応率が40%以上になるまで縮重合反応を進めることで、MEK可溶成分の量を減らすことができ、該MEK可溶成分の吸熱ピークのピークトップ温度を上昇させることができる。これは、高温で短時間に反応させた場合に比べ、モノマー成分が十分に反応するため低分子量成分が減少するためと考えられる。
130℃未満では縮重合反応は進行し難く、160℃を超えるとMEK可溶成分の量が増加したり、該MEK可溶成分の吸熱ピークのピークトップ温度が低下する。40%未満では、未反応のモノマーが多く、未反応のモノマーが多い状態で160℃を超えて上昇させた場合には、MEK可溶成分の量が増加したり、該MEK可溶成分の吸熱ピークのピークトップ温度が低下する。
縮重合の反応率が40%以上になるまで130〜160℃の温度範囲を保持する必要は必ずしもなく、本発明の効果を損なわない限り、一時的に範囲外であってもよいが、最終的に反応率が40%以上のいずれかの地点で130〜160℃の温度範囲であればよい。
具体的には、好ましくは3〜12時間、より好ましくは3〜10時間、更に好ましくは3〜8時間前記の温度範囲で保持して反応させることで反応率を40%以上にすることができる。
縮重合反応は、エステル化触媒の存在下で行うことが好ましく、貯蔵弾性率の高い結晶性ポリエステルを得る観点から、エステル化触媒とピロガロール化合物の共存在下で行うことがより好ましい。
縮重合に好適に用いられるエステル化触媒としては、チタン化合物及びSn−C結合を有していない錫(II)化合物が挙げられ、これらはそれぞれ単独で使用又は両者を併用することができる。
チタン化合物としては、Ti−O結合を有するチタン化合物が好ましく、総炭素数1〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基を有する化合物がより好ましい。
チタン化合物の具体例としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C37O)2〕、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート〔Ti(C4102N)2(C37O)2〕、チタンジペンチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C511O)2〕、チタンジエチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C25O)2〕、チタンジヒドロキシオクチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(OHC816O)2〕、チタンジステアレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C1837O)2〕、チタントリイソプロピレートトリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)1(C37O)3〕、及びチタンモノプロピレートトリス(トリエタノールアミネート)〔Ti(C6143N)3(C37O)1〕等が挙げられる。これらの中では、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート、及びチタンジペンチレートビストリエタノールアミネートが好ましく、これらは、例えば(株)マツモト交商の市販品としても入手可能である。
他の好ましいチタン化合物の具体例としては、テトラ−n−ブチルチタネート〔Ti(C49O)4〕、テトラプロピルチタネート〔Ti(C37O)4〕、テトラステアリルチタネート〔Ti(C1837O)4〕、テトラミリスチルチタネート〔Ti(C1429O)4〕、テトラオクチルチタネート〔Ti(C817O)4〕、ジオクチルジヒドロキシオクチルチタネート〔Ti(C817O)2(OHC816O)2〕、及びジミリスチルジオクチルチタネート〔Ti(C1429O)2(C817O)2〕等が挙げられる。これらの中では、テトラステアリルチタネート、テトラミリスチルチタネート、テトラオクチルチタネート、及びジオクチルジヒドロキシオクチルチタネートが好ましく、これらは、例えばハロゲン化チタンを対応するアルコールと反応させることにより得ることもできるが、ニッソー(株)等の市販品としても入手可能である。
Sn−C結合を有していない錫(II)化合物としては、Sn−O結合を有する錫(II)化合物、Sn−X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物等が好ましく挙げられ、Sn−O結合を有する錫(II)化合物がより好ましい。
Sn−O結合を有する錫(II)化合物としては、シュウ酸錫(II)、ジ酢酸錫(II)、ジオクタン酸錫(II)、ジラウリル酸錫(II)、ジステアリン酸錫(II)、及びジオレイン酸錫(II)等の炭素数2〜28のカルボン酸基を有するカルボン酸錫(II);ジオクチロキシ錫(II)、ジラウロキシ錫(II)、ジステアロキシ錫(II)、及びジオレイロキシ錫(II)等の炭素数2〜28のアルコキシ基を有するジアルコキシ錫(II);酸化錫(II);硫酸錫(II)等が挙げられる。
Sn−X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する化合物としては、塩化錫(II)、臭化錫(II)等のハロゲン化錫(II)等が挙げられる。これらの中では、帯電立ち上がり効果及び触媒能の点から、(R1COO)2Sn(式中、R1は、炭素数5〜19のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表される脂肪酸錫(II)、(R2O)2Sn(式中、R2は、炭素数6〜20のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表されるジアルコキシ錫(II)、及びSnOで表される酸化錫(II)が好ましく、(R1COO)2Snで表される脂肪酸錫(II)及び酸化錫(II)がより好ましく、ジオクタン酸錫(II)、ジステアリン酸錫(II)、及び酸化錫(II)が更に好ましい。
上記チタン化合物及び錫(II)化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記エステル化触媒の存在量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.01〜1重量部が好ましく、0.1〜0.6重量部がより好ましい。
また、ピロガロール化合物は、互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するものであり、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体等が挙げられる。
縮重合反応におけるピロガロール化合物の存在量は、縮重合反応に供されるアルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.001〜1重量部が好ましく、0.005〜0.4重量部がより好ましく、0.01〜0.2重量部が更に好ましい。ここで、ピロガロール化合物の存在量とは、縮重合反応に供したピロガロール化合物の全配合量を意味する。
ピロガロール化合物とエステル化触媒の重量比(ピロガロール化合物/エステル化触媒)は、樹脂の耐久性の観点から、0.01〜0.5が好ましく、0.03〜0.3がより好ましく、0.05〜0.2が更に好ましい。
また、触媒は、縮重合反応の反応率(理論反応水量の排出時を反応率100%とした場合に、排出された反応水量から計算された縮重合反応の反応率。以下同じ。)が70%以上になった時に加えることがMEK可溶成分の量を減少させ、該MEK可溶成分の吸熱ピークのピークトップ温度を上昇させる観点から好ましい。触媒は反応水により失活することがあり、反応初期から使用している触媒が失活したものは、反応後期に加える触媒の作用を阻害したり、結晶性ポリエステルの結晶性を低下させたりすることがあるため、反応初期に使用する触媒量は抑えることが好ましい。
縮重合反応の反応率70%以上、好ましくは縮重合反応の反応率70〜90%において加える触媒量は、好ましくは触媒全量の50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上である。反応率70%以上になった時に、触媒全量の50重量%以上の触媒を添加することで、効率的にMEK可溶成分を減らすことができ、該MEK可溶成分の吸熱ピークのピークトップ温度を上昇させる。更に、触媒を加えた後、30分以上の減圧反応工程を有し、MEK可溶成分の量を減少させ、該MEK可溶成分の吸熱ピークのピークトップ温度を上昇させることが好ましい。
更に、縮重合反応の反応率90%以上で、減圧度12kPa以下で、好ましくは減圧時間1時間以上、より好ましくは1〜10時間、更に好ましくは1〜5時間縮重合反応させることが、MEK可溶成分の量を減少させ、該MEK可溶成分(20℃)の吸熱ピークのピークトップ温度を上昇させる観点から好ましい。
縮重合反応の終点は、撹拌装置を用いない反応槽中で終了する場合は、反応槽から結晶性ポリエステルを取り出した時であり、撹拌装置を用いる反応槽中で終了する場合は、撹拌を実質上停止した時である。なお、縮重合反応の終点は、求められる樹脂の性能に依存するが通常縮重合反応の反応率が90%以上である。縮重合反応中の撹拌速度は、好ましくは50〜1000rpm程度であり、より好ましくは100〜500rpm程度である。
以上のようにして得られる結晶性ポリエステルは、トナー用の結晶性ポリエステルとして有用であり、本発明のトナー用結着樹脂に含有される。
本発明のトナー用結着樹脂及び電子写真用トナーの製造には、トナーの低温定着性、加圧保存安定性、及び環境安定性の観点から、前記結晶性ポリエステルと共に非晶質樹脂を用いることが好ましい。
<非晶質樹脂>
非晶質樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させて得られる縮重合系樹脂であることが好ましい。本発明においては、非晶質樹脂は、前記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物及び/又は炭素数2〜12の脂肪族ジオールを70モル%以上含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステル樹脂であることが好ましい。
(アルコール成分)
前記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物又は炭素数2〜12の脂肪族ジオールを用いることができる。炭素数2〜12の脂肪族ジオールとしては、前述の結晶性ポリエステルに記載されたものが挙げられ、炭素数2〜5の脂肪族ジオールが好ましく、1,2−プロパンジオールがより好ましい。
これらの中では、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が、環境安定性が向上するため好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の合計含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80〜100モル%、更に好ましくは90〜100モル%である。
アルコール成分に含有され得るビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物又は炭素数2〜12の脂肪族ジオール以外のアルコールとしては、前記結晶性ポリエステルに用いられるのと同様の3価以上のアルコールを例示することができる。
(カルボン酸成分)
非晶質樹脂のカルボン酸成分は、トナーの加圧保存安定性を高める観点から、芳香族ジカルボン酸化合物を含有することが好ましく、テレフタル酸化合物を含有することがより好ましい。なお、テレフタル酸化合物をカルボン酸成分として用いて得られた非晶質樹脂と、テレフタル酸化合物を用いずに得られた非晶質樹脂とをそれぞれ準備し、組み合わせて用いてもよい。なお、芳香族ジカルボン酸化合物としては、前述の結晶性ポリエステルに記載されたものが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸化合物を含有する場合、その含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは30〜95モル%、より好ましくは40〜90モル%、更に好ましくは50〜85モル%である。
芳香族ジカルボン酸化合物以外の使用し得る2価のカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸等の炭素数2〜10(好ましくは炭素数4〜10、より好ましくは炭素数4〜8)の脂肪族ジカルボン酸;ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等の炭素数8〜20のアルキル基又は炭素数8〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸;それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
上記炭素数2〜10の脂肪族ジカルボン酸を含有する場合、その含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは5〜60モル%、より好ましくは5〜40モル%、更に好ましくは5〜30モル%である。上記炭素数8〜20のアルキル基又は炭素数8〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸を含有する場合、その含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは3〜30モル%、より好ましくは5〜20モル%、更に好ましくは5〜15モル%である。
また、芳香族ジカルボン酸化合物以外の使用し得る3価以上の多価カルボン酸化合物としては、前記結晶性ポリエステルに用いられるのと同様のものを例示することができる。
3価以上の多価カルボン酸化合物を含有する場合、その含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは3〜40モル%、より好ましくは5〜35モル%、更に好ましくは5〜30モル%である。
<非晶質樹脂の物性>
非晶質樹脂の軟化点は、トナーの低温定着性、加圧保存安定性、及び環境安定性の観点から、好ましくは70〜180℃、より好ましくは90〜150℃である。なお、本発明に用いられる非晶質樹脂は、軟化点の高い樹脂(以下、高軟化点樹脂と称する)と軟化点の低い樹脂(以下、低軟化点樹脂と称する)とを併用することで、トナーの低温定着性、加圧保存安定性、及び環境安定性の点においてより優れるものとなる。高軟化点樹脂と低軟化点樹脂とを併用する場合、一方又は両者を2種以上用いてもよい。
具体的には、高軟化点樹脂の軟化点は、好ましくは110〜150℃であり、低軟化点樹脂の軟化点は、好ましくは90℃以上、110℃未満である。併用する高軟化点樹脂の軟化点と低軟化点樹脂の軟化点は、10℃以上異なることが好ましく、15〜40℃異なることがより好ましい。
高軟化点樹脂と低軟化点樹脂を併用する場合、高軟化点樹脂の低軟化点樹脂に対する重量比(高軟化点樹脂/低軟化点樹脂)は、1/3〜3/1が好ましく、1/3〜2/1がより好ましく、1/2〜1/1が更に好ましい。
非晶質樹脂の酸価は、水系分散液中における非晶質樹脂の分散を良好なものとする観点より、1〜40mgKOH/gが好ましく、2〜35mgKOH/gがより好ましく、3〜30mgKOH/gが更に好ましい。
非晶質樹脂のガラス転移温度(Tg)は、トナーの低温定着性、加圧保存安定性、及び環境安定性の観点から、好ましくは45〜80℃、より好ましくは55〜75℃である。
非晶質樹脂の数平均分子量は、1,000〜6,000が好ましく、2,000〜5,000がより好ましい。また、重量平均分子量は、好ましくは10,000以上、より好ましくは30,000以上であり、好ましくは1,000,000以下である。なお、非晶質樹脂の数平均分子量及び重量平均分子量は、いずれもテトラヒドロフラン可溶分を測定した値をいう。
なお、軟化点、酸価、Tg、数平均分子量及び重量平均分子量は、原料モノマー組成、重合開始剤、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により調整することができる。
<変性非晶質樹脂>
本発明で用いられる非晶質樹脂には、変性非晶質樹脂も含まれる。
変性非晶質樹脂としては、例えば、樹脂がウレタン結合で変性されたウレタン変性ポリエステル、ポリエステルがエポキシ結合で変性されたエポキシ変性ポリエステル、及びポリエステル成分を含む2種以上の樹脂を有するハイブリッド樹脂等が挙げられる。
非晶質樹脂として、前記ポリエステル樹脂とその変性非晶質樹脂は、いずれか一方でも、両者が併用されてもよく、具体的には、ポリエステル、及び/又はポリエステルとスチレン系樹脂とを有するハイブリッド樹脂であってもよい。
[トナー用結着樹脂]
本発明のトナー用結着樹脂は、前記結晶性ポリエステルと、非晶質樹脂とを含有することが好ましい。本発明のトナー用結着樹脂中における前記結晶性ポリエステルと前記非晶質樹脂との重量比(結晶性ポリエステル/非晶質樹脂)は、トナーの低温定着性、加圧保存安定性、及び環境安定性の観点から、3/97〜50/50が好ましく、5/95〜40/60がより好ましく、5/95〜30/70が更に好ましく、7/93〜25/75が更に好ましい。
また、結着樹脂の酸価は、トナーの帯電性及び耐加水分解性の観点より、1〜40mgKOH/gが好ましく、2〜35mgKOH/gがより好ましく、3〜30mgKOH/gが更に好ましい。
また、結着樹脂の軟化点は、トナーの低温定着性、加圧保存安定性、及び環境安定性の観点から、80〜160℃が好ましく、80〜150℃がより好ましく、90〜140℃が更に好ましい。また、トナーのガラス転移温度は、上記同様の観点から、45〜80℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。
本発明のトナー用結着樹脂は、後述する製造方法により得られるものが好ましい。
[電子写真用トナー]
本発明の電子写真用トナー(単にトナーと称することがある)は、前述のトナー用結着樹脂を含有し、更に、本発明の効果を損なわない範囲で、前記結着樹脂とは異なる公知のトナー用結着樹脂、例えば、ポリエステル、スチレン−アクリル樹脂等のスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等の樹脂を含有していてもよい。
本発明の電子写真用トナーにおいて、本発明のトナー用結着樹脂の含有量は、全結着樹脂中、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上が更に好ましく、実質的に100重量%であることがより更に好ましい。
[トナー用結着樹脂及びトナーの製造方法]
本発明のトナー用結着樹脂及びトナーの製造方法として、結晶性ポリエステルを含む水系分散液と非晶質樹脂を含む水系分散液とを凝集工程及び合一工程に付すことにより得る方法が好ましい。
具体的には、本発明のトナー用結着樹脂及びトナーは、下記工程1〜工程4を含む製造方法により得ることができる。
工程1:少なくとも、炭素数2〜12の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物を70〜100モル%含むカルボン酸成分とを縮重合して、結晶性ポリエステルを得る工程であって、該結晶性ポリエステルのメチルエチルケトン可溶成分(20℃)の量が結晶性ポリエステルの0.5〜7重量%であり、且つ「(該結晶性ポリエステルの融点)−(該メチルエチルケトン可溶成分のDSC測定のピークトップ温度)」が1〜15℃の範囲内である、結晶性ポリエステルを得る工程。
工程2:工程1で得られた結晶性ポリエステルを含む水系分散液を得る工程。
工程3:工程2で得られた結晶性ポリエステルを含む水系分散液及び非晶質樹脂を含む水系分散液を混合し、次いで凝集工程に付すことにより凝集粒子の水系分散液を得る工程。
工程4:工程3で得られた凝集粒子の水系分散液を合一工程に付すことにより合一粒子の水系分散液を得る工程。
以下、工程1〜工程4について順に説明する。
[工程1]
工程1は、結晶性ポリエステルを得る工程であり、その詳細は前述のとおりである。
[工程2]
工程2は、工程1で得られた結晶性ポリエステルを含む水系分散液を得る工程である。
本明細書中、「水系」とは、有機溶剤等の溶剤を含有していてもよいが、水を好ましくは50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは99重量%以上含有するものをいう。また、以下、単に「樹脂」と記載する場合には、結晶性ポリエステルと非晶質樹脂の両方を指す。
結晶性ポリエステルを含む水系分散液は、結晶性ポリエステル、有機溶剤及び水、更に必要に応じて中和剤や界面活性剤を混合し、撹拌した後、蒸留等によって有機溶剤を除去することにより得られる。好ましくは、結晶性ポリエステル及び必要に応じて界面活性剤を有機溶剤に溶解した後、水、更に必要に応じて中和剤を混合する。なお、混合物を撹拌する際には、アンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。
有機溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、及びイソブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、2−ブタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びジエチルケトン等のケトン系溶媒;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチルが挙げられる。これらの中では、結晶性ポリエステルの分散性の観点から、酢酸エチル、2−ブタノンが好ましい。
中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等のアルカリ金属;アンモニア、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、及びトリブチルアミン等の有機塩基が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系(例えばアルキルエーテルカルボン酸塩等)等のアニオン性界面活性剤;アミン塩型、第4級アンモニウム塩型等のカチオン性界面活性剤;後述の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤を使用する場合、その使用量は、結晶性ポリエステル又は非晶質樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部である。
結晶性ポリエステルと混合する際に用いる有機溶剤の使用量は、結晶性ポリエステル又は非晶質樹脂100重量部に対して、100〜1000重量部が好ましい。結晶性ポリエステルと混合する際に用いる水の使用量は、有機溶剤100重量部に対して、100〜1000重量部が好ましい。
結晶性ポリエステルを有機溶剤に混合(溶解)する際の温度は、30〜90℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。
結晶性ポリエステル含む水系分散液の固形分濃度は、適宜水を加えることにより、いずれも好ましくは3〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%、更に好ましくは7〜15重量%に調整する。
また、前記有機溶剤を使用せずに、分散液とすることもできる。これは、樹脂は、非イオン性界面活性剤と混合することにより、得られる混合物の粘度が低下するためであり、混合物の粘度の低下が、非イオン性界面活性剤が樹脂に相溶し、樹脂の軟化点が見掛け上、低下することによるものである。この現象を利用して、非イオン性界面活性剤が相溶した樹脂の見かけ上の軟化点を水の沸点以下に下げることができ、樹脂単独では100℃以上の融点又は軟化点を有する樹脂でも、常圧で水を滴下することにより、樹脂が水中に分散した分散液を得ることができる。
この方法は、少なくとも水と非イオン性界面活性剤があればよいため、有機溶剤に不溶な樹脂にも適用できる他、有機溶剤の回収や作業環境維持のための設備負担が不要であり、また機械的手段を利用する場合に必要とされる特別な装置も不要であるため、経済的に樹脂粒子分散液を製造できるという利点も有する。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、及びポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル類;ポリエチレングルコールモノラウレート、ポリエチレングルコールモノステアレート、及びポリエチレングルコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル類;オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。また、非イオン性界面活性剤にアニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤を併用してもよい。
非イオン性界面活性剤としては、樹脂との相溶性のよいものを選択することが好ましい。安定な樹脂の分散液を得るためには、非イオン性界面活性剤のHLBは12〜18であることが好ましく、樹脂の種類によっては2種以上の異なるHLBの非イオン性界面活性剤を用いることがより好ましい。たとえば、親水性が高い樹脂の場合は、HLBが12〜18の非イオン性界面活性剤を少なくとも1種用いればよいが、疎水性の高い樹脂の場合は、HLBの低いもの、例えば7〜10程度のものと、HLBの高いもの、例えば14〜20のものを併用して、両者のHLBの加重平均を12〜18に調整することが好ましい。この場合、主としてHLBが7〜10程度のものは樹脂を相溶化させることができ、HLBの高いものは水中での樹脂の分散を安定化させることができると推定される。
非イオン性界面活性剤の曇点は、常圧、水中で樹脂を微粒化させる場合には、70〜105℃が好ましく、80〜105℃がより好ましい。
非イオン性界面活性剤の使用量は、樹脂の融点を下げる観点から、結晶性ポリエステル100重量部に対して、5重量部以上が好ましく、トナーに残存する非イオン性界面活性剤を制御する観点からは、80重量部以下が好ましい。したがって、これらを両立させる観点から、非イオン性界面活性剤の使用量は、結晶性ポリエステル100重量部に対して、5〜80重量部が好ましく、10〜70重量部がより好ましく、20〜60重量部が更に好ましい。
結晶性ポリエステルを含む水系分散液中の結晶性ポリエステル粒子の体積中位粒径は、工程3で均一に凝集させる観点から、50〜1,000nmが好ましく、50〜500nmがより好ましく、50〜300nmが更に好ましく、80〜200nmがより更に好ましい。各粒子の体積中位粒径は、レーザー回折型粒径測定機等により測定でき、以下同様である。
また、水系分散液中の結晶性ポリエステル粒子の粒度分布の変動係数(CV値)は、トナーの低温定着性、加圧保存安定性、及び環境安定性の観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、より更に好ましくは25%以下である。CV値の下限値としては、製造し易さの観点から、5%であることが好ましい。
[工程3]
工程3は、工程2で得られた結晶性ポリエステルを含む水系分散液を、非晶質樹脂を含む水系分散液と混合し、次いで凝集工程に付すことにより、凝集粒子の水系分散液を得る工程である。
非晶質樹脂を含む水系分散液を得る方法は、前述の工程2の説明において、結晶性ポリエステルを含む水系分散液を得る方法と同じである。得られた非晶質樹脂を含む水系分散液中の非晶質樹脂粒子の体積中位粒径は、均一に凝集させる観点から、50〜1,000nmが好ましく、50〜500nmがより好ましく、50〜300nmが更に好ましく、80〜200nmがより更に好ましい。
また、水系分散液中の非晶質樹脂粒子の粒度分布の変動係数(CV値)は、トナーの低温定着性、加圧保存安定性、及び環境安定性の観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、より更に好ましくは25%以下である。CV値の下限値としては、製造し易さの観点から、5%であることが好ましい。
工程3においては、更に例えば着色剤、荷電制御剤、離型剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、及び老化防止剤等の添加剤を添加してから凝集工程に付してもよい。該添加剤は、水系分散液としてから使用することもできる。
着色剤としては、特に制限はなく公知の着色剤が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、カーボンブラック、無機系複合酸化物、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、及びマラカイトグリーンオクサレート等の種々の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアジン系、及びチアゾール系等の各種染料が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。着色剤を添加する場合、その添加量は、結晶性ポリエステル及び非晶質樹脂の総量100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましい。
荷電制御剤としては、クロム系アゾ染料、鉄系アゾ染料、アルミニウムアゾ染料、及びサリチル酸金属錯体等が挙げられる。各種荷電制御剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。荷電制御剤を添加する場合、その添加量は、結晶性ポリエステル及び非晶質樹脂の総量100重量部に対して、0.1〜8重量部が好ましく、0.3〜7重量部がより好ましい。
離型剤としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、及びステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナバロウワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、及びホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、及びフィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス等のワックス;ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス及びシリコーン類等が挙げられる。離型剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。離型剤の融点は、トナーの低温定着性、加圧保存安定性、及び環境安定性の観点から、60〜140℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。
離型剤を添加する場合、その添加量は、結晶性ポリエステル及び非晶質樹脂の総量100重量部に対して、樹脂中への分散性の観点から、0.5〜10重量部が好ましく、1〜8重量部がより好ましく、1〜7重量部が更に好ましい。
結晶性ポリエステルと非晶質樹脂との好ましい混合重量比は、前述のトナー用結着樹脂に関する記載中に示した重量比の通りである。
凝集工程において、系内の固形分濃度は、均一な凝集を起こさせるために、5〜50重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましく、5〜20重量%が更に好ましい。
凝集工程における系内のpHは、混合液の分散安定性と、樹脂粒子の凝集性とを両立させる観点から、2〜10が好ましく、2〜9がより好ましく、3〜8が更に好ましい。
同様の観点から、凝集工程における系内の温度は、「結着樹脂の軟化点−60℃」(軟化点より60℃低い温度、以下同様)以上、且つ結着樹脂の軟化点以下であることが好ましい。本発明では、結着樹脂として結晶性ポリエステルと非晶質樹脂とを用いるので、結晶性ポリエステルの軟化点と非晶質樹脂の軟化点を加重平均した温度を、結着樹脂の軟化点とする(非晶質樹脂を2種類以上用いる場合も同様に加重平均する。以下、同じである)。また、マスターバッチを使用する場合は、それに用いた樹脂をも含めて加重平均した温度を、混合樹脂の軟化点とする。
また、着色剤、荷電制御剤等の添加剤は、樹脂粒子を調製する際に結晶性ポリエステル又は非晶質樹脂に予め混合してもよく、別途各添加剤を水等の分散媒中に分散させた分散液を調製して、樹脂粒子と混合し、凝集工程に供してもよい。樹脂粒子を調製する際に結晶性ポリエステル又は非晶質樹脂に添加剤を予め混合する場合には、予め結晶性ポリエステル又は非晶質樹脂と添加剤とを溶融混錬することが好ましい。
溶融混練には、オープンロール型二軸混練機を使用することが好ましい。オープンロール型二軸混練機は、2本のロールが並行に近接して配設された混練機であり、各ロールに熱媒体を通すことにより、加熱機能又は冷却機能を付与することができる。したがって、オープンロール型二軸混練機は、溶融混練する部分がオープン型であり、また加熱ロールと冷却ロールを備えていることから、従来用いられている二軸押出機と異なり、溶融混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。
凝集工程においては、凝集を効果的に行うために凝集剤を添加することができる。凝集剤としては、有機系では、4級塩のカチオン性界面活性剤、及びポリエチレンイミン等が用いられ、無機系では、無機金属塩、無機アンモニウム塩及び2価以上の金属錯体等が用いられる。
無機金属塩としては、例えば、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、及び硫酸アルミニウム等の金属塩;ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、及び多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体が挙げられる。無機アンモニウム塩としては、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等が挙げられる。
凝集剤を添加する場合、その添加量は、トナーの耐環境特性の観点から、結着樹脂100重量部に対して、60重量部以下が好ましく、55重量部以下がより好ましく、50重量部以下が更に好ましい。
凝集剤は、水系媒体に溶解させて添加することが好ましく、凝集剤の添加時及び添加終了後は十分撹拌することが好ましい。
工程3においては、結晶性ポリエステルを含む水系分散液及び非晶質樹脂を含む水系分散液と、必要に応じて用いられる各種添加剤との混合物を、均一に分散させる観点から、好ましくは結着樹脂の軟化点未満の温度、より好ましくは「該軟化点−30℃」以下の温度で分散処理を行う。具体的には、好ましくは65℃以下、より好ましくは55℃以下であり、また、媒体の流動性及び樹脂の水系分散液の製造エネルギーの観点から、分散処理は0℃より高い温度で行なうことが好ましく、10℃以上で行うことがより好ましい。
これらの観点から、好ましくは0〜65℃、より好ましくは10〜55℃程度の温度で撹拌して分散処理する等の通常の方法により、均一な樹脂分散液を調製することができる。
分散処理の方法としては、ウルトラディスパー(浅田鉄工(株)製、商品名)、エバラマイルダー((株)荏原製作所製、商品名)、及びTKホモミクサー(プライミクス(株)製、商品名)等の高速撹拌混合装置;高圧ホモゲナイザー((株)イズミフードマシナリ製、商品名)、ミニラボ8.3H型(Rannie社製、商品名)に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー;マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)、及びナノマイザー(ナノマイザー(株)製、商品名)等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられる。
工程3で得られる凝集粒子の体積中位粒径は、続く工程4で均一に合一させ、トナー粒子を製造する観点から、1〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましく、3〜7μmが更に好ましい。
[工程4]
工程4は、工程3で得られた凝集粒子の水系分散液に必要に応じて凝集停止剤を加えた後、合一工程に付すことにより、水系分散液中の凝集粒子を合一させて、結着樹脂を得る工程である。
工程4では、前記工程3で得られた凝集粒子を、加熱することにより合一させることができる。
工程4における系内の温度は、目的とするトナーの粒径、粒度分布、形状制御及び粒子の融着性の観点から、「結着樹脂の軟化点−30℃」以上、「該軟化点+10℃」以下が好ましく、「該軟化点−25℃」以上、「該軟化点+10℃」以下がより好ましく、「該軟化点−20℃」以上、「該軟化点+10℃」以下が更に好ましい。また、撹拌速度は、凝集粒子が沈降しない速度が好ましい。具体的には、好ましくは70〜100℃、より好ましくは70〜90℃である。
なお、凝集停止剤を用いる場合、凝集停止剤として界面活性剤を用いることが好ましく、アニオン性界面活性剤を用いることがより好ましい。アニオン性界面活性剤のうち、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが更に好ましい。
本発明では、コア部が前記結晶性ポリエステルと前記非晶質樹脂とを含み、シェル部が前記非晶質樹脂である、「コアシェル粒子」を結着樹脂として含有する電子写真用トナーであってもよい。該コア部は、前記工程3の通り、前記結晶性樹脂を含む水系分散液と前記非晶質樹脂を含む水系分散液とを含む水系分散液を凝集工程に付すことにより得られる樹脂であることが好ましい。
該コアシェル粒子を含有する電子写真用トナーは、前述の工程4の前に、工程3で得られた凝集粒子の水系分散液を、非晶質樹脂を含む水系分散液と混合し、凝集させる工程を設けることで得ることができる。
本発明の電子写真用トナーは、前記工程4により得られた合一粒子を、適宜、ろ過等の固液分離工程、洗浄工程、乾燥工程に供することにより、得ることができる。
洗浄工程では、トナーとして十分な帯電特性及び信頼性を確保する目的から、トナー表面の金属イオンを除去するため、酸を用いることが好ましい。また、添加した非イオン性界面活性剤も洗浄により完全に除去することが好ましく、非イオン性界面活性剤の曇点以下での水系溶液での洗浄が好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
また、乾燥工程では、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法等、任意の方法を採用することができる。トナーの乾燥後の水分含量は、帯電性の観点から、好ましくは1.5重量%以下、更には1.0重量%以下に調整することが好ましい。
以上のようにして得られたトナーは、外添処理時の融着性が低いため、流動化剤等の助剤を外添剤としてトナー粒子表面に容易に添加することができる。外添剤としては、表面を疎水化処理したシリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、及びカーボンブラック等の無機微粒子;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及びシリコーン樹脂等のポリマー微粒子等、公知の微粒子が使用できる。
外添剤の個数平均粒子径は、好ましくは4〜200nm、より好ましくは8〜30nmである。外添剤の個数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡を用いて求められる。
外添剤を添加する場合、その添加量は、帯電度の環境安定性及び加圧保存安定性の観点から、外添剤による処理前のトナー100重量部に対して、0.8〜5重量部が好ましく、1〜5重量部がより好ましく、1.5〜3.5重量部が更に好ましい。ただし、外添剤として疎水性シリカを用いる場合は、外添剤による処理前のトナー100重量部に対して、疎水性シリカを0.8〜3.5重量部、好ましくは1〜3重量部用いることで、前記所望の効果が得られる。
[電子写真用トナーの物性]
本発明の電子写真用トナーの体積中位粒径は、トナーの高画質化及び生産性の観点から、1〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましく、3〜7μmが更に好ましい。
本発明の電子写真用トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
製造例1〜9、比較製造例1〜7
(結晶性ポリエステルの製造)
表1に示す原料組成、反応条件により、結晶性ポリエステルA−1〜A−9及びB−1〜B−7を製造し、表1に示されるような結晶性ポリエステル樹脂の物性値、及び結晶性ポリエステル樹脂のMEK可溶成分の物性値を得た。なお、物性の測定方法、及び反応条件については、以下に示すとおりである。
[樹脂の物性測定方法]
表1の製造例1〜9及び比較製造例1〜7で得られた結晶性ポリエステル樹脂A−1〜A−9及びB−1〜B−7の軟化点、融点、数平均分子量、重量平均分子量、酸価、水酸基価の算出は次の通りに行った。
<樹脂の軟化点>
フローテスター((株)島津製作所製、商品名:「CFT−500D」)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
<樹脂の吸熱の最大ピーク温度、融点>
示差走査熱量計(DSC;ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、商品名:「Q−100」)を用いて、室温(20℃)から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/分で180℃まで昇温しながら測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(1st RUNの吸熱の最大ピーク温度)とし、最大ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば結晶性ポリエステルとし、その結晶性ポリエステルの融点とした。
<結晶性ポリエステルの数平均分子量、重量平均分子量>
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、樹脂の数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwを求めた。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、樹脂をクロロホルムに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター(住友電気工業(株)製、商品名:FP−200)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量分布測定
下記装置を用いて、溶離液としてクロロホルムを、毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定化させた。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作製した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製の単分散ポリスチレン;2.63×103、2.06×104、1.02×105、ジーエルサイエンス(株)製の単分散ポリスチレン;2.10×103、7.00×103、5.04×104(数平均分子量))を標準試料として作製したものを用いた。
測定装置:CO−8010(商品名、東ソー(株)製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(いずれも商品名、東ソー(株)製)
<樹脂の酸価・水酸基価>
樹脂の酸価は、JIS K 0070の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
樹脂の水酸基価は、JIS K 1557に基づき下記条件で測定した。
試料量:2g
アセチル化試薬:無水酢酸65mLとピリジン935mLとを混合した溶液10mL
触媒:なし
反応温度:99℃
反応時間:2時間
溶媒:アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))
滴定液:0.5mol/L KOHエタノール溶液
[MEK可溶成分の物性測定方法]
製造例1〜9及び比較製造例1〜7で得られた結晶性ポリエステル樹脂A−1〜A−9及びB−1〜B−7のMEK可溶成分の吸熱ピーク及び可溶分量の算出は次の通りに行った。なお、MEK可溶成分の酸価、及び水酸基価については、結晶性ポリエステル樹脂と同様の方法で算出した。
<MEK可溶成分の吸熱ピークトップ温度、MEK可溶成分の10〜40℃の範囲の吸熱ピーク>
示差走査熱量計(DSC;ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「Q−100」)を用いて、室温(20℃)から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/分で180℃まで昇温しながら測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱ピークトップ温度とした。
<可溶成分量>
後述の製造方法A〜Fにより得られた結晶性ポリエステル樹脂を、四つ口フラスコから抜き出し、6mm目開きのスクリーンを装着した小型万能粉砕機((株)三力製作所製、商品名:SF−1)で粉砕を行った。得られた粉砕物を、ステンレス製のJIS試験用ふるい(JIS−Z8801、20メッシュ 目開き800μm)にて微粉のカットを行なった。
次に、20℃のMEK(メチルエチルケトン)2kgに対して上記の微粉カットを行なった結晶性ポリエステル樹脂200gの割合で5Lの四つ口フラスコに加え、20℃で1時間撹拌(攪拌羽根:アンカーパドル2枚羽(直径10cm、高さ8cm、幅1.5cm、厚み2mm)、回転数200rpm)した。その後、150メッシュ金網(細川金網社製)で常圧濾過し、不溶分について、更にMEK1kgと混合し、上記条件で撹拌・濾過を2度行った後、不溶分を減圧乾燥(50℃、8時間、8kPa)させて、結晶性ポリエステルのMEKに不溶な成分を得、その不溶成分の重量W(g)を測定した。可溶分量(重量%)は、以下の式(1)より算出した。
可溶成分量(重量%)=((200−W)/200)×100 ・・・(1)
[結晶性ポリエステルの合成方法(工程1)]
表1の製造例1〜9及び比較製造例1〜7で得られた結晶性ポリエステルA−1〜A−9及びB−1〜B−7は、以下の製造方法A〜Fのいずれかの方法により製造した。
<製造方法A>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに、表1に示す配合量の縮重合系樹脂成分の単量体を入れ、140℃に加熱して6時間反応させた後(反応率65%)、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させた。200℃にて反応率80%まで反応させた後、2−エチルヘキサン酸錫20gを加えて、更に200℃にて2時間反応を行った。更に8kPaにて2時間程度反応を行い、表1記載の結晶性ポリエステル樹脂を得た。
<製造方法B>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに、表1に示す配合量の縮重合系樹脂成分の単量体と共に、2−エチルヘキサン酸錫20gを入れ、140℃に加熱して6時間反応させた後(反応率65%)、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させた。200℃にて反応率80%まで反応させた後、2−エチルヘキサン酸錫10gを加えて、200℃にて2時間反応を行った後、更に、8kPaにて2時間程度反応を行い、表1記載の結晶性ポリエステル樹脂を得た。
<製造方法C>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに、表1に示す配合量の縮重合系樹脂成分の単量体と共に、2−エチルヘキサン酸錫40gを入れ、140℃に加熱して6時間反応させた後(反応率70%)、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させた。200℃にて反応率90%まで反応させた後、8kPaにて2時間程度反応を行い、表1記載の結晶性ポリエステル樹脂を得た。
<製造方法D>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに、表1に示す配合量の縮重合系樹脂成分の単量体と共に、2−エチルヘキサン酸錫40gを入れ、200℃まで4時間で昇温しつつ反応させた。更に、200℃にて反応率90%まで反応させた後、8kPaにて1時間程度反応を行い、表1記載の結晶性ポリエステル樹脂を得た。
<製造方法E>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに、表1に示す配合量の縮重合系樹脂成分の単量体と共に、2−エチルヘキサン酸錫40gを入れ、180℃に加熱して6時間反応させた後(反応率75%)、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させた。200℃にて反応率90%まで反応させた後、8kPaにて2時間程度反応を行い、表1記載の結晶性ポリエステル樹脂を得た。
<製造方法F>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに、表1に示す配合量の縮重合系樹脂成分の単量体を入れ、140℃に加熱して6時間反応させた後、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させた。200℃にて反応率80%まで反応させた後、2−エチルヘキサン酸錫40gを加えて、更に200℃にて2時間反応を行った。更に8kPaにて2時間反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂200gに対してメチルエチルケトン2kgを樹脂の割合で加え、前述の可溶成分量の測定条件と同じ条件で、20℃で1時間撹拌し、150メッシュ金網を用いて常圧濾過し、不溶分について、更にメチルエチルケトン1kgと撹拌し、濾過する工程を2回行った後、不溶分を乾燥させて樹脂を得た。
Figure 0005718684
Figure 0005718684
表1より、本発明に用いられる結晶性ポリエステルは、MEK可溶成分の融点が、結晶性ポリエステルの融点よりも低いため、可溶成分が当該結晶性ポリエステルの融解を誘発していると考えられる。また、MEK可溶成分の量が抑えられているため、末端水酸基の可溶成分の量が抑えられていると考えられる。
一方、比較製造例1、2、4〜6では、結晶性ポリエステルの融点−吸熱ピークトップ温度が大きい。130〜160℃の温度範囲で保持する工程を含まない製造方法D及びEにより得られた比較製造例1及び2では、製造例3と比較して、結晶性ポリエステルの融点−吸熱ピークトップ温度が大きかった。なお、製造方法D及びEでは昇温途中の160℃での反応率は40%未満であった。
製造例1及び比較製造例1の結晶性ポリエステルA−1及びB−1のMEK可溶成分(20℃)について、示差走査熱量計によって測定された吸熱ピークを図1及び図2に示す。図2は、図1の10〜40℃の範囲部分の拡大図である。図から明らかなように、比較製造例1の結晶性ポリエステルB−1のMEK可溶成分では、10〜40℃の範囲で吸熱ピークが観測されたが、製造例1の結晶性ポリエステルA−1のMEK可溶成分では、10〜40℃の範囲では吸熱ピークが検出されなかった。
後述するように、結晶性ポリエステルの融点−吸熱ピークトップ温度が大きい比較製造例1、2、4〜6の結晶性ポリエステルを用いて得られるトナーは、加圧保存安定性及び環境安定性に劣り、MEK可溶成分が全くない比較製造例3の結晶性ポリエステルを用いて得られるトナーは、低温定着性に劣り、原料のカルボン酸成分として炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物を含まない比較製造例7の結晶性ポリエステルを用いて得られるトナーは、加圧保存安定性及び環境安定性に劣る。
これに対し、製造例1〜9の結晶性ポリエステルを用いて得られるトナーは、いずれも優れた低温定着性を保ちつつ、加圧保存安定性及び環境安定性にも優れる。
実施例1〜9、比較例1〜7
(トナー用結着樹脂及びトナーの製造)
製造例1〜9及び比較製造例1〜7で得られた結晶性ポリエステルA−1〜A−9及びB−1〜B−7を用いて、それぞれトナー用結着樹脂及びトナーを製造した。
[樹脂粒子、着色剤微粒子、離型剤微粒子及び荷電制御剤微粒子の体積中位粒径(D50)]
レーザー回折型粒径測定機((株)堀場製作所製、商品名:「LA−920」)を用いて、測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積中位粒径(D50)を測定した。
[非晶質樹脂の物性測定方法]
表2に示される非晶質樹脂のガラス転移温度、数平均分子量の算出は次の通り行った。なお、非晶質樹脂の軟化点及び酸価については、結晶性ポリエステル樹脂と同様の方法で算出した。
<非晶質樹脂のガラス転移温度>
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、商品名:「Q−100」)を用いて、試料を0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
<非晶質樹脂の数平均分子量>
溶媒をクロロホルムからテトラヒドロフランに代えた以外は、結晶性ポリエステルと同様にして測定した。
[非晶質樹脂AAの製造]
窒素導入管、脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに、表2に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマーを所定量と、ターシャリブチルカテコール5gを入れ、180℃までは素早く昇温し、180℃から210℃までは10時間かけて昇温させながら反応を行い、更に8.3kPaに減圧して210℃で1時間反応を行った。その後、210℃にて無水トリメリット酸を加え、210℃及び8kPaにて表2に示す軟化点に達するまで反応させ、非晶質樹脂AAを製造した。
[非晶質樹脂ABの製造]
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに、表2に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマーを所定量と、オクチル酸錫40g及び没食子酸1水和物2gを入れ、230℃で8時間反応させた後、8.3kPaに減圧して230℃で1時間反応させた。更に、210℃にて無水トリメリット酸を加え、表2に示す軟化点に達するまで反応させ、非晶質樹脂ABを製造した。
Figure 0005718684
[結晶性ポリエステルの水系分散液の調製(工程2)]
撹拌装置、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた5L容の容器に、メチルエチルケトン600g及び結晶性ポリエステルA−1〜A−9又はB−1〜B−7を200g入れ、70℃にて結晶性ポリエステルを溶解させた。
得られた溶液に、5%水酸化カリウム水溶液を中和度95%になるように添加し、続いてイオン交換水2500gを添加した後、250r/minの撹拌速度で、減圧下、70℃でMEKを30ppm以下まで留去した。自己分散型の結晶性ポリエステルの水系分散液の固形分濃度を測定し、固形分濃度が10重量%になるようにイオン交換水を加えて、それぞれ結晶性ポリエステルの分散液を得た。結晶性ポリエステルの体積中位粒径は150〜200nmであった。
[非晶質樹脂の水系分散液の調製]
撹拌装置、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた5L容の容器に、メチルエチルケトン600g、アニオン性界面活性剤として「Kao Akypo RLM−100(成分;ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸、商品名、花王(株)製)」を2g投入し、非晶質樹脂AA又はAB100gを50℃にて添加し、非晶質樹脂を溶解させた。
得られた溶液に、水酸化カリウムを中和度90%になるように添加し、続いてイオン交換水2000gを添加した後、250r/minの撹拌速度で、減圧下、50℃以下の温度でMEKを30ppm以下まで留去した。自己分散型の非晶質樹脂の水系分散液の固形分濃度を測定し、固形分濃度が10重量%になるようにイオン交換水を加えて、非晶質樹脂AAの分散液と非晶質樹脂ABの分散液をそれぞれ得た。非晶質樹脂の体積中位粒径は150nmであった。
<着色剤分散液の調製>
銅フタロシアニン(大日精化工業(株)製、型番:ECB−301)50g、ノニオン性界面活性剤(「エマルゲン(登録商標)150」、花王(株)製)5g及びイオン交換水200gを混合し、銅フタロシアニンを溶解させ、ホモジナイザーを用いて10分間分散させて、着色剤微粒子を含有する着色剤分散液を得た。着色剤微粒子の体積中位粒径は120nmであった。
<離型剤分散液の調製>
パラフィンワックス(「HNP9」、商品名、日本精蝋(株)製、融点:85℃)50g、カチオン性界面活性剤(「サニゾール(登録商標)B50」、花王(株)製)5g及びイオン交換水200gを95℃に加熱して、ホモジナイザーを用いて、パラフィンワックスを分散させた後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、離型剤微粒子を含有する離型剤分散液を得た。離型剤微粒子の体積中位粒径は550nmであった。
<荷電制御剤分散液の調製>
荷電制御剤(「ボントロンE−84」、商品名、オリエント化学工業(株)製)50g、ノニオン性界面活性剤(「エマルゲン(登録商標)150」、花王(株)製)5g及びイオン交換水200gを混合し、ガラスビーズを使用し、サンドグラインダーを用いて10分間分散させて、荷電制御剤微粒子を含有する荷電制御剤分散液を得た。荷電制御剤微粒子の体積中位粒径は500nmであった。
[凝集粒子の水系分散液の製造(工程3)]
結晶性ポリエステルと非晶質樹脂の含有量が表3に記載の割合となるように各分散液を混合した樹脂分散液300g、着色剤分散液8g、離型剤分散液6g、荷電制御剤分散液2g及び脱イオン水52gを2L容の容器に入れた。
次に、カイ型の撹拌機で100r/minの撹拌下、室温で6.2重量%硫酸アンモニウム水溶液146gを30分かけて滴下した。その後、撹拌しながら昇熱し、50℃になった時点で50℃に固定し、3時間保持した。これにより凝集粒子を形成させた後、凝集停止剤としてポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム水溶液(固形分28重量%)4.2gを脱イオン水37gで希釈した希釈液を添加した。
[合一粒子の水系分散液の製造(工程4)及びトナーの製造]
次いで80℃まで0.16℃/minで昇温し、80℃になった時点から1時間80℃を保持した後、加熱を終了した。これにより合一粒子を形成させ、結着樹脂を得た後、室温まで徐冷し、吸引ろ過処理、洗浄処理及び乾燥処理を行い、トナーT−1〜T−9、U−1〜U−7を得た。得られたトナーの低温定着性、帯電度の環境安定性及び加圧保存安定性の評価を、以下の通りに行った。結果を表3に示す。
その後、更に、トナー母粒子100重量部に対して2.0重量部の疎水性シリカ「NAX−50」(商品名、日本アエロジル(株)製、個数平均粒子径40nm)、1.5重量部の疎水性シリカ「R972」(商品名、日本アエロジル(株)製、個数平均粒子径16nm)を、10Lヘンシェルミキサー(日本コークス工業(株)製)に、ST(上羽根)−A0(下羽根)型の撹拌羽根を装着して、3000rpmにて2分間撹拌して外添処理を行い、トナーを得た。
<低温定着性の評価>
複写機「AR−505」(商品名、シャープ(株)製)にトナーを実装し、未定着で画像出しを行った(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)。前記複写機の定着機をオフラインで、90℃から240℃へ5℃ずつ順次定着温度を上昇させながら、300mm/secで用紙に定着させた。なお、定着紙には、「CopyBond SF−70NA(商品名、シャープ(株)製、75g/m2)」を使用した。
500gの荷重をかけた底面が15mm×7.5mmの砂消しゴム(株式会社ライオン事務器製、商品名:LION ER−502R INK&BALLPEN)で、定着機をとおして定着された画像を5往復擦り、擦る前後の光学反射密度を反射濃度計「RD−915」(商品名、グレタグマクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(擦り後/擦り前)が最初に80%を越える定着ローラーの温度を最低定着温度とする。得られた最低定着温度により、以下の評価基準に従って評価した。最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れる。
5:最低定着温度が120℃未満である。
4:最低定着温度が120以上、125℃未満である。
3:最低定着温度が125以上、130℃未満である。
2:最低定着温度が130以上、135℃未満である。
1:最低定着温度が135℃以上である。
<加圧保存安定性の評価>
トナー10gを半径12mmの円筒型容器に入れ、上から100gの重りをのせ、50℃及び相対湿度60%の環境で24時間保持した。パウダーテスター(ホソカワミクロン(株)製)に、上から順に、篩いA(目開き250μm)、篩いB(目開き150μm)、篩いC(目開き75μm)の3つの篩を重ね合わせて設置し、篩いA上に加圧保存したトナー10gを乗せて60秒間振動を与えた。篩いA上に残存したトナー重量WA(g)を、篩いB上に残存したトナー重量WB(g)を、篩いC上に残存したトナー重量WC(g)を、それぞれ測定し、下記式に従って算出される値(α)をもとに、以下の評価基準に従って、流動性加圧保存安定性を評価した。値(α)が100に近いほど、加圧保存安定性に優れる。
α=100−(WA+WB×0.6+WC×0.2)/10×100
5:αが90〜100
4:αが80以上、90未満
3:αが70以上、80未満
2:αが60以上、70未満
1:αが60未満
<環境安定性の評価>
非磁性一成分現像装置「MicroLine9300PS」(商品名、(株)沖データ製)にトナーを実装し、印字率5%の画像を、25℃、50%の環境下で20枚印刷した後、光学反射密度を反射濃度計「RD−915」(商品名、グレタグマクベス社製)を用いて測定した。
更に、25℃、90%の環境下でマシンを4時間放置後、印字率5%の画像を20枚印刷した後、再度光学反射密度を反射濃度計「RD−915」(商品名、グレタグマクベス社製)を用いて測定した。両者の画像濃度の差を算出し、以下の評価基準に従って、環境安定性を測定した。画像濃度差が小さいほど、環境安定性に優れている。
5:画像濃度差が0.1未満
4:画像濃度差が0.1以上、0.2未満
3:画像濃度差が0.2以上、0.3未満
2:画像濃度差が0.3以上、0.4未満
1:画像濃度差が0.4以上
Figure 0005718684
表3より、本発明の製造方法により得られたトナーT−1〜T−9は、本発明の結着樹脂を含有していないトナーU−1〜U−7より、低温定着性、加圧保存安定性、及び環境安定性について優れている。
本発明により得られる結着樹脂を含有するトナーは、低温安定性、加圧保存安定性、及び環境安定性に優れるという特性を有するため、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等に用いられる電子写真用トナーとして好適に使用できる。

Claims (5)

  1. 少なくとも、炭素数2〜12の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物を70〜100モル%含むカルボン酸成分とを縮重合し、結晶性ポリエステルを得る工程を有する、結晶性ポリエステルを含有するトナー用結着樹脂の製造方法であって、
    前記アルコール成分と前記カルボン酸成分とのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)が1.03〜1.20であり、
    130〜160℃の温度範囲で、理論反応水量の排出時を反応率100%とした場合に、排出された反応水量から求められる反応率が40%以上になるまで縮重合する工程を含む、トナー用結着樹脂の製造方法。
  2. 理論反応水量の排出時を反応率100%とした場合に、排出された反応水量から計算された縮重合反応の反応率が70%以上になった時にエステル化触媒を加える、請求項に記載のトナー用結着樹脂の製造方法。
  3. 理論反応水量の排出時を反応率100%とした場合に、排出された反応水量から計算された縮重合反応の反応率が90%以上で、減圧度12kPa以下で、縮重合反応させる工程を含む、請求項又はに記載のトナー用結着樹脂の製造方法。
  4. 下記工程1〜工程4を有する、トナーの製造方法。
    工程1:少なくとも、炭素数2〜12の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物を70〜100モル%含むカルボン酸成分とを縮重合して、結晶性ポリエステルを得る工程であって、
    前記アルコール成分と前記カルボン酸成分とのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)が1.03〜1.20であり
    130〜160℃の温度範囲で、理論反応水量の排出時を反応率100%とした場合に、排出された反応水量から求められる反応率が40%以上になるまで縮重合する工程を含む工程
    工程2:工程1で得られた結晶性ポリエステルを含む水系分散液を得る工程。
    工程3:工程2で得られた結晶性ポリエステルを含む水系分散液及び非晶質樹脂を含む水系分散液を混合し、次いで凝集工程に付すことにより凝集粒子の水系分散液を得る工程。
    工程4:工程3で得られた凝集粒子の水系分散液を合一工程に付すことにより合一粒子の水系分散液を得る工程。
  5. 請求項に記載の製造方法により得られる、電子写真用トナー。
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