[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1ないし図6を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドの構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。図2は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。図3は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第1の部分を示す平面図である。図4は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第2の部分の第1層を示す平面図である。図5は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第2の部分の第2層を示す平面図である。図6は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極の媒体対向面の近傍の部分を示す断面図である。なお、図1および図6は媒体対向面および基板の上面に垂直な断面を示している。図1および図6において記号Tで示す矢印は、記録媒体の進行方向を表している。図2ないし図5において記号TWで示す矢印は、トラック幅方向を表している。
図1および図2に示したように、本実施の形態に係る垂直磁気記録用磁気ヘッド(以下、単に磁気ヘッドと記す。)は、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al2O3・TiC)等のセラミック材料よりなり、上面1aを有する基板1と、この基板1の上面1a上に配置されたアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料よりなる絶縁層2と、この絶縁層2の上に配置された磁性材料よりなる第1の再生シールド層3と、第1の再生シールド層3を覆うように配置された絶縁膜である第1の再生シールドギャップ膜4と、この第1の再生シールドギャップ膜4の上に配置された再生素子としてのMR(磁気抵抗効果)素子5と、このMR素子5の上に配置された絶縁膜である第2の再生シールドギャップ膜6と、この第2の再生シールドギャップ膜6の上に配置された磁性材料よりなる第2の再生シールド層7とを備えている。
MR素子5の一端部は、記録媒体に対向する媒体対向面80に配置されている。MR素子5には、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。GMR素子としては、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ平行な方向に流すCIP(Current In Plane)タイプでもよいし、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプでもよい。
第1の再生シールド層3から第2の再生シールド層7までの部分は、再生ヘッド部8を構成する。磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなり、第2の再生シールド層7の上に配置された非磁性層71と、非磁性層71の上に配置された磁性材料よりなる中間シールド層72と、中間シールド層72の上に配置された記録ヘッド部9とを備えている。中間シールド層72は、記録ヘッド部9で発生する磁界からMR素子5をシールドする機能を有している。非磁性層71は、例えばアルミナによって形成されている。記録ヘッド部9は、コイルと、主磁極15と、記録シールド16と、ギャップ部17とを有している。
コイルは、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。コイルは、第1の部分10と第2の部分20とを含んでいる。第1の部分10と第2の部分20は、いずれも、銅等の導電材料によって形成されている。第1の部分10と第2の部分20は、直列または並列に接続されている。主磁極15は、媒体対向面80に配置された端面を有し、コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。図1および図6は、媒体対向面80に配置された主磁極15の端面と交差し、媒体対向面80および基板1の上面1aに垂直な断面(以下、主断面と言う。)を示している。
記録シールド16は、媒体対向面80に配置された端面を有している。記録シールド16の端面は、第1ないし第4の端面部分16Aa,16Ba,16Ca,16Daを含んでいる。第1の端面部分16Aaは、主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されている。第2の端面部分16Baは、主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されている。第3および第4の端面部分16Ca,16Daは、主磁極15の端面に対してトラック幅方向TWの両側に配置されている。媒体対向面80において、第1ないし第4の端面部分16Aa,16Ba,16Ca,16Daは、主磁極15の端面の周りを囲むように配置されている。
記録シールド16は、磁性材料によって形成されている。記録シールド16の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
記録ヘッド部9は、更に、第1の帰磁路部30および第2の帰磁路部40を有している。第1および第2の帰磁路部30,40は、いずれも磁性材料によって形成されている。第1および第2の帰磁路部30,40の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。第1の帰磁路部30と第2の帰磁路部40は、主磁極15を挟むように基板1の上面1aに垂直な方向に沿って並んでいる。第1の帰磁路部30は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されて、主磁極15のうちの媒体対向面80から離れた部分と記録シールド16とを接続し、これにより、主磁極15と記録シールド16とを磁気的に連結している。第2の帰磁路部40は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されて、主磁極15のうちの媒体対向面80から離れた部分と記録シールド16とを接続し、これにより、主磁極15と記録シールド16とを磁気的に連結している。
第1の帰磁路部30は、磁性層31,32,36を有している。磁性層31は、水平部31Aと第1の傾斜部31Bと第2の傾斜部31Cとを含んでいる。水平部31Aは、基板1の上面1aに平行な方向に延在している。第1の傾斜部31Bは、水平部31Aの、媒体対向面80に最も近い端部近傍の部分から、基板1の上面1aから離れる方向に延びている。第2の傾斜部31Cは、水平部31Aの、媒体対向面80から最も遠い端部近傍の部分から、基板1の上面1aから離れる方向に延びている。前記主断面において、媒体対向面80に垂直な方向についての第1の傾斜部31Bと第2の傾斜部31Cとの間隔は、基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。図1では、水平部31Aと第1の傾斜部31Bの境界と、水平部31Aと第2の傾斜部31Cの境界を、それぞれ点線で示している。第1の傾斜部31Bは、媒体対向面80に向いた第1の端面31Baと、記録シールド16に接する第2の端面31Bbとを有している。第1の傾斜部31Bは、本発明における「傾斜部」に対応する。
磁性層32は、水平部31Aと第2の傾斜部31Cに接し、第1の傾斜部31Bに対しては間隔を開けるように、第1の傾斜部31Bと第2の傾斜部31Cとの間に配置されている。図3に示したように、コイルの第1の部分10は、第2の傾斜部31Cおよび磁性層32の周りに約3回巻かれている。
磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなり、第1の帰磁路部30の少なくとも一部を収容する収容部50を備えている。本実施の形態では特に、収容部50は、磁性層31,32を収容している。収容部50は、中間シールド層72の上に配置された非磁性層51と、非磁性膜52とを有している。非磁性層51は、その上面から下面にかけて貫通する開口部51aを有している。開口部51aは、第1の部分10の最も外側の1ターンの外側に位置する第1の壁面と、第1の部分10の最も内側の1ターンの内側に位置する第2の壁面とを有している。第1および第2の壁面は、基板1の上面1aに垂直な方向に対して傾いている。具体的には、前記主断面において、第1の壁面における任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って小さくなっている。また、前記主断面において、第2の壁面における任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。
磁性層31,32と第1の部分10は、非磁性層51の開口部51a内に配置されている。非磁性膜52は、非磁性層51の上面、開口部51aの第1および第2の壁面ならびに中間シールド層72の上面に沿って配置されている。非磁性層51および非磁性膜52は、アルミナ等の無機絶縁材料によって形成されている。
収容部50は、第1の帰磁路部30と媒体対向面80との間に介在する介在部50Aを含んでいる。介在部50Aは、第1の帰磁路部30に向いた傾斜面50Aaを有している。傾斜面50Aaにおける任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って小さくなる。介在部50Aは、非磁性層51の一部と非磁性膜52の一部とによって構成されている。第1の傾斜部31Bは、傾斜面50Aaに沿って延在している。
磁気ヘッドは、更に、非磁性金属材料よりなり、非磁性膜52に沿って配置された電極膜73を備えている。電極膜73は、磁性層31をめっき法で形成する際に電極およびシードとして用いられる。電極膜73の厚みは、例えば50〜80nmの範囲内である。電極膜73は、例えばRuによって形成されている。
磁気ヘッドは、更に、磁性層31,32と第1の部分10との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁膜53と、第1の部分10の巻線間に配置された絶縁材料よりなる絶縁層54とを備えている。第1の部分10、磁性層31,32、絶縁膜53、絶縁層54および電極膜73の上面は平坦化されている。絶縁膜53および絶縁層54は、例えばアルミナによって形成されている。
図2に示したように、記録シールド16は、第1のシールド16Aと、第2のシールド16Bと、2つのサイドシールド16C,16Dとを有している。2つのサイドシールド16C,16Dは、主磁極15のトラック幅方向TWの両側に配置されている。第1のシールド16Aは、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されている。第2のシールド16Bは、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されている。サイドシールド16C,16Dは、第1のシールド16Aと第2のシールド16Bを磁気的に連結している。
図6に示したように、第1のシールド16Aは、第1の端面部分16Aaと、下面である第1の傾斜面16Abと、上面16Acと、第1の端面部分16Aaと上面16Acとを接続する接続面16Adとを有している。接続面16Adにおける任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。第2のシールド16Bは、第2の端面部分16Baと、第2の傾斜面16Bbを含む上面とを有している。第1の傾斜面16Abと第2の傾斜面16Bbについては、後で詳しく説明する。図2に示したように、サイドシールド16Cは、第3の端面部分16Caを有している。サイドシールド16Dは、第4の端面部分16Daを有している。
第2のシールド16Bは、磁性層31の第1の傾斜部31Bの上に配置され、第1の傾斜部31Bの第2の端面31Bbに接している。磁性層36は、磁性層31の第2の傾斜部31Cおよび磁性層32の上に配置されている。磁気ヘッドは、更に、第2のシールド16Bおよび磁性層36の周囲において、第1の部分10、絶縁膜53および絶縁層54の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層55と、絶縁層55および電極膜73の上に配置された非磁性材料よりなる非磁性層56とを備えている。絶縁層55および非磁性層56は、例えばアルミナによって形成されている。
主磁極15は、記録媒体の進行方向Tの前側の端に位置する面である上面15T(図6参照)と、上面15Tとは反対側の下端部15L(図6参照)と、トラック幅方向TWの両側に配置された第1および第2の側部(図2参照)とを有している。サイドシールド16Cは、主磁極15の第1の側部に対向する第1の側壁を有している。サイドシールド16Dは、主磁極15の第2の側部に対向する第2の側壁を有している。
ギャップ部17は、非磁性材料よりなり、主磁極15と、記録シールド16との間に設けられている。ギャップ部17は、主磁極15と第1のシールド16Aとの間に配置された第1のギャップ層19と、主磁極15と第2のシールド16Bおよびサイドシールド16C,16Dとの間に配置された第2のギャップ層18とを含んでいる。
サイドシールド16C,16Dは、第2のシールド16Bの上に配置され、第2のシールド16Bの上面に接している。第2のギャップ層18は、サイドシールド16C,16Dの側壁、第2のシールド16Bの上面および非磁性層56の上面に沿って配置されている。第2のギャップ層18を構成する非磁性材料は、絶縁材料でもよいし、非磁性金属材料でもよい。第2のギャップ層18を構成する絶縁材料としては、例えばアルミナが用いられる。第2のギャップ層18を構成する非磁性金属材料としては、例えばRuが用いられる。
主磁極15は、第2のシールド16Bおよび非磁性層56の上面と主磁極15との間に第2のギャップ層18が介在するように、第2のシールド16Bおよび非磁性層56の上に配置されている。また、図2に示したように、主磁極15とサイドシールド16C,16Dとの間にも、第2のギャップ層18が介在している。
媒体対向面80から離れた位置において、主磁極15の下端部15Lは、磁性層36の上面に接している。主磁極15は、金属磁性材料によって形成されている。主磁極15の材料としては、例えば、NiFe、CoNiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。主磁極15の形状については、後で詳しく説明する。
磁気ヘッドは、更に、主磁極15およびサイドシールド16C,16Dの周囲に配置された非磁性材料よりなる非磁性層57を備えている。非磁性層57は、例えばアルミナによって形成されている。
磁気ヘッドは、更に、媒体対向面80から離れた位置において、主磁極15の上面15Tの一部の上に配置された非磁性金属材料よりなる非磁性金属層58と、この非磁性金属層58の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層59とを備えている。非磁性金属層58は、例えばRu、NiCrまたはNiCuによって形成されている。絶縁層59は、例えばアルミナによって形成されている。
第1のギャップ層19は、主磁極15、非磁性金属層58および絶縁層59を覆うように配置されている。第1のギャップ層19の材料は、アルミナ等の非磁性絶縁材料でもよいし、Ru、NiCu、Ta、W、NiB、NiP等の非磁性導電材料でもよい。
第1のシールド16Aは、サイドシールド16C,16Dおよび第1のギャップ層19の上に配置され、サイドシールド16C,16Dおよび第1のギャップ層19の上面に接している。媒体対向面80において、第1のシールド16Aの第1の端面部分16Aaの一部は、主磁極15の端面に対して、第1のギャップ層19の厚みによる所定の間隔を開けて配置されている。第1のギャップ層19の厚みは、5〜60nmの範囲内であることが好ましく、例えば30〜60nmの範囲内である。主磁極15の端面は、第1のギャップ層19に隣接する辺を有し、この辺はトラック幅を規定している。
第2の帰磁路部40は、磁性層41,42,43,44を有している。磁性層41は、媒体対向面80から離れた位置において主磁極15の上に配置されている。
コイルの第2の部分20は、第1層21および第2層22を含んでいる。図4に示したように、第1層21は、磁性層41の周りに1回巻かれている。磁気ヘッドは、更に、第1のシールド16A、第1のギャップ層19および磁性層41と第1層21との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁膜61と、第1層21、第1のシールド16Aおよび磁性層41の周囲に配置された非磁性材料よりなる非磁性層62とを備えている。絶縁膜61および非磁性層62は、例えばアルミナによって形成されている。第1のシールド16A、第1層21、磁性層41、絶縁膜61および非磁性層62の上面は平坦化されている。
磁気ヘッドは、更に、第1層21および絶縁膜61の上面ならびに磁性層41の上面の一部の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層63を備えている。絶縁層63は、例えばアルミナによって形成されている。
磁性層42は、第1のシールド16Aの上に配置されている。磁性層43は、磁性層41の上に配置されている。磁性層42は、媒体対向面80に向いた端面を有し、この端面は、媒体対向面80から離れた位置に配置されている。磁性層42の端面における任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。
図5に示したように、第2層22は、磁性層43の周りに約2回巻かれている。磁気ヘッドは、更に、磁性層42,43および絶縁層63と第2層22との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁膜64と、第2層22の巻線間に配置された絶縁材料よりなる絶縁層65と、第2層22および磁性層42,43の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層66とを備えている。第2層22、磁性層42,43、絶縁膜64および絶縁層65,66の上面は平坦化されている。磁気ヘッドは、更に、第2層22、絶縁膜64および絶縁層65の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層67を備えている。絶縁膜64および絶縁層65〜67は、例えばアルミナによって形成されている。
磁性層44は、磁性層42,43および絶縁層67の上に配置され、磁性層42と磁性層43とを接続している。磁性層44は、媒体対向面80に向いた端面を有し、この端面は、媒体対向面80から離れた位置に配置されている。磁性層44の端面における任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。
磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなり、記録ヘッド部9を覆うように配置された保護層70を備えている。保護層70は、例えば、アルミナ等の無機絶縁材料によって形成されている。
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面80と再生ヘッド部8と記録ヘッド部9とを備えている。再生ヘッド部8と記録ヘッド部9は、基板1の上に積層されている。再生ヘッド部8は、記録ヘッド部9に対して、記録媒体の進行方向Tの後側(リーディング側)に配置されている。
再生ヘッド部8は、再生素子としてのMR素子5と、媒体対向面80側の一部がMR素子5を挟んで対向するように配置された、MR素子5をシールドするための第1の再生シールド層3および第2の再生シールド層7と、MR素子5と第1の再生シールド層3との間に配置された第1の再生シールドギャップ膜4と、MR素子5と第2の再生シールド層7との間に配置された第2の再生シールドギャップ膜6とを有している。
記録ヘッド部9は、第1および第2の部分10,20を含むコイルと、主磁極15と、記録シールド16と、ギャップ部17と、第1および第2の帰磁路部30,40と、収容部50とを有している。コイル、主磁極15、記録シールド16、ギャップ部17、第1の帰磁路部30、第2の帰磁路部40および収容部50は、基板1の上面1aの上方に配置されている。記録シールド16は、第1のシールド16Aと、第2のシールド16Bと、2つのサイドシールド16C,16Dとを有している。ギャップ部17は、第1のギャップ層19と第2のギャップ層18とを含んでいる。第1の帰磁路部30と第2の帰磁路部40は、主磁極15を挟むように基板1の上面1aに垂直な方向に沿って並んでいる。
第1の帰磁路部30は、磁性層31,32,36を有し主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側であって主磁極15と基板1の上面1aとの間に配置されている。図1に示したように、第1の帰磁路部30は、主磁極15、ギャップ部17(ギャップ層18)、記録シールド16および第1の帰磁路部30(磁性層31,32,36)によって囲まれた第1の空間S1が形成されるように、主磁極15のうちの媒体対向面80から離れた部分と記録シールド16とを接続している。
収容部50は、第1の帰磁路部30の少なくとも一部を収容する。具体的には、第1の帰磁路部30の一部である磁性層31,32が、収容部50を構成する非磁性層51の開口部51a内に配置されている。磁性層31は、水平部31A、第1の傾斜部31Bおよび第2の傾斜部31Cを含んでいる。水平部31Aは、第1の空間S1よりも基板1の上面1aに近い位置にある。第1の傾斜部31Bは、第1の空間S1よりも媒体対向面80により近い位置にある。第2の傾斜部31Cは、第1の空間S1よりも媒体対向面80からより遠い位置にある。
第2の帰磁路部40は、磁性層41〜44を有し、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されている。第2の帰磁路部40は、主磁極15、ギャップ部17(ギャップ層19)、記録シールド16および第2の帰磁路部40(磁性層41〜44)によって囲まれた第2の空間S2が形成されるように、主磁極15のうちの媒体対向面80から離れた部分と記録シールド16とを接続している。
以下、図3ないし図5を参照して、コイルの第1および第2の部分10,20について詳しく説明する。図3は、第1の部分10を示す平面図である。前述のように、第1の部分10は、第2の傾斜部31Cと磁性層32の周りに約3回巻かれている。第1の部分10は、第1の空間S1を通過するように延びる3つのコイル要素10A,10B,10Cを含んでいる。なお、コイル要素とは、コイルの巻線の一部である。コイル要素10A,10B,10Cは、媒体対向面80側からこの順に、媒体対向面80に垂直な方向に並んでいる。また、第1の部分10は、第2の部分20に電気的に接続されたコイル接続部10Eを有している。
図4は、第2の部分20の第1層21を示す平面図である。前述のように、第1層21は、磁性層41の周りに1回巻かれている。第1層21は、第2の空間S2内のうち特に第1のシールド16Aと磁性層41との間を通過するように延びるコイル要素21Aを含んでいる。また、第1層21は、第1の部分10のコイル接続部10Eに電気的に接続されたコイル接続部21Sと、第2層22に電気的に接続されたコイル接続部21Eとを有している。コイル接続部21Sは、第1層21と第1の部分10との間の複数の層を貫通する図示しない柱状の接続層を介してコイル接続部10Eに電気的に接続されている。接続層は、銅等の導電材料によって形成されている。
図5は、第2の部分20の第2層22を示す平面図である。前述のように、第2層22は、磁性層43の周りに約2回巻かれている。第2層22は、第2の空間S2内のうち特に磁性層42と磁性層43との間を通過するように延びる2つのコイル要素22A,22Bを含んでいる。コイル要素22A,22Bは、媒体対向面80側からこの順に、媒体対向面80に垂直な方向に並んでいる。また、第2層22は、絶縁層63および絶縁膜64を貫通して第1層21のコイル接続部21Eに電気的に接続されたコイル接続部22Sを有している。図3ないし図5に示した例では、第1および第2の部分10,20は、直列に接続されている。
コイル要素21A,22A,22Bは、それぞれ第2の空間S2を通過するように延びている。以下、第1の空間S1を通過するように延びるコイル要素を第1のコイル要素とも呼び、第2の空間S2を通過するように延びるコイル要素を第2のコイル要素とも呼ぶ。
次に、図3ないし図6を参照して、主磁極15の形状について詳しく説明する。図3ないし図5に示したように、主磁極15は、媒体対向面80に配置された端面とその反対側の端部とを有するトラック幅規定部15Aと、トラック幅規定部15Aの端部に接続された幅広部15Bとを含んでいる。また、図6に示したように、主磁極15は、記録媒体の進行方向Tの前側の端に位置する面である上面15Tと、上面15Tとは反対側の下端部15Lと、第1の側部と、第2の側部とを有している。幅広部15Bにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅は、トラック幅規定部15Aにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅よりも大きい。
トラック幅規定部15Aにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅は、媒体対向面80からの距離によらずにほぼ一定である。幅広部15Bにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅は、例えば、トラック幅規定部15Aとの境界位置ではトラック幅規定部15Aにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅と等しく、媒体対向面80から離れるに従って、徐々に大きくなった後、一定の大きさになっている。ここで、媒体対向面80に垂直な方向についてのトラック幅規定部15Aの長さをネックハイトと呼ぶ。ネックハイトは、例えば0〜0.3μmの範囲内である。ネックハイトが0の場合は、トラック幅規定部15Aがなく、幅広部15Bの端面が媒体対向面80に配置される。
上面15Tは、媒体対向面80に近い順に、連続するように配置された第1の部分15T1および第2の部分15T2を含んでいる。第1の部分15T1は、媒体対向面80に配置された第1の端部と、その反対側の第2の端部とを有している。第2の部分15T2は、第1の部分15T1の第2の端部に接続されている。
下端部15Lは、媒体対向面80に近い順に、連続するように配置された第1の部分15L1、第2の部分15L2、第3の部分15L3および第4の部分15L4を含んでいる。第1の部分15L1は、媒体対向面80に配置された第1の端部と、その反対側の第2の端部とを有している。第2の部分15L2は、第1の部分15L1の第2の端部に接続されている。第3の部分15L3は、第2の部分15L2に接続された第3の端部と、第3の端部よりも媒体対向面80からより遠い位置に配置された第4の端部とを有している。第1ないし第3の部分15L1〜15L3は、2つの面が交わってできるエッジでもよいし、2つの面を連結する面でもよい。第4の部分15L4は、第3の部分15L3の第4の端部に接続された面である。
ここで、図6に示したように、上面15Tの第1の部分15T1の第1の端部を通り、媒体対向面80および記録媒体の進行方向Tに垂直な第1の仮想の平面P1と、下端部15Lの第1の部分15L1の第1の端部を通り、媒体対向面80および記録媒体の進行方向Tに垂直な第2の仮想の平面P2とを想定する。上面15Tの第2の部分15T2は、実質的に第1および第2の仮想の平面P1,P2に平行である。第1の部分15T1は、その第2の端部がその第1の端部に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されるように、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜している。
下端部15Lの第1の部分15L1は、その第2の端部がその第1の端部に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されるように、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜している。第2および第4の部分15L2,15L4は、実質的に第1および第2の仮想の平面P1,P2に平行である。第3の部分15L3は、その第4の端部がその第3の端部に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されるように、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜している。
記録シールド16の第1のシールド16Aは、下面である第1の傾斜面16Abを有している。第1の傾斜面16Abは、ギャップ部17の第1のギャップ層19を介して上面15Tの第1の部分15T1に対向する部分を含んでいる。第1の傾斜面16Abは、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜している。
記録シールド16の第2のシールド16Bは、下端部15Lの第3の部分15L3と媒体対向面80の間に配置された部分を含んでいる。また、第2のシールド16Bは、第2の傾斜面16Bbを含む上面を有している。第2の傾斜面16Bbは、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜している。
第2のシールド16Bの上面は、更に、第2の傾斜面16Bbよりも媒体対向面80からより遠く、第2の傾斜面16Bbよりも基板1の上面1aにより近い位置に配置された平坦部と、第2の傾斜面16Bbと平坦部とを接続する接続面とを含んでいる。平坦部は、実質的に第1および第2の仮想の平面P1,P2に平行である。
ここで、図6に示したように、媒体対向面80に垂直な方向についての上面15Tの第1の部分15T1の長さを記号LAで表し、媒体対向面80に垂直な方向についての下端部15Lの第1の部分15L1の長さを記号LB1で表し、媒体対向面80に垂直な方向についての下端部15Lの第2の部分15L2の長さを記号LB2で表し、媒体対向面80に垂直な方向についての第1の傾斜面16Abの長さを記号LCで表す。長さLAは、例えば0.05〜0.15μmの範囲内である。長さLB1は、例えば0.1〜0.5μmの範囲内である。長さLB2は、例えば0.2〜0.6μmの範囲内である。長さLCは、例えば0.2〜0.6μmの範囲内である。なお、ネックハイトは、上記の長さLA,LB1,LB2,LCとは独立して、任意に設定可能である。
また、第1の仮想の平面P1に対する上面15Tの第1の部分15T1の傾斜角度を記号θT1で表し、第2の仮想の平面P2に対する下端部15Lの第1の部分15L1の傾斜角度を記号θL1で表す。傾斜角度θT1は、例えば22°〜35°の範囲内である。傾斜角度θL1は、例えば30°〜50°の範囲内である。
また、下端部15Lの第3の部分15L3の第3の端部を通り、第1および第2の仮想の平面P1,P2に平行な仮想の平面P3を想定する。そして、仮想の平面P3に対する第3の部分15L3の傾斜角度を記号θL3で表す。傾斜角度θL3は、例えば22°〜60°の範囲内である。
また、媒体対向面80における主磁極15の厚み、すなわち第1の仮想の平面P1と第2の仮想の平面P2との間の距離を記号D0で表す。また、上面15Tの第2の部分15T2と第1の仮想の平面P1との間の距離を記号D1で表す。また、下端部15Lの第2の部分15L2と第2の仮想の平面P2との間の距離を記号D2で表し、第4の部分15L4と仮想の平面P3との間の距離を記号D3で表す。距離D0は、例えば0.05〜0.1μmの範囲内である。距離D1は、例えば0.02〜0.1μmの範囲内である。距離D2は、例えば0.1〜0.5μmの範囲内である。距離D3は、例えば0.1〜0.5μmの範囲内である。
また、媒体対向面80に配置された主磁極15の端面は、第1のギャップ層19に隣接する第1の辺と、第1の辺の一端部に接続された第2の辺と、第1の辺の他端部に接続された第3の辺とを有している。第1の辺はトラック幅を規定する。記録媒体に記録される記録ビットの端部の位置は、第1の辺の位置によって決まる。媒体対向面80に配置された主磁極15の端面のトラック幅方向TWの幅は、第1の辺から離れるに従って、すなわち第1の仮想の平面P1から離れるに従って小さくなっている。第2の辺と第3の辺がそれぞれ第1の仮想の平面P1に垂直な方向に対してなす角度は、例えば7°〜17°の範囲内であり、10°〜15°の範囲内であることが好ましい。第1の辺の長さは、例えば0.05〜0.20μmの範囲内である。
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドの作用および効果について説明する。この磁気ヘッドでは、記録ヘッド部9によって記録媒体に情報を記録し、再生ヘッド部8によって、記録媒体に記録されている情報を再生する。記録ヘッド部9において、第1および第2の部分10,20を含むコイルは、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。第1の部分10によって発生された磁界に対応する磁束は、第1の帰磁路部30と主磁極15を通過する。第2の部分20によって発生された磁界に対応する磁束は、第2の帰磁路部40と主磁極15を通過する。従って、主磁極15は、第1の部分10によって発生された磁界に対応する磁束と第2の部分20によって発生された磁界に対応する磁束とを通過させる。
なお、第1および第2の部分10,20は、直列に接続されていてもよいし、並列に接続されていてもよい。いずれにしても、主磁極15において、第1の部分10によって発生された磁界に対応する磁束と第2の部分20によって発生された磁界に対応する磁束が同じ方向に流れるように、第1および第2の部分10,20は接続される。
主磁極15は、上述のようにコイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させて、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。
記録シールド16は、磁気ヘッドの外部から磁気ヘッドに印加された外乱磁界を取り込む。これにより、外乱磁界が主磁極15に集中して取り込まれることによって記録媒体に対して誤った記録が行なわれることを防止することができる。また、記録シールド16は、主磁極15の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体に達することを阻止する機能を有している。
また、記録シールド16と第1および第2の帰磁路部30,40は、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束を還流させる機能を有している。具体的に説明すると、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束の一部は、記録シールド16と第1の帰磁路部30を通過して主磁極15に還流する。また、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束の他の一部は、記録シールド16と第2の帰磁路部40を通過して主磁極15に還流する。
記録シールド16は、第1のシールド16Aと、第2のシールド16Bと、2つのサイドシールド16C,16Dとを有している。これにより、本実施の形態によれば、主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの前側および後側ならびにトラック幅方向TWの両側において、主磁極15の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体に達することを抑制することができる。その結果、本実施の形態によれば、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。第1および第2のシールド16A,16Bは、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することに寄与する他に、記録磁界の勾配を大きくすることに寄与する。サイドシールド16C,16Dは、特に隣接トラック消去を抑制することへの寄与が大きい。このような記録シールド16の機能により、本実施の形態によれば、記録密度を高めることができる。
また、本実施の形態では、図2に示したように、媒体対向面80において、トラック幅方向TWにおける主磁極15の第1および第2の側部の間隔すなわち主磁極15の端面の幅は、第1の仮想の平面P1から離れるに従って小さくなっている。本実施の形態によれば、この特徴によっても、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。
また、本実施の形態では、媒体対向面80において、トラック幅方向TWにおけるサイドシールド16C,16Dにおける第1および第2の側壁の間隔は、主磁極15の第1および第2の側部の間隔と同様に、第1の仮想の平面P1から離れるに従って小さくなっている。従って、本実施の形態によれば、媒体対向面80において、第1の側部と第1の側壁との間隔、ならびに第2の側部と第2の側壁との間隔を、小さく、且つ均一にすることが可能になる。これにより、サイドシールド16C,16Dによって、主磁極15の端面より発生されてトラック幅方向TWの両側に広がる磁束を、効果的に取り込むことができる。その結果、本実施の形態によれば、特にサイドシールド16C,16Dの機能を高めることが可能になり、スキューに起因した隣接トラック消去の発生をより効果的に抑制することが可能になる。
ところで、記録シールド16で取り込んだ磁束を吸収できるような、体積が大きい磁性層が記録シールド16に磁気的に接続されていないと、記録シールド16によって多くの磁束を取り込むことはできない。本実施の形態では、記録シールド16の第2のシールド16Bと主磁極15とを磁気的に連結する第1の帰磁路部30(磁性層31,32,36)と、記録シールド16の第1のシールド16Aと主磁極15とを磁気的に連結する第2の帰磁路部40(磁性層41〜44)を備えている。このような構成により、記録シールド16で取り込んだ磁束は、第1および第2の帰磁路部30,40を経由して主磁極15に流れ込む。本実施の形態では、記録シールド16に対して、体積が大きい磁性層である第1および第2の帰磁路部30,40と主磁極15が磁気的に接続されている。従って、本実施の形態によれば、記録シールド16によって多くの磁束を取り込むことが可能になり、その結果、前述の記録シールド16の効果を効果的に発揮させることができる。
また、もし、第1の帰磁路部が、媒体対向面80において広い面積にわたって露出した端面を有していると、記録シールド16の端面から記録シールド16内へ取り込まれて第1の帰磁路部に到達した磁束の一部が、第1の帰磁路部の端面から記録媒体に向けて漏れ出すおそれがある。そして、これにより、隣接トラック消去が生じるおそれがある。また、コイルの第1の部分10が発生する熱によって、第1の帰磁路部の一部が膨張し、その結果、媒体対向面80の一部である第1の帰磁路部の端面が記録媒体に向けて突出するおそれがある。そして、これにより、主磁極15の端面や再生ヘッド部8における媒体対向面80に位置する端部が記録媒体から遠ざかってしまい、記録特性や再生特性が劣化するおそれがある。
これに対し、本実施の形態では、第1の帰磁路部30は、媒体対向面80において広い面積にわたって露出した端面を有していない。すなわち、本実施の形態では、第1の帰磁路部30の一部である磁性層31,32が、収容部50に収容されている。収容部50は、第1の帰磁路部30と媒体対向面80との間に介在する介在部50Aを含んでいる。介在部50Aは、第1の帰磁路部30に向いた傾斜面50Aaを有し、第1の帰磁路部30は、傾斜面50Aaに沿って延在する第1の傾斜部31Bを含んでいる。これにより、本実施の形態によれば、第1の帰磁路部30の端面が媒体対向面80において広い面積にわたって露出することなく、第1の帰磁路部30を記録シールド16に接続することができる。従って、本実施の形態によれば、第1の帰磁路部の端面が媒体対向面80において広い面積にわたって露出することによる上述の問題を回避することができる。すなわち、本実施の形態によれば、第1の帰磁路部30から記録媒体に向けて磁束が漏れ出すことと、第1の傾斜部31Bの近傍における媒体対向面80の一部が突出することを抑制することができる。
本実施の形態では特に、非磁性層51の一部と非磁性膜52の一部とによって構成された介在部50Aは、第1の傾斜部31Bよりも硬い無機絶縁材料によって形成されている。そのため、介在部50Aは、第1の傾斜部31Bの介在部50Aに向いた面の位置の変化を抑制する機能を有する。よって、本実施の形態によれば、第1の傾斜部31Bの近傍における媒体対向面80の一部が突出することを、より効果的に抑制することができる。
ここで、図7Aおよび図7Bを参照して、収容部50の介在部50Aが傾斜面50Aaを有していることによる効果について説明する。図7Aおよび図7Bは、収容部50の介在部50Aの作用を示す説明図である。図7Aと図7Bの違いについては、後で説明する。図7Aおよび図7Bにおいて、基板1の上面1aに垂直な方向を一点鎖線で示し、傾斜面50Aaが基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす第1の角度を、記号θ1で表している。コイルの第1の部分10が熱を発生すると、第1の部分10およびその周辺の要素が加熱されて膨張する。これにより、第1の傾斜部31Bには、第1の部分10から媒体対向面80に向かう方向の外力が加えられる。図7Aおよび図7Bにおいて、符号91で示す矢印は第1の傾斜部31Bに加えられる上記の外力を表している。この外力91は、傾斜面50Aaに垂直な方向の成分91aと、傾斜面50Aaに平行で第2のシールド16Bに向かう方向の成分91bとに分解することができる。前述のように、介在部50Aは、第1の傾斜部31Bの介在部50Aに向いた面の位置の変化を抑制する機能を有する。そのため、上記成分91bによって、第1の傾斜部31Bは、第2の端面31Bbが上記成分91bの方向へ移動するように変形する。
また、コイルの第1の部分10が発生する熱によって第1の傾斜部31Bも加熱されて膨張する。これによっても、第1の傾斜部31Bは、第2の端面31Bbが上記成分91bの方向へ移動するように変形する。
これらのことから、第2のシールド16Bには、第2の端面31Bbから、上記成分91bの方向と同じ方向の外力92が加えられる。この外力92は、第2の端面31Bbに垂直な方向の成分92aと、第2の端面31Bbに平行で媒体対向面80に向かう方向の成分92bとに分解することができる。第2のシールド16Bは、上記成分92bによって、第2の端面部分16Baが記録媒体に向かって突出するように変形する。このように第2のシールド16Bが変形することにより、第2のシールド16Bの近傍に存在する主磁極15も、その端面が記録媒体に向かって突出するように変形する。このように、本実施の形態によれば、第1の傾斜部31Bの近傍における媒体対向面80の一部が突出することを抑制しながら、主磁極15の端面を記録媒体に近づけることができる。これにより、記録特性を向上させることが可能になる。第1の角度θ1は、5°〜45°の範囲内であることが好ましく、8°〜16°の範囲内であることがより好ましい。
なお、傾斜面50Aaの代わりに、媒体対向面80に平行な壁面が設けられ、第1の傾斜部31Bの代わりに、基板1の上面1aに垂直な方向に延在する磁性層31の一部が設けられた場合には、第2のシールド16Bには、上記成分92bが発生せず、上述のように主磁極15の端面を記録媒体に近づけることはできない。
また、図7Aおよび図7Bに示したように、本実施の形態では、傾斜部31Bの第1の端面31Baは、媒体対向面80に位置する端部31Ba1を有している。この端部31Ba1の位置において、端部31Ba1よりも記録媒体の進行方向の前側に位置する媒体対向面80の一部に対して第1の端面31Baがなす第2の角度θ2は、90°よりも大きい。第2の角度θ2は、180°から第1の角度θ1を引いた値と等しくてもよいし、180°から第1の角度を引いた値よりも小さくてもよい。
図7Aは、第2の角度θ2が、180°から第1の角度θ1を引いた値と等しい場合を示している。図7Aでは、第1の端面31Ba上の位置に関わらず、第1の端面31Baが基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、第1の角度θ1と等しい。第2の角度θ2が、180°から第1の角度θ1を引いた値と等しい場合には、第2の角度θ2は、135°〜175°の範囲内であることが好ましく、164°〜172°の範囲内であることがより好ましい。
図7Bは、第2の角度θ2が、180°から第1の角度θ1を引いた値よりも小さい場合を示している。図7Bでは、第1の端面31Baのうちの端部31Ba1の近傍の一部分が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、第1の角度θ1よりも大きい。第1の端面31Baの残りの部分が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、第1の角度θ1と等しい。第2の角度θ2が、180°から第1の角度θ1を引いた値よりも小さい場合には、第2の角度θ2は、120°〜175°の範囲内であることが好ましく、135°〜172°の範囲内であることがより好ましい。
以下、第2の角度θ2が90°よりも大きいことによる効果について説明する。もし、記録シールド16および第1の帰磁路部30によって構成される磁路が、媒体対向面80の近傍において、90°以下の角度のエッジを有していると、このエッジの近傍から磁路の外部へ磁界が漏れやすくなる。その結果、隣接トラック消去が発生するおそれがある。これに対し、本実施の形態では、第2の角度θ2が90°よりも大きいことから、記録シールド16および第1の帰磁路部30によって構成される磁路は、媒体対向面80の近傍において、90°以下の角度のエッジを有していない。そのため、本実施の形態によれば、90°以下の角度のエッジに起因する隣接トラック消去の発生を防止することができる。
次に、主磁極15の形状の特徴と、それによる効果について詳しく説明する。本実施の形態では、主磁極15の上面15Tは、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜した第1の部分15T1を含み、主磁極15の下端部15Lは、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜した第1および第3の部分15L1,15L3を含んでいる。これにより、本実施の形態によれば、媒体対向面80における主磁極15の厚みを小さくすることができることから、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。また、媒体対向面80から離れた位置では主磁極15の厚みを大きくすることができることから、主磁極15によって多くの磁束を媒体対向面80まで導くことができ、その結果、オーバーライト特性等の記録特性を向上させることができる。
また、本実施の形態では、主磁極15の下端部15Lが第2の部分15L2を含むことにより、第2の部分15L2がない場合に比べて、第3の部分15L3と第2のシールド16Bとの間の距離を大きくすることが可能になる。これにより、本実施の形態によれば、主磁極15から記録シールド16への磁束の漏れによって記録特性が低下することを防止することができる。
以上説明した主磁極15の形状の特徴により、本実施の形態によれば、スキューに起因した問題の発生を防止し、且つ記録特性を向上させることが可能になる。
次に、図8ないし図21および図22Aないし図24Bを参照して、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法について説明する。図8ないし図21および図22Aないし図24Bは、磁気ヘッドの製造過程における積層体を示している。図8ないし図21の(a)および図22A、図23A、図24Aは、それぞれ、媒体対向面80および基板1の上面1aに垂直な断面、特に前記主断面を表している。図8ないし図16の(b)は、媒体対向面80が形成される予定の位置に平行な断面を示している。図8ないし図16の(a)において、nB−nB線(nは8以上16以下の整数)は、図8ないし図16の(b)の断面の位置を示している。図17ないし図21の(b)および図22B、図23B、図24Bは、媒体対向面80が形成される予定の位置の断面を示している。図8ないし図21の(a)および図22A、図23A、図24Aにおいて、記号“ABS”は、媒体対向面80が形成される予定の位置を表している。
本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法では、まず、図8に示したように、基板1の上に、絶縁層2、第1の再生シールド層3、第1の再生シールドギャップ膜4を順に形成する。次に、第1の再生シールドギャップ膜4の上にMR素子5と、このMR素子5に接続される図示しないリードとを形成する。次に、MR素子5およびリードを、第2の再生シールドギャップ膜6で覆う。次に、第2の再生シールドギャップ膜6の上に、第2の再生シールド層7、非磁性層71、中間シールド層72を順に形成する。
図9は次の工程を示す。この工程では、積層体の上面全体の上に非磁性層51を形成する。非磁性層51の厚みは、例えば1.0〜1.6μmの範囲内である。
図10は、次の工程を示す。この工程では、まず、非磁性層51の上面の上に、例えばRuよりなるエッチングマスク材料層を形成する。エッチングマスク材料層の厚みは、例えば50〜60nmの範囲内である。次に、エッチングマスク材料層の上に、後に形成される非磁性層51の開口部51aの平面形状に対応した形状の開口部82aを有するフォトレジストマスク82を形成する。このフォトレジストマスク82は、フォトレジスト層をパターニングして形成される。なお、これ以降の工程で形成されるフォトレジストマスクも、フォトレジストマスク82と同様の方法で形成される。次に、フォトレジストマスク82をエッチングマスクとして用いて、例えばイオンビームエッチング(以下、IBEと記す。)によって、エッチングマスク材料層のうち、フォトレジストマスク82の開口部82aから露出する部分を除去する。これにより、エッチングマスク材料層は、エッチングマスク81となる。エッチングマスク81は、後に形成される非磁性層51の開口部51aの平面形状に対応した形状の開口部81aを有している。
次に、エッチングマスク81およびフォトレジストマスク82をエッチングマスクとして用いて、例えば反応性イオンエッチング(以下、RIEと記す。)によって、非磁性層51をテーパーエッチングして、非磁性層51に開口部51aを形成する。中間シールド層72は、非磁性層51をRIEによってエッチングする際にエッチングを停止させるエッチングストッパとして機能する。次に、エッチングマスク81およびフォトレジストマスク82を除去する。
非磁性層51がアルミナによって形成されている場合、上記のエッチング工程では、例えば、BCl3およびN2を含むエッチングガスを用いたRIEによって、非磁性層51をテーパーエッチングする。BCl3は、非磁性層51のエッチングに寄与する主成分である。N2は、非磁性層51のエッチング中に、エッチングによって形成される溝の側壁に側壁保護膜を形成するためのガスである。エッチングガスがN2を含むことにより、非磁性層51のエッチング中に溝の側壁に側壁保護膜が形成され、これにより、開口部51aの第1および第2の壁面が、基板1の上面1aに垂直な方向に対して傾いた面となる。開口部51aの第1および第2の壁面が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、例えば5°〜45°の範囲内である。
図11は、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に、非磁性膜52を形成する。非磁性膜52の材料としてアルミナを用いる場合には、例えば原子層堆積法(以下、ALDと記す。)によって、非磁性膜52を形成する。非磁性膜52の厚みは、例えば0.1〜0.2μmの範囲内である。次に、例えばスパッタ法またはイオンビームデポジション法によって、積層体の上面全体の上に電極膜73を形成する。次に、電極膜73を電極およびシード層として用いて、フレームめっき法によって、後に磁性層31となる予備磁性層31Pを形成する。予備磁性層31Pの厚みは、例えば0.4〜0.6μmの範囲内である。予備磁性層31Pの一部は、非磁性層51の上面の上方に配置されている。
予備磁性層31Pは、水平部31A、第1の傾斜部31Bおよび第2の傾斜部31Cを含んでいる。従って、予備磁性層31Pを形成する工程では、水平部31A、第1の傾斜部31Bおよび第2の傾斜部31Cが同じ材料によって同時に形成される。
図12は、次の工程を示す。この工程では、電極膜73を電極として用いて、フレームめっき法によって、予備磁性層31Pの上に、後に磁性層32となる予備磁性層32Pを形成する。予備磁性層32Pは、その上面が予備磁性層31Pのうち非磁性層51の上面の上方に配置された部分よりも上方に配置されるように形成される。
図13は、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に、絶縁膜53を形成する。絶縁膜53の材料としてアルミナを用いる場合には、例えばALDによって絶縁膜53を形成する。絶縁膜53の厚みは、例えば0.1〜0.2μmの範囲内である。
次に、後にコイルの第1の部分10となる導電層10Pを形成する。この導電層10Pは、例えば以下のようにして形成される。まず、後に導電層10Pの一部となるシード層を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、シード層の上に、導電層10Pの他の一部となるめっき膜を形成する。めっき膜は、第1の部分10と同様の平面渦巻き形状をなしている。めっき膜の最も外側の1ターンは、その一部が、絶縁膜53のうち非磁性層51の上面の上方に配置された部分に乗り上げるように形成される。めっき膜の最も内側の1ターンは、その一部が、絶縁膜53のうち予備磁性層32Pの上面の上方に配置された部分に乗り上げるように形成される。次に、めっき膜をエッチングマスクとして用いて、例えばIBEによって、シード層のうち、めっき膜の下に存在する部分以外の部分を除去する。
図14は、次の工程を示す。この工程では、導電層10Pの巻線間を埋め、且つ導電層10Pを覆うように、絶縁層54を形成する。絶縁層54の材料としてアルミナを用いる場合には、例えばALDによって絶縁層54を形成する。絶縁層54の厚みは、例えば0.3〜0.5μmの範囲内である。
図15は、次の工程を示す。この工程では、例えば化学機械研磨(以下、CMPと記す。)によって、電極膜73が露出するまで導電層10P、予備磁性層31P,32P、絶縁膜53および絶縁層54を研磨する。この研磨において、電極膜73は、研磨を停止させる研磨ストッパとして機能する。この研磨により、導電層10Pは第1の部分10となり、予備磁性層31P,32Pはそれぞれ磁性層31,32となる。
図16は、次の工程を示す。この工程では、まず、第1の部分10、絶縁膜53および絶縁層54の上に、絶縁層55を形成する。次に、電極膜73を電極として用いて、例えばフレームめっき法によって、磁性層31の第1の傾斜部31Bおよび電極膜73上に、後に第2のシールド16Bとなる磁性層16BPを形成し、磁性層31の第2の傾斜部31Cおよび磁性層32の上に磁性層36を形成する。
図17は、次の工程を示す。この工程では、まず、例えばIBEによって、磁性層16BPの一部をエッチングする。このエッチングは、後に形成される第2のシールド16Bの第2の傾斜面16Bbの、媒体対向面80に垂直な方向の長さを決めるために行われる。次に、積層体の上面全体の上に、非磁性層56を形成する。次に、例えばCMPによって、磁性層16BP,36が露出するまで非磁性層56を研磨する。
図18は、次の工程を示す。この工程では、まず、磁性層16BPに第2の傾斜面16Bbが形成され、磁性層36の上面の縁に位置する角が面取りされるように、例えばIBEを用いて、磁性層16BPの一部と磁性層36の一部をエッチングする。これにより、磁性層16BPは第2のシールド16Bとなる。次に、第2のシールド16Bおよび磁性層36を覆う図示しないフォトレジストマスクを形成する。次に、このフォトレジストマスクをエッチングマスクとして用いて、例えばRIEによって、非磁性層56をテーパーエッチングする。非磁性層56がアルミナによって形成されている場合、非磁性層56のエッチング条件は、非磁性層51のエッチング条件と同じであってもよい。次に、フォトレジストマスクを除去する。図18に示した工程によって、主磁極15の下端部15Lの形状が決定される。
図19は、次の工程を示す。この工程では、まず、電極膜73を電極として用いて、例えばフレームめっき法によって、第2のシールド16Bの上に、サイドシールド16C,16Dを形成する。次に、第2のシールド16Bおよびサイドシールド16C,16Dを覆うように、第2のギャップ層18を形成する。第2のギャップ層18の材料としてアルミナを用いる場合には、例えばALDによって、第2のギャップ層18を形成する。第2のギャップ層18の材料としてRuを用いる場合には、例えば化学的気相成長法によって、第2のギャップ層18を形成する。次に、第2のギャップ層18を選択的にエッチングして、第2のギャップ層18に、磁性層36の上面を露出させる開口部と、コイルの第1の部分10のコイル接続部10E(図3参照)を露出させる開口部とを形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、後に主磁極15となる磁性層15Pと図示しない接続層を形成する。磁性層15Pおよび接続層は、その上面が第2のギャップ層18のうちサイドシールド16C,16Dの上に配置された部分よりも上方に配置されるように形成される。
図20は、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に、非磁性層57を形成する。次に、例えばCMPによって、磁性層15Pおよび接続層が露出するまで非磁性層57を研磨する。次に、磁性層15Pの上に、非磁性金属層58および絶縁層59を形成する。次に、非磁性層57、非磁性金属層58および絶縁層59の上に、フォトレジストマスク83を形成する。次に、非磁性金属層58、絶縁層59およびフォトレジストマスク83をエッチングマスクとして用いて、例えばIBEによって、磁性層15P、サイドシールド16C,16Dおよび第2のギャップ層18のそれぞれの一部をエッチングする。これにより、磁性層15Pは主磁極15となる。次に、フォトレジストマスク83を除去する。
IBEによって磁性層15P、サイドシールド16C,16Dおよび第2のギャップ層18のそれぞれの一部をエッチングする場合には、イオンビームの進行方向が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度が40°〜75°の範囲内となり、且つ基板1の上面1aに垂直な方向に見たときにイオンビームの進行方向が回転するようにする。図20(a)における矢印は、イオンビームの進行方向を表している。このようなIBEを行うことにより、磁性層15Pの上面には、第1の部分15T1および第2の部分15T2が形成される。
図21は、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に、例えばスパッタ法または化学的気相成長法によって、第1のギャップ層19を形成する。次に、例えばIBEによって、主磁極15の上面15Tの一部、サイドシールド16C,16Dの上面の一部および接続層の上面が露出するように、第1のギャップ層19、非磁性金属層58および絶縁層59を選択的にエッチングする。次に、例えばフレームめっき法によって、サイドシールド16C,16Dおよび第1のギャップ層19の上に第1のシールド16Aを形成し、主磁極15の上に磁性層41を形成する。
次に、積層体の上面全体の上に、絶縁膜61を形成する。次に、例えばIBEによって、接続層の上面が露出するように、絶縁膜61を選択的にエッチングする。次に、例えばフレームめっき法によって、コイルの第2の部分20の第1層21を形成する。第1層21は、その上面が絶縁膜61のうち第1のシールド16Aおよび磁性層41の上に配置された部分よりも上方に配置されるように形成される。次に、積層体の上面全体の上に、非磁性層62を形成する。次に、例えばCMPによって、第1のシールド16Aおよび磁性層41が露出するまで、第1層21、絶縁膜61および非磁性層62を研磨する。
図22Aおよび図22Bは、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に、絶縁層63を形成する。次に、例えばIBEによって、第1のシールド16Aおよび磁性層41の上面が露出するように、絶縁層63を選択的にエッチングする。次に、例えばフレームめっき法によって、第1のシールド16Aの上に磁性層42を形成し、磁性層41の上に磁性層43を形成する。
次に、積層体の上面全体の上に、絶縁膜64を形成する。次に、例えばIBEによって、第1層21のコイル接続部21E(図4参照)が露出するように、絶縁層63および絶縁膜64を選択的にエッチングする。次に、コイルの第2の部分20の第2層22と絶縁層65を形成する。第2層22と絶縁層65の形成方法は、導電層10Pと絶縁層54の形成方法と同様である。次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層66を形成する。次に、例えばCMPによって、磁性層42,43の上面が露出するまで、第2層22、絶縁層65,66および絶縁膜64を研磨する。
次に、第2層22、絶縁膜64および絶縁層65の上に絶縁層67を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、磁性層42,43および絶縁層67の上に、磁性層44を形成する。
図23Aおよび図23Bは、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面の上にフォトレジストマスク84を形成する。フォトレジストマスク84は、媒体対向面80が形成される予定の位置ABSには存在せず、積層体のうち磁気ヘッドとして残る部分(図23Aにおける位置ABSよりも右側の部分)の上に存在して磁性層44の一部を覆う。フォトレジストマスク84は、位置ABSに最も近い端部を有している。この端部と位置ABSとの間の距離は、例えば0.2〜0.5μmである。
次に、フォトレジストマスク84をエッチングマスクとして用いて、例えばIBEによって、第1のシールド16Aおよび磁性層42,44をエッチングする。これにより、磁性層42,44には、それぞれ媒体対向面80に向いた端面が形成される。また、第1のシールド16Aには、位置ABSと交差するように傾斜面が形成される。この傾斜面は、後に接続面16Ad(図6参照)となる。このようにして形成された磁性層42,44の端面と第1のシールド16Aの傾斜面は、連続して1つの平面を構成する。この平面が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、例えば10°〜15°の範囲内である。次に、フォトレジストマスク84を除去する。
図24Aおよび図24Bは、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面全体を覆うように保護層70を形成する。次に、保護層70の上に配線や端子等を形成し、媒体対向面80が形成される予定の位置の近傍で基板1を切断し、この切断によって形成された面を研磨して媒体対向面80を形成し、更に浮上用レールの作製等を行って、磁気ヘッドが完成する。
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法は、収容部50(非磁性層51および非磁性膜52)を形成する工程と、収容部50の形成後に、第1の帰磁路部30(磁性層31,32,36)を形成する工程と、第1の帰磁路部30の形成後に、コイル、主磁極15、記録シールド16およびギャップ部17(第1のギャップ層19および第2のギャップ層18)を形成する工程とを備えている。本実施の形態では、第1の帰磁路部30を形成する工程は、磁性層31の水平部31A、第1の傾斜部31Bおよび第2の傾斜部31Cを同じ材料によって同時に形成する。従って、本実施の形態によれば、磁性層31の水平部31A、第1の傾斜部31Bおよび第2の傾斜部31Cを別々に形成する場合に比べて、第1の帰磁路部30を少ない工程数で形成することができる。
[第2の実施の形態]
次に、図25および図26を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図25は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの複数の第1のコイル要素を示す平面図である。図26は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの複数の第2のコイル要素を示す平面図である。
本実施の形態に係る磁気ヘッドの構成は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態に係る磁気ヘッドでは、コイルは、主磁極15の周りに約3回巻かれている。本実施の形態におけるコイルは、図3に示した第1の実施の形態における第1の部分10の代わりに、図25に示した3つの線形状部分11,12,13を有している。また、本実施の形態におけるコイルは、図4に示した第1の実施の形態における第1層21の代わりに、図26に示した形状の第1層21を有している。また、本実施の形態におけるコイルは、図5に示した第1の実施の形態における第2層22の代わりに、図26に示した2つの線形状部分221,222を有している。
図25に示したように、線形状部分11,12,13は、それぞれ、第1の空間S1を通過するように延びる第1のコイル要素11A,12B,13Cを含んでいる。第1のコイル要素11A,12B,13Cは、媒体対向面80側からこの順に、媒体対向面80に垂直な方向に並んでいる。
図26に示したように、本実施の形態における第1層21は、第2の空間S2を通過するように延びる第2のコイル要素21Aを含んでいる。コイル要素21Aは、特に第1のシールド16Aと磁性層41との間を通過している。また、図26に示したように、線形状部分221,222は、それぞれ、第2の空間S2を通過するように延びる第2のコイル要素221A,222Bを含んでいる。第2のコイル要素221A,222Bは、媒体対向面80側からこの順に、媒体対向面80に垂直な方向に並んでいる。コイル要素221A,222Bは、特に磁性層42と磁性層43との間を通過している。
線形状部分11,12,13と、第1層21および線形状部分221,222は、それらの間の複数の層を貫通する5つの柱状の接続層90を介して、主磁極15の周りにヘリカル状に巻かれたコイルが形成されるように電気的に接続されている。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第3の実施の形態]
次に、図27を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図27は、本実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。なお、図27は媒体対向面および基板の上面に垂直な断面、特に前記主断面を示している。本実施の形態に係る磁気ヘッドでは、磁性層32が設けられていない。収容部50を構成する非磁性層51の開口部51aと、磁性層31の水平部31Aは、磁性層32が存在しない分だけ小さくなっている。磁性層31の第2の傾斜部31Cの上端は、磁性層36の下面のうちの、媒体対向面80に最も近い端部の近傍の部分に接続されている。
なお、本実施の形態におけるコイルは、第2の実施の形態と同様に主磁極15の周りにヘリカル状に巻かれたものであってもよい。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1または第2の実施の形態と同様である。
[第4の実施の形態]
次に、図28および図29を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図28は、本実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。なお、図28は媒体対向面および基板の上面に垂直な断面、特に前記主断面を示している。図29は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第2の部分の第2層を示す平面図である。
本実施の形態に係る磁気ヘッドの構成は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態におけるコイルの第2の部分20は、第1の実施の形態における第2層22の代わりに、第2層122を含んでいる。図29に示したように、第2層122は、第2の帰磁路部40の一部である磁性層43の周りに約1回巻かれている。なお、本実施の形態に係る磁気ヘッドでは、絶縁層65が設けられていない。
図29に示したように、第2層122は、第2の空間S2内のうち特に磁性層42と磁性層43との間を通過するように延びる第2のコイル要素122Aを含んでいる。また、第2層122は、絶縁層63および絶縁膜64を貫通して第1層21のコイル接続部21E(図4参照)に電気的に接続されたコイル接続部122Sを有している。
なお、本実施の形態では、第3の実施の形態と同様に、磁性層32が設けられていなくてもよい。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1または第3の実施の形態と同様である。
[第5の実施の形態]
次に、図30を参照して、本発明の第5の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図30は、本実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。なお、図30は媒体対向面および基板の上面に垂直な断面、特に前記主断面を示している。
本実施の形態に係る磁気ヘッドの構成は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態に係る磁気ヘッドでは、電極膜73が設けられていない。また、本実施の形態における第1の帰磁路部30は、第1の実施の形態における磁性層31の代わりに、磁性層33,34,35を有している。磁性層33は、媒体対向面80に垂直な方向に延在し、第1の空間S1よりも基板1の上面1aに近い位置にある。磁性層34は、媒体対向面80の近傍において磁性層33の上に配置され、第1の空間S1よりも媒体対向面80により近い位置にある。磁性層35は、媒体対向面80から離れた位置で磁性層33の上に配置され、第1の空間S1および磁性層32よりも媒体対向面80からより遠い位置にある。コイルの第1の部分10は、磁性層32,35の周りに約3回巻かれている。磁性層34は、媒体対向面80に向いた第1の端面34aと、記録シールド16に接する第2の端面34bとを有している。磁性層35は、磁性層32に接する端面と、磁性層36に接する端面とを有している。磁性層32〜34と第1の部分10との間には、絶縁膜53が介在している。
また、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、第1の実施の形態における収容部50の代わりに、収容部150を備えている。収容部150は、非磁性材料よりなり、第1の帰磁路部30の一部である磁性層32〜35を収容する。収容部150は、中間シールド層72の上に順に積層された非磁性層151,152,153を有している。非磁性層152は、その上面から下面にかけて貫通する開口部152aを有している。非磁性層153は、その上面から下面にかけて貫通する開口部153aを有している。開口部153aは、第1の部分10の最も外側の1ターンの外側に位置する第1の壁面と、第1の部分10の最も内側の1ターンの内側に位置する第2の壁面とを有している。第1および第2の壁面は、基板1の上面1aに垂直な方向に対して傾いている。具体的には、前記主断面において、第1の壁面における任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って小さくなっている。また、前記主断面において、第2の壁面における任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。
磁性層33は、非磁性層152の開口部152a内に配置されている。第1の部分10と磁性層32,34,35は、非磁性層153の開口部153a内に配置されている。第1の部分10、磁性層32,34,35、絶縁膜53、絶縁層54および非磁性層153の上面は平坦化されている。非磁性層151,152,153は、例えば、アルミナ等の無機絶縁材料によって形成されている。
収容部150は、第1の帰磁路部30と媒体対向面80との間に介在する介在部150Aを含んでいる。介在部150Aは、第1の帰磁路部30に向いた傾斜面150Aaを有している。傾斜面150Aaは、開口部153aの第1の壁面によって構成されている。傾斜面150Aaにおける任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って小さくなる。磁性層34は、傾斜面150Aaに沿って延在している。従って、磁性層34は、本発明における「傾斜部」に対応する。傾斜面150Aaが基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度の好ましい範囲は、第1の実施の形態における傾斜面50Aaが基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度と同様である。
本実施の形態では、第2のシールド16Bは、磁性層34の上に配置され、磁性層34の端面34aに接している。磁性層36は、磁性層32,35の上に配置されている。
なお、本実施の形態におけるコイルは、第2の実施の形態と同様に主磁極15の周りにヘリカル状に巻かれたものであってもよい。あるいは、本実施の形態におけるコイルの第2の部分20は、第4の実施の形態と同様に第2層122を含んでいてもよい。また、本実施の形態では、第3の実施の形態と同様に磁性層32が設けられていなくてもよい。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1ないし第4の実施の形態と同様である。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、磁気ヘッドは、第1および第2の帰磁路部30,40のうち、第1の帰磁路部30のみを備えていてもよい。
また、請求の範囲の要件を満たす限り、第1の帰磁路部30および収容部50の形状および配置は、各実施の形態に示した例に限られず、任意である。例えば、収容部50の非磁性層51は、開口部51aの代わりに、中間シールド層72の上面よりも上方に配置された底部を有する溝部を有していてもよい。この場合、非磁性膜52は設けられていなくてもよい。