JP5780344B2 - 電池の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電池の製造装置に関する。詳しくは、電池素子を外装材により封止した電池の製造装置に関する。
従来、外装材としてラミネートフィルムなどを用いた電池パックは、軽量であると共にエネルギー密度が大きいため、広く使用されている。この電池パックは、正極、負極およびセパレータを含む電池素子を外装材に収容した後、外装材内に電解液を注液し、電池素子に電解液を注液、含浸させることにより作製される。
このような注液および含浸工程を有する電池パックの製造方法としては、例えば、以下に示すものが開示されている(特許文献1参照)。
まず、開口部側を所要形状および寸法よりも大きく設定した外装材に対して、電池素子を収容する。次に、電池素子を収容した外装材を、開口部側が上方となるようにして真空チャンバ内に配置する。次に、減圧下で外装材の開口部に電解液を注入した後、真空チャンバ内を常圧に戻す。これにより、外装材の開口部に注入された電解液が、電池素子より上方の空間部を一時留まり部として電池素子に注液、含浸される。次に、電池素子を収容した外装材を真空チャンバから取り出し、外装材の開口部側の電池素子に近接した領域を熱融着により封着し、封着した領域を残すようにして、外装材の開口部の余剰な部分を切断除去する。
特開2000−311661号公報
しかしながら、上述の電池パックの製造方法では、図1Aに示すように、電池素子101の上方の開口部103に電解液104を溜めた状態で真空引きするために以下の問題がある。すなわち、図1Bに示すように、電解液104の下方にある電池素子101やその収容空間105から出てくるエアにより電解液104が押し上げられ、飛散などするため、電解液104が著しく減少し、電池パックの製造が困難となる。また、電池素子101の上方に電解液104が存在するため、電解液104が妨げとなり電池素子101やその収容空間105の脱気効率が低下する。
したがって、本発明の目的は、注液および含浸工程における電解液量の減少を抑制できる共に、外装材内を効率良く脱気できる電池の製造装置を提供することにある。
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
電池素子を収容する外装材の一端の開口部から気体を入れて、外装材の他端の液収容部を膨張させて空間を形成する工程と、
開口部から電解液を注液し、液収容部の空間に電解液を溜める工程と、
電池素子と、液収容部に溜められた電解液とが離間された状態において、開口部から外装材内を真空脱気する工程
を備える電池の製造方法である。
第2の発明は、
電池素子を収容する外装材の一端の開口部から気体を入れて、外装材の他端の液収容部を膨張させて空間を形成する工程と、
開口部から電解質用組成物を注液し、液収容部の空間に電解質用組成物を溜める工程と、
電池素子と、液収容部に溜められた電解質用組成物とが離間された状態において、開口部から外装材内を真空脱気する工程と
を備える電池の製造方法である。
第3の発明は、
電解液を含む電池素子と、
電池素子を封止する外装材と
を備え、
電池素子は、
電池素子を収容する外装材の一端の開口部から気体を入れて、外装材の他端の液収容部を膨張させて空間を形成し、開口部から電解液を注液し、液収容部の空間に電解液を溜め、開口部から外装材内を真空状態にて脱気し、開口部を封止し、電池素子に対して電解液を含浸させることにより得られる電池である。
第4の発明は、
ゲル状の電解質を含む電池素子と、
電池素子を封止する外装材と
を備え、
電池素子は、
電池素子を収容する外装材の一端の開口部から気体を入れて、外装材の他端の液収容部を膨張させて空間を形成し、開口部から電解質用組成物を注液し、液収容部の空間に電解質用組成物を溜め、開口部から外装材内を真空状態にて脱気し、開口部を封止し、電池素子に対して電解質用組成物を含浸させ、電池素子に含浸した電解質用組成物をゲル化することにより得られる電池である。
本発明では、外装材の一端に形成された液収容部の空間に電解液または電解質用組成物を溜め、外装材の他端に形成された開口部から外装材内を脱気するので、脱気工程における開口部からの電解液または電解質用組成物の飛散を抑制できる。また、開口部に外装材内の脱気を阻害する電解液または電解質用組成物がないため、外装材内の脱気効率を向上することができる。
以上説明したように、本発明によれば、脱気工程における開口部からの電解液または電解質用組成物の飛散を抑制できるので、脱気工程における電解液量または電解質用組成物量の減少を抑制できる。また、外装材内の脱気効率を向上することができるので、電池の厚みを薄くすることができる。また、高温保存時における電池の膨れを抑制することができる。
図1A、図1Bは、従来の電池パックの製造工程を説明するための断面図である。 図2は、本発明の第1の実施形態に係る電池パックの概観の一例を示す斜視図である。 図3は、本発明の第1の実施形態に係る電池パックの構成の一例を示す分解斜視図である。 図4は、図3に示した電池素子のIV−IV線に沿った断面図である。 図5A〜図5Dは、本発明の第1の実施形態に係る電池パックの製造方法の一例を示す工程図である。 図6A〜図6Cは、本発明の第1の実施形態に係る電池パックの製造方法の一例を示す工程図である。 図7A〜図7Cは、本発明の第1の実施形態に係る電池パックの製造方法の一例を示す工程図である。 図8は、エア供給装置の構成の一例を模式的に示す断面図である。 図9A〜図9Dは、本発明の第2の実施形態に係る電池パックの製造方法の一例を示す工程図である。 図10A〜図10Dは、本発明の第2の実施形態に係る電池パックの製造方法の一例を示す工程図である。 図11A〜図11Dは、比較例2の電池パックの製造方法を示す工程図である。 図12A〜図12Bは、比較例2の電池パックの製造方法を示す工程図である。
本発明の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(素子収容部のサイド側にアンダーポケット部を形成した例)
2.第2の実施形態(素子収容部のボトム側にアンダーポケット部を形成した例)
<1.第1の実施形態>
[電池パックの構成]
図2は、本発明の第1の実施形態に係る電池パックの概観の一例を示す斜視図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係る電池パックの構成の一例を示す分解斜視図である。この電池パックは、正極リード11および負極リード12が取り付けられた電池素子1をフィルム状の外装材2の内部に収容したものであり、小型化、軽量化および薄型化が可能となっている。本明細書では、電池素子1を外装材2により外装した電池(外装電池)を電池パックと称する。以下では、正極リード11および負極リード12が導出された電池素子1の端面側をトップ側、それとは反対側の端面側をボトム側と称する。また、トップ側とボトム側との両端部の間に位置する辺部の側をサイド側と称する。
正極リード11および負極リード12は、それぞれ、外装材2の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード11および負極リード12は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
外装材2は、例えば、柔軟性を有するフィルムからなる。外装材2は、例えば、熱融着樹脂層、金属層、表面保護層を順次積層した構成を有する。なお、熱融着樹脂層側の面が、電池素子1を収容する側の面となる。この熱融着樹脂層の材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)が挙げられる。金属層の材料としては、例えばアルミニウム(Al)が挙げられる。表面保護層の材料としては、例えばナイロン(Ny)が挙げられる。具体的には例えば、外装材2は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装材2は、例えば、ポリエチレンフィルム側と電池素子1とが対向するように配設され、各外縁部が融着または接着剤により互いに密着されている。外装材2と正極リード11および負極リード12との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム3が挿入されている。密着フィルム11は、正極リード11および負極リード12に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
なお、外装材2は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム、ポリプロピレンなどの高分子フィルムまたは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
図4は、図3に示した電池素子のIV−IV線に沿った断面図である。電池素子1は、正極13と負極14とをセパレータ15および電解質層16を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ17により保護されている。以下、図4を参照しながら、電池素子1を構成する正極13、負極14、セパレータ15、および電解質層16について順次説明する。
(正極)
正極13は、例えば、正極集電体13Aの両面に正極活物質層13Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体13Aの片面のみに正極活物質層13Bを設けるようにしてもよい。正極集電体13Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層13Bは、例えば、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料の1種または2種以上を含んでおり、必要に応じてグラファイトなどの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んで構成されている。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物あるいはリチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましく、中でも、遷移金属元素として、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、式(1)、式(2)もしくは式(3)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、式(4)に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、または式(5)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられ、具体的には、LiNi0.50Co0.20Mn0.302、LiaCoO2(a≒1)、LibNiO2(b≒1)、Lic1Nic2Co1-c22(c1≒1,0<c2<1)、LidMn24(d≒1)あるいはLieFePO4(e≒1)などがある。
LifMn(1-g-h)NigM1h(2-j)k ・・・(1)
(式中、M1は、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f、g、h、jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0.5、0≦h≦0.5、g+h<1、−0.1≦j≦0.2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
LimNi(1-n)M2n(2-p)q ・・・(2)
(式中、M2は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。m、n、pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0.005≦n≦0.5、−0.1≦p≦0.2、0≦q≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
LirCo(1-s)M3s(2-t)u ・・・(3)
(式中、M3は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。r、s、tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、−0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
LivMn2-wM4wxy ・・・(4)
(式中、M4は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。v、w、xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
LizM5PO4 ・・・(5)
(式中、M5は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)およびジルコニウム(Zr)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、これらの他にも、MnO2、V25、V613、NiS、MoSなどのリチウムを含まない無機化合物も挙げられる。
(負極)
負極14は、例えば、負極集電体14Aの両面に負極活物質層14Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、負極集電体14Aの片面のみに負極活物質層14Bを設けるようにしてもよい。負極集電体14Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。
負極活物質層14Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて正極活物質層13Bと同様の結着剤を含んで構成されている。
なお、この二次電池である電池素子1では、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の電気化学当量が、正極13の電気化学当量よりも大きくなっており、充電の途中において負極14にリチウム金属が析出しないようになっている。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維あるいは活性炭などの炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどがある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。また、高分子材料としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどがある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れた特性が得られるので好ましい。更にまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、この発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素(Si)およびスズ(Sn)の少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素(Si)およびスズ(Sn)は、リチウム(Li)を吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
スズ(Sn)の合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素(Si)の合金としては、例えば、ケイ素(Si)以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
スズ(Sn)の化合物あるいはケイ素(Si)の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、更に、他の金属化合物あるいは高分子材料が挙げられる。他の金属化合物としては、MnO2、V25、V613などの酸化物、NiS、MoSなどの硫化物、あるいはLiN3などのリチウム窒化物が挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレン、ポリアニリンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
(セパレータ)
セパレータ15は、正極13と負極14とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータ15としてしは、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜を単層で、またはそれらを複数積層したもの用いることができる。特に、セパレータ15としては、ポリオレフィン製の多孔質膜が好ましい。ショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるからである。また、セパレータ15としては、ポリオレフィンなどの微多孔膜上に、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの多孔性の樹脂層を形成したものを用いてもよい。
(電解質層)
電解質層16は、電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル状の電解質層16は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。電解液(すなわち溶媒および電解質塩など)の構成は、第1の実施形態に係る二次電池と同様である。高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンまたはポリカーボネートが挙げられる。特に電気化学的な安定性の点からはポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドが好ましい。
[電池パックの製造方法]
以下、図5A〜図7Cを参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る電池パックの製造方法の一例について説明する。
(外装材準備工程)
まず、図5Aに示すように、矩形状を有する外装材2を準備する。この外装材2の中央部には、その全体を2分するように線状の折り返し部22が予め形成されている。この折り返し部22は、外装材2の折り返しを容易とするための切り込みなどである。また、外装材2は、その中央部に設けられた1つの第1の領域R1と、第1の領域R1の一方の側に隣接して設けられた第2の領域R2と、第1の領域R1の他方の側に隣接して設けられた第3の領域R3とを有する。第1の領域R1は、電池素子1を収容するための収容空間21が形成される領域である。第2の領域R2は、液状の電解質用組成物を収容するための液収容部(以下、アンダーポケット部と称する)が形成される領域である。第3の領域R3は、アンダーポケットに対する電解質用組成物の供給、および外装材内の脱気などをするため開口部が形成される領域である。電解質用組成物は、ゲル状の電解質層16の前駆体である。
(収容空間成型工程)
次に、図5Aに示すように、例えば、第1の領域R1の熱融着樹脂層側となる面のうち、折り返し部22を境にした一方の部分にエンボス成型などを施し、電池素子1を収容するための収容空間21を形成する。
(素子収容および外装材折り返し工程)
次に、図5Bに示すように、収容空間21に電池素子1を収容し、外装材2を折り返し部22で折り返す。そして、外装材2の4つの辺部のうち、対向する2つの辺部同士を、正極リード11および負極リード12を挟むようにして電池素子1のトップ側で重ね合わせる。
(熱融着工程)
次に、図5Cに示すように、電池素子1のトップ側で重ね合わせた辺部同士を熱融着し、熱融着部23を形成する。また、電池素子1のサイド側で重ね合わされた2つの辺部同士のうち、第2の領域R2側の辺部同士を熱融着し、熱融着部23を形成する。これにより、折り返された外装材2の第2の領域2にアンダーポケット部24が形成されるとともに、折り返された外装材2の第3の領域R3の側となる一端に開口部25が形成される。
(エア供給工程)
次に、図5Dに示すように、開口部25の一端にエア(空気)を供給するための治具31を取り付ける。その後、外装材2の一端の開口部25の側からアンダーポケット部24にエアを供給して、外装材2の他端のアンダーポケット部24を膨らまし、電解質用組成物を溜めるための空間を形成する。このエア供給工程は、例えば大気環境下にて行われる。
(注液工程)
次に、例えば、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む液状の電解質用組成物を用意する。次に、外装材2に収容された電池素子1を真空チャンバ(図示せず)に搬送し、図6Aに示すように、真空チャンバ内において、開口部25からアンダーポケット部24の空間に電解質用組成物26を注液する。具体的には例えば、開口部25が上方となるように外装材2を保持し、ノズルなどの注液手段を用いて電解質用組成物26を開口部25から外装材内に供給し、アンダーポケット部24に電解質用組成物26を溜める。
電池素子1と、アンダーポケット部24に溜められた電解質用組成物26とが接触しないように、両者を離間させることが好ましい。電池素子1と電解質用組成物26とが接触すると、真空時に外装材内から抜けるエアにより電解質用組成物26が押し上げられて、電解質用組成物26が飛散し、電解質用組成物26の液量が減少するからである。アンダーポケット部24の容積は、例えば、注入する電解質用組成物26の量の1.2倍に設定される。
(脱気工程)
次に、例えば、図6Bに示すように、外装材2に収容された電池素子1を真空チャンバ(図示せず)に搬送し、真空チャンバ内を減圧し、外装材内を脱気する。これにより、外装材内の空間、電池素子1、および電解質用組成物26が脱気される。
(熱融着工程)
次に、図6Cに示すように、真空状態を維持した状態にて、電池素子1の両サイドのうち、開口部25の側となるサイド部分において、外装材2を熱融着し、熱融着部23を形成する。
(含浸工程)
次に、真空チャンバを大気解放する。これにより、図7Aに示すように、アンダーポケット部24が大気圧で潰されて、電池素子1に対して電解質用組成物26が含浸される。アンダーポケット部25はエアで膨らませているだけであるため、アルミラミネートフィルムなどの外装材2が塑性変形を起こしていない場合、アンダーポケット部25を大気圧で歪みなく潰すことができる。また、必要に応じて、アンダーポケット部25を加圧し、電池素子1に対する電解質用組成物26の含浸を促進させるようにしてもよい。これにより、含浸時間を低減することができる。
真空シール直後では電池素子内への電解質用組成物26の含浸は未完了なため、含浸完了時間に達するまで電池素子1をトレーなどに一時的に保管するようにしてもよい。これにより、リードタイムは伸びるが、従来に比べ設備費用を低減することができる。
(ヒートプレス工程)
次に、電解質用組成物26が含浸された電池素子1をヒートプレス(加熱および加圧)することにより、電解質用組成物26に含まれるモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層16を形成すると共に、電池素子1を構成する正極13、負極14、およびセパレータ15を一体化させる。
(封止工程)
次に、図7Bに示すように、電池素子1の両サイドのうち、アンダーポケット部24の側となるサイド部分において、外装材2を熱融着し、熱融着部23を形成する。これにより、電池素子1が外装材2により封止される。
(切断工程)
次に、図7Cに示すように、素子収容部31の両サイド側に形成された熱融着部23を残すようにして、余分なアンダーポケット部24および開口部25を切断する。
以上により、目的とする電池パックが得られる。
なお、電池パックの製造方法は、上述の工程の順序に限定されるものではない。例えば、ヒートプレス工程後に封止工程を行っているが、これらの工程の順序は任意であって、封止工程後にヒートプレス工程を行うようにしてもよい。
図8は、アンダーポケット部にエアを供給するための治具の構成の一例を模式的に示す断面図である。エア供給装置である治具は、所定の間隔離間して対向配置された第1の面S1と第2の面S2とを有し、これらの面により外装材2の開口部側の一端部を収容するための収容空間41が形成されている。第1の面S1および第2の面S2にはそれぞれ真空吸着手段などの保持手段42、43が設けられ、これらの保持手段42、43により外装材1の開口部25が開かれるとともに、開口部25を開いた状態にて外装材2の一端部が保持される。また、収容空間43にはエアを導入するためのエア導入管44が導入されている。このエア導入管44から排出されるエアにより、外装材2の開口部25からアンダーポケット部24にエアが供給される。アンダーポケット部24を膨らませた後は密閉状態とすることが好ましい。これにより、エアの巻上げ等によるコンタミを防止することができる。
<変形例>
第1の実施形態では、電解質としてゲル状の電解質を用いる場合を例として説明したが、電解質として液状の電解質である電解液を用いるようにしてもよい。このような電解質を備える電池パックは、注液工程において電解質用組成物26に代えて電解液を注液し、アンダーポケット部25の空間に電解液を溜めることにより作製することができる。また、電解質として電解液を用いた場合には、ゲル状電解質層16の前駆体である電解質用組成物26を重合させるためのヒートプレス工程は省略可能である。
また、第1の実施形態では、1枚の外装材2を折り返して電池素子1を封止する場合を例として説明したが、2枚の外装材2をそれらの熱融着層側の面が対向するようにして重ね合わせて、電池素子1を封止するようにしてもよい。この場合、一方の外装材2を硬質ラミネートフィルムなどの硬質なものとし、他方の外装材2を軟質ラミネートフィルムなどの軟質なものとする構成を採用してもよい。この場合、エアの供給により、軟質ラミネートフィルムなどの軟質な外装材2の側を膨らませ、アンダーポケット部24の空間を形成するようにしてもよい。また、アンダーポケット部24および開口部25を切断せずに残すようにしてもよい。このような構成とする場合、アンダーポケット部24および開口部25を折り返して収容空間21の上面(突出面)に対して貼り合わせるようにしてもよい。
第1の実施形態によれば、電池素子1の下方に電解質用組成物26または電解液の液溜まりを形成し、この状態にて外装材内を脱気しているので、外装材内のガスの脱気時における電解質用組成物26または電解液の液飛散を抑制することができる。また、高効率脱気状態での注液直後の真空シールを実現できる。
従来の技術では困難であった電解質用組成物26または電解液の注液直後の真空シールが可能となる。また、アンダーポケット部25に対して電解質用組成物26または電解液を注入することにより、電解質用組成物26または電解液の液面を電池素子1の下方にすることができる。したがって、電解質用組成物26または電解液の液面上昇を防ぎ、液減少量を抑えることができる。また、外装材内の脱気効率を向上することができる。
電池素子1に電解質用組成物26または電解液を含浸させた後におけるアンダーポケット部25への液残りを少なくすることができる。外装材内を真空状態にした外装材2を封止して、電解質用組成物26または電解液を電池素子1に含浸させるため、大気圧を利用して含浸時間を短縮することができる。大気圧状態で外装材2により電池素子1を封止した後に含浸させた場合に比べて、例えば25〜50%程度、含浸時間を短縮することができる。従来の真空含浸、加圧含浸を廃止することができるため、設備コスト低減と、真空含浸時の液飛散による設備汚染の低減とが可能である。
従来の電池パックの製造方法では、インライン工程において電池素子1に対して電解質用組成物26または電解液を含浸させていたため、含浸時間により設備や生産能力が左右されていた。これに対して、第1の実施形態に係る電池パックの製造方法では、大気中において電池素子1に対して電解質用組成物26または電解液を含浸させることができ、含浸時間により設備や生産能力が左右されなくなる。
外装材2の融着位置を変更するのみでアンダーポケット部24を形成することができる。したがって、既存の装置を用いてアンダーポケット24を容易に作製することができる。外装材2に収容された電池素子全体を真空チャンバ内に入れて外装材内を脱気することで、外装材内の脱気によるアンダーポケット部24の形状変化を抑制することができる。電池素子を真空封止後に加圧チャンバに搬送して、電池素子1に対する電解質用組成物26または電解液の含浸時間を短縮するようにしてもよい。
<第2の実施形態>
図9A〜図10Dは、本発明の第2の実施形態に係る電池パックの製造方法の一例について説明する工程図である。第2の実施形態において第1の実施形態と同一または対応する箇所には同一の符号を付す。第2の実施形態は、電池素子1のボトム側にアンダーポケット部24を形成する点において、第1の実施形態とは異なっている。
以下、図9A〜図10Dを参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る電池パックの製造方法の一例について説明する。
(外装材準備工程)
まず、図9Aに示すように、矩形状を有する外装材2を準備する。この外装材2の中央部には、その全体を2分するように線状の折り返し部22が予め形成されている。また、外装材2は、第1の領域R1と、この第1の領域R1の両側に隣接して設けられた第2の領域R2とを有する。
(収容空間成型工程)
次に、図9Aに示すように、例えば、第1の領域R1の熱融着樹脂層側となる面のうち、折り返し部22を境にした一方の部分にエンボス成型などを施し、電池素子1を収容するための収容空間21を形成する。
(素子収容および外装材折り返し工程)
次に、図9Bに示すように、収容空間21に電池素子1を収容し、外装材2を折り返し部22で折り返し、外装材2の4つの辺部のうち、対向する2つの辺部同士を電池素子1のサイド側で重ね合わせる。
(熱融着工程)
次に、図9Cに示すように、電池素子1のサイド側で重ね合わせた辺部同士を熱融着し、熱融着部23を形成する。また、電池素子1のボトム側で重ね合わされた2つの辺部同士を熱融着し、熱融着部23を形成する。これにより、電池素子1のトップ側に開口部25が形成される
(エア供給工程)
次に、図9Dに示すように、開口部25の一端にエアを供給するための治具(図示省略)を取り付け、開口部25の側からアンダーポケット部24にエアを供給して、アンダーポケット部24を膨らまし、電解質用組成物26を溜めるための空間を形成する。
(注液工程)
次に、例えば、外装材2に収容された電池素子1を真空チャンバ(図示せず)に搬送し、図10Aに示すように、真空チャンバ内において、開口部25からアンダーポケット部24の空間に電解質用組成物26を注液する。具体的には例えば、開口部25が上方となるように外装材2を保持し、ノズルなどの注液手段を用いて電解質用組成物26を開口部25から外装材21内に供給し、アンダーポケット部24に電解質用組成物26を溜める。
(脱気工程)
次に、例えば、真空チャンバ内を減圧し、外装材内を脱気する。これにより、外装材内の空間、電池素子1、および電解質用組成物26が脱気される。
(熱融着工程)
次に、図10Bに示すように、真空状態を維持した状態にて、電池素子1のトップ側の部分において、外装材2を熱融着し、熱融着部23を形成する。
(含浸工程)
次に、真空チャンバを大気解放する。これにより、アンダーポケット部24が大気圧で潰されて、電池素子1に対して電解質用組成物26が含浸される。また、必要に応じて、アンダーポケット部25を加圧し、電池素子1に対する電解質用組成物26の含浸を促進させるようにしてもよい。これにより、含浸時間を低減することができる。
(ヒートプレス工程)
次に、電解質用組成物26が含浸された電池素子1をヒートプレス(加熱および加圧)することにより、電解質用組成物26に含まれるモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層16を形成すると共に、電池素子1を構成する正極13、負極14、およびセパレータ15を一体化させる。
(封止工程)
次に、図10Cに示すように、電池素子1のボトムの部分において、外装材2を熱融着し、熱融着部23を形成する。これにより、電池素子1が外装材2により封止される。
(切断工程)
次に、図10Dに示すように、電池素子1のボトム側に形成された熱融着部23を残すようにして、余分なアンダーポケット部24を切断する。
以上により、目的とする電池パックが得られる。
第2の実施形態では、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例および比較例において、上述の実施形態と対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
(実施例1)
以下、図5A〜図7Cを参照しながら、実施例1に係る電池素子パックの製造方法について説明する。
(外装材準備工程)
まず、外装材として、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルム2を準備した。
(収容空間成型工程)
次に、図5Aに示すように、このアルミラミネートフィルム2のポリエチレンフィルム側の面をおよそ6つに等分割したうちの中央部の1つの領域に、エンボス成型を施し、収容空間としてのエンボス成型部21を形成した。
(素子収容および外装材折り返し工程)
次に、図5Bに示すように、エンボス成型部21に巻回型の電池素子1を収容し、アルミラミネートフィルム2を折り返し部22により折り返して、アルミラミネートフィルム2の対向する辺同士を、正極リード11および負極リード12を挟むようにして、電池素子1のトップ側にて重ね合わせた。
(熱融着工程)
次に、図5Cに示すように、電池素子1のトップ側で重ね合わせた辺部同士を熱融着するとともに、電池素子1のサイド側で重ね合わされた辺部同士のうち、第2の領域R2側の辺部同士を熱融着して、熱融着部23を形成した。これにより、折り返されたアルミラミネートフィルム2の第2の領域2にアンダーポケット部24が形成されるとともに、折り返されたアルミラミネートフィルム2の第3の領域R3の側となる一端に開口部25が形成された。
(エア供給工程)
次に、図5Dに示すように、開口部24の一端にエアを供給するための治具31を取り付け、開口部25の側からアンダーポケット部24にエアを供給して、アンダーポケット部24を膨らまし、電解液26を溜めるための空間を形成した。
(注液工程)
次に、図6Aに示すように、アルミラミネートフィルム2に収容された電池素子1を真空チャンバ内に搬入し、真空チャンバ内において、開口部25が上方となるようにアルミラミネートフィルム2を保持した。その後、ノズルにより電解液26を開口部25からアルミラミネートフィルム内に供給し、アンダーポケット部24に電解液26を溜めた。なお、電解液の注液量は1830mgとした。
(脱気工程)
次に、図6Bに示すように、真空チャンバ内を減圧し、アルミラミネートフィルム内の空間、電池素子1、および電解液26を脱気した。
(熱融着工程)
次に、図6Cに示すように、真空状態を維持した状態にて、電池素子1の両サイドのうち、開口部25の側となるサイド部分において、アルミラミネートフィルム2を熱融着し、熱融着部23を形成した。
(含浸工程)
次に、真空チャンバを大気解放した。これにより、図7Aに示すように、アンダーポケット部24が大気圧で潰されて、電池素子1に対して電解液26が含浸された。
(封止工程)
次に、図7Bに示すように、電池素子1の両サイドのうち、アンダーポケット部24の側となるサイド部分において、アルミラミネートフィルム2を熱融着し、熱融着部23を形成した。これにより、電池素子1がアルミラミネートフィルム2により封止された。
(切断工程)
次に、図7Cに示すように、電池素子1の両サイド側に形成された熱融着部23を残すようにして、余分なアンダーポケット部24および開口部25を切断した。
以上により、目的とする電池パックが得られた。
(比較例1)
エアの送り込みによりアンダーポケット部24を膨らまして空間を形成する代わりに、アンダーポケット部24に深絞りにより深さ2.5mmの空間を形成する以外は、実施例1と同様にして電池パックを得た。
(比較例2)
以下、図11A〜図12Cを参照しながら、比較例2に係る電池素子パックの製造方法について説明する。
(外装材準備工程)
まず、外装材として、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルム2を準備した。
(収容空間成型工程)
次に、図11Aに示すように、このアルミラミネートフィルム2のポリエチレンフィルム側の面をおよそ6つに等分割したうちの中央部の1つの領域に、エンボス成型を施し、収容空間としてのエンボス成型部21を形成した。
(素子収容および外装材折り返し工程)
次に、図11Bに示すように、エンボス成型部21に巻回型の電池素子1を収容し、アルミラミネートフィルム2を折り返し部により折り返して、アルミラミネートフィルム2の対向する辺同士を、正極リード11および負極リード12を挟むようにして、電池素子1のトップ側にて重ね合わせた。
(熱融着工程)
次に、図11Cに示すように、電池素子1のトップ側で重ね合わせた辺部同士を熱融着するとともに、電池素子1の両サイドのうち、第2の領域R2の側となるサイド部分において、アルミラミネートフィルム2を熱融着し、熱融着部23を形成した。これにより、折り返されたアルミラミネートフィルム2の第3の領域R3の側となる一端に開口部25が形成された。
(注液工程)
次に、図11Dに示すように、アルミラミネートフィルム2に収容された電池素子1を真空チャンバ内に搬入し、真空チャンバ内において、開口部25が上方となるようにアルミラミネートフィルム2を保持した。その後、ノズルにより電解液26を開口部25に供給し、電池素子1の上方に電解液26を溜めた。なお、電解液の注液量は1830mgとした。
(脱気工程および含浸工程)
次に、図11Dに示すように、真空チャンバ内を減圧し、アルミラミネートフィルム内の空間、電池素子1、および電解液26を脱気するとともに、開口部25に溜められた電解液26を電池素子1に含浸させた。この際、すべての電解液26を電池素子1に対して含浸することができず、開口部25に電解液26が残存した。
(封止工程)
次に、図12Aに示すように、電池素子1の両サイドのうち、第2の領域R2の側となるサイド部分において、アルミラミネートフィルム2を熱融着し、熱融着部23を形成した。これにより、電池素子1がアルミラミネートフィルム2により封止された。
(切断工程)
次に、図12Bに示すように、電池素子1の両サイド側に形成された熱融着部23を残すようにして、余分な第1の領域R1および第2の領域R2のアルミラミネートフィルム2を切断した。
以上により、目的とする電池パックが得られた。
(電解液の液減少量および液減少率)
実施例1および比較例1、2の電池パックの電解液の減少量および減少率を以下のようにして求めた。
まず、電解液の注液量を下記の式(6)により求めた。
注液量=(注液後の電池パックの質量)−(注液前の電池パックの質量)[g] ・・・(6)
次に、実施例1および比較例1、2の5個の電池パックについて脱気工程前後の電解液の液減少量を下記の式(7)により求め、求めた液減少量を単純に平均(算術平均)して、液減少量の平均値を求めた。
液減少量の平均値=(脱気工程前の電池パックの質量)−(脱気工程後(真空シール後)の電池パックの質量)[g] ・・・(7)
次に、上述のようにして求めた注液量と液減少量の平均値とを、下記の式(8)に代入することにより、脱気工程前後の電解液の液減少率を求めた。
液減少率=(液減少量の平均値/注液量)×100[%] ・・・(8)
(電解液の残り量)
実施例1および比較例1の電池パックの電解液の液残り量を以下のようにして求めた。
まず、上述の切断工程にて切断したアンダーポケット部のアルミラミネートフィルムの質量(以下、「電解液除去前のフィルム質量」と称する。)を測定した。次に、このアルミラミネートフィルムのシール部をめくって、電解液を全て拭き取り、乾燥させた後、アルミラミネートフィルムの質量(以下、「電解液除去後のフィルム質量」と称する。)を再度測定した。次に、これらの測定値を下記の式(9)に代入することにより、液残り量を算出した。
液残り量=(電解液除去前のフィルム質量)−(電解液除去後のフィルム質量) ・・・(9)
上述の測定および算出を実施例1および比較例1の5個の電池パックについて行い、求めた液残り量を単純に平均(算術平均)して、液残り量の平均値を求めた。
表1は、実施例1、および比較例1、2の電池パックの評価結果を示す。
Figure 0005780344
表1から以下のことがわかる。
アンダーポケット部を用いて作製した実施例1および比較例1では、アンダーポケット部を用いずに作製した比較例2に比して、電解液の減少率を低減することができる。これは、実施例1および比較例1では、脱気工程における電解液の飛散、および封止工程における電解液の溢れが比較例2に比して抑制されているためである。
アンダーポケット部の空間をエアの送り込みにより形成した実施例1では、アンダーポケットの空間を深絞り成形により形成した比較例1に比して、電解液の残り量のばらつきを低減することができる。これは、アルミラミネートフィルムを塑性変形させた場合には、大気圧のみでは安定した量の電解液を電池素子に対して含浸させることが困難であるためと考えられる。
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、形状、材料および数値などを用いてもよい。
また、上述の実施形態の各構成は、この発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
また、上述の実施形態では、電池素子に電解質用組成物または電解液を含浸させる場合を例として説明したが、本発明はこの例に限定されるものではない。例えば、多数の空孔を有する物体に対して、揮発性の高い液体などを高精度で含浸させる場合にも本発明は適用可能である。例えば、パックなどの収容材の一端にアンダーポケットを形成するとともに、他端に開口部を形成し、他端の開口部から真空引きして、真空パックすることで、多数の空孔を有する物体に対して、揮発性の高い液体を高精度で含浸させることができる。このようにして物体に液体を含浸させるので、物体全体を液体に浸す必要がなく、また、必要最小限の液量で含浸することも可能である。また、真空パックすることで、大気圧を利用した含浸効果を得ることができ、更には液の完全含浸(液残り無し)を狙うこともできる。パックなどの収容材としては、大気圧で変形し、潰れる強度を有するフィルム状のものなどが好ましい。物体に含浸した液量分の空間が大気圧で潰されて、液体の含浸が促進されるからである。
また、上述の実施形態では、リチウムイオン二次電池に対して本発明を適用した例について説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、外装材により電池素子を封止する構造を有する種々の二次電池および一次電池に対して適用可能である。
また、上述の実施形態では、巻回構造を有する電池素子に対してこの発明を適用した例について説明したが、電池素子の構造はこれに限定されるものではなく、正極および負極を折り畳んだ構造、または積み重ねた構造を有する電池素子などに対してもこの発明は適用可能である。
また、上述の実施形態では、電池素子として扁平型の電池素子を用いる場合を例として説明したが、電池素子の形状はこの例に限定されるものではなく、角形および円筒型などの従来公知の種々の形状の電池素子を用いることが可能である。
また、上述の実施形態では、空気(エア)によりアンダーポケット部を膨らませる場合を例として説明したが、空気以外の気体によりアンダーポケット部を膨らませるようにしてもよい。空気以外の気体としては、例えば、ヘリウムやアルゴンなどの希ガスなどの、安定で反応性の低い気体を用いることが好ましい。
1 電池素子
2 外装材
3 密着フィルム
11 正極リード
12 負極リード
13 正極
14 負極
13A 正極集電体
13B 正極活物質層
14A 負極集電体
14B 負極活物質層
15 セパレータ
16 電解質層
17 保護テープ
21 収容空間
22 折り返し部
23 熱融着部
24 アンダーポケット部
25 開口部
26 電解液、電解質用組成物

Claims (8)

  1. 電池素子を収容する外装材の一端の開口部から気体を入れて、上記外装材の他端の液収容部を膨張させて空間を形成する工程と、
    上記開口部から電解液を注液し、上記液収容部の空間に上記電解液を溜める工程と、
    上記電池素子と、上記液収容部に溜められた上記電解液とが離間された状態において、上記開口部から上記外装材内を真空脱気する工程
    を備える電池の製造方法
  2. 電池素子を収容する外装材の一端の開口部から気体を入れて、上記外装材の他端の液収容部を膨張させて空間を形成する工程と、
    上記開口部から電解質用組成物を注液し、上記液収容部の空間に上記電解質用組成物を溜める工程と、
    上記電池素子と、上記液収容部に溜められた上記電解質用組成物とが離間された状態において、上記開口部から上記外装材内を真空脱気する工程と
    を備える電池の製造方法
  3. 上記真空脱気の工程における真空状態維持した状態にて上記開口部封止工程をさらに備える請求項1または2記載の電池の製造方法
  4. 気圧により、上記電池素子に対して電解液を含浸させる工程をさらに備える請求項1記載の電池の製造方法
  5. 気圧により、上記電池素子に対して電解質用組成物を含浸させる工程をさらに備える請求項2記載の電池の製造方法
  6. 上記外装材は、アルミラミネートフィルムである請求項1または2記載の電池の製造方法
  7. 上記外装材は、軟質性のフィルムと、硬質性のフィルムとからなり、
    上記電池素子は、上記軟質性のフィルムと、上記硬質性のフィルムとの間に収容され、
    上記空間の形成工程では、上記軟質性のフィルムを膨張させて空間を形成する請求項1または2記載の電池の製造方法
  8. 上記気体は、空気または希ガスである請求項1または2に記載の電池の製造方法
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