JP5777195B1 - 複合伝導素材体、蓄電デバイス、導電性分散液、導電デバイス、導電性コンポジット及び熱伝導性コンポジット並びに複合伝導素材の製造方法 - Google Patents

複合伝導素材体、蓄電デバイス、導電性分散液、導電デバイス、導電性コンポジット及び熱伝導性コンポジット並びに複合伝導素材の製造方法 Download PDF

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Abstract

伝導性に優れる複合伝導素材を提供する。母材に少なくとも黒鉛系炭素素材から剥離されたグラフェン様と伝導素材とが分散された複合伝導素材であって、前記黒鉛系炭素素材は、菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し、前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が31%以上であることを特徴とする複合伝導素材。Rate(3R)=P3/(P3+P4)?100・・・・(式1)ここで、P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度である。

Description

本発明は、複合伝導素材体、蓄電デバイス、導電性分散液、導電デバイス、導電性コンポジット及び熱伝導性コンポジット並びに複合伝導素材の製造方法に関する。
近年、様々な分野で小型軽量化などを目的として、様々なナノマテリアルの添加が研究されている。特に環境や資源の問題で、非金属のナノマテリアルとして、グラフェン、CNT、フラーレン等の炭素素材が注目されている。例えば、現在実用化されているリチウムイオン電池は、活物質そのものの改善により、その容量が向上しつつある。しかしながら、この容量は、理論容量よりも著しく低く、更なる向上が望まれている。
そこで、従来はリチウムイオン電池の導電助剤としてアセチレンブラックが使用されてきたが、近年ではさらに電気伝導性を担保するため、昭和電工株式会社製のカーボンナノファイバー(VGCF(vapor grown carbon fiber):登録商標)など新たな高伝導体が検討されている。(特許文献1:特開2013-77475号公報)
また、正極活物質に直接、電気伝導体をコーティングし、電池のサイクル特性(繰り返し性能)を改善する方法や、イオン伝導性に着目して、高容量・高出力のリチウムイオン電池を作る方法が検討されている。(特許文献2:特表2013-513904号公報)、(特許文献3:国際公開第2014/115669号)
さらにまた、近年ではリチウムイオン電池の活物質自体のナノ化も研究されている。(非特許文献5)
特開2013-77475号公報([0031]-[0039]) 特表2013-513904号公報([0016]) 国際公開第2014/115669号([0017]-[0018]) 国際公開第2014/064432号(第19ページ第4行−第9行)
黒鉛の研磨に伴う構造変化;著:稲垣道夫、麦島久枝、細川健次;1973年2月1日(受理) 炭素加熱処理に伴う確率P1,PABA,PABCの変化;著:野田稲吉、岩附正明、稲垣道夫;1966年9月16日(受理) Spectroscopic and X-ray diffraction studies on fluid deposited rhombohedral graphite from the Eastern Ghats Mobile Belt, India; G.Parthasarathy, Current Science, Vol.90, No.7, 10 April 2006 固体炭素材料の分類と各々の構造的特徴;名古屋工業大学 川崎晋司 LiCoO2ナノ粒子の合成 粉砕 (52), 13-18, 2009. ホソカワ粉体技術研究所.(ISSN : 04299051) 産総研 チタン並の熱伝導率をもつ単層カーボンナノチューブ/炭素繊維/ゴム複合材料(http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20111006/pr20111006.html)
しかしながら、特許文献2、3、非特許文献5で示されるような方法では容量について根本的な解決策を得られておらず、問題は別の所にあると考える。物質同士に電気などを伝導させるには、電気伝導素材で橋渡しすればよいが、通常、導体と電気伝導素材との接触部には抵抗がある。また、曲面同士では接触面積が少なく、多くは点接触となり、接触抵抗増大の一因となる。つまり、接点が多いほど抵抗が高くなることが考えられる。
これらを、リチウムイオン電池に当てはめると、正極活物質、アセチレンブラック、VGCF等の導電助剤(電気伝導体)は球状又はひも状であり曲面形状であり、かつナノ〜ミクロンサイズのため正極活物質の間に多くの導電助剤が介在しているため、接点が多い。つまり、接触抵抗が原因で理論容量に達しないと考えられる。
上述したように、特許文献1−3、非特許文献5にあっては、いずれも理論容量に達するものではない。
一方、熱伝導においては、カーボンファイバーとCNTを複合することで、低添加量で高熱伝導シートを得ることが提案されている。(非特許文献6)。しかし、この方法は上述と同様に、ひも状の物質同士が、点で接触するため、電気伝導と同じく伝熱抵抗がおこり、それほど高い効果は得られない。
そこで、接触抵抗を軽減し、伝導体の性能を最大限に引き出すことに着眼し、導体、面状物質、且つ柔軟な炭素素材であるグラフェンを用いる研究を行った。
通常、天然黒鉛をそのまま処理をしても、剥離されるグラフェン量が少ないことが問題となっていた。しかし、鋭意研究の結果、材料となる黒鉛に所定の処理を施すことで、グラフェンに剥離しやすく、高濃度又は高分散させることができる黒鉛系炭素素材(グラフェン前駆体)を得た。
このグラフェン前駆体が、超音波や撹拌、混練によって一部又は全部が剥離され、グラフェン前駆体からグラフェンまでの混在物「グラフェン様黒鉛」になる。グラフェン様黒鉛は、グラフェン前駆体の添加量やプロセス時間などによって、サイズ、厚さ等は変化するため、限定はしないが、より薄片化していることが好ましい。
つまり、言い換えれば、既存の撹拌や混練プロセスまたは装置により、グラフェン様黒鉛に剥離・分散し易い黒鉛が黒鉛系炭素素材(グラフェン前駆体)である。
このグラフェン様黒鉛は伝導性に優れるため、高分散すると、例えばリチウムイオン2次電池の正極に用いた場合に理論容量により近づけられることを見出した。
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、伝導性に優れる複合伝導素材体、蓄電デバイス、導電性分散液、導電デバイス、導電性コンポジット及び熱伝導性コンポジット並びに複合伝導素材の製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の複合伝導素材は、
母材に少なくとも黒鉛系炭素素材から剥離されたグラフェン様黒鉛と伝導素材とが分散された複合伝導素材であって、
前記黒鉛系炭素素材は、菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し、前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が31%以上であることを特徴としている。
Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)
ここで、
P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度
P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度
である。
この特徴によれば、複合素材は伝導性に優れる。これは、黒鉛系炭素素材から剥離されたグラフェン様黒鉛が薄い状態で存在するため、グラフェン様黒鉛が母材や伝導素材に多くの箇所で接触することに起因すると推察される。また、この接触はグラフェン様黒鉛が薄く変形し易いため、面による接触を形成することにも起因すると推察される。
前記伝導素材は、ひも状、直鎖状、線状又は鱗片状の微粒子であることを特徴としている。
この特徴によれば、微粒子の周りにグラフェン様黒鉛が存在するため、微粒子の有する伝導性を十分に発揮させられる。
前記微粒子はアスペクト比が5以上であることを特徴としている。
この特徴によれば、さらに微粒子の有する伝導性を十分に発揮させられる。
前記伝導素材に対する前記黒鉛系炭素素材の重量比は、1/50以上10未満であることを特徴としている。
この特徴によれば、微粒子の有する伝導性を効率的に発揮させられる。
前記母材は、電池の活物質であることを特徴としている。
この特徴によれば、充放電特性に優れる電極を得ることができる。
前記活物質は正極の活物質であることを特徴としている。
この特徴によれば、充放電特性に優れる正極を得ることができる。
前記母材は、ポリマーであることを特徴としている。
この特徴によれば、電気、熱、イオンの伝導性に優れる複合伝導素材を得ることができる。
前記母材は、気化などにより消滅する材料であることを特徴としている。
この特徴によれば、母材を用いてグラフェン様黒鉛を分散させ、その後母材を消滅させることにより、グラフェン様黒鉛が伝導素材に均しく分散させることができる。
一次電池、二次電池、キャパシタなどの蓄電デバイスに前記複合伝導素材を用いたことを特徴としている。
この特徴によれば、蓄電性に優れた蓄電デバイスを得ることができる。
導電性インク、導電性ペースト、導電性スラリーなどの導電性分散液は、前記複合伝導素材を用いたことを特徴としている。
この特徴によれば、導電性に優れる導電性分散液を得ることができる。
透明電極、透明導電フィルム、導電回路、基板などの導電デバイスは、前記導電性分散液を用いて、塗布または印刷されたことを特徴としている。
この特徴によれば、導電性に優れる導電デバイスを得ることができる。
帯電、静電防止、電磁波遮断などの導電性コンポジットに前記複合伝導素材を用いたことを特徴としている。
この特徴によれば、導電性に優れた導電性コンポジットを得ることができる。
ヒートシンク、放熱グリスなどの熱伝導性コンポジットに前記複合伝導素材を用いたことを特徴としている。
この特徴によれば、伝熱特性に優れた熱伝導性コンポジットを得ることができる。
また、母材に少なくとも黒鉛系炭素素材及び伝導素材を混錬するステップを含む複合伝導素材の製造方法であって、
前記黒鉛系炭素素材は、菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し、前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が31%以上であることを特徴としている。
Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)
ここで、
P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度、
P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度
である。
黒鉛の結晶構造を示す図であり、(a)は六方晶、(b)は菱面体晶の結晶構造である。 一般的な天然黒鉛のX線回折プロファイルを示す図である。 実施例1のジェットミルとプラズマとを用いた製造装置Aを説明する図である。 実施例1のボールミルとマグネトロンとを用いた製造装置Bを説明する図であり、(a)は粉砕する状態を説明する図、(b)は黒鉛系炭素素材(前駆体を)収集する状態を説明する図である。 実施例1の製造装置Bにより製造された試料5の黒鉛系炭素素材のX線回折プロファイルを示す図である。 実施例1の製造装置Aにより製造された試料6の黒鉛系炭素素材のX線回折プロファイルを示す図である。 比較例を示す試料1の黒鉛系炭素素材のX線回折プロファイルを示す図である。 黒鉛系炭素素材を前駆体として用いて分散液を作成する分散液作成装置を示す図である。 比較例を示す試料1と実施例1の製造装置Bにより製造された試料5の黒鉛系炭素素材を用いて作成した分散液の分散状態を示す図である。 分散液に分散された黒鉛系炭素素材(グラフェン)のTEM撮像図である。 試料5の黒鉛系炭素素材(前駆体)を用いて作成した分散液に分散された黒鉛系炭素素材の分布状態を示す図であり、(a)は平均サイズの分布、(b)は層数の分布を示す図である。 比較例を示す試料1の黒鉛系炭素素材を用いて作成した分散液に分散された黒鉛系炭素素材の分布状態を示す図であり、(a)は平均サイズの分布、(b)は層数の分布を示す図である。 試料1−7を前駆体として用いて作成した分散液に分散された黒鉛系炭素素材の層数の分布を示す図である。 分散液に分散された菱面体晶の含有率に対する10層以下のグラフェンの割合を示す図である。 実施例2の試料5の黒鉛系炭素素材(前駆体)を用いて分散液を作成する条件を変えた場合の黒鉛の分布状態を示す図であり、(a)は超音波処理とマイクロ波処理を併用した場合の分布、(b)は超音波処理をした場合の層数の分布を示す図である。 実施例3の黒鉛系炭素素材を導電性インクに分散させたときの抵抗値を示す図である。 実施例4の黒鉛系炭素素材を樹脂に混練したときの引張強さを示す図である。 実施例5の黒鉛系炭素素材を樹脂に混練したときの引張強さを示す図である。 実施例5における分散状態を補足的に説明するため、N−メチルピロリドン(NMP)に分散させた分散液の黒鉛炭素系素材の分布状態を示す図であり、(a)は試料12の分布状態、(b)は試料2の分布状態を示す図である。 実施例6のリチウムイオン二次電池の充放電特性を示すグラフ、(a)は実施例6−1〜6−3、比較例6−1〜6−2を示すグラフ、(b)は比較例6−3を示すグラフである。 実施例6におけるリチウムイオン二次電池の正極を示す概念図である。 グラフェン前駆体のSEM撮像図(平面図)である。 グラフェン前駆体のSEM撮像図(側面図)である。 実施例7のカーボンナノチューブを添加した場合の、リチウムイオン二次電池の充放電特性を示すグラフである。 実施例8のグラフェン前駆体の混合比率を変えたリチウムイオン二次電池の充放電特性を示すグラフである。 グラフェン様黒鉛が分散された樹脂のSEM撮像図(断面図)である。 図26におけるグラフェン様黒鉛の側SEM撮像図(側面図)である。 実施例11の伝導素材の形状、(a)はアセチレンブラックの形状、(b)はカーボンファイバーの形状、(c)は金属粒子の形状を説明するための模式図である。
本発明は、黒鉛の結晶構造に着目したものであり、この結晶構造に関連する事項を先ず説明する。天然黒鉛は層の重なり方によって六方晶、菱面体晶及び無秩序の3種類の結晶構造に区別されることが知られている。図1に示されるように、六方晶は、層がABABAB・・の順に積層された結晶構造であり、菱面体晶は層がABCABCABC・・の順に積層された結晶構造である。
天然黒鉛は、発掘された段階では菱面体晶が殆ど存在しないが、精製段階で破砕など行われるため、一般的な天然黒鉛系炭素素材中には、菱面体晶が14%程度存在する。また、精製時における破砕を長時間行っても、菱面体晶の比率は30%程度で収束することが知られている(非特許文献1、2)。
また、破砕などの物理的力以外でも加熱によって黒鉛を膨張させて薄片化する方法も知られているが、黒鉛に1600K(摂氏約1300度)の熱をかけて処理を行っても菱面体晶の比率は25%程度である。(非特許文献3)。更に超高温の摂氏3000度の熱をかけても30%程度までとなっている(非特許文献2)。
このように、天然黒鉛を物理的力や熱によって処理することで、菱面体晶の比率を増加させることが可能であるがその上限は30%程度である。
天然黒鉛に多く含まれる、六方晶(2H)は非常に安定的で、そのグラフェン同士の層間のファンデルワールス力は、(式3)で示される(特許文献4)。この力を超えるエネルギーを与えることでグラフェンが剥離する。剥離に必要なエネルギーは厚さの3乗に反比例するため、層が無数に重なった厚い状態では非常に微弱で超音波などの弱い物理的な力でグラフェンは剥離するが、ある程度薄い黒鉛から剥離する場合には非常に大きなエネルギーが必要となる。つまり、黒鉛を長時間処理しても、表面の弱い部分のみが剥離し、大部分は剥離されないままになる。
Fvdw=H・A/(6π・t3) ・・・・(式3)
Fvdw:ファンデルワールス力
H :Hamaker定数
A :黒鉛又はグラフェンの表面積
t :黒鉛又はグラフェンの厚み
本願の発明者らは、天然黒鉛に下記に示すような所定の処理を施すことで、粉砕や超高温に加熱する処理では30%程度までしか増えない菱面体晶(3R)の割合を、それ以上まで増加させることに成功した。黒鉛系炭素材料の菱面体晶(3R)の含有率がより多くなると、特に31%以上の含有率であると、この黒鉛系炭素素材を前駆体として用いることで、グラフェンに剥離しやすくなる傾向があり、簡単に高濃度、高分散度されたグラフェン溶液などが得られることが実験・研究の結果として知見として得られた。これは、菱面体晶(3R)にせん断などの力が加わった際に、層間に歪みが生じ、つまり黒鉛の構造全体の歪みが大きくなり、ファンデルワールス力に依存せずに、剥離しやすくなるためであると考えられる。このため、本発明においては、天然黒鉛に所定の処理を施すことでグラフェンが剥離しやすく、グラフェンを高濃度又は高分散させることができる黒鉛系炭素素材をグラフェン前駆体と呼び、以下、後述の実施例において、所定の処理を示すグラフェン前駆体の製造方法、グラフェン前駆体の結晶構造、グラフェン前駆体を用いたグラフェン分散液の順に説明する。
ここで、本明細書においてグラフェンは、平均サイズが100nm以上の結晶であって平均サイズが数nm〜数十nmの微結晶ではなく、かつ層数が10層以下の薄片状又はシート状のグラフェンをいう。
なお、グラフェンは平均サイズが100nm以上の結晶であるため、天然黒鉛以外の非晶質(微結晶)炭素素材である、人造黒鉛、カーボンブラックは、これらを処理してもグラフェンは得られない(非特許文献4)。
また、本明細書において、グラフェン複合体は、本発明に係るグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材、すなわちRate(3R)が31%以上の黒鉛系炭素素材(例えば後述する実施例1の試料2−7、実施例5の試料2、21・・・)を用いて作成した複合体を意味する。
以下、本発明に係る複合伝導素材体、蓄電デバイス、導電性分散液、導電デバイス、導電性コンポジット及び熱伝導性コンポジットを実施するための実施例を説明する。
<グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材の製造について>
図3に示されるジェットミルとプラズマとを用いた製造装置Aにより、グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材を得る方法について説明する。製造装置Aは、電波的力による処理としてプラズマを施し、また、物理的力による処理としてジェットミルを用いた場合を例にしている。
図3において、符号1は5mm以下の粒子の天然黒鉛材料(日本黒鉛工業製 鱗片状黒鉛ACB-50)、2は天然黒鉛材料1を収容するホッパー、3はホッパー2から天然黒鉛材料1を噴射するベンチュリーノズル、4はコンプレッサ5から8箇所に分けて圧送された空気を噴射させて天然黒鉛材料をジェット噴流によりチャンバ内に衝突させるジェットミル、7はタンク6から酸素、アルゴン、窒素、水素などのガス9をノズル8から噴射させるとともに、ノズル8の外周に巻回されたコイル11に高圧電源10から電圧を付与し、ジェットミル4のチャンバ内でプラズマを発生させるプラズマ発生装置であり、チャンバ内に4カ所に設けてある。13はジェットミル4と集塵器14とを接続する配管、14は集塵器、15は収集容器、16は黒鉛系炭素素材(グラフェン前駆体)、17はブロアである。
次に製造方法について説明する。ジェットミル及びプラズマの条件は次のとおりである。
ジェットミルの条件は次のとおりである。
圧力 : 0.5MPa
風量 : 2.8m3/min
ノズル内直径 :12mm
流速 : 約410m/s
プラズマの条件は次のとおりである。
出力 : 15W
電圧 : 8kV
ガス種 : Ar(純度99.999Vol%)
ガス流量: 5L/min
ベンチュリーノズル3よりジェットミル4のチャンバ内に投入された天然黒鉛材料1は、チャンバ内で音速以上に加速され、天然黒鉛材料1同士や壁にぶつかる衝撃で粉砕されると同時に、プラズマ12が天然黒鉛材料1に対して放電や励起することで、原子(電子)に直接作用し、結晶の歪みを増し粉砕を促すと考えられる。天然黒鉛材料1はある程度の粒径(1〜10μm程度)まで微粉になると、質量が減り、遠心力が弱まることで、チャンバの中心に接続された配管13から吸い出される。
配管13から集塵器14のチャンバの円筒容器に流入された黒鉛系炭素素材(グラフェン前駆体)が混在した気体は旋回流となって、容器内壁に衝突した黒鉛系炭素素材16を下方の収集容器15に落下させるとともに、チャンバの下方のテーパ容器部によってチャンバの中心に上昇気流が発生し気体はブロワ17から排気される(所謂サイクロン作用)。本実施例における製造装置Aによれば、原料となる1kgの天然黒鉛材料1から約800gのグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材(グラフェン前駆体)16を得た(回収効率:8割程度)。
次に、図4に示されるボールミルとマイクロ波とを用いた製造装置Bにより、グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材を得る方法について説明する。製造装置Bは、電波的力による処理としてマイクロ波を施し、また、物理的力による処理としてボールミルを用いた場合を例にしている。
図4(a)及び(b)において、符号20はボールミル、21はマイクロ波発生装置(マグネトロン)、22は導波管、23はマイクロ波流入口、24はメディア、25は5mm以下の粒子の天然黒鉛材料(日本黒鉛工業製 鱗片状黒鉛 ACB-50)、26は収集容器、27はフィルタ、28は黒鉛系炭素素材(グラフェン前駆体)である。
次に製造方法について説明する。ボールミル及びマイクロ波発生装置の条件は次のとおりである。
ボールミルの条件は次のとおりである。
回転数 : 30rpm
メディアサイズ: φ5mm
メディア種 : ジルコニアボール
粉砕時間 : 3時間
マイクロ波発生装置(マグネトロン)の条件は次のとおりである。
出力 : 300W
周波数 : 2.45GHz
照射方法 : 断続的
ボールミル20のチャンバ内に1kgの天然黒鉛系炭素原料25と、800gのメディア24を投入し、チャンバを閉じ30rpmの回転数で3時間処理する。この処理中にチャンバにマイクロ波を断続的(10分おきに20秒)に照射する。このマイクロ波の照射により、原料の原子(電子)に直接作用し、結晶の歪みを増やすと考えられる。処理後、フィルタ27でメディア24を取り除くことで、10μm程度の粉体の黒鉛系炭素素材(前駆体)28を収集容器26に収集することができる。
<黒鉛系炭素素材(前駆体)のX線回折プロファイルについて>
図5−図7を参照して、製造装置A、Bにより製造された黒鉛系天然材料(試料6、試料5)及び製造装置Bのボールミルのみを用いて得た10μm程度の粉体の黒鉛系天然材料(試料1:比較例)のX線回折プロファイルと結晶構造について説明する。
X線回折装置の測定条件は次のとおりである。
線源 : Cu Kα線
走査速度 : 20°/min
管電圧 : 40kV
管電流 : 30mA
各試料は、X線回折法(リガク社製試料水平型多目的X線回折装置 Ultima IV)によれば、それぞれ六方晶2Hの面(100)、面(002)、面(101)、及び菱面体晶3Rの面(101)にピーク強度P1,P2,P3,P4を示すことからこれらについて説明する。
ここで、X線回折プロファイルの測定は、近年では国内外を問わずいわゆる標準化された値が用いられている。当該、リガク社製試料水平型多目的X線回折装置 Ultima IVは、X線回折プロファイルを、JIS R 7651:2007「炭素材料の格子定数及び結晶子の大きさ測定方法」に準拠して測定可能な装置である。なお、Rate(3R)は、Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100で求められる回折強度の比であり、回折強度の値が変化しても、Rate(3R)の値が変化するものではない。つまり、回折強度の比は規格化されており、絶対値で物質の同定を行うのを回避するために一般に用いられおり、その値が測定装置に依存することはない。
ボールミルによる処理とマイクロ波処理を施す製造装置Bにより製造された試料5は、図5及び表1に示されるように、ピーク強度P3やピーク強度P1の強度の割合が高く、P3のP3とP4の和に対する割合を示す(式1)で定義されるRate(3R)が46%であった。また、強度比P1/P2は0.012であった。
Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)
ここで、
P1は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(100)面のピーク強度
P2は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(002)面のピーク強度
P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度
P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度
である。
同様に、ジェットミルによる処理とプラズマによる処理を施す製造装置Aにより製造された試料6は、図6及び表2に示されるように、ピーク強度P3やピーク強度P1の強度の割合が高く、Rate(3R)が51%であった。また、強度比P1/P2は0.014であった。
また、ボールミルのみにより製造された比較例を示す試料1は、図7及び表3に示されるように、ピーク強度P3は試料5、6に比較してその割合が小さく、Rate(3R)は23%であった。また、強度比P1/P2は0.008であった。
このように、実施例1の製造装置Bにより製造された試料5、実施例1の製造装置Aにより製造された試料6では、Rate(3R)が、46%、51%となり、図2に示す天然黒鉛や、比較例を示す試料1に比較して、40%以上または50%以上となることが示された。
次に、上述で製造されたグラフェン前駆体を用いて、グラフェン分散液を作成し、グラフェンの剥離し易さを比較した。
<グラフェン分散液について>
グラフェン分散液の作成方法について図8を参照して説明する。図8においては、グラフェン分散液を作成する際に、液中にて超音波処理とマイクロ波処理とを併用する場合を例にしている。
(1)ビーカー40にグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材0.2gと分散液であるN−メチルピロリドン(NMP)200mlを入れる。
(2)ビーカー40をマイクロ波発生装置43のチャンバ42に入れ、上方から超音波ホーン44の超音波の振動子44Aを分散液41に挿入する。
(3)超音波ホーン44を作動させ20kHz(100W)の超音波を連続的に3時間付与する。
(4)上記超音波ホーン44を作動させている間に、マイクロ波発生装置43を作動させマイクロ波2.45GHz(300W)を断続的(5分おきに10秒照射)に付与する。
図9は上述のようにして作成されたグラフェン分散液が24時間経過した様子である。
製造装置Bにより製造された試料5を用いたグラフェン分散液30は一部沈殿しているものの全体が黒色を呈するものが確認された。これは、グラフェン前駆体として用いた黒鉛系炭素素材の多くがグラフェンに剥離した状態で分散していると考えられる。
比較例を示す試料1を用いた分散液31は黒鉛系炭素素材のほとんどが沈殿しており、一部が上澄み液として浮いていることが確認された。このことから、ごく一部がグラフェンに剥離し、上澄みとして浮いていると考えられる。
また、上述のようにして作成されたグラフェン分散液を試料台(TEMグリッド)の上に観察可能な濃度に希釈・塗布し、乾燥させて、透過型電子顕微鏡(TEM)の図10に示すような撮像画からグラフェンのサイズと層数を観察した。なお、試料1については上澄みを希釈・塗布したものを用いた。例えば、図10の場合、図10(a)からサイズはフレーク33の最大の長さLであり約600nm、図10(b)から層数はフレーク33の端面を観察しグラフェン層の重なりをカウントし6層(符号34が指す領域)として求めた。このように各フレーク(フレーク数をNとする)のサイズと層数を測定して、図11、図12に示すグラフェン層数と大きさを求めた。
図11(a)を参照し、実施例1の製造装置Bにより製造された試料5(Rate(R3)が46%)のグラフェン分散液に含まれた薄片状のフレークの粒度分布(サイズの分布)は、0.5μmをピークとする分布であった。また、図11(b)において、層数は、3層をピークとし、10層以下のグラフェンが68%となる分布であった。
図12を参照して、比較例の試料1(Rate(R3)が23%)の分散液に含まれた薄片状のフレークの粒度分布(サイズの分布)は、0.9μmをピークとする分布であった。また、層数は、30層以上のものが大部分を占め、10層以下のグラフェンが10%となる分布であった。
この結果から、製造装置Bにより製造された試料5のものは、グラフェン前駆体として用いた場合に、10層以下のグラフェンが多く、グラフェンの分散性に優れ、かつ、高濃度のグラフェン分散液を得られることが分った。
次に、図13を参照して、グラフェン前駆体の割合Rate(3R)とグラフェン分散液における層数の関係について説明する。図13における、試料1、5、6は上述したものである。試料2、3、4は、ボールミルによる処理とマイクロ波処理とを施す製造装置Bで製造したものであり、試料5よりもマイクロ波の照射時間を短くして製造したグラフェン前駆体を用いてグラフェン分散液を作成したものである。また、試料7はジェットミルによる処理とプラズマ処理とを施す製造装置Aで製造したものであり、試料6よりも高出力のプラズマを与えて製造したグラフェン前駆体を用いてグラフェン分散液を作成したものである。
図13から、Rate(3R)が31%及び38%の試料2及び3は、層数の分布の形状が13層前後にピークを有する正規分布に近い形状(試料2、3を用いた分散液)である。Rate(3R)が40%以上の試料4−7は、層数の分布の形状が数層(薄いグラフェン)の部分にピークを有する所謂対数正規分布の形状である。一方、Rate(3R)が23%の試料1は、層数が30層以上の部分にピークを有する形状(試料1を用いた分散液)である。すなわち、Rate(3R)が31%以上となると、層数の分布の形状が31%未満と異なり、更にRate(3R)が40%以上となると、層数の分布の形状が40%未満とは明らかに異なる傾向となることが分かる。また、10層以下のグラフェンの割合は、試料3を用いた分散液のRate(3R)が38%であるのに対し、試料4を用いた分散液のRate(3R)が62%であり、Rate(3R)が40%以上となると、10層以下のグラフェンの割合が急増していることが分かる。
これらのことから、Rate(3R)が31%以上の場合に10層以下のグラフェンに剥離しやすくなり、さらに、Rate(3R)が40%、50%、60%と多くなるにつれ、10層以下のグラフェンにさらに剥離し易くなると考えられる。また、強度比P1/P2について着目すると、試料2−試料7は、比較的狭い0.012〜0.016の範囲内の値となっており、結晶構造にゆがみが生じグラフェンに剥離しやすいと考えられる0.01を超えるからいずれも好ましい。
さらにRate(3R)と10層以下のグラフェンが含まれる割合との対比を行った結果を図14に示す。図14を参照すると、Rate(3R)は、25%以上となると31%付近から10層以下のグラフェンが増加し始め(右肩上がりの傾きとなり)、また40%前後において、10層以下のグラフェンが急増し(10層以下のグラフェンの割合は、試料3を用いた分散液のRate(3R)が38%であるのに対し、試料4を用いた分散液のRate(3R)が62%であり、Rate(3R)が4%増えることにより10層以下のグラフェンの割合は24%増えるように急増し)かつ全体に占める10層以下のグラフェンが50%以上となることが判明した。なお、図14中の黒四角の点は各々異なる試料であり、上述した試料1−7と、それ以外の他の試料も含まれている。
このことから、Rate(3R)が31%以上の試料をグラフェン前駆体として用いてグラフェン分散液を作成すると、10層以下のグラフェンが分散される割合が増加し始め、さらにRate(3R)が40%以上の試料をグラフェン前駆体として用いてグラフェン分散液を作成すると、10層以下のグラフェンが50%以上生成される。すなわち、グラフェンが高濃度かつ高分散のグラフェン分散液を得ることができる。また、上述したように、この分散液に含まれる黒鉛系炭素素材(前駆体)はほとんど沈殿しないから、簡単に濃いグラフェン分散液を得ることができる。この方法により、濃縮することなしに、グラフェンの濃度が10%を超えるグラフェン分散液を作成することもできた。特に、10層以下のグラフェンが分散する割合が50%以上に急増するという観点から、Rate(3R)は40%以上がより好ましい。
上述により、Rate(3R)が31%以上、好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上であると、10層以下のグラフェン及び10層前後の薄層の黒鉛系炭素素材に分離される割合が多く、これらの黒鉛系炭素素材をグラフェン前駆体として用いた場合に、グラフェンの分散性に優れ、かつ、高濃度のグラフェン分散液を得られることが分った。また、後述する実施例5により、Rate(3R)が31%以上の場合に黒鉛系炭素素材グラフェン前駆体として有用であることが明確になった。
また、Rate(3R)の上限を特に規定する必要はないと考えるが、強度比R1/R2が0.01以上を同時に満たすようにすることが、分散液等を作成する場合にグラフェンに分離しやすいことから好ましい。なお、製造装置A、Bを用いた製造方法の場合には、グラフェン前駆体を製造がし易いという観点からは、上限は70%程度である。また、製造装置Aのジェットミルによる処理とプラズマ処理とを併用する方法の方が、Rate(3R)が高いものを容易に得られることからより好ましい。なお、物理的力による処理と電波的力による処理を併用して、Rate(3R)が31%以上となっていればよい。
実施例1では、グラフェン分散液を得る際に、超音波処理とマイクロ波処理とを併用する場合について説明したが、実施例2では、超音波処理のみを行いマイクロ波処理は行っておらず、その他の条件は実施例1と同様である。
図15(b)は、製造装置Bで製造した試料5(Rate(3R)=46%)のグラフェン前駆体を用い超音波処理を施して得られたグラフェン分散液の層数の分布を示す。なお、図15(a)は実施例1の製造装置Bにより製造された試料5の図11(b)に示される分布と同じである。
その結果、層数の分布の傾向は概ね同様であるが、10層以下のグラフェンの割合は64%であり、実施例1の68%に比較し、少し低下している。このことから、グラフェン分散液を作成する際は物理的力と電波的力の処理を2つ同時に行った方がより効果があることが判明した。
実施例3では導電インクに用いる例について説明する。
実施例1の試料1(Rate(3R)=23%)、試料3(Rate(3R)=38%)、試料5(Rate(3R)=46%)、試料6(Rate(3R)=51%)をグラフェン前駆体として、水と導電性付与剤たる炭素数3以下のアルコールとの混合溶液に導電性インクに使用する濃度にしたINK1,INK3,INK5,INK6を作成し、それぞれの抵抗値を比較した。この結果から、Rate(3R)が高くなるにつれ、抵抗値は低いという結果となった。
実施例4では樹脂に混練する例について説明する。
グラフェンを分散した樹脂シートを作成する際に、ガラス繊維を添加したものの引張強度が非常に良好であったためその要因を調べたところ、ガラス繊維と同時に添加する相溶化剤が、前駆体がグラフェン化することに寄与していることが知見として得られた。そこで、分散剤と相溶化剤とを樹脂に混ぜたものについて検討した。
実施例1の試料5(Rate(3R)=46%)を前駆体としてLLDPE(ポリエチレン)に1wt%直接添加し、ニーダーや2軸混練機(エクストルーダー)等でシェア(せん段力)をかけながら混練した。
樹脂中で黒鉛系炭素素材がグラフェン化し、高分散すると、引張強度が増加することは公知であることから、樹脂の引張強度を測定することによりグラフェン化と分散の度合いを相対的に推察することができる。引張強度は、島津製作所社製の卓上型精密万能試験機(AUTOGRAPH AGS−J)で試験速度500mm/minの条件で測定した。
また、添加剤の有無による、グラフェン化と分散性を比較するため、下記(a),(b),(c)3種類の比較を行った。
(a)添加剤無
(b)一般的分散剤(ステアリン酸亜鉛)
(c)相溶化剤(グラフト変性ポリマー)
測定結果を示す図17を参照して結果について説明する。なお、図17中、丸印は比較例の試料1を用いた樹脂材料、四角印は実施例1の試料5を用いた樹脂材料である。
(a)の添加剤を加えない場合は、引っ張り強さの差は小さかった。
(b)の分散剤を添加した場合は、試料5のグラフェン前駆体はグラフェン化がある程度促進されることがわかる。
(c)の相溶化剤を添加した場合は、試料5のグラフェン前駆体はグラフェン化がかなり促進されることがわかる。これは、相溶化剤は、グラフェン分散させる効果の他に、グラフェン層結合体と樹脂を結合させ、その状態でシェアを加えると、グラフェン層結合体を引きはがすように作用すると考えられるからである。
分散剤としてステアリン酸亜鉛を例に説明したが、化合物に合った性質のものを選択するとよい。例えば、分散剤としては、陰イオン(アニオン)界面活性剤、陽イオン(カチオン)界面活性剤、両性イオン界面活性剤、非イオン(ノニオン)界面活性剤が挙げられる。特にグラフェンに対しては、陰イオン界面活性剤と非イオン界面活性剤が好ましい。より好ましくは、非イオン界面活性剤である。非イオン界面活性剤は、オキシエチレン基や水酸基、グルコシドなどの糖鎖など、イオンには解離せず、水との水素結合によって親水性を呈する界面活性剤であるため、イオン性界面活性剤ほどの親水性の強さは無いが、非極性溶媒中での使用が可能であるメリットがある。そして、その親水基鎖長を変化させることで、その性質を親油性から親水性まで自由に変化させることができるからである。陰イオン界面活性剤としては、X酸塩(X酸は例えばコール酸、デオキシコール酸)、例えばSDC:デオキシコール酸ナトリウム、リン酸エステルなどが好ましい。また、非イオン界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪アルコールエトキシレート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグリコシドなどが好ましい。
実施例1でも説明したRate(3R)を31%以上とするとグラフェン前駆体として有用であることを更に検証するため、実施例5では樹脂に混練する例を用いて更に説明する。実施例1における試料1〜7を含む図14にプロットされたRate(3R)の黒鉛系炭素素材を前駆体として用いた樹脂成形品の弾性率について説明する。
(1)上記黒鉛系炭素素材を前駆体としてLLDPE(ポリエチエレン:プライムポリマー社製20201J)5wt%を分散剤(ノニオン系界面活性剤)1wt%とともに、イオン交換水に混ぜ、上述した図8の装置を同様の条件で駆動して、グラフェン乃至黒鉛系炭素素材が5wt%となるグラフェン分散液を得る。
(2)(1)において得られたグラフェン分散液0.6kgを直ちに、ニーダー(モリヤマ株式会社製 加圧型ニーダー WDS7-30)を用いて樹脂5.4kgに混練し、ペレットを作成する。混練条件については後述する。なお、樹脂と分散液との配合比率は最終的にグラフェン乃至黒鉛系炭素素材の添加量が0.5wt%になるように選定した。
(3)(2)において作成されたペレットを使用して射出成型機で試験片 JIS K7161 1A形(全長165mm、幅20mm、厚み4mm)を作成する。
(4)(3)により作成された試験片の弾性率(Mpa)をJIS K7161に基づいて、株式会社島津製作所製の卓上精密万能試験機(AUTOGRAPH AGS-J)により試験速度:500mm/minの条件で測定した。
混錬条件は次のとおりである。
混練温度:135℃
ローター回転数 :30rpm
混練時間:15分
炉内加圧:開始後10分間.0.3MPa、10分経過後大気圧まで除圧
ここで、上述した(2)のグラフェン分散液の樹脂への分散について、一般に樹脂の融点は100℃以上のため、大気中では水が蒸発するが、加圧ニーダーは、炉内を加圧できる。炉内で、水の沸点を上げ、分散液を液体のまま留めることにより、分散液と樹脂とのエマルションが得られる。所定の時間加圧後、徐々に圧力を抜くと、水の沸点が下がり水は蒸発していく。その際に水に閉じ込められていたグラフェンは樹脂中に残る。これにより、樹脂中にグラフェン黒鉛系炭素素材が高分散される、と考えられる。
また、グラフェン分散液は時間の経過とともにグラフェン黒鉛系炭素素材が沈降する傾向にあることから、グラフェン分散液を得た直後に樹脂に混練することが好ましい。
なお、分散液と樹脂とのエマルションを得る手段は、加圧ニーダーの他に、ケミカルスラスター、ボルテックスミキサー、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、ハイドロシェア、フロージェットミキサー、湿式ジェットミル、超音波発生器などでも良い。
また、分散液の溶媒として水の他に2−プロパノール(IPA)、アセトン、トルエン、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などを用いても良い。
表4には、Rate(3R)が30%付近のRate(3R)と樹脂成形品の弾性率の関係を示している。なお、表4における、試料00は前駆体を混錬しなかったブランクの試料であり、試料11、12はRate(3R)が試料1と試料2の間、試料21はRate(3R)が試料2と試料3の間の試料である。
図18及び表4から、試料00(ブランク)に対する弾性率の差(弾性率の増加割合)は、Rate(3R)が31%まではほぼ10%前後で略一定であり、Rate(3R)が31%を境にその差は32%まで急増し、Rate(3R)が31%から42%にかけてその差は50%まで単調増加し、Rate(3R)が42%以降はその差は微増乃至60%前後で収束することが判明した。このように、Rate(3R)が31%以上となると、弾性率に優れる樹脂成形品が得られる。また、樹脂成形品に含まれるグラフェン乃至黒鉛系炭素素材は0.5wt%と少量であるため、樹脂が本来有する性状に与える影響が少ない。
この傾向は、Rate(3R)が31%を境として、樹脂と接触する10層以下のグラフェンを含む薄層の黒鉛系炭素素材が急増するためと考えられる。ここで、実施例5では、水に分散させるための分散剤の影響でTEMにより観察してもグラフェンの層数を確認できない。そこで、参考までに、上述した急増する理由を、表4に示す、NMPに分散した際の黒鉛系炭素素材の層数の分布を基に検討する。試料12と試料2とを対比すると、グラフェン(層数が10層以下)は共に25%になる。一方、図19に示されるように、試料2は15層未満の薄層の割合が試料12よりも多く、すなわち前駆体として分散させた黒鉛系炭素素材の表面積が広く、樹脂と接触する面積が急激に広がったためと考えられる。
このように、実施例5により、Rate(3R)が31%以上であると、グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材は10層以下のグラフェン乃至薄層の黒鉛系炭素素材に分離される傾向が明確に示された。
上述の方法により製造したグラフェン前駆体を用いてリチウムイオン二次電池の正極を得る実験を行った。
<諸条件>
溶媒:NMP (N-methylpyrrolidone)(三菱化学社製 電池グレード)、
導電助剤(伝導素材):アセチレンブラック(電気化学工業社製 HS-100、平均粒子径48nm、かさ密度0.15g/ml、灰分0.01%)、
黒鉛系炭素素材:グラフェン前駆体(上述の方法により製造)、
結着剤:PVdF (PolyVinylidene)(Solvay社製 ソレフTA5130)、
正極活物質(母材):三井金属社製 NCM Li(Ni1/3,Co1/3, Mn1/3)O2)(平均粒径30μm)、
超音波処理装置(Hielscher社製 UP100S)、
<処理条件:20kHz、100W>、
<分散液条件1:実施例1(図8)のグラフェン前駆体の剥離分散液の作成方法に同じ。超音波及びマイクロ波の付与条件も同じ。>
攪拌機(シンキー社製 ARE-310)、
<攪拌条件1:常温25℃、撹拌2000rpm×10分>
<攪拌条件2:常温25℃、撹拌2000rpm×10分、攪拌後脱泡2100rpm×30秒>、
セパレーター(celgard社製 2400、板厚25μm、材質:PP(polypropylene))、
電解液:LiPF6 (lithium hexafluorophosphate)を1.0mol/L含有するEC(ethylene carbonate):DEC(diethyl carbonate)(7:3vol%)(キシダ化学社製)、
リチウム箔(負極):(本城金属社製 厚さ0.2mm)
<実験手順>
ステップ1.NMP(90g)にグラフェン前駆体(試料1、2、21、4(実施例1、5に用いた試料)を参照。)を10g加え、分散液条件1にて、グラフェン前駆体を剥離・分散し、濃度10wt%の分散液を得る。
ステップ2.分散液(20g)と、PVdF(4g)、アセチレンブラック(6g)を加えて、撹拌条件1で撹拌し、30gの混合物1を得る。
ステップ3.混合物1に表5に示す割合の正極活物質を加え、撹拌条件2で撹拌し混合物2を得る。
ステップ4.混合物2をアルミ箔に0.25mmの膜厚で塗布し、100℃で真空乾燥し、圧力1.5MPaでプレスして厚みを整えた正極を得る。
ステップ5.正極を直径15mmに打ち抜く。
ステップ6.ステンレス板上に圧着したリチウム箔を負極とし、セパレーター、電解液、正極の順に重ね宝泉社製ステンレス製HSセルに組み付けた。
ステップ7.HSセルを次の試験条件により電気化学評価を行った。
ここで、上述の手順では、次のステップへの移行は待機時間を設けることなく順次行った。以降の実施例についても同様である。
<試験条件>
初回充電:CC-CV充電0.2C(0.01C cut off)
初回放電:CC放電0.2C
組立環境:25℃、露点温度-64℃ アルゴン雰囲気下(グローブボックス内)
電圧範囲:2.75V〜4.5V vs. Li/Li+
測定装置:ナガノ社製 BTS2004W
ここで、CC-CV充電は定電圧定電流充電、CC放電は定電流放電、0.2Cは充放電レート5時間、0.01C cut offはカットオフ条件である。
また、グラフェン様黒鉛の影響を確認するため、表5に示す混合比率により、Rate(3R)が23%(試料1)、31%(試料2)、35%(試料21)、42%(試料4)で実験を行った。
表5及び図20から、充電特性は、充電電位4.5Vにレート0.2Cで充電すると実施例6-1,6-2,6-3、比較例6-1,グラフェン様黒鉛が分散されていない比較例6-2は似た傾向を示した。実施例6-1,6-2,6-3、特に実施例6-3は比較的、早く充電電圧が高くなるからより好ましい。なお、比較例6-3は、充電挙動が観察されなかった。これは、アセチレンブラックのようなひも状の物質が無いために、グラフェン様黒鉛のようなナノ粒子だけでは導電パスが形成されなかったためと推察される。
また、放電特性について、実施例6-1,6-2,6-3は、比較例6-1,6-2よりも、充電終止電位が高いことが観察された。さらに、グラフェン様黒鉛が分散された実施例6-1,6-2,6-3、比較例6-1はいずれも、グラフェン様黒鉛が分散されていない比較例6-2よりも容量が大きくなることが観察された。特に実施例6-1,6-2,6-3の場合に顕著に容量が大きくなることが観察された。なお、比較例6-3は、放電挙動が観察されなかった。
Rate(3R)が31%以上(実施例6-1,6-2,6-3)のグラフェン前駆体から剥離したグラフェン様黒鉛をABに併用すると、得られた電池は充電終止電位が高く、正極の放電特性が良好である、特に、図20から31%を境に充電終止電位が急増する傾向が確認された。これは、図21に示されるように、粒径数十μmの正極活物質52,52間に、ひも状で断面径が数十nmの導電助剤であるAB53,53,・・,53が存在し、正極活物質52とAB53との間、AB53とAB53との間、アルミ箔51と正極活物質52との間、アルミ箔51とAB53との間にそれぞれ、グラフェン様黒鉛54(例えば厚さ50nm以下、大きさ100nm〜5μm。)が分散されていると推察される。そして、グラフェン様黒鉛54は、面状であり、かつアルミ箔51、正極活物質52、AB53等の他の素材に比較し柔軟であるため、アルミ箔51、正極活物質52及びAB53を相互にグラフェン様黒鉛54を介して密に接触するため、正極の放電特性が良好となると考えられる。なお、Rate(3R)が31%未満(比較例6-1)のグラフェン前駆体では分散されるグラフェン様黒鉛の量が少なく、グラフェン様黒鉛を添加することによる効果が十分に発揮されていないと考えられる。
また、グラフェン前駆体のRate(3R)が35%(実施例6-2)、42%(実施例6-3)と増えるにつれ、それ以下の場合よりも、正極の放電特性及び容量がより良好である。Rate(3R)が31%(実施例6-1)よりも、アルミ箔51、正極活物質52及びAB53を相互に接触させるグラフェン様黒鉛54の数や接触面積が増えるため考えられる。
また、グラフェン前駆体を上述したように電波的力による処理及び/又は物理的力による処理により製造しているため、酸化、還元処理が不要である。さらに、正極を製造する際に、還元処理が不要であるため、高温にする必要がなく、正極の製造が容易である。加えて、正極を、混練条件1、2及び真空乾燥によりして製造するものであり、その製造が簡単である。
さらに、正極活物質52と混練する前に、分散液条件1でグラフェン様黒鉛が分散された分散液とAB53とを混練するため、混練条件1により、グラフェン様黒鉛54はAB53とよく混ざる。その後、正極活物質52と混練するため、グラフェン様黒鉛54は偏りなく分散される。
ここで、ステップ1により得られた分散液には、グラフェン前駆体から、剥離された材料が分散している。冒頭でも説明したが、グラフェン前駆体の一部又は全部が剥離され、グラフェン前駆体からグラフェンまでの混在物を「グラフェン様黒鉛」という。分散液に分散されたグラフェン様黒鉛は図示しないが透過型電子顕微鏡(TEM)により図10に示すグラフェンと同様にして観察することができる。
参考のために、グラフェン前駆体の走査型電子顕微鏡(SEM)撮像図について説明する。実施例1により得られたグラフェン前駆体は、例えば図22、23に示されるように、長さ7μm、厚さ0.1μmの薄層黒鉛の積層体である。
上述の方法により製造したグラフェン前駆体を用いてリチウムイオン二次電池の正極を得る実験を行った。
実施例7では伝導素材をカーボンナノチューブとし、表6の混合比率で実験を行った。それ以外は、実施例6と同様である。
<諸条件>
カーボンナノチューブ:VGCF-H 昭和電工社製(繊維径150nm、繊維長10〜20μm)
図24に示されるように、実施例6と同様の傾向が観察された。カーボンナノチューブの使用により、全体的にABよりも若干充放電特性が良くなっている。
上述の方法により製造したグラフェン前駆体を用いてリチウムイオン二次電池の正極を得る実験を行った。
実施例8では、Rate(3R)が31%であるグラフェン前駆体の伝導素材に対する混合比率を表7に示される条件で実験を行った。それ以外は、実施例6と同様である。
図25に示されるように、充放電特性は、伝導素材に対するグラフェン前駆体の混合比率が1(実施例8-2)よりも大きくなるとほぼ同様の傾向が観察され、特性が飽和していることが観察された。また、グラフェン前駆体の混合比率が10以上となると母材の性状への影響が大きくなる。一方、混合比率が1/50未満となる(実施例8-7)と、グラフェン前駆体を混合していないもの(比較例6-2)とほぼ同じ傾向になること、1/10(実施例8-6)以上となると充放電特性が良好になることが観察された。このことから、混合比率は、下限は1/50以上、好ましくは1/10以上、上限は10以下好ましくは1以下であることが好ましい。
次に、上述の方法により製造したグラフェン前駆体を用いて樹脂成形品を得る実験を行った。
<諸条件>
<<素材>>
樹脂:LLDPE(ポリエチレン:プライムポリマー製 20201J)、
溶媒:水(イオン交換水)、
分散剤:1wt%(ノニオン系界面活性剤)、
超音波処理装置(Hielscher社製 UP100S)、
<処理条件:20kHz、100W>、
<分散液条件2:グラフェン前駆体を分散剤(ノニオン系界面活性剤)1wt%とともに、イオン交換水に混ぜ、上述した図8の装置を同様の条件で駆動して、グラフェン様黒鉛が10wt%となる分散液を得る。>
<<ニーダー>>
ニーダー:モリヤマ製 加圧型ニーダー WDS7-30、
混練温度:135℃、
ローター回転数:30r/min、
加工時間:15分、
混合比率:樹脂5340g、AB(HS-100)600g、分散液600g(グラフェン様黒鉛が60gになる様に)、
<<体積抵抗値>>
試験片:φ100mm×t3mm(ASTM D257)、
測定装置:装置本体(川口電気製作所製 R-503)、電極装置(川口電気製作所製 P-616)、
印加電圧:500V、
電圧印加1分後の電流を計測、
<<熱伝導率>>
試験片:φ50mm×t3mm(ASTM E1530)、
測定装置:ANTER社製 UNITHERM 2021
<実験手順>
ステップ1.表8に示されるRate(3R)の異なるグラフェン前駆体を用いて分散条件2により分散液を得る。
ステップ2.ステップ1.で得た分散液と樹脂を加圧ニーダーに入れて上記混合比率で混練する。
ステップ3.ステップ2.で得た混練物を、ASTM D257に準拠して、射出成型機にて試験片を成型し、体積抵抗値の変化を観察した。
ステップ4.ステップ2.で得た混練物を、ASTM E1530に準拠して、射出成型機にて試験片を成型し、定常法にて熱伝導率の変化を観察した。
表8から、実施例9-1,9-2,9-3は、いずれも、体積抵抗が小さく、電気伝導性に優れる。
また、実施例9-1,9-2,9-3は、比較例9-1,9-2,9-3,9-4よりも、熱伝導率が十分に高いことが観察された。
Rate(3R)が31%以上(実施例9-1,9-2,9-3)のグラフェン前駆体から剥離したグラフェン様黒鉛をABに併用すると、体積抵抗及び熱伝導率が良好になる、特に、表8から31%を境に体積抵抗及び熱伝導率が急激に良好になる傾向が確認された。これは、実施例6と同様の原理により、LLDPEの高分子間に、断面径が数百nm〜数μmのABが存在する。LLDPEとABとの間、ABとABとの間、LLDPEとLLDPEとの間にそれぞれ、グラフェン様黒鉛が分散していると推察される。そして、グラフェン様黒鉛は、面状であり、かつLLDPE、AB等の他の素材に比較し柔軟であるため、LLDPE及びABを相互にグラフェン様黒鉛を介して密に接触するため、体積抵抗及び熱伝導率が良好となると考えられる。なお、Rate(3R)が31%未満(比較例9-1)では分散するグラフェン様黒鉛の量が少なく、グラフェン様黒鉛を分散させたことによる効果が十分に発揮されていないと考えられる。
また、Rate(3R)が35%(実施例9-2)、42%(実施例9-3)と増えるにつれ、それ以下の場合よりも、体積抵抗及び熱伝導率がより良好である。Rate(3R)が31%(実施例9-1)よりも、LLDPE及びABを相互に接触させるグラフェン様黒鉛の数や接触面積が増えるため考えられる。
ここでステップ1により得られた分散液には、グラフェン前駆体から、剥離された材料が分散している。冒頭でも説明したが、グラフェン前駆体の一部又は全部が剥離され、グラフェン前駆体からグラフェンまでの混在物を「グラフェン様黒鉛」という。分散液に分散されたグラフェン様黒鉛は図示しないが透過型電子顕微鏡(TEM)により図10に示すグラフェンと同様にして観察することができる。
また、樹脂に分散されたグラフェン様黒鉛は成形した試験片を精密高速切断機(ALLIED社製 TechCut5)などで切断し走査型電子顕微鏡(SEM)などにより観察できる。例えば図26には、カーボンナノチューブとグラフェン様黒鉛が分散された樹脂の断面が示されており、線状の部分がカーボンナノチューブ、白い斑状の部分がグラフェン様黒鉛である。このグラフェン様黒鉛は、例えば図27に示されるように、厚さ3.97nmの薄層黒鉛の積層体である。
次に、上述の方法により製造したグラフェン前駆体を用いて樹脂成形品を得る実験を行った。
Rate(3R)が31%であるグラフェン前駆体の伝導素材に対する混合比率を表9に示される条件で実験を行った。
<諸条件>
<<素材>>
樹脂:LLDPE(ポリエチレン: プライムポリマー製 20201J)、
相溶化剤:カヤブリッド006PP(化薬アクゾ社製 無水マレイン酸変性PP)、
アセチレンブラック(電気化学工業社製 HS-100、平均粒子径48nm、かさ密度0.15g/ml、灰分0.01%)
<<2軸エクストルーダー>>
2軸エクストルーダー:神戸製鋼社製 HYPERKTX 30、
混練温度 :135℃、
スクリュ回転数 :100r/min、
<<体積抵抗値>>
試験片:φ100mm×t3mm(ASTM D257)、
測定装置:装置本体(川口電気製作所製 R-503)、電極装置(川口電気製作所製 P-616)、
印加電圧:500V、
電圧印加1分後の電流を計測、
<<熱伝導率>>
試験片: φ50mm×t3mm(ASTM E1530)、
測定装置: ANTER社製 UNITHERM 2021
<実験手順>
ステップ1.表9に示されるRate(3R)の異なるグラフェン前駆体と、相溶化剤を2軸エクストルーダーにて混練を行いグラフェン様黒鉛を40wt%含有する混合物1を得る。なお、グラフェン前駆体は混練の過程でグラフェン様黒鉛となる。
ステップ2.同じ2軸エクストルーダーにステップ1.で得た混合物1、樹脂、ABを表9に示す割合で混練する。
ステップ3.ステップ2.で得た混練物を、ASTM D257に準拠して、射出成型機にて試験片を成型し、体積抵抗値の変化を観察した。
ステップ4.ステップ2.で得た混練物を、ASTM E1530に準拠して、射出成型機にて試験片を成型し、定常法にて熱伝導率の変化を観察した。
なお、相溶化剤による体積抵抗や熱伝導率は、母材となる樹脂と大きく変わらないため、本実施例では考慮しない。
表9に示されるように、伝導素材に対するグラフェン前駆体の混合比率が1(実施例10-5)よりも大きくなると、体積抵抗及び熱伝導率はほぼ同様の値となり、特性が飽和していることが観察された。また、グラフェン前駆体の混合比率が10以上となると母材の性状への影響が大きくなる。一方、混合比率が1/50未満(比較例10-9)となると、グラフェン前駆体を混合していないもの(比較例2-2)とほぼ同じ体積抵抗及び熱伝導率になることが観察された。このことから、混合比率は、下限は1/50以上、好ましくは1/10以上、上限は10以下好ましくは1以下であることが好ましい。
次に、上述の方法により製造したグラフェン前駆体を用いて樹脂成形品を得る実験を行った。
実施例11では、Rate(3R)が31%であるグラフェン前駆体と共に混合する伝導素材を変えてその形状による影響を確認した。それ以外は、実施例9と同様である。
図28に示されるように、伝導素材として、カーボンブラックの一種であるアセチレンブラック(AB)は、その径が数十nm、その長さが数〜数十μmのひも状ないし直鎖状である。カーボンファイバー(CF)はその径が数十μm、その長さが数百μmの線状である。金属粒子はその径が数十nm〜数μmである。
表10に示されるように、ABを添加した実施例9-1とCFを添加した実施例11-1はいずれも体積抵抗及び熱伝導率が良好であった。一方、金属粒子を添加した実施例11-2は、グラフェン前駆体が添加されグラフェン様黒鉛が分散されているにも拘わらず体積抵抗及び熱伝導率が良好ではなかった。このことから、グラフェン前駆体はひも状、直鎖状又は線状の伝導素材と併せて用いると良いことが分かった。また、実施例として示していないが、鱗片状の伝導素材も体積抵抗及び熱伝導率が良好であった。ひも状、直鎖状、線状又は鱗片状のナノ伝導素材は、その形状から単位質量当たりの表面積が広いため、多くのグラフェン様黒鉛と接触することとなり、グラフェン様黒鉛との相性が良いと推測される。さらに、伝導素材は、ひも状、直鎖状、線状又は鱗片状の形状として、アスペクト比が5以上のものが特に好ましいことが判明した。なお、アセチレンブラックのように枝分かれしている素材のアスペクト比は、最も長い部分に対する平均径の比を求めればよい。また、鱗片状の素材のアスペクト比は、最も長い部分に対する平均厚さの比を求めればよい。
次に、上述の方法により製造したグラフェン前駆体を用いて樹脂成形品を得る実験を行った。実施例12では、グラフェン前駆体を分散条件3で製造したグラフェンペーストを用いて実験を行った。
<諸条件>
<素材>
ジアセトンアルコール:和光純薬社製、
メチルパラベン:和光純薬社製、
安定剤:ニトロセルロース DLX-30-50 (Nobel NC Co.Ltd)、
アセチレンブラック(電気化学工業社製 HS-100、平均粒子径48nm、かさ密度0.15g/ml、灰分0.01%)、
<撹拌>
攪拌機(シンキー社製 ARE-310)
<攪拌条件3>:常温25℃、撹拌2000rpm×10分、攪拌後脱泡 2100rpm×30秒)
<塗布条件1>
バーコーター:第一理化社製 No.16、
塗布膜厚:36.6μm(乾燥時25.4μm)、
乾燥条件:130℃×30分、
基板:石英ガラス(t2mm)、
塗布面積:50mm×50mm、
<シート抵抗測定器>
ロレスタGP MCP-T610型 三菱化学アナリテック社製、
測定条件:JIS K7194
<実験手順>
ステップ1.表11に示されるRate(3R)の異なるグラフェン前駆体をジアセトンアルコール(4-Hydroxy-4-methyl-2-pentanone)に上述した図8の装置を同様の条件で駆動して、グラフェン様黒鉛が10wt%となる分散液を得る。(分散条件3)
ステップ2.ステップ1.で得られたグラフェン分散液、メチルパラベン(Methyl 4-Hydroxybenzoate)、安定剤、ABを表11に示される割合で加え、撹拌条件3にて混合物3を得る。
ステップ3.混合物3をバーコーターを用いて塗布条件1で塗布し、JIS K7194に準拠して4探針法にてシート抵抗を測定する。
表11に示されるように、実施例12-1,12-2,12-3は、比較例12-1,12-2よりも、シート抵抗が低いことが観察された。また、Rate(3R)が23%の比較例12-1はグラフェン前駆体を加えない比較例12-2とシート抵抗が略同等であることが観察された。このことから、実施例12-1,12-2,12-3はグラフェン様黒鉛がABと共にシート抵抗の低下に十分に寄与していると推察される。また、Rate(3R)が31%以上のグラフェン前駆体を用いたグラフェンペースト(実施例12-1,12-2,12-3)は、同23%のグラフェンペースト(比較例12-1)に比較し、シート抵抗が急激に低下していることが判明した。
なお、本実施例では外乱要因を除外するため、基本的な素材のみで構成した。実用の導電性インク、ペーストにおいては、酸化防止剤や粘度調整剤、複数の導伝素材を添加し、インクとしての所望や、抵抗値を下げることが通常である。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
上述した実施例では、グラフェン前駆体を製造する製造装置として、ジェットミルとプラズマを用いる製造装置Aと、ボールミルとマイクロ波を用いる製造装置Bについて説明したが、マイクロ波、ミリ波、プラズマ、電磁誘導加熱(IH)、磁場などの電波的力による処理と、ボールミル、ジェットミル、遠心力、超臨界などの物理的力による処理とを併用すると、割合Rate(R3)が高い前駆体を得ることができるから好ましい。なお、物理的力による処理と電波的力による処理を併用して、物理的力による処理と電波的力による処理の個別の処理の種類は問わない。特に、製造装置A及びBのように、電波的力と物理的力とによる作用を同時に作用させることが好ましいが、電波的力と物理的力とを交互に所定間隔毎に作用させるようにしてもよい。さらに、電波的力について、例えば、マイクロ波とプラズマとによる処理など、異なる電波的力を、交互に施し、それと並行して1または2以上の物理的力による処理を施してもよい。また、物理的力についても、例えば、ジェットミルと超臨界による処理など、異なる物理的力を、交互に施し、それと並行して1または2以上の電波的力による処理を施してもよい。
例えば、伝導素材と黒鉛系炭素素材を分散させる母材としては次のものが挙げられる。ただし、母材は伝導素材や黒鉛系炭素素材よりも割合が小さくても良い。また、使用時には燃焼、酸化、気化、蒸発などにより消滅する場合もある。例えば、導電ペーストや導電インク等母材が揮発性の溶剤等の場合には母材が消滅する。母材に母材と伝動素材を含む場合もある。
正極活物質として、層状酸化物系活物質(LiCoO2、LiNiO2、Li(NixCoy)O2(ただしx+y=1)、Li(NixCoyAlz)O2、Li(NixMnyCoz)O2、Li(NixMny)O2、Li2MnO3-Li(NixMnyCoz)O2(ただしx+y+z=1)など))、オリビン系活物質(LiMPO4、Li2MPO4F、Li2MSiO4(ただしいずれもMはNi、Co、Fe、Mnより1つ以上選ばれる金属元素)、リチウム過剰系活物質、スピネル型正極活物質(LiMn2O4)などが挙げられる。
樹脂として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ABS樹脂(ABS)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリアミド/ナイロン(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリサルフォン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)などの熱可塑性樹脂が挙げられる。また、合成樹脂のうち熱硬化性樹脂または紫外線硬化樹脂として、エポキシ樹脂(EP)、フェノール樹脂(PF)、メラミン樹脂(MF)、ポリウレタン(PUR)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)など、導電性高分子として、PEDOT、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロールなど、繊維状のナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリオレフィン、ポリウレタン、レーヨンなどの繊維、エラストマーとしてイソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ポリイソブチレンゴム/ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM/EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロルヒドリンゴム(CO/ECO)など、熱硬化性樹脂系エラストマーとして、一部のウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)など、熱可塑性エラストマーとしてスチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、アミド系のエラストマーが挙げられる。
また、鉱油として、潤滑油、グリース、またゴム用配合油として、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、芳香族系鉱油などが挙げられる。
さらにとして、無極性のもととして、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、酢酸エチルなど、極性非プロトン性のもとして、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトニトリルなど、極性プロトン性のもとして、酢酸、エタノール、メタノール、水、1−ブタノール、2−プロパノール、ギ酸などが挙げられる。
伝導素材としては次の物が挙げられる。金属材料として、銀ナノ粒子、銅ナノ粒子、銀ナノワイヤ、銅ナノワイヤ、鱗片状銀、鱗片状銅、鉄粉、酸化亜鉛など。炭素素材として、カーボンブラック、カーボンファイバー、CNT、黒鉛、活性炭など。導電性高分子として、PEDOT、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロールなど。特に鎖状、ひも状、鱗片状の繊維物質が導伝においては良好である。
また、グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材を、製造するための天然黒鉛として、5mm以下の粒子の天然黒鉛材料(日本黒鉛工業製 鱗片状黒鉛 ACB−50)を例に説明したが、天然黒鉛は、鱗片状黒鉛であって、5mm以下に粉砕されているもので、Rate(3R)が25%未満かつ強度比P1/P2が0.01未満のものが入手しやすいという観点から好ましい。近年の技術開発により、人造で天然黒鉛の様な黒鉛(層状に結晶が重なったもの)を合成できるようになったため、グラフェン及びグラフェン様黒鉛の原料は天然黒鉛(鉱物)とは限らない。電池など、金属含有量をコントロールする必要のある用途に対しては、純度が高い人造黒鉛を用いることが好ましい。
なお、グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材は、一般的にグラフェン、グラフェン前駆体、グラフェンナノプレートレット(GNP)、フューレイヤーグラフェン(FLG)、ナノグラフェンなどと呼ばれているが、特に限定するものではない。
本発明は、伝導性を有する複合伝導素材を対象としており、その適用分野は問わない。なお、本発明において、伝導は、電気伝導、イオン伝導及び熱伝導の少なくとも一つを意味する。例えば下記の様な分野がある。
(1)電気伝導体(導電体)の例
(1−1)蓄電デバイス
(1−1−1)電池
リチウムイオン電池をはじめとする、電池の正極材、負極材などに用いる電気伝導素材であり、電気伝導とイオン伝導の双方が良いことが望ましい。電池を構成する材料として、以下の材料を例示するがこれらに限られない。
・正極活物質 :LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiFeO4、Li2FePO4F、Li(Cox,Niy,Mnz)O2
・導電助剤 :黒鉛粉末、アセチレンブラック、VGCF、CNT
・負極材料 :黒鉛粉末、ハードカーボン、活性炭、チタネイト(Li4Ti5O12)、Si
・電解液 :PC(ポリカーボネート)、EC(エチレンカーボネート)、DEC(ジエチルカーボネート)
・支持電解質 :LiPF6、LiBF4、LiTFSI
・集導体 :アルミ箔、銅箔、リチウム箔
(1−1−2)キャパシタ、コンデンサ
リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ、コンデンサなどのキャパシタ、コンデンサであり、電気伝導が良いことが望ましい。キャパシタ、コンデンサを構成する材料として、以下の材料を例示するがこれらに限られない。
・集電極:アルミ箔
・分極性電極:活性炭
・導電助材:カーボンブラック、CNT
・電解質:テトラエチルアンモニウムイオン、四フッ化ホウ素イオン、ビストリフルオロメチルスルフォニルイミド
・電解液:プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート
(1−2)導電性分散液
透明/不透明導電フィルム、電子回路基板(印刷、フォトエッチング)の導電デバイスに用いる導電性インク、導電性ペースト、導電性スラリーなどの導電性分散液であり、電気伝導が良いことが望ましい。導電性分散液を構成する材料として、以下の材料を例示するがこれらに限られない。
・溶剤:水、乾燥防止剤(グリセリン、グリコール等)、浸透剤(アルコール、グリコールエーテル等)、アルコール、NMP(N-メチルピロリドン)、DMF、トルエン、酢酸エチル、ケトン
・着色剤:染料、顔料
・樹脂:アクリル系ブロック共重合体、アクリル、マレイン酸、ロジン、エポキシ、シリコーン、ブチラール等の熱可塑性樹脂
・添加剤:pH調整剤、キレート化剤、界面活性剤、防菌防かび剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤
・導伝素材:黒鉛粉末、カーボンブラック(ケッチェンブラック、アセチレンブラック等)、カーボンファイバー、CNT(SWNT、MWNT)、金属微粉末(銅/銀ナノ粒子)、金属酸化物(ITO、亜鉛酸化物)、金属繊維(銅/銀ナノワイヤ)、導電性高分子(PEDOT、ポリアセチレン等)
(1−3)導電性コンポジット
導電・静電・帯電防止、電磁波遮断性などの導電性コンポジットであり、電気伝導が良いことが望ましい。導電性分散液を構成する材料として、以下の材料を例示するがこれらに限られない。
・電気伝導素材:金属として Fe,Ni。炭素材として、炭素繊維、等方性黒鉛、カーボンブラック。
・ポリマー種:PE、PP、PS、PC、PVC、ABS、PA6、PA66、PSS、PEEK、POM、エポキシ、天然ゴム、クロロプレンゴム、NBR、シリコーンゴム。
(2)熱的伝導性の例
(2−1)熱伝導性コンポジット
(2−1−1)伝熱性フィルム、伝熱ポリマーなどのヒートシンク
局所的な熱を逃がすことで、混合物の耐熱時間を上げることができる、ヒートシンクであり、熱伝導が良いことが望ましい。ヒートシンクを構成する材料として、以下の材料を例示するがこれらに限られない。
・伝導素材:金属として Cu, Al, W。炭素材として、炭素繊維、等方性黒鉛。
・ポリマー種:PE、PP、PS、PC、PVC、ABS、PA6、PA66、PSS、PEEK、POM、エポキシ、天然ゴム、クロロプレンゴム、NBR、シリコーンゴム。
(2−1−2)放熱グリス、ペースト
被放熱対象と(2―1−1)の様なヒートシンクとの間をつなぐ素材である放熱グリス、ペーストであり、熱伝導が良いことが望ましい。放熱グリス、ペーストを構成する材料として、以下の材料を例示するがこれらに限られない。
・溶剤:シリコーングリース(ポリシロキサン化合物)
・導伝剤:酸化亜鉛、銀ナノ粒子、ナノダイヤモンド、カーボンブラック、シリコンナノ粒子
51 アルミ箔
52 正極活物質 (母材)
53 AB (伝導素材)
54 グラフェン様黒鉛

Claims (17)

  1. 母材に少なくとも黒鉛系炭素素材から剥離されたグラフェン様黒鉛と伝導素材とが分散された複合伝導素材であって、
    前記黒鉛系炭素素材は、菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し、前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が31%以上であることを特徴とする複合伝導素材。
    Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)
    ここで、
    P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度
    P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度
    前記グラフェン様黒鉛は、前記黒鉛系炭素素材から一部又は全部が剥離されてなる、前記黒鉛系炭素素材からグラフェンまでの混在物であり、
    前記グラフェンは平均サイズが100nm以上の結晶であって、かつ層数が10層以下の薄片状又はシート状のもの
    である。
  2. 前記伝導素材は、ひも状、直鎖状、線状又は鱗片状の微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の複合伝導素材。
  3. 前記微粒子はアスペクト比が5以上であることを特徴とする請求項2に記載の複合伝導素材。
  4. 前記伝導素材に対する前記黒鉛系炭素素材の重量比は、1/50以上10未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合伝導素材。
  5. 前記母材は、電池の活物質であることを特徴とする請求項1に記載の複合伝導素材。
  6. 前記活物質は正極の活物質であることを特徴とする請求項5に記載の複合伝導素材。
  7. 前記母材は、ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の複合伝導素材。
  8. 前記母材は、使用時には消滅する材料であることを特徴とする請求項1に記載の複合伝導素材。
  9. 請求項1に記載の前記複合伝導素材を用いたことを特徴とする蓄電デバイス。
  10. 請求項1に記載の前記複合伝導素材を用いたことを特徴とする導電性分散液。
  11. 請求項1に記載の前記導電性分散液を用いて、塗布または印刷されたことを特徴とする導電デバイス。
  12. 請求項1に記載の前記複合伝導素材を用いたことを特徴とする導電性コンポジット。
  13. 請求項1に記載の前記複合伝導素材を用いたことを特徴とする熱伝導性コンポジット。
  14. 母材に少なくとも黒鉛系炭素素材及び伝導素材を混錬するステップを含む複合伝導素材の製造方法であって、
    前記黒鉛系炭素素材は、菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し、前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が31%以上であることを特徴とする複合伝導素材の製造方法。
    Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)
    ここで、
    P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度、
    P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度
    である。
  15. 前記伝導素材は、ひも状、直鎖状、線状又は鱗片状の微粒子であることを特徴とする請求項14に記載の複合伝導素材の製造方法。
  16. 前記微粒子はアスペクト比が5以上であることを特徴とする請求項14に記載の複合伝導素材の製造方法。
  17. 前記伝導素材に対する前記黒鉛系炭素素材の重量比は、1/50以上10未満であることを特徴とする請求項14又は15に記載の複合伝導素材の製造方法。
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