JP5776357B2 - ヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水の処理方法 - Google Patents

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本発明は、ヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水の処理方法に関する。特にヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水を、均一系触媒により安定的にかつ効率良く処理することの可能なヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水の処理方法に関する。
ヒドラジンを含有する排水の処理方法として、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤によりヒドラジンを酸化分解する方法、酸素含有ガスで曝気処理してヒドラジンを酸化分解する方法、活性炭に通水してヒドラジンを除去する方法などが提案されている。曝気処理方法として、例えば、特許文献1には、効率よくヒドラジン類を除去するとともに、二次公害を発生させることのないヒドラジン類含有水の処理方法として、ヒドラジン類を含む水を酸化槽において銅化合物の存在下に空気と接触させ、次いでろ過により固液分離を行い、処理水は系外へ排出する一方、固形分は再度酸化槽に返送するヒドラジン類含有水の処理方法が提案されている。
また、特許文献2には、排水中のヒドラジンをイオン交換樹脂によって除去する前処理工程として有用なヒドラジン含有排水の処理方法として、ヒドラジン含有排水中に、金属銅又は銅塩溶液の存在下で散気させてヒドラジンを分解除去する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載された方法は、ヒドラジンに加えてキレート形成有機化合物を含む排水に適用すると、ヒドラジンの酸化分解が十分に進行しないことが分かった。
ヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水は、半導体製造工程排水、ボイラーブロー水、無機化学工業排水などとして排出されるので、キレート形成有機化合物が共存する場合でも、酸素含有ガスによりヒドラジンを効果的に酸化分解し得る排水の処理方法が必要である。
そこで、このような課題を解決する技術として、特許文献3には、ヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水に、金属イオン10〜1000mg/Lを添加し、空気の吹込みなどによる酸素含有ガスでヒドラジンを酸化分解する方法が開示されている。
特開昭56−136695号公報 特開昭57−27913号公報 特開2003−39083号公報
しかしながら、特許文献3に記載された方法でヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水に適用した場合には、まず、高濃度にヒドジンを含有する排水に金属イオンを添加すると、条件によっては金属イオンが還元されて金属状態となって触媒活性が低下し、極端な場合には触媒としての機能が失活する場合がある、という問題点がある。また、ヒドラジンの酸化分解は発熱反応であり、高濃度のヒドラジンを処理する場合、ヒドラジンの濃度がある程度低くなるまでは液温が上昇する一方、ヒドラジンの濃度が低くなると反応熱による温度上昇よりも空気の吹き込みによる温度の低下のほうが大きくなり、液温が低下することになり、温度傾向が一定でないため反応が安定せず、温度の監視や冷却装置が必要となる、という問題点がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水を、安定的にかつ効率良く処理することの可能なヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水の処理方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、ヒドラジンとキレート形成有機化合物を含み、ヒドラジン濃度が3000mg/Lを超える排水の処理方法であって、該排水に均一系触媒を添加し、酸素含有ガスでヒドラジンを酸化分解することにより排水中のヒドラジン濃度を低減する第一の酸化処理工程と、前記第一の酸化処理工程の一次処理水に前記排水を添加して処理原水を調製し、この処理原水に均一系触媒を添加し、酸素含有ガスでヒドラジンを酸化分解して処理水を得る第二の酸化処理工程とを有することを特徴とするヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水の処理方法を提供する(発明1)。
かかる発明(発明1)によれば、第一の酸化処理工程において、ヒドラジン濃度が3000mg/Lを超えるヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水に、硫酸銅などの均一系触媒を添加して曝気処理することにより、ある程度の濃度にまでヒドラジンを酸化分解する。次いで、第二の酸化処理工程により、このヒドラジンの濃度がある程度低下した一次処理水に前記排水を添加してヒドラジンの濃度を制御して処理原水を調製し、この処理原水にさらに均一系触媒を添加して曝気処理することにより、温度上昇を抑制してヒドラジンを安定的にかつ効率良く処理して処理水を得ることができる。
上記発明(発明1)においては、前記処理原水中のヒドラジン濃度が3000mg/L以下であるのが好ましい(発明2)。
かかる発明(発明2)によれば、ヒドラジン濃度が3000mg/L以下の処理原水に均一系触媒を添加して曝気処理することにより、温度上昇を抑制してさらに効率よくヒドラジンを安定的に酸化分解することができる。
上記発明(発明1,2)においては、前記一次処理水への前記排水の添加を前記均一系触媒による酸化反応の進行に応じて設定するのが好ましい(発明3)。
かかる発明(発明3)によれば、前記第一の酸化処理工程でのヒドラジンの酸化分解による残留ヒドラジン濃度に応じて、一次処理水への排水の添加量を制御することで、所定のヒドラジン濃度以下の原水を処理することができるので、ヒドラジンを安定的に酸化分解することができる。
本発明のヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水の処理方法によれば、第一の酸化処理工程において、ヒドラジン濃度が3000mg/Lを超えるヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水に、硫酸銅などの均一系触媒を添加して曝気処理することにより、ある程度の濃度にまでヒドラジンを酸化分解する。次いで、第二の酸化処理工程により、このヒドラジンの濃度がある程度低下した一次処理水に前記排水を添加してヒドラジンの濃度を制御して処理原水を調製し、この処理原水にさらに均一系触媒を添加して曝気処理することにより、温度上昇を抑制してヒドラジンを安定的にかつ効率良く処理して処理水を得ることができる。
このような効果が得られるのは以下のような理由による。すなわち、空気等の酸素含有ガスでヒドラジンを酸化分解する場合、ヒドラジンの処理を効率良く行うには、銅イオン等を放出する均一系触媒が使用することが多い。しかしながら、均一系触媒を高濃度にヒドラジンを含有する排水に添加すると、均一系触媒に起因する金属イオンが還元されて金属となり、触媒活性が大きく低下する。この結果、下記式(1)に示すヒドラジンの酸化分解反応が進行せず、ヒドラジン処理が不良となると考えられる。
+O → N+2HO ΔH=−622kJ/mol・・・(1)
(触媒)
なお、上述したような処理の後は、残留する酸化剤を還元剤で還元処理し、得られた処理水から金属イオンを除去したのち、BOD成分を生物処理等で除去することにより、ヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水から有害物を除去して良好な水質の処理水を得ることができる。
本発明の一実施形態に係るヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水の処理方法を実施可能なシステムを示す系統図である。
以下、図1を参照して本実施形態のヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水の処理方法について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水の処理方法を実施可能なシステムを示す系統図である。
図1において、1はヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水Wを導入するための反応槽であり、2は均一系触媒の供給手段である。そして、反応槽1の底部には、送風機3に接続した散気管4が設けられている。
上述したような構成の処理システムにおいて、排水Wとしては、3000mg/Lを超える高濃度でヒドラジンを含有するものである。ヒドラジンの濃度が3000mg/L以下では、本実施形態の方法による効果が十分に発揮できない。なお、キレート形成有機化合物に含有率については、1000〜20000mg/L含有するのが一般的である。また、排水WのpHは、高アルカリであるのが普通であり、例えばpH13以上である。
また、本実施形態において、均一系触媒とは、反応系(水)に均一に分散するイオンを放出する酸化触媒であり、銅イオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオンなどを放出するものであり、これら金属の硫酸塩、塩酸塩などを用いることができる。具体的には、硫酸銅、塩化銅、硫酸ニッケル、塩化ニッケル等の水溶液を用いることができる。これらの中で、硫酸銅(銅イオン)は、ヒドラジンの酸化分解を顕著に速める効果を有するので特に好適に用いることができる。排水中にキレート形成有機化合物が存在するとき、銅イオンはキレート錯体を形成するので、高pHのアルカリ性であっても、水中に高濃度で存在することができる。
次に上述したようなシステム及び均一系触媒を用いて排水Wを処理する本実施形態の方法について以下説明する。
(第一の酸化処理工程)
まず、反応槽1に排水Wを所定量充填したら、必要に応じて硫酸などの酸を添加することでpHを9〜13、特に10〜12に調整する。排水WのpHが9未満であるか、あるいはpHが13を超えると、ヒドラジンの酸化分解速度が低下するおそれがあるため好ましくない。続いて、送風機3により反応槽1の底部に設けた散気管4から酸素含有ガスとしての空気を送って、均一系触媒の供給手段2から上述した均一系触媒(金属イオン)を添加する。具体的な操作としては、水溶性の金属塩又は金属塩の水溶液を添加し均一に混合する。これによりヒドラジンを酸化分解して、一次処理水W1とする。
上記酸素含有ガス(空気)の吹き込み量は、排水1m当り1〜10m/分であることが好ましく、特に1.5〜5m/分であるのが好ましい。酸素含有ガスの吹き込み量が排水1m当り1m未満であると、均一系触媒と排水Wとの混合が均一に行われなくなるおそれがある一方、酸素含有ガス(空気)の吹き込み量が、排水1m当り10mを超えると、反応槽1の容積と酸素吹き込み動力が過大になり、酸素含有ガスと排水Wの気液接触効率が低下するおそれがある。
均一系触媒の供給手段2からの均一系触媒の添加量は、排水Wに対して均一系触媒10〜300mg/L(金属イオン寒換算)とすればよい。上述したような第一の酸化処理工程により、ヒドラジンの濃度を100mg/L以下にまで低下させる。
上述したような第一の酸化処理工程により、一次処理水W1は排水Wに対して
20〜60℃程度温度上昇する。
(第二の酸化処理工程)
次に第一の酸化処理工程の一次処理水W1に排水Wを添加して処理原水W2を調製する。具体的には、排水Wのヒドラジン濃度と一次処理水W1のヒドラジン濃度とに応じて、処理原水W2のヒドラジン濃度が好ましくは3000mg/L以下、特に2000mg/L以下となるように排水Wを添加する。その後は前述した第一の酸化処理工程と同じ操作を繰り返せばよい。具体的には、処理原水W2に必要に応じて硫酸などの酸を添加し、続いて送風機3により反応槽1の底部に設けた散気管4から空気を送って、均一系触媒の供給手段2から上述した均一系触媒(金属イオン)を添加する。これにより処理原水W2中のヒドラジンを酸化分解する。
上述したような第二の酸化処理工程の処理時間、すなわち処理原水W2の反応槽1における滞留時間は、目的とするヒドラジン除去量に応じて適宜選定することができるが、通常は0.1〜2.0時間であることが好ましく、特に0.4〜1.5時間であるのが好ましい。反応槽1での滞留時間が0.1時間未満であると、ヒドラジンの酸化分解が不十分となるおそれがある一方、2.0時間を超えてもそれ以上の効果の向上が得られずかえって処理効率が低下する。
上述したような第二の酸化処理工程により、ヒドラジンの濃度を100mg/L以下にまで低下した処理水W3を排出することができる。また、この処理水W3は、処理原水W2に対して10℃以下の温度上昇であり、第一の酸化処理工程より大幅に低減されるという効果も奏する。
(後処理工程)
上述したようにしてヒドラジンを酸化分解した処理水W3は、例えば、その後残留するヒドラジンを、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素などの酸化剤で酸化処理して除去した後、処理水W3をイオン交換樹脂、キレート樹脂などに接触させることで、処理水W3中の金属イオンを除去する。続いて、生物処理手段などにより、キレート形成有機化合物及びそれ以外のBOD成分を除去することで、良好な水質の処理水を得ることができる。
以上本実施形態のヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水Wの処理方法について説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の変形実施が可能である。
例えば、本実施形態においては、酸素含有ガスとして空気をそのまま用いたが、酸素富化空気を用いることもできる。また、酸素含有ガスの供給方法としては、散気管4による曝気に限らず、例えば、充填塔、濡れ壁塔、段塔、スプレー塔、スクラバー、気泡塔などを用いて、酸素含有ガスと金属イオンを添加した排水を接触させ、ヒドラジンを酸化分解することができる。
さらに、前記実施形態においては、回分式で処理を行ったが、連続式で処理することもできる。連続式の場合には、反応槽1を十分な反応時間(滞留時間)が確保できる容積とすればよい。
以下の具体的実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
〔比較例1〕
(第一の酸化処理工程)
ヒドラジン20000mg/Lとキレート形成有機化合物であるクエン酸12000mg/Lを含むpH13.7の半導体工場排水に、硫酸を加えてpHを約12に調整して排水Wとした。この硫酸を添加した排水の温度は56℃であった。次いで、この排水Wを20℃になるまで放置した後、反応槽1に130L供給し、送風機3により散気管4から排水W1Lに対して60L/hrで空気を吹き込み、空気曝気を行った。
そして、空気曝気を継続しながら、反応槽1に硫酸銅溶液を銅イオン濃度が排水Wに対して200mg/Lとなるように添加し、ヒドラジン濃度の経時変化を測定し、ヒドラジン濃度が100mg/Lに低減するまでの時間を求めた。この結果、約10時間経過後にヒドラジン濃度が100mg/Lとなった。また、単位時間当たりのヒドラジン処理量を算出したところ1990mg/hrであり、液温上昇の最大値は30℃であった。
〔実施例1〜3〕
(第二の酸化処理工程)
比較例1で処理した処理液を一次処理水W1とし、比較例1と同じ条件で空気曝気を継続しながら、排水Wを一次処理水W1に対して、5容積%(実施例1)、10容積%(実施例2)及び15容積%(実施例3)それぞれ添加して処理原水W2とした。これらの処理原水W2のヒドラジン濃度(初期N)を測定した結果を表1に示す。
次いで、この処理原水W2を20℃になるまで放置した後、空気曝気を継続しながら反応槽1に銅イオン濃度が排水Wに対して200mg/Lとなるように硫酸銅溶液を添加し、ヒドラジン濃度の経時変化を測定し、ヒドラジン濃度が100mg/Lに低減するまでの処理時間をそれぞれ求めた結果を表1に示す。また、単位時間当たりのヒドラジンの処理量(ΔN)を算出するとともには、液温上昇の最大値をそれぞれ計測した結果を表1にあわせて示す。
Figure 0005776357
表1から明らかなとおり、ヒドラジン濃度を3000mg/L以下に制御した実施例1〜3では、ヒドラジン濃度が100mg/Lに低減するまでの処理時間が、比較例1と比較して大幅に短縮された。これは、銅イオンの還元が抑制されて、ヒドラジンの酸化分解反応が促進されたためであると考えられる。また、温度上昇も大幅に少なかった。これにより、冷却装置が不要となり、樹脂ライニング等の適用が可能となり、材質選定が容易になる、という効果を奏する。これらの効果は、処理原水W2の初期N濃度が2000mg/L前後の実施例1、2で良好であり、特に初期N濃度が2000mg/L以下の実施例1で顕著であった。
1…反応槽
2…均一系触媒の供給手段
3…送風機(酸素含有ガス供給手段)
4…散気管(酸素含有ガス供給手段)
W…排水
W1…一次処理水
W2…処理原水
W3…処理水

Claims (2)

  1. ヒドラジンとキレート形成有機化合物を含み、ヒドラジン濃度が3000mg/Lを超える排水の処理方法であって、
    該排水に均一系触媒を添加し、酸素含有ガスでヒドラジンを酸化分解することにより排水中のヒドラジン濃度を低減する第一の酸化処理工程と、
    前記第一の酸化処理工程の一次処理水に前記排水を添加して処理原水を調製し、この処理原水に均一系触媒を添加し、酸素含有ガスでヒドラジンを酸化分解して処理水を得る第二の酸化処理工程とを有し、
    前記処理原水中のヒドラジン濃度が3000mg/L以下であることを特徴とする、ヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水の処理方法。
  2. 前記第一の酸化処理工程の一次処理水への前記排水の添加を前記均一系触媒による酸化反応の進行に応じて設定することを特徴とする請求項1に記載のヒドラジンとキレート形成有機化合物を含む排水の処理方法。
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