しかしながら、前述した従来のキャビネットでは、マグネットとマグネット受けとの吸着により内引出しは引出しと一体となって移動するため、引出しに収容された物を使用する場合でも、内引出しが引出しと同時に引き出される。このため、引出しの内部が見え難くなるという問題や、引出しに収容された物を取り出す場合に、一旦引き出された内引出しをキャビネットの本体内に押し込まなければならないという問題が生じる。また、マグネットを用いるため、価格が高くなるという問題も生じる。
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、内引出しを引出しとは別に引き出すことができるとともに、内引出しと連動できる引出しを安価に提供することである。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
前述した目的を達成するため、本発明に係るキャビネットの構成上の特徴は、内部に下側軌道形成部(24)と上側軌道形成部(24a)とが上下に設けられ、前面(21a)に引出し用開口(21e)が設けられたキャビネット本体(21)と、下側軌道形成部に沿って移動することによりキャビネット本体の内部から引出し用開口を通って外部に進退可能になった引出し(22)と、引出しの上方に配置され上側軌道形成部に沿って移動することによりキャビネット本体の内部から引出し用開口を通って外部に進退可能になり引出しよりも前後方向の長さが短い内引出し(23)と、内引出しの下面における前端から下方に突出する前側突出部(23g,26)と、内引出しの下面における後端から下方に突出する後側突出部(27)と、引出しの後端または後端近傍に備わって、引出しがキャビネット本体から外部に引き出されるときに前側突出部に当接して内引出しを前方に移動させ、引出しがキャビネット本体内に押し込まれるときに後側突出部に当接して内引出しを後方に移動させる後側係合部とを備え、後側係合部を、引出しの後面板(22c)と、下端部が後面板に固定され上端部が内引出しの近傍まで延びる係合片(25)とで構成して、係合片と後側突出部との正面視による位置が重ならないようにするとともに、引出しがキャビネット本体内に押し込まれるときに後側突出部が後面板に当接するようにしたことにある。
本発明に係るキャビネットでは、引出しが下側軌道形成部に沿って移動することにより、キャビネット本体の内部から外部に進退可能になり、内引出しが上側軌道形成部に沿って移動することにより、キャビネット本体の内部から外部に進退可能になっている。そして、内引出しの下面前端に前側突出部が設けられ、引出しの後端または後端近傍に後側係合部が設けられている。ここで、後側係合部が設けられる引出しの後端近傍とは、引出しの前面板の上端を通って底面板と後面板とで形成される入り隅部を通る仮想平面を設置したとき、この仮想平面と後面板の上端に位置する仮想水平面との交線よりも後側の領域を言う。このため、引出しと内引出しとがキャビネット本体内に収容された状態から引出しを外部に引き出していくと、始めは引出しだけが移動して、内引出しは静止した状態を維持する。このため、引出しを引き出しながら引出しの内部の収容物を見ることができる。また、引出しを全て引き出しても引出しが内引出しで隠れないので、内部の収容物を確認できる。
そして、引出しの後端が内引出しの前端に近づいて後側係合部が前側突出部に当接すると、内引出しが移動し始めて、それ以後、内引出しは引出しとともに前方に移動する。このときに、内引出しが引出しに引っ張られて移動するときの移動距離は、引出しが外部に出きったときに内引出しの前端がキャビネット本体の前面またはそれよりも僅かに前方に位置するまでの距離に設定しておけばよい。内引出しの前端がキャビネット本体の前面またはそれよりも僅かに前方に位置すると、内引出しを手で操作することができる。このため、引出し内の収容物を使用する場合には、それを取り出して使用することができる。また、内引出し内の収容物を使用する場合には、さらに、内引出しを引き出して引出しの上方に位置させることにより、内引出し内の収容物を取り出して使用することができる。
また、内引出しの下面後端には、引出しに備わっている後側係合部に当接可能な後側突出部が設けられている。このため、内引出しは、後側突出部が後側係合部に当接するまで前方に引き出すことができる。また、引出しと内引出しとをキャビネット本体の内部に収容する場合には、引出しをキャビネット本体内に押し込むことにより、後側係合部が後側突出部を押して、内引出しは引出しとともにキャビネット本体内に移動していく。
この場合、最初から後側係合部と後側突出部とが当接していれば、内引出しは引出しと一緒に移動し、後側係合部と後側突出部とが離れていれば、引出しが移動して後側係合部が後側突出部に当接するまでは内引出しは静止して、後側係合部が後側突出部に当接したのちに、内引出しは引出しと一緒に移動し始める。すなわち、内引出しが引き出されるときには、後側係合部の前面が内引出しの前側突出部に当接し、内引出しが押し込まれるときには、後側係合部の後面が内引出しの後側突出部に当接する。このように、前側突出部や後側突出部に、後側係合部を当接させるだけで、内引出しを連動できるので、マグネットのような高価な部材を用いる必要が無くなるため安価である。
また、引出しの後端または後端近傍に後側係合部が位置して、内引出しの後端に後側突出部が位置し、内引出しの前後方向の長さが引出しよりも短くなっているため、引出しと内引出しとがどのように位置していても、引出しの前部の上方には内引出しが位置しなくなる。このため、引出しの前部には、一升瓶のように高さが高いものを収容し、引出しの後部には高さの低いものを収容することができる。また、内引出しには、フライパンやなべの柄が内引出しの前端から前方に突出するようにして収容することができる。この場合、引出しの前面を構成する前面板の後面(内面)に、板状またはシート状の保護部を取り付けておくことが好ましい。
また、本発明に係る下側軌道形成部と上側軌道形成部とは、レール部材で構成してもよいし、レールをガイドするローラや棒状のガイド部材等で構成してもよい。さらに、引出しの後側係合部は、一体からなる一部品で構成してもよいし、複数部品で構成してもよい。例えば、後側係合部を、一部品で構成する場合には、引出しの後面板の上端部を上方に延ばして、内引出しの前側突出部や後側突出部に当接させることができる。また、内引出しの前側突出部や後側突出部を引出しの後面板に当接できる位置まで延ばしてもよい。後側係合部を、複数部品で構成する場合には、引出しの後端から上方に向けて板状部材を延ばすことにより、内引出しの前側突出部と当接して内引出しを前方に移動させる後側係合片を形成するとともに、引出しの後面板で内引出しの後側突出部を当接させて内引出しを押し込むようにさせてもよい。
本発明に係るキャビネットの他の構成上の特徴は、内引出しの前面を構成する前面板(23a)の下端を内引出しの底面よりも下方に延ばして前側突出片(23g)を形成するとともに、前側突出片の後面に前側衝撃緩和部(26)を設け、前側突出片と前側衝撃緩和部とで前側突出部を構成したことにある。
本発明によると、引出しをキャビネット本体から引出す際に、引出しを強く引っ張って後側係合部が前側突出部に勢いよく衝突しても、前側突出部の後部が前側衝突緩和部で構成されているため、その衝撃は前側衝突緩和部によって緩衝される。このため、後側係合部と前側突出部とが繰り返し衝突しても、引出しや内引出しに破損が生じ難くなる。また、内引出しの前面板を下方に延ばすことによって、前側突出片を形成するため、前側突出片を形成するために別途、部材を設ける必要がなくなる。
本発明に係るキャビネットのさらに他の構成上の特徴は、内引出しの後端部から下方に突出する後側突出片(27a)を設けるとともに、後側突出片の前面に後側衝撃緩和部(27b)を設け、後側突出片と後側衝撃緩和部とで後側突出部を構成したことにある。
本発明によると、引出しをキャビネット本体内に押し込む際に、引出しを強く押して後側係合部が後側突出部に勢いよく衝突しても、後側突出部の前部が後側衝突緩和部で構成されているためその衝撃は後側衝突緩和部によって緩衝される。このため、後側係合部と後側突出部とが繰り返し衝突しても、引出しや内引出しに破損が生じ難くなる。また、キャビネット本体の後面板と内引出しとの間にも衝撃緩和部を設けておくことが好ましい。これによると、勢いよく後退した内引出しがキャビネット本体の後面板に強く衝突することを防止できる。
以下、本発明の一実施形態に係るキャビネットを図面を用いて詳しく説明する。図1は、同実施形態に係るキャビネット20を備えたシステムキッチン10を示している。このシステムキッチン10は、正面から見た状態で、キャビネット20の左側にコンロキャビネット11を組み付け、キャビネット20の右側にシンクキャビネット12を組み付け、さらにシンクキャビネット12の右側に食器洗浄乾燥機キャビネット13を組み付けて構成されている。
そして、システムキッチン10の上面部はカウンター14で構成されており、コンロキャビネット11の上部におけるカウンター14の部分には、コンロ台15が設けられ、シンクキャビネット12の上部におけるカウンター14の部分には、水栓16aを備えたシンク16が設けられている。また、コンロキャビネット11には引出し11aが設けられ、シンクキャビネット12には引き出し12a,12bが設けられている。そして、食器洗浄乾燥機キャビネット13には食器洗浄乾燥機が内臓されている。
なお、以下の説明において、前後、左右、上下の各方向は、図1に基づいたものとし、図1の手前(正面)側を前方、奥側を後方とする。キャビネット20は、図2ないし図7に示したように、キャビネット本体21、引出し22、内引出し23、下部引出し31および上部引出し32で構成されている。キャビネット本体21は、前面板21a、左右の側面板21b(一方しか図示せず)、後面板21cおよび底面板21dを箱状に組み付けて構成されており、前面板21aの下方には大きな引出し用開口21eが形成されている。
左右の側面板21bの下方部には、引出し22に対応して互いに平行して前後に延びる一対の下側レール支持部24(一方しか図示せず)が設けられている。また、下側レール支持部24の上方で左右の側面板21bには、内引出し23に対応して互いに平行して前後に延びる一対の上側レール支持部24a(一方しか図示せず)が設けられている。下側レール支持部24と、上側レール支持部24aとはそれぞれ断面形状がコ字状のレール部材とローラとを組み付けて形成されており、下側レール支持部24で、本発明に係る下側軌道形成部が構成され、上側レール支持部24aで、本発明に係る上側軌道形成部が構成される。
引出し22は、本発明に係る引出しを構成するもので、前面板22a、左右の側面板22b(一方しか図示せず)、後面板22cおよび底面板22dを箱状に組み付けて本体部分が構成され、その本体部分に、一対のガードパイプ22eと係合片25とが設けられている。前面板22aは、前面が化粧面に形成された正面視が略正方形の板で構成されており、後面には保護プレート40が取り付けられている。この保護プレート40は、内引出し23に収納したフライパンや鍋の柄が前面板22aに当たり前面板22aが傷つくことを防止する。この保護プレート40は、ポリエチレン製の四角形の板からなっており、四隅がねじによって前面板22aに固定されている。なお、この保護プレートは前面板22aの後面の高さ方向中間部に設置され、前面板22aの一部を覆っているが、前面板22aの全体を覆うようにしてもよい。また、前面板22aの前面における上部には、左右に延びる凹部からなる取っ手22gが形成されている。
後面板22cは、左右の幅が前面板22aよりも短く、高さが前面板22aの1/2よりもやや低い長方形の板で構成されている。この後面板22cと係合片25とで本発明に係る後側係合部が構成される。側面板22bは、高さが後面板22cの略1/2程度で、前後の長さが側面板21bよりも少し短くなっている。この側面板22bの左右両側面の下部には、下側レール支持部24に摺動可能に係合する下側レール22fがそれぞれ設けられている。また、底面板22dは、前面板22a、左右の側面板22bおよび後面板22cで形成される枠体の下端開口を塞げる大きさの板で構成されている。
ガードパイプ22eは、引出し22の左右両側に設けられており、一方のガードパイプ22eは、後面板22cの上端左端と前面板22aの左端における上下方向の中央近傍部分とに掛け渡され、他方のガードパイプ22eは、後面板22cの上端右端と前面板22aの右端における上下方向の中央近傍部分とに掛け渡されている。この一対のガードパイプ22eは、互いに平行するとともに高さを一定にして前後方向に延びている。係合片25は、細長い金属板で構成されており、下端部が後面板22cの左右方向の中央部に固定されて上端部が内引出し23の近傍まで延びている。この係合片25と後面板22cで本発明に係る後側係合部が構成される。
内引出し23は、左右の幅が引出し22の前面板22aを除いた部分と同じで、前後および上下の長さがそれぞれ引出し22よりも短くなっている。また、内引出し23は、引出し22とともにキャビネット本体21内に収容されたときに引出し22の上部空間に位置(図2参照)するように設置されており、引出し22とは独立して移動可能になっている。この内引出し23は、前面板23a、左右の側面板23b(一方しか図示せず)、後面板23cおよび底面板23dを箱状に組み付けて本体部分が構成され、その本体部分に、一対のガードパイプ23e、ダンパー26および後側突出部27が設けられている。
前面板23aは、左右に長く上下に短い長方形の薄い板で構成されており、後面板23cは、左右の幅が前面板23aと同じで、高さが前面板23aよりもやや低い長方形の薄い板で構成されている。そして、側面板23bは、高さが後面板23cの略1/2程度で、前後の長さが側面板22bよりも短くなっている。この側面板23bの左右両側面の下部には、上側レール支持部24aに摺動可能に係合する上側レール23fがそれぞれ設けられている。
また、側面板23bは、それぞれ前面板23aと後面板23cとの上部に掛け渡されており、底面板23dは、前面板23a、左右の側面板23bおよび後面板23cで形成される枠体の下端開口を塞げる大きさの板で構成されている。また、前面板23aの下端部23gは、底面板23dの下面よりも下方に突出している。ガードパイプ23eは、内引出し23の左右両側に平行して設けられている。各ガードパイプ23eは、側面板23bの後部側部分から上方に延びた後に屈曲して前方に延びた部分と、側面板23bの前部側部分から上方に延びて、前方に延びた部分の前端部に連結された部分とからなっており、略コ字状に形成されている。
ダンパー26は、前面板23aの下端部23gにおける左右方向の中央部分に設けられており、引出し22の係合片25に当接可能な位置に設置されている。このダンパー26は、底面板23dの下面に沿って延びており、下端部23gの後面に固定され先端を後方に向けた筒状の本体と、筒状本体の内部に設けられ後方に向かって伸縮可能なばね部材を備えた伸縮部と、伸縮部の先端に設けられた円板状の当接部とで構成されている。なお、下端部23gで、本発明に係る前側突出片が構成され、ダンパー26で本発明に係る前側衝撃緩和部が構成される。また、下端部23gとダンパー26とで本発明に係る前側突出部が構成される。
後側突出部27は、後面板23cにおける左右方向の一方側に設けられており、引出し22の後面板22cに当接可能な状態で設置されている。この後側突出部27は、後側突出片27aと衝撃緩和シート27bとで構成されている。後側突出片27aは、細長い金属板で構成されており、上端部が底面板23dに固定されて下端部が引出し22の後面板22cに当接できる位置まで延びている。
ここで、後側突出部27は、正面視で係合片25と重ならない位置に設けられている。内引出しの後側突出部27と引出しの係合片が重ならないので、施工のときに引出しをキャビネット内に設置した後、内引出しをキャビネット内に設置し易い。また、衝撃緩和シート27bは、EPDMなどのゴム系材料を独立発泡させたスポンジ状のシートからなっており、シールによって後側突出片27aの前面に貼り付けられている。この衝撃緩和シート27bで、本発明に係る後側衝撃緩和部が構成され、後側突出片27aと衝撃緩和シート27bとで本発明に係る後側突出部が構成される。
以上のようにして、引出し22と内引出し23とを構成したため、引出し22の前部の上方は、常時内引出し23から開放された状態になり、図2に示したように、引出し22と内引出し23とがキャビネット本体21内に収容されているときでも、引出し22の前部には高さの高い物を収容することができる。このため、高さの高い収容物を収容するスペースに応じて、引出し22と内引出し23との前後方向の長さを設定することができる。すなわち、引出し22における高さの高い収容物を収容するスペースの前後方向の長さと、内引出し23の前後方向の長さとの合計長さが、引出し22の前後方向の長さになる。
また、キャビネット本体21の後面板21cにおける内引出し23の後面板23cに対向する部分には、ダンパー28が取り付けられている。このダンパー28は、前述したダンパー26と形状は異なっているが、基本的な構造は同じであり、後面板21cの前面に固定された本体と、本体から前方に向かって伸縮可能なばね部材を備えた伸縮部と、伸縮部の先端に設けられた当接部とで構成されている。また、下部引出し31は、引出し22の下方で、レール支持部(図示せず)に沿って移動することにより、キャビネット本体21の内部から外部に進退できるように設置され、上部引出し32は、引出し22の上方で、レール支持部(図示せず)に沿って移動することにより、キャビネット本体21の内部から外部に進退できるように設置されている。
このようにキャビネット20を構成したため、引出し22、内引出し23、下部引出し31および上部引出し32に、それぞれ好みの物を収容することができる。また、引出し22の前部に、一升瓶のように高さが高いものを収容したり、内引出し23に柄を前方に突出させてフライパンを収容したりすることができる。そして、引出し22内の収容物を取り出す場合には、図2に示したように、引出し22等のすべての引出しをキャビネット本体21内に収容した状態から、取っ手22gに指を入れて引出し22を手前に引っ張る。これによって、引出し22は、下側レール支持部24に沿って移動し、引出し用開口21eから外部に突出していく。
そして、図3に示したように、引出し22の後端の係合片25が内引出し23のダンパー26に当接すると、それまで静止していた内引出し23は引出し22と一緒に移動し始める。この内引出し23は上側レール支持部24aに沿って移動する。そして、図4に示したように、引出し22が前端まで出切ったときには、内引出し23の前端面は、キャビネット本体21の前面よりも僅かに前方に突出した状態になる。このとき、引出し22の上方は大きく開放されているため、引出し22内の収容物を取り出して使用することができる。
また、内引出し23に収容された収容物を使用する場合には、図4に示した状態から前面板23aを持って、内引出し23を手前に引っ張る。このとき、内引出し23は、後側突出部27が引出し22の後面板22cに当接するまで前方に移動できる。これによって、図5に示したように、内引出し23の上方は開放された状態になり、内引出し23内の収容物を取り出して使用することができる。
また、引出し22を引き出す際に、引出し22の移動の勢いで係合片25がダンパー26に強く当接しても、ダンパー26によってその衝撃は緩和される。さらに、内引出し23を引き出す際に、内引出し23の移動の勢いで後側突出部27が後面板22cに強く当接しても、衝撃緩和シート27bによってその衝撃は緩和される。また、引出し22や内引出し23が移動する際に、一升瓶やフライパンが搖動して前面板22aに衝突しても保護プレート40によって前面板22aに傷がつくことが防止される。
引出し22や内引出し23からの収容物の取り出しが終了すると、引出し22の前面板22aを後方に押して、引出し22をキャビネット本体21内に押し込む。このとき、図5に示したように、内引出し23もキャビネット本体21から引き出されていれば、図6に示したように、引出し22と内引出し23とは一緒に後退していく。また、図4に示したように、内引出し23がキャビネット本体21内に位置していれば、図7に示したように、後面板22cが後側突出部27に当接するまでは、引出し22だけが後退し、後面板22cが後側突出部27に当接した後は、引出し22と内引出し23とが一緒に後退していく。そして、図2の状態に戻る。
この場合も、引出し22が後退するときに、後面板22cが後側突出部27に強く当接しても、衝撃緩和シート27bによってその衝撃は緩和される。また、内引出し23がキャビネット本体21の奥に押し込まれるときには、内引出し23の後端部がダンパー28に当接することによって、内引出し23が衝撃を受けることを防止される。
このように、本実施形態に係るキャビネット20では、引出し22と内引出し23とがキャビネット本体21内に収容された状態から引出し22を外部に引っ張っていくと、始めは引出し22だけが移動して、内引出し23は静止した状態を維持する。このため、引出し22だけを引き出しながら引出し22内の収容物を確認することができる。そして、引出し22の後端が内引出し23の前端に近づいて係合片25がダンパー26に当接すると、内引出し23が移動し始めて、それ以後、内引出し23は引出し22とともに移動する。
このため、引出し22内の収容物を使用する場合には、内引出し23をキャビネット本体21内に位置させ、引出し22だけをキャビネット本体21から引き出した状態で、その収容物を取り出して使用することができる。また、内引出し23内の収容物を使用する場合には、引出し22だけをキャビネット本体21から引き出した状態から、さらに、内引出し23を手前に引っ張ることにより、内引出し23をキャビネット本体21内から引出して、引出し23内の収容物を取り出し使用することができる。
また、引出し22と内引出し23とをキャビネット本体21内に収容する場合には、引出し22をキャビネット本体21内に押し込むことにより、引出し22の後面板22cが後側突出部27を押すため、内引出し23は引出し22とともにキャビネット本体21内に収容される。さらに、引出し22の前面板22aの後面には、保護プレートが取り付けられている。このため、引出し22の前部に一升瓶を収容したり、内引出し23にフライパンを収容したりして、引出し22や内引出し23が移動する際に、一升瓶やフライパンが搖動して前面板22aに衝突しても、保護プレートによって前面板22aに傷がつくことが防止される。
また、前述した実施形態によると、引出し22をキャビネット本体21から引出す際に、引出し22を強く引っ張って係合片25がダンパー26に勢いよく衝突しても、その衝撃はダンパー26によって緩和される。このため、引出し22や内引出し23に破損が生じ難くなる。さらに、内引出し23をキャビネット本体21から引出す際に、内引出し23を強く引っ張って後側突出部27が引出し22の後面板22cに勢いよく衝突しても、その衝撃は、後側突出部27の前面に位置する衝撃緩和シート27bによって緩和される。これによっても、引出し22や内引出し23に破損が生じ難くなる。
また、引出し22をキャビネット本体21内に押し込む際に、引出し22を強く押して引出し22の後面板22cが後側突出部27に勢いよく衝突したときにも、その衝撃は衝撃緩和シート27bによって緩和される。さらに、キャビネット本体21の後面板21cにおける内引出し23に対向する部分にもダンパー28が設けられているため、勢いよく後退した内引出し23がキャビネット本体21の後面板21cに強く衝突することを防止できる。
また、本発明に係るキャビネットは、前述した実施形態に限定するものでなく、適宜、変更して実施することが可能である。例えば、前述した実施形態では、キャビネット本体21の側面板21bに設けた下側レール支持部24で下側軌道形成部を構成し、引出し22に下側レール22fを設けているが、側面板21bにレール部材を設け、引出し22にレール支持部を設けてもよい。同様に、前述した実施形態では、キャビネット本体21の側面板21bに設けた上側レール支持部24aで上側軌道形成部を構成し、内引出し23に上側レール23fを設けているが、側面板21bにレール部材を設け、内引出し23にレール支持部を設けてもよい。
また、前述した実施形態では、係合片25と引出し22の後面板22cとで後側係合部を構成しているが、係合片25を省略して、後面板22cの上端部を上方に延長してもよい。また、内引出し23の後側突出部27を、係合片25に当接できる位置に設置することもでき、この場合、後側突出部27の下端部は、係合片25の上部に当接できる位置まで延びていればよい。さらに、係合片25を省略して、前側突出部を後面板22cに当接できる位置まで延ばしてもよい。この場合、前側突出部は、内引出し23の側面側に設けることで、引出しの高さ方向の収納スペースが少なくなることを防ぐことができる。また、前述した実施形態では、内引出し23の前面板23aを下方に延ばして下端部23gからなる前側突出片を構成しているが、この前側突出片としては、前面板23aまたは底面板23dに別部材を設けることによって構成してもよい。
さらに、ダンパー26は、下端部23gでなく係合片25に設けてもよいし、衝撃緩和シート27bは、後側突出片27aでなく引出し22の後面板22cに設けてもよい。また、ダンパー28も、キャビネット本体21の後面板21cでなく内引出し23の後部に設けてもよい。さらに、ダンパー26,28に代えて衝撃緩和シートを用いてもよいし、衝撃緩和シート27bに代えてダンパーを用いてもよい。また、前述した実施形態では、引出し22の本体を箱状に形成しているが、前面板22aと底面板22d以外の部分はガイドパイプや網状部材で構成して籠状に形成してもよい。内引出し23も同様に、前面板23aと底面板23d以外の部分はガイドパイプや網状部材で構成してもよし、前面板23aと底面板23dだけで構成してもよい。また、キャビネット20における前述した部分以外の部分についても、本発明の技術的範囲内で適宜変更して実施することができる。