JP5772445B2 - 無機強化ポリエステル樹脂組成物及びそれからなる成形品 - Google Patents
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Description
本発明に使用される(1)ポリエステルは、主としてブチレンテレフタレートを繰り返し単位とするポリブチレンテレフタレート系樹脂である。ポリブチレンテレフタレートおよび/または80モル%以上のブチレンテレフタレート単位を含むポリブチレンテレフタレート共重合体が用いられる。共重合のグリコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサメチレングリーコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリラクトン等が挙げられる。また、酸成分としては、公知の酸成分が共重合できる。例えば、ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セシン酸等が使用される。共重合成分が20モル%を超えると耐熱性や結晶性が低下しこの用途に好ましくない。
本発明に用いる(2)無変性ポリオレフィンは、密度が0.95g/cm3以下、190℃・2160gでのメルトフローレートが60(g/10分)以上の超低密度の無変性ポリオレフィンが好ましい。このような超低密度の無変性ポリオレフィンを使用することによって、元来非相溶のポリエステルと、容易に微分散・混合でき、特別な混練設備を必要とせず、良好な射出成形用樹脂組成物を得ることができる。また、低密度で結晶性も低いことで、ポリエステルに生じた射出成形時の残存応力の経時的な緩和にも適切に作用する。さらには、この残留応力の緩和は、高温から低温/低温から高温などのヒートショック時の成形品の割れなどの緩和に適切に作用する。
グリシジル変性やマレイン酸変性などの変性ポリオレフィンでは、(1)ポリエステルと反応することによる増粘が進行し、流動性が低下する要因となるだけでなく、(5)反応性化合物との反応も発生するため、(5)反応性化合物による十分な(1)ポリエステルのカルボン酸末端との反応が進行せず、耐加水分解性が低下する要因となる。
このような特性を有する(2)無変性ポリオレフィンは、ポリエチレンまたは無極性エチレン共重合体が、入手容易、安価、耐加水分解性に悪影響しない点で、特に好ましい。具体的には、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンプロピレンエラストマー、エチレン−ブテン共重合体が挙げられる。これらの中でも、超低密度ポリエチレンやエチレンと他のαオレフィン共重合体が好ましい。
本発明に用いる(3)無機粒子状充填剤とは、無機結晶核剤のことである。これらの中でも、平均粒径5μm以下のタルクであることが好ましい。タルク類はそのまま使用しても十分な効果が得られるが、タルクにポリエステル系表面処理してもよい。表面処理により、ポリエステル樹脂との親和性が向上し、ポリエステル樹脂の靭性が向上するためである。これらのタルクは、(1)ポリエステルの結晶化を促進することで、(1)ポリエステルの結晶化温度を上昇させるため、冷却時間の短縮に効果がある。また(2)無変性ポリオレフィンの添加により高温剛性の低下が発生し、射出成形直後の金型からの突き出しで変形が生じるため、冷却時間が増大する問題があるが、タルクの添加により高温剛性を向上させ、突き出し時の変形を抑制し、冷却時間を短縮させる効果がある。ここでタルクの平均粒径は、4μm以下がより好ましい。平均粒径が5μm超では、結晶核剤として効果を出すには多量添加が必要となり、成形品の靭性を低下させる要因となる為である。
本発明に用いる(4)無機補強繊維とは、ポリエステル樹脂組成物の機械強度を向上させる作用を有するものである。これらの中でも、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維の断面形状としては、円形断面及び非円形断面のガラス繊維を用いることができる。
本発明に用いる(5)反応性化合物は、ポリエステル末端カルボン酸の封鎖、及び増粘反応による長期耐久性、耐加水分解性を付与するものであり、ポリカルボジイミドが最適である。ポリカルボジイミドの中でも、一分子中にカルボン酸基反応性基と水酸基反応性基とを有する化合物を含有させることにより、ポリエステルの末端カルボン酸と反応し、加水分解の原因となる末端カルボン酸を効率良く封鎖しながら、ポリエステルの増粘反応を進行させることが出来る。
カルボン酸と反応する官能基としては、グリシジル基、オキサゾリン基、オキセタン基、カルボジイミド基などが挙げられるが、一般のグリシジル基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、オキセタン基含有化合物は反応が速やかでなく、十分な耐加水分解性を発生させる為には、ポリエステルの末端カルボン酸等量より過剰量の添加を必要とする。過剰量の反応性化合物添加は、ポリエステルの結晶化温度を低下させるだけでなく、乾燥時の揮発による汚染や成形品表面への析出などの問題を引き起こす原因や、反応性化合物によるゲル化の原因となる。一方、カルボジイミド化合物はグリシジル基、オキサゾリン基、オキセタン基に比べ反応が速やかであり、末端カルボン酸と反応のための使用に非常に好ましい。水酸基と反応する官能基としては、カルボン酸と反応する官能基とは異なるものであり、例えばイソシアネート基、酸無水物基等が挙げられるが、反応性の観点からイソシアネート基が特に好ましい。鋭意に検討した結果、一分子中にカルボン酸基反応性基と水酸基反応性基とを有する化合物としては、一分子中にカルボジイミド基とイソシアネート基を有する化合物が最も好ましい。
また、カルボン酸基反応性基と水酸基反応性基とを一分子中に含有させる目的は、これら官能基がポリエステルへの反応が容易となり、分子量の小さいポリエステル樹脂同士が、末端カルボン酸と反応性化合物で繋がることで、加水分解の原因となる末端酸を効率良く消失しながら、粘度を上げることにより他の長期耐久性を向上させることが可能となる。
本発明の樹脂組成物は、(1)ポリエステル、(2)無変性ポリオレフィン、(3)無機粒子状充填剤、(4)無機補強繊維及び(5)反応性化合物の合計で、70質量%以上を占めることが好ましい。(1)〜(5)の合計で、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上がいっそう好ましい。
セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量分析計「DSC220型」にて、測定試料5mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し、一度250℃で5分ホールドして試料を完全に溶融させた後、液体窒素で急冷して、その後−150℃から250℃まで、20℃/minの昇温速度で測定した。得られた曲線の吸熱ピークを融点とした。
充分乾燥したポリエステル樹脂0.10gをフェノール/テトラクロロエタン(重量比6/4)の混合溶媒25mlに溶解し、ウベローゼ粘度計にて30℃で測定した。
試料0.2gを精秤し20mlのクロロホルムに溶解し、0.01Nの水酸化カリウム(エタノール溶液)で滴定して求めた。指示薬にはフェノールフタレインを用いた。
JIS K 7112に従って測定した。
(ポリエステルA)
撹拌機、温度計、溜出用冷却器を装備した反応缶内にテレフタル酸100質量部、1,4−ブタンジオール100質量部、テトラブチルチタネート0.1質量部を加え、170〜220℃で2時間エステル化反応を行った。エステル化反応終了後、ヒンダードフェノール系酸化防止剤「イルガノックス1330」(チバスペシャリティケミカルズ(株)社製)を0.8質量部投入し、255℃まで昇温する一方、系内をゆっくり減圧にしてゆき、60分かけて255℃で重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂(A)を得た。このポリエステル樹脂(A)の融点は225℃で、還元粘度は0.45dl/g、酸価は25eq/tであった。
(ポリエステルB)
ポリエステルAと同様の方法にてエステル交換反応、重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂(B)を得た。このポリエステル樹脂(B)の融点は225℃で、還元粘度は0.60dl/g、酸価は25eq/tであった。
(ポリエステルC)
ポリエステルAと同様の方法にてエステル交換反応、重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂(C)を得た。このポリエステル樹脂(C)の融点は225℃で、還元粘度は0.90dl/g、酸価は25eq/tであった。
上記ポリエステルの製造例で得られたポリエステル(A)100質量部と、ポリオレフィンとして、超低密度ポリエチレン(住友化学(株)製 CX−5508 密度0.90g/cm3 メルトフローレート75g/10分)10質量部、無機粒子状充填剤として、ミクロンホワイト5000A(林化成(株)社製、平均粒径4μm)1.0質量部、無機補強繊維としてガラス繊維30質量部、反応性化合物として、カルボジイミドLA−1(日清紡(株)社製 ポリカルボジイミド)0.8質量部を、240℃にて、ニーディングゾーンを3ヶ所有する二軸スクリュー式押出し機にて、混練・ペレット化した。このペレットを用いて、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
上記ペレットを、射出成形機を用いて成形を行った。射出成形機には電動射出成形機EC−100N(東芝成形機械製)を使用した。この際の成形温度はホッパー下からノズル先まで250〜260℃で、金型温度は80℃にて行った。
射出圧力は、128mm×13mm、厚さ:1.6mm(ゲートサイズ:1mm×3mm、厚さ:1.0mm)の成形品を射出成形した際の最大射出圧力から評価を行った。
上記射出成形時の成形品の100℃における曲げ弾性率から評価を行った。曲げ弾性率はORIENTEC社製UTM−I−5000を用いて、40mmのスパン間距離、10mm/minの速度で曲げ弾性率を測定した。
上記射出成形で得られた成形品を温度80℃、湿度95%環境下にて1000時間処理後の曲げ強度保持率から評価を行った。
○:90%以上
△:80%以上90%未満
×:80%未満
上記射出成形で得られた成形品を温度150℃環境下にて1000時間処理後の曲げ強度保持率から評価を行った。
○:90%以上
△:80%以上90%未満
×:80%未満
直径36mm、高さ25mmの円筒形のステンレスを樹脂厚み2mmの均一肉厚でインサート成形した成形品を、?40℃の雰囲気で1時間処理し、次いで150℃の雰囲気で1時間処理をするヒートショック試験を繰り返し行い、目視判断によるクラックが発生するまでのサイクルを測定した。
○:500回超でクラック無し
△:100〜500回でクラック発生
×:100回未満でクラック発生
冷却時間評価は、上記射出成形にて突き出し時に成形品のゲート部(1mm×3mm、厚さ:1.0mm)が破断しない時間を最低冷却時間とした。
○:2秒未満
△:2秒以上4秒未満
×:4秒以上
上記ペレットを、射出成形機を用いて成形を行った。射出成形機には電動射出成形機EC−100N(東芝成形機械製)を使用した。この際の成形温度はホッパー下からノズル先まで250〜260℃で、金型温度は80℃にて行った。
離型性評価は、外径40mm、内径34mm、高さ50mmの成形品を射出成形し、突き出し時の抵抗値から評価を行った。
○:5kgf未満
△:5kgf以上10kgf未満
×:10kgf以上
上記射出成形で得られた成形品より、下記の基準にて評価を行った。
○:ガラス繊維の浮き無し
△:一部ガラス繊維の浮き有り
×:ガラス繊維の浮き有り
上記射出成形で得られた成形品を80℃、300時間静置後、下記の基準にて評価を行った。
○:ブリード無し
△:一部ブリード有り
×:ブリード有り
表1、2に記載の原料を用いて、実施例1と同様な方法により樹脂組成物を得て、その性能を評価した。結果を表1、2に併せて記載する。
また、配合物として好ましいものを用い、(1)ポリエステル、(2)無変性ポリオレフィン、(3)無機粒子状充填剤、(4)無機補強繊維、及び(5)反応性化合物の重量比が、((1)/(2)/(3)/(4)/(5)=100/5〜15/0.3〜3/1〜50/0.5〜3を満たすことにより、上記特性はさらに向上し、高流動性、高い長期安定性、生産性向上できるレベルとなる。
一方、本発明外の樹脂組成物は、射出成形による高流動性、長期耐久性、耐加水分解性のいずれかが、満足できるレベルでない。
Claims (6)
- (1)ポリエステル、(2)無変性ポリオレフィン、(3)無機粒子状充填剤、(4)無機補強繊維及び(5)反応性化合物としてポリカルボジイミドを、質量比で(1)/(2)/(3)/(4)/(5)=100/5〜15/0.3〜3/1〜50/0.5〜3の割合で含有し、(1)ポリエステルが還元粘度0.40dl/g以上0.65dl/g以下のポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする無機強化ポリエステル樹脂組成物。
- 前記(2)無変性ポリオレフィンが、ポリエチレンまたは無極性エチレン共重合体であり、密度が0.95g/cm3以下であり、(2)ポリオレフィンの190℃、2160gにおけるメルトフローレートが60(g/10分)以上であることを特徴とする請求項1に記載の無機強化ポリエステル樹脂組成物。
- 前記(3)無機粒子状充填剤が、平均粒径5μm以下のタルクであることを特徴とする請求項1または2に記載の無機強化ポリエステル樹脂組成物。
- 前記(4)無機補強繊維が、ガラス繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無機強化ポリエステル樹脂組成物。
- 前記(5)ポリカルボジイミドの数平均分子量が500〜10000であり、カルボジイミド基量が100〜10000当量/トンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の無機強化ポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかの無機強化ポリエステル樹脂組成物より得られた成形品。
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