JP5769170B2 - 転炉耐火物の寿命延長方法 - Google Patents

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本発明は、転炉耐火物の寿命延長方法に関するものである。
金属の精錬に用いられる転炉は、高温の溶融金属やスラグへの耐用性を高めるために、鉄皮の内面表面を永久れんが(パーマれんが)で覆い、更にその内側に耐火用れんが(ウェアれんが)を配設したライニング構造を備えている。これら転炉の内張り耐火物は、使用に伴って損耗し、一定回数使用した後、耐火物の積み替えが必要になる。
耐火物の積み替え期間には鋼の製造ができないため、転炉耐火物の寿命延長を図り、積み替え発生頻度を低減することが求められている。
従来から、転炉耐火物の寿命延長方法として、吹付け・焼付けなどの耐火物を用いて補修する方法、副原料を投入してスラグ成分をコントロールし、マグネシア-カーボンれんがのMgOの溶解を抑える方法(例えば、特許文献1)、転炉炉振りもしくはスプラッシュを行ってスラグをれんがにコーティングし保護する方法等が知られている。
このうち、耐火物を用いて補修する方法は、寿命延長効果は高いがコストが増加する問題があった。スラグ成分をコントロールする方法でも、スラグ成分をコントロールするために使用する副原料分のコストが増加する問題があった。更に、該副原料の溶解速度は、大きさ・性状(気孔率,揮発分の有無等)により変化するが、吹錬初期でスラグに溶解しないとスラグ成分のコントロール効果を発揮しないため、従来、溶解速度調整手段として、マグネシア源原料に粉砕、造粒、揮発分添加などの種々の加工を施す方法が採用されており、これにより、更にコスト高になるという問題があった。
また、副原料を投入してスラグ成分をコントロールする際の副原料として、転炉の内張り耐火物を解体したときに生ずる屑をリサイクル利用する技術が特許文献2に開示されている。
しかし、特許文献2記載の技術では、粉砕物を転炉に投入する際、10mm未満の粒径の粉砕物は転炉集塵に吸い込まれてしまい、スラグの成分調整機能を発揮できず、特許文献2記載の副原料を投入する手段のみでは、れんがの溶損を抑制する効果が十分ではないという問題があった。
特開平11−323424号公報 特開平6−116617号公報
本発明の目的は前記の問題を解決し、従来技術よりも低コストかつ効果的に、転炉耐火物の溶損を抑制することができる技術を提供することである。
上記課題を解決するためになされた本発明の転炉耐火物の寿命延長方法は、MgOとCを含有するマグネシア・カーボンれんがを、転炉に内張りする転炉耐火物として使用した転炉において、使用済みとなった前記の転炉耐火物を40mm未満の粒径に粉砕し、該粉砕により得られた粉砕物のうち、粒径10〜40mm未満のものを、転炉内に投入して使用する耐火物保護用のスラグ成分調整剤とし、該スラグ成分調整剤を、吹錬開始時に投入し、スラグフォーミングを吹錬初期に集中して発生させるとともに、粒径10mm未満のものを、転炉内の耐火物表面補修に吹きつけて使用する不定形耐火物であって、フェノール樹脂をボンドとする不定形耐火物の骨材として使用し、該不定形耐火物の原料として最大70%含有させることを特徴とするものである。
本発明に係る転炉耐火物の寿命延長方法では、転炉に内張りされていた使用済み転炉耐火物を粉砕し、粒径10〜40未満mmの粉砕物を、転炉内に投入して使用する耐火物保護用のスラグ成分調整剤とし、粒径10mm未満の粉砕物を、転炉内の耐火物表面補修に吹きつけて使用する不定形耐火物の原料とする。従来、10mm未満の粒径の粉砕物は転炉集塵に吸い込まれてしまい、スラグの成分調整機能を発揮できず、れんがの溶損を抑制する効果が十分ではないという問題があったが、本発明では、転炉内に投入する使用済み転炉耐火物の粉砕物の粒径を10〜40未満mmとすることにより、従来技術に比べてスラグの成分調整機能の向上が実現した。更に、本発明では、10mm未満の粒径の粉砕物についても、廃棄処分する代わりに、転炉内の耐火物表面補修に吹きつけて使用する不定形耐火物の原料とする構成を採用しており、当該構成をあわせて採用することによって、更に効果的に転炉耐火物の溶損を抑制可能としている。このように、本発明によれば、使用済み転炉耐火物を40mm未満に粉砕し、10mm未満のものと10〜40未満mmのものとに分級するという簡易な追加工程のみにより、低コストで、従来よりも優れた溶損抑制効果を発揮することができる。
また、粒径が40mm以上になると、溶解速度が遅くなりスラグ成分調整機能に効果がないばかりか,特に請求項2記載の発明のように、粉砕物にカーボンを含有する場合には、吹錬末期にガスが発生し、スラグフォーミングを生じ、炉の生産性を阻害する問題があったが、本発明では、転炉内に投入する使用済み転炉耐火物の粉砕物の粒径を10〜40未満mmとすることにより、当該吹錬末期におけるスラグフォーミングの問題も効果的に回避可能としている。
粒径によるガス発生時間とガス発生量の関係を、計算式に基づいて求めたグラフである。 転炉耐火物の修復に用いる不定形耐火物の効果を示す図である。
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
転炉に内張りされるMgO-Cれんがの解体に伴って生ずるれんが屑を40mm未満の粒径に粉砕し、その後、10mm未満と10〜40未満mmのものに分級する。本発明では、このうち、10mm未満のものを、転炉内の耐火物表面補修に吹きつけて使用する不定形耐火物の原料とし、10〜40未満mmのものを、転炉内に投入して使用する耐火物保護用のスラグ成分調整剤として使用する。れんが粉砕物の粒径は、ふるい目が40mmと10mmの2種のふるいを用いて分別した。40mmの目を透過したれんが粉砕物の粒径を40mm未満、10mmの目を透過したれんが粉砕物の粒径を10mm未満とした。40mmの目を透過し10mmの目を不透過のれんが粉砕物の粒径を10〜40未満mmとした。尚、40mmの目を不透過のれんが粉砕物が生じた場合は、粉砕物が40mmの目を透過するまで再度粉砕処理を行った。
(耐火物保護用のスラグ成分調整剤:10〜40未満mmのれんが屑の粉砕物)
転炉内に、軽焼ドロマイトの代替物として、10〜40未満mmのMgO-Cれんが屑の粉砕物を投入することで、大幅なコスト削減が達成できる。
ただし、MgO-Cれんがの粉砕物を軽焼ドロマイトの代替物として使用した場合、C+FeO→CO↑+Feの反応によりガスが発生してスラグフォーミングが生じる。スラグフォーミングが吹錬末期〜出鋼中に生じると、出鋼時間の増大や成分外れといった問題が生じるが、本発明ではMgO-Cれんがの粉砕物の粒径を40未満mmとする構成を採用することにより、当該問題を回避可能としている。なお、10mm未満の粒径の粉砕物は転炉集塵に吸い込まれてしまい、スラグ成分調整剤としての機能を十分に発揮することはできない。
当該粒径を40mm未満とする構成は、れんが粒度とれんが溶解時間には相関があることに着目して、決定されたものである。具体的には、以下の考え方に基づきガス発生量の推定を行い、決定したものである。
転炉に投入したMgO-Cれんが屑の消失速度はMgO-Cれんが屑の温度に依存する変数と考えられる。したがって、MgO−Cれんが屑の消失速度とMgO-Oれんが屑に含まれる炭素量から、C+FeO→CO↑+Feなる反応で単位時間あたりに発生するガスの量を求めることができる。
MgO-Cれんが屑の粒径が29mm、39mm、60mm、100mmの各々の場合について、周囲の温度(転炉内の溶融スラグ温度)を1650℃と仮定し、MgO-Cれんが屑内の温度の上昇を(数1)を元に一次元非定常伝熱解析により推定した。
ここにT温度,t時間,x距離,a熱伝導率であり、計算には熱伝導率20.0W/mK、熱容量1300J/kgK、密度3000kg/mを用いた。
つぎに、実験的に得られた知見であるMgO-Cれんが屑温度が1650℃の温度条件下でのMgO-Cれんが屑粉砕物の消失速度3mm/minを仮定し、前述の方法で求めた温度変化の下でのMgO-Cれんが屑粉砕物の消失速度を、粉砕物の粒径が29mm、39mm、60mm、100mmの各々の場合について求め、MgO-Cれんが屑消失速度から前記の考え方に基づきガス発生量の推定を行った結果を、図1に示している。
図1に示すように、粒径29mm、39mmの場合、吹錬初期までに、前記反応が完了し、吹錬末期でのガス発生は観察されなかったが、粒径100mmの場合には、吹錬末期まで前記反応が継続し、ガス発生が観察された。当該観察結果に基づき、40mm未満に粉砕したMgO-Cれんが屑の粉砕物を実際の転炉に供し、溶解性の確認をスロッピング発生状況の目視観察とサンプリングしたスラグの組成の評価により行った。
実際の転炉を使用し、40mm未満に粉砕したMgO-Cれんが屑を転炉炉上バンカーに貯鉱し、従来使用していたスラグ中MgO調整用副原料である軽焼ドロマイトのMgO純分と同量になるように秤量し、転炉吹錬開始直後に炉内へ投入した。溶解性の確認をスロッピング発生状況の目視観察とサンプリングしたスラグの組成の評価により行った結果、スロッピングの発生は観察されなかった。
上記実施例より、40mm未満に粉砕したMgO-Cれんが屑をスラグ成分調整剤として使用することにより、吹錬末期にガスが発生しスラグフォーミングを生じ炉の生産性を阻害する問題を効果的に回避できることが確認された。また、スラグ組成におけるMgO量は、従来のスラグ調整剤と差異がなく、耐火物保護効果も十分に発揮することが確認された。
(不定形耐火物の原料:10mm未満のれんが屑の粉砕物)
前述のように、10mm以下の粒径の粉砕物は転炉集塵に吸い込まれてしまい、スラグ成分調整剤としての機能を十分に発揮することはできないが、本発明では、該10mm未満の粒径の粉砕物についても、廃棄処分する代わりに、転炉内の耐火物表面補修に吹きつけて使用する不定形耐火物の原料とする構成を採用しており、当該構成をあわせて採用することによって、更に効果的に転炉耐火物の溶損を抑制可能としている。
下記の表1は、転炉耐火物の修復に用いる不定形耐火物の物性をまとめた表である。
本発明者は、フェノール樹脂をボンドとし、不定形耐火物の原料である骨材として10mm未満のれんが屑の粉砕物を使用することで、修復用不定形耐火物に占めるMgO-Cれんが屑の粉砕物の割合を70%まで増やしても耐用が低下しないことを新たに見出した。
表1に示すように、転炉耐火物の修復に用いる不定形耐火物は、ピッチ、フェノール樹脂、マグネシア、10mm未満に粉砕したMgO−Cれんが屑粉砕物及びその他原料を含み、マグネシアとMgO-Cれんが屑の割合を変化させ、ピッチとフェノール樹脂をあわせた質量が全体の15質量%となるようにして、ピッチとフェノール樹脂の配合率をA、Bの二種で混合した。なお、Aはピッチとフェノール樹脂との配合率をピッチ:フェノール樹脂=1:1、Bはピッチとフェノール樹脂との配合率をピッチ:フェノール樹脂=2:1とした。
なお、その他原料は、シリカ質原料、アルミナ質原料、ドロマイト質原料、マグネシア−ライム質原料を少なくとも1つ含む原料である。
このようにして調整した修復用不定形耐火剤に水分を15%添加、混合したものを1200℃に熱したホットプレート上に均一な厚さとなるように流し込み、硬化後に強度を測定した。表1の強度評価結果は、MgO-Cれんが屑粉砕物の配合量が0質量%(MgO-Cれんが屑粉砕物を不定形耐火物の原料として不使用)のもの(参考例1)に対して各実施例1〜6の相対値を%で示した。
MgO-Cれんが屑粉砕物の割合が増加するに従って硬化強度は低下するが、実用上は問題ないと考えられる。さらにピッチとフェノール樹脂の配合率を2:1に変えた場合や、マグネシアを使用せずにMgO-Cれんが屑を70質量%配合した実施例6においても、MgO-Cれんが屑の粉砕物を配合しない参考例1とほぼ同等の強度が得られた。
図2には、MgO-Cれんが屑粉砕物を原料とした吹付け補修材を、実際の転炉炉内の耐火物表面の補修に供し、目視観察を行った結果を示している。前記の補修材はMgO-Cれんが屑粉砕物を原料として75質量%添加したものを使用した。耐火物表面の補修は、当該補修材を圧縮空気を用いてホースにより気相搬送し、転炉炉内に挿入したノズルを介して水分を10〜15%添加し、転炉炉内の耐火物表面に吹付けて実施した。耐用の判定は目視観察によって行った。
図2では、吹付け施工後の使用回数に対して、目視により判定した残存率を示している。図2に示すように、本発明例は、従来の高耐用品と同等以上の耐用性を示すことが確認された。尚、本発明者らは、ボンド(結合剤)の選定を更に考慮すれば、図2の本発明品のように、従来の耐用品に比較して補修後不定形耐火物の耐用性を更に向上することが可能であることも見出した。
このように、本発明によれば、使用済み転炉耐火物を40mm未満に粉砕し、10mm未満のものと10〜40mm未満のものとに分級するという簡易な追加工程のみにより、低コストで、従来よりも優れた溶損抑制効果を発揮し、転炉耐火物寿命の大幅な延長を実現可能となる。

Claims (1)

  1. MgOとCを含有するマグネシア・カーボンれんがを、転炉に内張りする転炉耐火物として使用した転炉において、使用済みとなった前記の転炉耐火物を40mm未満の粒径に粉砕し、
    該粉砕により得られた粉砕物のうち、
    粒径10〜40mm未満のものを、転炉内に投入して使用する耐火物保護用のスラグ成分調整剤とし、該スラグ成分調整剤を、吹錬開始時に投入し、スラグフォーミングを吹錬初期に集中して発生させるとともに、
    粒径10mm未満のものを、転炉内の耐火物表面補修に吹きつけて使用する不定形耐火物であって、フェノール樹脂をボンドとする不定形耐火物の骨材として使用し、該不定形耐火物の原料として最大70%含有させる
    ことを特徴とする転炉耐火物の寿命延長方法。
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