JP3645818B2 - 耐火物のリサイクル方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、製鉄工場等で使用した耐火物を回収してリサイクルする耐火物のリサイクル方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、製鉄工場等では、転炉や電気炉等の精錬炉及び取鍋、樋等の付帯設備に、耐火煉瓦あるいは不定形耐火物等の耐火物を内張りしており、これ等の耐火物は、溶鋼やスラグ等による溶損によって損耗し、残存厚みが薄くなった時点で新しい耐火物に張り替えられている。
この張り替えによって発生する使用後の耐火物は、その表面に地金が付着したり、内部に地金や酸化鉄、スラグ等が浸潤しているため、再使用の障害となりその殆どが廃棄されている。
しかし、近年これ等耐火物の廃棄場所に制約があること、廃棄するための回収や運搬費等から処理コストが高くなる等の問題がある。
この対策として、特開平8−188475号公報に記載されているように、製鋼工場で使用したポーラスプラグや取鍋の内張り耐火物の比較的良好なものを回収し、この耐火物のうち、地金やスラグ等と接触して変質した部分を除去し、これを破砕して粒度を調整したものに、新しい粉末の耐火成分を配合して再使用することが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平8−188475号公報に記載された方法では、使用済の耐火物の中から地金やスラグ等と接触した変質部の少ない物を選択して回収する必要があり、回収作業や分別管理に手間を要し、回収の対象となる耐火物が、ポーラスプラグや取鍋、タンディッシュ等の特殊な内張り耐火物に制限される。
しかも、廃棄された耐火物は地金やスラグ等と接触して変質した部分を一個毎に境界を見極めながら除去する必要があり、変質部分の除去に手間を要し、製鉄工場で大量に発生する耐火物を処理することが困難である。
更に、耐火物の変質部分を取除くため、再利用できる耐火物の部分が少なくなると共に、耐火物の廃棄を少なくすることができない。
このように、従来行われている耐火物の再利用の方法では、処理コストが高く、且つ大量処理が不可能であり、しかも、廃棄物となる耐火物を最小にすることが困難であるという問題がある。
【0004】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、安価な処理コストで、大量処理を可能にし、廃棄物となる耐火物を最小にすることのできる耐火物のリサイクル方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う本発明の耐火物のリサイクル方法は、使用後の耐火物を破砕機で一次破砕し、この破砕された耐火物を磁力選別機により磁選して非磁性の粗粒を分別して回収し、磁性を有する耐火物を破砕機で二次破砕して微粉耐火物を得て、該微粉耐火物に炭素含有耐火物を加えて還元処理をした後に、還元処理後の微粉耐火物を再度磁力選別機で磁選して非磁性の微粉耐火物を回収する。この方法により、地金の付着あるいは溶鋼やスラグの浸潤した変質部を含めて処理するので、大量の処理が可能となり、しかも、再利用する耐火物を多くでき、廃棄する耐火物を減少することができる。更に、微粉耐火物に含まれる変質部を炭素含有耐火物の炭素を活用して還元処理し、変質部の酸化鉄を鉄に還元して磁選することにより、磁選の選別効率を高めて微粉に含まれる不純物を低減させることができる。
【0006】
ここで、前記非磁性の粗粒の粒径は5〜100mmにしている。このように、廃棄耐火物を所定の大きさに一次破砕して磁選することにより、耐火物の良質部と変質部の分離が良好になり、地金付着や変質部の無い良質の粗骨材を得ることができる。
粗粒の粒径が5mm未満になると、変質部が良質の粗骨材に混入する割合が増加して製品の品質が低下すると共に、粗骨材としての耐溶損や耐スポーリング等が低下する。一方、粗粒の粒径が100mmを超えると、変質部の分離効率が悪くなったり、変質部を含まない良質部分が少なくなって回収される粗粒が減少する。しかも、耐火物の原料として使用した際に、耐火物の粗粒の分布にバラツキが発生して不定形耐火物の耐溶損、耐磨耗、強度等の品質が低下する。
【0007】
更に、前記非磁性の微粉耐火物の粒径は5mm未満にすることが好ましい。これにより、還元処理を行った際に、微粉耐火物に含まれる酸化鉄の還元を促進させることができ、更に、磁選による選別効率を向上させることができる。
微粉耐火物の粒径が5mm以上では、微粉耐火物中に未還元の酸化鉄が残存し、微粉耐火物の品質が低下たり、酸化鉄の還元に時間を要し、経済的でない。
従って、微粉耐火物の大きさは、更に、100μm以上、4mm未満にすると、含まれる酸化鉄が十分に還元されて磁選の効率を高めるので、好ましい結果が得られる。
【0008】
また、前記炭素含有耐火物は、製鉄所内で発生する炭素含有耐火物を用いると良い。これにより、黒鉛やSi−C、Mg−C、Si−C−Al2 O3 、Al2 O3 −C等の炭素を含むノズル、あるいは転炉の内張り煉瓦、不定形耐火物等の耐火物(炭素含有耐火物)を使用するので、還元剤が節減でき、同時に炭素含有耐火物中に含まれるMgOやAl2 O3 等の有効成分を微粉耐火物に回収することができる。
【0009】
更に、前記非磁性の微粉耐火物を吹き付け補修材に使用することが好ましい。
再破砕を行わないで吹き付け用の耐火物として使用することができ、吹き付け時に施工体への付着性を良好にできる。
【0010】
また、前記非磁性の微粉耐火物を溶融し、固化させた後、破砕して骨材に使用することもできる。これにより、高融点の組成物と低融点の組成物とが分離して固化するため、破砕した際に、高純度の組成物の粗粒を製造できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る耐火物のリサイクル方法の処理フロー図である。
製鉄工場(製鉄所)で使用される転炉や電気炉等の精錬炉及び取鍋、樋等の付帯設備等に内張りした耐火物は、溶鋼やスラグ等によって溶損及び磨耗し、その残存厚みが薄くなった時点で張り替えが行われる。この張り替えによって、発生した廃棄耐火物は、その表面に地金が付着したり、地金やスラグ等と接触して変質した部分が存在し、再使用(リサイクル)を阻害している。
本発明者等は、この変質部が存在する廃棄耐火物の処理について鋭意研究を重ねた結果、まず、使用後の耐火物を粗いサイズに破砕して磁選することにより、変質部の存在しない良質耐火物のかなりの量を分離できること、更に、変質部を含む廃棄耐火物は、細粒にし、この細粒に炭素含有耐火物を混合して還元処理を行ってから磁選することにより、高純度の耐火物の分離回収が可能になり、廃棄耐火物の殆どをリサイクルできることを知見し、本発明の完成に至った。
【0012】
以下、本発明の一実施の形態に係る耐火物のリサイクル方法について詳細に説明する。なお、図1に示す番号は、理解を容易にするために以下で説明する各処理工程及び各耐火物に対応させて付したものである。
図1に示すように、使用済み耐火物(使用後の耐火物)は、用途、主成分、炭素含有量等によって、アルミナ系、マグネシア系等、ジルコン系、マグネシア・カーボン系、炭素・シリカ系等の廃棄耐火物に分別され、廃棄耐火物として、1〜300トンの量が回収される(使用済み耐火物の回収10)。回収された廃棄耐火物は、その含有された主成分が同じ系統のものを集めて、一般に用いられているジョウクラッシャー(破砕機の一例)を用いた一次破砕処理11によって、地金やスラグ等と接触した変質部を境にして割れ易い特性を利用して破砕し、100mm以下の粒にすることにより、変質部が残存するものと、良質なものとに分離される。
この破砕された廃棄耐火物は、変質部の残存するものが磁性を有する特性を利用して、磁力選別機により磁選処理12を行って、非磁性の廃棄耐火物と磁性の廃棄耐火物とに選別される。
選別された非磁性の廃棄耐火物は、篩いを用いて分級13され、5〜100mmの粒径の粗粒を取り出す。この粗粒は、プレキャストブロック等の不定形耐火物の粗骨材14として使用される。
また、5〜100mmの粒径の粗粒の中から、10〜20mmの粒径のものを一部取り出した後、更に、篩いを用いて5〜100mmの粗粒を分級13することによって、5mm以上、10mm未満のサイズ(粒径)のものを取り出し、この両方を混合したものを不定形耐火物の流し込みの一例である圧入流し込み用の圧入充填材16として使用してもよい。
【0013】
次に、二次破砕17で、磁性を有する廃棄耐火物(磁性耐火物15)を、破砕機の一例であるインパクトクラッシャーを用いて5mm未満の微粉に粉砕する。
この微粉砕によって、廃棄耐火物の変質部を細かく破断し、変質部を含む微粉と良質の耐火物の微粉に破断分離される。
しかし、変質部を含む微粉と良質の耐火物の微粉とが混合した状態の微粉は、変質部を含む微粉の磁性が弱いため、磁選にかけた際に、混合状態の微粉から変質部を含む微粉を容易に取り出すことができない。
一方、製鉄工程で発生する浸漬ノズルや転炉の内張り煉瓦等の炭素含有廃棄耐火物(炭素含有耐火物18)は、炭素(C)を5〜30重量%を含有しており、この炭素を利用することにより、耐火物の微粉に含まれる変質部の酸化鉄(Fe2 O3 )を鉄(Fe)に還元することができるので、炭素による還元反応が良好になるようにインパクトクラッシャー等を用いた破砕処理19によって5mm未満の微粉に粉砕される。
【0014】
従って、いずれも5mm未満に粉砕された磁性を有する廃棄耐火物すなわち微粉耐火物と炭素含有廃棄耐火物とをロータリーキルンに装入して混合し、ロータリーキルンに布設したバーナから還元性の火炎をロータリーキルン内に吹き込んで、ロータリーキルン内を900〜1200℃に加熱する。
そして、微粉耐火物に含まれる酸化鉄(Fe2 O3 )を下式の反応により還元処理20を行う。
Fe2 O3 +3C=2Fe+3CO↑
この還元処理20によって、微粉耐火物中の酸化鉄は、還元されて鉄になるため、変質部を含む微粉耐火物の磁性が強くなり、その後に磁力選別機によって行う磁選処理21により、鉄を含まない非磁性の微粉耐火物と磁性の微粉耐火物の選別が可能になり、良品質の回収微粉(非磁性の微粉耐火物)22を得ることができる。
【0015】
回収微粉22は、その一部が吹き付け用補修材23として使用され、残りの回収微粉22は、電気炉あるいは誘導加熱炉等を用いて、1600〜2500℃に加熱して溶解処理24され、更に、冷却固化されて塊に製造される。この塊を破砕処理25によって、5〜100mmのサイズに破砕し、前述したプレキャストブロック等の不定形耐火物の骨材を製造する。
この破砕処理25で発生した5〜100mmの一部を篩にかけて、5〜20mmのサイズのものを取り出して圧入充填材に用いられる。破砕処理25によって生じる5mm未満の非磁性の微粉耐火物は、吹き付け用補修材として再使用される。更に、回収された磁性の微粉耐火物は、鉄やスラグ等を多量に含有しているため、埋め立て等に廃棄処理26される。
この耐火物のリサイクルによって、廃棄耐火物の大量処理と処理費用の低減が可能になる。しかも、廃棄耐火物からアルミナ、マグネシア、ジルコン等を主成分とする有効な原料を回収でき、廃棄する耐火物を最小限にすることが可能になるため、埋め立て等の環境上の問題を回避することができる。
【0016】
【実施例】
次に、本発明に係る耐火物のリサイクル方法を適用した実施例について説明する。
溶鋼の搬送に使用した取鍋に内張りされ、張り替え時に発生したAl2 O3 を70重量%含むアルミナ系の廃棄耐火物20トンを回収し、この廃棄耐火物をジョウクラッシャーを用いて100mm以下に破砕した。
この廃棄耐火物を3500ガウスの磁石を用いて磁選処理を行った。その結果、地金、酸化鉄、スラグ等の付着や浸透した変質部の全く無い10〜40mmの良質の粗骨材7トンを得ることができ、プレキャストブロックの骨材として使用した。このプレキャストブロックは、強度及び耐食性が良好であった。
更に、5mm以上、10mm未満の粒径の耐火物を2トン及び粗骨材のうちの5〜20mmの一部である1トンを合わせて、圧入充填材として使用したが、流し込みによる充填状態及び施工体そのものを良好にできた。
【0017】
また、磁性を有する廃棄耐火物として分離された10トンをインパクトクラッシャーを用いて二次破砕処理し、5mm未満の微粉耐火物に破砕した。同時に、アルミナ・グラファイトを主成分とし、炭素を20重量%含有した浸漬ノズルの廃棄耐火物1トンをインパクトクラッシャーを用いて5mm未満のサイズに破砕処理し、この両方をロータリーキルンに装入して混合し、還元性の火炎のバーナでロータリーキルン内を1100℃に加熱し、微粉耐火物の変質部に含まれる酸化鉄を還元した。還元処理を行った後の微粉耐火物を磁選処理し、Al2 O3 を70重量%を含む良品質の非磁性の微粉耐火物8トンを分離回収することができた。
良品質の非磁性の微粉耐火物は、2トンを吹き付け用補修材として使用することができ、残りの非磁性の微粉耐火物は、電気炉を用いて溶解処理し、これを冷却してから10〜40mmに破砕処理し、骨材を製造し、その骨材をプレキャストブロックの骨材に使用した。
その結果、廃棄耐火物である炭素含有耐火物を変質部の還元処理に活用でき、処理コストの低減と廃棄する耐火物の量を最小にできた。
【0018】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、変質部の酸化鉄を還元する際に、炭素含有耐火物のかわりに製鉄工場で発生するコークス粉、又はCOガス等の還元ガスを用いることができる。
更に、還元処理は、ロータリーキルンの他に、流動床を備えた還元装置や電気炉等を用いることができる。
【0019】
【発明の効果】
請求項1〜6記載の耐火物のリサイクル方法は、使用後の耐火物を破砕機で一次破砕し、この破砕された耐火物を磁力選別機により磁選して非磁性の粗粒を分別して回収し、磁性を有する耐火物を破砕機で二次破砕して微粉耐火物を得て、微粉耐火物に炭素含有耐火物を加えて還元処理をした後に、還元処理後の微粉耐火物を再度磁力選別機で磁選して非磁性の微粉耐火物を回収するので、処理コストを低減し、廃棄耐火物の大量処理が可能になり、耐火物として有効な粗粒や微粉を回収して、廃棄物となる耐火物を最小にすることができる。
【0020】
特に、請求項2記載の耐火物のリサイクル方法は、非磁性の粗粒の粒径を5〜100mmにしているので、粗粒をそのままプレキャストブロック等の不定形耐火物の骨材に使用することができ、不定形耐火物の製造コストの低減が可能になり、しかも、不定形耐火物の耐溶損、耐磨耗、強度等の品質を向上させることができる。
【0021】
請求項3記載の耐火物のリサイクル方法は、非磁性の微粉耐火物の粒径を5mm未満にしているので、変質部の分離が良好になり、回収された微粉の耐火物の品質も高めることができる。
【0022】
請求項4記載の耐火物のリサイクル方法は、炭素含有耐火物は、製鉄所内で発生する炭素含有耐火物を用いるので、新たな還元剤を必要とせず、処理コストをより安価にすることができ、炭素含有耐火物に含まれる有効成分を活用することができ、廃棄する耐火物を少なくすることができる。
【0023】
請求項5記載の耐火物のリサイクル方法は、非磁性の微粉耐火物を吹き付け補修材に使用するので、再破砕を行うことなく吹き付け用の耐火物として使用することができ、施工時の耐火物コストを低減することができる。
【0024】
請求項6記載の耐火物のリサイクル方法は、非磁性の微粉耐火物を溶融し、固化させた後破砕して骨材に使用するので、高純度の骨材を製造してプレキャストブロック等の不定形耐火物の骨材に使用することができ、不定形耐火物の耐溶損、耐磨耗、強度等の品質を安定して向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る耐火物のリサイクル方法の処理フロー図である。
【符号の説明】
10:使用済み耐火物の回収、11:一次破砕処理、12:磁選処理、13:分級、14:粗骨材、15:磁性耐火物、16:圧入充填材、17:二次破砕処理、18:炭素含有耐火物、19:破砕処理、20:還元処理、21:磁選処理、22:回収微粉、23:吹き付け用補修材、24:溶解処理、25:破砕処理、26:廃棄処理
Claims (6)
- 使用後の耐火物を破砕機で一次破砕し、この破砕された耐火物を磁力選別機により磁選して非磁性の粗粒を分別して回収し、磁性を有する耐火物を破砕機で二次破砕して微粉耐火物を得て、該微粉耐火物に炭素含有耐火物を加えて還元処理をした後に、該還元処理後の微粉耐火物を再度磁力選別機で磁選して非磁性の微粉耐火物を回収することを特徴とする耐火物のリサイクル方法。
- 請求項1記載の耐火物のリサイクル方法において、前記非磁性の粗粒の粒径は、5〜100mmであることを特徴とする耐火物のリサイクル方法。
- 請求項1又は2記載の耐火物のリサイクル方法において、前記非磁性の微粉耐火物の粒径は、5mm未満であることを特徴とする耐火物のリサイクル方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐火物のリサイクル方法において、前記炭素含有耐火物は、製鉄所内で発生する炭素含有耐火物であることを特徴とする耐火物のリサイクル方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐火物のリサイクル方法において、前記非磁性の微粉耐火物を吹き付け補修材に使用することを特徴とする耐火物のリサイクル方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐火物のリサイクル方法において、前記非磁性の微粉耐火物を溶融し、固化させた後破砕して骨材に使用することを特徴とする耐火物のリサイクル方法。
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