JP5768757B2 - 機械構造用鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、機械構造用鋼に関し、詳しくは、各種機械加工の際の被削性に優れた機械構造用鋼に関する。より詳しくは、本発明は、産業機械や自動車などの部品の素材として用いるのに好適な被削性、特に旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に優れた機械構造用鋼に関する。
産業機械や自動車などの部品に用いられる機械構造用鋼には、JIS規格で規定されるJIS G 4051(2009)の機械構造用炭素鋼鋼材、JIS G 4053(2008)の機械構造用合金鋼鋼材がある。また、これらの鋼の規定諸成分量を多少変更したり、B(ホウ素)などをさらに含有させて焼入れ性を向上させたり、Ti、Nb、Vなども含有させて組織を改善した鋼も使用されている。
これらの鋼は、多くの場合、圧延加工して造られたものをそのまま、あるいはさらに鍛造加工などを行った後、切削加工して所定の形状にし、必要とされる特性に応じた熱処理を施して最終部品に仕上げられる。
この切削工程における生産能率向上のため、鋼は被削性に優れていることが強く望まれる。
「被削性が優れている」ということは、
・切削時に使用する工具の摩耗による交換までの期間が長いこと、すなわち工具寿命が長いこと、
・切削時に排出される切りくずが細かく分断されること、
・切削抵抗が低いこと、
・切削面や研削面の仕上がりが良好であること、
などを意味する。
切削作業の無人化や自動化が進むと、上記のうちでも工具寿命が長いこと、すなわち「耐工具摩耗性」が高いことが極めて重要になってくる。また、一つの部品を機械加工で生産する場合、旋削から穴加工まで様々な加工工程が存在する場合がある。そのため、様々な工程での耐工具摩耗性を改善することは、鋼の被削性の向上において極めて重要である。
鋼の被削性は、Pbを含有させることにより向上させることができる。しかし、Pbの含有は、鋼の価格上昇を伴うばかりでなく、環境に影響を及ぼす懸念がある。
そこで、Pbを含有させずに鋼の被削性を改善する技術の研究が進められてきた。その代表的なものは、鋼中の酸化物系介在物や硫化物系介在物を制御した被削性改善技術であり、その技術に関しては多くの検討がなされ、実用化も行われている。
例えば、特許文献1に、肌焼鋼を対象にCaOとTiO2を含有する複合酸化物を含有し、そのうちTiO2を60質量%以上含有している複合介在物が個数分率で75%以上とすることで、被削性を確保する技術が開示されている。
特許文献2には、鋼中にCaO、SiO2、Al23を主成分とした酸化物系介在物を含有させることで疲労強度とともに被削性を確保する技術が開示されている。具体的には、酸化物系介在物の組成比を、CaO:5〜50%、Al23:5〜50%、SiO2:25〜75%の範囲でアノーサイト(CaO・Al23・2SiO2)に制御することで所望の特性を確保するものである。
特許文献3には、鋼中にCaO、Al23、MgO、MnOを主成分とする酸化物系介在物を有する、横目方向の疲労強度、すなわち鋼材の長手方向に垂直な方向の疲労強度、および被削性に優れた機械構造用鋼が開示されている。
特開2009−215637号公報 特開2006−299296号公報 特開2010−144225号公報
特許文献1で開示されている鋼は、TiO2を複合させることで酸化物系介在物を軟化させ、切削時に使用する工具表面上に保護膜、すなわちいわゆる「ベラーグ」を形成し工具の耐摩耗性の向上に有効であるものの、鋼中にTiを0.04〜0.2%と過剰に含有させなければならない。そのために、硬質な炭化物(TiC)や窒化物(TiN)の形成が避けられないので、これらの硬質な析出物によって上記ベラーグの形成が抑制される可能性が大きく、被削性改善効果も十分には得られない。
特許文献2に開示されている鋼の場合、確かにアノーサイトは、従来のAlによる脱酸鋼、つまりいわゆる「アルミキルド鋼」中に含有される酸化物系介在物のアルミナに対し、CaO、SiO2、Al23の3元系状態図の範疇では低融点化および軟質化されるものである。このため、被削性、特に切削工具の耐摩耗性に対する無害化という点では有効である。しかし、後述するようにアノーサイトは、ベラーグの形成という点では必ずしも適した酸化物系介在物組成ではないので、被削性の改善効果は不十分である。すなわち、酸化物系介在物の組成制御が十分ではないし、さらに、切削工具のすくい面の耐摩耗性の改善についても十分には考慮されていないため、必ずしも十分な耐工具摩耗性を得られるというものではない。
特許文献3に開示されている鋼は、酸性酸化物であるSiO2系酸化物に対し、塩基性酸化物のCaO、MgO、MnOを複合させることで軟質化させ、疲労強度と被削性の両立を狙ったものであり、硬質介在物による切削工具のアブレシブ摩耗を無効にするという点では極めて有効である。しかしながら、鋼中の酸素含有量が0.002%以下であるため、酸化物系介在物の量は必ずしも十分とはいえないことがある。また、Caの含有量が0.0005%以下であることから、ベラーグの形成という点で、必ずしも適した酸化物系介在物組成に制御できないこともある。このため、より一層の被削性改善の要求に対しては、必ずしも十分でない場合もある。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、Pbを含有せずに、被削性、特に旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に優れた機械構造用鋼を提供することを目的とする。
鋼の被削性に、硫化物系介在物や酸化物系介在物の状態が大きく影響することはよく知られている。
そこで、本発明者らは、Pbを含まない機械構造用鋼の被削性を改善するために、鋼中の酸化物系介在物の量および形態と被削性との関係について、なかでも、鋼中の酸化物系介在物の量および形態が、旋削加工での工具のすくい面の摩耗に対して及ぼす影響について明確にするために、詳細な調査を実施した。
その結果、下記(a)〜(g)の知見を得た。
(a)旋削加工での工具のすくい面にベラーグを形成させるためには、鋼中の酸化物系介在物の組成をメリライトが主成分となるように制御する必要がある。メリライトは、その一例として、図1のMgOが5%のCaO−SiO2−Al23系の擬4元系状態図で表すことができる、結晶構造が正方晶の酸化物系介在物である。
(b)工具のすくい面上に形成されるベラーグの組成は、鋼中の酸化物系介在物の平均組成と同様である。このため、ベラーグは鋼中の酸化物系介在物の堆積で形成されると判断できる。
(c)切削加工中の昇温を踏まえ、500℃以上の高温域で酸化物系介在物の組成による硬さの違いを、その介在物組成に相当する合成酸化物を作成することによって確認したところ、工具のすくい面上に鋼中の酸化物系介在物を堆積させるには、鋼中の酸化物系介在物の硬さは適度に軟質化することが必要であり、また酸化物そのものが鋼中において非晶質であるか結晶質であるかということでも変化する。
(d)メリライトは1100℃以上の加熱で結晶化が進みやすい。一方、メリライトが生成する組成範囲と隣接するアノーサイトは、メリライトと融点がほぼ同等であるが、非晶質の状態が安定である。このことは、鋳片の段階では、両酸化物ともに非晶質であるものが、その後の熱間での圧延や鍛造工程において、メリライトは結晶化が進むのに対して、アノーサイトは非晶質のままであることを示す。なお、アノーサイトもより高温で長時間の熱処理を施せば結晶化が進むが、その結晶構造は三斜晶である。
(e)結晶質のメリライトと非晶質のアノーサイトでは、500℃以上の高温硬さがメリライトの方が低い。このため、アノーサイトよりもメリライトの方が切削工具のすくい面上に堆積しやすくなる、すなわちベラーグの形成能が高いと考えられる。
(f)ベラーグの形成には、鋼中の酸化物系介在物がメリライトの組成であるだけでなく、その量も同時に満たされることが重要である。その量は鋼中の全酸素含有量で表現することができ、特に酸化物系介在物中のCaO濃度と鋼中のO含有量の積が大きいほどベラーグ形成が顕著となり、工具摩耗抑制効果がより発揮される。
(g)酸化物系介在物を上述の形態にしたときに、耐工具摩耗性が向上することに対し、C、Si、Mnなどの含有量に加えて、機械構造用鋼の強度向上、組織改善などの作用を有するCr、V、Moやその他の元素による影響を調べた。その結果、Cr、V、Moなどの元素によって、鋼の硬さや強度などの機械的特性が向上する場合であっても、同じメリライトの組成であれば、被削性に対しては影響がなく、同様の被削性向上効果が得られることが判明した。
そこで、本発明者らは、上記の知見を踏まえてさらに調査・検討を加えた。その結果、被削性、特に旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に及ぼす化学組成や酸化物系介在物の状態の限界が明確になった。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(4)に示す機械構造用鋼にある。
(1)質量%で、C:0.15〜0.65%、Si:0.10〜1.50%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.030%を超えて0.15%以下、Cr:0.02〜2.0%、Al:0.005%以下、Ca:0.0005%を超えて0.0040%以下、Mg:0.0001〜0.0010%、N:0.030%以下およびO:0.0020%を超えて0.0060%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、酸化物系介在物の平均組成が、質量%で、CaO:10.0〜50.0%、SiO2:20.0〜50.0%、Al23:20.0〜45.0%、MgO:1.0〜10.0%、MnO:0〜2.0%の範囲であって、さらに、CaO×O×104≧550であることを特徴とする機械構造用鋼。
ただし、上記の不等式におけるCaOは、酸化物系介在物の平均組成における質量%でのCaO濃度を意味し、また、Oは、質量%でのOの鋼中含有量を意味する。
(2)Feの一部に代えて、質量%で、V:0.30%以下を含有することを特徴とする上記(1)に記載の機械構造用鋼。
(3)Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.040%未満およびNb:0.050%以下の1種以上を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の機械構造用鋼。
(4)Feの一部に代えて、質量%で、Mo:0.50%以下を含有することを特徴とする上記(1)から(3)までのいずれかに記載の機械構造用鋼。
「不純物」とは、鉄鋼材料を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入するものを指す。
本発明の機械構造用鋼は、Pbを含まないにもかかわらず被削性、特に旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に優れている。このため、切削加工を必要とする部品の素材としてこの鋼を使用することにより、その部品の製造コストを大幅に低下させることができる。
メリライトの形成範囲の一例を、MgOが5%のCaO−SiO2−Al23系の擬4元系状態図を用いて説明する図である。
本発明の鋼において、鋼の化学組成と酸化物系介在物の平均組成を限定した理由について、以下に説明する。なお、以下の説明において、各元素の含有量および酸化物系介在物の平均組成に関する「%」は、「質量%」を意味する。
(A)鋼の化学組成:
C:0.15〜0.65%
Cは、鋼の強度にかかわる性質を支配する重要な元素であり、その含有量は、通常、機械的性質を考慮して決定される。Cの含有量が0.15%を下回ると機械構造部品としての機械的性質が得られず、一方、0.65%を超えると強度が上昇し工具寿命の低下が著しくなり、所望の被削性が得られない。したがって、Cの含有量を0.15〜0.65%とした。機械構造部品としての機械的性質や硬さ等の強度特性に加え、被削性を安定して得るためには、Cの含有量は0.20%以上であることが好ましく、また、0.50%以下であることが好ましい。
Si:0.10〜1.50%
Siは、強度を高める元素であり、溶鋼中での脱酸効果もある。しかし、その含有量が0.10%未満ではその効果が期待できない。一方、Siを1.50%を超えて含有させると硬さが上昇し、特に軟質なフェライトに固溶しやすく剪断変形抵抗を高め被削性を低下させる。したがって、Siの含有量を0.10〜1.50%とした。良好な被削性を安定して得るためには、Siの含有量は0.15%以上とすることが好ましく、また、1.00%以下とすることが好ましい。
Mn:0.5〜2.0%
Mnは、被削性向上に大きな効果をもたらす硫化物系介在物を形成させるために重要な元素であり、溶鋼の脱酸効果もある。その上、被削性の向上を目的としてSを含有させる際に、鋼の熱間加工性の劣化を抑止する作用があるが、そのためには0.5%以上のMnを含有させる必要がある。しかし、Mnの含有量が2.0%を超えると切削抵抗が増す。したがって、Mnの含有量を0.5〜2.0%とした。なお、熱処理して用いる鋼の場合、Mnは焼入れ性に大きく寄与する元素であり、この目的のための含有量は上記範囲内で適宜選定すればよい。その際、Mnの含有量は0.7%以上であることがより好ましく、また、1.5%以下であることがより好ましい。
P:0.05%以下
Pは、不純物として含有される元素である。また、Pは、固溶強化効果があり、焼入れ性を向上させる効果もある、しかしながら、Pの含有量が高くなると鋼の靱性を劣化させる。このため、Pの含有量は悪影響が顕著でない範囲として0.05%以下とした。上記の効果を発揮させる場合、Pの含有量は0.005%以上であることが好ましく、また、0.02%以下であることが好ましい。
S:0.030%を超えて0.15%以下
Sは、被削性を向上させるために必要な元素で、Mnなどと結合して、硫化物系介在物の形で存在させる。Sの含有量が0.030%以下では被削性向上の効果は得られず、逆に含有量が多すぎると、粗大なMnSにより熱間加工性の低下、鋼の疲労強度や靱性の劣化をきたす。したがって、上限を設け、Sの含有量は0.030%を超えて0.15%以下とした。この範囲であれば良好な被削性と機械的性質が得られるが、さらに被削性と機械構造用鋼としての機械的性質を安定に確保するためには、Sの含有量は0.035%以上とすることが好ましく、また、0.10%以下とすることが好ましい。熱処理などを施し、さらに機械構造用鋼として適切な機械的特性と被削性を両立させるためには、Sの含有量は0.04%以上であることが好ましく、また、0.08%以下であることが好ましい。
Cr:0.02〜2.0%
Crは、鋼の強度を向上させる効果があり、機械構造用鋼の高強度化には有効である。高強度化のためには、0.02%以上のCrを含有させる必要があるが、2.0%を超えると上記の効果が飽和するばかりでなく逆に被削性を劣化させる。したがって、Crの含有量は0.02〜2.0%とした。強度を高めより被削性を安定させるためには、Crの含有量は0.05%以上とすることが好ましく、また、1.5%以下とすることが好ましい。
Al:0.005%以下
本発明では、Al添加による積極的な脱酸は行わない。しかし、微量のAlでも鋼中にAl23を生成し、鋼中に生じるAl23は硬いため、耐工具摩耗性を低下させる。よって、Al23が多くならないようにAl含有量は0.005%以下とした。Alの含有量は少なければ少ないほど好ましい。
Ca:0.0005%を超えて0.0040%以下
Caは、O(酸素)およびSとの反応性が高く、溶鋼中で酸化物系介在物および硫化物系介在物を形成する。Caは、Al23と複合の酸化物系介在物を形成することで酸化物系介在物の融点を下げることができるので、切削時の工具表面で軟質化して、工具摩耗の進行を抑える効果を有する。上記の効果を得るには、0.0005%を超えるCa含有量が必要である。しかし、Caの含有量が0.0040%を超えると、粗大な酸化物系介在物の割合が増加し、この粗大な酸化物系介在物を起点として疲労特性が劣化する。したがって、Caの含有量は0.0005%を超えて0.0040%以下とした。疲労特性を劣化させることなくより被削性を安定させるためには、Caの含有量は0.0010%以上とすることが好ましく、また、0.0030%以下とすることが好ましい。
Mg:0.0001〜0.0010%
Mgは、O(酸素)およびSとの反応性が高く、溶鋼中で酸化物系介在物および硫化物系介在物を形成する。Mgは、上記のCaと同様の作用効果に加え、Al23と複合の酸化物系介在物を形成し、その組成をメリライトとすることで、酸化物系介在物の融点をさらに下げることができる。このため、切削時の工具表面で軟質化して、工具摩耗の進行を抑える効果を有する。上記の効果を得るには、0.0001%以上のMg含有量が必要である。しかし、Mgの含有量が0.0010%を超えると、メリライトである酸化物系介在物内に第二相が形成されて硬質化するため、却って被削性が低下する。したがって、Mgの含有量は0.0001〜0.0010%とした。なお、より軟質な酸化物系介在物を確保し被削性を安定させるためには、Mg含有量の上限は0.0006%とすることが好ましい。
N:0.030%以下
N(窒素)は、鋼がTi、Nbを含有しない場合には、鋼中に固溶状態で存在し、この場合は固溶Nによる動的歪み時効の発現により、切削加工中の変形抵抗が増加して、切削抵抗が増大する。このため、N含有量が過剰になると、特にドリル加工の際に工具寿命が低下する。一方、鋼にTiやNbが含有される場合には、これらの元素とNおよびCが結合して、鋼中に炭窒化物を形成し、固溶Nが低減するとともに、この炭窒化物によって鋼のミクロ組織が微細化し機械的特性を安定化させる効果が得られるが、N含有量が過剰になると、硬質な窒化物を多量に形成し、耐工具摩耗性を低下させる。したがって、鋼がTi、Nbを含有するしないに拘わらず、Nの含有量を0.030%以下とした。
鋼がTi、Nbを含有しない場合には、Nの含有量は少なければ少ないほど好ましい。一方、鋼にTiやNbが含有される場合には、Nの含有量は、炭窒化物形成による上記の効果を安定して得るために0.003%以上とすることが好ましく、また、耐工具摩耗性の低下を抑制するために0.023%以下とすることが好ましい。
O:0.0020%を超えて0.0060%以下
O(酸素)は、鋼中の酸化物系介在物の量に影響し、延いてはベラーグの形成に影響を及ぼす。ベラーグ形成に有効な酸化物系介在物の量を得るためには、0.0020%を超えるO含有量が必要である。しかし、Oの含有量が0.0060%を超えると、酸化物系介在物の量が多くなりすぎてベラーグ形成による被削性改善効果が飽和するし、鋼の清浄性も低下する。したがって、Oの含有量は0.0020%を超えて0.0060%以下とした。
本発明の機械構造用鋼の一つは、上述のCからOまでの元素を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつ酸化物系介在物の平均組成が後述する範囲であり、さらに「CaO×O×104≧550」であるものである。なお、既に述べたように、「不純物」とは、鉄鋼材料を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入するものを指す。
本発明の機械構造用鋼の他の一つは、上記Feの一部に代えて、V、Ti、NbおよびMoのうちから選択される1種以上の元素を含有するものである。
以下、任意元素である上記V、Ti、NbおよびMoの作用効果と、含有量の限定理由について説明する。
V:0.30%以下
Vは、微細な窒化物や炭窒化物として析出し、鋼の強度を向上させる元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかし、Vの含有量が0.30%を超えると、上記の効果が飽和するばかりでなく、窒化物や炭化物が多く生成しすぎて鋼の被削性、特に耐工具摩耗性の劣化をきたす。したがって、含有させる場合のVの含有量は0.30%以下とした。
一方、上記したVの効果を安定して得るためには、含有させる場合のVの含有量は、0.05%以上であることが好ましい。
Ti:0.040%未満
Tiは、鋼中に炭窒化物を形成し、鋼のミクロ組織の微細化による機械的特性の安定化に効果がある元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかし、Tiの含有量が0.040%以上では、硬質な窒化物(TiN)が増量または粗大化するため、耐工具摩耗性を低下させる。したがって、含有させる場合のTiの含有量は0.040%未満とした。
一方、上記したTiの効果を安定して得るためには、含有させる場合のTiの含有量は、0.005%を超えることが好ましい。
Nb:0.050%以下
Nbは、鋼中に炭窒化物を形成し、鋼のミクロ組織の微細化による機械的特性の安定化効果がある元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかし、Nbの含有量が0.050%を超えると、硬質な窒化物(NbN)が増量または粗大化するため、耐工具摩耗性を低下させる。したがって、含有させる場合のNbの含有量は0.050%以下とした。
一方、上記したNbの効果を安定して得るためには、含有させる場合のNbの含有量は、0.005%以上であることが好ましい。
上記のTiおよびNbは、上述の範囲で、いずれか1種のみ、または、2種の複合、で含有させることができる。なお、これらの元素の合計含有量は、0.070%以下とすることが好ましい。
Mo:0.50%以下
Moは、焼入れや表面硬化処理などの熱処理を行う場合に焼入れ性を向上させ、靱性を向上させる効果がある元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかし、0.50%を超えるMoを含有させても上記の効果が飽和するし、コストも上昇する。したがって、含有させる場合のMoの含有量は0.50%以下とした。
一方、上記したMoの効果を安定して得るためには、含有させる場合のMoの含有量は、0.02%以上であることが好ましい。
(B)酸化物系介在物の平均組成:
本発明の機械構造用鋼において、酸化物系介在物の平均組成は、CaO:10.0〜50.0%、SiO2:20.0〜50.0%、Al23:20.0〜45.0%、MgO:1.0〜10.0%、MnO:0〜2.0%の範囲でなければならない。
上記の範囲に鋼中の酸化物系介在物の平均組成を制御することで低融点化し、切削加工中の温度上昇により軟化し易くなって、工具摩耗を抑制することができる。この効果は、CaOが10.0%以上、SiO2が20.0%以上、Al23が20.0%以上、MgOが1.0%以上で発揮される。これに対し、各酸化物系介在物の平均組成が上記の下限値に達しない場合には、ベラーグ形成能を有するメリライトの組成を大きく逸脱するため工具摩耗を抑制することができない。例えば、アノーサイトやスピネルが形成されると、ベラーグの形成能が低下するためである。
しかし、CaOについては、50.0%を超えると、酸化物が溶鋼中で凝集し易くなるため粗大な酸化物系介在物の生成頻度が高くなり、機械構造部品として重要な疲労特性を低下させる。
SiO2については、50.0%を超えると、メリライトの組成から外れてアノーサイトの組成になり、鋼中で非晶質の状態が安定となる。そのため、酸化物系介在物が硬質になりベラーグ生成能が低下するので、切削工具のすくい面の摩耗量が増大する。
Al23については、45.0%を超えると、メリライトの組成から外れてスピネルの組成になり、結晶化しているにもかかわらず硬質の酸化物系介在物となる。そのため、ベラーグ生成能が低下することで、切削工具のすくい面の摩耗量が増大する。
MgOについては、10.0%を超えると、メリライトの安定組成域が狭くなり、メリライトと第二相の複合形態となる。そのため、酸化物系介在物が結晶化していても第二相の存在により硬さが上昇し、酸化物系介在物のベラーグ生成能が低下することで、切削工具のすくい面の摩耗量が増大する。
MnOについては、2.0%を超えると、メリライトの安定組成域が狭くなり、メリライトと第二相の複合形態となったり、メリライトが形成しない場合がある。そのため、酸化物系介在物のベラーグ生成能が低下することで、切削工具のすくい面の摩耗量が増大する。
以上のことから酸化物系介在物の平均組成は、CaO:10.0〜50.0%、SiO2:20.0〜50.0%、Al23:20.0〜45.0%、MgO:1.0〜10.0%、MnO:0〜2.0%の範囲とした。特にCaOに関しては、平均組成が17.0%以上でより安定してベラーグ形成能が確保でき、さらには23.0%以上であることが好ましい。なお、酸化物系介在物の平均組成は、CaO−SiO2−Al23−MgO−MnO系として質量%で記すものとした。
上記(A)項で述べた化学組成を有する鋼の場合に、上述した酸化物系介在物の平均組成、つまり、CaO:10.0〜50.0%、SiO2:20.0〜50.0%、Al23:20.0〜45.0%、MgO:1.0〜10.0%、MnO:0〜2.0%の範囲を得るためには、例えば、真空溶解してインゴットを作製する場合には、次の〈1〉〜〈4〉に述べる方法を採用し、その後、鋳型法によってインゴットを作製することが推奨される。なお、本発明の機械構造用鋼の製造方法は、これに限るものではないことはもちろんである。
〈1〉真空溶解炉で溶製する鋼の原料となる電解鉄と炭素を混在させて、13.3KPa(100Torr)の雰囲気で、両原料が完全に溶け落ちるまで加熱する。その後、炉内をArガスで置換し、53.3KPa(400Torr)の雰囲気にする。こうすることで溶鋼中の溶存酸素量が高まる。なお、従来は、Arガスでの置換の前に「脱ガス処理」として133Pa(1Torr)程度までさらに減圧し、この雰囲気を一定時間保持することで、溶鋼中の溶存酸素を炭素との反応によって発生した炭酸ガスを排気し、溶存酸素量を低く抑えていたが、本発明ではこの工程を省略する。
〈2〉Caを除く合金成分を調整した後に、酸化物系介在物の組成を調整するためにCaO−SiO2−Al23−MgOで構成された混合フラックスの添加を行う。その組成は、それぞれCaOが45〜55%、SiO2が35〜45%で、Al23が1〜5%、MgOが1〜5%となるように調整する。
〈3〉その後、Caを目標とする含有量になるように秤量し、添加する。
〈4〉Ca添加後は、酸化物系介在物を生成する反応を進行させないように、1分以内に出鋼する。
(C)CaO×O×104
本発明の機械構造用鋼は、CaO×O×104≧550でなければならない。ただし、上記の不等式におけるCaOは、酸化物系介在物の平均組成における質量%でのCaO濃度を意味し、また、Oは、質量%でのOの鋼中含有量を意味する。
既に述べたように、ベラーグの形成には、鋼中の酸化物系介在物の組成とその量が重要な要素である。そのなかでもCaOの組成がメリライトの形成に重要な要素であり、その量の指標となる鋼中酸素量の両因子が満たされることで、ベラーグの形成による切削工具の耐摩耗性が向上する。そして、酸化物系介在物の平均組成におけるCaO濃度とOの鋼中含有量の積が工具摩耗量と相関を有し、「CaO×O×104」の値が550以上であれば工具摩耗量が低減される。上記の値は大きいほど、工具摩耗量の低減に有効である。これに対して、「CaO×O×104」の値が550未満であれば工具摩耗量が増大し、工具の耐摩耗性としての被削性が低下する。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成の鋼A1〜A11および鋼B1〜B16を150kgの真空溶解炉を用いて溶製し、鋳型法によってインゴットを作製した。
鋼A1〜A11、鋼B2〜B14および鋼B16については、
〈1〉真空溶解炉で13.3KPa(100Torr)の雰囲気で電解鉄と炭素を完全に溶かした後、脱ガス処理を実施せず、炉内をArガスで置換して、53.3KPa(400Torr)の雰囲気にした。
〈2〉Caを除く合金成分を調整した後に、酸化物系介在物の組成を調整するためにCaO−SiO2−Al23−MgOで構成された混合フラックスの添加を行った。
〈3〉その後、Caを目標とする含有量になるように秤量して添加した。
〈4〉Ca添加後、1分以内に出鋼して、鋳型法によってインゴットを作製した。
鋼B1については、
〈1’〉真空溶解炉で13.3KPa(100Torr)の雰囲気で電解鉄と炭素を完全に溶かした後、脱ガス処理として、さらに133Paまで減圧し、その状態を15分保持した。その後、炉内をArガスで置換して53.3KPa(400Torr)の雰囲気にした。
〈2〉Caを除く合金成分を調整した後に、酸化物系介在物の組成を調整するためにCaO−SiO2−Al23−MgOで構成された混合フラックスの添加を行った。
〈3〉その後、Caを目標とする含有量になるように秤量して添加した。
〈4〉Ca添加後、1分以内に出鋼して、鋳型法によってインゴットを作製した。
鋼B15については、
〈1’〉真空溶解炉で13.3KPa(100Torr)の雰囲気で電解鉄と炭素を完全に溶かした後、脱ガス処理として、さらに133Paまで減圧し、その状態を15分保持した。その後、炉内をArガスで置換して53.3KPa(400Torr)の雰囲気にした。
〈2’〉合金成分を調整した後、フラックスおよびCaの添加を行わずに出鋼して、鋳型法によってインゴットを作製した。
表2に、溶製時の脱ガス処理の有無および成分調整後に添加したフラックスの組成を示す。
表1および表2における鋼A1〜A11および鋼B16は、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼である。一方、鋼B1〜B15は、化学組成が本発明で規定する条件から外れた鋼である。
Figure 0005768757
Figure 0005768757
次いで、これらの鋼のインゴットを1250℃に加熱してから1000℃以上で仕上げる熱間鍛造を行い、直径70mmの丸棒を作製した。なお、熱間鍛造後は空冷して非調質鋼材の製造プロセスを模擬した。
このようにして得られた丸棒の表面から17.5mmの位置(丸棒の半径の1/2の位置であるため、以下、「R/2部位置」という。)を中心にして、丸棒長手方向に平行に採取した厚さが10mm、幅が10mm、長さが15mmのサイズの試験片の断面を鏡面研磨し、エネルギー分散型X線分光器(以下、「EDX」という。)を兼ね備えた走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」という。)を用いて、酸化物系介在物の組成を調査した。
具体的には、酸化物系介在物は、先ず、SEMで組成像(反射電子像)を撮影し、得られた画像について、母材および硫化物系介在物とのコントラストの差を多値化処理することで判別した。観察面積は、2mm×2mmとし、これを縦横16×12視野に分割し、視野ごとで判別された全ての酸化物系介在物をEDXにより組成分析した。これらをあわせて算術平均したものをその鋼における酸化物系介在物の平均組成とした。なお、酸化物系介在物の大きさが円相当直径で1μm未満のものは、画像のノイズと判断して全て削除した。
さらに、以下に示す方法で旋削およびドリル加工の際の被削性を調査した。
旋削加工の際の被削性は、上述のようにして作製した直径70mmの丸棒を、直径68mmに機械加工し、長さを400mmに切断した円柱状試験片を用い、旋削加工による被削性試験を行って耐工具摩耗性を評価した。
具体的には、P20種の超硬工具を使用し、無潤滑の状態で、切削速度:250m/minの一定条件で、送り:0.20mm/rev、切り込み量:1.5mmとして、試験片の長さ方向に旋削加工を実施した。工具摩耗については、上記の条件にて切削距離1500m時点の工具のすくい面の摩耗深さ量(KT)を測定して評価した。
ドリル加工の際の被削性は、先の直径70mmの丸棒を100mm長さに切断した試験片に対し、超硬ドリルを用いて丸棒長手方向に深さ90mmの穴をあける穴加工における耐工具摩耗性で評価した。
具体的には、ドリル径:6.0mm、全長:180mm(刃長130mm)、先端角:140°の油穴付き超硬コーティングロングドリルを使用し、回転数:3850rpm、送り0.18mm/rev.の穿孔条件で、ドリル加工を行った。工具摩耗については、上記の条件にて400穴加工した後の外周コーナー摩耗量を測定して評価した。なお、切削油は、生分解性の高い合成エステルを用い、極微量潤滑法により噴霧状にして塗布した。その油量は圧縮空気と混合した状態で、約1.0cc/時間であり、給油法は、ドリル油穴からの給油、すなわちいわゆる「内部給油」とした。なお、上記深穴加工の直進性を維持するために、ロングドリルのガイドとなる深さ15mmの下穴加工をプラス公差の直径6.1mmの丸ドリルで加工した。90mmの深穴はこの下穴15mmも含んだものである。
表3に、上記の各調査結果をまとめて示す。なお、表3には、CaO×O×104の値をfnの値として併記した。
Figure 0005768757
表3から、本発明で規定する条件を満たす試験番号1〜11の本発明例の場合、旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に優れていることが明らかである。
これに対して、本発明で規定する条件から外れた比較例の試験番号12〜27の場合、耐工具摩耗性が劣っている。
試験番号12は、鋼B1のO含有量が本発明で規定する範囲を下回ることに加えて、酸化物介在物の平均組成におけるSiO2、Al23およびMgOの濃度、ならびにCaO×O×104の値が本発明で規定する範囲から外れているため、旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に劣っている。
試験番号13は、鋼B2のO含有量が本発明で規定する範囲を下回ることに加えて、CaO×O×104の値が本発明で規定する範囲から外れているため、旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に劣っている。
試験番号14は、鋼B3のO含有量が本発明で規定する範囲を下回ることに加えて、酸化物介在物の平均組成におけるAl23の濃度、およびCaO×O×104の値が本発明で規定する範囲から外れているため、旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に劣っている。
試験番号15および試験番号16は、鋼B4および鋼B5のO含有量が本発明で規定する範囲を下回ることに加えて、いずれも、酸化物介在物の平均組成におけるAl23およびMnOの濃度、ならびにCaO×O×104の値が本発明で規定する範囲から外れているため、旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に劣っている。
試験番号17は、鋼B6のS含有量が本発明で規定する範囲を下回るため、旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に劣っている。
試験番号18は、鋼B7のCとMgの含有量がいずれも本発明で規定する範囲を上回るため、旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に劣っている。
試験番号19は、鋼B8のSiとMgの含有量がいずれも本発明で規定する範囲を上回るため、旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に劣っている。
試験番号20は、鋼B9のTi含有量が本発明で規定する範囲を上回るため、旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に劣っている。
試験番号21は、鋼B10のAlの含有量が本発明で規定する範囲を上回るため、旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に劣っている。
試験番号22は、鋼B11のCa含有量が本発明で規定する範囲を下回ることに加えて、酸化物介在物の平均組成におけるCaOおよびSiO2の濃度、ならびにCaO×O×104の値が本発明で規定する範囲から外れているため、旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に劣っている。
試験番号23は、鋼B12のV含有量が本発明で規定する範囲を上回るため、旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に劣っている。
試験番号24は、鋼B13のMo含有量が本発明で規定する範囲を上回るため、旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に劣っている。
試験番号25は、鋼B14のNb含有量が本発明で規定する範囲を上回るため、旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に劣っている。
試験番号26は、鋼B15のAl含有量が本発明で規定する範囲を上回り、またCaおよびOの含有量が発明で規定する範囲を下回ることに加えて、酸化物介在物の平均組成におけるCaO、SiO2およびAl23の濃度、ならびにCaO×O×104の値が本発明で規定する範囲から外れているため、旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に劣っている。
試験番号27は、鋼B16は化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼であるが、酸化物介在物の平均組成におけるAl23の濃度、およびCaO×O×104の値が本発明で規定する範囲から外れているため、旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に劣っている。
本発明の機械構造用鋼は、Pbを含まないにもかかわらず被削性、特に旋削およびドリル加工の際の耐工具摩耗性に優れている。このため、切削加工を必要とする部品の素材としてこの鋼を使用することにより、その部品の製造コストを大幅に低下させることができる。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.15〜0.65%、Si:0.10〜1.50%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.030%を超えて0.15%以下、Cr:0.02〜2.0%、Al:0.005%以下、Ca:0.0005%を超えて0.0040%以下、Mg:0.0001〜0.0010%、N:0.030%以下およびO:0.0020%を超えて0.0060%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、酸化物系介在物の平均組成が、質量%で、CaO:10.0〜50.0%、SiO2:20.0〜50.0%、Al23:20.0〜45.0%、MgO:1.0〜10.0%、MnO:0〜2.0%の範囲であって、さらに、CaO×O×104≧550であることを特徴とする機械構造用鋼。
    ただし、上記の不等式におけるCaOは、酸化物系介在物の平均組成における質量%でのCaO濃度を意味し、また、Oは、質量%でのOの鋼中含有量を意味する。
  2. Feの一部に代えて、質量%で、V:0.30%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の機械構造用鋼。
  3. Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.040%未満およびNb:0.050%以下の1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の機械構造用鋼。
  4. Feの一部に代えて、質量%で、Mo:0.50%以下を含有することを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の機械構造用鋼。
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