JP5766556B2 - 繊維強化プラスチック組成物、及び水まわり製品 - Google Patents
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Description
水や湿気に晒される水まわり製品では、環境状況に応じて、ピンク色や褐色を呈したぬるぬるした付着物が発生し、また浴室の壁、床、天井などでは黒色又は褐色のカビが発生し易い。
また、樹脂組成物に含まれるシリコーンオイルが反応性基を有していない場合、樹脂組成物を成形加工した水まわり製品の使用と共に、シリコーンオイルが取り除かれ、防汚性等の効果が、経時と共に弱くなることがある。
これに対し、反応性基を有するシリコーンオイルを含有する樹脂組成物は、経時による性能の低下を抑制し得るものの、より厳しい防汚性を満足することができなかった。
本発明の繊維強化プラスチック組成物は、少なくとも不飽和樹脂を含む基体樹脂と、前記基体樹脂100質量部に対して、2質量部〜4質量部の、数平均分子量が5,000〜20,000であり、片末端に反応性基を有するシリコーン化合物と、を含有する繊維強化プラスチック組成物であり、前記繊維強化プラスチック組成物を用いて成形された成形体の表面における転落角が39度以下である。
数平均分子量が5,000〜20,000であり、片末端に反応性基を有するシリコーン化合物を、以下、「特定シリコーン化合物」とも称する。また、繊維強化プラスチックは、FRP(Fiber Reinforced Plastics)とも略称され、繊維強化プラスチック組成物を「FRP組成物」と称することがある。
このとき、シリコーン化合物の分子鎖が長過ぎると、基体樹脂に含まれる不飽和樹脂とシリコーン化合物とが相溶しにくいため、シリコーン化合物が不飽和樹脂と結合し難いと考えられる。一方、シリコーン化合物の分子鎖が短すぎると、逆に、シリコーン化合物が、基体樹脂と混ざり合いすぎて、シリコーン化合物と不飽和樹脂とが反応しても、シリコーン化合物由来のシロキサン部分が基体樹脂の表面に偏在し難いと考えられる。
また、基体樹脂に対するシリコーン化合物の割合も、基体樹脂の表面へのシロキサン部分の偏在に大きく関わり、シリコーン化合物の基体樹脂に対するシリコーン化合物の割合が少ないと、撥水性や水の転がり性を発現できないと考えられる。一方、シリコーン化合物の基体樹脂に対するシリコーン化合物の割合が多いと、水まわり製品を得たときに、不飽和樹脂と反応せずに残ったシリコーン化合物が浮き出し、表面性状に支障をきたし、撥水性や水の転がり性を損ねると考えられる。
その結果、撥水性のみならず、水の転がり性にも優れた水まわり製品を製造することができ、長期的な防汚性を発現することができると考えられる。
このように、本発明の繊維強化プラスチック組成物は、未反応状態の不飽和樹脂と、特定シリコーン化合物とを含有する組成物であり、組成物中の不飽和樹脂と、特定シリコーン化合物とを反応し、ポリシロキサン複合樹脂としたものを、成形し、水まわり製品とする。
なお、転落角は、接触角同様、各種接触角測定装置(例えば、協和界面科学社製の全自動接触角計など)で測定することができる。
以下、特定シリコーン化合物、基体樹脂、その他繊維強化プラスチック組成物を構成する成分、及び水まわり製品について説明する。
本発明の繊維強化プラスチック組成物は、数平均分子量が5,000〜20,000であり、片末端に反応性基を有するシリコーン化合物(特定シリコーン化合物)を含有する。
シリコーン化合物の化学構造の詳細については、後述するが、片末端とは、例えば、シロキサン部位を繰り返し単位として有する分子鎖(主鎖)を有するシリコーン化合物の一方の末端を意味し、主鎖の途中、すなわち、側鎖に反応性基を有することは含まれない。
中でも、アルキレン基が好ましく、炭素数は1〜6が好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられ、中でもプロピレン基が好ましい。2価の連結基がさらに置換可能な場合は、2価の連結基は、炭化水素基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基などの1価の置換基を有していてもよい。
分子鎖の片末端に反応性基を有するシリコーン化合物としては、例えば、下記一般式(3)で表されるものが挙げられる。
中でも、水素原子またはアルキル基が好ましい。
アルキル基としては、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。アルキル基の炭素数は1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4である。
本発明において、特定シリコーン化合物が有する反応性基は、分子鎖の片末端に位置し、分子鎖の側鎖や、分子鎖の両末端に反応性基を有するシリコーン化合物は、特定シリコーン化合物に含まれない。なお、分子鎖の側鎖に反応性基を有するものとしては、例えばシリコーン化合物が一般式(3)で表される場合、R4およびR5の少なくとも一方が反応性基である場合をいう。また、分子鎖の両末端に反応性基を有するものとしては、シリコーン化合物が一般式(3)で表される場合、Qのほかに、R1〜R3の少なくとも1つが反応性基である場合をいう。
本発明の繊維強化プラスチック組成物は、少なくとも不飽和樹脂を含む基体樹脂を含有する。
基体樹脂は、マトリックス樹脂として少なくとも不飽和樹脂を含み、本発明の繊維強化プラスチック組成物を後述するSMC、TMC、BMCにより成形加工する場合には、さらに、低収縮剤等を含んで構成されていてもよい。従って、基体樹脂が不飽和樹脂のみを含む場合は、本発明の繊維強化プラスチック組成物中の特定シリコーン化合物の含有量は、不飽和樹脂100質量部に対しての割合となり、基体樹脂が不飽和樹脂と低収縮剤とを含む樹脂組成物である場合には、本発明の繊維強化プラスチック組成物中の特定シリコーン化合物の含有量は、不飽和樹脂と低収縮剤との合計100質量部に対しての割合となる。
基体樹脂に含まれる不飽和樹脂としては、分子内に二重結合を含む樹脂であれば特に制限されず、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂などの単独あるいは混合物よりなる不飽和樹脂が挙げられる。
中でも、不飽和ポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分とグリコール成分とをエステル化反応することによって得られる。不飽和ポリエステル樹脂は、数平均分子量500〜5000程度のポリマーであることが好ましい。
不飽和ポリエステル樹脂を含有する液状体は、不飽和ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分とグリコール成分とをエステル化反応することによって得られた不飽和ポリエステル樹脂を液状のビニルモノマーに溶解したものとして得られる。
不飽和ジカルボン酸としては、通常無水マレイン酸又はフマル酸が用いられる。また、液状のビニルモノマーは、不飽和ポリエステル樹脂の溶媒として働くと共に、架橋剤として機能する。この液状のビニルモノマーとしては、一般にスチレンモノマーが用いられるが、その他メタクリル酸メチル、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどのモノマーや、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多官能性モノマーなどを、目的に応じて用いることができる。
この液状のビニルモノマーは一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよく、またその配合量は特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、一般に樹脂成分の合計量、すなわち前記不飽和ポリエステル樹脂と、後述の低収縮剤との合計100質量部に対して、10〜150質量部、好ましくは15〜80質量部の範囲で選定される。
低収縮剤としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂や、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、粉末ポリエチレン樹脂、飽和ポリエステル、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリブタジエン等の熱可塑性樹脂などが挙げられ、中でも、ポリスチレン樹脂が好ましい。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
低収縮剤は、基体樹脂100質量部に対して、0.5質量部〜10質量部であることが好ましい。
また、低収縮剤の配合量は、得られる繊維強化プラスチックの収縮率や表面平滑性、表面光沢などを考慮して選定してもよく、前記マトリックス樹脂と該低収縮剤との質量比が、通常90:10ないし50:50、好ましくは80:20ないし60:40の範囲で選ばれる。
なお、本発明の繊維強化プラスチック組成物は、基体樹脂に対して特定シリコーン化合物を配合すること以外は、従来の一般的な繊維強化プラスチック組成物と同様の配合とすることができる。なお、繊維強化プラスチック組成物が含有する各添加成分は、いずれも一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
繊維強化プラスチックは、基体樹脂に補強材として繊維(好ましくはガラス繊維)が配合されたものである。繊維としては、ガラス繊維のほかに、炭素繊維、さらにはポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維などの有機繊維などが挙げられる。
一般に、補強材としてのガラス繊維は、E−ガラス(無アルカリガラス)、S−ガラス(High Strengthガラス)などに分類され、その形状としてはガラスロービング、チョップトストランドマット、ロービングクロスなどが使用される。
上記ロービングは、通常、繊維径5〜25μmの単繊維50〜4000本程度をポリ酢酸ビニル系、ポリエステル系、エポキシ樹脂系、ポリウレタン系などの集束剤で集束することにより得られたものである。
その他の添加成分としては、例えば、硬化触媒、内部離型剤、充填材等、次に示す各種成分が挙げられる。
硬化触媒としては、例えば、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−ヘキサノエート、メチルエチルケトンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシドなどの有機過酸化物が用いられる。硬化触媒は、いわゆる重合開始剤として慣用されているものである。
内部離型剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛等が用いられる。
充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、タルク、硫酸バリウム、レー、マイカ、中空バルーン(ガラス、シラス、セメント)、フェライト、亜鉛華などの無機化合物などが挙げられるが、これらの中で、炭酸カルシウムが好ましい。前記充填材は、分散性をよくするために、表面処理を施すことができる。
増粘剤として、例えば、不飽和ポリエステル樹脂中のカルボキシル基と反応し得るMgO、Mg(OH)2といったアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物、K2O、KOHといったアルカリ金属の酸化物や水酸化物などが挙げられるが、一般的には酸化マグネシウムが用いられる。
着色剤としては、例えば、トナー、顔料等が挙げられる。
硬化促進剤としては、例えば、ナフテン酸コバルト;オクトエ酸コバルト;N,N−ジメチルアニリン;N,N−ジエチルアニリン;N,N−ジメチル−p−トルイジン;アセチルアセトン;アセト酢酸エチルなどが挙げられる。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン;p−ベンゾキノン;メチルハイドロキノン;トリメチルハイドロキノン;t−ブチルハイドロキノン;カテコール;t−ブチルカテコール;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどが挙げられる。
本発明の繊維強化プラスチック組成物において、特定シリコーン化合物以外の添加成分の好適配合は、成形方法や用途等によっても異なるが、一般的に次のような配合割合とされ、繊維(好ましくはガラス繊維)は、これらを含む繊維強化プラスチック組成物中に20〜50質量%程度の割合で配合される。
本発明の繊維強化プラスチック組成物に含み得る他の添加成分の含有量は、基体樹脂(マトリックス樹脂および低収縮剤)100質量部に対して、次の範囲であることが好ましい。
硬化触媒 :0.2〜 2質量部
内部離型剤:1.0〜10質量部
充填材 :10〜200質量部
増粘剤 :0.5〜10質量部
本発明の水まわり製品は、本発明の繊維強化プラスチック組成物を用いて成形されている。
繊維強化プラスチックの成形法には多くの成形法があり、成形材料によってSMC(Sheet Molding Compound)、BMC(Bulk Molding Compound)、TMC(Thick Molding Compound)などに分類される。
BMCは上述のベース樹脂に離型剤、硬化触媒などを混合した混合物に、充填材をニーダーで混練し、次いで増粘剤を混合した後、ガラス繊維を均一に分散混合し、ニーダー取り出して所定の大きさや形状となして熟成したものである。
TMCは、基体樹脂に充填材、離型剤、硬化触媒などを混練した混合物に、増粘剤を混合した組成物と、繊維(例えば、ガラス繊維)とを、相対する少なくとも一対のローラーの間を通過させた後、当該ローラーに近接し、かつ間隙を設けて配置された回転体の高速回転により、生成混合物をかき落とし、棒状、塊状、シート状等の所望の形状にする方法である。
本発明の水まわり製品は、本発明の繊維強化プラスチック組成物を成形加工して得られるので、高い防汚性を示し、防汚効果の耐久性にも優れる。また、本発明の水まわり製品は、安価で製造することができ、また、水まわり製品の形状が複雑形状でも適用可能である。
<FRP組成物の調製>
表1に示す成分を混合し、FRP組成物1を調製した。
具体的には、基体樹脂100部に対し、表3に示すシリコーン化合物1を、表3に示す割合(4部)で配合した。これに、表1に示す成分のうち、基体樹脂、シリコーン化合物、及びガラス繊維以外の他の成分を添加して混練したものを、ガラス繊維のチョップドストランドマットに含浸させて、実施例1のFRP組成物1(ガラス繊維強化プラスチック組成物)を得た。なお、表1中、ガラス繊維の量は、FRP組成物1(ガラス繊維強化プラスチック組成物)の全質量に対する割合を示す。
得られたFRP組成物1を、シート状に成形してSMC1とした。
次いで、得られたSMC1を、硬化温度140℃で硬化させて、実施例1のガラス繊維強化プラスチックの板状試料(水まわり製品1)を作製した。
1.シリコーン化合物の硬化性
得られた水まわり製品の表面を目視で観察し、未反応シリコーン化合物の浮き出しの有無をもって、シリコーン化合物の硬化性を評価した。評価基準は下記のとおりである。結果を表3に示した。
−評価基準−
○:未反応のシリコーン化合物が浮き出しておらず、硬化性良好
×:未反応のシリコーン化合物が浮き出しており、硬化性不良
得られた水まわり製品1表面に蒸留水1.5μLを接触させたときの接触角を測定し、結果を表3に示した。水の接触角は、協和界面科学製接触角測定装置によって測定し、3回の測定結果の平均値を記した。
得られた水まわり製品1表面に蒸留水30μLを付着させたときの転落角を測定し、結果を表3に示した。水の転落角は、協和界面科学製接触角測定装置によって測定し、3回の測定結果の平均値を記した。
実施例1のFRP組成物1の調製において、シリコーン化合物種を、表3の「No.」欄に示す番号のシリコーン化合物とし、シリコーン化合物のFRP組成物中の含有量を、表3の「含有量」欄に示す量にとしたほかは同様にして、実施例2〜実施例4のFRP組成物2〜4、及び、比較例1〜比較例8のFRP組成物101〜108を調製した。また、FRP組成物の調製にあたっては、FRP組成物中のガラス繊維含有率が25質量%となるように、シリコーン化合物の割合に応じて水分量を調整した。
なお、比較例3においては、FRP組成物中に、シリコーン化合物を添加しなかった。
なお、比較例1の水まわり製品101は、表面に、未反応のシリコーン化合物が浮き出したため、接触角と、転落角の評価は行なわなかった。
実施例および比較例で用いたシリコーン化合物は、下記製品を用いた。いずれも室温でオイル状である。
・シリコーン化合物1 ;チッソ社製、FM0725(Mn=14,972)
・シリコーン化合物2 ;チッソ社製、FM0721(Mn= 6,387)
・シリコーン化合物101;チッソ社製、FM0711(Mn= 1,320)
・シリコーン化合物102;チッソ社製、FM7725(Mn=12,200)
・シリコーン化合物103;チッソ社製、FM7721(Mn= 5,603)
・シリコーン化合物104;チッソ社製、FM7711(Mn= 1,948)
・シリコーン化合物105;デグサ社製、TEGORAD2700(Mn=6,945)
・測定器;Waters社製、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)
・カラム;東ソー社製、TSKgelSuperH2000+TSKgelSuperH3000
・溶剤 ;テトラヒドロフラン(THF)
・カラム温度;40℃
・流量 ;0.5ml/min
実施例1〜4と比較例2〜8については、表3より明らかなように、比較例は接触角が大きく、撥水性を発現しているものの、転落角も大きくなっているのに対し、実施例は、いずれも接触角が大きく、かつ、転落角が小さくなっている。したがって、より厳格な評価においては、実施例の水まわり製品の方が、防汚性に優れていることがわかった。
Claims (3)
- 少なくとも不飽和樹脂を含む基体樹脂と、
前記基体樹脂100質量部に対して、2質量部〜4質量部の、数平均分子量が5,000〜20,000であり、片末端に反応性基を有するシリコーン化合物と、
を含有する繊維強化プラスチック組成物であり、前記繊維強化プラスチック組成物を用いて成形された成形体の表面における転落角が39度以下である、繊維強化プラスチック組成物。 - 前記片末端に反応性基を有するシリコーン化合物の数平均分子量が、6,000〜15,000である請求項1に記載の繊維強化プラスチック組成物。
- 請求項1または請求項2に記載の繊維強化プラスチック組成物を用いて成形された水まわり製品。
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