以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。尚、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
(第1の実施形態)
本実施形態の記録媒体撮像装置は、例えば複写機や画像形成装置等で用いることが可能である。図1は、その一例として記録媒体撮像装置を搭載している画像形成装置として、中間転写ベルトを採用し、複数の画像形成部を並列にして構成したカラー画像形成装置を示す構成図である。
図1におけるカラー画像形成装置1の各構成は以下のとおりである。2は、記録媒体Pを収納する給紙カセットである。3は、記録媒体Pを収納する給紙トレイである。4は、給紙カセット2又は給紙トレイ3から記録媒体Pを給紙する給紙ローラである。4’は、給紙カセット2又は給紙トレイ3から記録媒体Pを給紙する給紙ローラである。5は、給紙された記録媒体Pを搬送する搬送ローラであり、6は搬送ローラ5に対向する搬送対向ローラである。11Y、11M、11C、11Kは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の現像剤を担持する各感光ドラムである。12Y、12M、12C、12Kは、感光ドラム11Y、11M、11C、11Kを一様に所定の電位に帯電するための各色用の一次帯電手段としての帯電ローラである。13Y、13M、13C、13Kは、一次帯電手段によって帯電された感光ドラム11Y、11M、11C、11K上に各色の画像データに対応したレーザ光を照射し、静電潜像を形成するための光学ユニットである。
14Y、14M、14C、14Kは、感光ドラム11Y、11M、11C、11K上に形成された静電潜像を可視化するための現像器である。15Y、15M、15C、15Kは、現像器14Y、14M、14C、14K内の現像剤を感光ドラム11Y、11M、11C、11Kに送り出すための現像剤搬送ローラである。16Y、16M、16C、16Kは、感光ドラム11Y、11M、11C、11K上に形成した画像を一次転写する各色用の一次転写ローラである。17は、一次転写された画像を担持する中間転写ベルト。18は、中間転写ベルト17を駆動する駆動ローラ。19は、中間転写ベルト17上に形成された画像を記録媒体Pに転写するための二次転写ローラであり、20は、二次転写ローラ19に対向する二次転写対向ローラ。21は、記録媒体Pを搬送させながら、記録媒体Pに転写された現像剤像を融解定着させる定着ユニットである。22は、定着ユニット21によって、定着が行われた記録媒体Pを排紙する排紙ローラである。
なお、感光ドラム11Y、11M、11C、11K及び、帯電ローラ12Y、12M、12C、12K及び、現像器14Y、14M、14C、14K及び、現像剤搬送ローラ15Y、15M、15C、15Kは夫々色毎に一体化されている。このように、感光ドラムと帯電ローラと現像器とを一体化したものをカートリッジといい、各色のカートリッジはカラー画像形成装置1に対して簡易に脱着できるように構成されている。
まず、カラー画像形成装置1の画像形成動作における紙搬送の動作について説明する。不図示のホストコンピュータ等からカラー画像形成装置1に、印刷命令や画像情報等を含んだ印刷データが入力される。すると、カラー画像形成装置は印刷動作を開始し記録媒体Pは給紙ローラ4又は給紙ローラ4’によって、給紙カセット2又は給紙トレイ3から給紙され搬送路に送り出される。記録媒体Pは、中間転写ベルト17上に形成する画像の形成動作と搬送のタイミングとの同期を取るため、搬送ローラ5及び搬送対向ローラ6に一旦停止して画像形成が行われるまで待機する。その後、画像形成動作に同期して、記録媒体Pは二次転写部へと搬送される。記録媒体Pは、二次転写ローラ19及び二次転写対向ローラ20により、中間転写ベルト17上に形成された現像剤画像を転写される。記録媒体Pに転写された現像剤画像は定着ローラ等から構成される定着ユニット21によって定着される。定着された記録媒体Pは排紙ローラ22によって不図示の排紙トレイに排紙され、画像形成動作を終了する。
次に、電子写真方式による画像形成方法について説明する。中間転写ベルト17上に形成する画像の形成動作はまず、ホストコンピュータ等から印刷データがカラー画像形成装置1に入力されると、感光ドラム11Y、11M、11C、11Kは帯電ローラ12Y、12M、12C、12Kによって、一定の電位に帯電される。入力された印刷データにあわせて光学ユニット13Y、13M、13C、13Kは、帯電された感光ドラム11Y、11M、11C、11Kの表面をレーザビームによって露光走査して静電潜像を形成する。形成した静電潜像を可視化するために現像器14Y、14M、14C、14K及び現像剤搬送ローラ15Y、15M、15C、15Kによって現像を行う。感光ドラム11Y、11M、11C、11Kの表面に形成された静電潜像は、現像器14Y、14M、14C、14Kにより夫々の色で現像剤像として現像される。感光ドラム11Y、11M、11C、11Kは、中間転写ベルト17と接触しており、中間転写ベルト17の回転と同期して回転する。現像された各現像剤像は、一次転写ローラ16Y、16M、16C、16Kにより中間転写ベルト17上に順次多重転写され、多色現像剤像となる。この多色現像剤像は、二次転写ローラ19及び二次転写対向ローラ20により記録媒体P上に二次転写される。
図1の画像形成装置において、記録媒体撮像装置40は搬送ローラ5及び搬送対向ローラ6の上流側(本実施形態の画像形成装置では、給紙カセット2又は給紙トレイ3側)に設置され、給紙カセット2等から搬送された記録媒体Pの表面画像の情報を検知する。記録媒体撮像装置40による判別は、記録媒体Pが給紙カセット2等から画像形成装置内に送り出され、搬送ローラ5及び搬送対向ローラ6に狭持されて停止している間に行われる。又は、二次転写ローラ19及び二次転写対向ローラ20から成る二次転写ニップ部に搬送されるまでの間に行われる。なお、記録媒体撮像装置40は、記録媒体Pの種類の判別が行える場所であれば、搬送ローラ5及び搬送対向ローラ6の上流側の任意の場所に設置できる。また、搬送ローラ5及び搬送対向ローラ6と二次転写ニップ部との間に設置してもよい。
次に、本実施形態における記録媒体撮像装置40について図2及び図3を用いて説明する。図2(a)は表面平滑度を反映した表面画像を撮像するための記録媒体撮像装置40の構成を示している。また、図2(b)は、図2(a)の横断面図であり、図3は図2(a)の上断面図である。
図2(a)で示している記録媒体撮像装置40は、以下のものを備える。41は、記録媒体Pの表面に光を照射する照射手段である照射用LEDである。42は、照射手段から照射された光によって記録媒体Pの表面から反射する反射光を受光し結像する結像手段である結像レンズである。43は、結像手段により結像された光を撮像する撮像手段であるCMOSラインセンサである。44は、照射用LED41から照射された光を任意の方向に導くスリット構造部材である。ここでの任意の方向とは、後述する図3にて説明する。
また、記録媒体Pを搬送する機構として、記録媒体Pを搬送する搬送ローラ5及び搬送対向ローラ6と記録媒体Pの搬送路を形成する不図示の搬送ガイドを備えている。本実施形態に用いる照射用LED41は砲弾型白色LEDを用いている。なお、照射用LED41は、記録媒体Pを照射することが可能であれば、砲弾型白色LEDに限定されるものではない。また、図2(b)に示しているように、結像レンズ42は、記録媒体Pの搬送方向と直交するように配置されており、照射用LED41から照射された光によって記録媒体Pの表面から反射する反射光を結像する。結像レンズ42により結像された反射光は、CMOSラインセンサ43により撮像される。本実施形態においては、照射用LED41から照射される光は記録媒体P表面に対して10度の角度で照射されている。なお、この角度は一例であり、記録媒体Pの判別に十分な画像が得られる角度であれば、必ずしも10度の角度に限定されるものではない。
図3に示しているように、照射用LED41は照射される光の光軸が、記録媒体Pの搬送方向に対して反時計回りに45度(+45度)となるように配置されている。この角度が、先の図2(a)で説明したスリット構造部材の任意の方向である。照射角度範囲とは、照射用LED41から照射された光が記録媒体Pを照射する範囲である。照射角度範囲は照射用LED41から記録媒体Pの搬送方向に対して、光が照射されるCMOSラインセンサ43の画素範囲を表している。照射角度範囲が記録媒体Pの表面画像を撮像可能なエリアである。有効画像範囲は、照射角度範囲内のうち、記録媒体Pの種類の判別に用いる範囲である。ここでいう光軸とは、照射用LED41の中心軸上の光であると定義する。この光軸が先の照射角度範囲の中心にくるように、照射用LED41を設置することが、理想的な設計上の所望の位置となる。しかし、実際には、取り付け精度の問題等から、照射角度範囲の中心となるように設置されないこともある。
本実施形態では、一例として光源からの照射用LED41から照射された光の広がり角度を14度と規定し、照射用LED41の照射角度は、+38度から+52度としている。有効画像範囲は、記録媒体Pの種類の判別に用いる画像領域を表し、ここでは、照射用LED41から照射された光の広がり角を照射角度範囲より狭い10度と規定し、照射用LED41の照射角度は+40度から+50度としている。有効画像範囲は、照射角度範囲内よりも狭い範囲であれば、本実施形態のように光源からの広がり角を基準とするのではなく他の基準から有効画像範囲を定めてもよい。
スリット構造部材44は、照射用LED41を光源とする光が記録媒体Pに対して、上記に記した角度で照射されるように配置されている。スリット構造部材44を配置することで、CMOSラインセンサ43の各画素における光の照射方向を一義的に特定することができ、上述した光軸の算出が可能となる。本実施形態では、光を導く部材としてスリット構造部材44を用いたが、他の手段として導光体部材などを用いても良い。
図4は、記録媒体撮像装置40の動作制御ブロック図の一例である。まず、照射用LED41が記録媒体Pの表面に対して光を照射し、記録媒体Pの表面平滑度を反映した表面画像を含む反射光を、結像レンズ42を介してCMOSラインセンサ43に結像させる。結像させた画像をCMOSラインセンサ43で撮像した後、各エリアの反射光量に応じた記録媒体Pの表面画像を判別処理手段45へ出力する。その後、判別処理手段45は、受け取った記録媒体Pの表面画像をA―D変換451においてA−D変換し、記録媒体Pの搬送方向と直交する同一直線上の画像を得る。本実施形態において、A−D変換451は8ビットA−D変換ICを使用し、0から255の値を出力する。
画像抽出452及び記憶領域455において、受け取った記録媒体Pの表面画像を搬送方向へつなぎ合わせ、2次元画像情報を取得する。本実施形態において、記録媒体Pの搬送速度は80mm/秒とし、CMOSラインセンサ43の解像度は1ラインの600dpi(1ドットあたり約42μm)とした。画像サイズは118ドット×118ドットとし、これは記録媒体Pの5mm×5mm相当にあたる。なお、画像サイズは、CMOSラインセンサのサイズやコスト、光源の光量ムラ、画像形成装置における記録媒体Pの搬送可能な距離等の制約によって、適宜変更可能である。CMOSラインセンサ43の撮像タイミングは、42μm/(80mm/秒)と計算され、約530μsec間隔以上の間隔を空けて撮像を行う。これにより、記録媒体Pの表面の撮像エリアが重複せずに撮像することができる。
得られた2次元画像情報から記憶領域455に記憶されている光軸や上述した有効画像範囲などの情報に基づき、記録媒体Pの種類の判別に用いる表面画像の抽出を行う。このとき照射用LED41の光量分布の補正(シェーディング補正)も行う。その後、特徴量算出453では、抽出された表面画像に基づき特徴量の算出を行う。最後に紙種判別454において、特徴量算出453で算出された結果に基づき記録媒体Pの種類の判別を行う。
紙種判別454の結果を制御部10の画像形成条件制御部101に出力し、判別した結果に基づいて、画像形成装置の画像形成条件を制御する。画像形成条件とは、転写電圧や記録媒体Pの搬送速度、定着器の温度などの条件である。例えば、紙種判別の結果、ラフ紙と判別された場合、普通紙の画像形成条件と比べ現像剤の定着性が良くないので、記録媒体Pの搬送速度を遅くして定着ユニット21での記録媒体Pの滞留時間を増やすことや、定着温度を高くすること等の制御を行う。
記憶領域455は、工場出荷時等に行われる照射用LED41を発光制御する電流値や後述する光量調整時に必要な光量目標値等を記憶している。さらに、実際に記録媒体Pの種類の判別をするときに行う、後述する光量差を補正するために使用される照射用LED41のOFF時の暗電流データとON時の光量ムラデータを夫々記憶している。また、照射用LED41のON時の光量ムラデータにおける、内面基準板の出力に相当するデータの画素範囲とその光量値や照射用LED41の光軸に相当するデータの画素範囲とその光量値も記憶している。
また、照射用LED41の光量補正を行う場合、画像抽出452で取得した搬送方向と直交する表面情報を光量補正量算出456に出力し、出力情報を基に照射用LED41の光量補正量を算出する。照射制御部102に算出した光量補正量を出力し、この光量補正量に基づき発光制御を行う。光量補正を実施する理由は、光量過多又は光量不足を防ぐためである。光量過多の場合、記録媒体Pの表面からの反射光が多くなり、取得した表面画像全体が明るくなってしまい、記録媒体Pの表面の凹凸を潰してしまう。また、光量不足の場合、記録媒体Pの表面画像全体が暗くなってしまい、記録媒体Pの表面の凹凸を潰してしまう。このため、表面画像の撮像に適した光量で照射用LED41を発光するように補正する必要がある。
表面画像の抽出及び光量補正を行う上で、照射用LED41の光軸の位置が重要となる。先にも述べたように、画像形成装置に配置されたときの照射用LED41の光軸は、製造上のばらつき要因により、設計上の所望の位置に配置されないことがある。そのため、記録媒体Pに照射する角度や光量分布が設計上の計算とずれてしまい、予め定められた有効画像範囲によって抽出される画像領域には照射光の不十分な領域を含んでしまう場合がある。以下、光軸と光の照射の関係について述べる。
図5(a)は、照射用LED41の光軸が設計上の所望の位置にズレなく配置されている場合の表面画像である。このときの照射用LED41の光量分布を表すCMOSラインセンサ43の1ラインの各画素の出力を図6(a)に示す。本実施形態では、設計上の所望の位置とは、画素位置81としているが、スリット構造部材44の設置場所等の条件によって、適宜設定することが可能である。図6(a)の光量分布からもわかるように、有効画像範囲内の光量が、精度の良い画像を得ることができる閾値より高くなっているため、精度の良い表面画像を得ることが可能となる。本実施形態では、精度の良い画像を得ることができる閾値を180としているが、これに限定されるものではなく、記録媒体Pの種類の判別が正常に行える範囲であれば適宜設定することが可能である。
図5(b)は、照射用LED41の光軸が設計上の所望の位置に配置されていない場合の表面画像である。このときの照射用LED41の光量分布を表すCMOSラインセンサ43の1ラインの複数画素の出力値を図6(b)に示す。図6(b)の光量分布からもわかるように、光軸が設計上の所望の位置からズレているため、有効画像範囲内に光量が不足している暗い部分の画像領域が入ってしまっている。そのため、図5(b)に示した記録媒体Pの表面画像が精度の低いものとなってしまう。なお、図6(a)及び図6(b)の光量分布は、後述する表面画像の光量差を補正するシェーディング補正に用いる補正用データである。図5(a)及び図5(b)で得た表面画像に対して、記録媒体Pの種類の判別に必要な有効画像範囲に基づいて、表面画像を抽出したものを図5(c)及び(d)に示す。そして、図5(c)及び(d)の夫々の表面画像に対して、光量差を補正するシェーディング補正を行った結果を図7(a)及び(b)に示す。なお、具体的なシェーディング補正の詳細については後述する。
図7(a)の設計上の所望の位置から光軸ズレのない表面画像は、表面の凹凸がしっかり表された精度の高い表面画像を得られていることがわかる。しかし、図7(b)の設計上の所望の位置から光軸ズレのある表面画像は、十分に光が照射されていない領域を有効画像範囲として選択してしまっているため、表面の凹凸が読取りにくい精度の低い表面画像となってしまっている。図7(a)及び(b)の夫々の表面画像に対して、明度情報をヒストグラム化すると、図7(c)及び(d)に示すような分布が得られる。
図7(c)の設計上の所望の位置から光軸ズレのない表面画像のヒストグラムの分布は、特異のない正規分布を示している。しかし、図7(d)の設計上の所望の位置から光軸ズレのある表面画像のヒストグラムの分布は、図7(b)の画像領域の右部分(図5(d)での暗い部分)の影響を受け、明度のばらつきが大きい分布となってしまっている。このような分布になってしまうと、表面の凹凸が大きい記録媒体Pを表面の凹凸が小さい記録媒体Pであると、誤判別をしてしまうことが考えられる。また、表面の凹凸が小さい記録媒体Pを表面の凹凸が大きい記録媒体Pであると、誤判別してしまうことも考えられる。このように、記録媒体Pを撮像した表面画像に、上述したような明度の低い部分があると誤判別を起こす原因となり得るので、閾値以上の明度の画素を有効画像範囲内と選択することで精度の良い表面画像を得ることができる。
以下に、光量補正の制御方法及び、有効画像範囲の選択方法を説明する。以下に記載した光量補正の制御方法及び、有効画像範囲の選択方法は、工場出荷時において実施され、得られたデータを記憶領域455に保存する。なお、光量補正は照射角度範囲内での撮像された基準板又は基準となる記録媒体Pの表面情報に基づいて行う。また、工場出荷時だけでなく、ユーザにより基準となる記録媒体Pが搬送されたときに、光量補正及び有効画像範囲の選択を行うようにしてもよい。光量補正及び有効画像範囲の選択は基本的には工場出荷時に行われ、その結果を記憶領域455に記憶させて、実際に記録媒体Pを判別するときに使用する。基本的には出荷後はこの記憶領域455に記憶されているデータを基にするが、照射用LED41の劣化等の条件や状況の変化により適切な光量及び有効画像範囲が工場出荷時と異なってくることも考えられる。そのような場合は、基準板又は基準紙により再度光量補正及び有効画像範囲の選択を行うことが可能である。
光量補正を実施する理由は、光量過多の場合、記録媒体Pの表面からの反射光が多くなり、取得した表面画像全体が明るくなり過ぎてしまい、表面の凹凸が読取りにくくなってしまうためである。また光量不足の場合、記録媒体Pの表面からの反射光が少なくなり、取得した表面画像全体が暗くなり過ぎてしまい、表面の凹凸が読取りにくくなってしまうためである。このため、表面画像の撮像に適した光量で照射用LED41を発光するように補正する必要がある。また上述したように、精度の良い表面画像を得るために、有効画像範囲を適切に選択する必要がある。有効画像範囲を適切に選択するのは、照射用LED41の取り付け精度による表面画像の影響を少なくするためである。
図8に示したフローチャートに基づき、光量補正の制御方法の説明を行う。シーケンス101では、照射用LED41をOFFした状態でCMOSラインセンサ43を用いて画像を取得し、暗電流データとして記憶領域455の配列B[0]〜B[i_max]に出力する。この暗電流データは外乱光などのノイズを除去するための明度情報であり、後述するシェーディング補正における黒(暗部)基準として用いる。暗電流データは、CMOSラインセンサ43で複数回撮像を行い、得られた夫々の画素における複数の明度情報に対し、画素ごとに平均値を算出することにより得られる。本実施形態では、CMOSラインセンサ43は600dpiで468画素を用いたため、i_max=468−1、測定回数を5回、黒基準をB、各測定での出力をB1〜B5と表すと、B=(B1+B2+B3+B4+B5)/5として求めることができる。
シーケンス102では、照射用LED41の発光電流値(以下、I_ledとする)を設定し、発光させる。I_ledの値は、記憶領域455に格納されている値LED_currentを用いる。光量補正が1度以上行われている場合は、すでにLED_currentの値が設定されているため、以下に示すシーケンス103から105のループの制御回数を低減させることができる。また初期状態で光量補正を開始する場合は、LED_currentは0又は予め設定された所定のデフォルト値を用いる。
シーケンス103では、照射用LED41を発光させて、CMOSラインセンサ43を用いて表面画像を取得する。ここでは、照射用LED41の照射角度範囲に基準板を配置し、基準板に対して光を照射する。基準板からの反射光をCMOSラインセンサ43にて撮像し、基準板の明度情報を取得し、記憶領域455の配列W[0]〜W[i_max]に出力する。i_maxは上述したi_max=468−1としている。これにより、CMOSラインセンサ43の1ライン分の明度分布が得られる。なお、ここでは基準板を用いたときを一例として説明しているが、基準紙によって行っても良い。
シーケンス104では、得られた基準板表面情報から光量補正を行う画素範囲の検出を行う。本実施形態では、1ライン分の明度情報分布において、明度出力値が一番大きい画素Tを検出する。その画素Tを中心として、左右30画素を光量補正用範囲とした。なお、明度情報分布は1ラインに限られるものではなく、複数ライン撮像を行い平均値から検出する等しても良い。
シーケンス105では、算出された光量補正用範囲の明度分布から明度平均値を算出する。本実施形態では、W[T−30]からW[T+30]の平均値となる。算出した値が所望の光量補正値になるように照射用LED41のI_ledの値を調整する。明度値を比較して足りないと判断されれば、照射用LED41のI_ledの値を上げて調整を行う。調整の結果、所望の値になったところで光量補正を終了する。また、算出した明度値が変化ない場合、照射用LEDの光量が最大になったと判断して、光量補正を終了する。なお本実施形態では、一例として基準板での光量補正値はCMOSラインセンサ43の撮像取込の最短時間と乱反射率を加味し、所望の光量補正値を192(明度強度は256階調(0(暗)〜255(明))とした。光量補正値はこの数値に限られるものではなく、記録媒体Pの表面画像を精度良く撮像できる値であれば、適宜設定できるものである。
シーケンス106では、照射用LED41のI_ledの値を、LED_currentとして保存する。なお、光量補正を行うにあたって基準板がない場合は、記録媒体Pに対して光を照射して、記録媒体Pの表面情報に基づき記憶領域455に記憶している値になるように照射用LED41の発光を制御する。以上が光量補正の制御方法であり、記録媒体Pの表面画像を撮像する前の準備段階の動作である。
図9に示したフローチャートに基づき、有効画像範囲の算出方法の説明を行う。シーケンス201では、照射用LED41の発光から得られる明度分布から予め決められた閾値以上の画素を算出する。本実施形態では一例として、明度値はCMOSラインセンサ43の撮像取込の最短時間と乱反射率を加味し、180(明度強度は256階調(0(暗)〜255(明)とした場合である)とした。シーケンス202では、先に算出された閾値以上の画素数を求め、画像範囲を算出する。これは、有効画像範囲は隣り合う連続した画素範囲であり、照射角度範囲内である必要があるためである。
シーケンス203では、算出した画像範囲の画素数が予め記憶されている判別に用いる搬送方向と直交する方向(以下、センサ方向とする)の必要画素数dot_wの値を満たしているか否かを判別する。満たしている場合はシーケンス204に進み、満たしていない場合はシーケンス206に進む。ここで、上記条件を満たしている場合には、画像範囲の画素数を必要画素数dot_wと同数とする。制限の方法は以下シーケンス204及び205において説明する。なお、本実施形態では、センサ方向の必要画素数dot_wは118画素とするが、記録媒体Pの判別が精度良く行われる画素数であれば、これに限定されるものではない。シーケンス204では、先に算出された画像範囲内において最も明度の高い画素を算出する。
シーケンス205では、算出された最も明度の高い画素が中央になるように画像範囲を再度算出しなおす。このとき、先のシーケンス203で述べたように、画像範囲はセンサ方向の必要画素数dot_wと同数となるように算出を行う。シーケンス206では、算出された画像範囲の画素数をセンサ方向の必要画素数dot_wとして保存する。この画像範囲を判別に用いる有効画像範囲とする。シーケンス207では、算出された画像範囲を有効画像範囲(W[Rdot]〜W[Rdot+dot_w−1])として保存する。
有効画像範囲の補正を行ったCMOSラインセンサ43の1ラインの各画素の出力値を図10(a)に示す。また、有効画像範囲の補正を行った記録媒体Pの表面画像を図10(b)に示す。図10(a)の光量分布は、先の図6(b)に示したものと同様である。図6(b)では有効画像範囲に閾値より明度の低い部分が入っていたため、表面画像の精度が下がってしまっていた。一方、図10(a)の光量分布は有効画像範囲を閾値以上と定めているため、有効画像範囲の出力値が高くなっている。そして、図10(b)に示す表面画像も精度の良いものとなっている。これにより、照射用LED41の取り付け精度による表面画像への影響を少なくすることができていることがわかる。
次に、記録媒体Pの種類の判別シーケンスについて図11のフローチャートに基づき説明する。シーケンス301では、予め記憶されているLED発光電流値I_ledに基づき、照射用LED41は記録媒体Pに対して光を照射する。
シーケンス302では、記録媒体Pからの反射光をCMOSラインセンサ43で撮像し、判別処理手段45に記録媒体Pの有効画像範囲内の表面画像を出力する。そして、記録媒体Pの表面画像の明度情報を配列POj[0]〜POj[dot_w−1]に格納する。判別処理手段45は受け取った記録媒体Pの表面画像を搬送方向へつなぎ合わせることにより、2次元画像情報を取得する。シーケンス内のjは搬送方向の画素位置を表している。
シーケンス303では、予め記憶されている搬送方向の必要画素数dot_hを取得するまで、シーケンス302を繰り返す。本実施形態では、必要画素数dot_hを118画素とし、記憶領域455に記憶している。この必要画素数dot_hは118画素に限定されるものではなく、記録媒体Pの判別が精度良く行われる画素数であればよい。
シーケンス304では、得られた表面画像に対してシェーディング補正を行う。これは、照射用LED41を光量補正しても、有効画像範囲内を均一に照射することは困難であるからである。そのため、有効画像範囲内で光量差が生まれ、この光量差によって有効画像範囲内の部分ごとの表面画像が変化してしまう。この影響を低減するためにシェーディング補正を行う。シェーディング補正は、上述した照射用LED41のOFF時の暗電流データDBと基準板データDWに基づいて行う。照射用LED41の光量分布は上述した図10(a)の曲線で表した光量分布であり、基準板データDWは図10(a)中の有効画像範囲内の光量分布である。以上の出力値に基づき有効画像範囲の画素の値が192になるように出力値との比を算出する。算出した各画素の比を記録媒体Pの表面画像の各画素に対して掛けて演算処理を行う。補正後のデータをDj[0]〜Dj[dot_w]とする。ここでは、説明の一例としてjライン目i画素のをシェーディング補正する方法について示す。
まず、暗電流ノイズの影響を除去するために、POj[i]―DB[i]を行う。次に光量ムラの影響を除去するために、得られた結果に対して、予め決められた光量補正値(ここでは、192とした)に光量を合わせ、Dj[i]=(POj[i]―DB[i])×192/DW[i]を行うことによりシェーディング補正が可能となるになる。シェーディング補正を施した表面画像は先に示した図10(b)となる。
シーケンス305では、シェーディング補正を行った記録媒体Pの複数の画像から表面の凹凸を抽出して、表面の粗さの特徴量を算出する。算出方法は、画像領域の明度情報をヒストグラム化し、明度分布の標準偏差とした。補正のデータDj[i]の全データ(i=0〜dot_w、j=0〜dot_h)の平均値をDAとすると、標準偏差とは、(((Dj[i]−DA)の2乗)の総和÷個数)の平方根で求められる。
先に示した図10(b)の表面画像に対して、表面の粗さの特徴量を算出した結果を図12に示す。同様に光軸が設計上の所望の位置にズレなく配置されている場合の表面画像である図5(c)と、光軸が設計上の所望の位置に配置されていない場合の表面画像である図5(d)の画像についても特徴量を算出した結果を図12に示す。このとき判別に使用した記録媒体Pは同一のものである。
光軸ズレのある図5(d)の表面画像から得られる特徴量は、光軸ズレのない図5(c)の表面画像から得られる特徴量と比較して、出力値が小さいことがわかる。これは上述したように、光が十分に照射されていない画像領域を選択しているため、精度良く表面画像を撮像できず、出力値が下がってしまったためである。
一方、光軸ズレのある図5(d)の状態から有効画像範囲を補正した図10(b)の表面画像から得られる特徴量は、光軸ズレのない図5(c)の表面画像から得られる特徴量と比較して、ほぼ同じ値を示している。よって、同一の記録媒体Pであると判断することができる。これは、有効画像範囲を補正することにより、十分に光が照射されている画像領域を選択することができ、記録媒体Pの凹凸をしっかりと判別できているからである。
最後に、シーケンス206では、得られた特徴量に基づき、記録媒体Pの種類の判別を行い、図4の制御部10中の画像形成条件制御部101に判別結果を出力する。得られた特徴量と予め記憶されている記録媒体Pの種類を判別するための出力値とを比較し、記録媒体Pの種類を判別する。画像形成条件制御部101は得られた記録媒体Pの種類の判別結果に基づいて、画像形成装置の画像形成条件を制御する。
このように、光量分布に応じて適切に有効画像範囲を補正することで、光が十分に照射されている領域を選択して記録媒体Pの判別を行うことができるため、照射用LED41の取り付け精度の影響を少なくできる。適切に有効画像範囲を補正することができたことにより、有効画像範囲の補正を行わないときに比べて判別精度を向上させることができる。
ここまでは、光量分布が比較的滑らかな出力波形を示す場合を一例として説明を行ってきたが、図13に示したように、CMOSラインセンサや結像レンズの特性により、光量分布が滑らかな曲線にならない場合がある。ここでは、図13を用いてこのような場合に、どのように有効画像範囲を決定するかについて説明する。
図13のような光量分布において、予め定められた閾値(図13の第1閾値)より大きい明度値の画素位置を有効画像範囲とすると、必要画素数を満たした連続した有効画像範囲が算出されない場合がある。このような場合には、表面画像が精度良く得られる範囲内で、閾値を下げて(図13の第2閾値)有効画像範囲を広げるようにする。このよう表面画像に影響を与えない範囲で、ある程度閾値に幅をもたせることによって、明度分布にばらつきがあるときにも対応することができる。また、複数の範囲が有効画像範囲として選択可能である場合は、閾値以上の明度を示す範囲の画素数が最も多い範囲を有効画像範囲として選択する。
(第2の実施形態)
本実施形態の構成は、第1の実施形態で説明した図1乃至図4で実施可能であるため、ここでの説明は省略する。本実施形態では、第1の実施形態で説明した様に、有効画像範囲を補正すると、予め決まっているセンサ方向の必要画素数を満足できない場合について説明する。
図14は、ある光量分布に基づき、先の第1の実施形態によって説明した方法で有効画像範囲を補正した結果を示したものである。有効画像範囲を補正した結果、画素位置10から79が有効画像範囲となった。有効画像範囲を補正して画像抽出を行った結果を図15(a)に示す。画像の画素サイズは70×118(600dpiで3mm×5mm相当)である。図15(a)より、十分に光が照射されている領域を選択できていることがわかる。よって、光量分布に基づき、センサ方向の必要画素数を変更することで、十分に光が照射されていない領域を省いて表面画像を撮像することができ、記録媒体の判別精度の低下を改善することができる。
図14及び図15(a)から、有効画像範囲を補正することにより精度の良い表面画像を得ることができることがわかった。しかし、センサ方向の必要画素数が少なくなってしまったことにより、撮像した表面画像が記録媒体Pの判別に必要な画素数より少なくなってしまうことがある。以下、記録媒体Pの判別に必要な画素数が少なくなってしまったときの制御について述べる。
センサ方向の必要画素数が小さくなれば、少ない画像領域で求められた特徴量より記録媒体Pの種類の判別を行なければならない。この小さい画像領域の特徴では、記録媒体Pの全体とは違う特徴が算出されてしまい、記録媒体Pの種類の判別を誤ってしまう可能性がある。このような誤判別を起こさないために、画像領域の画素数を一定以上に確保するためには、搬送方向の必要画素数を拡大させることで撮像するライン数を増やし、画像領域を大きくする。搬送方向の必要画素数は、上述の方法で求められたセンサ方向の必要画素数と別途指定しておいた画像領域全体の必要画素数との除算で求められる。ただし、搬送方向の必要画素数は、測定時の記録媒体Pの移動距離に依存し、測定を始めた位置から記録媒体Pの後端までの長さの範囲内の長さとなる。
以下、本実施形態における一例として具体的な数値を示しながら、搬送方向の必要画素数を変更する方法を説明する。全体必要画素数が13924画素(118×118)であるとき、センサ方向の必要画素数が70画素である場合の搬送方向の必要画素数は199画素となる。画素数は自然数であるため、除算の結果を四捨五入等する必要があり、搬送方向の必要画素数は全体必要画素数に可能な限り近い値であることが望ましい。
修正された画像領域から抽出された表面画像を図15(b)に示す。このときの表面画像のサイズは、70×199(600dpiで3mm×8.3mm相当)である。このように、搬送方向の必要画素数を増やすことで、画像領域全体の画素数も増やすことができ、記録媒体Pの種類を判別する基となる画像の精度が向上するので、記録媒体Pの種類の判別精度も向上させることができる。
表面画像のサイズが118×118(600dpiで5mm角相当)、70×118(600dpiで3mm×5mm相当)、70×199(600dpiで3mm×8.3mm相当)の3つの場合において、夫々6度測定を行った。そのときの特徴量を算出した結果を図16に示す。図16から搬送方向の必要画素を変更しない画像領域70×118では、出力のばらつきが大きいことがわかる。一方、同じ画像領域のサイズである118×118と70×199では、出力のばらつきが小さく、その度合いもほぼ等しいことがわかる。
よって、画像領域のサイズが小さくなるにつれ、出力のばらつきが大きくなり、記録媒体Pの判別精度が低下してしまうことがわかる。このような場合には、搬送方向の必要画素数を増やすことで、記録媒体Pの判別に必要な画素数を確保する。画像領域の補正を行うことで、画像領域の補正を行わない場合と比べて、記録媒体Pの判別精度を向上させることができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態の構成は、第1の実施形態で説明した図1及び図4で実施可能であるため、ここでの説明は省略する。第1の実施形態と異なる構成として、本実施形態による記録媒体撮像装置40について説明する。図17(a)で示しているように、本実施形態の記録媒体撮像装置40は、複数の光源が設置されていることが特徴となる。以下、光源としてLEDを2つ備える場合を例として説明するが、LEDは2つに限られるものではなく、複数個備えていても構わない。
記録媒体撮像装置40は、以下のものを備える。41aは、記録媒体Pの表面に光を照射する照射手段である照射用LEDである。41bは、記録媒体Pの表面に光を照射する照射手段である照射用LEDである。42は、照射手段から照射された光によって記録媒体Pの表面から反射する反射光を結像する結像手段である結像レンズである。43は、結像手段により結像された光を撮像する撮像手段であるCMOSラインセンサである。44は、照射用LED41a及び41bから照射された光を任意の方向に導くスリット構造部材である。ここでの任意の方向とは、後述する図18にて説明する。
また、記録媒体Pを搬送する機構は、記録媒体Pを搬送する搬送ローラ5と、それに対向して設けられた搬送対向ローラ6と記録媒体Pの搬送路を形成する不図示の搬送ガイドを備えている。図17(a)において、本実施形態に用いる照射用LED41a、41bとして、砲弾型白色LEDを用いた。なお、照射用LED41は、記録媒体Pの表面画像を撮像することが可能であれば、砲弾型白色LEDに限定されるものではない。
また、図17(b)に示しているように、結像レンズ42は、記録媒体Pの搬送方向と直交するように配置されており、照射用LED41a及び41bから照射された光によって記録媒体Pの表面から反射する反射光を結像する。結像レンズ42により結像された反射光は、CMOSラインセンサ43により撮像される。
本実施形態においては、照射用LED41a及び41bから照射される光は記録媒体P表面に対して10度の角度で照射されている。なお、この角度は一例であり、記録媒体Pの判別に十分な画像が得られる角度であれば、必ずしも10度の角度に限定されるものではない。
図18に示しているように、照射用LED41aは照射される光の光軸が、記録媒体Pの搬送方向に対して反時計回りに45度(+45度)となるように配置されている(第1の方向)。照射用LED41bは照射される光の光軸が、記録媒体Pの搬送方向に対して時計回りに45度(−45度)となるように配置されている(第2の方向)。この角度が、先の図17(a)で説明したスリット構造部材の任意の方向である。
照射角度範囲aとは、照射用LED41aから照射された光が記録媒体Pを照射する範囲であり、照射角度範囲bとは、照射用LED41bから照射された光が記録媒体Pを照射する範囲である。照射角度範囲a及び照射角度範囲bが記録媒体Pの表面画像を撮像可能なエリアである。有効画像範囲aは、照射角度範囲a内のうち、記録媒体Pの種類の判別に用いる範囲であり、有効画像範囲bは、照射角度範囲b内のうち、記録媒体Pの種類の判別に用いる範囲である。ここでいう光軸とは、照射用LED41a及びbの中心軸上の光であると定義する。この光軸が先の照射角度範囲の中心にくるように、照射用LED41a及びbを設置することが、理想的な設計上の所望の位置となる。しかし、実際には、取り付け精度の問題等から、照射角度範囲の中心となるように設置されないこともある。
本実施形態では、一例として光源からの照射用LED41a及び41bから照射された光の広がり角度を14度と規定し、照射用LED41aの照射角度は、+38度から+52度とし、照射用LED41bの照射角度は、−38度から−52度としている。有効画像範囲a及びbは、記録媒体Pの種類の判別に用いる画像領域を表し、ここでは、照射用LED41から照射された光の広がり角を照射角度範囲より狭い10度と規定している。そして、照射用LED41aの照射角度は+40度から+50度、照射用LED41bの照射角度は−40度から−50度と規定している。有効画像範囲a及びbは、照射角度範囲内よりも狭い範囲であれば、本実施形態のように光源からの広がり角を基準とするのではなく他の基準から有効画像範囲を定めてもよい。
スリット構造部材44は、照射用LED41a又は41bを光源とする光が記録媒体Pに対して、上記に記した角度で光を照射するために配置されている。スリット構造部材44を配置することで、CMOSラインセンサ43の各画素における光の照射方向を一義的に特定することができ、上述した光軸の算出が可能となる。
また、スリット構造部材44は、照射用LED41aを光源とする光が、照射用LED41bによって照射される記録媒体Pの表面上の領域を照射してしまうことを防止する。反対に、照射用LED41bを光源とする光が、照射用LED41aによって照射される記録媒体Pの表面上の領域を照射してしまうことも防止する。このように、記録媒体Pの表面に精度良く光を照射するために、照射用LED41a及び41bの照射方向を制限している。スリット構造部材44により照射方向を制限することで、CMOSラインセンサ43の各画素における光の照射方向を一意に特定することができる。本実施形態では、光を導く部材としてスリット構造部材44を用いたが、照射方向を遮光する方法として、導光体部材などを用いても良い。また、光照射方向毎に光の照射タイミングをずらして光を照射して、複数の画像を取得することも可能である。
次に光量補正について説明する。図4中の照射制御部102は、照射用LED41a又は41bに対してから予め定められた光量で発光制御を行うために、光量補正を行う。このとき、照射用LED41aと41bは夫々独立して光量補正を行う。照射用LED41aと41bの光量補正は、第1の実施形態の図8に示した制御で行われるため、ここでの説明は省略する。光量補正の結果、夫々の照射方向の光量が異なる場合は、測定タイミングをずらして、夫々の照射方向に対して表面情報を取得するようにする。また基準板がない場合は、記録媒体Pに対して光を照射して、記録媒体Pの表面情報に基づき記憶領域455に記憶してある値になるように夫々の発光を制御する。
次に、記録媒体Pの判別シーケンスについて図19に示し、説明する。シーケンス401では、予め記憶されている各LED発光電流値LED_currenta、LED_currentbに基づき、照射用LED41aは記録媒体Pに対して光を照射する。同様に照射用LED41bも記録媒体Pに対して光を照射する。
シーケンス402では、記録媒体Pからの反射光をCMOSラインセンサ43で撮像し、判別処理手段45に記録媒体Pの表面情報画像を出力する。判別処理手段45は受け取った記録媒体Pの表面情報画像を搬送方向へつなぎ合わせることにより、2次元画像情報を取得する。シーケンス内のjは搬送方向の画素位置を表している。
シーケンス403では、予め記憶されている搬送方向の必要画素数を取得するまで、シーケンス302を繰り返す。本実施形態では、搬送方向の必要画素数を(118画素)をとし、記憶領域455に記憶している。この必要画素数dot_hは118画素に限定されるものではなく、記録媒体Pの判別が精度良く行われる画素数であればよい。
ここで、上述までのシーケンスにより得られた表面画像を図20(a)、(b)に示す。図20(a)はラフ紙の表面画像であり、図20(b)は普通紙の表面画像である。図20は搬送方向の必要画素数以上に取り込んだ記録媒体Pの表面画像を示している。上述したシーケンス302及びシーケンス303により、記録媒体Pの判別に必要な画素数だけ抽出して取得される画像は図21(a)、(b)に示す。
図21(a)は図20(a)中の点線枠内の画像であり、図21(b)は図20(b)中の点線枠内の画像である。図21(a)、(b)の画像領域のサイズは、118×118(600dpiで5mm×5mm相当)である。図21(a)、(b)中の有効画像範囲aの画像が照射用LED41aで光を照射した場合の結果(第1の表面画像)であり、有効画像範囲bの画像が照射用LED41bで光を照射した結果(第2の表面画像)である。
シーケンス404では、得られた表面画像に対してシェーディング補正を行う。これは、照射用LED41a及び41bを光量補正しても、有効画像範囲内を均一に照射することは困難であるからである。そのため、有効画像範囲内で光量差が生まれ、この光量差によって、有効画像範囲内の部分ごとの表面画像が変化してしまう。この影響を低減するためにシェーディング補正を行う。シェーディング補正の方法は、第1の実施形態で説明した方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。
図21(a)、(b)の画像に対して、シェーディング補正を施した画像を図22(a)、(b)に示す。図22(a)、(b)中の有効画像範囲aの画像が、照射用LED41aから照射された光により撮像した画像を補正した結果であり、有効画像範囲bの画像が、照射用LED41bから照射された光により撮像した画像を補正した結果である。
シーケンス405では、シェーディング補正を行った表面画像の特徴量を算出する。算出方法は、画像領域の明度情報をヒストグラム化し、明度分布の標準偏差とした。シーケンス406では、シーケンス405で算出した特徴量の平均値を算出している。図22(a)、(b)の画像に対して、特徴量を算出した結果を図23に示す。
図23は、ラフ紙と普通紙を夫々縦搬送と横搬送させて測定を行った結果を示している。縦搬送は記録媒体Pの長手方向に搬送させたことを表し、横搬送は記録媒体Pの短手方向に搬送させたことを表している。
照射用LED41aは、照射用LED41aから照射された光から得られた画像の特徴量を示しており、照射用LED41bは、照射用LED41bから照射された光から得られた画像の特徴量を示している。照射用LED41a及び照射用LED41bは、2つの光源から得られた画像の平均から得た特徴量を示している。これらの出力値から、縦搬送と横搬送で算出される特徴量の値が大きく異なることがわかる。1つの照射方向から得られた画像を用いた照射用LED41aと照射用LED41bの特徴量は、縦搬送と横搬送で大きくばらついている。一方、2つの照射方向から得られた画像を用いた照射用LED41a及び照射用LED41bの特徴量は、平均値を求めているため縦搬送と横搬送でのばらつきが小さいことがわかる。このように、1つの照射方向から得られた画像において、縦搬送と横搬送で出力値にばらつきがあるのは、記録媒体Pの繊維方向が影響するからである。1つの照射方向から得られた画像においても、適切な光量によって照射を行っていれば、精度の良い画像が得られるものの、たまたま照射方向と記録媒体Pの繊維方向が平行に近くなってしまうと表面画像の精度が落ちてしまうことがある。
このような、照射方向と記録媒体Pの繊維方向による表面画像の精度のばらつきを抑えるために、2方向から照射された光を基に撮像した表面画像から表面の凹凸を判断すると図23からもわかるように、安定した精度を保つことができる。このとき、2光源となるLEDの角度差が90度異なるように配置することで、一方の光源から得られる表面画像のコントラストが高くなれば、他方の光源から得られる表面画像のコントラストは低くなる。よって、紙搬送方向が異なっても、コントラストの高い表面画像と低い表面画像が同時に得られるため、1枚の記録媒体Pに対して、この得られた2つの表面画像に基づき記録媒体Pの種類の判別することで、繊維方向の影響を低減できる。
よって、2方向の異なる角度から撮像された表面画像を用いて、記録媒体Pの種類の判別を行うことで、繊維方向の影響を低減できるので、精度の良い特徴量を得ることができる。その結果、記録媒体Pの搬送方向による特徴量のばらつきが低減され、記録媒体Pの種類の判別精度を向上することができる。なお、本実施形態の一例としては、2光源から算出した特徴量を平均値として記録媒体Pの判別に用いたが、単純な和としても同様の結果を得ることができる。
最後に、シーケンス407では、得られた特徴量に基づき、記録媒体Pの種類の判別を行い、図4中の制御部10中の画像形成条件制御部101に判別結果を出力する。得られた特徴量と予め記憶されている記録媒体の種類を特定するための出力値とを比較し、記録媒体Pの種類を判別する。画像形成条件制御部101は得られた記録媒体Pの種類の判別結果に基づいて、画像形成装置の画像形成条件を制御する。本実施形態では、2つの異なる照射方向からの光により撮像した2つの表面画像を1つの2次元画像として取得したが、夫々独立して撮像素子を配置して、表面画像を撮像してもかまわない。
ここまで説明したように、2つの表面画像に基づき記録媒体Pの種類の判別を行うときは、夫々の表面画像の画像領域の画素数を同一とすることで精度の良い結果を得ることができる。夫々の表面画像で独立して補正を行うと、画像領域の画素数が異なってしまうことが考えられ、画像領域の画素数が異なった状態で特徴量を算出すると、画素数の多い画像領域から求められる特徴量の影響が大きくなってしまう。すると片方の表面画像に依存した結果となってしまい精度の良い判別ができない可能性がある。
このような状況にならないためには、夫々の表面画像の画素数を同一とすることで、ある特定の表面画像に依存することなく記録媒体Pの判別を行うことができる。つまり、有効画像範囲の補正により、得られた二つの表面画像の画素数が異なる場合は、画素数が少ない表面画像に画素数をあわせるよう、画像数が多い表面画像は選択範囲を変更する。二つの表面画像を少ない画素数に統一することで、どちらか一方の表面画像の影響が強く反映され、記録媒体Pの種類の判別精度が低下してしまうことを軽減できる。なお、ここでは、一例として2つの表面画像について説明したが、2つ以上の複数枚の表面画像を対象にする場合にも、同様の制御を行うことが可能である。また、ここでは2つの表面画像の画素数を同一とする例について説明したが、どちらかの表面画像に大きな依存性が出るほど、たくさんの画素数の差がなければ必ずしも同一の画素数としなくてもよい。また、一方の表面画像が繊維の影響等で、正常な表面画像が得られていないと判断できる場合は、その表面画像は記録媒体の種類の判別に用いず、他方の表面画像のみから判別をおこなってもよい。
これまでの説明では、撮像素子の一例としてCMOSラインセンサを用いてきたが、エリアセンサなどの2次元に配列された撮像素子を用いることもできる。搬送方向の有効画像範囲の長さに応じて、記録媒体Pを搬送させて表面画像を撮像することで、搬送方向の有効画素範囲を拡大させることができる。
また有効画像範囲の補正で説明したように、除算の結果が搬送方向の最大画素数(ラインセンサの解像度×紙搬送距離)より大きい場合は、抽出する画像領域の画素数が必要画素数に達しないことになる。このような場合、複数の表面画像のうち、有効画像範囲が一番小さい範囲から得られる画像領域の画素数に他の画像領域の画素数を合わせることで、複数の画像領域の画素数を一定にすることができる。これにより、複数の画像領域の画素数をあわせることができ、画素数の不一致による記録媒体Pの種類の判別精度の低下を軽減することができる。