JP5764092B2 - 導電性高分子の分散体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
(1)導電性高分子を与えるモノマーと、ポリ陰イオンと、窒素含有芳香族化合物と、酸化剤と、水系溶媒とを混合して反応液を得る工程と、
前記反応液中で前記導電性高分子を与えるモノマーを酸化重合して導電性高分子を含有する分散体を得る工程と
を備える、導電性高分子の分散体の製造方法。
(2)前記導電性高分子を与えるモノマーが3,4−エチレンジオキシチオフェンである、上記(1)に記載の製造方法。
(3)前記ポリ陰イオンがポリスチレンスルホン酸である、上記(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)前記窒素含有芳香族化合物がイミダゾールまたはピリジンである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)前記酸化剤がペルオキソ二硫酸またはその塩である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
以下、「導電性高分子を与えるモノマーと、ポリ陰イオンと、窒素含有芳香族化合物と、酸化剤と、水系溶媒とを混合して反応液を得る工程」について説明する。
上記導電性高分子は、導電性を有する高分子であれば特に限定されないが、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子が好ましい。
上記主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子としては、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類およびそれらの共重合体等が挙げられる。
これらの中では、導電性、耐熱性、空気中の安定性等の点からポリピロール類、ポリチオフェン類またはポリアニリン類が好ましく、さらにそれらの中でも、導電性、耐熱性、空気中の安定性、反応性、透明性等に優れるという利点からポリチオフェン類がより好ましい。
ポリチオフェン類の中では、チオフェンにアルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等の官能基を導入したチオフェン誘導体のポリマーが好ましく、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。このような誘導体とすると、得られる分散体の安定性をさらに高くすることができる。
上記ポリ陰イオンとしては、アニオン基を有する水溶性高分子が好ましい。アニオン基を含有する水溶性高分子は、ドーパントとして導電性高分子の導電性を向上させ、さらに導電性高分子を溶媒に安定に分散させる役割をもつ。
上記ポリ陰イオンとしては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸等のポリカルボン酸類、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸等のポリスルホン酸類または(メタ)アクリル酸、マレイン酸等のカルボン酸モノマーと、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸モノマーとの共重合体等が挙げられ、中でもポリスチレンスルホン酸が特に好ましい。
上記窒素含有芳香族化合物は、1個以上の窒素原子を含む芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、1〜3個の窒素原子を含む芳香環を有するものが好ましい。
1個の窒素原子含む芳香環を有する化合物としては、例えば、ピリジンまたはその誘導体が挙げられる。また、2個の窒素原子を含む芳香環を有する化合物としては、例えば、イミダゾールまたはその誘導体、ピリミジンまたはその誘導体、ピラジンまたはその誘導体が挙げられる。また、3個の窒素原子を含む芳香環を有する化合物としては、例えば、トリアジンまたはその誘導体が挙げられる。中でも、ピリジンまたはイミダゾールが好ましく、イミダゾールが特に好ましい。
また、上記窒素含有芳香族化合物は、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基、カルボニル基等の置換基が環に導入されたものでもでもよく、環は多環であっても良い。
上記水系溶媒は、上記導電性高分子を与えるモノマーを溶解または分散し、さらに上記酸化剤および上記酸化触媒の酸化力を維持させることができるという点から、水または水にアルコール類、アセトン、アセトニトリル等の水溶性有機溶媒を添加したものが好適なものとして挙げられる。上記水としては、水溶性有機溶媒を添加する場合を含め、蒸留水、脱イオン水等の不純物が少ないものが好ましい。
また、窒素含有芳香族化合物は、プロトンが芳香環に含まれる窒素の孤立電子対に配位してカチオン化し、例えば、ピリジンであればピリジニウムイオンの状態で、イミダゾールであればイミダゾリウムイオンの状態で、存在することがあるとしても、実質的な化学変化は起こしておらず、反応液中に存在していた窒素含有芳香族化合物は、そのまま分散体に残留している可能性が考えられる。
上記酸化剤は、導電性高分子を与えるモノマー(以下「前駆体モノマー」という場合がある。)を酸化重合させて導電性高分子を得ることができるものであれば特に限定されない。
上記酸化剤としては、例えば、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等のペルオキソ二硫酸塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、三フッ化ホウ素等の金属ハロゲン化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等が挙げられる。これらの酸化剤は1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、これらの中では副反応が少なく導電性高分子の重合を十分に進行させる適度な酸化力を有する点で、ペルオキソ二硫酸またはその塩が好ましい。
ペルオキソ二硫酸の塩としては、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウムおよびペルオキソ二硫酸アンモニウムが好適な例として挙げられる。ペルオキソ二硫酸またはその塩は、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記酸化剤の使用量は、上記導電性高分子を与えるモノマーの1モル当たり、1から5当量の範囲が好ましく、2から4当量の範囲がより好ましい。
上記酸化触媒としては、従来公知のものを使用しうるが、例えば、酸化剤としてペルオキソ二硫酸またはその塩を用いる場合には、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物;三フッ化ホウ素等の金属ハロゲン化合物;および/または酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物を使用することが好ましい。
上記反応液は、上記した各成分を混合することによって得られる。上記各成分の混合の順序は、特に限定されないが、酸化剤を最後に添加することが好ましい。また、酸化剤を添加した直後に、以下に説明する「分散体を得る工程」を行うことが好ましい。
混合する際の温度は特に限定されないが、室温(外部から熱を加えたり冷却したりしない温度をいい、概ね1〜30℃の範囲内である。以下同じ。)が好ましい。
混合する方法は特に限定されないが、例えば、スターラーを使用して混合することができる。
以下、「前記反応液中で前記導電性高分子を与えるモノマーを酸化重合して導電性高分子を含有する分散体を得る工程」について説明する。
上記導電性高分子を与えるモノマーの酸化重合は、当該モノマーと、上記ポリ陰イオンと、上記窒素含有芳香族化合物と、酸化剤と、水系溶媒とを混合して得られる反応液中で行われる。
本発明の分散体は、上記反応液を得る工程と、上記分散体を得る工程とを備える製造方法によって製造することができるが、上記した工程以外の工程をさらに備えてもよい。
このような工程としては、例えば、分散体中の不要イオンを除去する不要イオン除去工程が挙げられる。
不要イオン除去工程は、具体的には、例えば、分散体を得る工程の後に、上記分散体を得る工程によって得られた分散体に、陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂を添加し、撹拌後、添加したイオン交換樹脂をろ別する等して分離除去することによって行うことができる。
本発明の分散体は、これを成膜して得られる導電性薄膜の導電性を向上させることを意図して、さらに、アミド結合を有する水溶性化合物、水酸基を有する水溶性化合物、水溶性のスルホキシドおよび/または水溶性のスルホン等の化合物を含んでもよい。これらの化合物は、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の分散体にこれらの化合物を添加するタイミングは、特に限定されず、モノマーの重合前であってもよいし、モノマーの重合後であってもよいが、モノマーの重合後が好ましい。本発明の製造方法が不要イオン除去工程を備える場合には、その後添加することが好ましい。
以下に、これらの化合物の具体的な例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
1.導電性高分子の分散体
(1)製造
イオン交換水 1000gに、ポリスチレンスルホン酸(Mw=75000)の18質量%水溶液 67gと、3,4−エチレンジオキシチオフェン 4.8gと、イミダゾール 3.4gとを加え、スターラーを用いて、十分に混合するまで室温で撹拌した。
次に、硫酸第二鉄 0.3gを加え、スターラーを用いて、十分に混合するまで室温で撹拌した。
撹拌後、ペルオキソ二硫酸ナトリウム 9.5gを加えて、反応液を得た。
ペルオキソ二硫酸ナトリウムの添加後、直ちに、室温で、スターラーを用いて撹拌を開始し、24時間撹拌し続けて、導電性高分子を含有する分散体を得た。
得られた分散体に、陽イオン交換樹脂 85gと、陰イオン交換樹脂 125gとを加えて、室温で、スターラーを用いて2時間攪拌した。撹拌後に、イオン交換樹脂をろ別し、ろ液にジメチルスルホキシドを5質量%となるように添加し、撹拌混合して、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体の分散体の試料(実施例1)(以下、単に「試料(実施例1)」という。)を得た。
(2)粘度測定
上記により製造した試料(実施例1)の粘度を、デジタル粘度計(DV−III ULTRA,ブルックフィールド社製)を用いて(スピンドルNO.18)、温度20℃の条件でJIS Z 8803:1991に従い測定した。
測定の結果、粘度は、50mPa・sであった。
粘度の測定結果を表1の実施例1の欄に示す。
(1)成膜
上記により製造した試料(実施例1)をガラス基板上に塗布し、120℃で20分加熱乾燥を行い、該ガラス基板上に膜厚約100nmの導電性薄膜を成膜した。
(2)導電率測定
上記によりガラス基板上に成膜した導電性薄膜の導電率(単位:S/cm)を、抵抗率計(ロレスタGP、三菱化学アナリティック製)を用いて、JIS K 7194:1994に従い測定した。
測定の結果、導電率は、50S/cmであった。
導電率の測定結果を表1の実施例1の欄に示す。
1.導電性高分子の分散体
(1)製造
イオン交換水 1000gに、ポリスチレンスルホン酸(Mw=75000)の18%水溶液 67gと、3,4−エチレンジオキシチオフェン 4.8gとを加え、スターラーを用いて、十分に混合するまで室温で撹拌した。
次に、硫酸第二鉄 0.3gを加え、スターラーを用いて、十分に混合するまで室温で撹拌した。
撹拌後、ペルオキソ二硫酸ナトリウム 9.5gを加えて、反応液を得た。
ペルオキソ二硫酸ナトリウムの添加後、直ちに、室温で、スターラーを用いて撹拌を開始し、24時間撹拌し続けて、導電性高分子を含有する分散体を得た。
得られた分散体に、陽イオン交換樹脂 85gと、陰イオン交換樹脂 125gとを加えて、室温で、スターラーを用いて2時間攪拌した。撹拌後に、イオン交換樹脂をろ別し、ろ液にジメチルスルホキシドを5重量%となるように添加し、撹拌混合して、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体の分散体の試料(比較例1)(以下、単に「試料(比較例1)」という。)を得た。
(2)粘度測定
上記により製造した試料(比較例1)の粘度を、実施例1と同様にして測定した。
測定の結果、粘度は、300mPa・sであった。
粘度の測定結果を表1の比較例1の欄に示す。
(1)成膜
上記により製造した試料(比較例1)をガラス基板上に塗布し、120℃で20分加熱乾燥を行い、該ガラス基板上に膜厚約100nmの導電性薄膜を成膜した。
(2)導電率測定
上記によりガラス基板上に成膜した導電性薄膜の導電率(単位:S/cm)を、実施例1と同様にして測定した。
測定の結果、導電率は、50S/cmであった。
導電率の測定結果を表1の比較例1の欄に示す。
1.導電性高分子の分散体
(1)製造
比較例1と同様にして、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体の分散体を得た。
次に、この分散体に、実施例1と同量のイミダゾール 3.4gを加え、室温で、スターラーを用いて十分に混合するまで撹拌し、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体の分散体の試料(比較例2)(以下、単に「試料(比較例2)」という。)を得た。
(2)粘度測定
上記により製造した試料(比較例2)の粘度を、実施例1と同様にして測定した。
測定の結果、粘度は試料(比較例1)の粘度と変化がなかった。
実施例1は、本発明の導電性高分子の分散体に係る実施例である。
比較例1の分散体は、3,4−エチレンジオキシチオフェンを、ポリスチレンスルホン酸の存在下で、ペルオキソ二硫酸を酸化剤として用い、水系溶媒中で重合させて製造しているため、特開2004−59666号公報(特許文献1)に記載された発明の実施例であると考えられる(特許請求の範囲を参照)。
また、比較例2の分散体は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)と、ポリスチレンスルホン酸と、イミダゾールとを含有する導電性組成物であるため、特開2006−96975号公報(特許文献2)に記載された発明の実施例であると考えられる(特許請求の範囲を参照)。
比較例1、2と実施例1との相違点は、比較例1、2では、反応液中にイミダゾールを含有しないで、3,4−エチレンジオキシチオフェンの酸化重合を行った点である。また、比較例2では酸化重合後にイミダゾールを添加しているのに対し、比較例1では分散液にはイミダゾールを添加していない。
導電性高分子の分散体の粘度について、実施例1の結果と比較例1、2の結果とを対比すると、イミダゾール存在下でモノマーの酸化重合を行った場合には、分散体の粘度を低下させることができるが、イミダゾール非存在下でモノマーの酸化重合を行った場合には、重合後にイミダゾールを添加しても、粘度を低下させることができないことがわかる。
導電性薄膜の導電率について、実施例1の結果と比較例1の結果とを対比すると、モノマーの酸化重合をイミダゾール存在下で行っても、イミダゾール非存在下で行った場合と変化が無く、成膜されて得られる導電性薄膜は導電性に優れていることがわかる。
Claims (5)
- 導電性高分子を与えるモノマーと、ポリ陰イオンと、窒素含有芳香族化合物と、酸化剤と、水系溶媒とを混合して反応液を得る工程と、
前記反応液中で前記導電性高分子を与えるモノマーを酸化重合して導電性高分子を含有する分散体を得る工程と
を備える、導電性高分子の分散体の製造方法。 - 前記導電性高分子を与えるモノマーが3,4−エチレンジオキシチオフェンである、請求項1に記載の製造方法。
- 前記ポリ陰イオンがポリスチレンスルホン酸である、請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記窒素含有芳香族化合物がイミダゾールまたはピリジンである、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記酸化剤がペルオキソ二硫酸またはその塩である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
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