JP5759169B2 - 高耐食性を有する金属多孔体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、正極集電体として、表面がアルミニウム、合金又はステンレススチールからなる三次元網状多孔体が開示されている。特許文献2には、有孔性ポリマーが均一に活物質層間と活物質表面に備わった電極合剤と集電体としてのアルミニウム、銅、亜鉛、鉄などの金属、またはポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマー、あるいはこれらの混合物からなる三次元多孔体とを一体化して電極とすることが開示されている。
すなわち、集電体の多孔度を大きくするためには、一般的にニッケル多孔体に代表されるように、多孔質の有機樹脂表面にめっき処理し、必要に応じて有機樹脂を焼却除去することが行われる。しかしながら、ニッケル多孔体は、リチウム系非水電解質二次電池では、酸化されやすく、電解質液中に溶解してしまい、長期の充放電で十分な充電ができなくなる。
なお、ステンレススチールについては、粉末状にして有機樹脂多孔体に塗着して焼結することにより、多孔体を得る方法が提供されている。
しかしながら、ステンレススチール粉末は非常に高価である。また、粉末が付着した有機樹脂多孔体は焼却除去されるため、強度が衰えてしまい使用に耐えないという問題がある。
したがって、耐酸化性及び耐電解液性を有し、多孔度が大きく、工業的生産に適した集電体、さらには、この集電体を用いて得られる正極の提供が望まれている。
(2)上記金属多孔体に、液中で電解酸化処理することにより耐食性を向上させたことを特徴とする上記(1)に記載の燃料電池の集電体用の金属多孔体。
(3)上記(1)に記載の燃料電池の集電体用の金属多孔体の製造方法であって、ニッケル多孔体に、少なくともスズを含む金属を被覆する工程と、その後に熱処理を行ってスズを前記ニッケル多孔体中にまで拡散させる工程と、を有することを特徴とする燃料電池の集電体用の金属多孔体の製造方法。
(4)前記ニッケル多孔体が、導電処理をした多孔体基材にニッケルを被覆し、該多孔体基材を除去した後にニッケルを還元することによって得られたものであることを特徴とする上記(3)に記載の燃料電池の集電体用の金属多孔体の製造方法。
上記金属多孔体において、スズの含有量は、1wt%以上、58wt%以下であることが好ましい。スズの含有量が1wt%以上であることにより耐電解性、耐食性の効果が十分に発揮される。一方、スズの含有量が58wt%を超えると、耐熱性が低下し、かつもろい金属間化合物を生成する可能性があるため好ましくない。
例えば、リニアスイープボルタンメトリー法により、すなわち、サンプルに対して一度広い範囲で電位をかけて電流値が高い電位を調べ、その後、電流の高かった電位を電流が十分小さくなるまで印加していくことにより処理することができる。
本発明における多孔体基材としては多孔性のものであればよく公知又は市販のものを使用でき、樹脂発泡体、不織布、フェルト、織布などが用いられるが必要に応じてこれらを組み合わせて用いることもできる。また、素材としては特に限定されるものではないが、金属をめっきした後焼却処理により除去できるものが好ましい。また、多孔体基材の取扱い上、特にシート状のものにおいては剛性が高いと折れるので柔軟性のある素材であることが好ましい。
以下では、多孔体基材として発泡状樹脂を用いた場合を例にとって本発明を説明する。
導電処理は、発泡状樹脂の表面に導電性を有する層を設けることができる限り限定的でない。導電性を有する層(導電被覆層)を構成する材料としては、例えば、ニッケル、チタン、ステンレススチール等の金属の他、黒鉛等が挙げられる。
導電処理の具体例としては、例えば、ニッケルなどの金属を用いる場合は、無電解めっき処理、スパッタリングや蒸着・イオンプレーティングなどの気相処理等が好ましく挙げられる。また、ステンレススチール等の合金金属、黒鉛などの材料を用いる場合は、これら材料の微粉末にバインダを加えて得られる混合物を、発泡状樹脂の表面に塗着する処理が好ましく挙げられる。
導電被覆層にニッケルを用いる場合は発泡状樹脂表面に連続的に形成されていればよく、目付量は限定的でないが、通常5g/m2以上、15g/m2以下程度、好ましくは7g/m2以上、10g/m2以下程度とすればよい。
電解ニッケルめっき処理は、常法に従って行えばよい。電解ニッケルめっき処理に用いるめっき浴としては、公知又は市販のものを使用することができ、例えば、ワット浴、塩化浴、スルファミン酸浴等が挙げられる。
前記の無電解めっきやスパッタリングにより表面に導電層を形成された多孔体基材をメッキ浴に浸し、多孔体基材を陰極に、ニッケル対極板を陽極に接続して直流或いはパルス断続電流を通電させることにより、導電層上に、さらにニッケルの被覆を形成することができる。
電解ニッケルめっき層の目付量は、金属多孔体の最終的な金属組成が、ニッケルが42wt%以上、99wt%以下、スズが1wt%以上、58wt%以下の範囲になるように調整することが好ましい。
発泡状樹脂成分を除去する方法は限定的でないが、焼却により除去することが好ましい。具体的には、例えば600℃程度以上の大気等の酸化性雰囲気下で加熱すればよい。
得られた多孔体を還元性雰囲気下で加熱処理して金属を還元することにより、金属多孔体が得られる。
以下に、導電被覆を行った後に行う各工程の実施方法について説明する。
ニッケル多孔体に少なくともスズを含む合金を被覆する工程は、例えば、次のようにして行うことができる。すなわち、硫酸浴としてを、硫酸第一スズ 55g/L、硫酸 100g/L、クレゾールスルホン酸 100g/L、ゼラチン 2g/L、βナフトール 1g/Lの組成のめっき浴を用意し、陰極電流密度を2A/dm2、陽極電流密度を1A/dm2以下とし、温度を20℃、攪拌(陰極揺動)を2m/分とすることでスズめっきを行うことができる。
ストライクニッケルめっきの条件は、例えば、次のようにすることができる。すなわち、ウッドストライクニッケル浴として、塩化ニッケル 240g/L、塩酸(比重1.18程度のもの) 125ml/Lの組成のものを用意し、温度を室温にして、陽極にニッケルまたはカーボンを用いることで行うことができる。
発泡状樹脂のような多孔体基材へのめっきは、一般的に内部へ均一にめっきすることが難しい。内部の未着を防いだり、内部と外部のめっき付着量の差を低減したりするために、めっき液を循環させることが好ましい。循環の方法としては、ポンプを使用したり、めっき槽内部にファンを設置するなどの方法がある。また、これらの方法を用いて基材にめっき液を吹き付けたり、吸引口に基材を隣接させたりすると、基材内部にめっき液の流れができやすくなって効果的である。
めっき後そのままでは耐食性の低いニッケルが露出していることがあるため、熱処理を行ってスズ成分を拡散させることが必要である。スズの拡散は不活性雰囲気(減圧や、窒素・アルゴンなど)あるいは還元雰囲気(水素)で行うことができる。
この熱処理工程ではスズ成分をニッケルめっき層中に充分に拡散させて、金属多孔体骨格の表側と内側のスズの濃度比が、表側濃度/内側濃度が2/1以上、1/2以下の範囲になるようにすることが好ましい。より好ましくは3/2以上、2/3以下であり、更に好ましくは4/3以上、3/4以下であり、最も好ましくは均一に拡散させることである。
上記では多孔体基材にニッケルめっきを施し、その後にスズめっきをして熱処理により合金化する手法について説明したが、上記多孔体基材に導電化処理を施した後に、ニッケル−スズ合金めっきを施すことも可能である。この場合のニッケル−スズ合金めっき液の組成は、金属多孔体の最終的な金属組成が、ニッケルが42wt%以上、99wt%以下、スズが1wt%以上、58wt%以下となるように調整することが好ましい。そして、ニッケル−スズ合金めっきを形成した後に、多孔体基材の除去し、次いで還元性雰囲気下で加熱処理して金属を還元することにより、金属多孔体が得られる。
導電被覆層、ニッケル被覆層、合金皮膜層の金属目付量の合計量としては、好ましくは200g/m2以上、1000g/m2以下である。より好ましくは300g/m2以上、600g/m2以下であり、更に好ましくは400g/m2以上、500g/m2以下である。合計量が200g/m2を下回ると、集電体の強度が衰えるおそれがある。また、合計量が1000g/m2を上回ると、分極性材料の充填量が減少し、またコスト的にも不利となる。
金属多孔体を燃料電池の触媒層に用いる場合、平均孔径は1μm以上、50μm以下が好ましい。より好ましくは2μm以上、20μm以下であり、更に好ましくは2μm以上、5μm以下である。その他集電体として使用する場合は50μm以上、1000μm以下が好ましい。より好ましくは50μm以上、600μm以下であり、更に好ましくは80μm以上、300μm以下である。
誘導結合プラズマ(Inductively CoupledPlasma:ICP)を利用した定量測定を行い、含有元素の質量%を求めることができる。
金属多孔体について、断面からのエネルギー分散型X線分析(Energy DispersiveX-ray spectroscopy:EDX)測定を行い、骨格表側と骨格内側のスペクトルを比較することにより、スズの拡散状態を確認することができる。
樹脂多孔体シートとして1.5mm厚のポリウレタンシートを用いて、これを三酸化クロム400g/Lと硫酸400g/Lの混合溶液中に60℃で1分浸漬することによって表面処理を施した。このような表面処理を行うことにより、次いで付着させる導電膜とアンカー効果を形成し、高い密着力が得られる。
次に、粒径0.01〜20μmのカーボン粉末20gを10%アクリルスチレン系合成樹脂水溶液80gに分散させ、カーボン塗料を作製した。
次いで、前記の表面処理を施した発泡ウレタンを前記塗料に連続的に漬け、ロールで絞った後乾燥させることにより導電化処理を施した。
ニッケルめっきはスルファミン酸浴で行った。スルファミン酸浴は、スルファミン酸ニッケル450g/Lと硼酸30g/Lの濃度の水溶液で、pHを4に調製した。そして、温度を55℃とし、電流密度を20ASD(A/dm2)としてニッケルめっきを行った。
スズめっきのめっき液としては、水1000gに対し、硫酸第一スズ55g/L、硫酸100g/L、クレゾールスルホン酸100g/L、ゼラチン2g/L、βナフトール1g/Lの組成としたものを使用した。また、めっき浴の浴温は20℃とし、陽極電流密度は1A/dm2とした。めっき液は陰極揺動により2m/分となるように攪拌した。
熱処理工程では、還元(水素)雰囲気で、550℃、10分の熱処理を行った。
ニッケル多孔体へのスズめっきの目付けを59.7g/m2となるようにした以外は実施例1と同様にして金属多孔体を作製した。これにより、Snの含有量が23wt%のニッケルスズ合金の多孔体が得られた。
EDXスペクトル比較では表側・内側に差異はなく、スズは満遍なく拡散していると考えられる。
ニッケル多孔体へのスズめっきの目付けを216.7g/m2となるようにした以外は実施例1と同様にして金属多孔体を作製した。これにより、Snの含有量が52wt%のニッケルスズ合金の多孔体が得られた。
EDXスペクトル比較では表側・内側に差異はなく、スズは満遍なく拡散していると考えられる。
実施例2と同様に、スズめっきの目付けを59.7g/m2となるようにして、Snの含有量が23wt%のニッケルスズ合金の多孔体を作製した。さらに、濃度1mol/Lの硫酸ナトリウム水溶液中で0.2V vs SHEの電位を15分間印加した。
EDXスペクトル比較では表側・内側に差異はなく、スズは満遍なく拡散していると考えられる。
実施例1と同様に導電処理後の発泡ウレタンにニッケルめっきを施し、熱処理によってウレタンを除去して得たニッケル多孔体を用意した。
実施例1と同様に導電処理後の発泡ウレタンにニッケル電気めっきを施し、熱処理によってウレタンを除去したのち、スズめっきを行った。実施例1とは異なり、スズめっき後の熱処理工程は行わなかった。
(耐電解性の評価)
耐電解性を確認するため、ASTM G5に準拠した方法で分極測定を行った。各金属多孔体を1cm幅×2cmに切断して用いた。参照極には銀/塩化銀電極を用い、対極は白金のメッシュを用いた。液は濃度1mol/Lの硫酸ナトリウムを用い、pHは5に調整し温度は60℃で測定した。水素バブリングを行って溶存酸素を水素置換した後、バブリングした状態で測定を行った。試料の面積は見かけ1cm2が液に浸かるようにし、標準水素電位に対し−0.3〜1Vの範囲で、5mV/sの速度で電位を掃引した。流れた電流の最大値を下記表1に示す。
一方、比較例2でも比較例1と同様の電流が流れたことから、熱処理によるスズの拡散は必須であることが分かる。
Claims (4)
- ニッケル含有量が42〜99wt%、スズ含有量が1〜58wt%で、ニッケル、スズおよび不可避不純物からなり、気孔率が60%以上97%以下であり、かつ孔径が50μm以上1000μm以下であるか、
または、ニッケル含有量が42〜99wt%、スズ含有量が1〜58wt%、リン含有量が10wt%以下で、ニッケル、スズ、リンおよび不可避不純物からなり、気孔率が60%以上97%以下であり、かつ孔径が50μm以上1000μm以下である、
ことを特徴とする燃料電池の集電体用の金属多孔体。 - 上記金属多孔体に、液中で電解酸化処理することにより耐食性を向上させたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池の集電体用の金属多孔体。
- 請求項1に記載の燃料電池の集電体用の金属多孔体の製造方法であって、
ニッケル多孔体に、少なくともスズを含む金属を被覆する工程と、その後に熱処理を行ってスズを前記ニッケル多孔体中にまで拡散させる工程と、を有することを特徴とする燃料電池の集電体用の金属多孔体の製造方法。 - 前記ニッケル多孔体が、導電処理をした多孔体基材にニッケルを被覆し、該多孔体基材を除去した後にニッケルを還元することによって得られたものであることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池の集電体用の金属多孔体の製造方法。
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