以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
〔変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法〕
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法は、下記工程(1)、工程(2)を含み、変性共役ジエン系重合体組成物を得る。
工程(1):下記(A)〜(D)を配合し、120〜170℃で混練りする工程。
(A)重量平均分子量が40万以上200万以下である変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分
(B)シリカ無機充填剤を、前記(A)ゴム成分100質量部に対し30〜300質量部
(C)シランカップリング剤を、前記(B)シリカ系無機充填剤100質量部に対し0.1〜30質量部
工程(2):上記工程(1)において得られる混練り物に、(D)加硫促進助剤及び(E)老化防止剤を配合して混練りする工程。
(なお、工程(1)においては、(D)加硫促進助剤、(E)老化防止剤は含めないものとする。)
なお、工程(1)と工程(2)は同一段にて行う。「同一段」については後に詳述する。上記のように構成されているため、本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法によれば、十分な加工性を確保しつつ、優れた低ヒステリシスロス性、ウェットスキッド抵抗性、及び耐摩耗性を発揮できる変性共役ジエン系重合体組成物を得ることができる。
以下、工程(1)において用いる(A)〜(C)、及び工程(2)において用いる(D)、(E)について説明し、続いて本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法を構成する工程(1)、工程(2)について説明する。
(工程(1)において用いる原料)
<(A)重量平均分子量が40万以上200万以下である変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法の工程(1)においては、(A)重量平均分子量が40万以上200万以下である変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分(以下、(A)ゴム成分、(A)成分、(A)と記載する場合がある。)を用いる。(A)ゴム成分中に含まれる変性共役ジエン系重合体は、末端変性共役ジエン系重合体及び/又は両末端変性共役ジエン系重合体である。
(A)ゴム成分中の変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量Mwは、後述する(B)シリカ系無機充填剤を十分に分散させ、加工性、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、引張特性、及び耐摩耗性の向上を十分に発現させる観点から40万以上とし、一方、加工性を実用的に十分なものとする観点から200万以下とする。好ましくは45万以上150万以下であり、より好ましくは50万〜130万である。
重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を使用して、以下のように測定することができる。
カラムは、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結して用い、溶離液としては、テトラヒドロフラン(THF)を用いる。カラムについて、詳細には、ガードカラムとして東ソーTSKguardcolumnHHR−Hを使用し、他のカラムとして東ソーTSKgel G6000HHR、TSKgel G5000HHR、及びTSKgel G4000HHRを使用することができる。また、オーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で、RI検出器(東ソー製HLC8020)を用いるものとすることができる。試料は20mLのTHFに対して10mgを溶解し、200μL注入して測定する。上記の要領で測定を行い、標準ポリスチレンを使用した検量線を作成し、分子量の換算に用いる。具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
[変性共役ジエン系重合体]
本実施形態の製造方法に用いられる変性共役ジエン系重合体の末端変性共役ジエン系重合体と両末端変性共役ジエン系重合体について説明する。
変性共役ジエン系重合体が末端変性共役ジエン系重合体又は両末端変性共役ジエン系重合体を含むと、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、及び引張特性の観点から好ましい。変性共役ジエン系重合体中の末端変性共役ジエン系重合体の含有量は、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
ここで、末端変性共役ジエン系重合体を重合する工程について説明する。末端変性共役ジエン系重合体は、以下に限定されないが、例えば、アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる共役ジエン系重合体の重合活性末端に、アミノ基、エポキシ基又はアルコキシシラン基を有する化合物を反応させることによって得られる。
アニオン重合開始剤としては、有機リチウム化合物が挙げられ、以下に限定されるものではないが、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物、1,4−ジリチオブタン、1,5−ジリチペンタン、1,6−ジリチオヘキサン、1,1,0−ジリチオデカン、1,1,−ジリチオフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4−ジリチオベンゼン、1,2−ジリチオ−1,2−ジフェニルエタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、1,3,5−トリリチオ−2,4,6−トリエチルベンゼン等の多官能有機リチウム化合物等が挙げられる。特に、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムのモノ有機リチウム化合物が反応性の観点から好ましい。
末端変性共役ジエン系重合体を構成する共役ジエン系重合体を重合するために用いられる共役ジエン化合物としては、重合可能な単量体であればよく、以下に限定されないが、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは1種のみならず2種以上を併用してもよい。特に、1,3−ブタジエンが好ましい。
末端変性共役ジエン系重合体を構成する共役ジエン系重合体を重合するために用いられる芳香族ビニル化合物としては、共役ジエン化合物と共重合可能な単量体であればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン等が挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点からスチレンが好ましい。これらは1種のみならず2種以上を併用してもよい。
前記共役ジエン系重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
前記ランダム共重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ブタジエン−イソプレンランダム共重合体、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、ブタジエン−イソプレン−スチレンランダム共重合体等が挙げられる。共重合体鎖中の各単量体の組成分布としては、以下に限定されないが、例えば、統計的ランダムな組成に近い完全ランダム共重合体、組成がテーパー状に分布しているテーパー(勾配)ランダム共重合体等が挙げられる。共役ジエンの結合様式、すなわち1,4−結合や1,2−結合等の組成は、均一であってもよいし、分布があってもよい。
本実施形態の製造方法において用いる末端変性共役ジエン系重合体を得るための共役ジエン重合体は、アニオン重合開始剤を用い、アニオン重合反応による成長を経由して得るのが好ましい。特に、リビングアニオン重合による成長反応によって得られる活性末端を有する共重合体であることがより好ましい。この場合、後述する変性工程により、高変性率の変性共役ジエン系重合体を得ることができる傾向にある。
重合様式としては、特に限定されないが、例えば、回分式、連続式等の重合様式で行うことができる。連続式においては、1個又は2個以上の連結された反応器を用いることができる。反応器は、特に限定されないが、例えば、攪拌機付きの槽型、管型などのものが用いられる。
本実施形態において、変性共役ジエン系重合体を得るための変性反応の効率を十分なものとする観点から、重合工程において用いる共役ジエン化合物中に、アレン類、アセチレン類等が不純物として含有されていないことが好ましい。かかる観点から、これらの不純物の含有量濃度(質量)の合計は、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることが更に好ましい。なお、アレン類としては、例えば、プロパジエン、1,2−ブタジエン等が挙げられる。また、アセチレン類としては、例えば、エチルアセチレン、ビニルアセチレン等が挙げられる。
共役ジエン系重合体の重合反応は、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が挙げられる。より詳細には、以下に限定されるものではないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素等が挙げられる。
重合反応に供する前に、重合単量体において、不純物であるアレン類やアセチレン類を有機金属化合物で処理することは、高濃度の活性末端を有する重合体が得られる傾向にあり、更には高い変性率が達成される傾向にあるため好ましい。
共役ジエン系重合体の重合反応においては、極性化合物を添加してもよい。極性化合物を用いることは、芳香族ビニル化合物を共役ジエン化合物とランダムに共重合させる観点から好ましい。なお、極性化合物は、共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤としても用いることができる。また、極性化合物は、重合速度の改善等にも効果がある。
極性化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミラート、カリウム−t−ブチラート、ナトリウム−t−ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物等を用いることができる。これらの極性化合物は、それぞれ単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記極性化合物の使用量は、特に限定されず、目的等に応じて選択することができる。通常、上述した重合開始剤1モルに対して0.01〜100モルであることが好ましい。このような極性化合物(ビニル化剤)は、重合体共役ジエン部分のミクロ構造の調節剤として、所望のビニル結合量に応じて、適量用いることができる。多くの極性化合物は、同時に共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合において有効なランダム化効果を有し、芳香族ビニル化合物の分布の調整や、スチレンブロック量の調整剤として用いることができる。共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをランダム化する方法としては、特に限定されないが、例えば、特開昭59−140211号公報に記載されているように、極性化合物を用いた上で、さらに共重合の途中に1,3−ブタジエンの一部を断続的に添加する方法を用いてもよい。
共役ジエン系重合体の重合工程における重合温度は、リビングアニオン重合が進行する温度であれば、特に限定されないが、0℃以上120℃以下であることが好ましい。すなわち、生産性の観点から、0℃以上であることが好ましく、重合終了後の活性末端に対する変性剤の反応量を充分に確保する観点から、120℃以下であることが好ましい。
本実施形態の製造方法に用いる変性共役ジエン系重合体中の結合共役ジエン量は、特に限定されないが、50〜100質量%であることが好ましく、例えば、タイヤのトレッド用途に用いる場合、60〜80質量%であることがより好ましい。
また、本実施形態の製造方法に用いる変性共役ジエン系重合体中の結合芳香族ビニル量は、特に限定されないが、0〜50質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることがより好ましい。
結合共役ジエン量及び結合芳香族ビニル量が上記範囲であると、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスに優れ、耐摩耗性も満足する加硫物を得ることができる。ここで、結合芳香族ビニル量は、フェニル基の紫外吸光によって測定でき、ここから結合共役ジエン量も求めることができる。具体的には、後述する実施例に従った方法により測定することができる。
また、変性共役ジエン系重合体の共役ジエン結合単位中のビニル結合量は、特に限定されないが、10〜75モル%であることが好ましく、25〜65モル%であることがより好ましい。ビニル結合量が上記範囲であると、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスが更に優れ、耐摩耗性も満足する加硫物を得ることができる傾向にある。ここで、変性共役ジエン系重合体がブタジエンとスチレンの共重合体である場合には、ハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry,21,923(1949))により、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−結合量)を求めることができる。
ミクロ構造(変性共役ジエン系共重合体中の結合共役ジエン量、結合芳香族ビニル量、1,2−結合量)が上記範囲にあり、さらに変性共役ジエン系重合体のガラス転移温度が−45〜−15℃の範囲にあるときに、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスにより一層優れた加硫物を得ることができる。ガラス転移温度については、ISO22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とする。
末端変性共役ジエン系重合体は、以上のような方法で、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得た後、例えば、その重合活性末端に、アミノ基、エポキシ基又はアルコキシシラン基を有する化合物(変性剤ともいう)を反応させることによって得られる。変性剤は、アミノ基及びエポキシ基を有する化合物、又は、シリル基に結合したアルコキシ基が1個以上であり、2個以上の3級アミノ基を有する化合物、又は、シリル基に結合したアルコキシ基の総数が4個以上であり、1つ以上の窒素原子を有する化合物であることが好ましい。
末端変性共役ジエン系重合体を製造するための変性剤として用いられる、分子中にアミノ基及びエポキシ基を有する低分子有機化合物は、アミノ基としては3級アミノ基であり、分子量が1000以下の、場合により、繰り返し単位を有しても、有さなくてよい低分子化合物であることが好ましい。具体的には、以下に限定されないが、例えば、4,4’−ジグリシジル−ジフェニルメチルアミン、4,4’−ジグリシジル−ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物、及びこれらアミノ基含有エポキシ化合物のオリゴマーが挙げられる。好ましくは分子中にアミノ基及び複数のエポキシ基を有する化合物である。より好ましくはジグリシジルアミノ基含有多官能化合物である。特に好適な化合物としては、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンである。これらのアミノ基及びエポキシ基を有する低分子有機化合物を重合体の活性リチウムと反応させると、一部のエポキシ基がアルコキシ基になり、複数のエポキシ基が反応すると重合体が複数結合してカップリングがおこり、またアルコキシリチウムが更にエポキシ基と反応し、さらに一部のエポキシ基が残存して重合体に結合した状態で存在する状況となる。
また、変性剤で用いられる、シリル基に結合したアルコキシ基が1個以上であり、2個以上の3級アミノ基を有する化合物としては、以下に限定されないが、例えば、N−[2−(トリアルコキシシラニル)−エチル]−N,N’,N’−トリアルキルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(アルキルジアルコキシシラニル)−エチル]−N,N’,N’−トリアルキルエタン−1,2−ジアミン、N−[3−(トリアルコキシシラニル)−プロピル]−N,N’,N’−トリアルキルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(アルキルジアルコキシシラニル)−プロピル]−N,N’,N’−トリアルキルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(トリアルコキシシラニル)−プロピル]−2,N,N’,N’−テトラアルキルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(アルキルジアルコキシシラニル)−プロピル]−2,N,N’,N’−テトラアルキルプロパン−1,3−ジアミン等が挙げられる。また、1−[3−(トリアルコキシシラニル)−プロピル]−4−アルキルピペラジン、1−[3−(アルキルジアルコキシシラニル)−プロピル]−4−アルキルピペラジン、1−[3−(トリアルコキシシラニル)−プロピル]−3−アルキルイミダゾリジン、1−[3−(アルキルジアルコキシシラニル)−プロピル]−3−アルキルイミダゾリジン、1−[3−(トリアルコキシシラニル)−プロピル]−3−アルキルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(アルキルジアルコキシシラニル)−プロピル]−3−アルキルヘキサヒドロピリミジン、3−[3−(トリアルコキシシラニル)−プロピル]−1−アルキル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、3−[3−(アルキルジアルコキシシラニル)−プロピル]−1−アルキル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン等も挙げられる、さらに、2−(トリアルコキシシラニル)−1,3−ジアルキルイミダゾリジン、2−(アルキルジアルコキシシラニル)−1,3−ジアルキルイミダゾリジン、2−(トリアルコキシシラニル)−1,4−ジアルキルピペラジン、2−(アルキルジアルコキシシラニル)−1,4−ジアルキルピペラジン、5−(トリアルコキシシラニル)−1,3−ジアルキルヘキサヒドロピリミジン、5−(アルキルジアルコキシシラニル)−1,3−ジアルキルヘキサヒドロピリミジン等も挙げられる。
また、シリル基に結合したアルコキシル基が1個以上であり、2個以上の3級アミノ基を有する化合物の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N’,N’−トリメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(ジメトキシメチルシラニル)−エチル]−N−エチル−N’,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[3−(トリメトキシシラニル)−プロピル]−N,N’,N’−トリメチルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(ジメトキシメチルシラニル)−プロピル]−N−エチル−N’,N’−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(トリエトキシシラニル)−プロピル]−N,N’,N’−トリエチル−2−メチルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(ジメトキシメチルシラニル)−プロピル]−2,N,N’,N’−テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、N−(2−ジメチルアミノエチル)−N’−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(ジエトキシプロピルシラニル)−エチル]−N’−(3−エトキシプロピル)−N,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N’−メトキシメチル−N,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N’−ジメチル−N’−(2−トリメチルシラニルエチル)−エタン−1,2−ジアミン、N−[2−(トリエトキシシラニル)−エチル]−N,N’−ジエチル−N’−(2−ジブチルメトキシシラニルエチル)−エタン−1,2−ジアミン等が挙げられる。また、1−[3−(トリエトキシシラニル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(ジエトキシエチルシラニル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシラニル)−プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、1−[3−(ジエトキシエチルシラニル)−プロピル]−3−エチルイミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシラニル)−プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(ジメトキシメチルシラニル)−プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、3−[3−(トリブトキシシラニル)−プロピル]−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、3−[3−(ジメトキシメチルシラニル)−プロピル]−1−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、1−(2−エトキシエチル)−3−[3−(トリメトキシシラニル)−プロピル]−イミダゾリジン、(2−{3−[3−(トリメトキシシラニル)−プロピル]−テトラヒドロピリミジン−1−イル}−エチル)ジメチルアミン等が挙げられる。さらに、2−(トリメトキシシラニル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(ジエトキシエチルシラニル)−1,3−ジエチルイミダゾリジン、2−(トリエトキシシラニル)−1,4−ジエチルピペラジン、2−(ジメトキシメチルシラニル)−1,4−ジメチルピペラジン、5−(トリエトキシシラニル)−1,3−ジプロピルヘキサヒドロピリミジン、5−(ジエトキシエチルシラニル)−1,3−ジエチルヘキサヒドロピリミジン、{2−[3−(2−ジメチルアミノエチル)−2−(エチルジメトキシシラニル)−イミダゾリジン−1−イル]−エチル}−ジメチルアミン、5−(トリメトキシシラニル)−1,3−ビス−(2−メトキシエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、5−(エチルジメトキシシラニル)−1,3−ビス−トリメチルシラニルヘキサヒドロピリミジン等が挙げられる。なお、好ましい化合物としては、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N’,N’−トリメチルエタン−1,2−ジアミン、1−[3−(トリエトキシシラニル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、2−(トリメトキシシラニル)−1,3−ジメチルイミダゾリジンが挙げられる。
また、変性剤で用いられる、「シリル基に結合したアルコキシ基の総数が4個以上であり、1つ以上の窒素原子を有する化合物」としては、以下に限定されないが、例えば、下記式(1−1)、(1−2)、及び(1−3)が挙げられる。
一般式(1−1)中、R1〜R4は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20アリール基を表し、R5は炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R6は炭素数1〜20のアルキレン基を表し、mは1又は2の整数であり、nは2又は3の整数である。
一般式(1−2)中、R7〜R10は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20アリール基を表し、R11及びR12は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R13及びR14は、各々独立して、炭素数1〜6の炭化水素基を表し、かつ隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造を形成し、p及びqは、各々独立して、2又は3の整数を表す。
一般式(1−3)中、X1及びX2は、炭素数1〜20のアルコキシ基であり、R15及びR16は、それぞれ、炭素数1〜20の一価の炭化水素基であり、A1及びA2は、それぞれ、単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、A3は下記式(a)、(b)で表される基である。複数の、X1、X2、R15、R16、A1、A2又はA3が存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。また、r及びsは、それぞれ0〜3の整数である。さらに、tは0〜20の整数であり、tが2以上の場合、(A1−A3−A2)で表される複数の繰り返し単位は、相異なるものであってもよい。
一般式(a)中、R17は水素原子又は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。
なお、A3が式(a)で表される場合、(r+s)は5又は6である。
一般式(b)中、A4は単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、X3は炭素数1〜20のアルコキシ基である。R18は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。複数のX4又はR18が存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。uは0〜3の整数である。なお、A3が式(b)で表される場合、[r+(t×u)+s]は5以上の整数である。
前記一般式(1)で表される変性剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−(4−トリメトキシシリルブチル)−1−アザ−2−シラシクロヘキサン、2,2−ジメトキシ−1−(5−トリメトキシシリルペンチル)−1−アザ−2−シラシクロヘプタン、2,2−ジメトキシ−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ,2−メチル−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ,2−エチル−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ,2−メチル−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ,2−エチル−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン等が挙げられる。これらの中でも、変性剤の官能基とシリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点や、加工性の観点から、mが2、nが3であるものがより好ましい。具体的には、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンがより好ましい。
前記一般式(2)で表される変性剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,4−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1,4−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1,4−ビス[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]ピペラジン、1,3−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、1,3−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、1,3−ビス[3−(ジエメトキシエチルシリル)プロピル]イミダゾリジン、1,3−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサヒドロピリミジン、1,3−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ヘキサヒドロピリミジン、1,3−ビス[3−(トリブトキシシリル)プロピル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン等が挙げられる。これらの中でも、変性剤の官能基とシリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点や、加工性の観点から、p及びqが3であるものがより好ましい。具体的には、1,4−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1,4−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1,3−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、1,3−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、1,3−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサヒドロピリミジン、1,3−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ヘキサヒドロピリミジン、1,3−ビス[3−(トリブトキシシリル)プロピル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジンよりが好ましく、これらの中でも、1,4−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1,4−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ピペラジンが更に好ましい。
前記一般式(3)で表される変性剤としては、A3が一般式(a)の場合、以下に限定されるものではないが、例えば、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)エチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)プロピルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)プロピルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ブチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ブチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)フェニルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)フェニルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ベンジルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ベンジルアミン、ビス(トリメトキシシリルメチル)メチルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)メチルアミン、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)メチルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)メチルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)プロピルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)プロピルアミン等が挙げられる。
前記一般式(3)で表される変性剤としては、A3が一般式(b)の場合、以下に限定されるものではないが、例えば、トリス(トリメトキシシリルメチル)アミン、トリス(2−トリエトキシシリルエチル)アミン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン等が挙げられる。
一般式(3)で表される変性剤として上述した中でも、変性剤の官能基とシリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点や、加工性の観点から、r、s、及びuが3であるものがより好ましい。具体的には、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)エチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)プロピルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)プロピルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ブチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ブチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)フェニルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)フェニルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ベンジルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ベンジルアミン、ビス(トリメトキシシリルメチル)メチルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)メチルアミン、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)メチルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)メチルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)プロピルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)プロピルアミン、トリス(トリメトキシシリルメチル)アミン、トリス(2−トリエトキシシリルエチル)アミン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミンがより好ましい。
上述した変性剤を用いて、共役ジエン系重合体を変性し、末端変性共役ジエン系重合体を得る変性反応について説明する。なお、変性反応において、上述した変性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上述した変性剤を共役ジエン系重合体の重合活性末端に反応させる際の、反応温度、反応時間などについては、特に限定されないが、例えば、0℃以上120℃以下で、30秒以上反応させることが好ましい。
変性共役ジエン系重合体の官能基成分を有する重合体の含有量、すなわち変性率は、変性共役ジエン系重合体を用いた組成物を加硫物とした場合において、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスを更に良好なものとし、実用上十分な耐摩耗性、引張特性を得る観点から、6質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。官能基成分を有する重合体の含有量、すなわち変性率は、官能基含有の変性部分と非変性部分を分離できるクロマトグラフィーによる測定方法にて求める。このクロマトグラフィーによる測定方法は、官能基成分を吸着するシリカ等の極性物質を充填剤としたゲルパーミエーショングロマトグラフィー(GPC)カラムを使用し、非吸着成分の内部標準を比較に用いて定量する方法である。
上述した変性反応を経て得られる変性共役ジエン系重合体のGPCを使用して測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、40万以上200万以下である。すなわち、無機充填剤を十分に分散させ、加工性、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、引張特性、及び耐摩耗性の向上が発現する観点から40万以上であるものとし、一方、加工性を実用的に十分なものとする観点から200万以下であるものとする。かかる観点から、好ましくは、40万以上100万以下である。
次に、両末端変性共役ジエン系重合体を重合する工程について説明する。例えば、重合開始剤として、多官能アニオン重合剤を用いることで両末端変性共役ジエン系重合体とすることができる。共役ジエン系重合体の重合活性末端に後述するアルコキシラン化合物(変性剤)によって変性を行う前段階の、共役ジエン系重合体を重合する工程において使用する多官能アニオン重合開始剤について説明する。なお、多官能アニオン重合開始剤を用いる以外は、上述した変性共役ジエン系重合体と同様の方法で、変性を行う前段階の共役ジエン系重合体を重合することができる。
共役ジエン系重合体の重合工程において用いる多官能アニオン重合開始剤は、所定の溶媒を用いて、ポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物とを反応させることにより調製できる。多官能アニオン重合開始剤の調製方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物とポリビニル芳香族化合物とを反応させる方法、有機リチウム化合物と共役ジエン化合物とを反応させた後にポリビニル芳香族化合物を反応させる方法、有機リチウム化合物とモノビニル芳香族化合物とを反応させた後にポリビニル芳香族化合物を反応させる方法、共役ジエン化合物及び/又はモノビニル芳香族化合物及びポリビニル芳香族化合物の二者又は三者の存在下で有機リチウム化合物を反応させる方法等がある。特に、炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物とポリビニル芳香族化合物とを反応させる方法、有機リチウム化合物と共役ジエン化合物とを反応させた後にポリビニル芳香族化合物を反応させる方法、共役ジエン化合物及びポリビニル化合物の存在下でモノ有機リチウム化合物を反応させる方法で調製された多官能アニオン重合開始剤が、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、引張特性、及び耐磨耗性の観点から好ましい。また、多官能アニオン重合開始剤の生成促進や安定化を図るために、調製の際、系内にルイス塩基を添加することが好ましい。
多官能アニオン重合開始剤の調製に用いるポリビニル芳香族化合物の単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、o,m及びp−ジビニルベンゼン、o,m及びp−ジイソプロペニルベンゼン、1,2,4−トリビニルベンゼン、1,2−ビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジビニルナフタレン、1,3,5−トリビニルナフタレン、2,4−ジビニルビフェニル、3,5,4’−トリビニルビフェニル、1,2−ジビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,5,6−トリビニル−3,7−ジエチルナフタレン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼンが好ましく、これらのo−、m−、及びp−の異性体の混合物であってもよい。
多官能アニオン重合開始剤の調製には、前記ポリビニル芳香族化合物とともに、共役ジエン化合物及び/又はモノ芳香族ビニル化合物を用いてもよい。
前記共役ジエン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、特に、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、引張特性、及び耐磨耗性の観点から1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
また、前記モノ芳香族ビニル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられ、特に、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、引張特性、及び耐磨耗性の観点からスチレンが好ましい。
前記共役ジエン化合物及び/又はモノ芳香族ビニル化合物は、GPCで測定した多官能アニオン重合開始剤のポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000〜10,000となるように添加量を調整することが好ましい。
多官能アニオン重合開始剤の調製に用いる有機リチウム化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物、1,4−ジリチオブタン、1,5−ジリチペンタン、1,6−ジリチオヘキサン、1,1,0−ジリチオデカン、1,1,−ジリチオフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4−ジリチオベンゼン、1,2−ジリチオ−1,2−ジフェニルエタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、1,3,5−トリリチオ−2,4,6−トリエチルベンゼン等の多官能有機リチウム化合物等が挙げられる。特に、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムのモノ有機リチウム化合物が反応性の観点から好ましい。
多官能アニオン重合開始剤の調製に用いる溶媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
なお、多官能アニオン重合開始剤の調製工程中、系内にルイス塩基を添加することが有効である。ルイス塩基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、3級モノアミン、3級ジアミン、鎖状又は環状エーテル等が挙げられる。
3級モノアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、1,1−ジメトキシトリメチルアミン、1,1−ジエトキシトリメチルアミン、1,1−ジエトキシトリメチルアミン、N,N−ジメチルホルムアミドジイソプロピルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジシクロヘキシルアセタール等の化合物が挙げられる。
3級ジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノブタン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノペンタン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ジピペリジノエタン等の化合物が挙げられる。
鎖状エーテルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレンジメチルエーテルが挙げられる。
環状エーテルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラヒドロフラン、ビス(2−オキオラニル)エタン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、1,1−ビス(2−オキソラニル)エタン、2,2−ビス(2−オキソラニルブタン)、2,2−ビス(5−メチル−2−オキソラニル)プロパン、2,2−ビス(3,4,5−トリメチル−2−オキソラニル)プロパン等の化合物が挙げられる。
前記ルイス塩基の中でも、3級モノアミンであるトリメチルアミン、トリエチルアミン、3級ジアミンであるN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、及び環状エーテルであるテトラヒドロフラン、2,2−ビス(2−オキサソラニル)プロパンが多官能アニオン重合開始剤の生成促進や安定化の観点から好ましい。前記ルイス塩基は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、多官能アニオン重合開始剤を調製する際にルイス塩基を添加する場合は、重合開始剤を調製するときに用いられる前記溶媒に対し、30〜50,000ppmの範囲内で添加することが好ましく、200〜20,000ppmの範囲内で添加することがより好ましい。すなわち、反応促進や安定化の効果を十分に発現する観点から、30ppm以上が好ましく、後の重合工程でのミクロ構造調整の自由度を確保することや重合後の溶媒を回収し、精製工程における重合触媒との分離を考慮すると50,000ppm以下で添加することが好ましい。
共役ジエン系重合体の重合工程において用いる多官能アニオン重合開始剤については、ポリビニル芳香族化合物と有機リチウムとのモル比が、ポリビニル芳香族化合物/有機リチウムで0.01〜1.0の範囲になるように調整することが好ましい。有機リチウムに対するポリビニル芳香族化合物の使用量が多いほど、上述した共役ジエン系重合体の変性反応によって官能基を付与される分子鎖末端の割合が増加し、シリカ系粒子との親和性や反応性の向上が図られ、変性共役ジエン系重合体組成物における低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスが更に良好なものとなり、耐摩耗性の向上も図られる傾向にある。かかる観点から、有機リチウム化合物1モルに対するポリビニル芳香族化合物の量が0.01モル以上とすることが好ましい。一方、有機リチウム化合物に対してポリビニル芳香族化合物の使用量が少ない方が、本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の混練り等の、加工性を良好なものとすることができる傾向にある。かかる観点から、有機リチウム化合物1モルに対するポリビニル芳香族化合物の量が1.0モル以下とすることが好ましい。
一般に、低ヒステリシスロス性の改善のみを考慮した場合にあっては、変性共役ジエン系重合体組成物のムーニー粘度が上昇し、加工性が悪化する傾向にあるが、良好な加工性を得る観点から、有機リチウム化合物に対するポリビニル芳香族化合物の使用量を適宜調整することが好ましい。これら低ヒステリシスロス性と加工性とのバランスを良好なものとする観点から、ポリビニル芳香族化合物の量は、有機リチウム化合物1モルに対し0.02〜0.1モルの範囲とすることが好ましく、0.02〜0.5モルの範囲とすることがより好ましい。
多官能アニオン重合開始剤を調製する際の温度は、生産上の観点から10℃以上、高温による副作用抑制の観点から140℃以下であることが好ましく、より好ましくは35〜110℃の範囲である。
多官能アニオン重合開始剤を調製する反応時間は、反応温度に左右されるが、5分〜24時間の範囲である。
多官能アニオン重合開始剤のGPCで測定されるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、500〜20,000の範囲であることが好ましく、1,000〜10,000の範囲であることがより好ましい。
多官能アニオン重合開始剤の分子量分布(Mw/Mn)は、1.2〜3.5の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.2〜2.5の範囲であり、さらに好ましくは1.2〜2.0の範囲である。この範囲の分子量分布を有する多官能アニオン重合開始剤を使用して得られた共役ジエン系重合体を含む変性共役ジエン系重合体組成物は、ムーニー粘度が低下し、低ヒステリシスロス性と、ウェットスキッド抵抗性、耐摩耗性のバランスが更に優れる加硫物となる傾向にある。上記のMw(重量平均分子量)、Mn(数平均分子量)もGPC測定により求めることができる。
両末端変性共役ジエン系重合体は、上述した多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られた共役ジエン系重合体の重合活性末端に、上述の変性剤を反応することによって得ることができる。
上述した変性剤は、添加した当該変性剤中のシリル基に結合したアルコキシ基の合計モル数が、上述した多官能アニオン重合開始剤に含まれるリチウムの合計モル数の0.1〜3倍となる範囲となるように添加することが好ましく、0.2〜2倍となる範囲になるように添加することがより好ましく、0.2〜1倍となる範囲になるように添加することがさらに好ましい。
また、回分式プロセスで共役ジエン系重合体の重合を行った場合には、GPCの分子量分布で複数のピークがみられる。その最も低分子側のピークは主に、アニオン重合開始剤中に混在している単官能成分により重合が開始して生成した成分であると考えられる。また、アニオン重合開始剤中の高分子側の量が多いほど転がり抵抗性、耐摩耗性等の物性に優れる傾向にある。一方で加工性をより良好にする観点からは、最も低分子側のピーク面積が10〜70%であることが好ましい。多官能アニオン重合開始剤を調製する際のポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物とのモル比と、変性剤の添加量とを、前述した範囲内で調整することで、上述のように最も低分子量側のピーク面積を10〜70%とすることができる。
上述した本実施形態において用いる変性共役ジエン系重合体においては、末端変性共役ジエン系重合体及び両末端変性共役ジエン系重合体のいずれにおいても、変性反応を行った後、共重合体溶液に、必要に応じて、失活剤、中和剤等を添加してもよい。失活剤としては、以下に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール等が挙げられる。中和剤としては、以下に限定されないが、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、バーサチック酸等のカルボン酸;無機酸の水溶液、炭酸ガス等が挙げられる。
また、本実施形態において用いる変性共役ジエン系重合体は、重合後の仕上げ工程におけるゲル生成を防止する観点や、加工時の安定性を向上させる観点から、主鎖変性共役ジエン系重合体及び末端変性共役ジエン系重合体のいずれにおいても、ゴム用安定剤を添加することが好ましい。
ゴム用安定剤は、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピネート、2−メチル−4,6−ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等が好ましい。
また、変性共役ジエン系重合体の加工性を更に改善するために、末端変性共役ジエン系重合体及び両末端変性共役ジエン系重合体のいずれにおいても、必要に応じて伸展油を変性共役ジエン系共重合体に添加することができる。
伸展油を変性共役ジエン系重合体に添加する方法としては、特に限定されないが、伸展油を重合体溶液に加え、混合して、油展共重合体溶液としたものを脱溶媒する方法が好ましい。伸展油としては、以下に限定されないが、例えばアロマ油、ナフテン油、パラフィン油等が挙げられる。これらの中でも、環境安全上の観点や、オイルブリード防止及びウェットグリップ特性の観点から、IP346法による多環芳香族(PCA)成分が3質量%以下であるアロマ代替油が好ましい。アロマ代替油としては、以下に限定されないが、例えば、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52(12)799(1999)に示されるTDAE(Treated Distillate Aromatic Extracts)、MES(Mild Extraction Solvate)等の他、RAE(Residual Aromatic Extracts)等が挙げられる。伸展油の添加量は、特に限定されないが、通常は、変性共役ジエン系重合体100質量部に対し10〜60質量部であり、20〜37.5質量部が好ましい。
変性共役ジエン系重合体を、重合体溶液から取得する方法としては、末端変性共役ジエン系重合体及び両末端変性共役ジエン系重合体のいずれにおいても、公知の方法を用いることができる。例えば、スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押し出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法等が挙げられる。
[ゴム状重合体]
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法に用いる、上記(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分においては、本発明の特性を満たす範囲で、上述した変性共役ジエン系重合体以外に、他のゴム状重合体を含んでいてもよい。このような他のゴム状重合体としては、特に限定されず、例えば、共役ジエン系重合体又はその水素添加物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体又はその水素添加物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体又はその水素添加物、非ジエン系重合体等が挙げられる。具体的には、ブタジエンゴム又はその水素添加物、スチレン−ブタジエンゴム又はその水素添加物、スチレン−ブタジエンブロック共重合体又はその水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体又はその水素添加物等のスチレン系エラストマー、アクリロニトリル−ブタジエンゴム又はその水素添加物等が挙げられる。
また、非ジエン系重合体としては、以下に限定されないが、例えば、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−ヘキセンゴム、エチレン−オクテンゴム等のオレフィン系エラストマー、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α、β−不飽和ニトリル−アクリル酸エステル−共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。
上述した各種ゴム状重合体は、水酸基やアミノ基等の極性を有する官能基を付与した変性ゴムであってもよい。またその重量平均分子量は、性能と加工特性のバランスの観点から、2,000〜2,000,000であることが好ましく、5,000〜1,500,000であることがより好ましい。これらのゴム状重合体は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<(B)シリカ系無機充填剤>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、工程(1)で、上述した(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対し、シリカ系無機充填剤を30〜300質量部を配合する。(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対するシリカ系無機充填剤の配合量は、本実施形態の所望の効果をより良好に発現する観点から30質量部以上とし、一方、無機充填剤を十分に分散させ、組成物に加工性や機械強度を実用的に十分なものとする観点から、300質量部以下とする。かかる観点から、好ましくは40〜200質量部であり、より好ましくは55〜100質量部である。
シリカ系無機充填剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、SiO2、又はSi3Alを構成単位として含む固体粒子が好ましく、SiO2、又はSi3Alを構成単位の主成分とすることがより好ましい。ここで、主成分とは、シリカ系無機充填剤中に50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上含有される成分をいう。
(B)シリカ系無機充填剤の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、シリカ、クレイ、タルク、マイカ、珪藻土、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等の無機繊維状物質等が挙げられる。また、表面を疎水化したシリカ系無機充填剤や、シリカ系無機充填剤とシリカ系以外の無機充填剤との混合物も用いることができる。これらの中でも、強度や耐摩耗性等の観点から、シリカ及びガラス繊維が好ましく、シリカがより好ましい。シリカとしては、以下に限定されないが、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ、合成ケイ酸塩シリカ等が挙げられる。これらの中でも、湿式シリカが好ましい。
変性共役ジエン系重合体組成物において、より優れた転がり抵抗特性を得る観点から、(B)シリカ系無機充填剤のBET吸着法で求められる窒素吸着比表面積は、100〜300m2/gであることが好ましく、160〜250m2/gであることがより好ましく、170〜190m2/gであることが更に好ましい。
<(C)シランカップリング剤>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、工程(1)で、前記(B)シリカ系無機充填剤100質量部に対し(C)シランカップリング剤0.1〜30質量部を配合する。(C)シランカップリング剤の配合量は、上述した(B)シリカ系無機充填剤100質量部に対して0.5〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましい。シランカップリング剤の配合量が上記範囲であると、シランカップリング剤による上記添加効果を一層顕著なものにできる傾向にある。
(C)シランカップリング剤は、(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分と(B)シリカ系無機充填剤との相互作用を緊密にする機能を有しており、(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分及び(B)シリカ系無機充填剤のそれぞれに対する親和性又は結合性の基を有しており、一般的には、硫黄結合部分とアルコキシシリル基、シラノール基部分を一分子中に有する化合物が用いられる。
(C)シランカップリング剤の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、下記式(1)で表される3−トリエトキシシリルプロパンチオールとエトキシレートC13アルコールの反応生成物、S−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]オクタンチオエート、[(トリエトキシシリル)−プロピル]チオール、S−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]オクタンチオエートと[(トリエトキシシリル)−プロピル]チオールの縮合物等が挙げられる。中でも、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、3−トリエトキシシリルプロパンチオールとエトキシレートC13アルコールの反応生成物(下記式(1)で表される化合物)、S−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]オクタンチオエート、S−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]オクタンチオエートと[(トリエトキシシリル)−プロピル]チオールの縮合物から選ばれる少なくとも一種類が、補強効果が高いために好ましい。これらのシランカップリング剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
(工程(2)において用いる原料)
<(D)加硫促進助剤>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、工程(2)で、(D)加硫促進助剤を配合する。(D)加硫促進助剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の酸化金属塩、ステアリン酸、脱水ヒマシ油脂肪酸等の脂肪酸、炭酸亜鉛等が挙げられる。これらの加硫促進助剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができ、酸化亜鉛とステアリン酸を組み合わせて使用することが効果的に加硫を完結させる観点からより好ましい。(D)加硫促進助剤の配合量は、効果的に加硫を完結させる観点から、(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して0.5〜15質量部が好ましく、1.0〜10質量部がより好ましく、1.5〜5質量部がさらに好ましい。
<(E)老化防止剤>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、工程(2)で、(E)老化防止剤を配合する。(E)老化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、p−(p−トルエンスルホニルアミド)−ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(IPPD)、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系等が挙げられる。これらの(E)老化防止剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。(E)老化防止剤の配合量は、老化防止(耐熱酸化性、耐オゾン劣化性、及び耐披露劣化性の向上)、経済性の観点から、(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して0.1〜15質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、1〜5質量部がさらに好ましい。
(工程(1)及び工程(2))
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、工程(1)において、(A)重量平均分子量が40万以上200万以下の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分と、(B)シリカ系無機充填剤を前記(A)100質量部に対し30〜300質量部と、(C)シランカップリング剤を前記(B)シリカ系無機充填剤100質量部に対し0.1〜30質量部と、を配合して120〜170℃で混練りする。続いて、工程(2)において、工程(1)で得られた混練り物に、(D)加硫促進助剤、(E)老化防止剤を配合して混練りし、変性共役ジエン系重合体組成物を得る。なお、本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法においては、工程(1)で、(D)加硫促進助剤、(E)老化防止剤は含めないものとする。
また、工程(1)及び工程(2)は同一段で行う。ここで、段とは、混練りして組成物を得る過程において、一つの混合に用いる装置に最初の成分(組成物であってもよい)を入れてから排出されるまでを一段とする。すなわち、工程(1)及び工程(2)を「同一段で行う」ということは、工程(1)を行った後の混練り物が、混合に用いる装置から排出されることなく、続けて同じ装置で工程(2)を行うということである。例えば、一つの混合に用いる装置で混練した組成物を排出して、再度同じ混合に用いる装置を用いて該組成物を混練する場合は、混練工程は二段あることになる。
工程(1)においては、(A)重量平均分子量が40万以上200万以下の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分と、(B)シリカ系無機充填剤と、(C)シランカップリング剤を配合し、120〜170℃で混練りすることにより、シリカの分散性が向上し、各物性も各々向上させることができる。なお、工程(1)において、120〜170℃の温度範囲での混練り時間を、2〜8分とすることが好ましい。
工程(1)において混練りする際の温度は、150〜160℃で行うことも、140〜150℃で行うことも好ましい。なお、上記のような好適な温度範囲は、(C)シランカップリング剤の種類に応じて適宜選択されることが好ましい。例えば、(C)シランカップリング剤の分子構造中に有する硫黄原子数が1〜2個である場合、あるいは一つの分子構造中に有するメルカプト基が1個未満の場合、混練り温度が140〜170℃の範囲であることが好ましく、150〜160℃の範囲とすることがより好ましい。分子構造中に有する硫黄原子数が1〜2個である(C)シランカップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド等が挙げられる。一つの分子構造中に有するメルカプト基が1個未満のシランカップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、S−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]オクタンチオエート、S−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]オクタンチオエートと[(トリエトキシシリル)−プロピル]チオールの縮合物にて、S−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]オクタンチオエートに対する[(トリエトキシシリル)−プロピル]チオールの分子数の比率が50%以下の場合が挙げられる。
また、(C)シランカップリング剤の分子構造中に有する硫黄原子数が3個以上である場合、あるいは一つの分子構造中に有するメルカプト基が1個以上ある場合、混練り温度は120〜160℃の範囲であることが好ましく、140〜150℃の範囲とすることがより好ましい。分子構造中に有する硫黄原子数が3個以上である(C)シランカップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド等が挙げられる。分子構造中に有するメルカプト基が1個以上ある場合としては、以下に限定されないが、例えば、3−トリエトキシシリルプロパンチオールとエトキシレートC13アルコールの反応生成物が挙げられる。
なお、工程(1)においては、上述のように、(C)シランカップリング剤の種類に応じた混練り温度を選択することが好ましいが、本実施形態においては、工程(1)の全ての混練りを、前記選択された温度範囲で行う必要はなく、120〜170℃の範囲内において、かつ(C)シランカップリング剤の種類に応じて温度選択を行えばよい。また、工程(1)においては、混練り中、所望の温度、例えば上記のようにして選択した150〜160℃、又は140〜150℃の温度範囲に達した後の混練り時間を2〜8分とすることが好ましく、2〜5分とすることがより好ましい。これにより、変性共役ジエン系共重合体組成物の各物性のバランスをより高めることができる傾向にある。
上記のように工程(1)において120〜170℃で混練りすることにより、(B)シリカ系無機充填剤と(C)シランカップリング剤の反応率が向上し、分散性を高めることができ、変性共役ジエン系重合体組成物の各物性のバランスを高めることができる。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、前記工程(1)に続いて工程(2)を実施する。工程(2)においては、工程(1)で得られた混練り物に、(D)加硫促進助剤、及び(E)老化防止剤を配合して混練りする。すなわち、工程(1)後は、加工性(放出物のまとまり性)の観点から、当該工程(1)で得られた混練り物を、バンバリーミキサー等の密閉系混練り機から排出せず、引き続いて、(D)加硫促進助剤、及び(E)老化防止剤を配合して混練りする。
(D)加硫促進助剤、及び(E)老化防止剤を配合し、混練りするタイミングは、(B)シリカ系無機充填剤と(C)シランカップリング剤との反応を阻害することなく、反応の安定性を十分に確保し、分散性を高め、本実施形態の所望の効果を十分に発現する観点から、(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分に、(B)シリカ系無機充填剤、(C)シランカップリング剤を配合して120〜170℃で混練りした後であれば、いずれのタイミングでもよく、(D)加硫促進助剤、及び(E)老化防止剤の分散性の観点から、より好ましくは上記120〜170℃で混練りした直後である。
また、当該工程(2)における温度、及び混練り時間は、当該工程(1)の混練り時間にもよるが、(D)加硫促進助剤、及び(E)老化防止剤の分散性、及び引張特性の観点から、120〜170℃、及び1分〜6分が好ましい。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法において、各種材料を混合する方法としては、従来公知の方法を適用でき、以下に限定されるものではないが、例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解混合後、溶剤を加熱除去する方法等が挙げられる。これらのうち、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機による溶融混練法が生産性、良混練性の観点から好ましい。また、各種材料を一度に混練する方法、複数の回数に分けて混合する方法のいずれも適用可能である。
(その他の材料)
<(F)カーボンブラック>
また、本実施形態の変性ジエン系重合体組成物の製造方法は、前記(A)重量平均分子量が40万以上200万以下の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対し、着色性、加工性等の観点から、さらに(F)カーボンブラック0.5〜100質量部を配合する工程を含むことが好ましい。(A)重量平均分子量が40万以上200万以下の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対する(F)カーボンブラックの配合量は、ドライグリップ性や導電性のタイヤ等の用途に求められる性能を発現する観点から0.5質量%以上、分散性の観点から100質量部以下が好ましく、より好ましくは3〜100質量部であり、さらに好ましくは5〜50質量部である。カーボンブラックとしては、特に限定されるものではないが、例えば、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが使用できる。これらの中でも、加工性の観点、及び転がり抵抗特性の観点で、窒素吸着比表面積は、50m2/g以上、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が80mL/100g以上が好ましく、窒素吸着比表面積は、90m2/g以上、DBP吸油量が80mL/100g以上がより好ましい。なお、ジブチルフタレート(DBP)吸油量は、JIS−K6217−4に従い測定することができる。より詳細には、アブソープメータを用いてかき混ぜられているカーボンブラックにジブチルフタレートを添加していき、検出されるトルクがある設定値に達した時点の量を吸油量として求めることができる。
また、(F)カーボンブラックを配合するタイミングは、(A)重量平均分子量が40万以上200万以下の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分に、(B)シリカ系無機充填剤、(C)シランカップリング剤を配合する、工程(1)において行っても、又は、工程(1)において得られた混練り物に配合してもよいが、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性をより高める観点から、より好ましくは上記ゴム成分に、(B)シリカ系無機充填剤、(C)シランカップリング剤を配合する、工程(1)において配合する。
<金属酸化物、及び金属水酸化物>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、(B)シリカ系無機充填剤やカーボンブラック以外に、金属酸化物や金属水酸化物を含有させてもよい。金属酸化物とは、化学式MxOy(Mは金属原子を表し、x及びyは各々1〜6の整数を表す。)を構成単位の主成分とする固体粒子のことをいい、以下に限定されるものではないが、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等を用いることができる。また金属酸化物と金属酸化物以外の無機充填剤の混合物も用いることができる。金属水酸化物としては、以下に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム等が挙げられる。
<ゴム用軟化剤>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、加工性の改良を図るために、ゴム用軟化剤を含有させてもよい。ゴム用軟化剤としては、鉱物油、又は液状若しくは低分子量の合成軟化剤が好適である。
ゴムの軟化、増容、加工性の向上を図るために使用されているプロセスオイル又はエクステンダーオイルと呼ばれる鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素中50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環炭素数が30〜45%のものがナフテン系、芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれている。本実施形態の製造方法で用いる(A)変性共役ジエン系重合体とともに用いるゴム用軟化剤としては、適度な芳香族含量を有するものが共重合体との馴染みがよい傾向にあるため好ましい。
ゴム用軟化剤の配合量は、(A)重量平均分子量が40万以上200万以下の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して0〜100質量部が好ましく、10〜90質量部がより好ましく、30〜90質量部がさらに好ましい。ゴム用軟化剤の配合量がゴム成分100質量部に対して100質量部以下である場合、ブリードアウトをより確実に防止でき、組成物表面にベタツキを効果的に防止できる傾向にある。
<ワックス>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、ワックスを配合してもよい。ワックスとしては、従来から公知のものを用いることができ、以下に限定されないが、例えば、天然系ワックス、石油系ワックス等が挙げられる。
<添加剤>
[加硫剤]
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、加硫剤を加え、加硫処理を施すことにより、加硫組成物を得てもよい。加硫剤としては、以下に限定されないが、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が使用できる。硫黄化合物には、以下に限定されないが、例えば、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物等が含まれる。加硫剤の使用量は、通常は、(A)重量平均分子量が40万以上200万以下の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して0.01〜20質量部であり、0.1〜15質量部が好ましい。加硫方法としては、従来公知の方法を適用でき、加硫温度は、通常120〜200℃、であり、好ましくは140〜180℃である。
[加硫助剤]
また、加硫に際しては、必要に応じて加硫促進剤を用いてもよい。加硫促進剤としては、従来公知の材料を用いることができ、以下に限定されるものではないが、例えば、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系等の加硫促進剤が挙げられる。加硫促進剤の使用量は、通常、(A)重量平均分子量が40万以上200万以下の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して0.01〜20質量部であり、0.1〜15質量部が好ましい。
[その他の添加剤]
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、本実施形態の目的を損なわない範囲内で、上述した以外のその他の軟化剤や充填剤、さらに、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、着色剤、滑剤等の各種添加剤を用いてもよい。その他の軟化剤としては、特に限定されず、公知の軟化剤を用いることができる。その他の充填剤として、具体的には、以下に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。上記の耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、着色剤、潤滑剤としては、特に限定されず、それぞれ公知の材料を用いることができる。
〔変性共役ジエン系重合体組成物〕
本実施形態の製造方法で得られた変性共役ジエン系重合体組成物は、工程(1)において、(A)ゴム成分、(B)シリカ系無機充填剤、(C)シランカップリング剤を配合し、120℃〜170℃で混練りし、当該工程(1)で得られた混練り物に、(D)加硫促進助剤、(E)老化防止剤を配合して混練りすることにより、(B)シリカ系無機充填剤と(C)シランカップリング剤との反応が阻害されることなく安定して反応が進行し、(B)シリカ系無機充填剤等の配合剤の分散性が向上する効果が得られ、目的とする変性共役ジエン系重合体組成物において、従来にも増して加工性、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、及び耐摩耗性のバランスの向上が得られる。
本実施形態の製造方法で得られる変性共役ジエン系重合体は、例えばトレッド用ゴム組成物として用いることができ、通常の方法で本発明のタイヤを製造することができる。すなわち、前記ゴム組成物を用いてトレッドを製造し、他の部材とともに貼り合わせ、タイヤ成形機を使用して加熱加圧することによりタイヤを製造することができる。
以下の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
先ず、実施例及び比較例に使用した変性共役ジエン系重合体の構造分析の方法並びに実施例及び比較例の変性共役ジエン系重合体組成物の物性の測定方法について下記に示す。
〔(1)結合スチレン量〕
測定用の試料(組成物の原料となる変性共役ジエン系重合体)100mgをクロロホルムで100mLにメスアップ、溶解して測定サンプルとした。測定機器として島津製作所製UV−2450を用いて、スチレンのフェニル基による波長254nmの紫外線(UV)の吸収量を測定し、結合スチレン量(質量%)を測定した。
〔(2)ブタジエン部分のミクロ構造(1,2−ビニル結合量)〕
前記測定用の試料(組成物の原料となる変性共役ジエン系重合体)50mgを10mLの二硫化炭素に溶解して測定サンプルとした。溶液セルを製造し、測定機器として日本分光(株)製:FT−IR230を用いて、赤外線スペクトルを600〜1000cm−1の範囲で測定して、所定の波数における吸光度によりハンプトンの方法の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造(1,2−ビニル結合量:モル%)を求めた。
〔(3)分子量〕
ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定装置を使用して、変性共役ジエン系重合体のクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線に基づいて重量平均分子量(Mw)を求めた。溶離液としては、テトラヒドロフラン(THF)を用いた。カラムは、ガードカラムとして東ソー社製 TSKguardcolumn HHR−Hを使用し、他のカラムとして東ソー社製 TSKgel G6000HHR、TSKgel G5000HHR、及びTSKgel G4000HHRを使用した。オーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で、RI検出器(東ソー社製、「HLC8020」)を用いて分子量の測定を行った。測定用の試料(組成物の原料となる変性共役ジエン系重合体)10mgを20mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液200μLを前記GPC測定装置に注入して測定した。
〔(4)変性率〕
シリカゲルを充填剤としたGPCカラムに変性した成分が吸着する特性を応用することにより測定した。以下に示すようにして、試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液を、ポリスチレン系ゲルカラムで測定したクロマトグラムと、シリカ系カラムで測定したクロマトグラムの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定し変性率を求めた。低分子量内部標準ポリスチレンとして市販の分子量5000の標準ポリスチレンを用いた。
<試料溶液の調製>
試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのTHFに溶解させて、試料溶液とした。
<ポリスチレン系カラムを用いたGPC測定条件>
THFを溶離液として用い、試料溶液200μLを装置に注入して測定した。カラムは、ガードカラムとして東ソー社製 TSKguardcolumn HHR−Hを使用し、他のカラムとして東ソー TSKgel G6000HHR、TSKgel G5000HHR、TSKgel G4000HHRを使用した。また、カラムオーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で、RI検出器(東ソー社製 HLC8020)を用いて測定しクロマトグラムを得た。
<シリカ系カラムを用いたGPC測定条件>
THFを溶離液として用い、試料200μLを装置に注入して測定した。カラムは、ガードカラムとしてDIOL 4.6×12.5mm 5micronを使用し、他のカラムとしてZorbax PSM−1000S、PSM−300S、PSM−60Sを使用した。また、カラムオーブン温度40℃、THF流量0.5mL/分で、東ソー社製 CCP8020シリーズ ビルドアップ型GPCシステム:AS−8020、SD−8022、CCPS、CO−8020、RI−8021で、RI検出器を用いて測定し、クロマトグラムを得た。
<変性率の計算方法>
ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP1、標準ポリスチレンのピーク面積をP2、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP3、標準ポリスチレンのピーク面積をP4として、下記式より変性率(%)を求めた。
変性率(%)=[1−(P2×P3)/(P1×P4)]×100
〔(5)配合物ムーニー粘度〕
ムーニー粘度計を使用し、JIS K6300−1に準じて、100℃、1分間の予熱を行った後に、ローターを毎分2回転で4分間回転させた後の粘度を測定した。値が小さいほど粘度が小さく、加工性に優れることを示す。なお、表1に記載の変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度は、配合物ムーニー粘度の測定方法に準じて測定した。
〔(6)排出物まとまり性〕
実施例及び比較例に示す方法で製造した未加硫の変性共役ジエン系重合体組成物に関し、バンバリーミキサーから排出した直後(混練り1段目におけるバンバリーミキサーによる混練りが終了し、排出された直後)のまとまり(形状)について、パネラー5人が目視で観察し、以下の基準に基づきパネラー一人当たり5点満点、総合25点満点で評価した。25点に近いほど混練り加工性に優れることを示す。
1点:排出したゴムに塊りがなく、粉状である。
2点:排出したゴムが小さなの塊り(直径0.5〜2cm)で構成されており、まとまっていなくバラバラである。
3点:排出したゴムが中程度の塊り(直径2〜4cm)で構成されており、まとまっていなくバラバラである。
4点:排出したゴムがやや大きな塊り(直径4〜20cm)で構成されているが、まとまっていなくバラバラである。
5点:排出したゴムが大きな塊り(直径20cm以上)で構成されていて、全体としてまとまっている。
〔(7)転がり抵抗特性(RR)〕
レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機(ARES)を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。すなわち、50℃において周波数10Hz、ひずみ3%で測定したtanδを転がり抵抗特性(少燃費性)の指標とした。各々の測定値は、実施例1〜6、及び比較例2〜11については比較例1を100として指数化した。値が小さいほど転がり抵抗特性が良好であることを示す。
〔(8)ウェットスキッド抵抗性(WET)〕
レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機(ARES)を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。すなわち、0℃において周波数10Hz、ひずみ1%で測定したtanδをウェットスキッド抵抗性の指標とした。各々の測定値は、実施例1〜6、及び比較例2〜11については比較例1を100として指数化した。値が大きいほどウェッドスキッド抵抗性が良好であることを示す。
〔(9)シリカ分散性(ΔG')〕
レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機(ARES)を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。すなわち、50℃において周波数10Hz、ひずみ0.1と10%でG'を測定し、0.1%と10%のG'の差分をシリカ分散の指標とした。各々の測定値は、実施例1〜6、及び比較例2〜11については比較例1を100として指数化した。値が小さいほどシリカの分散及び加工性が良好であることを示す。
〔(10)耐摩耗性〕
アクロン摩耗試験機(安田精機製作所製)を使用し、JIS K6264−2に準じて、荷重44.1N、3000回転の摩耗量を測定した。各々の測定値は、実施例1〜6、及び比較例2〜11については比較例1を100として指数化した。値が小さいほど、摩耗が少なく、耐摩耗性に優れていることを示す。
〔(11)油展ガラス転移温度(℃)〕
油展ガラス転移温度(℃)は示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry:DSC)により測定した。なお、所望とされるガラス転移温度は要求される用途、例えば、適用されるタイヤの部材や、夏用タイヤ・冬用タイヤの別によって異なり、スチレン量、ビニル量に依存する。上記ガラス転移温度については、ISO22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とした。なお、測定にはマックサイエンス社製 DSC 3200Sを用いた。
〔変性共役ジエン系重合体〕
(製造例1)
内容積10Lで、内部の高さ(L)と直径(D)の比(L/D)が4であり、底部に入り口、頂部に出口を有し、攪拌機及び温度調整用のジャケットを有するオートクレーブを2基直列に連結し、1基目を重合反応器として、2基目を変性反応器とした。
予め、水分等の不純物を除去した1,3−ブタジエンを16.38g/分、スチレンを8.82g/分、シクロヘキサンを132.3g/分の条件で混合し、次いで、不純物の不活性化に必要な量のn−ブチルリチウムを、1基目反応器に入る直前にスタティックミキサーでさらに混合した後、1基目反応器の底部に連続的に供給し、更に、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを0.15g/分の速度で、重合開始剤としてn−ブチルリチウムを0.0504g/分(0.0788mmol)の速度で、1基目反応器底部へそれぞれ供給し、反応器出口の内温を73℃となるように調整し、重合反応を継続させた。
2基目の反応器の温度を75℃に保ち、変性剤として分子中にアミノ基を有し4官能ポリエポキシ化合物であるテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを0.0394mmol/分の速度で2基目反応器の底部から添加し、変性(カップリング)反応を実施した。
2器目反応器の頂部から流出した重合体溶液に酸化防止剤(BHT)をポリマー100gあたり0.2gとなるように0.048g/分(シクロヘキサン溶液)で連続的に添加し、変性反応を終了させた後、溶媒を除去し、変性共役ジエン系重合体溶液を得た。
更にこの変性共役ジエン系重合体(ポリマー)溶液にプロセスオイル(JX日鉱日石エネルギー(株)製、商品名「NC140」)を混合した後、ドラムドライヤーで溶媒を除去し、変性SBR(1)を得た。
得られた変性SBR(1)、すなわち変性共役ジエン系重合体とプロセスオイルの混合物を構成する変性共役ジエン系重合体(ポリマー)の変性率は78%、変性SBR(1)のムーニー粘度は77、変性共役ジエン系重合体(ポリマー)の結合スチレン量は35質量%、変性共役ジエン系重合体(ポリマー)の1,2−ビニル結合量は39質量%、変性共役ジエン系重合体(ポリマー)の重量平均分子量Mwは101万、変性SBR(1)のプロセスオイル含有量は27.3質量%であった。これらの結果を併せて表1に示す。
(製造例2)
変性剤を2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンに代えて0.045mmol/分とした以外は、製造例1と同じ操作を繰り返し、変性SBR(2)を得た。
得られた変性SBR(2)を構成する変性共役ジエン系重合体(ポリマー)の変性率は82%、変性SBR(2)のムーニー粘度は80、変性共役ジエン系重合体(ポリマー)の結合スチレン量は35質量%、変性共役ジエン系重合体(ポリマー)の1,2−ビニル結合量は39質量%、変性共役ジエン系重合体(ポリマー)の重量平均分子量Mwは90万、変性SBR(2)のプロセスオイル含有量は27.3質量%であった。これらの結果を併せて表1に示す。
ランクセス社製 非変性SBR 「BUNA VSL2438−2HM」をSBR(3)とした。上記SBR(3)の評価結果を併せて表1に示す。なお、上記SBR(3)の重量平均分子量Mwは83万であった。
下記表1に、上述した変性SBR(1)〜(2)とSBR(3)の構造及び物性について示す。
(実施例1)
以下に示す配合に従い、未加硫ゴム組成物(未加硫物)、及び加硫ゴム組成物(加硫物)を得た。
・変性SBR(1)((製造例1)で製造した変性共役ジエン系共重合体、変性SBR(1)137.5質量部中のプロセスオイル含有量37.5質量部);137.5質量部
・シリカ(エボニック デグサ社製、ウルトラジル7000GR):75質量部
・シランカップリング剤 ビスー[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド(エボニック デグサ社製、Si69):6質量部
・プロセスオイル(JX日鉱日石エネルギー(株)製、商品名「NC140」):4.5質量部
・カーボンブラック(東海カーボン(株)製、シーストKH(N339)):5質量部
・加硫促進助剤(酸化亜鉛):2.5質量部
・加硫促進助剤(ステアリン酸):1.0質量部
・ワックス:(大内新興化学工業(株)社製、サンノック):1.5質量部
・老化防止剤(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン):2.0質量部
・硫黄:2.2質量部
・加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフィンアミド):1.7質量部
・加硫促進剤(ジフェニルグアニジン):2.0質量部
上記した材料を下記の方法により混練して、未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴムシートを得た。温度制御装置を具備する神戸製鋼所バンバリーミキサー「ミクストロンBB2」(内容量1430cc)を使用し、第1段の混練りとして、充填率65%、ローター回転数90rpmの条件で、変性共役ジエン系重合体(変性SBR(1))を30秒素練りした。その後、シリカ、Si69、プロセスオイルを配合し、混練りした。
次いで、材料指示温度が140℃に達してから、混合機の温度制御によりバンバリーミキサー内材料指示温度を140〜150℃に制御しながら2分間混練りした。
その後、混練り物を排出することなく、引き続きバンバリー内材料指示温度を140〜150℃に制御しながら、カーボンブラック、加硫促進助剤(ステアリン酸及び酸化亜鉛)、老化防止剤、及びワックスを配合して1分混練りし、ラムを上げて掃除を行った後、さらに一分混練し、配合物(排出温度140〜150℃)をバンバリーミキサーより排出した。この際、配合物(未加硫物)のまとまりの状態を観察した(排出物のまとまり性)。そして、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状配合物とした。
なお、プロセスオイルの配合総量は、実施例及び比較例において、各変性SBRに含有するプロセスオイルを差し引いた純粋な変性SBR100質量部に対し、各変性SBRに含有するプロセスオイルと各変性SBRと共に配合するプロセスオイルの配合量を総じた量として、42質量部に統一して行った。
次に、混練り2段目として、上述した第1段目の混練りで得たシート状配合物を室温まで冷却した後、これを上記バンバリーミキサーにて3分間再度混練りした。この場合も、混合機の温度制御により排出温度(配合物)を140〜150℃に調整した。そして、バンバリーミキサーより上記配合物を排出後、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状の未加硫ゴム組成物とした。
更に、オーブンを用いて未加硫組成物を70℃×30分加温した後、混練り3段目として、70℃に設定した10インチφオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤を加えて2分間混練し、組成物を得た。この組成物(未加硫物)から一部を取り出して配合物ムーニー粘度を測定した。
その後、組成物のもう一方の残りを160℃×20分間、加硫プレスにて加硫成形した。加硫後、加硫ゴム組成物の転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、及び耐摩耗性を評価した。
(実施例2)
変性共役ジエン系重合体(変性SBR(1))に、シリカ、Si69、プロセスオイル、及びカーボンブラックを配合、混練りし、材料指示温度が140℃に達してから、混合機の温度制御によりバンバリーミキサー内材料指示温度を140〜150℃に制御しながら混練りを2分間実施した。
その後、混練り物を排出することなく、引き続きバンバリー内材料指示温度を140〜150℃に制御しながら、加硫促進助剤(ステアリン酸及び酸化亜鉛)、老化防止剤、及びワックスを配合して1分混練りし、ラムを上げて掃除を行った後、さらに一分混練し、配合物(排出温度140〜150℃)をバンバリーミキサーより排出した。
そして、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状配合物とした。
次に、混練り2段目として、上述した第1段目の混練りで得たシート状配合物を室温まで冷却した後、これを上記バンバリーミキサーにて3分間再度混練りした。この場合も、混合機の温度制御により排出温度(配合物)を140〜150℃に調整した。
その他の条件は、実施例1と同じ操作を行い、未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴム組成物を得、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度)、加硫物物性(転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、及び耐摩耗性)を評価した。
(実施例3)
変性共役ジエン系重合体(変性SBR(1))に、シリカ、シランカップリング剤ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド(エボニック デグサ社製 Si75),プロセスオイル、及びカーボンブラックを配合、混練りし、材料指示温度が150℃に達してから、混合機の温度制御によりバンバリーミキサー内材料指示温度を150〜160℃に制御しながら混練りを2分間実施した。
その後、混練り物を排出することなく、引き続きニーダー内材料指示温度を150〜160℃に制御しながら、加硫促進助剤(ステアリン酸及び酸化亜鉛)、老化防止剤、及びワックスを配合して1分混練りし、配合物(排出温度150〜160℃)をバンバリーミキサーより排出した。そして、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状配合物とした。
次に、混練り2段目として、上述した第1段目の混練りで得たシート状配合物を室温まで冷却した後、これを上記バンバリーミキサーにて3分間再度混練りした。この場合も、混合機の温度制御により排出温度(配合物)を150〜160℃に調整した。
その他の条件は、実施例1と同じ操作を行い、未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴム組成物を得、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度)、加硫物物性(転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、及び耐摩耗性)を評価した。
(実施例4)
変性共役ジエン系重合体(変性SBR(2))に、シリカ、Si75、プロセスオイル、及びカーボンブラックを配合、混練りし、材料指示温度が150℃に達してから、混合機の温度制御によりバンバリーミキサー内材料指示温度を150〜160℃に制御しながら混練りを2分間実施した。
その後、混練り物を排出することなく、引き続きニーダー内材料指示温度を150〜160℃に制御しながら、加硫促進助剤(ステアリン酸及び酸化亜鉛)、老化防止剤、及びワックスを配合して1分混練りし、配合物(排出温度150〜160℃)をバンバリーミキサーより排出した。そして、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状配合物とした。
次に、混練り2段目として、上述した第1段目の混練りで得たシート状配合物を室温まで冷却した後、これを上記バンバリーミキサーにて3分間再度混練りした。この場合も、混合機の温度制御により排出温度(配合物)を150〜160℃に調整した。
その他の条件は、実施例1と同じ操作を行い、未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴム組成物を得、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度)、加硫物物性(転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、及び耐摩耗性)を評価した。
(実施例5)
変性共役ジエン系重合体(変性SBR(1))に、シリカ、Si69、プロセスオイルを配合、混練りし、材料指示温度が140℃に達してから、混合機の温度制御によりバンバリーミキサー内材料指示温度を140〜150℃に制御しながら混練りを1分間実施した。
その後、混練り物を排出することなく、引き続きバンバリー内材料指示温度を140〜150℃に制御しながら、カーボンブラック、加硫促進助剤(ステアリン酸及び酸化亜鉛)、老化防止剤、及びワックスを配合して1分混練りし、ラムを上げて掃除を行った後、さらに一分混練し、配合物(排出温度140〜150℃)をバンバリーミキサーより排出した。そして、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状配合物とした。
次に、混練り2段目として、上述した第1段目の混練りで得たシート状配合物を室温まで冷却した後、これを上記バンバリーミキサーにて3分間再度混練りした。この場合も、混合機の温度制御により排出温度(配合物)を140〜150℃に調整した。
その他の条件は、実施例1と同じ操作を行い、未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴム組成物を得、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度)、加硫物物性(転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、及び耐摩耗性)を評価した。
(実施例6)
変性共役ジエン系重合体(変性SBR(1))に、シリカ、Si69、プロセスオイルを配合、混練りし、材料指示温度が140℃に達してから、混合機の温度制御によりバンバリーミキサー内材料指示温度を140〜150℃に制御しながら混練りを10分間実施した。
その後、混練り物を排出することなく、引き続きバンバリー内材料指示温度を140〜150℃に制御しながら、カーボンブラック、加硫促進助剤(ステアリン酸及び酸化亜鉛)、老化防止剤、及びワックスを配合して1分混練りし、ラムを上げて掃除を行った後、さらに一分混練し、配合物(排出温度140〜150℃)をバンバリーミキサーより排出した。そして、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状配合物とした。
次に、混練り2段目として、上述した第1段目の混練りで得たシート状配合物を室温まで冷却した後、これを上記バンバリーミキサーにて3分間再度混練りした。この場合も、混合機の温度制御により排出温度(配合物)を140〜150℃に調整した。
その他の条件は、実施例1と同じ操作を行い、未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴム組成物を得、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度)、加硫物物性(転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、及び耐摩耗性)を評価した。
(比較例1)
変性共役ジエン系重合体(変性SBR(3))にシリカ、Si69、プロセスオイル、カーボンブラック、加硫促進助剤(ステアリン酸及び酸化亜鉛)、老化防止剤、及びワックスを配合し、混練りした。
次いで、材料指示温度が140℃に達してから、混合機の温度制御によりバンバリーミキサー内材料指示温度を140〜150℃に制御しながら2分間混練りした。
その後、ラムを上げて掃除を行い、引き続きバンバリー内材料指示温度を140〜150℃に制御しながら、配合して1分混練りし、配合物(排出温度140〜150℃)をバンバリーミキサーより排出した。そして、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状配合物とした。
次に、混練り2段目として、上述した第1段目の混練りで得たシート状配合物を室温まで冷却した後、これを上記バンバリーミキサーにて3分間再度混練りした。この場合も、混合機の温度制御により排出温度(配合物)を140〜150℃に調整した。
その他の条件は、実施例1と同じ操作を行い、未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴム組成物を得、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度)、加硫物物性(転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、及び耐摩耗性)を評価した。
(比較例2)
変性共役ジエン系重合体(変性SBR(3))に、シリカ、Si69、プロセスオイルを配合し、混練りした。
次いで、材料指示温度が140℃に達してから、混合機の温度制御によりバンバリーミキサー内材料指示温度を140〜150℃に制御しながら2分間混練りした。
その後、ラムを上げて掃除を行い、引き続きバンバリー内材料指示温度を140〜150℃に制御しながら、配合して1分混練りし、配合物(排出温度140〜150℃)をバンバリーミキサーより排出した。そして、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状配合物とした。
次に、混練り2段目として、上述した第1段目の混練りで得たシート状配合物を室温まで冷却した後、これを上記バンバリーミキサーに、カーボンブラック、加硫促進助剤(ステアリン酸及び酸化亜鉛)、老化防止剤、及びワックスと共に配合して150℃に到達した後、ラムを上げて掃除を行い、さらに一分混練し、配合物(排出温度140〜150℃)をバンバリーミキサーより排出した。
その他の条件は、実施例1と同じ操作を行い、未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴム組成物を得、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度)、加硫物物性(転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、及び耐摩耗性)を評価した。
(比較例3)
変性共役ジエン系重合体(変性SBR(3))に、シリカ、Si69、プロセスオイルを配合、混練りし、材料指示温度が140℃に達してから、混合機の温度制御によりバンバリーミキサー内材料指示温度を140〜150℃に制御しながら混練りを2分間実施した。
その後、混練り物を排出することなく、引き続きバンバリー内材料指示温度を140〜150℃に制御しながら、カーボンブラック、加硫促進助剤(ステアリン酸及び酸化亜鉛)、老化防止剤、及びワックスを配合して1分混練りし、ラムを上げて掃除を行った後、さらに一分混練し、配合物(排出温度140〜150℃)をバンバリーミキサーより排出した。そして、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状配合物とした。
次に、混練り2段目として、上述した第1段目の混練りで得たシート状配合物を室温まで冷却した後、これを上記バンバリーミキサーにて3分間再度混練りした。この場合も、混合機の温度制御により排出温度(配合物)を140〜150℃に調整した。
その他の条件は、実施例1と同じ操作を行い、未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴム組成物を得、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度)、加硫物物性(転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、及び耐摩耗性)を評価した。
(比較例4)
変性共役ジエン系重合体(変性SBR(1))にシリカ、Si69、プロセスオイル、カーボンブラック、加硫促進助剤(ステアリン酸及び酸化亜鉛)、老化防止剤、及びワックスを配合し、混練りした。
次いで、材料指示温度が140℃に達してから、混合機の温度制御によりバンバリーミキサー内材料指示温度を140〜150℃に制御しながら2分間混練りした。
その後、ラムを上げて掃除を行い、引き続きバンバリー内材料指示温度を140〜150℃に制御しながら、配合して1分混練りし、配合物(排出温度140〜150℃)をバンバリーミキサーより排出した。そして、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状配合物とした。
次に、混練り2段目として、上述した第1段目の混練りで得たシート状配合物を室温まで冷却した後、これを上記バンバリーミキサーにて3分間再度混練りした。この場合も、混合機の温度制御により排出温度(配合物)を140〜150℃に調整した。
その他の条件は、実施例1と同じ操作を行い、未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴム組成物を得、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度)、加硫物物性(転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、及び耐摩耗性)を評価した。
(比較例5)
変性共役ジエン系重合体(変性SBR(1))に、シリカ、Si69、プロセスオイルを配合し、混練りした。
次いで、材料指示温度が140℃に達してから、混合機の温度制御によりバンバリーミキサー内材料指示温度を140〜150℃に制御しながら2分間混練りした。
その後、ラムを上げて掃除を行い、引き続きバンバリー内材料指示温度を140〜150℃に制御しながら、配合して1分混練りし、配合物(排出温度140〜150℃)をバンバリーミキサーより排出した。そして、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状配合物とした。
次に、混練り2段目として、上述した第1段目の混練りで得たシート状配合物を室温まで冷却した後、これを上記バンバリーミキサーに、 カーボンブラック、加硫促進助剤(ステアリン酸及び酸化亜鉛)、老化防止剤、及びワックスと共に配合して150℃に到達した後、ラムを上げて掃除を行い、さらに一分混練し、配合物(排出温度140〜150℃)をバンバリーミキサーより排出した。
その他の条件は、比較例2と同じ操作を行い、未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴム組成物を得、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度)、加硫物物性(転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、及び耐摩耗性)を評価した。
(比較例6)
変性共役ジエン系重合体(変性SBR(2))にシリカ、Si75、プロセスオイル、カーボンブラック、加硫促進助剤(ステアリン酸及び酸化亜鉛)、老化防止剤、及びワックスを配合し、混練りした。
次いで、材料指示温度が150℃に達してから、混合機の温度制御によりバンバリーミキサー内材料指示温度を150〜160℃に制御しながら2分間混練りした。
その後、ラムを上げて掃除を行い、引き続きバンバリー内材料指示温度を150〜160℃に制御しながら、配合して1分混練りし、配合物(排出温度150〜160℃)をバンバリーミキサーより排出した。そして、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状配合物とした。
次に、混練り2段目として、上述した第1段目の混練りで得たシート状配合物を室温まで冷却した後、これを上記バンバリーミキサーにて3分間再度混練りした。この場合も、混合機の温度制御により排出温度(配合物)を150〜160℃に調整した。
その他の条件は、実施例1と同じ操作を行い、未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴム組成物を得、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度)、加硫物物性(転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、及び耐摩耗性)を評価した。
(比較例7)
変性共役ジエン系重合体(変性SBR(2))に、シリカ、Si75、プロセスオイルを配合し、混練りした。
次いで、材料指示温度が150℃に達してから、混合機の温度制御によりバンバリーミキサー内材料指示温度を150〜160℃に制御しながら2分間混練りした。
その後、ラムを上げて掃除を行い、引き続きバンバリー内材料指示温度を150〜160℃に制御しながら、配合して1分混練りし、配合物(排出温度150〜160℃)をバンバリーミキサーより排出した。そして、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状配合物とした。
次に、混練り2段目として、上述した第1段目の混練りで得たシート状配合物を室温まで冷却した後、これを上記バンバリーミキサーに、 カーボンブラック、加硫促進助剤(ステアリン酸及び酸化亜鉛)、老化防止剤、及びワックスと共に配合して160℃に到達した後、ラムを上げて掃除を行い、さらに一分混練し、配合物(排出温度150〜160℃)をバンバリーミキサーより排出した。
その他の条件は、実施例1と同じ操作を行い、未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴム組成物を得、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度)、加硫物物性(転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、及び耐摩耗性)を評価した。
(比較例8)
変性共役ジエン系重合体(変性SBR(2))に、シリカ、Si75、プロセスオイル、及びカーボンブラックを配合、混練りし、材料指示温度が110℃に達してから、混合機の温度制御によりバンバリーミキサー内材料指示温度を110〜115℃に制御しながら混練りを2分間実施した。
その後、混練り物を排出することなく、引き続きニーダー内材料指示温度を110〜115℃に制御しながら、加硫促進助剤(ステアリン酸及び酸化亜鉛)、老化防止剤、及びワックスを配合して1分混練りし、配合物(排出温度110〜115℃)をバンバリーミキサーより排出した。そして、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状配合物とした。
次に、混練り2段目として、上述した第1段目の混練りで得たシート状配合物を室温まで冷却した後、これを上記バンバリーミキサーにて3分間再度混練りした。この場合も、混合機の温度制御により排出温度(配合物)を110〜115℃に調整した。
その他の条件は、実施例1と同じ操作を行い、未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴム組成物を得、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度)、加硫物物性(転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、及び耐摩耗性)を評価した。
(比較例9)
変性共役ジエン系重合体(変性SBR(2))に、シリカ、Si75、プロセスオイル、及びカーボンブラックを配合、混練りし、材料指示温度が180℃に達してから、混合機の温度制御によりバンバリーミキサー内材料指示温度を180〜190℃に制御しながら混練りを2分間実施した。
その後、混練り物を排出することなく、引き続きニーダー内材料指示温度を180〜190℃に制御しながら、加硫促進助剤(ステアリン酸及び酸化亜鉛)、老化防止剤、及びワックスを配合して1分混練りし、配合物(排出温度180〜190℃)をバンバリーミキサーより排出した。そして、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状配合物とした。
次に、混練り2段目として、上述した第1段目の混練りで得たシート状配合物を室温まで冷却した後、これを上記バンバリーミキサーにて3分間再度混練りした。この場合も、混合機の温度制御により排出温度(配合物)を180〜190℃に調整した。
その他の条件は、実施例1と同じ操作を行い、未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴム組成物を得、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度)、加硫物物性(転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、及び耐摩耗性)を評価した。
実施例1〜6、及び比較例1〜9の加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度)、転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、及び耐摩耗性の評価結果を表2に示す。
表2より、実施例1〜6により製造した変性共役ジエン系共重合体組成物は、加工性、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、及び耐摩耗性のバランスに優れていることが分かった。これに対し、比較例1〜9は、加工性、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、及び耐摩耗性のバランスに劣ることが分かった。特に、比較例1〜5は転がり抵抗特性とシリカ分散性及び加工性のバランスに劣り、比較例6〜9は耐摩耗性並びにシリカ分散性及び加工性の少なくとも一方の結果が著しく劣る結果となった。