本発明の積層体は、反射防止部材やハードコート部材として好適である。本発明の積層体は、支持基材の少なくとも片面に第1層と第2層からなる積層膜を有する。
第1層と第2層の屈折率を異ならしめることによって積層膜が反射防止層としての機能を有し、積層体は反射防止部材として適用することができる。この場合、後述するように、第1層が低屈折率層、第2層が高屈折率層となる。
積層膜を構成する少なくとも第2層がハードコート層としての機能を有することによって、積層体はハードコート部材として適用することができる。この場合、第1層は、防汚機能あるいは易滑機能を有する層であることが好ましい。
本発明の具体的な形態を説明する前に本発明のメカニズムについて、本発明の積層体が反射防止部材である場合を例として説明する。
まず、干渉ムラと透明性の両立について述べる。干渉ムラは、塗工工程での液膜の揺らぎ、乾燥工程での乾燥速度ムラ、および支持基材の厚みムラに起因する反射防止層の厚み変化が目視可能な周期で現れることにより反射防止層の干渉効果にズレが生じ、特に蛍光灯のような輝線スペクトルを含む光の下で反射色の変化が視認されるものと考えられる。そこで、本発明者らは透明性を維持しつつ干渉ムラを解決する方法として、第1層、第2層が最も大量に含む粒子がそれぞれ異なる元素の粒子であり、第1層は厚み方向に前記粒子が層内で均一に存在した構造を、第2層は厚み方向で第1層と第2層の界面から基材方向に向かって前記粒子の濃度が増加していく構造を作ることによりこれを達成した。
また、この前述の構造の反射防止層、特に第2層に前述の構造を形成するには、特定の塗料組成物を用いて、1回の塗布により形成した1層の液膜から2層以上の層を形成する製造方法によるものが適していることを本発明者らは見出した。この理由は、前記製造方法が乾燥過程の比較的早い段階で粒子間の表面エネルギー差により自発的な層構造を形成することにある。層構造が乾燥過程の速い段階で形成されるため、最表面側から第2層目は溶媒が多い状態で第1層目によって表面に蓋がされた形になり、それ以降の塗膜の乾燥の進行が塗膜内部での溶媒の拡散が律速になり、第2層内の第1層との界面近傍では溶媒濃度が高く、基材近傍では溶媒濃度が低くなった溶媒濃度の膜厚方向の分布が形成される。このとき、特定の塗料組成物、特に第2層の粒子とバインダーとの関係が特定の状態にある場合には、溶媒成分の分布に対応して、第2層に存在する粒子成分が第1層との界面から基材側に向かって増加するが濃度勾配が塗膜中に形成される。
一方で、前述の自発的な層構造の形成により、1回の塗布により形成した1層の液膜から2層以上の層を形成する製造方法にて、耐擦傷性、耐磨耗性を向上させるため、第2層の厚みを厚くすると、製造工程にて塗工面にクラック状の欠陥が発生する問題があることも本発明者らは確認した。このメカニズムは、前述のように乾燥過程において第2層目は溶媒が多い状態で、第1層目によって表面に蓋がされた状態であるため、第2層に残った溶媒が蒸発するとき第2層に応力が発生し、クラック状欠陥が形成されると考えられる。
この課題に対し、本発明者らは乾燥過程にて塗膜全体を緩やかにゲル化させ、乾燥過程において塗膜全体を強化することにより、乾燥過程にて発生する応力を抑制することにより達成した。具体的には、塗料組成物に含まれる処理無機粒子A,処理無機粒子B間の水素結合を強化する金属キレート化合物を、塗料組成物中の水分にて失活することのないように最適量のリガンドと共存させる形で添加することにより達成した。
以下、本発明の実施の形態について具体的に述べる。
本発明の積層体は、支持基材の少なくとも片面に第1層と第2層からなる積層膜を有する積層体であって、積層体は、第1層、第2層、支持基材の順に積層され、第1層は元素Aを含む無機粒子Aを有し、第2層は元素Bを含む無機粒子Bを有し、第1層に最も多く存在する半金属元素または金属元素が元素Aであり、第2層に最も多く存在する半金属元素または金属元素が元素Bであり、さらに以下の条件1及び2を満たすことを特徴とする。
条件1:第1層における元素Aの濃度が、厚み方向に一定である。
条件2:第2層における元素Bの濃度が、第1層側から基材側に向かう厚み方向において、連続的に増加する。
前述したように、第1層と第2層の屈折率を異ならしめることによって積層膜が反射防止層としての機能を有することになり、本発明の積層体は反射防止部材として適用することができる。
以下、本発明の積層体が反射防止部材として適用される態様について説明する。以下、本発明の積層体を反射防止部材、本発明の積層膜を反射防止層にそれぞれ置き換えて説明する。
本発明の反射防止部材は、支持基材の少なくとも片面に屈折率の異なる2層(屈折率の異なる2層をそれぞれ第1層、第2層とする)からなる反射防止層を有する反射防止部材であって、反射防止部材は第1層、第2層、支持基材の順に積層され、第1層は元素Aを含む無機粒子Aを有し、第2層は元素Bを含む無機粒子Bを有し、第1層に最も多く存在する半金属元素または金属元素が元素Aであり、第2層に最も多く存在する半金属元素または金属元素が元素Bであり、さらに以下の条件1及び2を満たすことを特徴とする。
条件1:第1層における元素Aの濃度が、厚み方向に一定である。
条件2:第2層における元素Bの濃度が、第1層側から基材側に向かう厚み方向において、連続的に増加する。
図1は本発明の反射防止部材の好ましい断面であり、図2は好ましくない断面を示す。本発明の反射防止部材1は、支持基材2の少なくとも片面上に、屈折率の異なる2層からなる反射防止層3が積層されている。なお反射防止層においては、第1層が第2層よりも低い屈折率であることが好ましく、第1層が低屈折率層4であり、第2層が高屈折率層5であることが好ましい。そして第1層、第2層、支持基材がこの順に積層されている。
この第1層は、元素Aを含む6で示される無機粒子Aを含み、第2層は、元素Bを含む7で示される無機粒子Bを含む。
このとき第2層中の無機粒子Bの単位面積当たりの数を、第1層との界面近傍と、支持基材との界面近傍とで比較すると、図1では支持基材との界面近傍の方が多くなっているのに対して、図2ではほぼ同等になっている。
ここで元素Aは、第1層に最も多く存在する半金属元素、または金属元素である。ここで、第1層に最も多く存在するとは、第1層中に存在する全ての半金属元素または金属元素において、存在する元素の数が最多であることを意味し、その測定は後述する方法によりSTEM−EDX法を用いて行う。
そして元素Bは、第2層に最も多く存在する半金属元素、または金属元素である。そして第2層に最も多く存在するとは、第2層中に存在する全ての半金属元素または金属元素において、存在する元素の数が最多であることを意味し、その測定は後述する方法によりSTEM−EDX法を用いて行う。
ここで半金属元素とは、金属と非金属の中間の物質、すなわち電気抵抗は大きいが電気伝導度の温度依存性の特徴から金属的判断される、いわゆる金属性電気伝導を示す元素を指し、具体的にはホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、テルル、ポロニウムを指す。
本発明の反射防止部材は、第1層が元素Aを含む無機粒子Aを有することが重要であるが、好ましい無機粒子Aは、後述する処理無機粒子Aである。
また本発明の反射防止部材は、第2層が元素Bを含む無機粒子Bを有することが重要であるが、好ましい無機粒子Bは、後述する処理無機粒子Bである。
図3では本発明の好ましい元素の分布状態を、図4では好ましくない分布状態の例を示す。図3、図4では縦軸が反射防止層の膜厚に対応しており、上側が大気側、下側が基材側を示し、8が第1層、9が第2層に対応する。横軸は元素の濃度を示し、左から右に行くに従って元素の濃度が増加することを示す。ここで、元素の濃度とは、反射防止層断面のSTEM−EDX像分析より得られた、測定領域中に含まれる測定された総原子数に対する対象元素の占める割合を求めたものである。
ここで、STEM−EDX法とは、走査透過電子顕微鏡(STEM)とエネルギー分散形X線分光器(EDX)を組み合わせた分析法で、STEM像の特定部分に対して元素分析を行う手法である。
本発明の反射防止部材は、前述の通り以下の条件1、2を満たすことが重要である。
条件1:第1層における元素Aの濃度が、厚み方向に一定である。
条件2:第2層における元素Bの濃度が、第1層側から基材側に向かう厚み方向において、連続的に増加する。
ここで図3、4中で、元素Aの濃度を10、元素Bの濃度を11が示す。図3では、元素Aは第1層の厚み方向に一定に存在している。また図3では、第2層における元素Bの濃度が、第1層側から基材側に向かう厚み方向において、連続的に増加(元素Bは第2層の厚み方向に、第1層との界面から支持基材に向かって連続的に増加)している。一方で図4では、元素A、元素B共に第1層、第2層の厚さ方向に均一に存在している。つまり図3は、前述の条件1及び2を満たす態様となる。
ここで前述の「厚み方向に一定」とは、当該区間(例えば、条件1では第1層)の厚み方向の測定値の最大値と最小値の差が15%以内であることを示す。より具体的には、数式1)の条件を満たす。ここで、xmaxは第1層での元素Aの濃度の最大値を、xminは最小値を、xavrは平均値を表わす。
((xmax―xmin)/(xavr)×100)≦15 数式1)
また前述の「第2層における元素Bの濃度が、第1層側から基材側に向かう厚み方向において、連続的に増加」とは、第2層のn個の測定点のn=1〜nの範囲で、数式2)が成り立つことを示す。ここでXn、Xn+1は、第2層中の第1層との界面側から支持基材側に向かった厚み方向の、n番目、n+1番目の測定点の元素Bの濃度を指す。
(Xn+1−Xn)>0 数式2)
前記条件1、条件2を満たすことにより、干渉効果による反射防止機能を発現させつつ、干渉ムラを低減することができる。
さらに、本発明のよる干渉ムラを低減する効果を最大限に発揮するには、この条件1及び2を満たす構造において、第1層と第2層の界面近傍の第2層中の元素Bの濃度と、第2層と基材の界面近傍の第2層中の元素Bの濃度とが、特定の範囲であることが好ましい。具体的には、第2層の厚みを100%とした際に、第1層側から基材側に向かって20%の位置の第2層における元素Bの濃度を濃度X1とし、基材側から第1層側に向かって20%の位置の第2層における元素Bの濃度を濃度X4とした際に、濃度X4と濃度X1の比(X4/X1)が、1.5以上3.5以下が好ましい。X4/X1の下限は、1.7以上がより好ましく、X4/X1の上限は3.3以下がより好ましく、X4/X1の上限と下限は任意に組み合わせることができる。ここで、X4/X1が1.5未満であると、干渉ムラの低減効果が不十分であり、X4/X1が3.5より大きいと、反射防止性能が低下する。
また、第2層の厚みには好ましい範囲があり、500nm以上4000nm以下が好ましい。さらに第2層の厚みの下限は600nm以上がより好ましく、上限は3000nm以下がより好ましく、第2層の厚みの上限、下限は任意に組み合わせることができる。第2層の厚みが500nm未満では、耐擦傷性、耐磨耗性が不十分であり、第2層の厚みが4000nmよりも大きい場合には、反射防止性能、透明性が不十分になる。
第2層の厚みを好ましい範囲にするには、塗料組成物中に含まれる処理無機粒子B、バインダー原料の含有量、および反射防止部材の製造方法における塗工膜厚により達成することができる。具体的には、処理無機粒子Bとバインダー原料の比率を、透明性、反射防止性能から決定し、第2層を構成する処理無機粒子Bとバインダー原料の乾燥状態での密度を求め、この密度と塗工膜厚から第2層の膜厚に合わせて塗料組成物中の添加量を決定する。
本発明の反射防止部材中の反射防止層は、金属キレート化合物に由来する金属元素を含むことが好ましい。ここで金属キレート化合物の詳細については後述するが、反射防止層が金属キレート化合物に由来する金属元素を含まない場合には、クラック状欠陥が発生する場合がある。
反射防止部材中の反射防止層が金属キレート化合物に由来する金属元素を含有するためには、該反射防止層を形成するための塗料組成物が、金属キレート化合物を含有することにより達成することができる。
本発明の反射防止部材を形成するには、特定の塗料組成物を用いることが好ましい。本発明の反射防止部材を製造するために好適な塗料組成物は、処理無機粒子A、処理無機粒子B、バインダー原料、金属キレート、該金属キレートのリガンドを含むことが必要である。
ここで処理無機粒子Aとは、元素Aを含む無機粒子Aをフッ素化合物Aにより処理した粒子を指し、処理無機粒子Bとは、元素Bを含む無機粒子Bを化合物により処理した粒子を指す。これらの処理無機粒子A、処理無機粒子Bを含む塗料組成物を用いることにより、支持基材の少なくとも片面上に1回のみの塗布により形成した1層の液膜から2層(反射防止層)を形成する製造方法を可能にする。なお、無機粒子として無機粒子Aにフッ素化合物Aによる処理した粒子(処理無機粒子A)を含むことにより、該塗料組成物を支持基材上に塗工した場合、本発明の反射防止部材の前記条件1、すなわち第1層における元素Aの濃度を厚み方向に一定にすることができる。
なお、処理無機粒子Aを製造するために用いるフッ素化合物Aや処理無機粒子Bを製造するために用いる化合物については後述する。
さらに、金属キレートのリガンドとは、金属キレート中の配位子と同一の化合物で、かつ金属キレートに配位していない化合物のことを指し、例えば、金属キレートとしてアルミニウムトリスアセチルアセトナートを用いた場合には、アセチルアセトン、またはアセチルアセトナートを指す。なお、金属キレートとは、金属元素と配位子とから構成される、いわゆる金属錯体である。
塗料組成物中に存在する金属キレートのリガンド(金属に対して配位していないリガンド)の塗料組成物中の含有量(モル量)には好ましい範囲があり、該金属キレートの金属のモル量の1.5倍以上3.0倍以下であり、下限は1.7倍以上がより好ましく、上限は2.7倍以下がより好ましく、上限、下限は任意に設定できる。塗料組成物中の該金属キレートのリガンド含有量が該金属キレートのモル量の1.5倍よりも少ない場合には、異物状欠陥の発生、またはクラック状欠陥が発生し、3.0倍より多い場合には、異物状の欠陥を生じる場合がある。
さらにこの塗料組成物においては、処理無機粒子Bとバインダー原料との間に好ましい関係があり、具体的には処理無機粒子Bとバインダー原料との相溶性指数が、20nm以上120nm以下であることが好ましい。この相溶性指数とは、塗料組成物中の処理無機粒子Bとバインダー原料間の親和性(相溶性)の程度を表すパラメーターであり、値が小さいほど親和性が高いことを示す。
塗料組成物の処理無機粒子Bとバインダー原料との相溶性指数をこの20nm以上120nm以下の範囲にすることにより、該塗料組成物を支持基材上に塗工した場合、本発明の反射防止部材の前記条件2、すなわち第2層における元素Bの濃度が、第1層側から基材側に向かう厚み方向において、連続的に増加する構造を達成することができる。
相溶性指数が20nmよりも小さい場合には、干渉ムラの改良効果が低下し、120nmよりも大きい場合には、塗料組成物の分散安定性が低下することにより、異物状の欠陥が発生する。
相溶性指数は、処理無機粒子Bが溶媒に固形分濃度20質量%で分散した液(処理無機粒子B分散物1)と、処理無機粒子Bとバインダー原料の比率が質量比1:1で、処理無機粒子の固形分濃度が20質量%になるようにした液(処理無機粒子B分散物2)を、動的光散乱法によって測定し、処理無機粒子B分散物1と、処理無機粒子B分散物2の体積基準分布のメディアン値の差を指す。
この動的光散乱法とは、ブラウン運動中の粒子に、レーザー光を粒子群に当てその散乱光を光電子増倍管で検出することにより、散乱強度のゆらぎなどから拡散係数を測定し、さらに粒子径を求めるものである。体積基準分布とは粒子径分布の表現方法の一つで、各粒子径の粒子の占める体積が、粒子の総体積に占める割合を示すものである。さらに、メディアン値とは、50%径または中位径ともいい、粒径分布においてある粒子径より大きい粒子径を有する粒子の個数又は質量が,全粒子のそれ(個数、又は質量)の50%をしめるときの粒子径を指す。即ち、体積基準分布のメディアン値とは、その粒子径より大きい粒子径を有する粒子の体積が、全粒子の体積の50%を占める粒子径を指す。
動的光散乱法は前述のように粒子のブラウン運動性に依存するため、粒子に対して吸着性、あるいは親和性のある成分が測定液中に存在する場合には、実際の粒子径に対して粒子径が大きく測定されるため、粒子とバインダー原料の相溶性を定量化する方法としても用いることができ、本発明ではこの特性を処理無機粒子Bとバインダー原料間の親和性の評価に用いた。
この塗料組成物において、前述したように処理無機粒子Bは、元素Bを含む無機粒子Bを、化合物により処理した粒子を指すが、この化合物としては次の化合物Bであることが好ましい。
化合物B: R1 n1Si(OR2)4−n1 一般式(I)
ここで、R1、R2は炭素数1〜4のアルキル基を示す。また、n1は1から3のいずれかの整数を示す。R1、R2は、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。
さらに、処理無機粒子Bの処理量については、好ましい範囲が存在する。具体的には比表面積M1(m2/g)、質量M2の無機粒子Bを、最小被覆面積N1(m2/g)、質量N2の化合物Bにより処理した粒子であり、 M1、M2、N1、N2が以下の関係式を満たすことが好ましい。なお、比表面積X1および最小被覆面積Y1の詳細は後述する。
30≦(((M1×M2)/(N1×N2))×100)≦150
ここで、(((M1×M2)/(N1×N2))×100)の下限は40、上限は100であることがより好ましく、(((M1×M2)/(N1×N2))×100)の上限と下限は任意に組み合わせることができる。
塗料組成物の処理無機粒子Bの処理量について、上記30≦(((M1×M2)/(N1×N2))×100)≦150の式を満たす範囲にすることにより、該塗料組成物を支持基材上に塗工した場合、本発明の反射防止部材の第2層の構造を好ましい範囲にすることができる。すなわち前記濃度X1と濃度X4の比(X4/X1)を、1.5以上3.5以下にすることができる。
(((M1×M2)/(N1×N2))×100)が30未満であると、塗料組成物の分散安定性が低下することにより、異物起因の面状欠陥が発生やすくなり、150を超えると、前述の条件2を満たす第2層の構造が形成することができず、さらには前記濃度X4と濃度X1の比(X4/X1)を好ましい範囲にすることできず、干渉ムラの低減効果が低下する。
以下発明を要素毎に説明する。
[反射防止部材]
本発明の反射防止部材とは、各種支持基材の少なくとも片面に反射防止機能を有する層(屈折率の異なる少なくとも2層以上の層からなる反射防止層)が形成された部材を指し、基材がプラスチックフィルムの場合には一般に反射防止フィルムと呼ばれる。その必要性や要求される性能は特開昭59−50401号公報に記載されている様に、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上の屈折率差を有する2層を支持基材上に積層させることで構成された様態である。また支持基材上の2層の屈折率差は5.0以下であることが好ましい(つまり、第1層と第2層の屈折率差は、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上であり、上限としては5.0以下とした態様である。)。この屈折率差とは、隣接する層間の屈折率を相対的に比較した値であり、相対的に屈折率が低い層を低屈折率層と呼び、相対的に屈折率が高い層を高屈折率層と呼ぶ。そして、第1層が低屈折率層であり、第2層が高屈折率層であることが好ましい。
第2層として好適な高屈折率層が、高屈折率の機能に加えて、耐傷性を付与する場合には、高屈折率ハードコート層とも呼ぶ。高屈折率ハードコート層は、支持基材と低屈折率層との接着を強化する機能も有することが好ましい。高屈折率ハードコート層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。上限については、強度が高い分には問題はないが、現実的には9H程度が上限である。
なお、本発明の反射防止部材中の反射防止層には、屈折率の異なる2層以上の層である高屈折率層と低屈折率層との間には粒子の配列による明確な界面があることが好ましい。本発明における明確な界面とは、1つの層と他の層とが区別可能な状態をいう。区別可能な界面とは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察すると、各層に存在する元素の違いに起因した電子散乱因子の差により、濃度の差として視認し、区別できるものを指す。
反射防止部材として良好な性能を示すには、分光測定に置いて最低反射率が好ましくは0%以上1.0%以下、より好ましくは0%以上0.8%以下、さらに好ましくは0%以上0.6%以下であり、特に好ましくは0%以上0.5%以下であることが望ましい。
また、反射防止部材として良好な性質を示すには更に、透明性が高いことが望ましい。透明性が低いと画像表示装置として用いた場合、画像彩度の低下などによる画質低下が生じるために好ましくない。本発明の製造方法により得られる反射防止部材の透明性の評価にはヘイズ値を用いることができる。ヘイズはJIS K 7136(2000)に規定された透明性材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。反射防止部材のヘイズ値としては好ましくは3.0%以下であり、より好ましくは2.0%未満、更に好ましくは1.6%未満であり、値が小さいほど透明性の点で良好であるものの、0%とすることは困難であり、現実的な下限値は0.01%程度と思われる。ヘイズ値が2.0%を超えると、画像劣化が生じる可能性が高くなるため好ましくない。
反射防止部材として良好な性質を示すには、高屈折率層、低屈折率の厚みが特定の厚みであることが望ましく、低屈折率層の厚みが好ましくは50nm以上200nm以下、さらに好ましくは70nm以上150nm以下であり、特に好ましくは90nm以上130nm以下であることが望ましい。低屈折率層の厚みが50nm未満であると光の干渉効果が得られず反射防止効果が得られず画像の映り込みが大きくなるために好ましくない。また200nmを超える場合も光の干渉効果が得られなくなるため画像の映り込みが大きくなるために好ましくない。
高屈折率層の厚みは、好ましくは500nm以上4000nm以下、さらに好ましくは600nm以上2000nm以下、特に好ましくは600nm以上1500nm以下であることが望ましい。反射防止層側の最表層から2層目の層(第2層)の厚みを500nm以上4000nm以下とすることで、耐擦傷性、耐摩耗性と、反射防止部材のカールや反射率、透過率の改善、塗膜表面のクラック発生を抑制することができるために望ましい。
本発明の反射防止部材には、さらに、易接着層、防湿層、帯電防止層、シールド層、下塗り層や保護層などを設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
[塗料組成物]
本発明の塗料組成物は、塗料組成物中に少なくとも処理無機粒子A,処理無機粒子B,バインダー原料、金属キレート、および前述の所定量の該金属キレートのリガンドを含んでおり、さらに処理無機粒子Bとバインダー原料の相溶性指数が特定の範囲であることが必要である。これにより、本発明の塗料組成物を支持基材に1回のみ塗工することによって、支持基材上に本発明の構造を有する屈折率の異なる2層を有する反射防止部材を得ることができる。処理無機粒子A,処理無機粒子Bの詳細については後述する。
本発明の塗料組成物は、前述の成分以外の成分を含んでいてもよく、このような成分としては溶媒、硬化剤、界面活性剤、分散剤、反応性部位を有するフッ素化合物Bなどを含んでもよい。これら塗料組成物の構成材料の詳細について、以降述べる。
[無機粒子]
本発明の塗料組成物は処理無機粒子Aと処理無機粒子Bを含む。
無機粒子とは、粒子の表面から中心までが同一の元素組成であってもよく、複数の元素組成のものが中心から層状になって形成された粒子でもよい。粒子の種類数としては2種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは2種類以上10種類以下、さらに好ましくは2種類以上3種類以下であり、最も好ましくは2種類である。
ここで粒子の種類とは、粒子を構成する元素の種類によって決まり、何らかの表面処理を行う場合には、表面処理される前の粒子を構成する元素の種類によって決まる。例えば、酸化チタン(TiO2)と酸化チタンの酸素の一部をアニオンである窒素で置換した窒素ドープ酸化チタン(TiO2−xNx)とでは、粒子を構成する元素が異なるために、異なる種類の粒子である。また、同一の元素、例えばZn、Oのみからなる粒子(ZnO)であれば、その粒径が異なる粒子が複数存在しても、またZnとOとの組成比が異なっていても、これらは同一種類の粒子である。また酸化数の異なるZn粒子が複数存在しても、粒子を構成する元素が同一である限りは(この例ではZn以外の元素が全て同一である限りは)、これらは同一種類の粒子である。
[無機粒子A、および処理無機粒子A]
本発明の反射防止部材の第1層に含まれる無機粒子A、および本発明の塗料組成物に含まれる処理無機粒子Aに関して説明する。
元素Aを含む無機粒子のことを無機粒子Aという。そして元素Aとは、半金属元素または金属元素である(さらに反射防止部材においては、第1層に最も多く存在する半金属元素または金属元素が元素Aである。)。
無機粒子Aが含む元素Aとしては、Si,Na,K,Ca,およびMgから選択される半金属元素、または金属元素が好ましい。
元素Aを含む無機粒子Aとしては、シリカ粒子(SiO2)、アルカリ金属フッ化物類(NaF,KF,NaAlF6など)、およびアルカリ土類金属フッ化物(CaF2、MgF2など)が好ましく、耐久性、屈折率、コストなどの点からシリカ粒子が特に好ましい。
このシリカ粒子とは、ケイ素化合物又は有機珪素化合物の重合(縮合)体のいずれかからなる組成物を含む粒子を指し、一般例として、SiO2などのケイ素化合物から導出される粒子の総称である。
無機粒子Aに好適な粒子の形状は特に限定されないが、本発明の塗料組成物により形成される反射防止層の屈折率や光学異方性の観点から球状が好ましい。より好ましくは、無機粒子Aがシリカ粒子を含有し、該シリカ粒子の一部または全てが、中空及び/又は多孔質の形状であることが好ましい。ここで中空シリカ粒子とは、粒子の内部に空洞を有するシリカ粒子であり、多孔質シリカ粒子とは、粒子の表面及び内部に細孔を有するシリカ粒子である。
元素Aを含む無機粒子Aとして、中空及び/又は多孔質を有する粒子を用いることにより、得られる反射防止層の密度が下がるため、その結果屈折率を下げる効果が得られる。なお、中空及び/又は多孔質を有する粒子のことを、以下中空粒子と記載する。
無機粒子Aの数平均粒子径は、1nm以上200nmが好ましい。200nmよりも大きくなると、光散乱により良好な透明性が得られなくなり好ましくない。また、数平均粒子径が小さい分には特に影響はないが、現実的に安定して得られる粒子の数平均粒子径は1〜5nm程度が下限である。
なお、粒子の数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡により求めた粒子径をいう。分散物を蒸発、乾固した状態のサンプルについて透過型電子顕微鏡で観察を行い、その際の測定倍率は50万倍とし、その画面に存在する100個の粒子の外径を測定しその平均値とした。
ここで外径とは、粒子の最大の径(つまり粒子の長径であり、粒子中の最も長い径を示す)を表し、内部に空洞を有する粒子の場合も同様に、粒子の最大の径を表す。
次に本発明の塗料組成物に含まれる処理無機粒子Aを得るための表面処理について説明する。前述の粒子、特にシリカなどの無機粒子Aに対するフッ素化合物Aによる処理とは、無機粒子Aを化学的に修飾して、無機粒子Aにフッ素化合物Aを導入する工程を指し、一段階で行われても良いし、多段階で行われても良い。また、複数の段階でフッ素化合物Aを用いても良いし、一つの段階のみでフッ素化合物Aを用いても良い。ここで導入とは、フッ素化合物Aが、無機粒子に化学結合(共有結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、疎水結合等を含む)や吸着(物理吸着、化学吸着を含む)している状態を指す。
このフッ素化合物Aは、次の一般式(II)で表される化合物である。
フッ素化合物A: R3−R4−Rf 一般式(II)
ここで、Rfはフルオロアルキル基、R3は反応性部位、R4は炭素数1から6のアルキレン基又はそれらから導出されるエステル構造を示す。それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。
フルオロアルキル基とは、アルキル基が持つ水素の一部、あるいはすべてがフッ素に置き換わった置換基であり、主にフッ素原子と炭素原子から構成される置換基である。
反応性部位とは、熱または光などの外部エネルギーにより他の成分と反応する部位をさす。このような反応性部位として、反応性の観点からアルコキシシリル基及びアルコキシシリル基が加水分解されたシラノール基や、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる、反応性、ハンドリング性の観点から、アルコキシシリル基、シリルエーテル基あるいはシラノール基や、エポキシ基、アクリロイル(メタクリロイル)基が好ましい。
このフッ素化合物Aを導入する処理法の一つは、このフッ素化合物Aとして、前記一般式(II)にて、R3がアルコキシシリル基、シリルエーテル基、シリルエーテル基になったフルオロアルコキシシラン化合物を少なくとも1種類以上と、無機粒子A、もしくは無機粒子Aの粒子分散物と溶媒、触媒等とを共に撹拌、場合によっては加熱、または脱アルコール処理をし、無機粒子A表面の水酸基と縮合させることにより成される方法である。
ここでいう無機粒子Aの粒子分散物とは、前記無機粒子Aが溶媒中に分散された状態のものを指し、ゾル、サスペンジョン、スラリー、コロイド溶液ともよばれることもあり、無機粒子、溶媒のほかに、分散剤、界面活性剤、表面処理剤等、安定化剤等を含んでもよい。粒子を微細に分散した状態で扱う観点から、分散物の状態で表面処理を行うことが好ましい。
フッ素化合物Aの具体例としては、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリクロロシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリイソシアネートシラン、2−パーフルオロオクチルトリメトキシシラン、2−パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、2−パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、2−パーフルオロオクチルエチルトリクロロシラン、2−パーフルオロオクチルイソシアネートシラン等が挙げられる。
フッ素化合物Aによる無機粒子Aの処理の別の方法には、無機粒子、もしくは無機粒子Aの粒子分散物を化合物Dにて処理し、次いでフッ素化合物Aとつなぎ合わせる方法がある。
この化合物Dは、分子内にフッ素は無いが、フッ素化合物Aと反応可能な反応性部位と、中空シリカ粒子などの無機粒子と反応可能な部位を少なくとも一カ所ずつ持っている化合物を指す。化合物Dにおける無機粒子と反応可能な部位としては、反応性の観点からアルコキシシリル基、シリルエーテル基、及びシラノール基であることが好ましい。これら化合物は一般的にシランカップリング剤と呼ばれ、例としては、グリシドキシアルコキシシラン類、アミノアルコキシシラン類、アクリロイルシラン類、メタクリロイルシラン類、ビニルシラン類、メルカプトシラン類、などを用いることができる。
この方法は具体的には、シリカ粒子(特に中空シリカ粒子)などの無機粒子Aを、下記一般式(III)で示される化合物Dと前述の一般式(II)で示されるフッ素化合物Aで処理するものであり、より好ましくは、シリカ粒子(特に中空シリカ粒子)などの無機粒子Aを、下記一般式(III)で示される化合物Dで処理し、次いで前述の一般式(II)で示されるフッ素化合物Aで処理するものである。
化合物D: R5−R6−SiR7 n2(OR8)3−n2 一般式(III)
上記一般式(III)中のR5は反応性部位を示し、R6は炭素数1から6のアルキレン基及びそれらから導出されるエステル構造を示し、R7、R8は水素又は炭素数が1から4のアルキル基を示し、n2は0から2の整数を示し、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。
上記一般式中のより好ましい形態は、一般式(II)のR3と一般式(III)のR5で表される反応性部位が反応性二重結合基である。
反応性二重結合基とは、光または熱などのエネルギーをうけて発生したラジカルなどにより化学反応する官能基であり、具体例としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。つまり、反応性二重結合とは、反応性部位の一部である。
この化合物Dの具体例としては、アクリロキシエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシブチルトリメトキシシラン、アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、アクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン及びこれら化合物中のメトキシ基が他のアルコキシル基及び水酸基に置換された化合物を含むものなどが挙げられる。
また、この場合のフッ素化合物Aの具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフロオロプロピルアクリレート、2−パーフルオロブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロデシルエチルアクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−3−メトキシブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1−トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレートなどが挙げられる。
分子中にフルオロアルキル基Rfを有さない一般式(III)で表される化合物Dを用いることにより、簡便な反応条件で中空シリカなどの無機粒子A表面を修飾することが可能となるばかりではなく、シリカ粒子表面に反応性を制御しやすい官能基を導入することが可能となり、その結果、反応性二重結合基及びフルオロアルキル基Rfを有するフッ素化合物Aを、シリカ粒子などの無機粒子A表面で反応させることが可能になる。
[無機粒子B、および処理無機粒子B]
本発明の反射防止部材の第2層に含まれる無機粒子B、および本発明の塗料組成物に含まれる処理無機粒子Bに関して説明する。
元素Bを含む無機粒子のことを無機粒子Bという。そして元素Bとは、半金属元素または金属元素である(さらに反射防止部材においては、第2層に最も多く存在する半金属元素または金属元素が元素Bである。)。
無機粒子Bとしては、無機粒子Aとは異なる種類の無機粒子が好ましい。この無機粒子Bは特に限定されないが、金属元素、半金属元素の酸化物、窒化物、ホウ素化物であることが好ましい。無機粒子Bは、Ga、Zr,Ti,Al,In,Zn,Sb,Sn,およびCeよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素Bの酸化物粒子であることがさらに好ましい。
また処理無機粒子Bの原料として好適に用いられる無機粒子Bは、処理無機粒子Aの原料に好適な無機粒子Aよりも屈折率が高いことが好ましい。無機粒子Bは、具体的には酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化インジウム(In2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化アンチモン(Sb2O3)、およびインジウムスズ酸化物から選ばれる少なくとも一つ、あるいはこれらの間の固溶体、および一部元素を置換、または一部元素が格子間に侵入、一部元素が欠損した固溶体、またはこれら無機化合物粒子が接合した粒子である。無機粒子Bは、特に好ましくはリン含有酸化スズ(PTO)、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、ガリウム含有酸化亜鉛(GZO)や酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)である。
無機粒子Bの数平均粒子径は、好ましくは150nm以下、より好ましくは50nm以下であり、現実的に製造可能な数平均粒子径は1nm程度が下限である。
なお、ここでいう数平均粒子径も透過型電子顕微鏡により求めた粒子径を指し、該粒子を含む分散物を蒸発、乾固した状態のサンプルについて透過型電子顕微鏡で観察を行い、その際の測定倍率は50万倍とし、その画面に存在する100個の粒子の外径を測定しその平均値とした。なお外径とは、前述の通り粒子の最大の径(つまり粒子の長径であり、粒子中の最も長い径を示す)を表す。
無機粒子Bの屈折率は好ましくは1.55〜2.80、より好ましくは1.58〜2.50である。無機粒子Bの屈折率が1.55よりも小さくなると、得られる反射防止部材に形成された高屈折率層の屈折率が低下して、無機粒子Aを含む低屈折率層(第1層)と無機粒子Bを含む高屈折率層(第2層)との屈折率差が小さくなって、良好な反射防止性能が得られなくなり、無機粒子Bの屈折率が2.80よりも大きくなると、無機粒子Aを含む低屈折率層と無機粒子Bを含む高屈折率層との屈折率差、及び高屈折率層と支持基材との屈折率差が上昇し、良好な反射防止性能が得られなくなり、またわずかな膜厚の変化が干渉色の変化を引き起こし、これに起因する干渉ムラが検知されて発生し外観が悪化することがある。
さらに本発明の反射防止部材において、無機粒子Aがシリカ粒子の場合は、無機粒子Bが該シリカ粒子よりも屈折率が高いことが特に好ましく、このような屈折率が高い無機粒子としては、数平均粒子径が20nm以下で、かつ屈折率が1.60から2.80の無機化合物が好ましく用いられる。そのような無機化合物Bの具体例としては、アンチモン酸化物、アンチモン含有酸化亜鉛、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、リン含有酸化スズ(PTO)、ガリウム含有酸化亜鉛(GZO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、及び/または酸化チタン(TiO2)が挙げられ、特に反射防止性の点から屈折率が高い酸化チタン、酸化ジルコニウムがより好ましい。
次に本発明の塗料組成物に含まれる処理無機粒子Bについて説明する。前述の処理無機粒子Bの原料となる無機粒子Bに対して施す処理とは、無機粒子Aに対して施されるフッ素化合物Aによる処理と同様に化学的に修飾し、無機粒子Bに化合物を導入する工程を指し、一段階で行われても良いし、多段階で行われても良い。なお、この処理に用いる化合物は、化合物Bが好ましい。
この化合物Bは、前記一般式(I)で示される化合物である。
化合物Bは、粒子表面に化学結合や吸着可能な部位(一般式(I)における、Si−(OR2)4−n1部分)と、アルキル基部分(R1 n1)を有する化合物である。
この場合、粒子表面に化学結合や吸着可能な部位しては、アルコキシシリル基及びアルコキシシリル基が加水分解されたシラノール基が挙げられる。これら化合物は一般的にシリル化剤と呼ばれる。化合物Bによる無機粒子Bの処理の一つの方法には、上記化合物Bと無機粒子B、もしくは無機粒子Bの粒子分散物と触媒、水、溶媒等とを共に撹拌、加熱、脱アルコール等し、粒子表面のシラノール基と縮合させることによりなされる方法がある。ここでいう粒子分散物については、前述の通りである。
化合物Bによる無機粒子Bの処理には最適な範囲が存在するが、それは前述の通りである。化合物Bの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン及びこれら化合物中のメトキシ基が他のアルコキシル基及び水酸基に置換された化合物を含むものなどが挙げられる。
[有機溶媒]
本発明の塗料組成物は、処理無機粒子A、処理無機粒子B、バインダー原料、金属キレート、該金属キレートのリガンドに加えて、有機溶媒を含むことが好ましい。有機溶媒を含むと、処理無機粒子A、処理無機粒子Bの粒子間相互作用を抑制し、また凝集体の形成を抑制しやすくなる。また、塗料組成物の乾燥時の流動性の低下を防止することが可能となるため、屈折率の異なる2層からなる反射防止層の自発的な層形成が容易となり、良好な反射防止性を発現することが可能となるため特に好ましい。
有機溶媒は、特に限定されるものではないが、通常、常圧での沸点が200℃以下の溶媒が好ましい。具体的には、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類、アミド類、フッ素類等が用いられる。これらは、1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられ、特に無機粒子の安定性の点からイソプロピルアルコール、プロピレングリコールなどが特に好ましい。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコール、フェニチルアルコール等を挙げることができる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。エーテル類としては、例えば、ジブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどを挙げることができる。エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等を挙げることができる。芳香族類としては、例えば、トルエン、キシレン等を挙げることができる。アミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
また、有機溶媒として下記の溶媒Cを使用することが好ましい。かかる溶媒Cは、酢酸n−ブチルを基準とした相対蒸発速度(ASTM D3539−87(2004))が0.3以下であり、かつハンセンの溶解度パラメーターの水素結合項δh項が、4(MPa)1/2以上、10.5(MPa)1/2以下である有機溶媒である。
溶媒Cとしては、例えば、ジイソブチルケトン(相対蒸発速度:0.2、δh:4.1(MPa)1/2)、イソホロン(相対蒸発速度:0.026、δh:7.4(MPa)1/2)、ジチレングリコールモノブチルエーテル(相対蒸発速度:0.004、δh:10.0(MPa)1/2)、ジアセトンアルコール(相対蒸発速度:0.15、δh:9.2(MPa)1/2)、オレイルアルコール(相対蒸発速度:0.003、δh:8.0(MPa)1/2)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(相対蒸発速度:0.2、δh:5.1(MPa)1/2)、ノニルフェノキシエタノール(相対蒸発速度:0.25、δh:8.4(MPa)1/2)が挙げられ、これらの中でもイソホロン、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ノニルフェノキシエタノールが好ましい。
〔バインダー原料〕
本発明の塗料組成物は、1種類以上のバインダー原料を含むことが好ましい。つまり、塗料組成物により得られる反射防止部材の反射防止層中の第1層(低屈折率層)および、または第2層(高屈折率層)には、塗料組成物中のバインダー原料に由来するバインダーを含むことが重要である。ここで本発明において、塗料組成物中に含まれるバインダーを「バインダー原料」、反射防止部材の反射防止層中に含まれるバインダーを「バインダー」と表すが、バインダーとしては、バインダー原料がそのままバインダーとして存在する場合もある(つまり、塗料組成物のバインダー原料が、そのままの形で反射防止層中のバインダーとして存在する態様も含む。)。
バインダー原料としては、前記処理無機粒子Bと組み合わせた際、相溶性指数が前記範囲に入る材料であれば、特に限定するものではないが、製造性の観点より、熱及び/または活性エネルギー線などにより、硬化可能なバインダー原料(つまり、反応性部位を有するバインダー原料)であることが好ましく、バインダー原料は一種類であっても良いし、二種類以上を混合して用いても良い。
また、前記処理無機粒子A、処理無機粒子Bや、前記処理無機粒子以外の無機粒子を膜中に保持する観点より、分子中に反応性部位としてアルコキシシランやアルコキシシランの加水分解物や反応性二重結合を有しているバインダー原料であることが好ましい。またUV線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。
このようなバインダー原料として、成分中に多官能アクリレートを用いるのが好ましく、代表的なものを以下に例示する。1分子中に、3(より好ましくは4または5)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートおよびその変性ポリマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。また、市販されている多官能アクリル系組成物としては三菱レーヨン株式会社;(商品名”ダイヤビーム”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名”デナコール”シリーズなど)、新中村株式会社;(商品名”NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名”UNIDIC”など)、東亞合成化学工業株式会社;(”アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(”ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名”KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名”ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
〔化合物C〕
本発明の塗料組成物は、更に下記の化合物(c)を使用することが好ましい。かかる化合物(c)は、膨潤度指数が5%以上60%以下である化合物である。また化合物(c)は、前述の無機粒子A、および処理無機粒子Aの項で述べた反応性部位を有する化合物であることが好ましい。
ここで、化合物(c)の膨潤度指数とは、非結晶ポリエチレンテレフタレートフィルム(A−PETシート)商品名“PET−MAX”A565GE2R(東洋紡績株式会社製)の帯電防止コートを設けていない側の面上に、バインダー原料をバーコーター(#10)を用いた塗布から3分間経過後、ガーゼを用いて荷重50gにて拭取り作業を行い、拭取り後のフィルムのヘイズを測定した値(%)を表す。
なおヘイズ測定は、JIS K 7136(2000)に基づき、日本電色工業(株)製のヘイズメーターを用いて、前述のフィルムのバインダー原料を滴下した側から光を透過するように装置に置いて測定する。
化合物(c)の質量平均分子量Mwは、好ましくは100以上500以下、より好ましくは100以上400以下、さらに好ましくは100以上300以下である。
化合物(c)の質量平均分子量Mwを100以上500以下とすることで、膨潤度指数が5%以上60%以下と制御しやくすくなり、良好な透明性を保った状態で、耐湿熱接着性が向上し、虹彩模様の低減を図ることができるため好ましい。
化合物(c)は、1つの反応性部位を有することが好ましい。化合物(c)が1つのみの反応性部位を有することで、膨潤度指数が5%以上60%以下と制御しやすくなり、少量の添加により耐湿熱接着性の向上を図ることができるため好ましい。
質量平均分子量Mwが100以上500以下であり、1つのみの反応性部位を有する化合物(c)としては、特にアクリレート化合物を用いるのが好ましく、代表的なものを以下に例示する。市販されているアクリレート化合物としては、株式会社興人;(商品名“ACMO”など)、東亜合成株式会社;(商品名“アロニックスM−102,M−111、M−113”など)を挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
なお、化合物(c)は、膨潤度指数が5%以上60%以下である化合物を意味するが、この化合物(c)の処理無機粒子Bとの相溶性指数は特に限定されるものではない。そのため、化合物(c)の処理無機粒子Bとの相溶性指数が20nm以上120nm以下の場合には、このような化合物(c)は、バインダー原料に該当することとなる。
化合物(c)が前述のバインダー原料に属しない場合、即ち、化合物(c)が、処理無機粒子Bとの相溶性指数が20nm未満の化合物又は120nmより大きい化合物である場合、その塗料組成物中の含有量は、前述のバインダー原料100質量部に対して、1〜30質量部の範囲が好ましく、2〜20質量部の範囲がより好ましく、特に5〜15質量部の範囲が好ましい。
[金属キレート、およびリガンド]
本発明の塗料組成物は、金属キレートと金属キレートのリガンド(金属に配位していないリガンド)を含むことが好ましい。金属キレートとは、多座配位子を分子中に有する化合物が金属イオンを挟むように配位して錯体を形成している化合物の総称である。
金属キレートのリガンドとは、広義には配位子、すなわち金属に配位する化合物をさすが、本明細書中では、前述のように金属キレート中の配位子と同一の化合物で、かつ金属キレートに配位していない化合物のことを指す。
金属キレートのリガンドは、例えば、金属キレートとしてアルミニウムトリスアセチルアセトナートを用いた場合には、アセチルアセトン、またはアセチルアセトナートを指す。リガンドは、具体的にはアセチルアセトン、アセト酢酸エチルなどのβ−ジケトン化合物およびβ−ケトエステル化合物、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、グリシンなどがあるが、本発明においては有機溶剤への可溶性があるアセチルアセトン、アセト酢酸エチルなどが特に好ましい。
金属キレートは、シラノール基、またはオキシラン環などを含む化合物間の水素結合の促進、架橋反応の促進により硬化を助成する効果を有するため、処理無機粒子A、処理無機粒子Bおよびバインダー原料間の水素結合、さらには架橋反応を促進する。この効果は加熱することにより促進され、乾燥過程において加熱硬化に適している温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上であり、更に好ましくは130℃以上である。加熱温度を100℃以上とすることで、非常に短時間でシラノールなどを含む樹脂の硬化が進むために好ましい。金属キレート中の金属イオン種は、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び金属元素などであれば特に限定されない。
金属キレート化合物の具体例としては、例えば、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタンなどのチタンキレート化合物、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレートなどのアルミニウムキレート化合物;などを挙げることができ、好ましくはチタンまたはアルミニウムのキレート化合物、特に好ましくはチタンのキレート化合物を挙げることができる。これらの金属キレート化合物は、1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。これらキレート化合物において、塗料組成物の経時安定性(塗料組成物中の固形分の沈降、凝集、白濁)、および塗膜の表面状態(異物、白化、白濁)、膜硬化性寄与等の観点からアルミニウム化合物が特に好ましい。
[その他の添加剤]
本発明の塗料組成物は、更に開始剤や硬化剤や触媒を含むことが好ましい。
開始剤及び触媒は、処理無機粒子A、処理無機粒子B同士、バインダー原料同士、処理無機粒子A,Bとバインダー原料間の反応を促進するために用いられる。該開始剤としては、塗料組成物をアニオン、カチオン、ラジカル反応等による重合および/または縮合および/または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
該開始剤、該硬化剤、及び触媒は種々のものを使用できる。また、複数の開始剤を同時に用いても良いし、単独で用いても良い。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤や光重合開始剤を併用しても良い。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられるがこれらに限定されるものではないが、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましく、具体例としては、2.2−ジメトキシ−1.2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタン、1−シクロヒキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、などが挙げられる。
なお、該開始剤及び該硬化剤の含有割合は、塗料組成物中のバインダー原料の合計100質量部に対して0.001質量部から30質量部が好ましく、より好ましくは0.05質量部から20質量部であり更に好ましくは0.1質量部から10質量部である。
その他として、本発明の塗料組成物には更に、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜含有させても良い。また、本発明の塗料組成物を用いたより好ましい製造方法として、上記添加物のほかに、フルオロアルキル基及び反応性部位を有するフッ素化合物Bを含むことが好ましい。
フッ素化合物Bが有するフルオロアルキル基は、炭素数4〜7の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基Rf3であることが好ましい。フルオロアルキル基Rf3は、塗料組成物の乾燥時のフッ素処理粒子同士の粒子間相互作用の抑制の点から炭素数4以上10以下が好ましく、さらに好ましくは炭素数6以上である。また分岐状に比べ直鎖状か立体障害が小さく、処理無機粒子Aに吸着し易い点から直鎖状が好ましい。フルオロアルキル基を、炭素数4〜8の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基Rf3とすることにより、塗膜中での処理無機粒子の移動性が向上し、屈折率の異なる2層の自発的な層形成が容易になり、反射防止性能、透明性が良化するため好ましい。このフッ素化合物Bは、前述の一般式(II)の化合物と同一、またはその重合体でもよい。つまりフッ素化合物Bとは、フッ素化合物Aと同一の化合物であっても構わない。フッ素化合物Aは、処理無機粒子Aを得るための原料に相当する化合物であり、一方でフッ素化合物Bは、塗料組成物中に含有されるフッ素化合物を意味する。
[塗料組成物中の各成分の含有量]
本発明の塗料組成物は、処理無機粒子A、処理無機粒子B、バインダー原料、金属キレート、金属キレートのリガンドを含むことが好ましいが、その相互の比率には好ましい範囲がある。
まず、処理無機粒子Bとバインダー原料の質量比率は、処理無機粒子B/バインダー原料の質量比率=9/1〜3/7の範囲が好ましい。この範囲にすることにより、反射防止性能と耐擦傷性、耐磨耗性を両立することができる。より好ましくは、8/2〜3/7、さらに好ましくは8/2〜4/6である。
ここで述べる処理無機粒子A,処理無機粒子Bの量は、フッ素化合物Aによる処理および化合物Bによる処理によって、処理無機粒子A、B中の無機粒子A、Bと結合したフッ素化合物A、化合物Bなど有機化合物も含めた質量を指す。
次いで、処理無機粒子Aと処理無機粒子B+バインダー原料の質量比率は、処理無機粒子A/(処理無機粒子B+バインダー原料)=1/30〜1/1であることが好ましい。
処理無機粒子A/(処理無機粒子B+バインダー原料)=1/30〜1/1とすることで、得られる反射防止部材の第1層(低屈折率層)の厚みと第2層(高屈折率層)の厚みの比を一定にすることができる。このため1回の塗布で第1層の厚みと第2層の厚みを反射防止機能を有する厚みとすることが容易であるため好ましい。また高屈折率層の厚みを厚くし、ハードコート機能を付与しようとする場合にも、反射防止機能を損なうことなく、1回の塗布で必要な厚みとすることができるため、反射防止機能とハードコート機能の両立の点から処理無機粒子Aと他の無機粒子の割合を上記範囲とすることが可能となるため好ましい。
処理無機粒子A/(処理無機粒子B+バインダー原料)の質量比率として、より好ましくは処理無機粒子A/(処理無機粒子B+バインダー原料)=1/29〜1/5、さらに好ましくは1/26〜1/10、特に好ましくは1/23〜1/15である。
また、金属キレートと処理無機粒子Aの質量比率は、金属キレート/処理無機粒子A=0.001/1〜0.08/1の範囲が好ましい。この範囲にすることで面状欠陥の抑制と、透明性の両立が可能になる。より好ましくは0.005/1〜0.06/1、特に好ましくは0.007/1〜0.05/1である。金属キレートと金属キレートのリガンドの比率については前述の通りである。
また好ましくは、塗料組成物100質量%において、処理無機粒子Aや処理無機粒子Bを含む全ての無機粒子の合計が0.2質量%以上40質量%以下、有機溶媒を40質量%以上98質量%以下、フッ素化合物Bを1質量%以上30質量%以下、バインダー原料、金属キレート、金属キレートのリガンド、開始剤、硬化剤、及び触媒などのその他の成分を0.1質量%以上20質量%以下を含む態様である。より好ましくは、全ての無機粒子の合計が1質量%以上35質量%以下、有機溶媒を50質量%以上97質量%以下、フッ素化合物Bを2質量%以上25質量%以下、その他の成分を1質量%以上15質量%以下含む態様である。
さらに好ましい態様としては、処理無機粒子Bが金属酸化物粒子を化合物Bで処理した粒子で、で、処理無機粒子Aが、フッ素処理シリカ粒子であり、これらの合計(処理無機粒子Aと処理無機粒子Bとの合計)が本発明の塗料組成物100質量%において2質量%以上30質量%以下、有機溶媒が60質量%以上95質量%以下、フッ素化合物Bを3質量%以上20質量%以下、その他の成分が2質量%以上10質量%以下の態様である。
[支持基材]
反射防止層をCRT画像表示面やレンズ表面に直接設ける場合を除き、反射防止部材は支持基材を有することが重要である。支持基材に特に限定はないが、ガラス板よりもプラスチックフィルムの方が好ましい。プラスチックフィルムの材料の例には、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリエーテルケトンなどが含まれるが、これらの中でも得にトリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましい。
本発明の反射防止部材、本発明の塗料組成物を基材上に塗工して得られた反射防止部材の好ましい態様では、上述のような耐擦傷性が十分でないプラスチックを支持基材に使用しても、高屈折率層の厚みを制御することで反射防止性に加えて耐擦傷性も付与できるため、公知技術のように、支持基材上にハードコート層を設ける必要は必ずしもない。また上述のように、支持基材は接着層、シールド層、滑り層などの各種機能層を有するフィルムとすることもできる。
支持基材の光透過率は、80%以上100%以下であることが好ましく、86%以上100%以下であることがさらに好ましい。ここで光透過率とは、光を照射した際に試料を透過する光の割合のことであり、JIS K 7361−1(1997)に従い測定することができる透明材料の透明性の指標である。反射防止部材の光透過率としては値が大きいほど良好であり、値が小さいとヘイズ値が上昇、画像劣化が生じる可能性が高くなるため好ましくない。ヘイズはJIS K 7136(2000)に規定された透明材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。 また支持基材のヘイズは、0.01%以上2.0%以下であることが好ましく、0.05%以上1.0%以下であることがさらに好ましい。
支持基材の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。なお、ここでいう屈折率とは、光が空気中からある物質中に進む時、その界面で進行方向の角度を変える割合のことであり、JIS K 7142(1996)に規定されている方法により測定することができる。
支持基材には、赤外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を添加してもよい。赤外線吸収剤の添加量は、支持基材の全成分100質量%において0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがさらに好ましい。滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を支持基材に添加してもよい。無機化合物の例には、SiO2、TiO2、BaSO4、CaCO3、タルクおよびカオリンが含まれる。
支持基材の反射防止層を形成する面の表面粗さには好ましい範囲があり、40nm以下であると好ましく、より好ましくは35nm以下、さらに30nm以下である。なお。前述の機能層を有するプラスチックフィルムを支持基材として用いた場合、前記支持基材の反射防止層を形成する側の面としてはプラスチックフィルム側の面であっても、機能層側の面であっても特に限定されない。但し、得られる反射防止部材にハードコート性を付与するためハードコート層を有するプラスチックフィルムを用いる場合には、ハードコート層側を反射防止塗料組成物を塗工する側の面とすることが重要であり、また反射防止層と支持基材との接着性を向上させる場合には、易接着層を有するプラスチックフィルムの易接着層側を反射防止塗料組成物を塗工する側の面とすることが必要である。
支持基材の表面には、各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例には、薬品等による湿式処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
[処理無機粒子A、処理無機粒子Bの製造方法]
処理無機粒子Aおよび処理無機粒子Bの製造方法は、各種顔料、無機化合物取り扱いメーカーから粉体状態、または溶媒(分散媒とも呼ばれる)に分散された粒子分散物(粒子分散液、コロイド溶液、またはゾルとも呼ばれる)の形で入手したいずれの無機粒子に対しても前述の処理を行うことで得ることができるが、粒子分散物の形で入手した無機粒子に対して処理を行う方が、粗大粒子の除去や塗料組成物の分散安定性の面で好ましい。粉体状態で入手された無機粒子を用いる場合には、表面処理を行う前の段階で分散媒、分散剤、表面処理剤等と共にメディア型分散機で解砕、分散処理を行い、一旦、粒子分散物を調製してから表面処理を行うことが好ましい。
処理無機粒子A、処理無機粒子Bは、前記無機粒子または前記粒子分散物に対して各種化合物(フッ素化合物A,化合物B、化合物Dなど)、溶媒、反応触媒、重合開始剤、反応停止剤、重合禁止剤、凝集防止剤、分散剤等を添加し、混合、攪拌しながら、加熱または冷却状態で反応させることにより得られ、加えてエバポレーターや逆浸透膜による脱アルコール処理、モレキュレーシーブによる脱水処理、イオン交換樹脂、イオン交換膜によるイオン交換処理などをおこなってもよい。
処理時の固形分濃度は1質量%以上60質量%以下、より好ましくは5質量%以上50質量%以下であり、これよりも固形分濃度が低すぎると反応を十分に進めることができず、これよりも高すぎると、無機粒子の凝集による異物の発生、さらにはゲル化、凝集、沈降を起こす場合がある。また、反応終了後は、安定性を付与するため溶媒による希釈や、反応停止剤、重合禁止剤、凝集防止剤を添加してもよい。
処理の温度は、用いる反応系により異なるが、無機粒子間の架橋を起こす副反応の抑制や、無機粒子表面の分散剤等の脱離を抑制するため反応可能な範囲で低いことが好ましい。たとえばシラノール縮合を伴う表面処理では用いるシランカップリング剤の種類により異なるが、室温から90℃の間が好ましく、30℃から70℃の間がより好ましい。ラジカル重合を伴う表面処理では用いる重合開始剤の種類により反応温度は全く異なるが、例えばアゾイゾブチロニトリルを用いる場合には、60℃から100℃の間が好ましく、70℃から90℃がより好ましい。
処理の攪拌条件、攪拌装置は特に限定されないが、液全体が十分混合するのに必要な装置、および回転数であればよく、反応液中での局所的なせん断速度が104S−1よりも小さく、かつ反応槽内のレイノルズ数が1000以上である範囲であることが、粒子分散物のせん断破壊による凝集と局所的な滞留による凝集、沈降を防ぐために好ましい。
処理は複数の反応系を組み合わせて行ってもよく、例えば、シラノール縮合による処理とラジカル重合による処理を組み合わせてもよい。この際には、同時、逐次いずれの方法でもよいが、逐次的に行う方がより好ましい。
処理の終了後、副反応生成物やゲル化物を除去するため、適当なろ過処理を行ってもよい。この適当なろ過とは、溶媒、粒子の表面の極性状態に合わせたフィルター材料、フィルター目開きを選択し、粒子分散物の分散状態を破壊しないせん断速度、フィルター構造に合わせた圧力条件にてろ過することを示唆する。
処理の終了後、粒子分散物の形で得られた粒子は、スプレードライ法などにより一旦粉体にして取りだしてもよいし、そのままの粒子分散物の形で取り扱ってもよいが、後工程(塗料組成物の製造工程)での取り扱いの容易さや凝集物の抑制から粒子分散物の形で取り扱う方が好ましい。
[塗料組成物の製造方法]
本発明の塗料組成物は、少なくとも処理無機粒子A、処理無機粒子B、バインダー原料、金属キレート、該金属キレートのリガンドに加えて、溶媒、フッ素化合物Bや他添加物(開始剤、硬化剤、触媒等)を混合して得られる。その製造方法は、前記成分の処方量を重量、または体積で計量し、これらを攪拌により混合することにより得られる。この時、加えて減圧や逆浸透膜による脱溶媒処理、モレキュレーシーブによる脱水処理、イオン交換樹脂によるイオン交換処理などをおこなってもよい。
無機粒子(処理無機粒子A、処理無機粒子Bを含む)は粒子分散物、粉体いずれの形で添加してもよいが、粒子分散物の形で取り扱うことが凝集、異物発生を防止する面で好ましい。粉体を原料としてとり扱う場合には、メディア型分散機などの各種分散機により溶媒(分散媒)に分散する工程を経た方が好ましい。粒子分散物として添加する場合の処方量は、粒子分散物の固形分濃度と粒子分散物の質量の積から求めた粒子の質量を用いることできる。固形分濃度の測定方法は後述する。
塗料組成物調合時の攪拌条件、攪拌装置は特に限定されないが、液全体が十分混合するのに必要な装置、および回転数であればよく、液中での局所的なせん断速度が104S−1よりも小さく、かつレイノルズ数が1000以上である範囲であることが、粒子分散物のせん断破壊による凝集と局所的な滞留による凝集や、混合不良を防ぐために好ましい。
塗料組成物調合時の、粒子、溶媒、バインダー原料、他添加物(開始剤、硬化剤、触媒)の添加順、添加速度については特に限定されないが、好ましくは、粒子分散物に対し、溶媒と混合して希釈したバインダー原料、および他添加物の混合物を攪拌しながら少量ずつ添加していくことが、バインダー成分の粒子表面への吸着による凝集、さらに異物発生を防ぐために好ましい。
得られた塗料組成物は、塗工する前に適当なろ過処理を行ってもよい。この適当なろ過処理とは、溶媒、粒子の表面の極性状態に合わせたフィルター材料、フィルター目開きを選択し、粒子分散物の分散状態を破壊しないせん断速度、フィルター構造に合わせた圧力条件にてろ過することがより好ましい。
[反射防止部材の製造方法]
本発明の反射防止部材の製造方法としては、支持基材の少なくとも片面に、塗料組成物を1回のみ塗工することにより形成される1層の液膜が、前記2層からなる反射防止層を形成する方法であることが望ましい。この製造方法は、塗工工程で2つの層を形成できるため経済性の面で好ましい。
ここで、支持基材の少なくとも片面に塗料組成物を1回のみ塗工することにより形成される1層の液膜とは、支持基材に対して1回の塗工工程にて1種類の塗料組成物からなる1層の液膜を形成することを指し、1回の塗工工程にて複数層からなる液膜を同時に1回塗工する多層同時塗工や、1回の塗工時に1層の液膜を複数回の塗工、乾燥工程を有する連続逐次塗工、1回の塗工時に1層の液膜を複数回の塗工し、次いで乾燥する、ウェットオンウェット塗工などを行わないことを指す。
まず、本発明の塗料組成物を、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許2681294号明細書参照)などにより支持基材上に塗工する。
これらの塗工方式のうち、グラビアコート法または、ダイコート法が塗工方法として好ましい。グラビアコート法は反射防止層のような塗工量の少ない塗料組成物を均一な膜厚で塗工することに優れており、グラビアコート法の中でもダイレクトグラビア法で、グラビアロール直径の小さい小径グラビアロールを用いることが、メニスカス部の安定性確保の面からより好ましい。このような塗工方法としては、マイクログラビア法が提案されている。
また、ダイコート法は、反射防止層のような塗工量の少ない場合には、ビード背圧の印加など工夫を要するが、前計量方式のためコーティングダイへの供給液量にて膜厚の制御が可能であり、また、原理的に塗料組成物の滞留部、蒸発部がないため、塗料組成物の安定性の面からも優れている。
次いで、支持基材上に塗工された液膜を乾燥する。得られる反射防止部材中から完全に溶媒を除去する事に加え、自発的に層構造を形成させるために液膜中での粒子の運動を促進するという観点からも、乾燥工程では液膜の加熱を伴うことが好ましい。乾燥初期においては0.1g/(m2.s)以上1.4g/(m2.s)以下の範囲の乾燥速度が得られるならば、特に特定の風速、温度に限定されない。
乾燥方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などが挙げられる。この中でも、本発明の製造方法では、精密に幅方向で乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱、または輻射伝熱を使用した方式が好ましく、さらに恒率乾燥期間においては、幅方向で均一な乾燥速度を達成するため、対流伝熱による乾燥の場合には、制御可能な風速を維持しつつ、乾燥時の総括物質移動係数を下げることが可能な方法として、支持基材に対して平行で、基材の搬送方向に対して平行、あるいは垂直な方向に熱風を送風する方式が望ましい。
さらに、乾燥工程後に形成された支持基材上の2層に対して、熱またはエネルギー線を照射する事によるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、より好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは130℃以上200℃以下である。
また、エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)及び/又は紫外線(UV線)であることが好ましい。また紫外線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、硬化が不十分となり、耐擦傷性、耐アルカリ性が不十分となる場合がある。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100〜3000mW/cm2、好ましくは200〜2000mW/cm2、さらに好ましくは300〜1500mW/cm2となる条件で紫外線照射を行うことが好ましく、紫外線の積算光量が100〜3000mJ/cm2、好ましく200〜2000mJ/cm2、さらに好ましくは300〜1500mJ/cm2となる条件で紫外線照射を行うことがより好ましい。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
硬化を熱により行う場合、乾燥工程と硬化工程とを同時におこなってもよい。また本発明の反射防止部材は、PDPなどの各種画像表示装置の視認側表面に設けることで、反射防止性に優れた画像表示装置を提供することができる。なおこの際は、反射防止部材における支持基材側を画像表示装置側として、反射防止部材などを設けることが重要である。
[ハードコート部材]
前述したように、本発明の積層体はハードコート部材に好適である。ハードコート部材を構成する支持基材がプラスチックフィルムの場合には、一般にハードコートフィルムと呼ばれる。
ハードコート部材の最表面となる第1層側の表面強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。上限については、強度が高い分には問題はないが、現実的には9H程度が上限である。
以下、本発明の積層体をハードコート部材に置き換えて説明する。本発明のハードコート部材を構成する、第1層、第2層、支持基材、塗料組成物、及び製造方法等については、前述の反射防止部材と同様のものを用いることができる。従って、ここでの説明は省略する。
本発明のハードコート部材における第2層は前述の反射防止部材の高屈折率ハードコート層と同様の構成・組成を採用することができる。第1層については前述の反射防止部材の低屈折率層の機能を必ずしも有する必要はない。従って、本発明のハードコート部材における第1層は、反射防止部材の低屈折率層として機能するために必要な屈折率や層厚みは限定されない。しかし、本発明のハードコート部材における第1層は、前述の反射防止部材における第1層と同様の構成・組成とすることは、むしろ好ましい態様である。
本発明のハードコート部材においても、前述したように第1層と第2層における条件1、条件2を満足することが重要であり、特に第2層の条件2を満足することが重要である。
つまり、第2層が条件2(第2層における元素Bの濃度が、第1層側から基材側に向かう厚み方向において、連続的に増加する。)を満足することによって、第2層における元素Bの濃度勾配が、支持基材側が大となり、その結果、第2層の支持基材側の屈折率を高くすることができる。これによって、ポリエステルフィルムのような比較的屈折率の高い支持基材を用いたとき、支持基材と第2層との界面の屈折率差を小さくすることができ、その結果ハードコート部材の干渉ムラを低減することができる。
従来、支持基材としてポリエステルフィルムを用いたハードコートフィルムでは、ポリエステルフィルムの屈折率とハードコート層の屈折率とを同等にすることにより、干渉ムラは低減できる。しかしながら、ハードコート層の屈折率をポリエステルフィルムの屈折率(通常1.62〜1.68程度)に近づけるためには、高屈折率材料である金属酸化物微粒子をハードコート層に多量に含有させる必要があり、原材料コスト、透明性、ハードコート性の面で不利益となることがあるが、本発明のハードコート部材は、従来のハードコート層に比べて金属酸化物微粒子の含有量を低減できるので上記課題を解決することができる。
本発明のハードコート部材における第1層は、防汚機能あるいは易滑機能を有する層であることが好ましい。
ハードコート部材の第1層は、前述の反射防止部材の第1層と同様な構成・組成とすることにより、第1層に防汚機能あるいは易滑機能を付与することができる。特に、前述の処理無機粒子A(元素Aを含む無機粒子Aを、フッ素化合物Aにより処理した粒子)を含有させることによって、防汚機能あるいは易滑機能を一段と発現することができる。この場合の無機粒子Aとしては、シリカ粒子が好ましく、前述の中空シリカや多孔質シリカの他にコロイダルシリカ(例えば、日産化学工業(株)製のアルコールシリカゾル等)も好ましく用いることができる。
ハードコート部材における第1層の厚みは、防汚機能あるいは易滑機能を付与するという観点から5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、特に20nm以上が好ましい。厚みの上限は、干渉ムラ抑制の観点から小さい方が好ましく、200nm以下がより好ましく、100nm以下がより好ましく、更に80nm以下が好ましく、特に60nm以下が好ましい。
図1には、第1層(符号4)の厚み方向に無機粒子A(符号6)が数個存在する態様を示しているが、本発明のハードコート部材における第1層は、その厚み方向に無機粒子Aが1個のみ存在する態様であってもよい。この態様であっても防汚機能あるいは易滑機能を十分に発現することができる。
ハードコート部材における第2層の厚みは、良好な耐擦傷性や耐摩耗性を得るという観点から、500nm以上が好ましく、600nm以上がより好ましい。厚みの上限は、カールやクラックの発生の抑制や透過率の改善という観点から、5000nm以下が好ましく、4000nm以下がより好ましい。
ハードコート部材における支持基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルムが好ましい。これらの支持基材の屈折率は、1.60〜1.70の範囲が好ましく、1.62〜1.68の範囲がより好ましく、特に1.63〜1.67の範囲が好ましい。
上記ポリエステルフィルムは、本発明の第2層及び第1層が積層される面に易接着層を有していることが好ましい。易接着層の屈折率とポリエステルフィルムとの屈折率の差は、干渉ムラ低減の観点から0.03以内であることが好ましく、特に0.02以内であることが好ましい。易接着層の厚みは、5〜300nmの範囲が適当であり、10〜200nmの範囲が好ましい。
[積層体の界面構造]
本発明の積層体の第1層と第2層の界面構造としては、密着性、耐擦傷性、耐摩耗性、干渉ムラの観点から、以下の構造であることが好ましい。
即ち、下記(1)〜(3)で定義される長さaと長さbの比b/aが、1.10<b/a<1.45であることが好ましく、更に1.15≦b/a≧1.35であることが好ましい(図1、図5を参照)。
(1)第1層と第2層とで形成される界面において、直線長さが500nm以上離れた任意の界面上の2点をA1、A2とする。
(2)A1とA2を結ぶ直線の長さを、単位長さaとする。
(3)A1とA2間の第1層と第2層とで形成される界面に沿った長さを、長さbとする。
単位長さaと長さbの比b/aが1.10以下になると、第1層と第2層間の界面の物理的な密着力の向上効果が小さくなり、十分な耐擦傷性や耐磨耗性が得られなくなることがあり、逆にb/aが1.45以上になると光散乱性が出現することにより、透明性の低下や反射率が高くなるなどの不都合が生じることがある。
上記の界面構造は、例えば、第1層に含まれる無機粒子Aに対して第2層に含まれる無機粒子Bの数平均粒子径を小さくすることによって形成することができる。
第2層に含まれる無機粒子Bの数平均粒子径は25nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましい。
第1層に含まれる無機粒子Aの数平均粒子径は、30nm以上であることが好ましく、更に40nm以上であることが好ましい。上限は200nm以下であることが好ましく、更に150nm以下であることが好ましい。
更に、本発明の積層体は、積層膜の支持基材側とは反対側の面(第1層側の表面)の形状が下記の特徴を有していることが好ましい。即ち、上記長さbと下記(4)、(5)で定義される長さcとの比b/cが、1.05<b/c<1.40であることが好ましく、更に1.10<b/c<1.40であることが好ましい。
(4)A1を通り単位長さaに垂直でかつ、大気と第1層とで形成される界面との交点をC1とする。同様に、A2を通り単位長さaに垂直でかつ、大気と第1層とで形成される界面との交点をC2とする。
(5)C1とC2間の大気と第1層とで形成される界面に沿った長さを、長さcとする。
上記b/cの比を1.05より大きく1.40未満にすることにより、界面の物理的な観点での密着力が確保されるため、耐擦傷性、耐摩耗性等を維持しつつ、透明性と反射防止性能を向上できる。
また、本発明の積層体において、上記b/cの比を1.05より大きく1.40未満にすることにより、積層膜の支持基材側とは反対側の面(第1層側の表面)は比較的平滑となり、透明性と反射防止性能を向上することができる。第1層側表面の表面粗さRa(JIS−B−0601:2001)は、40nm以下であることが好ましく、30nm以下がより好ましく、更に20nm以下が好ましく、特に10nm以下が好ましい。下限は特に限定されないが、現実的には0.5nm程度である。
1.05<b/c<1.40を満足するための方法としては、例えば、第1層に含まれる無機粒子Aに対して第2層に含まれる無機粒子Bの数平均粒子径を小さくする方法を挙げることができる。
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
[処理無機粒子Aの調製]
[処理無機粒子A分散物(a)の調製]
無機粒子A分散物として、中空シリカ粒子イソプロピルアルコール分散物(日揮触媒化成株式会社製中空シリカ:固形分濃度20質量%、数平均粒子径 60nm)15gに、(CH2=C(CH3)COOC3H6Si(OCH3)3)1.37gと10質量%蟻酸水溶液0.17g、水0.306gとを混合し、70℃にて1時間撹拌した。次いでフッ素化合物AとしてH2C=CHCOOCH2(CF2)8F 1.38g及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.057gを加えた後、60分間90℃にて加熱撹拌した。次いで、イソプロピルアルコールを加えて希釈し、固形分3.5質量%の処理無機粒子A分散物(a)とした。
[処理無機粒子A分散物(b)の調製]
処理無機粒子A分散物(a)に対し、無機粒子A分散物としてフッ化マグネシウム粒子イソプロピルアルコール分散物(CIKナノテック株式会社製フッ化マグネシウム分散物:固形分濃度20質量%、数平均粒子径 40nm)に置き換えた以外は同様にして、処理無機粒子A分散物(b)を調製した。
[処理無機粒子A分散物(c)の調製]
処理無機粒子A分散物(a)に対し、無機粒子A分散物としてシリカ粒子イソプロピルアルコール分散物(日産化学株式会社製シリカ分散物:固形分濃度30質量%、数平均粒子径30nm)に置き換えた以外は同様にして、処理無機粒子A分散物(c)を調製した。
[処理無機粒子A分散物(d)の調製]
処理無機粒子A分散物(a)に対し、フッ素化合物Aの代わりにとして、2−エチルヘキシルアクリレートに置き換えた以外は同様にして、処理無機粒子A分散物(d)を調製した。
[処理無機粒子Bの調製]
[処理無機粒子B分散物(a)の調製]
無機粒子B分散物として、酸化ジルコニウムメタノール分散物(日産化学株式会社製:固形分濃度31質量%)167g(M1=150m2/g M2=51.77g)を用い、化合物BとしてC3H7Si(OCH3)315g(Mw=164.3 N1=476.6m2/g、N2=15.0g)を滴下、均一に攪拌した。
次いで、これに20%酢酸水溶液2.0g、イオン交換水5.4gを滴下し、滴下終了後35℃で30分、60℃で3時間反応させた。
さらに、置換溶媒としてメチルイソブチルケトン200gを加え、ロータリーエバポレーターにて、50℃、680mmHgにて脱メタノール処理を行い、後述の方法で固形分濃度を確認後、最終的にメチルイソブチルケトンで固形分濃度30%に調製、精密ろ過をして処理無機粒子B分散物(a)を得た。この処理無機粒子B分散物(a)の(M1M2)/(N1N2)×100の値は92.05であった。
[処理無機粒子B分散物(b)〜処理無機粒子B分散物(l)の調製]
処理無機粒子B分散物(b)〜処理無機粒子B分散物(l)の調製は、前述の無機粒子B分散物(a)の調製方法に対して、表に記載したように無機粒子B分散物、化合物Bの添加量、種類を変更して得た。また、得られた処理無機粒子B分散物(b)〜処理無機粒子B分散物(l)の(M1M2)/(N1N2)×100の値も、表に記載した。
[塗料組成物の調製]
[塗料組成物1]
下記材料を混合し、塗料組成物1を得た。
処理無機粒子A分散物(a) 43 質量部
処理無機粒子B分散物(a) 28 質量部
バインダー原料(DPHA ダイセルサイテック株式会社:固形分100質量%)
5.8 質量部
メチルイソブチルケトン 4.1 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.29 質量部
金属キレート(アルミニウムトリスアセチルアセトナート) 0.045質量部
金属キレートのリガンド (アセチルアセトン) 0.028質量部
フッ素化合物B (R1820 ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
この塗料組成物に使用した処理無機粒子Bとバインダー原料との相溶性指数は50nmであり、塗料組成物への該金属キレートのリガンド添加量は、該金属キレートのモル量の2.0倍であった。
[塗料組成物2〜15、22〜25]
塗料組成物1に対し、表に記載したように処理無機粒子A分散物、処理無機粒子B分散物、バインダー原料、金属キレート、金属キレートのリガンドを変更した以外は同様にして、塗料組成物2〜15、22〜25を得た。これらの塗料組成物の各処方における処理無機粒子Bとバインダー原料との相溶性指数と、塗料組成物への該金属キレートのリガンド添加量も併せて表に記載した。
[塗料組成物16]
下記材料を混合し、塗料組成物16を得た。
処理無機粒子A分散物(a) 43 質量部
処理無機粒子B分散物(a) 28 質量部
バインダー原料(DPHA ダイセルサイテック株式会社:固形分100質量%)
5.8 質量部
メチルイソブチルケトン 4.1 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.29 質量部
金属キレート(アルミニウムトリスアセチルアセトナート) 0.045質量部
金属キレートのリガンド (アセチルアセトン) 0.022質量部
フッ素化合物B (R1820 ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
この塗料組成物に使用した処理無機粒子Bとバインダー原料との相溶性指数は50nmであり、塗料組成物への該金属キレートのリガンド添加量は、該金属キレートのモル量の1.6倍であった。
[塗料組成物17]
下記材料を混合し、塗料組成物17を得た。
処理無機粒子A分散物(a) 43 質量部
処理無機粒子B分散物(a) 28 質量部
バインダー原料(DPHA ダイセルサイテック株式会社:固形分100質量%)
5.8 質量部
メチルイソブチルケトン 4.1 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.29 質量部
金属キレート(アルミニウムトリスアセチルアセトナート) 0.045質量部
金属キレートのリガンド (アセチルアセトン) 0.039質量部
フッ素化合物B (R1820 ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
この塗料組成物に使用した処理無機粒子Bとバインダー原料との相溶性指数は50nmであり、塗料組成物への該金属キレートのリガンド添加量は、該金属キレートのモル量の2.8倍であった。
[塗料組成物18]
下記材料を混合し、塗料組成物18を得た。
処理無機粒子A分散物(a) 43 質量部
処理無機粒子B分散物(a) 14 質量部
バインダー原料(DPHA ダイセルサイテック株式会社:固形分100質量%)
2.9 質量部
メチルイソブチルケトン 21.2 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.15 質量部
金属キレート(アルミニウムトリスアセチルアセトナート) 0.045質量部
金属キレートのリガンド (アセチルアセトン) 0.028質量部
フッ素化合物B (R1820 ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
この塗料組成物に使用した処理無機粒子Bとバインダー原料との相溶性指数は50nmであり、塗料組成物への該金属キレートのリガンド添加量は、該金属キレートのモル量の2.0倍であった。
[塗料組成物19]
下記材料を混合し、塗料組成物19を得た。
処理無機粒子A分散物(a) 43 質量部
処理無機粒子B分散物(a) 19.5 質量部
バインダー原料(DPHA ダイセルサイテック株式会社:固形分100質量%)
4.0 質量部
メチルイソブチルケトン 14.5 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.2 質量部
金属キレート(アルミニウムトリスアセチルアセトナート) 0.045質量部
金属キレートのリガンド (アセチルアセトン) 0.028質量部
フッ素化合物B (R1820 ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
この塗料組成物に使用した処理無機粒子Bとバインダー原料との相溶性指数は50nmであり、塗料組成物への該金属キレートのリガンド添加量は、該金属キレートのモル量の2.0倍であった。
[塗料組成物20]
下記材料を混合し、塗料組成物20を得た。
処理無機粒子A分散物(a) 14 質量部
処理無機粒子B分散物(a) 32 質量部
バインダー原料(DPHA ダイセルサイテック株式会社:固形分100質量%)
8.0 質量部
メチルイソブチルケトン 24 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.40 質量部
金属キレート(アルミニウムトリスアセチルアセトナート) 0.015質量部
金属キレートのリガンド (アセチルアセトン) 0.009質量部
フッ素化合物B (R1820 ダイキン化成品製:固形分100質量%) 12 質量部
この塗料組成物に使用した処理無機粒子Bとバインダー原料との相溶性指数は50nmであり、塗料組成物への該金属キレートのリガンド添加量は、該金属キレートのモル量の2.0倍であった。
[塗料組成物21]
下記材料を混合し、塗料組成物21を得た。
処理無機粒子A分散物(a) 14 質量部
処理無機粒子B分散物(a) 48 質量部
バインダー原料(DPHA ダイセルサイテック株式会社:固形分100質量%)
12 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.61 質量部
金属キレート(アルミニウムトリスアセチルアセトナート) 0.015質量部
金属キレートのリガンド (アセチルアセトン) 0.009質量部
フッ素化合物B (R1820 ダイキン化成品製:固形分100質量%) 18.2 質量部
この塗料組成物に使用した処理無機粒子Bとバインダー原料との相溶性指数は50nmであり、塗料組成物への該金属キレートのリガンド添加量は、該金属キレートのモル量の2.0倍であった。
[塗料組成物26]
下記材料を混合し、塗料組成物26を得た。
処理無機粒子A分散物(a) 43 質量部
処理無機粒子B分散物(a) 28 質量部
バインダー原料(DPHA ダイセルサイテック株式会社:固形分100質量%)
5.8 質量部
メチルイソブチルケトン 4.1 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.29 質量部
金属キレート(アルミニウムトリスアセチルアセトナート) 0.045質量部
金属キレートのリガンド (アセチルアセトン) 0.018質量部
フッ素化合物B (R1820 ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
この塗料組成物に使用した処理無機粒子Bとバインダー原料との相溶性指数は50nmであり、塗料組成物への該金属キレートのリガンド添加量は、該金属キレートのモル量の1.3倍であった。
[塗料組成物27]
下記材料を混合し、塗料組成物27を得た。
処理無機粒子A分散物(a) 43 質量部
処理無機粒子B分散物(a) 28 質量部
バインダー原料(DPHA ダイセルサイテック株式会社:固形分100質量%)
5.8 質量部
メチルイソブチルケトン 4.1 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.29 質量部
金属キレート(アルミニウムトリスアセチルアセトナート) 0.045質量部
金属キレートのリガンド (アセチルアセトン) 0.049質量部
フッ素化合物B (R1820 ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
この塗料組成物に使用した処理無機粒子Bとバインダー原料との相溶性指数は50nmであり、塗料組成物への該金属キレートのリガンド添加量は、該金属キレートのモル量の3.5倍であった。
[塗料組成物28]
下記材料を混合し、塗料組成物28を得た。
処理無機粒子A分散物(a) 43 質量部
処理無機粒子B分散物(a) 28 質量部
バインダー原料(DPHA ダイセルサイテック株式会社:固形分100質量%)
5.8 質量部
メチルイソブチルケトン 4.2 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.29 質量部
フッ素化合物B (R1820 ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
この塗料組成物に使用した処理無機粒子Bとバインダー原料との相溶性指数は50nmであった。
[反射防止部材の作製1]
支持基材としてPET樹脂フィルム上に易接着性塗料が塗工されている“ルミラー”U46(東レ(株)製)を用いた。この支持基材の易接着塗料が塗工されている面上に、塗料組成物1〜19、22〜28を、バーコーター(#10)を用いて塗工後、下記に示す第一段階の乾燥を行い、次いで第二段階の乾燥を行った。
第一段階
熱風温度25℃
熱風風速0.5m/s
風向 塗工面に対して平行
乾燥時間2分間
第二段階
熱風温度130℃
熱風風速5m/s
風向 塗工面に対して垂直
乾燥時間2分間
なお、熱風の風速は動静圧管による測定値を使用した。乾燥後、160W/cmの高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm2、積算光量800mJ/cm2の紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射して硬化させ、実施例1〜19、比較例1〜7の反射防止部材を作製した。
[反射防止部材の作製2]
反射防止部材の作製1に対し、塗料組成物20、21を用い、バーコーター(#14)を用いること以外は同様にして実施例20、21の反射防止部材を作製した。
[反射防止部材の作製3]
反射防止部材の作製1に対し、下記塗料組成物29を用いること以外は同様にして実施例22の反射防止部材を作製した。
[塗料組成物29]
下記材料を混合し、塗料組成物29を得た。
処理無機粒子A分散物(a) 43 質量部
処理無機粒子B分散物(a) 28 質量部
バインダー原料(DPHA ダイセルサイテック株式会社:固形分100質量%)
5.2 質量部
化合物(c)(アクリロイルモルホリン ACMO(株式会社興人製:固形分100質量%) 0.6質量部
メチルイソブチルケトン 4.1 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.29 質量部
金属キレート(アルミニウムトリスアセチルアセトナート) 0.045質量部
金属キレートのリガンド (アセチルアセトン) 0.028質量部
フッ素化合物B (R1820 ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
この塗料組成物に使用した処理無機粒子Bとバインダー原料との相溶性指数は50nmであり、塗料組成物への該金属キレートのリガンド添加量は、該金属キレートのモル量の2.0倍であった。また、化合物(c)の膨潤度指数は30%であった。
[ハードコート部材の作製]
支持基材としてPET樹脂フィルム上に易接着性塗料が塗工されている“ルミラー”U46(東レ(株)製)を用いた。この支持基材の易接着塗料が塗工されている面上に、下記の塗料組成物30を、バーコーター(#14)を用いて塗工後、反射防止部材の作製1と同じ条件にて乾燥及び紫外線照射を行って、実施例23のハードコート部材を作製した。
[塗料組成物30]
下記材料を混合し、塗料組成物30を得た。
処理無機粒子A分散物(c) 3.5 質量部
処理無機粒子B分散物(a) 32 質量部
バインダー原料(DPHA ダイセルサイテック株式会社:固形分100質量%)
7.2 質量部
化合物(c)(アクリロイルモルホリン ACMO(株式会社興人製:固形分100質量%) 0.8質量部
メチルイソブチルケトン 34.5 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.40 質量部
金属キレート(アルミニウムトリスアセチルアセトナート) 0.015質量部
金属キレートのリガンド (アセチルアセトン) 0.009質量部
フッ素化合物B (R1820 ダイキン化成品製:固形分100質量%) 12 質量部
この塗料組成物に使用した処理無機粒子Bとバインダー原料との相溶性指数は50nmであり、塗料組成物への該金属キレートのリガンド添加量は、該金属キレートのモル量の2.0倍であった。また、化合物(c)の膨潤度指数は30%であった。
[相溶性指数]
相溶性指数は動的光散乱式粒径分布測定装置(株式会社堀場製作所製 動的光散乱式粒径分布測定装置 LB550)を使用した。
測定において必要とするパラメーターの溶媒屈折率は、アッベ屈折率計(株式会社アタゴ製 アッベ屈折計 NAR−3T)により、25℃における測定値を求めた。
また、測定において必要とするパラメーターである粒子の屈折率は、JIS K7142「プラスチックの屈折率測定方法」のうち、B法(顕微鏡を用いる液浸法(ベッケ線法))による。但し、JIS K7142で使用される浸液に代えて、島津デバイス製造社製「接触液」を使用し、温度が15〜20℃の条件で測定した。
顕微鏡は、偏光顕微鏡「オプチフォト」(ニコン製)を使用した。これらの値を用いて測定回数1000回で測定を行った。
処理無機粒子Bを溶媒に固形分濃度20質量%で分散した液(これを処理無機粒子B分散物1とする)と、処理無機粒子Bとバインダー原料の比率が質量比1:1で、処理無機粒子の固形分濃度が20%になるようにした液(これを処理無機粒子B分散物2)を、動的光散乱法によって測定し、処理無機粒子B分散物1と、処理無機粒子B分散物2の体積基準分布のメディアン値の差を求め、これを相溶性指数とした。
[処理無機粒子B分散物の固形分濃度の算出]
処理無機粒子B分散物の固形分濃度は、処理無機粒子B分散物をアルミ皿(この質量をW1とする)に約2gを秤量後(この質量をW2とする)、120℃の熱風オーブン内で1時間乾燥、デシケーター中で室温まで冷却後、秤量(この質量をW3とする)し、下記の式に従って固形分濃度を求めた。
固形分濃度 =(W3−W1)/(W2−W1)×100
[処理無機粒子Bの比表面積M1(m2/g)の算出]
処理無機粒子Bの比表面積M1は、前述の方法で作成した処理無機粒子B分散物を乾燥させたものについて、JIS Z 8830(2001)に基づく方法で、Micromeritics社製流動式比表面積自動測定装置フローソーブIII2305を用い窒素吸着法で測定を行った。
〔化合物Bの最小被覆面積N1〕
化合物Bの最小被覆面積N1とは、化合物Bが粒子表面に結合するときの1分子あたりの占有面積(m2/mol)であり、Stuart−brieglebの分子モデルから計算されたものを指し、下記式により求める。
最小被覆面積N1(m2/g)=(78.3×1000)/化合物Bの分子量
[反射防止部材及びハードコート部材の評価]
作製した反射防止部材について次に示す性能評価を実施し、得られた結果を表に記載した。特に断りのない場合を除き、測定は各実施例・比較例において1つのサンプルについて場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
[2層の界面の有無]
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、積層膜(反射防止層)中の2層の界面(第1層と第2層の界面)の有無を判断した。界面の有無の判断は以下の方法に従い判断した。TEMにより20万倍の倍率で撮影した画像を、スキャナーを用いてプレゼンテーションソフトウェア(Microsoft Power Point2003)に貼付した。次いで貼付した写真のイメージコントロール処理(コントラストを90%とする)を行い、コントラストを強調した。この際に、1つの層と他の層との界面に明確な境界を引くことができる場合を、明確な界面があるとみなした(明確な境界を引くことができる場合を界面有りとして「○」で示し、明確な境界を引くことができない場合を界面無しとして「×」で示した。)。
[第1層と第2層の層厚み]
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、支持基材上の2層の各層の厚みを測定した。各層の厚みは、以下の方法に従い測定した。反射防止層の断面の超薄切片をTEMにより20万倍の倍率で撮影した画像から、ソフトウェア(画像処理ソフトEasyAccess)にて各層の厚みを読み取った。合計で30点の層厚みを測定して平均値とした。
[第1層の元素Aの種類、濃度、第2層の元素Bの種類、濃度]
電界放出型電子顕微鏡(HRTEM JEOL製 JEM2001F)とEDX(JEOL製 JED−2300T)を用いて、反射防止部材及びハードコート部材の超薄切片を、加速電圧200KV、ビーム直径径1.0nmで、反射防止部材及びハードコート部材の厚み方向20nm×幅方向20nmの範囲について、1箇所あたり60秒積算測定を行い、得られた各測定点での各元素の質量から、各元素の原子数の割合を求め、これを元素の濃度とした。
元素A、元素Bの決定は、第1層、第2層での各元素の濃度を積算し、濃度の最も高い金属、または半金属元素を元素A、元素Bとした。
測定箇所は、積層膜(反射防止層)の断面において、まず第1層では、大気側から第2層との間の界面に向かって、第1層の厚みの25%、50%、75%の位置で測定をおこない、その点での元素Aの濃度をx1、x2、x3とした。
同様に第2層では、第1層との界面から支持基材に向かって、第2層の厚みの20%、40%、60%、80%の4箇所の測定をおこない、元素Bの濃度をそれぞれX1、X2、X3、X4とした。この測定結果から、X4/X1を求めた。
[第1層の元素Aの存在状態]
前述の記載の通り、x1〜x3の最小値xmin、最大値xmax、平均値xaveを求め、これを数式1に代入し、成り立つ場合には○(厚さ方向に均一に存在する)、成り立たない場合には×(均一ではない)とした。
((xmax―xmin)/(xavr)×100)≦15 数式1
[第2層の元素Bの存在状態]
前述の記載の通り、X1〜X4を数式2に代入し、全ての区間(すなわちn=1〜3)においてが正の場合には、○(界面から支持基材に向かって連続的に増加している)、1つでも負の場合には×(界面から支持基材に向かって連続的に増加していない)とした。
((Xn+1―Xn)>0 数式2
[反射防止性能]
反射防止性能の評価は島津製作所製分光光度計UV−3100を用いて400nmから800nmの波長範囲にて行い、最低反射率(ボトム反射率)を測定し、0.8%未満を合格とした。
[透明性]
透明性はヘイズ値を測定することにより判定した。測定はJIS K 7136(2000)に基づき、日本電色工業(株)製 ヘイズメーターを用いて、反射防止部材及びハードコート部材のサンプルの支持基材とは反対側(積層膜(反射防止層)側)から光を透過するように装置に置いて測定を行い、ヘイズ値が2%未満を合格とした。
[干渉ムラ]
反射防止部材及びハードコート部材の積層膜(反射防止層)を形成していない面(支持基材側の面)を、つや消し黒のスプレー塗料にて均一に塗布し、この試料について、斜めより三波長蛍光灯(FL20SS・EX−N/18(松下電器産業製)の付いた電気スタンド)で試料面を照射し、その時に見える干渉縞を目視で評価した。下記のクラス分けを行い3点以上を合格とした。
5点:干渉ムラが無く、きれいに見える
4点:干渉ムラが僅かに確認できるが、きれいに見える
3点:干渉ムラが確認出来るが、使用上問題ないレベル
2点:干渉ムラが確認でき、場合によっては使用上問題となるレベル。
1点:干渉ムラが確認出来、使用上問題となるレベル
[面状欠陥]
A4サイズの反射防止部材及びハードコート部材の各20枚について目視で確認を行い、欠陥部の外接円の直径が0.5mm以上の欠陥を面状欠陥としてカウントし、1枚あたりの欠陥の個数を求め、下記のクラス分けを行い、3点以上を合格とした。
5点 面状欠陥の数 1個未満
4点 面状欠陥の数 1個以上3個未満
3点 面状欠陥の数 3個以上5個未満
2点 面状欠陥の数 5個以上10個未満
1点 面状欠陥の数 10個以上
[耐擦傷性]
反射防止部材及びハードコート部材の積層膜(反射防止層)側に250g/cm2荷重となるスチールウール(#0000)を垂直にあて、1cmの長さを10往復した際に目視される傷の概算本数を記載し下記のクラス分けを行い、3点以上を合格とした。
5点: 0本
4点: 1本以上 5本未満
3点: 5本以上 10本未満
2点: 10本以上 20本未満
1点: 20本以上
[耐摩耗性]
本光製作所製消しゴム摩耗試験機の先端(先端部面積 1cm2)に、白ネル〔興和(株)製〕を取り付け、500gの荷重をかけて反射防止部材の反射防止層上を5cm、5000回往復摩擦し下記のクラス分けを行い、3点以上を合格とした。
5点: 傷なし
4点: 1〜10本の傷
3点: 11〜20本の傷
2点: 21本以上の傷
1点: 試験部分の反射防止層が全面剥離
[第1層と第2層の界面構造の測定;単位長さa、長さb、長さcの測定]
積層膜(反射防止層)の超薄切片をTEMにより20万倍の倍率で撮影した画像を、ソフトウェア(画像処理ソフトEasyAccess)にて、ホワイトバランスを最明部と最暗部が8bitのトーンカーブに収まるように調整し、さらに2種類の粒子が明確に見分けられるようにコントラストを調節した。次いで、第1層と第2層とで形成される界面上に、直線距離が500nm以上になるように2点(A1、A2)を決め、その2点を結ぶ直線長さ(単位長さa)を求めた。
次いで、この2点(A1、A2)、の間の第1層と第2層とで形成される界面に沿った長さを、object検出モードにて、閾値の調節によって界面を検出させ、その境界線の長さを計測することにより、長さbを求めた。
さらに、前述のA1を通り単位長さaに直交する補助線を引き、さらに大気と第1層とで形成される界面と該補助線との交点を求め、それをC1とした。同様に、前述のA2を通り単位長さaに直交する補助線を引き、さらに大気と第1層とで形成される界面と該補助線との交点を求め、それをC2とした。そして、この2点の(C1、C2)の間の第1層と大気とで形成される界面に沿った長さを、同様に計測することにより、長さcを求めた。
これらの結果から得られた単位長さa、長さb、及び長さcから、それらの比(b/a)、(b/c)を算出した。
[第1層側表面の表面粗さRa(nm)の測定]
表面粗さ計(SURFCORDER ET4000A:(株)小坂研究所製)を用い、JIS−B−0601:2001に基づき、下記測定条件にて測定を行った。Ra(表面粗さ)とは、測定される断面曲線から、カットオフ値λcの高域フィルタによって長波長成分を遮断して得られた輪郭曲線(粗さ曲線)を求め、その曲線の基準長さにおける高さ(平均線から測定曲線までの距離)の絶対値の平均値のことである。
<測定条件>
測定速度:0.1mm/S
評価長さ:10mm
カットオフ値λc:0.1mm
フィルタ:ガウンシアンフィルタ低域カット
[膨潤度指数]
化合物(c)の膨潤度指数は、非結晶ポリエチレンテレフタレートフィルム(A−PETシート)商品名“PET−MAX”A565GE2R(東洋紡績株式会社製)の帯電防止コートを設けていない側の面上に、化合物を、バーコーター(#10)を用いた塗布から3分間経過後、ガーゼを用いて荷重50gにて拭取り作業を行い、拭取り後のフィルムのヘイズを測定した値(%)を表す。
なおヘイズ測定は、JIS K 7136(2000)に基づき、日本電色工業(株)製 ヘイズメーターを用いて、前述のフィルムのバインダー成分Aを滴下した側から光を透過するよう、装置に置いて測定する。
処理無機粒子B分散物の処方、塗料組成物の構成と相溶性指数、反射防止部材とハードコート部材の物性、反射防止部材とハードコート部材の評価結果を表に記載した。評価項目において1項目でも合格とならないものについて、課題未達成と判断した。本発明の反射防止部材の実施例は表に記載したように、耐擦傷性、耐摩耗性と透明性、反射防止性能、さらに経済性のいずれにおいても合格しており、本発明が解決しようとする課題を達成している。また、同様に本発明のハードコート部材も耐擦傷性、耐摩耗性、透明性、さらに経済性のいずれにおいても合格しており、本発明が解決しようとする課題を達成している。
濃度X1と濃度X4の比(X4/X1)が本発明の好ましい範囲よりも小さい実施例6、実施例8は干渉ムラがやや劣っていたが、許容できる範囲であった。
また、濃度X1と濃度X4の比(X4/X1)が本発明の好ましい範囲よりも大きい実施例12は、反射率、透明性、面状欠陥がやや劣っていたが、許容できる範囲であった。
該反射防止部材の第2層の厚みが、本発明の好ましい範囲より薄い実施例18の反射防止部材では、耐擦傷性と耐摩耗性がやや劣っていたが、許容できる範囲であった。
該反射防止部材の第2層の厚みが、本発明の好ましい範囲より厚い実施例21の反射防止部材では、透明性、反射防止性能と経済性がやや劣っていたが、許容できる範囲であった。