JP5756270B2 - がんペプチドワクチン療法効果向上剤 - Google Patents
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Description
がんペプチドワクチン療法は、対象となるがんに特徴的なペプチドを免疫原とする、無細胞性ワクチンの一種であり、副作用の少ない理想的な抗腫瘍治療方法として近年注目を集めている。しかし、免疫原として使用するペプチドの免疫原性が必ずしも強くないこと、そしてペプチドワクチンの有効性が低いこと、等の問題点もまた、指摘されている。これらの問題点に対して、ペプチドワクチンをより効率的に機能させることを目的として、アジュバントを同時に投与することによる補助が必要とされている。
バガス90重量部、米糠10重量部からなる固体培地に純水を適度に含ませた後に、シイタケ菌糸体を接種し、温度および湿度を調節した培養室内に放置し、菌糸体を増殖させた。菌糸体が固体培地に蔓延した後、バガス基材の繊維素を解束し、12メッシュ通過分が24重量%以下となるようにした。この解束された培地1.0 kgに、純水1.25 Lを加え、80℃・2時間ジャケット・プレヒーター加熱を行い、液循環抽出をした後、100メッシュろ布を用いてろ過した。
本実施例は、シイタケ菌糸体抽出物が、がんペプチドワクチンに含有されるアジュバントの量を減少させることができるか否かを調べることを目的として行った。
本実施例においては、マウスを使用して実験を行った。日本SLC株式会社より購入した、C57BL/6マウス雌6週齢を温度23±2℃、湿度55±15%、明暗サイクル12時間、換気回数12回/時間の条件の下、1週間馴化飼育したのち、7週齢になったマウスを試験に用いた。なお、飲み水は水道水を用い、自由摂取とした。
本実施例においては、癌細胞として、マウスメラノーマ細胞であるB16BL6細胞(RIKEN BIORESOURCE CENTER CELL BANK)を使用した。B16BL6細胞は、RPMI-1640培地(SIGMA)に10%のウシ胎児血清(FBS;Thermo Trace)と1%のペニシリンストレプトマイシン(Wako)を添加した培養液を用い、CO2インキュベーター内で37℃、5%CO2条件下で培養した。培養後、B16BL6はcold PBSを用いて1.5×107個/mlになるように調整した。
生後6週齢で入荷した後1週間馴化飼育した、7週齢の雌のC57BL/6マウスを、1群5匹ずつ体重指標で群わけした後、右足底の皮下に1.5×107個/mlになるように調整したB16BL6細胞懸濁液を50μl(7.5×104個)ずつ移植した。
初期免疫誘導は、B16BL6細胞の移植翌日(すなわち、day1)、右鼠蹊部皮下にTRP2(チロシナーゼ-関連タンパク質-2)181-188ペプチド(VYDFFVWL(SEQ ID NO: 1)、PH Japan)を含むフロイント完全アジュバント(CFA;SIGMA)を50μl/マウス(低アジュバント群)または100μl/マウス(高アジュバント群)で皮下注射した。追加免疫誘導はCFAで免疫7日後(すなわち、day8)に、右鼠蹊部皮下にTRP2181-188ペプチドを含むフロイント不完全アジュバント(IFA;SIGMA)を50μl/マウス(低アジュバント群)または100μl/マウス(高アジュバント群)で皮下注射した。
粉末飼料(CE-2粉末:日本クレア)に対して、実施例1において調製したシイタケ菌糸体抽出物(L.E.M.)を2%添加した飼料(L.E.M. 2%群)またはL.E.M.を添加しない飼料(L.E.M. 0%群)でマウスを飼育した。各群のマウス(n=5)に対して、移植翌日(day1)から20日間、それぞれの飼料を、連続自由摂取させた。
試験期間は移植日をday0としてday20までの21日間とした。がんペプチドワクチンおよび/またはシイタケ菌糸体抽出物を投与した結果についての薬効評価は、飼育期間終了時の、高アジュバント群および低アジュバント群のそれぞれについて、L.E.M. 2%群およびL.E.M. 0%群の各群(計4群)における平均腫瘍部重量を測定することにより行った。
結果を以下の表1に示す。
本実施例は、がんペプチドワクチンを、種々の濃度のシイタケ菌糸体抽出物と組合せて投与した場合に、がんペプチドワクチン療法の効果向上作用が見られるか否かについて調べることを目的として行った。
本実施例において、動物の飼育は、実施例2の(1)に記載の通り行った。
(2)細胞培養
本実施例において、細胞の培養は、実施例2の(2)に記載の通り行った。
本実施例において、B16BL6細胞の移植は、実施例2の(3)に記載の通り行った。
(4)免疫誘導
免疫誘導は、CFA量およびIFA量を全ての群において50μl/マウスとした点以外は、実施例2の(4)に記載の通り行った。
実施例1において調製したシイタケ菌糸体抽出物を、粉末飼料(CE-2粉末:日本クレア)に対して、以下の表2に示す飼料1〜4および比較例1〜3の飼料組成にそれぞれ示す組成で混合した。具体的には、CE-2粉末餌に対してシイタケ菌糸体抽出物を1%、2%、4%および8%添加した飼料を、それぞれ飼料1〜4とし、一方添加物を一切含まない飼料を比較例1、免疫抑制状態を解除する薬剤として公知であるPSK(クレスチン:第一三共)またはβ(1→3)グルカンをそれぞれ2%添加した飼料をそれぞれ比較例2および比較例3とした。各群のマウス(n=5)に対して、移植翌日(day1)から20日間、それぞれの飼料を、連続自由摂取させた。
試験期間は移植日をday0としてday20までの21日間とした。がんペプチドワクチンおよび/またはシイタケ菌糸体抽出物を投与した結果についての薬効評価は、飼料1〜4および比較例1〜3の各群における平均腫瘍部重量を測定し、比較例1(L.E.M. 0%群)の平均腫瘍部重量を100%とした場合の割合で以下の式に基づいて算出し、腫瘍の抑制率とした。
結果を以下の表3および図1に示す。
本実施例においては、シイタケ菌糸体抽出物が、がんペプチドワクチンの投与後に生じる担癌免疫抑制状態をどの様な作用機序により解除しているのかを調べることを目的として、シイタケ菌糸体抽出物のTreg細胞に対する抑制効果を調べた。
本実施例において、動物の飼育は、実施例2の(1)に記載の通り行った。
(2)細胞培養
本実施例において、細胞の培養は、実施例2の(2)に記載の通り行った。
本実施例において、B16BL6細胞の移植は、実施例2の(3)に記載の通り行った。
(4)被験物質の混餌投与
実施例1において調製したシイタケ菌糸体抽出物を、粉末飼料(CE-2粉末:日本クレア)に対して2%添加した飼料を与えた群(「L.E.M. 2.0%」群)、そして添加物を一切含まない飼料を与えた群(「対照」群)とした。B16BL6細胞の移植を行わず、シイタケ菌糸体抽出物も投与も行わない群(「非処置」群)をもう一つの対照として使用した。各群のマウス(n=5)に対して、移植翌日(day1)から20日間、それぞれの飼料を、連続自由摂取させた。
本実施例においては、Treg細胞の増殖あるいは活性を調べるため、特定組織中でのTreg細胞の比率、Foxp3の発現、そしてTGF-βの存在量を測定した。
Foxp3:5'-tgcagggcag ctaggtactt gta-3'(SEQ ID NO: 2)と5'-tctcggagat cccctttgtc t-3'(SEQ ID NO: 3);
β-アクチン:5'-agagggaaat cgtgcgtgac-3'(SEQ ID NO: 4)と5'-caatagtgat gacctggccg t-3'(SEQ ID NO: 5);
をそれぞれ使用した。
(6)結果
結果を図2(a)〜(d)に示す。これらの結果から示されることは、B16BL6細胞を移植したがシイタケ菌糸体抽出物を投与していない「対照」群では、非処置群のマウスの場合と比較して、生体内においてTreg細胞が顕著に増加しており、その細胞数の増加は、血漿内TGF-β量の増加と正の相関を示していた。
表4に記載する処方からなる組成物(処方例1〜3)を、慣用法に従って錠剤として調製した。具体的には、各成分を処方に従って配合し、粉砕、造粒、乾燥、整粒および混合を行い、それを定法に従って打錠して250 mgの錠剤に調整した。
表5に記載する処方からなる組成物(処方例4〜6)を、慣用法に従って顆粒剤として調製した。具体的には、各成分を処方に従って配合し、定法に従って、混合、造粒、乾燥および整粒をして2 gの顆粒剤に調整した。
表6に記載する処方からなる粉末組成物(処方例7〜10)を調製し、次いで、これを市販の緑茶に溶解し、200 gの茶飲料とした。
SEQ ID NO: 2およびSEQ ID NO: 3は、マウスFoxp3遺伝子のヌクレオチド配列を増幅するためのプライマーのヌクレオチド配列である。
Claims (6)
- シイタケ菌糸体抽出物を有効成分として含み、シイタケ菌糸体抽出物のヒトへの投与量が一日当たり3.0 g以上である、がんペプチドワクチン療法効果向上剤。
- がんペプチドワクチンの投与後に生じる担癌免疫抑制状態を解除することにより作用する、請求項1に記載のがんペプチドワクチン療法効果向上剤。
- シイタケ菌糸体抽出物が、制御性T細胞(Treg細胞)の活性を抑制する、請求項1または2に記載のがんペプチドワクチン療法効果向上剤。
- シイタケ菌糸体抽出物が、バガス(サトウキビのしぼりかす)と脱脂米糠を基材とする固体培地上にシイタケ菌を接種し、次いで菌糸体を増殖させて得られる菌糸体を含む固体培地を、12メッシュ通過分が30重量%以下となるよう解束し、この解束された固体培地に水を添加し、30〜55℃の温度に保ちながら前記固体培地を粉砕、すりつぶしてバガス繊維の少なくとも70重量%以上が12メッシュ通過分であるようにし、次いで80℃にまで温度を上昇させたのち、得られた懸濁状液をろ過することにより製造される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のがんペプチドワクチン療法効果向上剤。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のがんペプチドワクチン療法効果向上剤を含む、がんペプチドワクチン療法の効果を向上させるための、医薬組成物。
- 癌または悪性腫瘍を治療または予防するための、請求項5に記載の医薬組成物。
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