JP5751823B2 - 改質製鋼スラグの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、海洋環境修復材として海水に浸漬して使用するのに適した改質製鋼スラグの製造方法に関する。
製鋼プロセスにおいて多量に生成する「製鋼スラグ」は、FeO、CaO、MgO、SiO2、Pなど海洋生物の生育環境に有効な成分を多く含んでおり、海洋環境修復材として有用であることが知られている。しかし、製鋼スラグをそのまま海水に浸漬させると、製鋼スラグ中に不可避的に含まれる未反応のCaO(フリーライム)が海水と反応し、周囲の海水のpH上昇および白濁化を引き起こしやすい。このような現象が生じると環境破壊の要因となり、好ましくない。
海水のpH上昇および白濁現象は主として下記(2)〜(4)の反応によって起こると考えられている。
CaO+H2O→Ca(OH)2 …(2)
Ca(OH)2→Ca2++2OH- …(3)
Mg2++2OH-→Mg(OH)2↓ …(4)
すなわち、製鋼スラグを海水に浸漬すると、(2)式のようにCaO(フリーライム)が水と反応してCa(OH)2を生成する。このCa(OH)2は(3)式のように電離して水中のOH-イオン濃度を増大させる。その結果、海水のpHが上昇する。一方、海水中にはMg2+イオンが存在する。海水のpHが高い場合には(4)式の反応が進行し、不溶性のMg(OH)2が生成する。このMg(OH)2が白濁の原因となる。
製鋼スラグを海水に浸漬したときの高pH化や白濁化を防止するためには、製鋼スラグ粒子の表面付近に存在するフリーライムを、予め炭酸化(CaCO3化)しておく処理が有効であることが知られている。それにより、上記(2)式の反応を抑制することができ、その結果、(3)式および(4)式の反応も抑制される。
製鋼スラグを炭酸化する処理として、特許文献1、2には、エージング処理された製鋼スラグに自由水が存在し始める水分値未満の特定量の炭酸水を添加し、その後、炭酸ガスを含有する相対湿度75〜100%のガスを流す手法が開示されている。しかし、この方法では最適処理条件を維持するために比較的高度な制御が必要であり、また二酸化炭素含有ガスの湿分を調整するための設備も必要となる。このため処理コストが増大する。
特許文献3には、粉粒状または粗粒状のスラグを、炭酸化処理により生成させたCaCO3などをバインダーとして固結させ、塊状化させる技術が開示されている。これによりCa(OH)2が溶出して雨水のpHを上昇させる等の問題が生じない路盤材が得られるという。しかし、この炭酸化処理を行うためには山積みしたスラグに例えば5日間という長時間の炭酸ガスの吹き込みを行う必要があり、さらに所定の粒度の粒状物を得るためには塊状化したものを破壊・分級するという複雑な工程を要する。また、仮にそのような工程で粒状物を得たとしても、海水用途に適用したときに白濁の防止ができるとは限らない。
特許文献4には、スラグを炭酸ガスを含む水中に浸漬し、超音波を印加することによりスラグ粒子の表面を炭酸化させる手法が開示されている。この処理により海水の白濁が防止されるという。しかし、工業的な規模でこの方法を実施するには強力な超音波印加が可能な大型の設備が必要であり、設備コストおよびランニングコストが増大する。このため、この方法を採用することは必ずしも容易ではない。
特開2005−47789号公報 特開2005−97076号公報 特開平11−21153号公報 特開2009−57257号公報
上述のように、製鋼スラグは海洋生物の生育環境に有効な成分を多く含んでおり、海洋環境修復材として有用であるにもかかわらず、海水のpH上昇や白濁を引き起こす要因となりうるので、そのまま海水中に浸漬するには問題が多い。そこで、製鋼スラグの粒子表面を炭酸化処理する技術がいくつか提案されてきた。しかし、それら既往の技術は、高額な設備投資を必要としたり、処理に長時間を要したり、複雑な処理条件の制御が必要であったりする点で、工業的規模で広く普及を図るうえではさらなる改善が望まれる。
本発明はこのような現状に鑑み、より効率的な手法にて、海水のpH上昇や白濁を抑止できる海洋環境用途に適した「製鋼スラグの改質品」を提供しようというものである。
上記目的は、外気から遮蔽された閉鎖系内に、80℃以下の水を収容するとともに当該水が水面を形成して接する気相空間を設け、
下記(1)式を満たす量の粒状製鋼スラグを閉鎖系内の水中に浸漬して、製鋼スラグ粒子と接触する水を流動させ、
閉鎖系内の水中にCO2含有ガスを吹き込んでCO2を溶解させるとともに、前記気相空間のCO2分圧を0.05MPa以上に維持した状態とし、この状態下で前記流動を0.5h以上継続することにより、製鋼スラグ粒子表層に炭酸化層を形成させる海水浸漬用の改質製鋼スラグの製造方法によって達成される。
S/MW≦1.0 …(1)
ただし、MSは水中に浸漬させる製鋼スラグの初期質量(kg)、MWは閉鎖系内の水の質量(kg)
「改質製鋼スラグ」とは、製鋼スラグ粒子に炭酸化処理を施して、粒子表面の性質を変化させたものである。具体的には製鋼スラグ粒子の表層に形成される炭酸化層(炭酸カルシウム主体の層)によって海水のpH上昇や白濁を抑止する性質が付与される。製鋼スラグ粒子表層の炭酸化層は、平均厚さ30μm以上となるように形成させることがより効果的である。炭酸化層の平均厚さは粒子断面をSEM観察して炭酸化層の厚さを粒子の周方向に平均することによって求めることができる。
製鋼スラグ粒子と接触する水を流動させる手法としては例えば以下のような態様が採用できる。
(a)圧力容器によって閉鎖系を構成し、圧力容器内に収容された粒状製鋼スラグの下から水中にCO2含有ガスを吹き込む。
(b)圧力容器によって閉鎖系を構成し、圧力容器の底より上の位置に通水可能な仕切り体を設けるとともに、容器の底と仕切り体の間に機械的撹拌装置を設け、粒状製鋼スラグを仕切り体の上の水中に保持して前記機械的撹拌装置を駆動する。
(c)圧力容器と、その圧力容器に接続された水の循環流路によって閉鎖系を構成し、気相空間を前記圧力容器内に設け、粒状製鋼スラグを前記圧力容器内の水中に保持し、圧力容器内の製鋼スラグ収容領域より下の位置および上の位置にそれぞれ開口部を有するように前記循環流路に繋がる管を設け、それらの管を通じて圧力容器内の水を循環させる。
(d)圧力容器と、その圧力容器に接続された水の循環流路によって閉鎖系を構成し、気相空間を前記圧力容器内に設け、粒状製鋼スラグを前記循環流路の途中に設けた第2の圧力容器内に保持し、当該循環流路に水を循環させる。
なお、本明細書において「圧力容器」とは、内部空間が外気から遮蔽され、内部の圧力をコントロールすることができる容器を意味する。
粒状製鋼スラグは例えば平均粒径が1〜25mmのものが採用できる。前記水中に浸漬された粒状製鋼スラグには、撹拌体(撹拌のために動く物体)の直接衝突による衝撃および超音波振動による衝撃を付与しないことが望ましい。
本発明によれば、製鋼スラグ粒子の表面に炭酸化層を効率的に形成することができる。このようにして表面を改質した製鋼スラグは、海水に浸漬したときにpH上昇や白濁に対して優れた抵抗力を呈する。したがって、本発明は製鋼工程で多量に発生する製鋼スラグの有効利用に寄与するものである。また、工場から排出されるCO2含有排ガスを利用すれば、大気中への温室効果ガス排出量の削減にもなる。
水のCO2溶解度に及ぼす温度の影響を、水と接する気相のCO2分圧が0.1MPaの場合について示したグラフ。 本発明によって得られた改質製鋼スラグ粒子表面付近の断面SEM写真の一例。 本発明の改質製鋼スラグの製造方法を実施するための装置構成および原料配置の一例を模式的に示した図。 本発明の改質製鋼スラグの製造方法を実施するための装置構成および原料配置の一例を模式的に示した図。 本発明の改質製鋼スラグの製造方法を実施するための装置構成および原料配置の一例を模式的に示した図。 本発明の改質製鋼スラグの製造方法を実施するための装置構成および原料配置の一例を模式的に示した図。 本発明の改質製鋼スラグの製造方法を実施するための装置構成および原料配置の一例を模式的に示した図。 炭酸化処理後のスラグを海水に浸漬した際の海水pHの上昇に及ぼす、炭酸化処理時のスラグ/水質量比の影響を例示したグラフ。
本発明で処理の対象とする製鋼スラグは、製鋼工程の転炉や電気炉などから生成するスラグである。海中に浸漬して使用するので粒状の製鋼スラグを対象とする。平均粒子径が1mm未満の微細な粒状スラグ(粉状に近いもの)も適用対象となるが、海域の覆砂材、埋め戻し材等への利用や膨張安定性を考慮すると、篩分けによる平均粒径が1〜25mmであるものが好適である。製鋼スラグにはPが豊富に含まれている。その量はP25換算で1〜5質量%程度である。また、主成分の1つであるCaOの含有量は35〜55質量%程度であるが、シリカ等と結合していない可溶性のCaO(フリーライム)が1〜8質量%程度含まれているのが通常である。この可溶性CaOの含有量は湿式分析の過程において例えばエチレングリコールに溶解するCaO分として把握することができるものである。本明細書において、この可溶性CaOを「f−CaO」と表記することがある。
本発明の改質製鋼スラグの製造方法は、特に以下の(i)〜(iii)点に特徴を有する。
(i)水中にCO2含有ガスを吹き込むこと。水中に吹き込まれたガスは気泡状となって水中に分散し、高い比表面積を有する気泡から水中へのCO2の溶解が活発に起こる。それによりCO2が溶解した水(以下「CO2溶解水」という)を迅速に生成させることができる。
(ii)閉鎖系内において、CO2溶解水が水面を形成して接する気相空間を設け、その気相空間のCO2分圧を0.05MPa以上に維持すること。気体の水への溶解度は、その水と接する当該気体の分圧にほぼ比例する(ヘンリーの法則)。図1には、水のCO2溶解度に及ぼす温度の影響を、水と接する気相のCO2分圧が0.1MPaの場合について示してある。気相空間のCO2分圧が0.05MPaである場合には、各温度において図1のプロットの約1/2の溶解度を有することになるが、80℃でもかなりの溶解度を有することがわかる。大気中のCO2分圧は0.00004MPa程度であるので、CO2溶解水の水面と接する気相空間を大気開放とした場合には、水面からCO2の放出が非常に起こりやすい。これに対し、CO2溶解水の水面と接する気相空間を0.05MPa以上という高いCO2分圧とした場合には、平衡論的に水中へCO2の溶解が起こる状況となるので、CO2溶解水中のCO2損失を防止することができるのである。
(iii)製鋼スラグ粒子と接するCO2溶解水を流動状態とすること。これにより、製鋼スラグ粒子表面に炭酸イオンが継続的に供給され、炭酸化層が形成される。流動状態は、高速の水流とする必要はなく、滞留せずに水が連続的に入れ替わる程度の水流とすればよい。具体的には以下のような反応が生じると考えられる。
すなわち、水中に吹き込まれたCO2の一部は下記(5)式のように炭酸イオンとなって溶解する。製鋼スラグ粒子の表面付近に存在するf−CaO由来のカルシウムイオン(Ca2+)が(6)式のように炭酸イオン(CO3 2-)と反応し、製鋼スラグ粒子の表層に炭酸カルシウム(CaCO3)が形成される。
CO2+H2O→2H++CO3 2- …(5)
Ca2++CO3 2-→CaCO3 …(6)
本明細書では、この炭酸カルシウムを主体とする表層を「炭酸化層」と呼んでいる。また、(6)式の反応を「炭酸化反応」、水中で炭酸化反応を進行させるための処理を「炭酸化処理」ということがある。
図2に、本発明によって得られた改質製鋼スラグ粒子表面付近の断面SEM写真を例示する。上段および下段は気相空間のCO2分圧をそれぞれ0.1MPaおよび0.4MPaとしたものであり、いずれも20℃×24hの炭酸化処理を実施した。破線を付した境界より上部(表面側)が炭酸化層である。
図3〜図7に、本発明の改質製鋼スラグの製造方法を実施するための装置構成および原料配置の例を模式的に示す。
図3は、圧力容器によって閉鎖系を構成した例である。圧力容器1に水2が収容され、製鋼スラグ粒子3が通水可能な仕切り体10の上に保持され、水2の中に浸漬されている。容器の底部20に設けられたガス導入管12から仕切り体10の下の水空間11にCO2含有ガス4が吹き込まれる。吹き込まれたCO2含有ガス4は気泡となって水2の中に拡散し、CO2含有ガス4中のCO2の一部が水2中に迅速に溶解し、水2は「CO2溶解水」となる。ガス吹き込みのバブリングによって圧力容器1内の水2に対流が生じ、製鋼スラグ粒子3の表面は流動するCO2溶解水と接触し、前述の炭酸化反応が生じる。
圧力容器1内の上部には気相空間5が形成されている。吹き込まれたCO2含有ガス4の大部分は未溶解のまま水面から気相空間5の中に入る。気相空間5内のCO2分圧は、気相空間5内のガスの圧力(全圧)およびCO2濃度をモニターすることによって把握できる。気相空間5には排気弁6が接続されており、排気弁6からの排気流量の調整および水2中へのCO2含有ガス4の吹き込み流量の調整によって気相空間5内のCO2分圧を所定範囲に制御することができる。気相空間5内のCO2分圧を高く維持することによって水2中のCO2溶解度が水2に溶解しているCO2濃度を上回る状態となり、気相空間5と接する水面では平衡論的にCO2の溶解反応が生じる状態が実現される。これにより水2中に溶解したCO2の損失が防止される。
炭酸化処理開始前に気相空間5内に存在する初期のガス(空気)は、炭酸化処理中に水面から気相空間5の中に導入されるCO2含有ガス4によって次第に所定のCO2分圧を有するガスに置換される。ただし、処理時間の短縮化を重視する場合は、炭酸化処理前に予め気相空間5に繋がるガス導入管(図示せず)からCO2含有ガスを導入することにより、所定のCO2分圧を有するガスに置換しておくことが望ましい。
図4は、圧力容器によって閉鎖系を構成し、機械的撹拌装置を設置した例である。水空間11に設置された機械的撹拌装置7(例えばインペラー)によって圧力容器1内での水2の対流が増大し、炭酸化反応が促進される。
図5は、圧力容器と、その圧力容器に接続された水の循環流路によって閉鎖系を構成した例である。圧力容器1と管路31によって閉鎖系が構成され、管路31は製鋼スラグ収容領域40より下の位置および上の位置にそれぞれ開口部を有するように圧力容器1に接続されている。ポンプ32の動力によって水2は管路31を通じて循環する。これによって製鋼スラグ粒子3と接触する水2の流動が増大し、炭酸化反応が促進される。管路31の途中に水温調整装置を設けて所定の水温に維持するようにしても構わない。
図6は、圧力容器と、その圧力容器に接続された水の循環流路によって閉鎖系を構成した別の例である。この例では管路31の途中にガス混合器33が挿入されている。水2中へのCO2含有ガス4の吹き込みは、ガス混合器33に接続されたガス導入管12から行われる。図5のものと比べ圧力容器1の構造を簡略化できるメリットがある。
図7は、圧力容器と、その圧力容器に接続された水の循環流路によって閉鎖系を構成した別の例である。この例では管路31の途中に第2の圧力容器8が挿入されており、製鋼スラグ粒子3は第2の圧力容器8の中に収容されている。CO2溶解水は圧力容器1で作られ、管路31を通じて第2の圧力容器8の中を流動する。CO2溶解水を1箇所で集約して作り、それを複数の箇所に分配して炭酸化処理を行うような大規模システムなどではこのような態様が効率的となる場合がある。
図8に、炭酸化処理後のスラグを海水に浸漬した際の海水pHの上昇に及ぼす、炭酸化処理時のスラグ/水質量比の影響を例示する。これは、炭酸化処理の水温および時間を20℃×24hとし、炭酸化処理および海水浸漬試験を後述の実施例に従った試験方法で行った場合のデータを例示したものである。この試験で海水pHを9.7以下に抑えることができれば白濁現象の発生はほぼ防止でき、所望の効果が得られると判定できる。グラフ横軸は気相空間のCO2分圧である。CO2分圧が高くなると海水pHの上昇を抑制する効果が増大することがわかる。詳細な実験の結果、気相空間のCO2分圧を0.05MPa以上に維持することによって良好な白濁防止性能を安定して付与できることがわかった。0.1MPa以上とすることがより好ましい。ただし、CO2分圧を0.1MPaを超えて高めるためには、純CO2ガスを使用したとしても加圧が必要となり、過剰の加圧は設備コストを増大させる要因となる。CO2分圧の比較的低い工場排ガスの利用を想定すると、通常はCO2分圧0.5MPa以下での処理が好ましい。
本発明で適用する炭酸化処理においては、処理する製鋼スラグの量に応じて閉鎖系内の水の量を十分に確保することが重要である。発明者らの研究によれば、(1)式左辺で表されるスラグ/水質量比MS/MW(すなわち、[製鋼スラグの質量]/[水の質量])が1.0以下となる状態で炭酸化処理を行ったとき、例えば超音波振動の印加といった特殊な手段を採用することなく、海水のpH上昇および白濁化を極めて効果的に抑止できることがわかった。CO2溶解水の水面を大気に開放した状態で炭酸化処理する場合には、スラグ/水質量比を0.6以下に制限しなければ十分な炭酸化効果が得られないことが別途発明者らの調査によって確かめられている。これに対し本発明ではCO2溶解水の水面が接する気相のCO2分圧を高く設定する手法を採用することによって、スラグ/水質量比を1.0まで増大させることが可能となり、生産効率の向上に有利となる。
発明者らの実験によれば、スラグ/水質量比が過大になると、炭酸化処理後の水のpHが上昇するとの結果を得ている。これは製鋼スラグ粒子から溶出したf−CaOが十分に炭酸化反応に消費されず、水中のアルカリ成分が増大したことによると考えられる。これに対し、スラグ/水質量比が1.0以下である場合には、水中に存在する炭酸イオンの量がスラグ量に対し十分に確保される結果、(6)式の炭酸化反応が十分に進行し、粒子表層が炭酸化層により保護された改質製鋼スラグが得られるものと考えられる。ただし、水の量をあまり過剰に設定することは不経済であるので、通常、スラグ/水質量比は0.1以上の範囲とすればよい。
炭酸化処理中の水温は80℃まで許容される。発明者らの検討によると、水面を大気開放した場合には、水温が60℃を超えるとスラグ/水質量比を0.6以下に厳しく管理しても海水のpH上昇および白濁化を十分に抑止し得る製鋼スラグを安定して得ることが難しかった。その主たる理由は、温度上昇によりCO2溶解度が著しく低下し、水面からのCO2放出が活発に起こるためであると考えられる。一方、本発明では気相空間のCO2分圧を0.05MPa以上に維持するので、80℃においても水面からのCO2放出が防止され、海水のpH上昇および白濁化を十分に抑止し得る製鋼スラグを得ることができる。水温の許容範囲が拡大することは、高温の工場排ガスを使用する上で極めて有利となる。ただし、水温が低いほどCO2溶解度が増大するので、気相空間から水中へのCO2の溶解が活発化し、炭酸化反応の促進には有利となる。水温を例えば60℃以下、あるいは50℃以下に管理することがより好ましく、40℃以下に管理してもよい。水温の下限は、凝固しない限り特に制限する必要はない。閉鎖系内の圧力(気相空間の全圧)を大気圧より加圧する場合には水の凝固点は大気圧下の場合より降下するので、0℃以上にて凝固することはない。大気開放したときの凝固を防止するうえで、通常は0℃を超える水温(例えば5℃以上)に調整すればよい。
炭酸化処理の時間(気相空間のCO2分圧が0.05MPa以上に維持された状態でCO2溶解水を流動させる時間)は、0.5h以上を確保する。それより短時間では海水のpH上昇および白濁化を十分に抑止し得る製鋼スラグを安定して得ることが難しい。0.75h以上とすることがより好ましく、1h以上とすることが一層好ましい。炭酸化処理の時間が長くなるほど、改質製鋼スラグ表面の炭酸カルシウム層が厚くなると考えられるが、24hを超えても炭酸化の効果はあまり向上しない。したがって、特に入念な処理を必要とする場合を除き、通常は36h以内、あるいは24h以内の処理時間とすればよい。8h以内の処理時間に管理してもよい。
CO2含有ガスとしては、純CO2ガスの他、工場からの排ガスも利用可能である。ただし、他成分との混合ガスの場合、CO2濃度が10体積%以上のガスを用いることがより好ましい。CO2含有ガスの吹き込み量は、気相空間のCO2分圧が前記所定範囲に維持される範囲とすればよい。気相空間のCO2分圧が前記所定範囲に維持されている限り、一時的に吹き込みを中止しても構わない。
炭酸化処理に際しては、製鋼スラグ粒子がCO2溶解水と接触する必要があるが、その接触を活発化させようとして製鋼スラグ粒子を動かしたり、振動や衝撃を加えることは得策でない。製鋼スラグ粒子は静置した状態で炭酸化処理することが好ましい。発明者らの検討によれば、撹拌体とスラグ粒子、あるいはスラグ粒子同士が衝突する条件下や、超音波振動を付与した条件下で炭酸化処理を行った場合に、十分な白濁防止効果が得られにくくなることがわかった。原因を調査したところ、製鋼スラグを収容していた容器の底部に粉体が堆積しており、X線回折の結果、その粉体は炭酸カルシウムを主体とするものであることが確認された。このことから、粒子表層部に形成された炭酸化層の一部が物理的な衝撃よって剥落し、それによって炭酸化層による保護作用が低減したものと考えられる。
以上の手法によれば、粒子表層に平均厚さ30μm以上の炭酸化層を形成させることができる。特に平均厚さ50μm以上の炭酸化層を形成させると、より安定して海水pH上昇および白濁化を防止する効果が得られる。改質製鋼スラグの運搬時や施工時における衝撃によって、粒子表面の炭酸化層が一部剥離することも考えられる。衝撃に対する信頼性を重視する場合は、平均厚さ70μm以上、あるいは100μm以上という厚い炭酸化層を形成させることが望ましい。炭酸化層の厚さは、スラグ/水質量比の低減化、CO2の溶解促進化、炭酸化処理時間の長時間化等によって増大させることができる。
製鋼スラグとして、表1に示す組成を有し、篩分けによって粒径を調整したものを用意した。表1中、CaOの欄に記載した数値は、f−CaOを含むCaO成分の含有量である。
容量2m3の圧力容器に水300L(リットル)を入れ、その水中に製鋼スラグを浸漬させた。水槽の内部にはステンレス鋼製の金網からなる棚(仕切り体)が設けてあり、製鋼スラグはその棚の上に載せ、全量が水中に浸漬するようにした。容器内の水面上には気相空間が存在する。スラグ/水質量比(MS/MW)が表2、表3中に示す値となるように製鋼スラグの量を調整した。CO2含有ガスとして、以下の2種類を使用した。
ガスA; 純CO2ガス
ガスB; CO2:10体積%、残部:空気
図4のように、圧力容器内の棚(仕切り体)の下部にある水空間にインペラーを設置して、撹拌した。水中へのCO2含有ガスの吹き込みは、図2のように、製鋼スラグ粒子の下部の水空間において行った。水温調整は、初期水温および圧力容器壁面の冷却によって行い、表2、表3中に示す水温に維持されるようにした。圧力容器の気相空間には排気弁が接続されており、気相空間のガス圧力(全圧)を調整できるようになっている。比較例として大気開放下で炭酸化処理を行ったもの(表3のNo.61〜71)を除き、炭酸化処理前に予め気相空間内の空気を吹き込み用ガスと同種のCO2含有ガスで置換し、CO2分圧を表2、表3中に記載の状態とし、その後、容器底からのCO2ガス吹き込みを開始した。表2、表3中に記載の炭酸化処理時間は、同表中に記載のCO2分圧下におけるガス吹き込み時間に相当する。炭酸化処理中に連続的に気相空間の圧力(全圧)を測定し、吹き込み用ガスのCO2濃度の値を用いてCO2分圧に換算し、そのCO2分圧の変動に応じて排気弁からのガス排出流量およびCO2含有ガス吹き込み量を調整し、一定のCO2分圧が維持されるように制御した(大気開放下の比較例を除く)。なお、この手法によって制御されるCO2分圧は、CO2濃度検出器を用いて気相空間のCO2濃度を実測することによって制御されるCO2分圧とほぼ一致することが確認されている。CO2含有ガスの吹き込み量は、スラグ1kgあたり0.05〜0.15モル/minのCO2が供給される流量とした。
得られた改質製鋼スラグ各30kgを、pH8.4、温度20℃の人工海水300L中に浸漬し、24h保持する海水浸漬試験に供した。24h保持後の海水を目視観察し、白濁の有無を調べた。また、浸漬試験後の海水のpHを測定した。結果を表2、表3に示す。
表2、表3からわかるように、本発明例の方法で得られた改質製鋼スラグは海水のpH上昇を抑制する効果に優れ、海水の白濁も認められなかった。これら本発明例のものはいずれも粒子表層に平均厚さ30μm以上の炭酸化層が形成されていた。比較例であるNo.61〜71は大気開放で処理したものである。このうちNo.61〜66は白濁が生じなかったものの、スラグ/水質量比、水温が同等である本発明例と比較すると、白濁が生じない状態まで改質するためには長時間を要した。No.67は「大気開放の場合には80℃の高温処理では十分な改質が困難であること」を示している。No.68〜71は「大気開放の場合にはスラグ/水比が1.0と高いと十分な改質が困難であること」を示している。No.72は水温が高すぎたもの、No.73はスラグ/水比が高すぎたものであり、これらはいずれも十分な改質ができなかった。
1 圧力容器
2 水
3 製鋼スラグ粒子
4 CO2含有ガス
5 気相空間
6 排気弁
7 機械的撹拌装置
8 第2の圧力容器
10 仕切り体
11 水空間
12 ガス導入管
20 底部
31 管路
32 ポンプ
33 ガス混合器
40 製鋼スラグ収容領域

Claims (8)

  1. 外気から遮蔽された閉鎖系内に、80℃以下の水を収容するとともに当該水が水面を形成して接する気相空間を設け、
    下記(1)式を満たす量の粒状製鋼スラグを閉鎖系内の水中に浸漬して、製鋼スラグ粒子と接触する水を流動させ、
    閉鎖系内の水中にCO2含有ガスを吹き込んでCO2を溶解させるとともに、前記気相空間のCO2分圧を0.05MPa以上に維持した状態とし、この状態下で前記流動を0.5h以上継続することにより、製鋼スラグ粒子表層に炭酸化層を形成させる海水浸漬用の改質製鋼スラグの製造方法。
    S/MW≦1.0 …(1)
    ただし、MSは水中に浸漬させる製鋼スラグの初期質量(kg)、MWは閉鎖系内の水の質量(kg)
  2. 圧力容器によって閉鎖系を構成し、圧力容器内に収容された粒状製鋼スラグの下から水中にCO2含有ガスを吹き込むことにより、製鋼スラグ粒子と接触する水を流動させる請求項1に記載の改質製鋼スラグの製造方法。
  3. 圧力容器によって閉鎖系を構成し、圧力容器の底より上の位置に通水可能な仕切り体を設けるとともに、容器の底と仕切り体の間に機械的撹拌装置を設け、粒状製鋼スラグを仕切り体の上の水中に保持して前記機械的撹拌装置を駆動することにより、製鋼スラグ粒子と接触する水を流動させる請求項1に記載の改質製鋼スラグの製造方法。
  4. 圧力容器と、その圧力容器に接続された水の循環流路によって閉鎖系を構成し、気相空間を前記圧力容器内に設け、粒状製鋼スラグを前記圧力容器内の水中に保持し、圧力容器内の製鋼スラグ収容領域より下の位置および上の位置にそれぞれ開口部を有するように前記循環流路に繋がる管を設け、それらの管を通じて圧力容器内の水を循環させることにより、製鋼スラグ粒子と接触する水を流動させる請求項1に記載の改質製鋼スラグの製造方法。
  5. 圧力容器と、その圧力容器に接続された水の循環流路によって閉鎖系を構成し、気相空間を前記圧力容器内に設け、粒状製鋼スラグを前記循環流路の途中に設けた第2の圧力容器内に保持し、当該循環流路に水を循環させることにより、製鋼スラグ粒子と接触する水を流動させる請求項1に記載の改質製鋼スラグの製造方法。
  6. 粒状製鋼スラグは平均粒径が1〜25mmである請求項1〜5のいずれかに記載の改質製鋼スラグの製造方法。
  7. 製鋼スラグ粒子表層に平均厚さ30μm以上の炭酸化層を形成させる請求項1〜6のいずれかに記載の改質製鋼スラグの製造方法。
  8. 前記水中に浸漬された粒状製鋼スラグには、撹拌体の直接衝突による衝撃および超音波振動による衝撃を付与しない請求項1〜7のいずれかに記載の改質製鋼スラグの製造方法。
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