JP5954265B2 - 鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄鋼スラグの硫黄含有量を低減する処理方法に関する。
鉄鋼製造プロセスで発生する鉄鋼スラグは、コンクリート骨材や路盤材料、港湾土木材料などの土木材料として広く利用されている。鉄鋼スラグの中には、硫黄を含有するスラグがあるが、これは、精錬工程のなかで溶銑中の硫黄などの不純物をスラグに移行させて吸収させているためである。例えば、高炉で発生した溶融スラグを冷却ヤードで徐冷した高炉徐冷スラグや、脱硫剤を用いて溶銑の脱硫を行う際に発生する脱硫スラグは、比較的多くの硫黄を含有している。このように高炉徐冷スラグや脱硫スラグなどの硫黄を含有するスラグを水の存在する環境下で使用すると、スラグ中の硫黄が流出して環境に悪影響を与えるおそれがある。そのため、鉄鋼スラグを利用する前に硫黄成分の除去や安定化が必要になる。
また、溶銑の脱硫工程では、CaO等を主成分とする脱硫剤が、溶銑中の硫黄分と反応して脱硫スラグとして排出されるが、この脱硫スラグには脱硫剤の主成分である酸化カルシウム等が残存している。そこで、省資源ならびに省エネルギーの点から、脱硫スラグは溶銑の脱硫剤として再度利用されている。しかしながら、脱硫スラグの再利用を重ねると、脱硫剤である脱硫スラグ中のCaO分が減少する一方CaSが増加して、脱硫反応が進行しなくなる。そのため、再利用には脱硫スラグ中の硫黄成分の除去が必要になる。
高炉徐冷スラグや脱硫スラグなどの鉄鋼スラグから硫黄成分を除去するに際しては、従来、エージングにより硫黄成分の酸化を促進させたり、鉄鋼スラグに散水することで硫黄成分を溶出させるなどの処理が行われている。
また、特許文献1には、脱硫スラグを溶銑脱硫処理に再利用する技術に関し、溶銑脱硫後に発生する脱硫スラグと、CaOおよびNa2CO3とを混合した脱硫剤を溶銑脱硫処理に用いる技術が提案されている。更に、CaOおよびNa2CO3に混合する前の脱硫スラグに水没処理を施して、該脱硫スラグのS分を低減させる技術が提案されている。
特許文献2では、脱硫スラグを、次亜塩素酸を含む酸化剤を水で希釈又は溶解した洗浄液と接触させて、或いは、海水中に浸漬させて、脱硫スラグ中の還元性硫黄化合物を除去する技術が提案されている。そして、特許文献2で提案された技術によると、脱硫スラグ等の硫黄含有量が高い製鋼スラグについても、所定の処理液を用いて製鋼スラグに含まれる還元性硫黄化合物を硫酸イオンまで酸化することで、製鋼スラグに含まれる還元性硫黄化合物の水域への溶出を低減でき、海域などの水域において製鋼スラグを有効利用することが可能となるとされている。
特許文献3では、精錬容器内の溶鉄を脱硫精錬する技術に関し、溶鉄に脱硫剤を添加して脱硫処理を施し、溶鉄表面に生成した脱硫スラグにプラズマアークを照射することで、脱硫スラグ中のSの気化脱硫反応を行うとともに、溶鉄中のS濃度を低減する技術が提案されている。そして、特許文献3で提案された技術によると、設備費や処理コストの高いLF装置や真空脱ガス装置を使用することなく、高効率かつ安定して、溶鉄を極低硫黄濃度まで脱硫処理することが可能であるとされている。
特開2002−309308号公報 特開2010−241653号公報 特開2011−017047号公報
しかしながら、エージングやスラグに散水する従来技術、或いはスラグに水没処理を施す特許文献1で提案された技術では、スラグから硫黄成分を除去するに際し、長時間の処理を要することに加えて脱硫効率も低いという問題がある。また、特許文献2で提案された技術では、次亜塩素酸ナトリウムなどの次亜塩素酸を含む酸化剤を水で希釈又は溶解した洗浄液を調製する必要があるが、次亜塩素酸ナトリウムなどは酸と混在すると有毒な塩素ガスを発生する等、その取り扱いに注意を要し、作業環境への危険性や環境への悪影響が懸念される。一方、脱硫スラグを海水中に浸漬する場合には、海水を取水するための大容量ポンプ等の高価な設備が必要となり、コスト面で不利となるうえ、脱硫効率も低い。更に、特許文献3で提案された技術では、プラズマ発生装置等の高価な設備が必要となり、やはりコスト面で不利となる。
一方、細菌を用いて石炭等の固体中の硫黄成分を酸化して処理液中に溶出させる技術が知られている。そして、この技術を鉄鋼スラグの硫黄成分除去処理に適用することができれば、自然界に存在する細菌を用いることから環境に対するリスクが低く、しかも低コストに硫黄成分を除去できるものと期待される。しかしながら、上記の如く細菌を用いる技術を鉄鋼スラグの硫黄成分除去処理に適用する場合、様々な問題が浮上する。
硫黄酸化能力を有する細菌は通常、酸性〜中性で活性のある細菌であるため、鉄鋼スラグを細菌の活性が高い弱酸性から中性(pH:4.0〜8.0程度)の範囲に調整して処理を行う必要がある。しかし、鉄鋼スラグはアルカリ性であるため、pHを8.0以下に調整するための酸が必要になり、コスト高となる問題がある。また、酸性の環境では、鉄鋼スラグから溶出する硫化物イオンが処理水中の水素イオンと反応し、有毒な硫化水素(H2S)が発生するという問題もある。一方、pH調整を実施しない場合、高炉スラグ処理ではpH10、脱硫スラグ処理ではpH11超になる。このようにpHがアルカリ側となるように処理を行うと、硫化水素の発生量は低減できるものの、細菌の生物活性が低下し、処理能力が著しく低下するため、反応装置が大型化してしまうという問題がある。
本発明は、係る事情に鑑みて為されたものであって、本発明の目的は、鉄鋼スラグから硫黄成分を除去するに際し、環境負荷が低く、簡便かつ安価に、しかも高効率で脱硫可能な鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、鉄鋼スラグから硫黄成分を除去するに際し、処理雰囲気をアルカリ雰囲気とし、有毒な硫化水素(H2S)などを大量に発生することなく、簡便かつ安価に、しかも高効率で脱硫可能な鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鉄鋼スラグから硫黄成分を除去するに際し、特別な処理液を調製することや高価な設備を付設することなく、スラグを効率良く脱硫する手段について鋭意検討した。
先述のとおり、鉄鋼スラグから硫黄成分を除去する方法としては、鉄鋼スラグに散水することで硫黄成分を溶出させる方法が知られている。一方、製鉄所設備では、大量の水が冷却水や洗浄水として消費されており、これらの排水を製鉄所内で再利用する技術がリサイクルという点からも望まれる。
そこで、本発明者らは、これらの排水を、鉄鋼スラグの硫黄成分除去処理時に鉄鋼スラグに散水する処理液として再利用することを試みた。その結果、高炉吹製水を鉄鋼スラグに散水した場合、極めて高い脱硫効果を示すことが確認された。高炉吹製水とは、高炉から排出された溶融スラグを急冷処理により急冷球状化して水冷スラグを製造する際に使用する圧力水であり、高炉吹製水は通常、上記急冷処理に再利用されるか排水処理される。この急冷処理に使用された後の高炉吹製水を、鉄鋼スラグの硫黄成分除去処理時にスラグに散水する処理液として使用したところ、高炉吹製水に酸化剤等の添加剤を加えることや特別な雰囲気調整等を行うことなく、鉄鋼スラグから効果的に硫黄成分が除去されることが確認された。すなわち、上記急冷処理に使用した後大気中に放置(空気中に曝露)したままの高炉吹製水を、鉄鋼スラグに散水するだけで、高い脱硫効率をもって鉄鋼スラグの脱硫が可能であることが明らかになった。
上記の結果を踏まえ、本発明者らは、高炉吹製水が極めて高い脱硫効果を示す理由を突き止めるべく、上記急冷処理に使用する前の高炉吹製水(加圧水)、および上記急冷処理に使用した後の高炉吹製水(すなわち、高炉溶融スラグと接触した後の高炉吹製水)の状態について調査した。上記急冷処理に使用する加圧水は、工業用水や工場処理水を利用するため、常温、pH5.5〜8程度の冷却水である。この冷却水を用いて急冷処理を施すと、高炉溶融スラグと接触することにより温度およびpHが変化し、上記急冷処理に使用した直後の高炉吹製水の温度は90℃以上に上昇し、pHも8〜11程度まで上昇していた。次いで、この高炉吹製水を、大気に接触する条件で一定時間(0.5〜4h)放置して80℃以下になるように冷却したのち、急冷処理に使用する加圧水として再利用した。以上のようなサイクルで高炉吹製水の循環利用を1〜2日間継続したのち、最終サイクルの急冷処理後の高炉吹製水を、大気中に放置し、一定時間(0.5〜4h)経過後の温度およびpHを測定した。その結果、温度は80℃以下に低下し、pHは5.5〜8程度にまで低下していた。
以上のように、本発明者らは、高いpHを有する急冷処理直後の高炉吹製水を大気中に放置(空気中に曝露)すると、空気中の酸素等による自然酸化によるpH低下を明らかに超えるpH低下が生じることを突き止めた。また、急冷処理に使用した直後の高いpH値を示す高炉吹製水を鉄鋼スラグの硫黄成分除去処理に用いた場合よりも、急冷処理に使用した後、大気中に一定時間放置してpHが8未満に低下した高炉吹製水を鉄鋼スラグの硫黄成分除去処理に用いる場合のほうが、優れた脱硫効果を示すことを知見した。
次いで、本発明者らは、高炉吹製水の成分分析を行った。その結果、大気中に一定時間放置してpHが8未満に低下した高炉吹製水には、硫黄酸化能力を有する複数種類の細菌が存在していることが確認され、上記脱硫効果はこれら細菌由来の効果であることを知見した。一方、急冷処理に使用した直後の高いpH値を示す高炉吹製水では、硫黄酸化能力を有する細菌が確認されたものの、その量は大気中に一定時間放置してpHが8未満に低下した高炉吹製水に存在する細菌の量に比べて少なかった。
なお、大気中に一定時間放置してpHが8未満に低下した高炉吹製水を鉄鋼スラグに接触させて、該スラグの硫黄成分除去処理を行うと、上記した複数の細菌が働くことにより、以下の反応式で表される化学反応のうちの少なくとも一つが行われ、鉄鋼スラグ中の還元性硫黄成分(以降、還元硫黄成分と称することもある)が酸化されるものと推定される。ただし、上記した複数の細菌による硫黄成分除去処理のメカニズムは、この推定に限定されるものではない。
S2-+2O2→ SO4 2-
S2O3 2-+2O2+H2O → 2SO4 2-+2H+
2 S2O6 2-+O2+2H2O → 4SO4 2-+4H+
SO3 2-+H2O → SO4 2-+2H+
また、本発明者らは、上記した硫黄酸化能力を有する複数種類の細菌について、特性調査を行った。その結果、これらの細菌の中には、アルカリ環境下においても活発に働き硫黄を酸化する効果を有するものが存在することを知見した。なお、硫黄酸化能力を有する細菌は通常、酸性〜中性で活性のある細菌であり、アルカリ性では硫黄酸化能を発揮しない。したがって、このたび確認された細菌(大気中に一定時間放置した高炉吹製水に存在する細菌)は、アルカリ環境下においても硫黄酸化能を発現する、極めて稀な種類の細菌であると云える。
また、本発明者らが、上記の知見に基づき更に検討を進めた結果、高炉吹製水に限らず、硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌を含むような液であれば、鉄鋼スラグの硫黄成分が除去可能であることが明らかになった。
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は次のとおりである。
[1] 鉄鋼スラグに、硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌を含む菌含有液として、高炉溶融スラグの急冷処理を1回以上施したpH8以上の高炉吹製水を、空気に曝露してpHを8未満に低下させた後に、酸素存在下で15℃以上80℃以下の温度範囲に管理しながら接触させる固液接触処理を施すことを特徴とする鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
[2] [1]において、前記菌が、アルカリ性の雰囲気で硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌であることを特徴とする鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
[3] [1]または[2]において、前記菌が、高炉溶融スラグの急冷処理を1回以上施した後の高炉吹製水に含まれる菌であることを特徴とする鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
] [ないし[3]のいずれかにおいて、前記温度範囲を40℃以上80℃以下とすることを特徴とする鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
] [1]ないし[]のいずれかにおいて、前記菌含有液に、前記菌の栄養成分を添加することを特徴とする鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
] [1]ないし[]のいずれかにおいて、前記固液接触処理前の鉄鋼スラグを、二酸化炭素または炭酸塩で処理することを特徴とする鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
] [1]ないし[]のいずれかにおいて、前記固液接触処理後に、前記菌含有液と接触させた後の鉄鋼スラグと前記菌含有液とを分離する固液分離処理を施すことを特徴とする鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
] []において、前記固液接触処理および前記固液分離処理を、少なくとも1回以上繰り返すことを特徴とする鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
] []または[]において、前記固液分離処理で分離した菌含有液を、前記固液接触処理において再利用することを特徴とする鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
[10] [7]ないし[9]のいずれかにおいて、前記固液分離処理で分離した鉄鋼スラグを、篩い分けし、該鉄鋼スラグから粒径0.5mm以下の細粒を除去することを特徴とする鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
[1] [1]ないし[1]のいずれかにおいて、前記固液接触処理後に、前記菌含有液と接触させた後の鉄鋼スラグに水を接触させて該鉄鋼スラグを水洗する水洗処理を施すことを特徴とする鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
[1] [1]において、前記水洗処理後に、水洗後の鉄鋼スラグから水を除去する脱水処理を施すことを特徴とする鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
[13] [12]において、前記脱水処理で脱水した鉄鋼スラグを、篩い分けし、該鉄鋼スラグから粒径0.5mm以下の細粒を除去することを特徴とする鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
本発明によると、鉄鋼スラグから硫黄成分を除去するに際し、処理液として硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌を含む処理液を用いることで、高効率に、鉄鋼スラグから硫黄成分を除去することができる。また、本発明によると、上記処理液として水砕スラグの製造工程で生じる高炉吹製水を用いることができ、該高炉吹製水を鉄鋼スラグに接触(例えば、浸漬、散水)するだけで、鉄鋼スラグから硫黄成分を効果的に、しかも有毒な硫化水素(H2S)などを大量に発生することなく除去することができる。したがって、本発明によると、鉄鋼スラグに接触させる処理液を特別に調製することや高価な設備を付設することなく、簡便かつ安価で、しかも脱硫効率の高いスラグ脱硫処理方法を提供することができ、産業上格段の効果を奏する。
高炉吹製水の処理状態によるpH変化を示す図である。 高炉吹製水(ろ過、未ろ過)を、曝気しながら70℃で1週間保持した場合のpH変化を示す図である。 (a)馴養高炉吹製水のPCR−DGGE解析結果を示す図である。(b)非馴養高炉吹製水のPCR−DGGE解析結果を示す図である。 固液接触処理時における処理液1(菌含有液)および処理液2(菌を含有しない液)のpH変化を示す図である。 固液接触処理時における処理液1(菌含有液)の硫黄化合物濃度変化を示す図である。 高炉吹製水を、異なるpHに調整後、曝気しながら70℃で1週間保持した場合の硫酸イオン濃度を示す図である。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法は、鉄鋼スラグに、硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌を含む菌含有液を接触させる固液接触処理を施すことを特徴とする。すなわち、本発明では、硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌(以下、「硫黄酸化菌」、「硫黄酸化細菌」ともいう)の硫黄酸化能を利用し、鉄鋼スラグに含まれる還元性硫黄成分を菌含有液に溶出させることで、鉄鋼スラグの硫黄除去処理を行う。
鉄鋼スラグ
鉄鋼スラグとしては、例えば、高炉スラグ、溶銑予備処理スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグ等が挙げられる。溶銑予備処理スラグには、脱燐スラグ、脱珪スラグ、脱硫スラグが含まれる。また、高炉スラグは、スラグの冷却方法によって、水砕スラグ、空冷スラグ、徐冷スラグ等に分けられる。鉄鋼スラグの中でも、特に高炉スラグや脱硫スラグは、硫黄含有量が比較的高い。したがって、鉄鋼スラグとして高炉スラグまたは脱硫スラグを用いると、本発明の脱硫効果が顕著となり好ましい。また、高炉スラグとしては、高炉溶融スラグを水砕もしくは徐冷して製造される高炉水砕スラグ、高炉徐冷スラグが好ましいものとして例示される。
なお、本発明では、鉄鋼スラグに、硫黄酸化菌を含む菌含有液を接触させることで、鉄鋼スラグ中の硫黄成分を除去する。したがって、鉄鋼スラグは、その粒子径を小さくして単位質量あたりの表面積を大きくし、鉄鋼スラグと菌含有液との接触面積を大きくすることが好ましい。鉄鋼スラグの粒子径は特に限定されないが、平均粒子径で、0.1mm以上10cm以下が好ましく、0.1mm以上5cm以下がより好ましく、0.1mm以上3cm以下がさらに好ましい。この範囲内であると、硫黄酸化菌を含む菌含有液が粒子と粒子との空隙を容易に流れることができ、接触表面積も確保することができる。
一方、鉄鋼スラグの平均粒子径が10cmを超えると、比表面積が小さくなって、接触表面積が低下するため、溶出速度、溶出効率が低下するおそれがある。また、鉄鋼スラグの平均粒子径が0.1mm未満となると、菌処理液が粒子と粒子との空隙を流れにくくなるため、溶出速度、溶出効率の低下が懸念される。なお、鉄鋼スラグの粒子径を小さくする方法としては、ジョークラッシャー、転動ミル等を用いて破砕する方法を用いることができる。溶出する化学成分を含有する物質(鉄鋼スラグ)の粒子径が上記範囲内である場合は、さらに破砕しなくてもよい。
硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌
本発明では、硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌(硫黄酸化菌)を用いる。ここで、硫黄または硫黄化合物としては、分子硫黄(S)、硫化物イオン(S2-)、チオ硫酸イオン(S2O3 2-)、亜硫酸イオン(SO3 2-)、ジチオン酸イオン(S2O6 2-)およびこれらの塩、ならびにこれらの混合物等が例示される。
本発明では、硫黄酸化菌として、アルカリ性の雰囲気で硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌を用いることが好ましい。先述のとおり、本発明では、硫黄酸化菌の硫黄酸化能を利用し、鉄鋼スラグに含まれる還元性硫黄成分を硫化物イオンとして菌含有液に溶出させることで、鉄鋼スラグの硫黄除去処理を行う。ここで、通常の硫黄酸化菌は、酸性傾向の場合に活性化し、アルカリ雰囲気下では硫黄酸化能を発揮しない。
通常の硫黄酸化菌としては、Acidithiobacillus ferrooxidansAcidithiobacillus thiooxidansThiobacillus thioparusStarkeya novellaHalothiobacillus neapolitanusThiomonas intermedia等が例示される。Acidithiobacillus ferrooxidansAcidithiobacillus thiooxidansはpH2〜4の酸性で、Thiobacillus thioparusStarkeya novellaHalothiobacillus neapolitanusThiomonas intermediaはpH6〜8の中性で、硫黄を酸化する能力を有する。したがって、アルカリ雰囲気下で活性化しない通常の硫黄酸化菌を用いる場合には、菌含有液を酸性から中性域に調整する必要がある。
しかしながら、菌含有液が酸性である場合、後述する固液接触処理で鉄鋼スラグの還元硫黄成分を菌含有液に溶出する際、硫黄以外のスラグの様々な成分が溶解するため、硫黄を除去してスラグを再利用するうえで不利となる場合がある。また、菌含有液が酸性である場合、鉄鋼スラグから溶出する硫化物イオンと菌含有液中の水素イオンとが反応して有害な硫化水素が発生することから、作業環境の悪化が懸念される。
このような問題に対し、硫黄酸化菌として、アルカリ性の雰囲気で硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌を用いる場合には、菌含有液をアルカリ性領域に調整することが可能となり、硫化水素の発生を抑制することができる。なお、本発明における「アルカリ性の雰囲気で硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌」は、少なくともアルカリ雰囲気下で硫黄または硫黄化合物を酸化する作用があればよい。すなわち、アルカリ雰囲気下でのみ硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有するもののほか、アルカリ雰囲気下のみならず中性および/または酸性雰囲気下においても硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有するものでも勿論構わない。
アルカリ性の雰囲気で硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌としては、Thioalkalivibrio jannaschiiが例示される。また、後述するように、高炉溶融スラグの急冷処理を1回以上施した後の高炉吹製水中に存在する硫黄酸化菌が好適に使用される。
菌含有液
本発明で用いる菌含有液は、上記の如き硫黄酸化菌を含有する液である。菌含有液は、例えば硫黄酸化細菌を、該硫黄酸化細菌に適した培地に接種し増殖させることにより得られる。例えば、Thioalkalivibrio jannaschii であれば、Na2CO3、NaHCO3、NaCl、KNO3、MgCl2、微量金属成分、Na2S2O3を含有するpH10の溶液中で培養する。その溶液をそのまま菌含有液として使用してもよいし、菌を遠心分離やろ過で回収し水溶液に再度懸濁した溶液を用いてもよい。
また、本発明者らは、高炉溶融スラグの急冷処理を施した後の高炉吹製水に、複数種の硫黄酸化菌が存在することを新たに知見した。そこで、本発明では、菌含有液として、高炉溶融スラグの急冷処理を1回以上施した後の高炉吹製水を用いることができる。
高炉吹製水は、高炉水砕スラグ製造工程において、高炉溶融スラグを急冷するために使用され、高炉水砕スラグと分離された冷却水である。上記高炉水砕スラグ製造工程としては、一般的には、例えば、高炉溶融スラグに加圧水を噴射して、または高炉溶融スラグを水槽に注入して、急冷し、粒状化(水砕)する工程が挙げられる。
高炉水砕スラグ製造工程では急冷処理後、生成した水砕スラグと冷却水とを分離し、水砕スラグを回収した後の冷却水を前記急冷処理用の冷却水として再利用することもある。本発明において菌含有液として高炉吹製水を用いる場合には、上記急冷処理を少なくとも1回以上経たもの、すなわち、高炉溶融スラグと少なくとも1回以上接触した高炉吹製水を用いればよく、急冷処理用の冷却水として複数回繰り返し利用された高炉吹製水であってもよい。
以上のように、高炉吹製水を用いる場合には、菌含有液を特別に調製する手間が省け、鉄鋼スラグの硫黄除去処理を簡便に行うことができる。また、高炉吹製水を有効に再利用することができ、生産コスト・設備コスト面においても利点がある。更に、本発明者らは、高炉吹製水に存在する硫黄酸化菌の中には、アルカリ性の雰囲気で硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌が含まれていることを確認した。したがって、菌含有液として高炉吹製水を用いる場合には、鉄鋼スラグの硫黄除去処理時、硫化水素の発生を抑制することができる。
また、高炉吹製水から、含有する菌を遠心分離やろ過で回収し、水溶液に再度懸濁することで菌含有液を調製することもできる。また、高炉吹製水から回収した菌に栄養を添加して増殖させた菌含有液を使用してもよい。
なお、高炉吹製水に含まれる硫黄酸化菌の種類を全て列挙することは困難であるが、例えば、Thermus scotoductusHydrogenobacter sp.などの存在が確認されている。
また、菌含有液として高炉吹製水を用いる場合には、上記急冷処理後にpHが8以上に上昇した高炉吹製水を、空気に曝露してpHを8未満に低下させる処理を施した高炉吹製水を用いることが好ましい。
高炉溶融スラグを急冷する前の冷却水は、通常、温度が60℃以下であり、pHは5.5〜8程度である。そして、この冷却水を用いて高炉溶融スラグに急冷処理を施すと、該冷却水は、高炉溶融スラグと接触することによって、温度が90℃以上にまで上昇し、pHは8〜11程度にまで上昇する。本発明では、このように高炉溶融スラグと接触してpHが8以上に上昇した冷却水(高炉吹製水)を、空気に曝露して、そのpHを8未満に低下させることが、脱硫効率の向上に効果的である。
なお、本発明では、高炉吹製水のpHを少なくとも一回8.0未満に低下させればよく、その後pHを8.0以上に調整しても構わない。
高炉吹製水を空気に曝露する手段は特に限定されないが、大気中に放置することが最も簡便な手段である。例えば、急冷処理後の高炉吹製水は通常、製鉄所内の屋外に設置された水槽に貯水されるが、このように貯水された状態で1〜72時間程度放置すれば、高炉吹製水のpHは自然に8未満に低下する。また、高炉吹製水の温度は外気温度にもよるが、おおよそ15〜80℃になる。
図1は、高炉水砕スラグ製造工程における急冷処理後、生成した水砕スラグを分離・回収した直後、製鉄所内の屋外に設置した水槽(開放型水槽)に貯水して一定時間放置した場合の高炉吹製水のpH変化を示す図である。図中、「急冷処理4時間後」は、上記の如く高炉吹製水を水槽に貯水して4時間放置した場合の結果である。また、図中、「循環3日」、「循環20日」は、高炉吹製水を急冷処理に3日間または20日間循環使用したのち、上記の如く高炉吹製水を水槽に貯水して4時間放置した場合の結果である。なお、高炉吹製水を急冷処理に循環使用するに際しては、急冷処理後の高炉吹製水を、製鉄所内の屋外に設置した水槽(開放型水槽)に貯水して4時間程度放置したのち、次の急冷処理に使用するサイクルを繰り返した。
図1に示すように、急冷処理直後の高炉吹製水(pH11)は、循環使用の有無に拘わらず、製鉄所内の屋外に設置した水槽(開放型水槽)に貯水して一定時間放置することで、pHが自然に8未満に低下している。
なお、高炉吹製水のpHが8以上から8未満まで低下するまでに要する時間は、高炉水冷水の温度(或いは外気温度)や容量、高炉溶融スラグ量等に依存する。例えば、急冷処理用の冷却水として1〜2日間循環利用した高炉吹製水(最終急冷処理直後の温度:約98℃)を、最終急冷処理後、製鉄所内の屋外に設置した上部開放型の2000m3程度の水槽に貯水する場合には、0.5〜4h程度放置すればpH8未満の高炉吹製水が得られる。
また、上記では、高炉吹製水を屋外に設置した上部開放型の水槽に貯水して放置する手段について述べたが、本発明はこれに限定されず、屋内に設置した水槽に貯水して放置してもよいし、密閉型の水槽に貯水してもよい。
以上のように、急冷処理に使用した直後の高炉吹製水のpH値(8〜11程度)は、大気中に一定時間放置することで8未満に低下する。このpH値の低下は、一定時間放置することにより高炉吹製水中の硫黄酸化菌が、高炉吹製水に含有される還元性硫黄成分を酸化して、硫酸等の酸が生成されることによるものである。すなわち、高炉吹製水のpH低下現象は、高炉吹製水に存在する硫黄酸化菌の増加量、ならびに高炉吹製水の硫黄酸化能(脱硫能)を評価する指標とすることができる。
したがって、高炉溶融スラグに少なくとも1回以上接触させてpHが8以上に上昇した高炉吹製水を、空気に曝露し、そのpHを8未満に低下させることによって、高炉吹製水の脱硫能、すなわち還元性硫黄成分を酸化する能力が向上する。ここで、還元性硫黄成分とは、酸化数が−2〜+4の硫黄原子を有する化合物をいう。
急冷処理直後の高炉吹製水に比べ、大気中に一定時間放置した高炉吹製水のpHが大きく低下する理由としては、大気中に一定時間放置することにより、高炉吹製水に存在する硫黄酸化菌が大幅に増加することが推測される。また、急冷処理直後の高炉吹製水に比べ、大気中に一定時間放置した高炉吹製水のほうが硫黄酸化菌を多く含む理由は定かではないが、急冷処理直後の高炉吹製水を大気中に一定時間放置することで、硫黄酸化菌が増殖することが推測される。また、急冷処理に使用した直後の高いpH値を示す高炉吹製水を、大気中に一定時間(約1〜72h)放置する過程において、自然界(大気中)に存在する硫黄酸化能力を有する複数種類の細菌が混入することも推測される。
なお、図1中、「対照:ろ液」は、高炉水砕スラグ製造工程における急冷処理後、生成した水砕スラグを分離・回収した直後の高炉吹製水を、ろ過処理し、ろ過処理後の高炉吹製水を製鉄所内の屋外に設置した水槽(開放型水槽)に貯水して4時間放置した場合の結果である。図1に示すように、ろ過処理を施した高炉吹製水のpH低下量は、ろ過処理を施さなかった高炉吹製水のpH低下量よりも小さい。この理由は、ろ過処理を施すことにより高炉吹製水が除菌された結果、高炉吹製水に含有される還元性硫黄成分の酸化反応が生じなかったためである。
固液接触処理
固液接触処理では、鉄鋼スラグに、上記の如き菌含有液を接触させる。鉄鋼スラグに菌含有液を接触させると、菌含有液に含まれる硫黄酸化菌の硫黄酸化能により、鉄鋼スラグに含まれる還元硫黄成分が酸化し、硫化物イオンとして菌含有液に溶出する。これにより、鉄鋼スラグに含まれる還元硫黄成分が、効果的に除去される。
鉄鋼スラグに菌含有液を接触させる方法は、特に限定されない。例えば、処理槽、タンク、カラムといった容器内で鉄鋼スラグと菌含有液とを混合したり、鉄鋼スラグを積み重ねてヒープとし、菌含有液をヒープに散布したり、流入させたりする方法が挙げられる。
固液接触処理時のその他の条件についても特に限定されず、菌含有液に含まれる硫黄酸化菌の種類に応じ、硫黄酸化菌が増殖する条件や硫黄酸化菌の硫黄酸化能をより活性化するような条件(菌含有液の温度、処理雰囲気等)を適宜設定すればよい。例えば菌含有液として高炉溶融スラグの急冷処理を1回以上施した後の高炉吹製水を用いる場合、固液接触処理開始時における高炉吹製水の温度を15℃以上80℃以下の範囲内とすることが好ましい。より好ましくは40℃以上80℃以下である。
固液接触処理開始時における高炉吹製水の温度を上げると、硫黄の酸化速度が高くなり脱硫効果は向上する。しかしながら、先述のとおり、急冷処理後一定時間放置した高炉吹製水の温度は通常80℃以下である。それゆえ、固液接触処理開始時における高炉吹製水の温度を80℃超とするには、高炉吹製水用の加熱設備やエネルギーが必要となり、処理コストが高くなる。一方、固液接触処理開始時における高炉吹製水の温度を80℃以下とする場合には、特別な加熱処理等を必要とせず、コスト面で有利である。また、固液接触処理開始時における高炉吹製水の温度が15℃以上であれば、所定の脱硫効果が得られる。
また、固液接触処理中、高炉吹製水の温度は15℃以上80℃以下の範囲に管理することが好ましい。高炉吹製水の温度が15℃未満では、脱硫効果の低下が懸念される。一方、高炉吹製水が高温になるほど硫黄の酸化速度が高くなり高い脱硫効果が期待できるが、高炉吹製水の温度が80℃を超えると、上記と同様の理由により処理コストが嵩む。したがって、本発明では、固液接触処理時、高炉吹製水を15℃以上80℃以下の温度範囲に管理しながら、鉄鋼スラグに接触させることが好ましい。より好ましくは40℃以上80℃以下である。なお、高炉吹製水の温度の管理方法は、特に限定されず、従来公知の方法を使用することができる。
更に、高炉吹製水を、酸素存在下で、上記した所定の温度範囲に管理しながら鉄鋼スラグに接触させることが好ましい。
酸素存在下とは、高炉吹製水の表面および/または内部が酸素に接触している状態をいう。酸素は100%酸素ガスでもよいし、空気等の酸素含有ガス中の酸素でもよい。酸素含有ガス中の酸素分圧は特に限定されないが、大きいほど好ましい。高炉吹製水の表面および/または内部が酸素と接触する方法は特に限定されず、高炉吹製水の表面を空気に曝したり、高炉吹製水を撹拌して内部に空気を取り込ませたり、および/または高炉吹製水の内部に空気を吹き込んだりすることができる。
硫黄酸化菌は、酸化条件下にて硫黄または硫黄化合物を酸化することで、生息に必要なエネルギーを確保している。したがって、以上のように、高炉吹製水を、酸素存在下に管理しながら鉄鋼スラグに接触させると、高炉吹製水に存在する硫黄酸化菌が活性化し、これに伴い鉄鋼スラグの硫黄除去効率が向上する。
固液接触処理の開始時における菌処理液のpHは特に限定されないが、8.0以下であることが好ましい。pH8.0以下では、菌処理液中の硫黄酸化菌が活発に硫酸を生成することができる状態となり、硫黄酸化能がより高くなると推測されるためである。また、固液接触処理の間における菌処理液のpHは特に限定されず、管理しなくてもよい。但し、菌含有液に含まれる菌が、アルカリ性の雰囲気で硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌である場合には、固液接触処理の開始時における菌処理液のpHを10以上としてもよい。このように、菌処理液をアルカリ性にすると、固液接触処理中における硫化水素ガスの発生を抑制することができる。
例えば、菌処理液として高炉吹製水を使用する場合には、固液接触処理の間における高炉吹製水のpHを12未満とすることが好ましい。このpH範囲であれば、高炉吹製水に含まれる硫黄酸化菌の硫黄酸化活性が増強するため、鉄鋼スラグの脱硫が促進される。また、高炉吹製水は、アルカリ性の雰囲気で硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌を含んでいる。したがって、硫化水素ガスの発生を抑制する観点からは、固液接触処理の間における高炉吹製水のpHを8以上12未満とすることが好ましい。高炉吹製水のpHは、例えば、酸やアルカリ剤の添加、酸性またはアルカリ性ガスの溶解によって調整することができる。
なお、固液接触処理を施すに際し、菌含有液の容量と鉄鋼スラグの質量との関係や、高炉吹製水と硫黄を含有するスラグとの接触時間は、特に限定されない。
本発明では、鉄鋼スラグの脱硫効率をより一層高める目的で、例えば固液接触処理前や固液接触処理中の菌含有液に、菌の栄養成分を添加することが好ましい。また、後述するように固液接触処理後の菌含有液を再利用する場合には、固液接触処理前や固液接触処理中に限らず、固液接触処理後、再利用前において菌含有液に菌の栄養成分を添加してもよい。
菌の栄養成分とは、主に細菌用培地に使用される成分の少なくとも1種類の成分をいい、硫黄酸化菌用の栄養成分としては、例えば還元性の硫黄成分や、窒素、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、コバルト、ニッケル、ホウ素、モリブデン、銅などの成分、ならびにこれらの混合物などが挙げられる。なお、上記還元性の硫黄成分としては、例えば、分子硫黄(S)、硫化物イオン(S2-)、チオ硫酸イオン(S2O3 2-)、亜硫酸イオン(SO3 2-)、ジチオン酸イオン(S2O6 2-)およびこれらの塩、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
以上のように、菌含有液に菌の栄養成分を添加すると、菌含有液中に含まれる硫黄酸化菌を培養することができる。したがって、菌含有液の硫黄酸化能(脱硫能)を持続させることができ、鉄鋼スラグの脱硫効率がより一層向上する。
また、前記固液接触処理前に、鉄鋼スラグを二酸化炭素または炭酸塩で処理してもよい。前記固液接触処理前の鉄鋼スラグを、CO2またはCO2含有ガス、もしくはCO2ガスを溶解させた水、もしくは炭酸ナトリウムや炭酸カルシウムなどの炭酸塩雰囲気下で処理すると、固液接触処理におけるスラグの脱硫効果がより一層向上する。
具体的な処理方法としては、例えば工業用水に二酸化炭素を吹き込んだ水で鉄鋼スラグを洗浄する方法などが挙げられる。この洗浄方法は特に限定されないが、例えば、処理槽、タンク、カラムなどの容器内でスラグと二酸化炭素を溶解させた水とを混合したり、スラグを積み重ねてヒープとし、二酸化炭素を溶解させた水をヒープに散布したり、流入させたりする方法が挙げられる。また、炭酸塩としては、炭酸ナトリウムや炭酸カルシウムの他、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等も使用することができる。
硫黄酸化菌は、酸化条件下にて硫黄または硫黄化合物を酸化し、その酸化エネルギーを利用して無機炭化物(例えば空気中の二酸化炭素)から有機物を合成することで増殖する。したがって、本発明において、固液接触処理前に、鉄鋼スラグを二酸化炭素または炭酸塩で処理すると、硫黄酸化菌の増殖に必要となる炭素源が供給されるため、固液接触処理時に硫黄酸化菌が増殖する。これに伴い、固液接触処理時に硫黄酸化反応が促進して硫黄酸化能(脱硫能)が向上する。
また、固液接触処理時、特に固液接触処理の初期段階では、鉄鋼スラグのカルシウム成分が菌含有液に溶出することで菌含有液のpHが12以上に上昇し、硫黄酸化菌の酸化能が低下する傾向にある。このような問題に対しても、固液接触処理前に、鉄鋼スラグを二酸化炭素または炭酸塩で処理することが効果的である。鉄鋼スラグから溶出するカルシウム成分が、炭酸カルシウムとして鉄鋼スラグ表面に固定することによって、更なるスラグからのカルシウムの溶出が抑制されてpHが12未満に調整され、高炉吹製水の酸化能(脱硫能)が大幅に改善される効果が期待できるためである。
前記固液接触処理後に、さらに、前記菌含有液と接触させた後の鉄鋼スラグと前記菌含有液とを分離する固液分離処理を施してもよい。固液分離処理方法としては、沈降分離、膜分離、その他従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、鉄鋼スラグをヒープとした場合には、ヒープの下から菌含有液を流出させるだけでもよい。また、前記固液接触処理および前記固液分離処理は、少なくとも1回は繰り返すことが好ましい。この2つの処理を繰り返すことで、鉄鋼スラグが含有する硫黄成分をより多く除去処理することができる。また、前記固液接触処理および前記固液分離処理を繰り返す場合には、固液分離処理において分離した菌含有液を回収し、固液接触処理において菌含有液として再利用することが好ましい。再利用することによって、更なる低コスト化を図ることができる。
上記の如く回収した菌含有液を再利用する場合には、再利用する前に、回収後の菌含有液に還元性の硫黄成分や、窒素、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、コバルト、ニッケル、ホウ素、モリブデン、銅などの成分を添加することで、菌含有液の硫黄酸化能力を向上することができる。また、菌含有液として高炉吹製水を使用する場合には、再利用する前に、回収後の高炉吹製水を少なくとも1回はpH8.0以上で空気に曝露した後、そのpHを8.0未満に低下させることによっても、高炉吹製水の硫黄酸化能力を向上することができる。
なお、先述のとおり、固液接触処理において、鉄鋼スラグに菌含有液を接触させると、鉄鋼スラグ中の還元硫黄成分が酸化して硫酸イオンとして菌含有液に溶出するとともに、鉄鋼スラグ中のカルシウムなどの成分も菌含有液に溶出する。このように菌含有液に溶出した硫酸イオンとカルシウムなどの成分とは、結合してCaSO4をはじめとする硫酸塩になる。また、菌含有液として高炉吹製水を用いる場合には、高炉吹製水がもともと含有する硫酸イオンも、スラグから溶出したカルシウムと結合してCaSO4になる。ここで、固液接触処理においてスラグと接触させる菌含有液の量が多くなり過ぎると、生成したCaSO4をはじめとする硫酸塩が鉄鋼スラグ表面に過剰に付着することがある。したがって、固液接触処理において、スラグと接触させる菌含有液の量が多くなり過ぎると、表面にCaSO4が付着したスラグ、すなわち硫黄含有量の比較的高いスラグが生成する場合がある。
表面にCaSO4が付着した鉄鋼スラグを除去するうえでは、固液分離処理で分離した鉄鋼スラグを篩い分けすることが有効である。本発明者らが、固液分離処理で分離した鉄鋼スラグについて、粒度ごとに硫黄含有量を調査した結果、微粒であるほど硫黄含有量が高く、粗粒であるほど硫黄含有量が低い傾向にあることが確認された。したがって、固液分離処理で分離した鉄鋼スラグを、所定の目開きの篩を用いて篩い分けすることにより、固液分離処理で分離した鉄鋼スラグのうち、硫黄含有量の高い微粒の鉄鋼スラグを除去することができる。
上記篩い分けに使用する篩の目開きは、0.5mm以下とる。このように篩い分けして細粒を除去することにより、固液分離処理で分離した鉄鋼スラグから、硫黄含有量の低い鉄鋼スラグのみを抽出・回収することができる。
なお、固液分離処理で分離した鉄鋼スラグが微粒であるほど硫黄含有量が高くなる理由は定かではないが、再結晶したCaSO4が微粒になることがその理由として考えられる。
また、上記の如く一旦鉄鋼スラグから溶出した硫酸態等の硫黄成分が再度鉄鋼スラグ表面に付着すると、鉄鋼スラグからの脱硫効率が低下する。この脱硫効率の低下現象を抑制するには、前記固液接触処理後に、菌含有液と接触させた後の鉄鋼スラグに水を接触させて、該鉄鋼スラグを水洗する水洗処理を施すことが好ましい。菌含有液と接触させた後の鉄鋼スラグに水洗処理を施すと、表面に付着したCaSO4が洗浄・除去される結果、鉄鋼スラグの脱硫が促進される。
なお、上記水洗処理は、固液接触処理後のいずれの段階で行ってもよい。例えば、固液接触処理に続き水洗処理を行ってもよいし、固液接触処理の次工程である固液分離処理に続き水洗処理を行ってもよい。また、前記篩い分け、水洗処理のいずれか一方を実施することにより鉄鋼スラグの硫黄含有量を十分に低減することができるが、固液分離処理で分離した鉄鋼スラグを篩い分けして微粒を除去した後の鉄鋼スラグに水洗処理を施してもよい。
水洗処理で鉄鋼スラグに接触させる水には、蒸留水や工業用水など通常の水を用いることが好ましい。なお、菌含有液と接触させた後の鉄鋼スラグに水を接触させる手段は特に問わず、処理槽、タンク、カラムといった容器内において、菌含有液と接触させた後の鉄鋼スラグと水とを混合したり、菌含有液と接触させた後の鉄鋼スラグに散水する方法等を例示することができる。菌含有液と接触させた後の鉄鋼スラグを積み重ねてヒープとし、該ヒープに散水したり、水を流入する方法でもよい。
また、鉄鋼スラグをカラムに充填し、該カラムに菌含有液を通液したのち(すなわち、鉄鋼スラグを菌含有液と接触させたのち)、水(蒸留水、工業用水等)を通水する方法を採用することもできる。このような場合には、鉄鋼スラグに対する菌含有液の重量比(通液する菌含有液の質量/鉄鋼スラグの質量)が10以上200以下程度になるまで菌含有液を通液したのち、通液を停止して水の通水を開始し、鉄鋼スラグに対する水の重量比(通水する水の質量/鉄鋼スラグの質量)が5以上200以下程度になるまで通水することが好ましい。
水洗処理時、菌含有液と接触させた後の鉄鋼スラグに水を接触させる際には、水の温度を管理する必要はないが、温度が高い方がCaSO4は洗浄・除去されやすい。
前記水洗処理後に、さらに、水洗後の鉄鋼スラグから水洗に用いた水を除去する脱水処理を施してもよい。脱水処理方法としては、沈降分離、膜分離、その他従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、水洗処理において、菌含有液と接触させた後の鉄鋼スラグを積み重ねてヒープとし、該ヒープに散水したり、水を流入させたりした場合には、ヒープの下から水を流出させるだけでもよい。
また、脱水処理後に得られる鉄鋼スラグから、表面にCaSO4が付着した鉄鋼スラグを除去する目的で、脱水処理で脱水した鉄鋼スラグを篩い分けして細粒を除去してもよい。上記篩い分けに使用する篩の目開きは、0.5mm以下とる。
前記固液接触処理、前記水洗処理および前記脱水処理の各処理は、それぞれ1回ずつ行えばよいが、各処理を少なくとも1回は繰り返すことが好ましい。これらの処理を繰り返すことで、鉄鋼スラグが含有する硫黄成分をより多く除去処理することができる。
なお、繰り返しの形態は特に限定されず、例えば、固液接触処理、水洗処理および脱水処理の各処理を1回以上順次繰り返してもよいし、固液接触処理と水洗処理を1回以上繰り返したのち、脱水処理を行ってもよい。更に、脱水処理後に得られる鉄鋼スラグを篩い分けする処理を行う場合には、例えば固液接触処理、水洗処理、脱水処理および篩い分け処理を、1回以上順次繰り返してもよい。
また、固液分離処理後に水洗処理を施す場合も同様に、各処理をそれぞれ1回ずつ行えばよいが、各処理を少なくとも1回は繰り返すことが好ましい。この場合も、繰り返しの形態は特に限定されず、例えば、固液接触処理、固液分離処理、水洗処理および脱水処理の各処理を1回以上順次繰り返してもよいし、固液接触処理と固液分離処理を1回以上繰り返したのち、水洗処理および脱水処理を行ってもよい。また、固液接触処理、固液分離処理および水洗処理を1回以上順次繰り返したのち、脱水処理を行ってもよい。更に、脱水処理後に得られる鉄鋼スラグを篩い分けする処理を行う場合には、例えば固液接触処理、固液分離処理、水洗処理、脱水処理および篩い分け処理を、1回以上順次繰り返してもよい。
先ず、高炉吹製水中に還元性硫黄成分を酸化する能力を有する細菌(硫黄酸化菌)が存在することを検証すべく、以下の実験1、実験2により検証を行った。
実験1:高炉吹製水を空気に曝露した場合のpH変化
高炉吹製水を、以下の方法にしたがい3ロット(高炉吹製水1〜3)準備し、これらを空気中に曝露(大気中に放置)してpH変化を測定した。
<高炉吹製水1>
高炉から排出された溶融スラグ(高炉溶融スラグ)に、高圧水(冷却水)を噴射して急冷処理を施して水冷スラグを製造した後、生成した水砕スラグと冷却水とを分離し、該冷却水を大気に接触する条件で一定時間(0.5〜4h)放置して80℃以下になるように冷却したのち、急冷処理に使用する加圧水として再利用した。以上のようなサイクルで高炉吹製水(冷却水)の循環利用を20日間継続したのち、最終サイクルの急冷処理後の高炉吹製水(冷却水)を、水冷スラグから分離・回収した。次いで、水冷スラグから分離・回収した高炉吹製水を、製鉄所内の屋外に設置した上部開放型の貯水槽に貯水することで大気に接触する状態とし、この状態で4時間放置したのち、高炉吹製水を採取した。
<高炉吹製水2>
高炉から排出された溶融スラグ(高炉溶融スラグ)に、高圧水(冷却水)を噴射して急冷処理を施して水冷スラグを製造した後、生成した水砕スラグと冷却水とを分離し、該冷却水を大気に接触する条件で一定時間(0.5〜4h)放置して80℃以下になるように冷却したのち、急冷処理に使用する加圧水として再利用した。以上のようなサイクルで高炉吹製水(冷却水)の循環利用を3日間継続したのち、最終サイクルの急冷処理後の高炉吹製水(冷却水)を、水冷スラグから分離・回収した。次いで、水冷スラグから分離・回収した高炉吹製水を、製鉄所内の屋外に設置した上部開放型の貯水槽に貯水することで大気に接触する状態とし、この状態で4時間放置したのち、高炉吹製水を採取した。
<高炉吹製水3>
高炉から排出された溶融スラグ(高炉溶融スラグ)に、高圧水を噴射して急冷処理を施して水冷スラグを製造した後、急冷処理後の高炉吹製水(高圧水)を、水冷スラグから分離・回収した。次いで、水冷スラグから分離・回収した高炉吹製水を、製鉄所内の屋外に設置した上部開放型の貯水槽に貯水することで大気に接触する状態とし、この状態で4時間放置したのち、高炉吹製水を採取した。
各高炉吹製水に、終濃度:10mMとなるようにチオ硫酸ナトリウムを添加し、更に、KNO3:5mM、K2HPO4:0.1g/L、MgCl2:50μM、表1に示す微量金属溶液:1mL/Lとなるように各成分を添加して、菌の栄養成分を含む高炉吹製水をそれぞれ調製した。調製した各高炉吹製水に、水酸化ナトリウムおよび塩酸を添加して各高炉吹製水のpHを10〜11に調整した。次いで、各高炉吹製水を2つに分け、一方をそのまま(未ろ過)、他方を最終的に孔径0.22μmのメンブレンフィルターを用いてろ過し、供試サンプルとした。
Figure 0005954265
各供試サンプルを、曝気しながら、70℃で1週間保持した。保持開始時(0日)、保持中および保持終了時(7日)に、それぞれ、少なくとも1回ずつ、供試サンプルのpHを測定した。各供試サンプルのpH測定結果を、表2および図2に示す。
Figure 0005954265
ろ過した供試サンプルは、保持終了時(7日)にpH8.0以上であった。これに対し、ろ過しなかった供試サンプルは、保持終了時にpH8.0未満であった。すなわち、ろ過しなかった供試サンプルでは、ろ過した供試サンプルでみられる自然酸化によるpH低下を大きく超えるpH低下が観察された。
以上の結果から、ろ過しなかった供試サンプルの高炉吹製水には、硫黄酸化菌が存在することが推定される。そして、ろ過しなかった供試サンプルでは、硫黄酸化菌が高炉吹製水に含有される還元性硫黄成分(チオ硫酸ナトリウム)を酸化して、硫酸等の酸が生成されることによりpHが大幅に低下したものと推定される。一方、ろ過した供試サンプルの高炉吹製水では、ろ過することで硫黄酸化菌が除去された結果、自然酸化によるpH低下しか示さなかったものと推定される。すなわち、高炉吹製水中に硫黄または硫黄化合物を酸化する能力を有する細菌(硫黄酸化菌)が存在することが推定される。
実験2:高炉吹製水の細菌分析
実験1の結果から、高炉吹製水に硫黄酸化菌が存在することが推測される。また、実験1に示すように、高炉吹製水を空気に気曝すると、pHが経時的に低下し、約6以下にまで低下する。そこで、以下の方法にしたがい、馴養高炉吹製水および非馴養高炉吹製水を調製し、これらを曝気しながらpH変化を測定するとともに、pH11からpH6までの任意の点において各高炉吹製水から試料を採取し、PCR−DGGE解析を行うことで細菌叢の解明を試みた。
<馴養高炉吹製水の調製方法>
高炉吹製水に、還元性硫黄成分としてチオ硫酸ナトリウムを終濃度:10mMになるように添加し、更に、KNO3:5mM、K2HPO4:0.1g/L、MgCl2:50μMおよび表1に示す微量金属溶液:1mL/Lになるように各成分を添加し、菌の栄養成分を含む高炉吹製水2Lを調製した。その後、水酸化ナトリウムおよび塩酸を用いてpHを11に調整したのち、曝気しながら70℃で1週間保持し、馴養して馴養高炉吹製水とした。
<非馴養高炉吹製水の調製方法>
高炉吹製水2Lを、水酸化ナトリウムおよび塩酸を用いてpHを11に調整し、非馴養高炉吹製水とした。
なお、馴養高炉吹製水および非馴養高炉吹製水の調製に用いた高炉吹製水は、前記実験1の高炉吹製水2と同じ高炉吹製水、すなわち、高炉から排出された溶融スラグ(高炉溶融スラグ)の急冷処理用の冷却水として3日間循環利用したのち、水冷スラグから分離・回収し、製鉄所内の屋外に設置した上部開放型の貯水槽に貯水し、4時間放置した高炉吹製水である。
<PCR−DGGE解析方法>
馴養高炉吹製水および非馴養高炉吹製水を、それぞれ曝気しながら、70℃で2週間保持した。保持中、各高炉吹製水のpHを経時的に測定し、馴養高炉吹製水においてはpHが11、10、8、7および6の時に、非馴養高炉吹製水においてはpHが10.5、9、8.5、7.5および6.5の時に、それぞれサンプリングを行った。サンプリングした各高炉吹製水を試料として、プライマー341F(配列番号1)およびプライマー907R−GC(配列番号2;プライマー907R(配列番号3)の5’末端にGCクランプを付加したもの)を用いてPCR反応を行い、得られたPCR産物をDGGE解析(例えば、Ishii and Fukui, 2001, Applied and Environmental Microbiology, 67(8): 3753-3755 を参照)に供した。DGGE解析の結果を図3に示す。
図3の(a)は馴養高炉吹製水のDGGE解析結果であり、図3の(b)は非馴養高炉吹製水のDGGE解析結果である。図3に示すように、馴養高炉吹製水(a)のpH11および10でサンプリングした試料からはほぼ同一のバンドパターンが確認されたが、非馴養高炉吹製水(b)のpH10.5および9でサンプリングした試料からは、バンドが検出されなかった。これは、馴養したことによって、pH11またはpH10で生育する細菌が増殖したことによるものと推測される。
一方、馴養高炉吹製水および非馴養高炉吹製水のいずれにおいても、pH9未満でサンプリングした試料からは、複数のバンドパターンが確認された。この結果は、高炉吹製水中には、複数種類の細菌が存在することを強く示唆する。
また、pH11の馴養高炉吹製水から採取した試料のPCR−DGGE解析で得られたゲルから、バンドを切り出し、PCR産物を分離精製した。このPCR産物を、プライマー341Fまたはプライマー907Rを用いてダイレクトシークエンシングすることによって、16S rDNA部分塩基配列を得た。
この塩基配列をクエリー配列として、GenBankデータベースに対してBLAST検索を行った結果、Thermus scotoductusならびにHydrogenobacter sp.と同定された。Thermus scotoductusは、好気性、混合栄養性のグラム染色陰性桿菌であり、生育至適温度65℃、生育至適pH7.5、pH10.5でも生育すると報告されている(Kristjansson et al., 1994, Systematic and Applied Microbiology, 17(1): 44-50参照)。また、本菌種は硫黄酸化性であることも報告されている(Skirnisdottir et al., 2001, Extremophiles, 5: 45-51参照)。
次に、本発明による鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法の効果を検証すべく、以下の実施例1、実施例2、実施例3および実施例4により検証を行った。
実施例1:鉄鋼スラグからの硫黄除去実験(バッチ処理)
以下の方法にしたがい、処理液1(本発明例)、処理液2(比較例)、処理液3(本発明例)、処理液4(本発明例)、および処理液5(本発明例)を調製し、各処理液と脱硫スラグとを接触させ(固液接触処理)、脱硫スラグの硫黄除去処理を行った。
<処理液の調製方法>
処理液1
高炉吹製水(菌含有液)に、KNO3:5mM、K2HPO4:0.1g/L、MgCl2:50μMおよび表1に示す微量金属溶液:1mL/Lとなるように各成分を添加して、菌の栄養成分を含む高炉吹製水2Lを調製し処理液1(本発明例)とした。なお、処理液1の調製に用いた高炉吹製水は前記実験1の高炉吹製水2と同じ高炉吹製水、すなわち高炉から排出された溶融スラグ(高炉溶融スラグ)の急冷処理用の冷却水として3日間循環利用したのち、水冷スラグから分離・回収し、製鉄所内の屋外に設置した上部開放型の貯水槽に貯水し、4時間放置した高炉吹製水である。
処理液2
KNO3:5mM、K2HPO4:0.1g/L、MgCl2:50μMおよび表1に示す微量金属溶液:1mL/Lを含む溶液2Lを作成し処理液2(比較例)とした。処理液2は、上記高炉吹製水(菌含有液)を添加しないただの栄養溶液である。
処理液3
アルカリ性硫黄酸化細菌Thioalkalivibrio jannaschii(JCM 11372株)を、Na2CO3:90g/L、NaHCO3:20g/L、NaCl:12g/L、KNO3:5mM、MgCl2:0.02mass%、Na2S2O3:40mMおよび表1に示す微量金属溶液:1mL/Lを含有するpH10の溶液で培養・増殖させたのち、細菌を分離回収した。次いで、KNO3:5mM、K2HPO4:0.1g/L、MgCl2:50μMおよび表1に示す微量金属溶液:2mLを含む栄養溶液2Lに、分離回収した上記細菌を添加したもの(菌含有液)を、処理液3(本発明例)とした。
処理液4
中性硫黄酸化細菌であるThiobacillus thioparus(JCM3859株)を、KH2PO4:1.5g/L、NaHPO4:4.5g/L、NH4Cl:0.3g/L、MgSO4・7H2O:0.1g/L、Na2S2O3:1mass%および表1に示す微量金属溶液:1mL/Lを含有するSM培地(pH7.5)で培養・増殖させたのち、細菌を分離回収した。次いで、KNO3:5mM、K2HPO4:0.1g/L、MgCl2:50μMおよび表1に示す微量金属溶液:2mLを含む栄養溶液2Lに、分離回収した上記細菌を添加したもの(菌含有液)を、処理液4(本発明例)とした。
処理液5
前記実験1の高炉吹製水2と同じ高炉吹製水、すなわち高炉から排出された溶融スラグ(高炉溶融スラグ)の急冷処理用の冷却水として3日間循環利用したのち、水冷スラグから分離・回収し、製鉄所内の屋外に設置した上部開放型の貯水槽に貯水し、4時間放置した高炉吹製水を5L用意し、遠心分離によって高炉吹製水中に存在する細菌を分離回収した。次いで、KNO3:5mM、K2HPO4:0.1g/L、MgCl2:50μMおよび表1に示す微量金属溶液:2mLを含む栄養溶液2Lに、分離回収した上記細菌を添加したものを、処理液5(本発明例)とした。
<固液接触処理>
上記処理液1(1000mL)および処理液2(1000mL)の各々に、鉄鋼スラグとして粉砕した後に非金属製の4mm目のふるいを全通させた脱硫スラグ100gを添加して、曝気しながら7日間保持した。曝気保持中、処理液のpHが12以上になりそうになった時には塩酸を添加することで、各処理液のpHが12以上にならないように調整した。また、曝気保持中、各処理液の温度を60℃±5.0℃に管理した。
曝気開始時(0日)、および曝気開始から所定時間経過後(保持時間:1日、3日、5日、7日)に、各処理液のpHを測定した。また、曝気開始から所定時間経過後(保持時間:1日、5日、7日)に、処理液1の硫黄化合物濃度(SO4 2-濃度およびS2O3 2-濃度)を測定した。
各処理液のpH測定結果および硫黄化合物濃度の測定結果を、表3、表4、図4および図5に示す。
Figure 0005954265
Figure 0005954265
表3および図4に示すように、処理液1を用いて脱硫スラグを処理した場合、保持終了時(7日)の処理液1のpHはpH8.0未満にまで低下していた。一方、細菌を含有しない処理液2を用いて脱硫スラグを処理した場合、保持終了時(7日)の処理液2のpHはpH8.0以上であった。
以上のように、高炉吹製水に栄養溶液を添加することで、栄養溶液のみでみられる自然酸化によるpH低下を大きく超えるpH低下が観察された。これは、高炉吹製水中の硫黄酸化菌がスラグからの脱硫を促進し、処理液中の硫黄酸化物(硫酸イオンなど)の濃度が高くなったためと考えられる。
また、表4および図5は、固液接触処理時の処理液1の硫黄化合物濃度(SO4 2-濃度およびS2O3 2-濃度)を示し、保持時間が経過するにつれてSO4 2-濃度は増加し続ける一方、S2O3 2-濃度は5日付近で低下する傾向が確認された。
以上の結果から、自然酸化によるpH低下を大きく超えるpH低下は、高炉吹製水中に存在する硫黄酸化能力を有する複数種類の細菌のうちのいくつかにより、脱硫スラグに含まれる硫黄成分が、S2O3 2-等の還元性硫黄成分として溶出した後に、SO4 2-に酸化されたことによるものと推測される。
また、固液接触処理前の脱硫スラグの硫黄含有量を以下の方法で分析したところ、1.5mass%であった。
<脱硫スラグの硫黄含有量の分析方法>
脱硫スラグを微粉砕後、試料(微粉砕後の脱硫スラグ)を加湿燃焼分解させる燃焼装置とイオンクロマトグラフを接続させた燃焼−イオンクロマトグラフシステムで、上記スラグの硫黄含有量を分析した。
そして、7日間の固液接触処理後における脱硫スラグの硫黄含有量を、上記と同様の方法で分析した。
その結果、細菌を含有しない処理液2を用いて脱硫スラグを処理した場合の硫黄含有量は1.2 mass%であった。これに対し、高炉吹製水を含有する処理液1を用いて脱硫スラグを処理した場合の硫黄含有量は0.7mass%にまで減少していた。
また、上記処理液3(1000mL)、処理液4(1000mL)および処理液5(1000mL)の各々にも、処理液1、2と同一条件で脱硫スラグと接触させ、保持時間:0日、7日の各処理液のpHを測定した。これらの結果を、表5に示す。
Figure 0005954265
表5に示すように、アルカリ性硫黄酸化細菌Thioalkalivibrio jannaschiiを含有する処理液3(本発明例)および高炉吹製水中の細菌を含む処理液5を用いて脱硫スラグを処理した場合、保持終了時(7日)の処理液3および処理液5のpHはpH8.0未満にまで低下していた。一方、中性硫黄酸化細菌であるThiobacillus thioparusを含有する処理液4(本発明例)を用いて脱硫スラグを処理した場合、保持終了時(7日)の処理液4のpHはpH8.0以上であった。以上のように、アルカリ性硫黄酸化細菌Thioalkalivibrio jannaschiiを含有する処理液3や高炉吹製水中の細菌を含む処理液5では、中性硫黄酸化細菌Thiobacillus thioparusを含有する処理液4でみられるpH低下を大きく超えるpH低下が観察された。
また、処理後の脱硫スラグ中の硫黄含有量を測定した結果、アルカリ性硫黄酸化細菌Thioalkalivibrio jannaschiiを含有する処理液3を用いて脱硫スラグを処理した場合の硫黄含有量は0.8mass%にまで、また、高炉吹製水中の細菌を含む処理液5を用いて脱硫スラグを処理した場合の硫黄含有量は0.6mass%にまで減少していた。一方、中性硫黄酸化細菌であるThiobacillus thioparusを含有する処理液4を用いてスラグを処理した場合の硫黄含有量は1.1 mass%であった。このように、アルカリ性硫黄酸化細菌を含有する処理液3や高炉吹製水中の細菌を含む処理液5には劣るものの、中性硫黄酸化細菌を含有する処理液4の場合も、一定の脱硫効果が確認された。
実施例2:高炉吹製水を異なるpHに調整した場合の硫黄酸化効率
高炉吹製水中の硫黄酸化菌の還元性硫黄成分を酸化する効率に対するpHの影響を調査した。
高炉から排出された溶融スラグ(高炉溶融スラグ)に、高圧水を噴射して急冷処理を施して水冷スラグを製造した後、生成した水砕スラグと冷却水とを分離し、該冷却水を大気に接触する条件で一定時間(4h)放置して80℃以下になるように冷却したのち、急冷処理に使用する加圧水として再利用した。以上のようなサイクルで高炉吹製水(冷却水)の循環利用を3日間継続したのち、最終サイクルの急冷処理後の高炉吹製水(高圧水)を、水冷スラグから分離・回収した。次いで、水冷スラグから分離・回収した高炉吹製水を、製鉄所内の屋外に配置した上部開放型の貯水槽に貯水することで大気に接触する状態とし、この状態で4時間放置した後の高炉吹製水を採取した。
採取した高炉吹製水に、還元性硫黄成分(還元性硫黄化合物)としてチオ硫酸ナトリウムを終濃度10mMになるように添加し、更に、KNO3:5mM、K2HPO4:0.1g/L、MgCl2:50μM、表1に示す微量金属溶液:1mL/Lになるように各成分を添加し、栄養成分を含む高炉吹製水2Lを調製した。更に、水酸化ナトリウムおよび塩酸を用いてpHを4、7、9、11、12に調整し、様々なpHの高炉吹製水を用意した。
各高炉吹製水を、曝気しながら、70℃で2週間保持した。保持終了時に、各高炉吹製水の硫酸イオン濃度(SO4 2-濃度)を測定した。その結果を図6に示す。
図6に示すように、pH7〜11の高炉吹製水では硫酸イオンが生成したが、pH4ならびにpH12の高炉吹製水では硫酸イオン生成が抑制された。
以上の結果から、高炉吹製水の硫黄酸化菌は、pH12未満またはpH4超の範囲では、高炉吹製水に含有される還元性硫黄成分を酸化して硫酸等の酸を生成できることが明らかになった。したがって、実際に鉄鋼スラグの硫黄除去処理を施す場合においても、固液接触処理中の高炉吹製水のpHをpH12未満、pH4超の範囲に調整することが好ましいと云える。
また、上記の結果より、高炉吹製水に存在する硫黄酸化菌の中には、アルカリ性の雰囲気で硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌が含まれていることが確認できた。
実施例3:鉄鋼スラグからの硫黄除去実験(カラム処理1)
以下の方法にしたがい、菌含有液を調製し、菌含有液と脱硫スラグとを接触させ(固液接触処理)、脱硫スラグの硫黄除去処理を行った。
<菌含有液の調製方法>
高炉吹製水に、KNO3:5mM、K2HPO4:0.1g/L、MgCl2:50μMおよび表1に示す微量金属溶液:1mL/Lとなるように各成分を添加して、菌の栄養成分を含む菌含有液を調製した。
なお、上記処理液の調製に用いた高炉吹製水は、前記実験1の高炉吹製水2と同じ高炉吹製水、すなわち高炉から排出された溶融スラグ(高炉溶融スラグ)の急冷処理用の冷却水として3日間循環利用したのち、水冷スラグから分離・回収し、製鉄所内の屋外に設置した上部開放型の貯水槽に貯水し、4時間放置した高炉吹製水である。
<固液接触処理>
カラム(直径5cm、長さ20cm)に、鉄鋼スラグとして粉砕した後に非金属製の4mm目のふるいを全通させた脱硫スラグ100gを充填した。次いで、70℃に保温した上記菌含有液を流速25mL/hrでアップフロー通液した。通液は、脱硫スラグに対して用いる菌含有液の重量比が20に達するまで通液を継続した。
上記固液接触処理前および固液接触処理後の脱硫スラグの硫黄含有量を上記と同様の方法で分析したところ、処理前の硫黄含有量は1.5mass%であるのに対し、処理後の硫黄含有量は0.6mass%にまで減少していた。
実施例4:鉄鋼スラグからの硫黄除去実験(カラム処理2)
鉄鋼スラグとして粉砕した後に非金属製の4mm目のふるいを全通させた脱硫スラグ100gを充填したカラム(直径5cm、長さ20cm)を2本用意した。一方のカラム(カラムA)に充填した脱硫スラグは、固液接触処理を施すことにより、硫黄除去処理を行った。他方のカラム(カラムB)に充填した脱硫スラグは、固液接触処理後に水洗処理を施すことにより、硫黄除去処理を行った。各カラムの処理条件は、以下のとおりである。
<カラムA>
脱硫スラグを充填したカラムに、上記実施例3で調製した菌含有液であって70℃に保温した菌含有液を流速25mL/hrでアップフロー通液する処理(固液接触処理)を施すことにより、脱硫スラグの硫黄除去処理を行った。菌含有液の通液は、脱硫スラグに対して用いる菌含有液の重量比が200に達するまで通液を継続した。すなわち、カラムに充填した脱硫スラグの質量S(g)に対し、通液した菌含有液の質量L1(g)が、質量比L1/Sで200に達するまで通液を継続した。
<カラムB>
脱硫スラグを充填したカラムに、上記実施例3で調製した菌含有液であって70℃に保温した菌含有液を流速25mL/hrでアップフロー通液する処理(固液接触処理)を施したのち、通液を停止し、次いで、蒸留水を流速25mL/hrでアップフロー通水する処理(水洗処理)を施すことにより、脱硫スラグの硫黄除去処理を行った。菌含有液の通液は、カラムに充填した脱硫スラグの質量S(g)に対し、通液した菌含有液の質量L1(g)が質量比L1/Sで20に達した時点で停止した。また、蒸留水の通水は、カラムに充填した脱硫スラグの質量S(g)に対し、通液した菌含有液の質量L1(g)と通水した蒸留水の質量L2(g)の合計質量が質量比(L1+L2)/Sで200に達するまで継続した。
カラムAに充填した脱硫スラグについて、硫黄除去処理前(固液接触処理前)および硫黄除去処理後(固液接触処理後)の脱硫スラグの硫黄含有量を上記と同様の方法で分析したところ、硫黄除去処理前の硫黄含有量は1.5mass%であるのに対し、硫黄除去処理後の硫黄含有量は7.8mass%と逆に増加していた。
一方、カラムBに充填した脱硫スラグについて、硫黄除去処理前(固液接触処理前)および硫黄除去処理後(水洗処理後)の脱硫スラグの硫黄含有量を上記と同様の方法で分析したところ、硫黄除去処理前の硫黄含有量は1.5mass%であるのに対し、硫黄除去処理後の硫黄含有量は0.5mass%にまで減少していた。
更に、硫黄除去処理後の脱硫スラグをカラムAから回収し、回収した脱硫スラグを、風乾後、篩い分けして、粒度ごとに脱硫スラグの硫黄含有量を分析した。その結果、硫黄除去処理後の脱硫スラグのうち粒径が0.5mm以下の脱硫スラグは、硫黄含有量が25.2mass%であり、硫黄が濃縮されていることが明らかになった。

Claims (13)

  1. 鉄鋼スラグに、硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌を含む菌含有液として、高炉溶融スラグの急冷処理を1回以上施したpH8以上の高炉吹製水を、空気に曝露してpHを8未満に低下させた後に、酸素存在下で15℃以上80℃以下の温度範囲に管理しながら接触させる固液接触処理を施すことを特徴とする鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
  2. 前記菌が、アルカリ性の雰囲気で硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌であることを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
  3. 前記菌が、高炉溶融スラグの急冷処理を1回以上施した後の高炉吹製水に含まれる菌であることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
  4. 前記温度範囲を40℃以上80℃以下とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
  5. 前記菌含有液に、前記菌の栄養成分を添加することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
  6. 前記固液接触処理前の鉄鋼スラグを、二酸化炭素または炭酸塩で処理することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
  7. 前記固液接触処理後に、前記菌含有液と接触させた後の鉄鋼スラグと前記菌含有液とを分離する固液分離処理を施すことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
  8. 前記固液接触処理および前記固液分離処理を、少なくとも1回以上繰り返すことを特徴とする請求項7に記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
  9. 前記固液分離処理で分離した菌含有液を、前記固液接触処理において再利用することを特徴とする請求項7または8に記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
  10. 前記固液分離処理で分離した鉄鋼スラグを、篩い分けし、該鉄鋼スラグから粒径0.5mm以下の細粒を除去することを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
  11. 前記固液接触処理後に、前記菌含有液と接触させた後の鉄鋼スラグに水を接触させて該鉄鋼スラグを水洗する水洗処理を施すことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
  12. 前記水洗処理後に、水洗後の鉄鋼スラグから水を除去する脱水処理を施すことを特徴とする請求項11に記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
  13. 前記脱水処理で脱水した鉄鋼スラグを、篩い分けし、該鉄鋼スラグから粒径0.5mm以下の細粒を除去することを特徴とする請求項12に記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
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