JP5983537B2 - 硫黄を含有するスラグの硫黄除去処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、硫黄を含有するスラグ、特に鉄鋼スラグの硫黄含有量を低減する処理方法に関する。
鉄鋼製造プロセスで発生する鉄鋼スラグは、コンクリート骨材や路盤材料、港湾土木材料などの土木材料として広く利用されている。鉄鋼スラグの中には、硫黄を含有するスラグがあるが、これは、精錬工程のなかで溶銑中の硫黄などの不純物をスラグに移行させて吸収させているためである。例えば、高炉で発生した溶融スラグを冷却ヤードで徐冷した高炉徐冷スラグや、脱硫剤を用いて溶銑の脱硫を行う際に発生する脱硫スラグは、比較的多くの硫黄を含有している。このように高炉徐冷スラグや脱硫スラグなどの硫黄を含有するスラグを水の存在する環境下で使用すると、スラグ中の硫黄が流出して環境に悪影響を与えるおそれがある。そのため、硫黄を含有するスラグを利用する前に硫黄成分の除去や安定化が必要になる。
また、溶銑の脱硫工程では、CaO等を主成分とする脱硫剤が、溶銑中の硫黄分と反応して脱硫スラグとして排出されるが、この脱硫スラグには脱硫剤の主成分である酸化カルシウム等が残存している。そこで、省資源ならびに省エネルギーの点から、脱硫スラグは溶銑の脱硫剤として再度利用されている。しかしながら、脱硫スラグの再利用を重ねると、脱硫剤である脱硫スラグ中のCaO分が減少する一方CaSが増加して、脱硫反応が進行しなくなる。そのため、再利用には脱硫スラグ中の硫黄成分の除去が必要になる。
硫黄を含有するスラグから硫黄成分を除去するに際しては、従来、エージングにより硫黄成分の酸化を促進させたり、スラグに散水することで硫黄成分を溶出させるなどの処理が行われている。
また、特許文献1には、脱硫スラグを溶銑脱硫処理に再利用する技術に関し、溶銑脱硫後に発生する脱硫スラグと、CaOおよびNa2CO3とを混合した脱硫剤を溶銑脱硫処理に用いる技術が提案されている。また、CaOおよびNa2CO3に混合する前の脱硫スラグに水没処理を施して、該脱硫スラグのS分を低減させる技術が提案されている。
更に、特許文献2では、脱硫スラグを、次亜塩素酸を含む酸化剤を水で希釈又は溶解した洗浄液と接触させて、或いは、海水中に浸漬させて、脱硫スラグ中の還元性硫黄化合物を除去する技術が提案されている。そして、特許文献2で提案された技術によると、脱硫スラグ等の硫黄含有量が高い製鋼スラグについても、所定の処理液を用いて製鋼スラグに含まれる還元性硫黄化合物を硫酸イオンまで酸化することで、製鋼スラグに含まれる還元性硫黄化合物の水域への溶出を低減でき、海域などの水域において製鋼スラグを有効利用することが可能となるとされている。
一方、特許文献3では、精錬容器内の溶鉄を脱硫精錬する技術に関し、溶鉄に脱硫剤を添加して脱硫処理を施し、溶鉄表面に生成した脱硫スラグにプラズマアークを照射することで、脱硫スラグ中のSの気化脱硫反応を行うとともに、溶鉄中のS濃度を低減する技術が提案されている。そして、特許文献3で提案された技術によると、設備費や処理コストの高いLF装置や真空脱ガス装置を使用することなく、高効率かつ安定して、溶鉄を極低硫黄濃度まで脱硫処理することが可能であるとされている。
特開2002−309308号公報 特開2010−241653号公報 特開2011−017047号公報
しかしながら、エージングやスラグに散水する従来技術、或いはスラグに水没処理を施す特許文献1で提案された技術では、スラグから硫黄成分を除去するに際し、長時間の処理を要することに加えて脱硫効率も低いという問題がある。また、特許文献2で提案された技術では、次亜塩素酸を含む酸化剤を水で希釈又は溶解した洗浄液を調製する必要があり、作業が煩雑になり且つ費用も嵩む。一方、脱硫スラグを海水中に浸漬する場合には、海水を取水するための大容量ポンプ等の高価な設備が必要となり、コスト面で不利となるうえ、脱硫効率も低い。更に、特許文献3で提案された技術では、脱硫製錬装置にプラズマ発生装置等の高価な設備の追加が必要となり、やはりコスト面で不利となる。
本発明は、係る事情に鑑みて為されたものであって、硫黄を含有するスラグから硫黄成分を除去するに際し、酸化剤の添加や特別な設備を必要とせず、簡便かつ安価に、しかも高効率で脱硫可能なスラグの硫黄除去処理方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく、硫黄を含有するスラグから硫黄成分を除去するに際し、特別な処理液を調製することや高価な設備を付設することなく、スラグを効率良く脱硫する手段について鋭意検討した。先述のとおり、硫黄を含有するスラグから硫黄成分を除去する方法としては、スラグに散水することで硫黄成分を溶出させる方法が知られている。一方、製鉄所設備では、大量の水が冷却水や洗浄水として消費されており、これらの排水を製鉄所内で再利用する技術がリサイクルという点からも望まれる。
そこで、本発明者らは、これらの排水を、硫黄含有スラグの硫黄成分除去処理時にスラグに散水する処理液として再利用することを試みた。その結果、高炉吹製水を硫黄含有スラグに散水した場合に、極めて高い脱硫効果が得られることを知見した。高炉吹製水とは、高炉から排出された溶融スラグを急冷処理により急冷球状化して水冷スラグを製造する際に使用する圧力水であり、高炉吹製水は通常、上記急冷処理に再利用されるか排水処理される。この急冷処理に使用された後の高炉吹製水を、硫黄含有スラグの硫黄成分除去処理時にスラグに散水する処理液として使用したところ、高炉吹製水に酸化剤等の添加剤を加えることや特別な雰囲気調整等を行うことなく、硫黄含有スラグから効果的に硫黄成分が除去されることが確認された。すなわち、上記急冷処理に使用した後大気中に放置(空気中に曝露)したままの高炉吹製水を、硫黄含有スラグに散水するだけで、高い脱硫効率をもって硫黄含有スラグの脱硫が可能であることを知見した。
また、本発明者らは、上記急冷処理に使用する前の高炉吹製水(加圧水)、および上記急冷処理に使用した後の高炉吹製水(すなわち、高炉溶融スラグと接触した後の高炉吹製水)の状態について調査した。上記急冷処理に使用する加圧水は、工業用水や工場処理水を利用するため、常温、pH5.5〜8程度の冷却水である。この冷却水を用いて急冷処理を施すと、高炉溶融スラグと接触することにより温度およびpHが変化し、上記急冷処理に使用した直後の高炉吹製水の温度は90℃以上に上昇し、pHも8〜11程度まで上昇していた。次いで、この高炉吹製水を、大気に接触する条件で一定時間(0.5〜4h)放置して80℃以下になるように冷却したのち、急冷処理に使用する加圧水として再利用した。以上のようなサイクルで高炉吹製水の循環利用を1〜2日間継続したのち、最終サイクルの急冷処理後の高炉吹製水を、大気中に放置し、一定時間(0.5〜4h)経過後の温度およびpHを測定した。その結果、温度は80℃以下に低下し、pHは5.5〜8程度にまで低下していた。
以上のように、本発明者らは、高いpHを有する急冷処理直後の高炉吹製水を大気中に放置(空気中に曝露)すると、空気中の酸素等による自然酸化によるpH低下を明らかに超えるpH低下が生じることを突き止めた。
そして、本発明者らが更に検討を進めた結果、急冷処理に使用した直後の高いpH値を示す高炉吹製水を硫黄含有スラグの硫黄成分除去処理に用いた場合には特に優れた脱硫効果を示さないことを知見した。これに対し、急冷処理に使用した後、大気中に一定時間放置してpHが8未満に低下した高炉吹製水を硫黄含有スラグの硫黄成分除去処理に用いると、極めて優れた脱硫効果を示すことを知見した。
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は次のとおりである。
[1] 高炉溶融スラグに接触させたpH8以上の高炉吹製水を、空気に曝露してpHを8未満に低下させる高炉吹製水処理工程と、該高炉吹製水処理工程後の高炉吹製水を、酸素存在下で15℃以上80℃以下の温度範囲に管理しながら硫黄を含有するスラグと接触させる固液接触工程とを有することを特徴とするスラグの硫黄除去処理方法。
[2] [1]において、前記固液接触工程における前記温度範囲を40℃以上80℃以下とすることを特徴とするスラグの硫黄除去処理方法。
[3] [1]または[2]において、前記高炉吹製水処理工程において、高炉吹製水に、硫黄、窒素、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、コバルト、ニッケル、ホウ素、モリブデン、銅の単体もしくは化合物を添加することを特徴とするスラグの硫黄除去処理方法。
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、前記固液接触工程の前に、前記スラグを二酸化炭素または炭酸塩で処理するスラグ前処理工程を設けることを特徴とするスラグの硫黄除去処理方法。
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、前記固液接触工程の後に、前記高炉吹製水と接触させた後のスラグと前記高炉吹製水とを分離する固液分離工程を有することを特徴とするスラグの硫黄除去処理方法。
[6] [5]において、前記固液接触工程および前記固液分離工程を、少なくとも1回以上繰り返すことを特徴とするスラグの硫黄除去処理方法。
[7] [5]または[6]において、前記固液分離工程で分離した高炉吹製水を、前記固液接触工程において再利用することを特徴とするスラグの硫黄除去処理方法。
[8] [5]ないし[7]のいずれかにおいて、前記固液分離工程で分離したスラグを、篩い分けし、該スラグから細粒を除去することを特徴とするスラグの硫黄除去処理方法。
[9] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、前記固液接触工程の後に、前記高炉吹製水と接触させた後のスラグに水を接触させて該スラグを水洗する水洗工程を設けることを特徴とするスラグの硫黄除去処理方法。
[10] [9]において、前記水洗工程の後に、水洗後のスラグから水を除去する脱水工程を設けることを特徴とするスラグの硫黄除去処理方法。
[11] [10]において、前記固液接触工程、前記水洗工程および前記脱水工程を、少なくとも1回以上繰り返すことを特徴とするスラグの硫黄除去処理方法。
[12] [10]または[11]において、前記脱水工程で脱水したスラグを、篩い分けし、該スラグから細粒を除去することを特徴とするスラグの硫黄除去処理方法。
本発明によると、硫黄を含有するスラグから硫黄成分を除去するに際し、水砕スラグの製造工程で生じる高炉吹製水に特別な措置を講ずることなく、該高炉吹製水を硫黄含有スラグに接触させるだけで、スラグから硫黄成分を効果的に除去することができる。したがって、本発明によると、硫黄含有スラグに接触させる処理液を特別に調製することや高価な設備を付設することなく、簡便かつ安価で、しかも脱硫効率の高いスラグ脱硫処理方法を提供することができ、産業上格段の効果を奏する。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のスラグの硫黄除去処理方法は、高炉溶融スラグに接触させたpH8以上の高炉吹製水を、空気に曝露してpHを8未満に低下させる高炉吹製水処理工程と、該高炉吹製水処理工程後の高炉吹製水を、酸素存在下で15℃以上80℃以下の温度範囲に管理しながら硫黄を含有するスラグと接触させる固液接触工程とを有することを特徴とする。
高炉吹製水処理工程
高炉吹製水処理工程では、高炉溶融スラグに接触させてpHが8以上に上昇した高炉吹製水を、空気に曝露し、そのpHを8未満に低下させる。
本処理方法で使用する高炉吹製水は、高炉水砕スラグ製造工程において、高炉溶融スラグを急冷するために使用され、高炉水砕スラグと分離された冷却水である。上記高炉水砕スラグ製造工程としては、一般的には、例えば、高炉溶融スラグに加圧水を噴射して、または高炉溶融スラグを水槽に注入して、急冷し、粒状化(水砕)する工程が挙げられる。
高炉溶融スラグを急冷する前の冷却水は、当初は工業用水や工場処理水を利用するため、通常、温度が常温、pHは5.5〜8程度である。そして、この冷却水を用いて高炉溶融スラグに急冷処理を施すと、該冷却水は、高炉溶融スラグと接触することによって、温度が90℃以上に上昇し、pHは8〜11程度にまで上昇する。本発明では、このように高炉溶融スラグと接触してpHが8以上に上昇した冷却水(高炉吹製水)を、空気に曝露して、そのpHを8未満に低下させる。
高炉水砕スラグ製造工程では急冷処理後、生成した水砕スラグと冷却水とを分離し、水砕スラグを回収した後の冷却水を前記急冷処理用の冷却水として再利用することもある。本発明で使用する高炉吹製水は、上記急冷処理を少なくとも1回以上経たもの、すなわち、高炉溶融スラグと少なくとも1回以上接触してpHが8以上となったものであればよく、急冷処理用の冷却水として複数回繰り返し利用された高炉吹製水であってもよい。
高炉吹製水を空気に曝露する手段は特に限定されないが、大気中に放置することが最も簡便な手段である。高炉水砕スラグ製造工程における急冷処理後、生成した水砕スラグを分離・回収した後の高炉吹製水を、例えば製鉄所内の屋外に設置した水槽(開放型水槽)に貯水して一定時間放置すると、8以上であった高炉吹製水のpHは自然に8未満に低下する。また、高炉吹製水の温度は外気温度や冷却工程にもよるが、おおよそ15〜80℃になる。
高炉吹製水のpHが8以上から8未満まで低下するまでに要する時間は、高炉水冷水の温度(或いは外気温度)や容量、高炉溶融スラグ量等に依存する。例えば、急冷処理用の冷却水として1〜2日間循環利用した高炉吹製水(最終急冷処理直後の温度:約98℃)を、最終急冷処理後、製鉄所内の屋外に設置した上部開放型の2000m3程度の水槽に貯水する場合には、0.5〜4h程度放置すればpH8未満の高炉吹製水が得られる。
なお、上記では、高炉吹製水を屋外に設置した上部開放型の水槽に貯水して放置する手段について述べたが、本発明ではこれに限定されず、屋内に設置した水槽に貯水して放置してもよいし、密閉型の水槽に貯水してもよい。
以上の高炉吹製水処理工程により、高炉溶融スラグに少なくとも1回以上接触させてpHが8以上に上昇した高炉吹製水を、空気に曝露し、そのpHを8未満に低下させることによって、高炉吹製水の脱硫能、すなわち還元性硫黄成分を酸化する能力が向上する。ここで、還元性硫黄成分とは、酸化数が−2〜+4の硫黄原子を有する単体および化合物をいう。
なお、高炉吹製水処理工程では、高炉吹製水のpHを少なくとも一回8.0未満に低下させればよく、その後pHが8.0以上に上昇しても構わない。
固液接触工程
固液接触工程では、上記高炉吹製水処理工程で得られた高炉吹製水を、酸素存在下で15℃以上80℃以下の温度範囲に管理しながら硫黄を含有するスラグと接触させる。
硫黄を含有するスラグとしては、鉄鋼スラグ、例えば、高炉スラグ、溶銑予備処理スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグ等が挙げられる。溶銑予備処理スラグには、脱燐スラグ、脱珪スラグ、脱硫スラグが含まれる。また、高炉スラグは、スラグの冷却方法によって、水砕スラグ、空冷スラグ、徐冷スラグ等に分けられる。
鉄鋼スラグの中でも、特に高炉スラグや脱硫スラグは、硫黄含有量が比較的高い。したがって、硫黄を含有するスラグとして高炉スラグまたは脱硫スラグを用いると、本発明の脱硫効果が顕著となり好ましい。また、高炉スラグとしては、高炉溶融スラグを水砕もしくは徐冷して製造される高炉水砕スラグ、高炉徐冷スラグが好ましいものとして例示される。
硫黄を含有するスラグは、その粒子径を小さくして単位質量あたりの表面積を大きくすることが好ましい。上記スラグの粒子径は特に限定されないが、平均粒子径で、0.1mm以上10cm以下が好ましく、0.1mm以上5cm以下がより好ましく、0.1mm以上3cm以下がさらに好ましい。この範囲内であると、高炉吹製水が粒子と粒子との空隙を容易に流れることができ、接触表面積も確保することができる。上記スラグの平均粒子径が10cmを超えると、比表面積が小さくなって、接触表面積が低下するため、溶出速度、溶出効率が低下するおそれがある。また、上記スラグの平均粒子径が0.1mm未満となると、高炉吹製水が粒子と粒子との空隙を流れにくくなるため、溶出速度、溶出効率の低下が懸念される。なお、スラグの粒子径を小さくする方法としては、ジョークラッシャー、転動ミル等を用いて破砕する方法を用いることができる。溶出する化学成分を含有する物質の粒子径が上記範囲内である場合は、さらに破砕しなくてもよい。
固液接触工程の開始時における高炉吹製水の温度は、15℃以上80℃以下の範囲内であれば特に限定されない。好ましくは40℃以上80℃以下である。固液接触工程の開始時における高炉吹製水の温度を上げると、硫黄の酸化速度が高くなり脱硫効果は向上する。しかしながら、先述のとおり、高炉吹製水処理工程後の高炉吹製水の温度は通常80℃以下である。それゆえ、固液接触工程の開始時における高炉吹製水の温度を80℃超とするには、高炉吹製水用の加熱設備やエネルギーが必要となり、処理コストが高くなる。一方、固液接触工程の開始時における高炉吹製水の温度を80℃以下とする場合には、特別な加熱処理等を必要とせず、コスト面で有利である。また、固液接触工程の開始時における高炉吹製水の温度が15℃以上であれば、所定の脱硫効果が得られる。
高炉吹製水の温度は、15℃以上80℃以下の範囲に管理する。高炉吹製水の温度が15℃未満では、硫黄脱硫効果の低下が懸念される。一方、高炉吹製水が高温になるほど硫黄の酸化速度が高くなり高い脱硫効果が期待できるが、高炉吹製水の温度が80℃を超えると、上記と同様の理由により処理コストが嵩む。したがって、本発明では、固液接触工程における高炉吹製水を15℃以上80℃以下の温度範囲に管理する。好ましくは40℃以上80℃以下である。なお、高炉吹製水の温度の管理方法は、特に限定されず、従来公知の方法を使用することができる。
酸素存在下とは、高炉吹製水の表面および/または内部が酸素に接触している状態をいう。酸素は100%酸素ガスでもよいし、空気等の酸素含有ガス中の酸素でもよい。酸素含有ガス中の酸素分圧は特に限定されないが、大きいほど好ましい。高炉吹製水の表面および/または内部が酸素と接触する方法は特に限定されず、高炉吹製水の表面を空気に曝したり、高炉吹製水を撹拌して内部に空気を取り込ませたり、および/または高炉吹製水の内部に空気を吹き込んだりすることができる。
高炉吹製水と、硫黄を含有するスラグとを接触させる方法は、特に限定されない。例えば、処理槽、タンク、カラムといった容器内で上記スラグと高炉吹製水とを混合したり、上記スラグを積み重ねてヒープとし、高炉吹製水をヒープに散布したり、流入させたりする方法が挙げられる。
なお、固液接触工程の開始時における高炉吹製水のpHは特に限定されない。すなわち、本発明では、高炉吹製水処理工程で高炉吹製水のpHを8.0未満に低下させるが、固液接触工程の開始時における高炉吹製水のpHは必ずしも8.0未満でなくてもよい。但し、8.0以下であることが好ましい。また、固液接触工程の間における高炉吹製水のpHは特に限定されず、管理しなくてもよい。更に、固液接触工程においては、高炉吹製水の容量とスラグの質量との関係や、高炉吹製水と硫黄を含有するスラグとの接触時間は、特に限定されない。
以上のように、固液接触工程において高炉吹製水と硫黄を含有するスラグとを所定の条件で接触させると、スラグ中の硫黄成分が酸化して硫酸イオンとして高炉吹製水に溶出することで、スラグから硫黄成分が除去される。また、硫黄を含有するスラグと接触させる処理液として上記した高炉吹製水処理工程後の高炉吹製水を用いると、従来の処理水を用いた場合に比べて脱硫効果が格段に向上する。
なお、高炉吹製水処理工程後の高炉吹製水が優れた脱硫作用を示す理由については定かではないが、高炉溶融スラグの急冷処理を施した後の高炉吹製水を空気に曝露(大気中に放置)する過程で、高炉吹製水の脱硫能が大幅に向上していることが推測される。そして、この脱硫能の大幅な向上は、高炉溶融スラグの急冷処理を施した後の高炉吹製水を空気に曝露(大気中に放置)する過程で空気中の酸素等による自然酸化によるpH低下を明らかに超える高炉吹製水のpH低下が生じる現象と関連があるものと推測される。
本発明によると、以上の2工程を経ることで、硫黄を含有するスラグから硫黄成分を高効率で除去することができるが、スラグの脱硫効率をより一層高める目的で、前記高炉吹製水処理工程において、高炉吹製水に硫黄、窒素、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、コバルト、ニッケル、ホウ素、モリブデン、銅の各種成分を添加することが好ましい。なお、これらの成分はいずれも、単体として添加してもよく、化合物の形で添加してもよい。高炉吹製水に硫黄および窒素、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、コバルト、ニッケル、ホウ素、モリブデン、銅の単体もしくは化合物を添加し、酸素存在下で、15℃以上80℃以下の温度範囲に保持すると、還元性硫黄成分を酸化する能力がより一層向上する。
高炉吹製水に添加する硫黄としては、例えば、分子硫黄(S)や、硫化物イオン(S2−)、チオ硫酸イオン(S2O3 2−)、亜硫酸イオン(SO3 2−)、ジチオン酸イオン(S2O6 2−)およびこれらの塩(還元性硫黄化合物)、ならびにこれらの混合物が挙げられる。また、上記の酸素存在下とは、高炉吹製水と上記した成分との混合液の表面および/または内部が酸素に接触している状態を意味し、例えば上記混合液の表面を空気に曝したり、上記混合液を撹拌して内部に空気を取り込ませたり、上記混合液の内部に空気を吹き込んだりすることができる。温度を保持する方法は、従来公知の方法を用いることができる。
また、前記固液接触工程の前に、前記スラグを二酸化炭素または二酸化炭素を溶解させた水または炭酸塩で処理するスラグ前処理工程を設けてもよい。固液接触工程前の硫黄含有スラグを、CO2またはCO2含有ガス、もしくはCO2ガスを溶解させた水、もしくは炭酸ナトリウムや炭酸カルシウムなどの炭酸塩雰囲気下で処理すると、固液接触工程におけるスラグの脱硫効果がより一層向上する。
このスラグ前処理の具体的な処理方法としては、例えば工業用水に二酸化炭素を吹き込んだ水でスラグを洗浄する方法などが挙げられる。この洗浄方法は特に限定されないが、例えば、処理槽、タンク、カラムなどの容器内でスラグと二酸化炭素を溶解させた水とを混合したり、スラグを積み重ねてヒープとし、二酸化炭素を溶解させた水をヒープに散布したり、流入させたりする方法が挙げられる。また、炭酸塩としては、炭酸ナトリウムや炭酸カルシウムの他、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等も使用することができる。
なお、上記スラグ前処理によりスラグの脱硫効果が向上する理由は定かではないが、次のように推測される。
上記スラグ前処理を行なわない場合、高炉吹製水とスラグとを接触させる固液接触工程の際に、スラグからカルシウム分が溶出し高炉吹製水のpHを高くしてしまう。一方、上記スラグ前処理を行った場合、スラグ中のカルシウム分が炭酸イオンと反応し不溶性の炭酸カルシウムや炭酸水素カルシウムとなることにより、固液接触工程の際にスラグからのカルシウムの溶出が抑制される。その結果、高炉吹製水のpHがpH11を超えるような高アルカリになることがなくなり、高炉吹製水の酸化能(脱硫能)が大幅に改善される。
前記固液接触工程の後に、さらに、スラグと高炉吹製水とを分離する固液分離工程を設けてもよい。固液分離の方法としては、沈降分離、膜分離、その他従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、スラグをヒープとした場合には、ヒープの下から高炉吹製水を流出させるだけでもよい。また、固液接触工程および固液分離工程は、少なくとも1回は繰り返すことが好ましい。この2つの工程を繰り返すことで、スラグが含有する硫黄をより多く除去処理することができる。また、固液接触工程および固液分離工程を繰り返す場合には、固液分離工程において分離した高炉吹製水を回収し、固液接触工程において高炉吹製水として再利用することが好ましい。再利用することによって、更なる低コスト化を図ることができる。
上記の如く回収した高炉吹製水を再利用する場合には、高炉吹製水を回収後、再利用する前に下記(i)、(ii)の何れかの処理を行うことで高炉吹製水の硫黄酸化能力を向上することができる。
(i)回収した高炉吹製水を、少なくとも1回はpH8.0以上で空気に曝露した後、そのpHを8.0未満に低下させる。
(ii)回収した高炉吹製水に、硫黄、窒素、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、コバルト、ニッケル、ホウ素、モリブデン、銅の単体もしくは化合物を添加し、酸素存在下で15℃以上80℃以下の範囲内に温度を保持する処理を行う。なお、上記した単体もしくは化合物のうち、特に硫黄、窒素、リン、マグネシウムの単体もしくは化合物を添加することが好ましい。
なお、先述のとおり、固液接触工程において、硫黄を含有するスラグに高炉吹製水を接触させると、スラグ中の硫黄成分が酸化して硫酸イオンとして高炉吹製水に溶出するとともに、スラグ中のカルシウムなどの成分も高炉吹製水に溶出する。このように高炉吹製水に溶出した硫酸イオンとカルシウムなどの成分とは、結合してCaSO4をはじめとする硫酸塩になる。また、高炉吹製水がもともと含有する硫酸イオンも、スラグから溶出したカルシウムと結合してCaSO4になる。ここで、液接触処理においてスラグと接触させる高炉吹製水の量が多くなり過ぎると、生成したCaSO4をはじめとする硫酸塩が鉄鋼スラグ表面に過剰に付着することがある。したがって、固液接触工程において、スラグと接触させる高炉吹製水の量が多くなり過ぎると、表面にCaSO4が付着したスラグ、すなわち硫黄含有量の比較的高いスラグが生成する場合がある。
表面にCaSO4が付着したスラグを除去するうえでは、固液分離工程で分離したスラグを篩い分けすることが有効である。本発明者らが、固液分離工程で分離したスラグについて、粒度ごとに硫黄含有量を調査した結果、微粒であるほど硫黄含有量が高く、粗粒であるほど硫黄含有量が低い傾向にあることが確認された。したがって、固液分離工程で分離したスラグを、所定の目開きの篩を用いて篩い分けすることにより、固液分離工程で分離したスラグのうち、硫黄含有量の高い微粒のスラグを除去することができる。
上記篩い分けに使用する篩の目開きは、2mm程度とすることが好ましく、0.5mm以下程度とすることがより好ましい。このように篩い分けすることにより、固液分離工程で分離したスラグから、硫黄含有量の低いスラグのみを抽出・回収することができる。
なお、固液分離工程で分離したスラグが微粒であるほど硫黄含有量が高くなる理由は定かではないが、再結晶したCaSO4が微粒になることがその理由として考えられる。
また、上記の如く一旦スラグから溶出した硫酸態等の硫黄成分が再度スラグ表面に付着すると、スラグからの脱硫効率が低下する。この脱硫効率の低下現象を抑制するには、固液接触工程に続き、高炉吹製水と接触させた後のスラグに水を接触させて該スラグを水洗する水洗工程を設けることが好ましい。高炉吹製水と接触させた後のスラグを水洗すると、表面に付着したCaSO4が洗浄・除去される結果、スラグの脱硫が促進される。
水洗工程でスラグに接触させる水には、蒸留水や工業用水など通常の水を用いることが好ましい。なお、固液分離工程で分離したスラグに水を接触させる手段は特に問わず、処理槽、タンク、カラムといった容器内において、高炉吹製水と接触させた後のスラグと水とを混合したり、高炉吹製水と接触させた後のスラグに散水する方法等を例示することができる。高炉吹製水と接触させた後のスラグを積み重ねてヒープとし、該ヒープに散水したり、水を流入する方法でもよい。
また、スラグをカラムに充填し、該カラムに高炉吹製水を通水したのち(すなわち、スラグを高炉吹製水と接触させたのち)、水(蒸留水、工業用水等)を通水する方法を採用することもできる。
このような場合には、スラグに対する高炉吹製水の重量比(通水する高炉吹製水の質量/スラグの質量)が10以上200以下程度になるまで高炉吹製水を通水したのち、通水を停止して水の通水を開始し、スラグに対する水の重量比(通水する水の質量/スラグの質量)が5以上200以下程度になるまで通水することが好ましい。
なお、水洗工程時、高炉吹製水と接触させた後のスラグに接触させる水の温度を管理する必要はないが、温度が高い方がCaSO4は洗浄・除去され易い。
前記水洗工程後に、さらに、水洗後のスラグから水洗に用いた水を除去する脱水工程を設けてもよい。脱水の方法としては、沈降分離、膜分離、その他従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、水洗工程において、高炉吹製水と接触させた後のスラグを積み重ねてヒープとし、該ヒープに散水したり、水を流入させたりした場合には、ヒープの下から水を流出させるだけでもよい。
また、前記固液接触工程、前記水洗工程および前記脱水工程の各工程は、それぞれ1回ずつ行えばよいが、各工程を少なくとも1回繰り返してもよい。これらの工程を順次繰り返すことで、スラグが含有する硫黄成分をより多く除去処理することができる。また、脱水工程後に得られるスラグから、表面にCaSO4が付着したスラグをさらに除去する目的で、脱水工程で脱水したスラグを篩い分けして細粒を除去してもよい。上記篩い分けに使用する篩の目開きは、2mm以下程度とすることが好ましく、0.5mm以下程度とすることがより好ましい。
本発明による鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法の効果を検証すべく、以下の実施例1および実施例2により検証を行った。
実施例1:スラグからの硫黄除去実験(浸漬処理)
上部開放型容器に温度60℃の処理液(高炉吹製水)100Lを収容した。次いで、該容器に溶銑の脱硫を行う際に発生した脱硫スラグ20kgを投入し、脱硫スラグを処理液に浸漬した状態で7日間保持し、脱硫スラグ中に含まれる硫黄成分を処理液に溶出することで、脱硫スラグの硫黄除去処理を行った。硫黄除去処理中、容器内の処理液は40℃から60℃の温度範囲となるように管理した。
使用した処理液(高炉吹製水)は、以下のとおりである。
処理液1(本発明例1)
高炉から排出された溶融スラグ(高炉溶融スラグ)に、高圧水を噴射して急冷処理を施して水冷スラグを製造した後、急冷処理後の高炉吹製水(高圧水)を、水冷スラグから分離・回収し、上部開放型の水槽に貯水し、大気中で3日間放置して処理液1(5m3)とした。水槽に貯水した直後の高炉吹製水の温度およびpHを測定したところ、95℃、pH10であった。また、大気中で3日間放置した後の高炉吹製水の温度およびpHは、それぞれ50℃、pH7.8であった。
処理液2(本発明例2)
高炉から排出された溶融スラグ(高炉溶融スラグ)に、高圧水(冷却水)を噴射して急冷処理を施して水冷スラグを製造した後、生成した水砕スラグと冷却水とを分離し、該冷却水を、大気に接触する条件で一定時間(0.5〜4h)放置して80℃以下になるように冷却したのち、急冷処理に使用する加圧水として再利用した。以上のようなサイクルで高炉吹製水の循環利用を2日間継続したのち、最終サイクルの急冷処理後の高炉吹製水(冷却水)を、水冷スラグから分離・回収し、上部開放型の水槽に貯水し、大気中で3日間放置して処理液2(5m3)とした。水槽に貯水した直後の高炉吹製水の温度およびpHを測定したところ、95℃、pH10であった。また、大気中で3日間放置した後の高炉吹製水の温度およびpHは、それぞれ50℃、pH7.5であった。
処理液3(本発明例3)
高炉から排出された溶融スラグ(高炉溶融スラグ)に、高圧水(冷却水)を噴射して急冷処理を施して水冷スラグを製造した後、生成した水砕スラグと冷却水とを分離し、該冷却水を、大気に接触する条件で一定時間(0.5〜4h)放置して80℃以下になるように冷却したのち、急冷処理に使用する加圧水として再利用した。以上のようなサイクルで高炉吹製水の循環利用を2日間継続したのち、最終サイクルの急冷処理後の高炉吹製水(冷却水)を、水冷スラグから分離・回収し、上部開放型の水槽に貯水し、10mMチオ硫酸ナトリウム、5mM硝酸カリウム、0.1g/Lリン酸水素二カリウム、50μM塩化マグネシウム七水和物、5mg/L EDTA、2mg/L硫酸第一鉄七水和物、0.1mg/L硫酸亜鉛七水和物、0.03mg/L塩化マンガン一水和物、0.2mg/L塩化コバルト六水和物、0.02mg/L塩化ニッケル六水和物、0.03mg/Lモリブデン酸ナトリウム二水和物、0.01mg/L塩化銅五水和物、0.3mg/Lホウ酸を添加した後に大気中で3日間放置して処理液3(5m3)とした。水槽に貯水した直後の高炉吹製水の温度およびpHを測定したところ、95℃、pH10であった。また、大気中で3日間放置した後の高炉吹製水の温度およびpHは、それぞれ50℃、pH7であった。
処理液4(比較例)
高炉から排出された溶融スラグ(高炉溶融スラグ)に、高圧水を噴射して急冷処理を施して水冷スラグを製造した後、急冷処理後の高炉吹製水(高圧水)を、水冷スラグから分離・回収し、処理液4(5m3)とした。水冷スラグから分離・回収した直後の高炉吹製水の温度およびpHを測定したところ、95℃、pH10であった。また、直ちに高炉吹製水を硫黄除去処理に供し、開始時における処理液4のpHも10であった。
また、硫黄除去処理前の脱硫スラグの硫黄含有量を、以下の方法により測定したところ、2.0mass%であった。
<スラグの硫黄含有量の測定方法>
スラグを微粉砕後、試料(微粉砕後のスラグ)を加湿燃焼分解させる燃焼装置とイオンクロマトグラフを接続させた燃焼−イオンクロマトグラフシステムで、上記スラグの硫黄含有量を分析した。
硫黄除去処理後、スラグを回収し、上記と同様の方法により硫黄除去処理後スラグの硫黄含有量を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0005983537
表1に示すように、処理液1〜3を用いた場合、すなわち本発明の方法に従い硫黄除去処理された脱硫スラグは、硫黄除去処理前に比べて硫黄含有量が大幅に減少しており、極めて高い脱硫効果を示している。
実施例2:スラグからの硫黄除去実験(カラム処理)
粉砕した後に非金属製の4mm目のふるいを全通させた脱硫スラグ100gを充填したカラム(直径5cm、長さ20cm)を2本用意した。一方のカラム(カラムA)に充填した脱硫スラグは、高炉吹製水を接触させることにより、硫黄除去処理を行った。他方のカラム(カラムB)に充填した脱硫スラグは、高炉吹製水を接触させたのち、更に水を接触させることにより、硫黄除去処理を行った。各カラムの処理条件は、以下のとおりである。
<カラムA>
脱硫スラグを充填したカラムに、上記実施例1で調製した処理液3の高炉吹製水であって、70℃に保温した高炉吹製水を、流速25mL/hrでアップフロー通水すること(固液接触工程)により、脱硫スラグの硫黄除去処理を行った。高炉吹製水の通水は、脱硫スラグに対して用いる高炉吹製水の重量比が200に達するまで通水を継続した。すなわち、カラムに充填した脱硫スラグの質量S(g)に対し、通水した高炉吹製水の質量L1(g)が、質量比L1/Sで200に達するまで通水を継続した。
<カラムB>
脱硫スラグを充填したカラムに、上記実施例1で調製した処理液3の高炉吹製水であって、70℃に保温した高炉吹製水を、流速25mL/hrでアップフロー通水したのち(固液接触工程)、通水を停止し、次いで、蒸留水を流速25mL/hrでアップフロー通水すること(水洗工程)により、脱硫スラグの硫黄除去処理を行った。高炉吹製水の通水は、カラムに充填した脱硫スラグの質量S(g)に対し、通水した高炉吹製水の質量L1(g)が質量比L1/Sで20に達した時点で停止した。また、蒸留水の通水は、カラムに充填した脱硫スラグの質量S(g)に対し、通水した高炉吹製水の質量L1(g)と通水した蒸留水の質量L2(g)の合計質量が質量比(L1+L2)/Sで200に達するまで継続した。
カラムAに充填した脱硫スラグについて、硫黄除去処理前(固液接触工程前)、硫黄除去処理中(質量比L1/Sが100となった時点)および硫黄除去処理後(固液接触工程後)の脱硫スラグの硫黄含有量を上記と同様の方法で分析した。その結果、硫黄除去処理前の硫黄含有量は2.0mass%であるのに対し、硫黄除去処理中(質量比L1/S=100)の硫黄含有量は1.5 mass%に減少していたが、硫黄除去処理後の硫黄含有量は7.8mass%と逆に増加していた。
一方、カラムBに充填した脱硫スラグについて、硫黄除去処理前(固液接触工程前)、硫黄除去処理中(質量比(L1+L2)/Sが100となった時点)および硫黄除去処理後(水洗工程後)の脱硫スラグの硫黄含有量を上記と同様の方法で分析した。その結果、硫黄除去処理前の硫黄含有量は2.0mass%であるのに対し、硫黄除去処理中(質量比(L1+L2)/S=100)の硫黄含有量は1.1 mass%に減少し、硫黄除去処理後の硫黄含有量は更に0.7mass%にまで減少していた。
硫黄除去処理後の脱硫スラグをカラムAから回収し、回収した脱硫スラグを風乾後に篩い分けして、粒度ごとに脱硫スラグの硫黄含有量を分析した。その結果、硫黄除去処理後の脱硫スラグのうち粒径が0.5mm以下の脱硫スラグは、硫黄含有量が25.2mass%であり、硫黄が濃縮されていることが明らかになった。

Claims (12)

  1. 高炉溶融スラグに接触させたpH8以上の高炉吹製水を、空気に曝露してpHを8未満に低下させる高炉吹製水処理工程と、該高炉吹製水処理工程後の高炉吹製水を、酸素存在下で15℃以上80℃以下の温度範囲に管理しながら硫黄を含有するスラグと接触させる固液接触工程とを有することを特徴とするスラグの硫黄除去処理方法。
  2. 前記固液接触工程における前記温度範囲を40℃以上80℃以下とすることを特徴とする請求項1に記載のスラグの硫黄除去処理方法。
  3. 前記高炉吹製水処理工程において、高炉吹製水に、硫黄、窒素、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、コバルト、ニッケル、ホウ素、モリブデン、銅の単体もしくは化合物を添加することを特徴とする請求項1または2に記載のスラグの硫黄除去処理方法。
  4. 前記固液接触工程の前に、前記スラグを二酸化炭素または炭酸塩で処理するスラグ前処理工程を設けることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のスラグの硫黄除去処理方法。
  5. 前記固液接触工程の後に、前記高炉吹製水と接触させた後のスラグと前記高炉吹製水とを分離する固液分離工程を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のスラグの硫黄除去処理方法。
  6. 前記固液接触工程および前記固液分離工程を、少なくとも1回以上繰り返すことを特徴とする請求項5に記載のスラグの硫黄除去処理方法。
  7. 前記固液分離工程で分離した高炉吹製水を、前記固液接触工程において再利用することを特徴とする請求項5または6に記載のスラグの硫黄除去処理方法。
  8. 前記固液分離工程で分離したスラグを、篩い分けし、該スラグから細粒を除去することを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載のスラグの硫黄除去処理方法。
  9. 前記固液接触工程の後に、前記高炉吹製水と接触させた後のスラグに水を接触させて該スラグを水洗する水洗工程を設けることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のスラグの硫黄除去処理方法。
  10. 前記水洗工程の後に、水洗後のスラグから水を除去する脱水工程を設けることを特徴とする請求項9に記載のスラグの硫黄除去処理方法。
  11. 前記固液接触工程、前記水洗工程および前記脱水工程を、少なくとも1回以上繰り返すことを特徴とする請求項10に記載のスラグの硫黄除去処理方法。
  12. 前記脱水工程で脱水したスラグを、篩い分けし、該スラグから細粒を除去することを特徴とする請求項10または11に記載のスラグの硫黄除去処理方法。
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