JP2014028746A - 鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鉄鋼スラグに、硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌を含む菌含有液、例えば高炉溶融スラグの急冷処理を1回以上施した後の高炉吹製水を接触させることで、鉄鋼スラグに含まれる硫黄成分を除去する。前記菌が、アルカリ性の雰囲気で硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌である。前記菌含有液に前記菌の栄養分を添加する。
【選択図】図5
Description
また、特許文献1には、脱硫スラグを溶銑脱硫処理に再利用する技術に関し、溶銑脱硫後に発生する脱硫スラグと、CaOおよびNa2CO3とを混合した脱硫剤を溶銑脱硫処理に用いる技術が提案されている。更に、CaOおよびNa2CO3に混合する前の脱硫スラグに水没処理を施して、該脱硫スラグのS分を低減させる技術が提案されている。
先述のとおり、鉄鋼スラグから硫黄成分を除去する方法としては、鉄鋼スラグに散水することで硫黄成分を溶出させる方法が知られている。一方、製鉄所設備では、大量の水が冷却水や洗浄水として消費されており、これらの排水を製鉄所内で再利用する技術がリサイクルという点からも望まれる。
S2O3 2-+2O2+H2O → 2SO4 2-+2H+
2 S2O6 2-+O2+2H2O → 4SO4 2-+4H+
SO3 2-+H2O → SO4 2-+2H+
[1] 鉄鋼スラグに、硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌を含む菌含有液を接触させる固液接触処理を施すことを特徴とする鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
本発明の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法は、鉄鋼スラグに、硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌を含む菌含有液を接触させる固液接触処理を施すことを特徴とする。すなわち、本発明では、硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌(以下、「硫黄酸化菌」、「硫黄酸化細菌」ともいう)の硫黄酸化能を利用し、鉄鋼スラグに含まれる還元性硫黄成分を菌含有液に溶出させることで、鉄鋼スラグの硫黄除去処理を行う。
鉄鋼スラグとしては、例えば、高炉スラグ、溶銑予備処理スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグ等が挙げられる。溶銑予備処理スラグには、脱燐スラグ、脱珪スラグ、脱硫スラグが含まれる。また、高炉スラグは、スラグの冷却方法によって、水砕スラグ、空冷スラグ、徐冷スラグ等に分けられる。鉄鋼スラグの中でも、特に高炉スラグや脱硫スラグは、硫黄含有量が比較的高い。したがって、鉄鋼スラグとして高炉スラグまたは脱硫スラグを用いると、本発明の脱硫効果が顕著となり好ましい。また、高炉スラグとしては、高炉溶融スラグを水砕もしくは徐冷して製造される高炉水砕スラグ、高炉徐冷スラグが好ましいものとして例示される。
本発明では、硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌(硫黄酸化菌)を用いる。ここで、硫黄または硫黄化合物としては、分子硫黄(S)、硫化物イオン(S2-)、チオ硫酸イオン(S2O3 2-)、亜硫酸イオン(SO3 2-)、ジチオン酸イオン(S2O6 2-)およびこれらの塩、ならびにこれらの混合物等が例示される。
本発明で用いる菌含有液は、上記の如き硫黄酸化菌を含有する液である。菌含有液は、例えば硫黄酸化細菌を、該硫黄酸化細菌に適した培地に接種し増殖させることにより得られる。例えば、Thioalkalivibrio jannaschii であれば、Na2CO3、NaHCO3、NaCl、KNO3、MgCl2、微量金属成分、Na2S2O3を含有するpH10の溶液中で培養する。その溶液をそのまま菌含有液として使用してもよいし、菌を遠心分離やろ過で回収し水溶液に再度懸濁した溶液を用いてもよい。
また、高炉吹製水から、含有する菌を遠心分離やろ過で回収し、水溶液に再度懸濁することで菌含有液を調製することもできる。また、高炉吹製水から回収した菌に栄養を添加して増殖させた菌含有液を使用してもよい。
高炉溶融スラグを急冷する前の冷却水は、通常、温度が60℃以下であり、pHは5.5〜8程度である。そして、この冷却水を用いて高炉溶融スラグに急冷処理を施すと、該冷却水は、高炉溶融スラグと接触することによって、温度が90℃以上にまで上昇し、pHは8〜11程度にまで上昇する。本発明では、このように高炉溶融スラグと接触してpHが8以上に上昇した冷却水(高炉吹製水)を、空気に曝露して、そのpHを8未満に低下させることが、脱硫効率の向上に効果的である。
なお、本発明では、高炉吹製水のpHを少なくとも一回8.0未満に低下させればよく、その後pHを8.0以上に調整しても構わない。
図1に示すように、急冷処理直後の高炉吹製水(pH11)は、循環使用の有無に拘わらず、製鉄所内の屋外に設置した水槽(開放型水槽)に貯水して一定時間放置することで、pHが自然に8未満に低下している。
また、上記では、高炉吹製水を屋外に設置した上部開放型の水槽に貯水して放置する手段について述べたが、本発明はこれに限定されず、屋内に設置した水槽に貯水して放置してもよいし、密閉型の水槽に貯水してもよい。
固液接触処理では、鉄鋼スラグに、上記の如き菌含有液を接触させる。鉄鋼スラグに菌含有液を接触させると、菌含有液に含まれる硫黄酸化菌の硫黄酸化能により、鉄鋼スラグに含まれる還元硫黄成分が酸化し、硫化物イオンとして菌含有液に溶出する。これにより、鉄鋼スラグに含まれる還元硫黄成分が、効果的に除去される。
鉄鋼スラグに菌含有液を接触させる方法は、特に限定されない。例えば、処理槽、タンク、カラムといった容器内で鉄鋼スラグと菌含有液とを混合したり、鉄鋼スラグを積み重ねてヒープとし、菌含有液をヒープに散布したり、流入させたりする方法が挙げられる。
酸素存在下とは、高炉吹製水の表面および/または内部が酸素に接触している状態をいう。酸素は100%酸素ガスでもよいし、空気等の酸素含有ガス中の酸素でもよい。酸素含有ガス中の酸素分圧は特に限定されないが、大きいほど好ましい。高炉吹製水の表面および/または内部が酸素と接触する方法は特に限定されず、高炉吹製水の表面を空気に曝したり、高炉吹製水を撹拌して内部に空気を取り込ませたり、および/または高炉吹製水の内部に空気を吹き込んだりすることができる。
菌の栄養成分とは、主に細菌用培地に使用される成分の少なくとも1種類の成分をいい、硫黄酸化菌用の栄養成分としては、例えば還元性の硫黄成分や、窒素、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、コバルト、ニッケル、ホウ素、モリブデン、銅などの成分、ならびにこれらの混合物などが挙げられる。なお、上記還元性の硫黄成分としては、例えば、分子硫黄(S)、硫化物イオン(S2-)、チオ硫酸イオン(S2O3 2-)、亜硫酸イオン(SO3 2-)、ジチオン酸イオン(S2O6 2-)およびこれらの塩、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
なお、固液分離処理で分離した鉄鋼スラグが微粒であるほど硫黄含有量が高くなる理由は定かではないが、再結晶したCaSO4が微粒になることがその理由として考えられる。
なお、繰り返しの形態は特に限定されず、例えば、固液接触処理、水洗処理および脱水処理の各処理を1回以上順次繰り返してもよいし、固液接触処理と水洗処理を1回以上繰り返したのち、脱水処理を行ってもよい。更に、脱水処理後に得られる鉄鋼スラグを篩い分けする処理を行う場合には、例えば固液接触処理、水洗処理、脱水処理および篩い分け処理を、1回以上順次繰り返してもよい。
高炉吹製水を、以下の方法にしたがい3ロット(高炉吹製水1〜3)準備し、これらを空気中に曝露(大気中に放置)してpH変化を測定した。
高炉から排出された溶融スラグ(高炉溶融スラグ)に、高圧水(冷却水)を噴射して急冷処理を施して水冷スラグを製造した後、生成した水砕スラグと冷却水とを分離し、該冷却水を大気に接触する条件で一定時間(0.5〜4h)放置して80℃以下になるように冷却したのち、急冷処理に使用する加圧水として再利用した。以上のようなサイクルで高炉吹製水(冷却水)の循環利用を20日間継続したのち、最終サイクルの急冷処理後の高炉吹製水(冷却水)を、水冷スラグから分離・回収した。次いで、水冷スラグから分離・回収した高炉吹製水を、製鉄所内の屋外に設置した上部開放型の貯水槽に貯水することで大気に接触する状態とし、この状態で4時間放置したのち、高炉吹製水を採取した。
高炉から排出された溶融スラグ(高炉溶融スラグ)に、高圧水(冷却水)を噴射して急冷処理を施して水冷スラグを製造した後、生成した水砕スラグと冷却水とを分離し、該冷却水を大気に接触する条件で一定時間(0.5〜4h)放置して80℃以下になるように冷却したのち、急冷処理に使用する加圧水として再利用した。以上のようなサイクルで高炉吹製水(冷却水)の循環利用を3日間継続したのち、最終サイクルの急冷処理後の高炉吹製水(冷却水)を、水冷スラグから分離・回収した。次いで、水冷スラグから分離・回収した高炉吹製水を、製鉄所内の屋外に設置した上部開放型の貯水槽に貯水することで大気に接触する状態とし、この状態で4時間放置したのち、高炉吹製水を採取した。
高炉から排出された溶融スラグ(高炉溶融スラグ)に、高圧水を噴射して急冷処理を施して水冷スラグを製造した後、急冷処理後の高炉吹製水(高圧水)を、水冷スラグから分離・回収した。次いで、水冷スラグから分離・回収した高炉吹製水を、製鉄所内の屋外に設置した上部開放型の貯水槽に貯水することで大気に接触する状態とし、この状態で4時間放置したのち、高炉吹製水を採取した。
実験1の結果から、高炉吹製水に硫黄酸化菌が存在することが推測される。また、実験1に示すように、高炉吹製水を空気に気曝すると、pHが経時的に低下し、約6以下にまで低下する。そこで、以下の方法にしたがい、馴養高炉吹製水および非馴養高炉吹製水を調製し、これらを曝気しながらpH変化を測定するとともに、pH11からpH6までの任意の点において各高炉吹製水から試料を採取し、PCR−DGGE解析を行うことで細菌叢の解明を試みた。
高炉吹製水に、還元性硫黄成分としてチオ硫酸ナトリウムを終濃度:10mMになるように添加し、更に、KNO3:5mM、K2HPO4:0.1g/L、MgCl2:50μMおよび表1に示す微量金属溶液:1mL/Lになるように各成分を添加し、菌の栄養成分を含む高炉吹製水2Lを調製した。その後、水酸化ナトリウムおよび塩酸を用いてpHを11に調整したのち、曝気しながら70℃で1週間保持し、馴養して馴養高炉吹製水とした。
<非馴養高炉吹製水の調製方法>
高炉吹製水2Lを、水酸化ナトリウムおよび塩酸を用いてpHを11に調整し、非馴養高炉吹製水とした。
馴養高炉吹製水および非馴養高炉吹製水を、それぞれ曝気しながら、70℃で2週間保持した。保持中、各高炉吹製水のpHを経時的に測定し、馴養高炉吹製水においてはpHが11、10、8、7および6の時に、非馴養高炉吹製水においてはpHが10.5、9、8.5、7.5および6.5の時に、それぞれサンプリングを行った。サンプリングした各高炉吹製水を試料として、プライマー341F(配列番号1)およびプライマー907R−GC(配列番号2;プライマー907R(配列番号3)の5’末端にGCクランプを付加したもの)を用いてPCR反応を行い、得られたPCR産物をDGGE解析(例えば、Ishii and Fukui, 2001, Applied and Environmental Microbiology, 67(8): 3753-3755 を参照)に供した。DGGE解析の結果を図3に示す。
この塩基配列をクエリー配列として、GenBankデータベースに対してBLAST検索を行った結果、Thermus scotoductusならびにHydrogenobacter sp.と同定された。Thermus scotoductusは、好気性、混合栄養性のグラム染色陰性桿菌であり、生育至適温度65℃、生育至適pH7.5、pH10.5でも生育すると報告されている(Kristjansson et al., 1994, Systematic and Applied Microbiology, 17(1): 44-50参照)。また、本菌種は硫黄酸化性であることも報告されている(Skirnisdottir et al., 2001, Extremophiles, 5: 45-51参照)。
以下の方法にしたがい、処理液1(本発明例)、処理液2(比較例)、処理液3(本発明例)、処理液4(本発明例)、および処理液5(本発明例)を調製し、各処理液と脱硫スラグとを接触させ(固液接触処理)、脱硫スラグの硫黄除去処理を行った。
処理液1
高炉吹製水(菌含有液)に、KNO3:5mM、K2HPO4:0.1g/L、MgCl2:50μMおよび表1に示す微量金属溶液:1mL/Lとなるように各成分を添加して、菌の栄養成分を含む高炉吹製水2Lを調製し処理液1(本発明例)とした。なお、処理液1の調製に用いた高炉吹製水は前記実験1の高炉吹製水2と同じ高炉吹製水、すなわち高炉から排出された溶融スラグ(高炉溶融スラグ)の急冷処理用の冷却水として3日間循環利用したのち、水冷スラグから分離・回収し、製鉄所内の屋外に設置した上部開放型の貯水槽に貯水し、4時間放置した高炉吹製水である。
KNO3:5mM、K2HPO4:0.1g/L、MgCl2:50μMおよび表1に示す微量金属溶液:1mL/Lを含む溶液2Lを作成し処理液2(比較例)とした。処理液2は、上記高炉吹製水(菌含有液)を添加しないただの栄養溶液である。
アルカリ性硫黄酸化細菌Thioalkalivibrio jannaschii(JCM 11372株)を、Na2CO3:90g/L、NaHCO3:20g/L、NaCl:12g/L、KNO3:5mM、MgCl2:0.02mass%、Na2S2O3:40mMおよび表1に示す微量金属溶液:1mL/Lを含有するpH10の溶液で培養・増殖させたのち、細菌を分離回収した。次いで、KNO3:5mM、K2HPO4:0.1g/L、MgCl2:50μMおよび表1に示す微量金属溶液:2mLを含む栄養溶液2Lに、分離回収した上記細菌を添加したもの(菌含有液)を、処理液3(本発明例)とした。
中性硫黄酸化細菌であるThiobacillus thioparus(JCM3859株)を、KH2PO4:1.5g/L、NaHPO4:4.5g/L、NH4Cl:0.3g/L、MgSO4・7H2O:0.1g/L、Na2S2O3:1mass%および表1に示す微量金属溶液:1mL/Lを含有するSM培地(pH7.5)で培養・増殖させたのち、細菌を分離回収した。次いで、KNO3:5mM、K2HPO4:0.1g/L、MgCl2:50μMおよび表1に示す微量金属溶液:2mLを含む栄養溶液2Lに、分離回収した上記細菌を添加したもの(菌含有液)を、処理液4(本発明例)とした。
前記実験1の高炉吹製水2と同じ高炉吹製水、すなわち高炉から排出された溶融スラグ(高炉溶融スラグ)の急冷処理用の冷却水として3日間循環利用したのち、水冷スラグから分離・回収し、製鉄所内の屋外に設置した上部開放型の貯水槽に貯水し、4時間放置した高炉吹製水を5L用意し、遠心分離によって高炉吹製水中に存在する細菌を分離回収した。次いで、KNO3:5mM、K2HPO4:0.1g/L、MgCl2:50μMおよび表1に示す微量金属溶液:2mLを含む栄養溶液2Lに、分離回収した上記細菌を添加したものを、処理液5(本発明例)とした。
上記処理液1(1000mL)および処理液2(1000mL)の各々に、鉄鋼スラグとして粉砕した後に非金属製の4mm目のふるいを全通させた脱硫スラグ100gを添加して、曝気しながら7日間保持した。曝気保持中、処理液のpHが12以上になりそうになった時には塩酸を添加することで、各処理液のpHが12以上にならないように調整した。また、曝気保持中、各処理液の温度を60℃±5.0℃に管理した。
曝気開始時(0日)、および曝気開始から所定時間経過後(保持時間:1日、3日、5日、7日)に、各処理液のpHを測定した。また、曝気開始から所定時間経過後(保持時間:1日、5日、7日)に、処理液1の硫黄化合物濃度(SO4 2-濃度およびS2O3 2-濃度)を測定した。
各処理液のpH測定結果および硫黄化合物濃度の測定結果を、表3、表4、図4および図5に示す。
以上のように、高炉吹製水に栄養溶液を添加することで、栄養溶液のみでみられる自然酸化によるpH低下を大きく超えるpH低下が観察された。これは、高炉吹製水中の硫黄酸化菌がスラグからの脱硫を促進し、処理液中の硫黄酸化物(硫酸イオンなど)の濃度が高くなったためと考えられる。
以上の結果から、自然酸化によるpH低下を大きく超えるpH低下は、高炉吹製水中に存在する硫黄酸化能力を有する複数種類の細菌のうちのいくつかにより、脱硫スラグに含まれる硫黄成分が、S2O3 2-等の還元性硫黄成分として溶出した後に、SO4 2-に酸化されたことによるものと推測される。
<脱硫スラグの硫黄含有量の分析方法>
脱硫スラグを微粉砕後、試料(微粉砕後の脱硫スラグ)を加湿燃焼分解させる燃焼装置とイオンクロマトグラフを接続させた燃焼−イオンクロマトグラフシステムで、上記スラグの硫黄含有量を分析した。
その結果、細菌を含有しない処理液2を用いて脱硫スラグを処理した場合の硫黄含有量は1.2 mass%であった。これに対し、高炉吹製水を含有する処理液1を用いて脱硫スラグを処理した場合の硫黄含有量は0.7mass%にまで減少していた。
高炉吹製水中の硫黄酸化菌の還元性硫黄成分を酸化する効率に対するpHの影響を調査した。
各高炉吹製水を、曝気しながら、70℃で2週間保持した。保持終了時に、各高炉吹製水の硫酸イオン濃度(SO4 2-濃度)を測定した。その結果を図6に示す。
以上の結果から、高炉吹製水の硫黄酸化菌は、pH12未満またはpH4超の範囲では、高炉吹製水に含有される還元性硫黄成分を酸化して硫酸等の酸を生成できることが明らかになった。したがって、実際に鉄鋼スラグの硫黄除去処理を施す場合においても、固液接触処理中の高炉吹製水のpHをpH12未満、pH4超の範囲に調整することが好ましいと云える。
以下の方法にしたがい、菌含有液を調製し、菌含有液と脱硫スラグとを接触させ(固液接触処理)、脱硫スラグの硫黄除去処理を行った。
高炉吹製水に、KNO3:5mM、K2HPO4:0.1g/L、MgCl2:50μMおよび表1に示す微量金属溶液:1mL/Lとなるように各成分を添加して、菌の栄養成分を含む菌含有液を調製した。
なお、上記処理液の調製に用いた高炉吹製水は、前記実験1の高炉吹製水2と同じ高炉吹製水、すなわち高炉から排出された溶融スラグ(高炉溶融スラグ)の急冷処理用の冷却水として3日間循環利用したのち、水冷スラグから分離・回収し、製鉄所内の屋外に設置した上部開放型の貯水槽に貯水し、4時間放置した高炉吹製水である。
カラム(直径5cm、長さ20cm)に、鉄鋼スラグとして粉砕した後に非金属製の4mm目のふるいを全通させた脱硫スラグ100gを充填した。次いで、70℃に保温した上記菌含有液を流速25mL/hrでアップフロー通液した。通液は、脱硫スラグに対して用いる菌含有液の重量比が20に達するまで通液を継続した。
鉄鋼スラグとして粉砕した後に非金属製の4mm目のふるいを全通させた脱硫スラグ100gを充填したカラム(直径5cm、長さ20cm)を2本用意した。一方のカラム(カラムA)に充填した脱硫スラグは、固液接触処理を施すことにより、硫黄除去処理を行った。他方のカラム(カラムB)に充填した脱硫スラグは、固液接触処理後に水洗処理を施すことにより、硫黄除去処理を行った。各カラムの処理条件は、以下のとおりである。
脱硫スラグを充填したカラムに、上記実施例3で調製した菌含有液であって70℃に保温した菌含有液を流速25mL/hrでアップフロー通液する処理(固液接触処理)を施すことにより、脱硫スラグの硫黄除去処理を行った。菌含有液の通液は、脱硫スラグに対して用いる菌含有液の重量比が200に達するまで通液を継続した。すなわち、カラムに充填した脱硫スラグの質量S(g)に対し、通液した菌含有液の質量L1(g)が、質量比L1/Sで200に達するまで通液を継続した。
脱硫スラグを充填したカラムに、上記実施例3で調製した菌含有液であって70℃に保温した菌含有液を流速25mL/hrでアップフロー通液する処理(固液接触処理)を施したのち、通液を停止し、次いで、蒸留水を流速25mL/hrでアップフロー通水する処理(水洗処理)を施すことにより、脱硫スラグの硫黄除去処理を行った。菌含有液の通液は、カラムに充填した脱硫スラグの質量S(g)に対し、通液した菌含有液の質量L1(g)が質量比L1/Sで20に達した時点で停止した。また、蒸留水の通水は、カラムに充填した脱硫スラグの質量S(g)に対し、通液した菌含有液の質量L1(g)と通水した蒸留水の質量L2(g)の合計質量が質量比(L1+L2)/Sで200に達するまで継続した。
Claims (15)
- 鉄鋼スラグに、硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌を含む菌含有液を接触させる固液接触処理を施すことを特徴とする鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
- 前記菌が、アルカリ性の雰囲気で硫黄または硫黄化合物を酸化する作用を有する菌であることを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
- 前記菌が、高炉溶融スラグの急冷処理を1回以上施した後の高炉吹製水に含まれる菌であることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
- 前記菌含有液が、高炉溶融スラグの急冷処理を1回以上施した後の高炉吹製水であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
- 前記高炉吹製水が、前記急冷処理後のpH8以上の高炉吹製水を、空気に曝露してpHを8未満に低下させる処理を施した高炉吹製水であり、pHが8未満に低下した該高炉吹製水を、酸素存在下で15℃以上80℃以下の温度範囲に管理しながら鉄鋼スラグに接触させることを特徴とする請求項4に記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
- 前記温度範囲を40℃以上80℃以下とすることを特徴とする請求項5に記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
- 前記菌含有液に、前記菌の栄養成分を添加することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
- 前記固液接触処理前の鉄鋼スラグを、二酸化炭素または炭酸塩で処理することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
- 前記固液接触処理後に、前記菌含有液と接触させた後の鉄鋼スラグと前記菌含有液とを分離する固液分離処理を施すことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
- 前記固液接触処理および前記固液分離処理を、少なくとも1回以上繰り返すことを特徴とする請求項9に記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
- 前記固液分離処理で分離した菌含有液を、前記固液接触処理において再利用することを特徴とする請求項9または10に記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
- 前記固液分離処理で分離した鉄鋼スラグを、篩い分けし、該鉄鋼スラグから細粒を除去することを特徴とする請求項9ないし11のいずれかに記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
- 前記固液接触処理後に、前記菌含有液と接触させた後の鉄鋼スラグに水を接触させて該鉄鋼スラグを水洗する水洗処理を施すことを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
- 前記水洗処理後に、水洗後の鉄鋼スラグから水を除去する脱水処理を施すことを特徴とする請求項13に記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
- 前記脱水処理で脱水した鉄鋼スラグを、篩い分けし、該鉄鋼スラグから細粒を除去することを特徴とする請求項14に記載の鉄鋼スラグの硫黄除去処理方法。
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