JP5749916B2 - 熱処理筒状金属部材及びその熱処理筒状金属部材の製造方法 - Google Patents

熱処理筒状金属部材及びその熱処理筒状金属部材の製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、熱処理筒状金属部材及びその熱処理筒状金属部材の製造方法、特に、筒状金属部材の外周面と内周面とを高周波加熱した製品及び方法に関する。
金属部材の焼入れ、焼戻し等の各種熱処理は、金属部材の強靱化、表面の耐摩耗性能の改善、耐疲労強度特性の改善等を目的として、従来から行われてきた。そして、このときの熱処理方法にも、種々の方法が使用されてきたが、装置としての小型化が可能で、短時間での熱処理の可能な方法として、誘導加熱現象を利用して、金属部材に急速な加熱、冷却を施す高周波熱処理(高周波焼入れ)が知られている。
例えば、本件出願人が過去に提唱してきた高周波熱処理に関する技術としては、特許文献1に開示の発明がある。この特許文献1では、薄肉のリング状部材であってもその内周面と外周面を確実に硬化できる高周波焼入方法を提供することを目的として、「リング状部材の内周面と外周面を高周波焼入れする高周波焼入方法において、前記内周面を所定の焼入温度に誘導加熱し、前記内周面に冷却液を噴射して該内周面を急冷して焼入れし、その後、前記外周面を所定の焼入温度に誘導加熱しながら、前記内周面の温度上昇を抑制するための補助冷却液を該内周面に噴射して該内周面を補助冷却することにより該内周面の温度上昇を抑制し、前記内周面を補助冷却すると共に前記外周面を急冷して焼入れすることを特徴とする高周波焼入方法。」を採用している。そして、この発明を用いることで、「外周面は均等に加熱されることとなり、外周面の加熱中に内周面を補助冷却するので、内周面の硬さが低下しない。」との効果を得ている。
ところが、この高周波熱処理方法を用いて、筒状部材、リング状部材等(以下、単に「筒状部材」と称する。)と称される内周面と外周面とを備える金属部材の、双方の周面に熱処理を加えると、当該筒状部材の外周壁面に膨れが発生するという現象が起きていた。この膨れ等の変形現象の発生を防止するため、いくつかの発明が提唱されてきた。
特許文献2には、ブルドーザのような建設機械などに使用される履帯ブッシュおよびその製造方法に関するものであり、より詳しくは耐摩耗性,疲労強度,耐衝撃性に優れた履帯ブッシュおよびその履帯ブッシュをより簡便な方法で低コストで生産する製造方法に関する発明を開示しており、熱処理過程での変形抑制に関する記載も僅かに見られる。この発明においては、請求項1に記載された「0.35重量%C以上の中炭素濃度および/または共析炭素濃度の鋼組成を有し、かつ内外周面からの同時冷却によってスルハード化しても、内周面からの冷却のみでの硬化層厚さが肉厚の1/2以下となるDI値(理想臨界直径)範囲内の合金成分からなる鋼が使用され、外周面および内周面から肉厚中心部に向かって焼き入れ硬化層が形成されるとともに、これら両焼き入れ硬化層間に軟質な不完全焼き入れ層が残されてなり、前記外周面側の焼き入れ硬化層深さが内周面側の焼き入れ硬化層深さより深く形成され、かつ両焼き入れ硬化層間の組織が焼き入れ温度からの冷却過程で析出するフェライト,パーライト,ベイナイトおよびマルテンサイトのうちの1種以上の組織からなり、さらには低温焼き戻しが施されてなることを特徴とする履帯ブッシュ。」を得るために、請求項4に記載のように「履帯ブッシュ素材を焼き入れ処理可能な温度に加熱した後に、内周面冷却と外周面冷却ができる焼き入れ装置を利用して、一回の焼き入れで、内周面からの先行冷却することによって、ブッシュ肉厚断面のより内周面に近い肉厚芯部に軟質層を形成させながら、外周面からの硬化層深さを内周面からの硬化層深さよりもより深く形成させることを特徴とする履帯ブッシュの製造方法。」が採用されている。
そして、特許文献3も、その請求項1の記載として、「炭素含有量が0.35〜2.0重量%で、Mn,Si,Cr,Mo,Ni等の合金元素を1種以上含有し、かつ履帯ブッシュ素材の内外周面からの同時冷却によってスルハード化する焼入れ性の鋼を使用して、前記履帯ブッシュ素材の外周面側からの高周波誘導加熱によって、少なくともその履帯ブッシュ素材の内周表面温度を焼入れ処理可能な温度に加熱した後に、
(1)内周面からの冷却を先行して実施し、
(2)かつ、内周面からの冷却を実施しながら、外周面からの加熱を行い、
(3)次に、外周面からの冷却を施す一連の1回の焼入れ作業によって、
外周面および内周面から肉厚中心部に向かって焼入れ硬化層が形成されて、両焼入れ硬化層間に軟質な未焼入れ層が残されてなり、両焼入れ硬化層間の軟質組織が焼入れ温度からの冷却過程で析出するフェライト,パーライト,ベイナイトおよびマルテンサイトのうちの1種以上の組織またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなることを特徴とする履帯ブッシュ。」とあることから、特許文献2に開示されている、内周面からの先行冷却という点を包含し、その記載内容中に熱処理過程での変形抑制に関する記載も僅かに見られる。
以上に述べた特許文献1及び特許文献2に開示の発明の場合は、そもそもの対象物がブルドーザのような建設機械などに使用される履帯ブッシュであり、比較的大きな製品を対象とした技術であり、小型の部品に適用しても、変形抑制効果を効果的に得ることは困難であった。
これに対し、本件出願人等は、特許文献4に開示したように、筒形金属部材の内周面に対して残留歪みが少なく生産性の高い熱処理が可能な筒形金属部材用熱処理装置の提供を目的として、「筒形金属部材の内周面に対して間隙を設けて挿入される高周波加熱部と、前記間隙に冷却媒体を供給して前記筒形金属部材を内周面側から冷却する第一冷却部と、前記筒形金属部材の外周面を囲繞する保持部材と、前記保持部材の外周面に対して冷却媒体を供給して前記筒形金属部材を外周面側から冷却する第二冷却部と、を備えることを特徴とする筒形金属部材用熱処理装置。」を採用することで、筒形金属部材の内周面に対して、残留歪みの少ない熱処理を施すことができ、また、生産性の高い熱処理を施すことを可能としてきた。
特開2003−27131号公報 特許第3856536号公報 特許第3897434号公報 特開2009−167484号公報
しかしながら、特許文献4に開示の筒形金属部材用熱処理装置の場合には、第一冷却部、第二冷却部及び筒形金属部材が変形を起こすことで、内径及び外径が場所によって大きく変動しないように拘束するための保持部材とを必要とするものであり、設備コストが上昇すると共に、設備の複雑化し、メンテナンスコストも上昇することになると言う欠点があった。
以上に述べてきたことから理解できるように、可能な限り冷却設備を必要とせず、且つ、被熱処理部材の熱変形を強制的に防止するための保持部材も不要な、高周波熱処理方法を用いた筒状部材の内周面及び外周面の表面焼入れ方法が望まれてきた。
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、以下に述べる発明に想到したのである。以下発明毎に分別して述べる。
[熱処理筒状金属部材]
本件出願に係る熱処理筒状金属部材は、筒状金属部材を構成する壁面の外周面及び内周面を高周波熱処理して得られた熱処理筒状金属部材であって、当該筒状部材の径方向に対する垂直断面の結晶組織観察において、当該筒状部材の外周面の一端側から他端側にかけて形成した外周側焼入れ領域に、最大焼入れ厚さK a0 に対して、0.5K a0 〜0.8K a0 の焼入れ深さとするS点を1箇所以上備え、当該筒状部材の内周面の一端側から他端側にかけて形成した内周面側焼入れ領域は、その領域内の焼入れ深さを均一な厚さとしたことを特徴とする。
本件出願に係る熱処理筒状金属部材において、前記筒状金属部材を構成する壁面厚さをTとしたとき、外周面側の最大焼入れ厚さKaoが0.1T〜0.3Tあることが好ましい。
本件出願に係る熱処理筒状金属部材において、前記筒状金属部材を構成する壁面厚さをTとしたとき、内周面側の平均焼入れ厚さKaiが0.15T〜0.4Tであることが好ましい。
[熱処理筒状金属部材の製造方法]
本件出願に係る熱処理筒状金属部材の製造方法は、熱処理筒状金属部材の製造方法であって、当該筒状部材の径方向に対する垂直断面の結晶組織観察において、当該筒状部材の外周面の一端側から他端側にかけて形成した外周側焼入れ領域に高周波加熱法を用いて最大焼入れ厚さK a0 に対して、0.5K a0 〜0.8K a0 の焼入れ深さとするS点を1箇所以上形成し、当該筒状部材の内周面の一端側から他端側にかけて形成した内周面側焼入れ領域は、その領域内の焼入れ深さを均一な厚さとすることで、筒状金属部材の熱処理による変形を抑制することを特徴としたものである。
本件出願に係る熱処理筒状金属部材の製造方法において、当該筒状部材の外周面の一端側から他端側にかけて形成した外周側焼入れ領域、及び、当該筒状部材の内周面の一端側から他端側にかけて形成した内周面側焼入れ領域は、昇温速度580℃/sec.〜3400℃/sec.で、加熱時間0.2sec.〜3.0sec.の短時間の加熱処理を行い焼入れ処理を行い、その後、冷却速度250℃/sec.〜350℃/secで急冷して形成することが好ましい。
そして、この熱処理条件を適正な条件として、更に詳細に言えば、以下の外周面熱処理工程及び内周面熱処理工程に分けて考えることが好ましい。
外周面熱処理工程: 前記筒状金属部材の内周面側を冷却しつつ、筒状金属部材の外周面を、高周波加熱法を用いて、昇温速度3150℃/sec.〜3400℃/sec.で、加熱時間0.2sec.〜0.45sec.の短時間の加熱処理を行い、その後、冷却速度250℃/sec.〜350℃/secで急冷して、当該筒状金属部材の外周面の焼入れ処理を行い、最大焼入れ厚さK a0 に対して、0.5K a0 〜0.8K a0 の焼入れ深さとするS点を1箇所以上備える外周側焼入れ領域を形成する。
内周面熱処理工程: 外周面の焼入れ処理を行い外周側焼入れ領域を形成した当該筒状金属部材の外周面側を冷却しつつ、筒状金属部材の内周面を、高周波加熱法を用いて、昇温速度580℃/sec.〜720℃/sec.で、加熱時間1.0sec.〜2.3sec.の加熱処理を行い、冷却速度250℃/sec.〜350℃/secで急冷して、当該筒状金属部材の内周面の焼入れ処理を行い、その後、焼戻し処理を行い均一な厚さの焼入れ深さを備える内周側焼入れ領域を形成する。
上述のように、本件出願に係る熱処理筒状金属部材は、筒状金属部材を構成する壁面の外周面及び内周面を高周波熱処理して、相互の面に対して、所定の条件を満たす異なる焼入れ状態を備えさせたもので、筒状金属部材の熱処理による変形を抑制したものである。また、このような焼入れ状態は、上述の本件出願に係る熱処理筒状金属部材の製造方法のように、外周面と内周面との加熱時間を変化させることで、容易に形成することが可能である。
本件出願に係る発明を説明する際に用いる円筒状金属部材の外形を示した図である。 本件出願に係る熱処理筒状金属部材の外周側焼入れ領域、内周側焼入れ領域等の、当該筒状部材の径方向に対する垂直断面の結晶組織の存在状態を説明するための図である。 本件出願において、筒状金属部材の内周直径の測定位置を説明するための図である。 本件発明において使用した高周波加熱用コイルの形態を説明するための模式図である。 従来使用していた高周波加熱用コイルの形態を説明するための模式図である。10’高周波加熱用コイル(従来品:比較例での使用コイル) 従来の熱処理筒状金属部材の外周側焼入れ領域、内周側焼入れ領域等の、当該筒状部材の径方向に対する垂直断面の結晶組織の存在状態を説明するための図である。
以下、本件発明に係る熱処理筒状金属部材及び本件出願に係る熱処理筒状金属部材の製造方法に関して詳細に説明する。
[熱処理筒状金属部材の形態]
本件出願に係る熱処理筒状金属部材は、筒状金属部材を構成する壁面の外周面及び内周面を高周波熱処理して得られるものであり、当該筒状部材の径方向に対する垂直断面の結晶組織観察において、「当該筒状部材の外周面の一端側から他端側にかけて形成した外周側焼入れ領域に、1箇所以上の焼入れ深さが浅くなった箇所を備えること」、「当該筒状部材の内周面の一端側から他端側にかけて形成した内周面側焼入れ領域は、その領域内の焼入れ深さを略均一な厚さとすること」に特徴を備え、当該筒状金属部材の熱処理による変形を抑制するという効果を得ている。
本件出願に言う筒状金属部材とは、細長い棒形状をしており、その長手方向の中心軸に沿って、内部がくり抜かれているものをいう。このときの細長い棒形状は、円柱状、三角柱状、4角形以上の多角柱状等の種々の形状を含み、その形状に特段の限定は無い。また、その内部をくり抜いたように形成される内壁面に関しても、当該中心軸に対する垂直横断面形状が、円形状、三角形状、四角形以上の多角形状、レール状溝部を備える円形状等の種々の形状を備えることが可能であり、内壁面形状にも特段の限定は無い。そして、この筒状金属部材の構成成分としては、鋼、鋳鉄、鉄基合金、非鉄金属材等であり、高周波加熱法により焼入れ可能な材質であれば、特段の限定は無い。図1に、本件出願に係る発明を説明する際に用いる円筒状金属部材を例示的に示し、外形を示す際の符号を付しておく。
ここで、当該筒状部材の径方向に対する垂直断面の結晶組織観察において、例えば、鋼材のマルテンサイト組織のような急冷凝固組織領域として確認できる焼入れ領域の形状が、従来製品と異なり、明確に峻別が可能だからである。以下、図2を参照しつつ、説明を行う。この「当該筒状部材の外周面の一端側から他端側にかけて形成した外周側焼入れ領域」とは、図2における符号Aで示す領域である。そして、「当該筒状部材の内周面の一端側から他端側にかけて形成した内周面側焼入れ領域」とは、図2における符号Bで示す領域である。
図2から理解できるように、この「外周側焼入れ領域」は、当該筒状部材の径方向に対する垂直断面の結晶組織をみると、筒状金属部材の長手方向に沿って設けられる。本件出願に係る熱処理筒状金属部材の場合、この外周焼入れ領域の1箇所以上の部位で焼入れ深さが浅くなった箇所(図2におけるS、以下、単に「S点」と称する。)を備えることが特徴である。従来の高周波加熱方式で、筒状金属部材の外周部の焼入れを行うと、長手方向に形成される外周焼入れ領域の一部分が顕著に隆起した形状となり、筒状金属部材の外周寸法を変化させる要因となっていた。この隆起形状は、例えば、鋼材のマルテンサイト変態する際の膨張挙動等の結晶組織の変化に伴う不可逆変形であるため、事後的な冷却で解消するものでもなく、硬化しているために塑性変形させることも困難であり、焼入れにより一旦変形すると、殆ど事後的修正が不可能な永久歪みとなる。
ところが、ここでいうS点を、外周焼入れ領域の、少なくとも1箇所以上に設けることで、外周焼入れ領域の一箇所に集中して発生していた隆起状変形を抑制し、外周焼入れ領域の全体に渡って、なだらかな隆起状態を創り出す。その結果、筒状金属部材の外周焼入れ領域の変形度合いが小さくなり、且つ、隆起の程度も減少し、筒状金属部材の外周寸法を変化を小さくできる。
本件出願に係る熱処理筒状金属部材の高周波加熱による焼入れ領域の変形が問題となるのは、前記筒状金属部材を構成する壁面厚さをTとしたとき、外周面側の最大焼入れ深さKaoが0.1T以上の焼入れ深さとなる場合であり、この深さ未満の焼入れ深さであれば、熱処理筒状金属部材の外周面の変形は実用上の問題が無い。一方、この外周面側の最大焼入れ深さが0.3Tを超えると、焼入れ深さと変形量との関係が複雑化して制御が困難となると共に、これ以上の深さの焼入れ処理に対する市場要求も無い。ここで言う「最大焼入れ深さKao」は、熱処理筒状金属部材の外周壁の径方向に対する垂直断面を得て、この破断面をエッチング処理し、金属顕微鏡で結晶組織観察することで、外周面にある外周側焼入れ領域(鋼製の筒状部材の場合には、加熱後に急冷凝固して得られたマルテンサイト組織領域)を確認し、この外周側焼入れ領域の当該熱処理筒状金属部材の外表面からの最大深さ(最大距離)を測定した値である。このときの最大深さの測定は、熱処理筒状金属部材の壁面の中心部組織と焼入れにより生じた急冷凝固組織とは明瞭に区別可能であるため容易に行える。
そして、本件発明における最大の特徴が、熱処理筒状金属部材の壁面の外周側焼入れ領域において、焼入れ深さが浅くなった箇所(S点)を設ける。このS点における焼入れ深さ(以下、「S点焼入れ深さ」と称する。)が0.5Kao〜0.8Kao であることが好ましい。S点焼入れ深さが0.8Kao よりも厚く、最大焼入れ深さKao に近づくと、S点を設ける効果が薄れ、筒状金属部材の外周焼入れ領域の変形度合いを小さくすることができず、且つ、焼入れに伴う隆起発生も顕著になり好ましくない。一方、S点焼入れ深さが0.5Kao より薄くしても、筒状金属部材の外周焼入れ領域の変形度合いを小さくする効果は飽和し、且つ、高周波焼入れ法を採用して、加熱状態を制御してS点を形成する限界である。
また、本件出願に係る熱処理筒状金属部材において、前記外周側焼入れ領域は、長さLの前記筒状金属部材の外周表面の全体を焼入れ処理する必要はなく、当該筒状金属部材の用途に応じて、当該外周表面を部分的に焼入れ処理しても構わない。しかしながら、本件出願の目的とする所である「筒状金属部材の外周焼入れ領域の変形度合いが小さくして、且つ、隆起の程度を減少させ、結果として、筒状金属部材の外周寸法を変化を小さくする。」という効果を得るには、外周側焼入れ領域を以下の位置に設けることが好ましい。
本件発明における外周側焼入れ領域は、長さLの筒状金属部材の一端側から0〜0.25L離れた位置と、他端側から0〜0.25L離れた位置との間にあることが好ましい。即ち、外周焼入れ領域の先端部を示すC及びCが、図2に示すように存在することを意味している。言い換えれば、外周側焼入れ領域の先端Cが、筒状金属部材の一端側から0〜0.25L離れた位置にある。一方、外周側焼入れ領域の他端側の先端Cも、筒状金属部材の他端側から0〜0.25L離れた位置にある。外周側焼入れ領域が、この領域よりも、筒状金属部材の長手方向中央部に片寄った位置になると、筒状金属部材の外周部における変形領域が中央部に集中して、外周部の変形がむしろ大きくなる。
そして、本件出願に係る長さLの熱処理筒状金属部材において、この外周焼入れ領域のC〜Cの距離に相当する焼入れ長さは、0.65L〜1.00Lであることが好ましい。当該焼入れ長さが0.65L未満の場合には、筒状金属部材の外周に必要な焼入れ領域を満足せず、全体的にみて焼入れ領域が一部に片寄るため、むしろ焼入れによる変形制御が困難となる。
次に、「内周側焼入れ領域」は、当該筒状部材の径方向に対する垂直断面の結晶組織でみると、筒状金属部材の内壁面において、長手方向に沿って、内周面の一端側から他端側にかけて、焼入れ深さを略均一な厚さ(深さ)とした焼入れ層である。そして、本件出願に係る熱処理筒状金属部材において、前記筒状金属部材を構成する壁面厚さをTとしたとき、内周面側の平均焼入れ厚さKaiが0.15T〜0.4Tであることが好ましい。ここで、平均焼入れ厚さKaiが0.15T 未満の場合には、内周面側が焼き入れられて硬化することによる外周表面の引き戻し効果を得ることが出来ず、耐摩耗性、耐疲労強度等の物理的特性の向上も出来ないため好ましくない。一方、平均焼入れ厚さKaiが0.4T を超えても、物理的特性の向上効果も飽和しており、且つ、高周波加熱方式を用いたときの焼入れ深さが不均一となる傾向があるため好ましくない。ここで、焼入れ深さの「略均一な厚さ」とは、当該内周面側の内周側焼入れ領域の焼入れ深さが、平均焼入れ深さの15%以内で変動する程度を想定している。
以上に述べてきたような高周波加熱法を用いた焼入れを行った熱処理筒状金属部材は、焼入れによる外形寸法の変化が少ないため、前記筒状金属部材の中心軸からの内周直径を、長さLの前記筒状金属部材の一端側から他端側に向けて、L/6、L/2、7L/9、5L /6の各位置での内周直径d(L/6)、d(L/2)、d(7L/9)、d(5L /6)の最大値と最小値との差が、当該筒状金属部材の内周直径Di(mm)を基準として、0.0006Di(mm)以下、より好ましくは0.0005Di(mm)以下という品質を備えることが可能である。この内周直径の測定位置を説明するのが図3である。
この図3を参照して、例示的に説明する。焼入れ処理を行う前の筒状金属部材として、外周直径4cm、内周直径3.2cm、壁面厚さ0.4mmの場合を考えてみる。この筒状金属部材に、後述する熱処理筒状金属部材の製造方法を適用して、外周面と内周面との高周波焼入れを行った結果、L/6、L/2、7L/9、5L /6の各位置での内周直径は、以下の表1に示すようにして、内周直径d(L/6)、d(L/2)、d(7L/9)、d(5L /6)の最大値と最小値との差が、当該筒状金属部材の内周直径Di(mm)を基準として、0.0006Di(mm)以下と言う条件を満たすか否かの判断を行う。
Figure 0005749916
この条件を満たす限り、焼入れ後の内周直径は、非常に高い寸法精度を備えることになり、各種軸受け、フランジ等に好適な熱処理筒状金属部材と言える。
[熱処理筒状金属部材の製造形態]
本件出願に係る熱処理筒状金属部材の製造方法は、上述のいずれかに記載の熱処理筒状金属部材の製造方法であって、当該筒状部材の径方向に対する垂直断面の結晶組織観察において、当該筒状部材の外周面の一端側から他端側にかけて形成した外周側焼入れ領域に1箇所以上の位置で焼入れ深さを浅くした箇所を形成し、当該筒状部材の内周面の一端側から他端側にかけて形成した内周面側焼入れ領域は、その領域内の焼入れ深さを略均一な厚さとすることで、筒状金属部材の熱処理による変形を抑制することを特徴としたものである。
本件出願に係る熱処理筒状金属部材の製造方法において、当該筒状部材の外周面の一端側から他端側にかけて形成した外周側焼入れ領域、及び、当該筒状部材の内周面の一端側から他端側にかけて形成した内周面側焼入れ領域は、昇温速度580℃/sec.〜3400℃/sec.で、加熱時間0.2sec.〜3.0sec.の短時間の加熱処理を行い焼入れ処理を行う。この範囲内の加熱条件を組み合わせて用いることで、良好な無き入れ状態が得られる。加熱条件としては、昇温速度580℃/sec.〜3400℃/sec.で、加熱時間0.2sec.〜3.0sec.の短時間の加熱処理を採用することが好ましい。この条件を外れると、高周波加熱法によって、短時間でオーステナイト領域に加熱した結晶組織を、効率よくマルテンサイト化することが出来ないからである。
そして、この熱処理条件を適正な条件として、更に詳細に外周面熱処理工程及び内周面熱処理工程に分けて考えることが好ましい。
外周面熱処理工程: 外周面と内周面との熱処理を分けて行う場合において、前記筒状金属部材の内周面側を冷却しつつ、筒状金属部材の外周面を、高周波加熱法を用いて、昇温速度3150℃/sec.〜3400℃/sec.で、加熱時間0.2sec.〜0.45sec.の短時間の加熱処理を行うことが好ましい。このような短時間加熱条件と、加熱の集中箇所を複数箇所に分散させる方法を採用することで、同一面内の深さ方向で、温度伝達の不均一な状態を創り出すことにより、焼入れ領域の深さに不均一な状態を創り出すことで、焼入れ深さに揺らぎを持たせて、外周面の一端側から他端側にかけて形成した外周側焼入れ領域に1箇所以上の位置で焼入れ深さを浅くした箇所を形成する。例えば、鋼の場合には、最終的にマルテンサイト化する領域を、短時間でオーステナイト領域に加熱することを目的としている(以下、鋼の場合を例にとって説明する。)。即ち、加熱時間が0.2sec.未満の時間では、高周波加熱法では、マルテンサイト化するのに必要なオーステナイト領域への十分な加熱が不可能である。加熱時間が0.45sec.を超えるようになると、焼入れ領域の深さが均一化するため、外周面の一端側から他端側にかけて形成した外周側焼入れ領域に1箇所以上の位置で焼入れ深さを浅くした箇所を形成することが困難となる。このような加熱時間の適正な範囲を基準とすることで、必要となる昇温速度3150℃/sec.〜3400℃/sec.が定まる。
以上のような条件での加熱を行った後は、オーステナイト領域に加熱した部位をマルテンサイト化させるために、直ちに、冷却速度250℃/sec.〜350℃/secで急冷する。この冷却速度250℃/sec.未満の緩やかな冷却速度の場合には、オーステナイト組織からマルテンサイト組織の形成が困難となり好ましくない。一方、冷却速度350℃/sec.を超える冷却速度を得ようとすることは、冷却設備も高価となり製造コストが上昇し、冷却速度を600℃/sec.以上にするとガラス化するようにもなり、品質の安定性を得ることも出来ないため好ましくない。
この外周面の焼入れを行うには、図4に示した高周波加熱用コイル10を使用することが好ましい。従来の高周波加熱用コイル10’は、図5に示すような形態をしている。従来の高周波加熱用コイル10’の内周面11は、図5の下図(断面図)から分かるように、高周波加熱する筒状部材の外周壁に対して平行となる平面を備えている。これに対し、図4から理解できるように、本件発明の中で使用した高周波加熱用コイル10の内壁面11は、高周波加熱する筒状部材の外周壁の中央部に対向する中央部において、当該内壁面の周方向に溝状に段差面12を設けている。
また、図5に示した高周波加熱用コイル10’の高さ方向の厚さT2に比べて、図4に示すように高周波加熱用コイル10の高さ方向の厚さT1を、筒状部材の長さL に対して0.6L〜1.0Lとすることが好ましい。当該T1が0.6L未満の場合には、加熱幅を広くし、「外周側焼入れ領域」を筒状部材の長さL に対して0.65L以上の焼入れ長さとできず、外周側焼入れ領域に1箇所以上の位置で焼入れ深さを浅くした箇所を形成することが困難となるからである。一方、当該T1が1.0L超えるものとしても、高周波加熱用コイル10の内周面形状の設計が複雑となるだけで、特に大きな利点はない。
内周面熱処理工程: 外周面の焼入れ処理を行い外周側焼入れ領域を形成した当該筒状金属部材の外周面側を冷却しつつ、筒状金属部材の内周面を、高周波加熱法を用いて、昇温速度580℃/sec.〜720℃/sec.で、加熱時間1.0sec.〜2.3sec.の加熱処理を行う。ここで理解できるように、外周面熱処理工程の加熱時間(0.2sec.〜0.45sec.)よりも、長い時間の加熱時間を採用している。このような加熱時間を採用することで、同一面内の深さ方向で、温度伝達の均一な状態を創り出し、焼入れ領域の深さを均一な状態とすることで、内周面の一端側から他端側にかけて形成した内周側焼入れ領域の焼入れ深さを可能な限り一様な状態とする。この加熱時間で、マルテンサイト化するのに必要なオーステナイト領域への加熱を行うのに十分な加熱速度として、昇温速度580℃/sec.〜720℃/sec.を定めている。
以上のような条件での加熱を行った後は、オーステナイト領域に加熱した部位をマルテンサイト化させるために、直ちに、冷却速度250℃/sec.〜350℃/secで急冷する。この冷却速度の限定理由は、上述と同様である。
以上に述べてきたような外周面熱処理及び内周面熱処理を行った後には、製品に要求される品質に応じて、各面に焼戻し等の後工程を加えることも可能である。
以下、実施例と比較例とを示し、本件発明に係る内容を、より具体的に示すことにする。
上述の円筒状金属部材に、以下の熱処理を加えて、熱処理円筒状金属部材を得た。以下、工程毎に説明する。なお、以下に述べる実施例及び比較例では、長さL=19mm、壁面厚さをT=5mm、内周直径Di=32mmのS35C製の円筒状金属部材を用いている。
外周面熱処理工程: 前記円筒状金属部材の内周面側を冷却しつつ、高周波加熱法を用いて、円筒状金属部材の外周面を、昇温速度3000℃/sec.で、加熱時間0.4sec.の短時間の加熱処理を行い、その後、冷却速度240℃/sec.で急冷して、当該円筒状金属部材の外周面の焼入れ処理を行った。このときに使用した高周波加熱用コイルの内壁面は、図4の内壁面断面の拡大図に示すa領域が3mm、0.5mmの落差をもって設けた段差面であるb領域が7mm、c領域が3mm、0.5mmの落差をもって設けた段差面であるd領域が2mmであり、コイルの高さT=15mm(筒状金属部材1のL=19mmであるから、Tは0.8Lに相当する。)のものを用いた。
内周面熱処理工程: 外周面の焼入れ処理を行い外周側焼入れ領域を形成した当該筒状金属部材の外周面側を冷却しつつ、円筒状金属部材の内周面を、高周波加熱法を用いて、昇温速度700℃/sec.で、加熱時間1.7sec.の加熱処理を行い、冷却速度240℃/sec.で急冷して、当該円筒状金属部材の外周面の焼入れ処理を行った。
その結果、外周側焼入れ領域は、当該円筒状金属部材(長さL=19mm)の一端側から0.28L(=5.32mm)離れた位置(図2におけるC)から、他端側から0.00L(=0.00mm)離れた位置(図2におけるC)の間に形成され、その外周側焼入れ領域に、最大焼入れ厚さKaoが0.24T(=1.20mm)であり、焼入れ深さが0.5Kao(=0.6mm)の焼入れ深さが浅くなった箇所を、図4に示すように確認できた。一方、当該円筒状金属部材の内周面は、一端側から他端側にかけて形成した内周面側焼入れ領域は、平均焼入れ厚さKaiが0.3T(=1.50mm)の略均一な厚さであった。
比較例
上述の円筒状金属部材に、以下の熱処理を加えて、熱処理円筒状金属部材を得た。以下、工程毎に説明する。
外周面熱処理工程: 前記円筒状金属部材の内周面側を冷却しつつ、円筒状金属部材の外周面を、高周波加熱法を用いて、昇温速度3000℃/sec.で、加熱時間0.4sec.の短時間の加熱処理を行い、その後、冷却速度240℃/sec.で急冷して、図6に示す如きの当該円筒状金属部材の外周面の焼入れ処理を行った。これらの条件は、実施例と同様であるが、使用した高周波加熱用コイルの内周面の形状が、次のように異なる。このときに使用した高周波加熱用コイルの内壁面は、図5に示すように、11mm長さの平面形状(筒状金属部材1のL=19mmであるから、Tは0.58Lに相当する。)を備えたものを用いた。
内周面熱処理工程: 外周面の焼入れ処理を行い外周側焼入れ領域を形成した当該筒状金属部材の外周面側を冷却しつつ、円筒状金属部材の内周面を、高周波加熱法を用いて、昇温速度700℃/sec.で、加熱時間1.7sec.の加熱処理を行い、冷却速度240℃/sec.で急冷して、当該円筒状金属部材の外周面の焼入れ処理を行った。なお、この加熱条件は実施例と同様である。
その結果、外周側焼入れ領域は、当該円筒状金属部材(長さL=19mm)の一端側から0.35L(=6.65mm)離れた位置(図2におけるC)から、他端側から0.00L(=0.00mm)離れた位置(図2におけるC)の間に形成され、その外周側焼入れ領域に、最大焼入れ厚さKaoが0.33T(=1.65mm)であり、焼入れ深さが浅くなった箇所の無い、図5に示すような焼入れ状態が確認できた。一方、当該円筒状金属部材の内周面は、一端側から他端側にかけて形成した内周面側焼入れ領域は、平均焼入れ厚さKaiが0.29T(=1.45mm)の略均一な厚さであった。
[実施例と比較例との対比]
以下、実施例と比較例との差異を、前記円筒状金属部材の中心軸からの内周直径を、長さLの前記筒状金属部材の一端側から他端側に向けて、L/6、L/2、7L/9、5L /6の各位置で測定した内周直径d(L/6)、d(L/2)、d(7L/9)、d(5L /6)の最大値と最小値との差が、当該筒状金属部材の内周直径Di(mm)を基準として、0.0006Di(mm)以下であるか否かにより評価する。この測定結果を、以下の表2に示す。
Figure 0005749916
この表2から理解できるできるように、実施例の場合には「筒状金属部材の内周直径Di(mm)の、0.0006Di(mm)以下」という条件を完全に満たしているが、比較例の場合には、この条件を満たしていない。よって、比較例の方が明らかに、焼入れ後の変形の度合いが大きいことが理解できる。
本件出願に係る熱処理筒状金属部材は、筒状金属部材を構成する壁面の外周面及び内周面を高周波熱処理して、上述のように、相互の面に異なる焼入れ状態を備えさせることで、筒状金属部材の熱処理による変形を抑制したものである。よって、種々の形状の筒状部材に適用可能である。また、本件出願に係る製造方法を用いれば、このような焼入れ状態は、外周面と内周面との加熱時間を変化させることのみで得ることが出来るとも言えるため、新たな製造設備を要することなく、経済性に優れたものとなる。
1 筒状金属部材
2 外周側焼入れ領域
3 内周側焼入れ領域
10 高周波加熱用コイル(実施例での使用コイル)
10’高周波加熱用コイル(従来品:比較例での使用コイル)
11、11’高周波加熱用コイル内周面
12 段差面
筒状金属部材長さ
筒状金属部材の内径
筒状金属部材壁面の厚さ
A 外周側焼入れ領域の焼入れ長さ
B 内周側焼入れ領域の焼入れ長さ

Claims (6)

  1. 筒状金属部材を構成する壁面の外周面及び内周面を高周波熱処理して得られた熱処理筒状金属部材であって、
    当該筒状部材の径方向に対する垂直断面の結晶組織観察において、当該筒状部材の外周面の一端側から他端側にかけて形成した外周側焼入れ領域に、最大焼入れ厚さK a0 に対して、0.5K a0 〜0.8K a0 の焼入れ深さとするS点を1箇所以上備え、
    当該筒状部材の内周面の一端側から他端側にかけて形成した内周面側焼入れ領域は、その領域内の焼入れ深さを均一な厚さとしたことを特徴とする熱処理筒状金属部材。
  2. 前記筒状金属部材を構成する壁面厚さをTとしたとき、外周面側の最大焼入れ厚さKaoが0.1T〜0.3T である請求項1に記載の熱処理筒状金属部材。
  3. 前記筒状金属部材を構成する壁面厚さをTとしたとき、内周面側の平均焼入れ厚さKaiが0.15T〜0.4Tである請求項1又は請求項2に記載の熱処理筒状金属部材。
  4. 熱処理筒状金属部材の製造方法であって、
    当該筒状部材の径方向に対する垂直断面の結晶組織観察において、当該筒状部材の外周面の一端側から他端側にかけて形成した外周側焼入れ領域に高周波加熱法を用いて最大焼入れ厚さK a0 に対して、0.5K a0 〜0.8K a0 の焼入れ深さとするS点を1箇所以上形成し、
    当該筒状部材の内周面の一端側から他端側にかけて形成した内周面側焼入れ領域は、その領域内の焼入れ深さを均一な厚さとすることを特徴とした熱処理筒状金属部材の製造方法。
  5. 当該筒状部材の外周面の一端側から他端側にかけて形成した外周側焼入れ領域、及び、当該筒状部材の内周面の一端側から他端側にかけて形成した内周面側焼入れ領域は、昇温速度580℃/sec.〜3400℃/sec.で、加熱時間0.2sec.〜3.0sec.の短時間の加熱処理を行い焼入れ処理を行い、その後、冷却速度250℃/sec.〜350℃/secで急冷して形成するものである請求項4に記載の熱処理筒状金属部材の製造方法。
  6. 以下の外周面熱処理工程及び内周面熱処理工程を備える請求項4又は請求項5に記載の熱処理筒状金属部材の製造方法。
    外周面熱処理工程: 前記筒状金属部材の内周面側を冷却しつつ、筒状金属部材の外周面を、高周波加熱法を用いて、昇温速度3150℃/sec.〜3400℃/sec.で、加熱時間0.2sec.〜0.45sec.の短時間の加熱処理を行い、その後、冷却速度250℃/sec.〜350℃/secで急冷して、当該筒状金属部材の外周面の焼入れ処理を行い、最大焼入れ厚さK a0 に対して、0.5K a0 〜0.8K a0 の焼入れ深さとするS点を1箇所以上備える外周側焼入れ領域を形成する。
    内周面熱処理工程: 外周面の焼入れ処理を行い外周側焼入れ領域を形成した当該筒状金属部材の外周面側を冷却しつつ、筒状金属部材の内周面を、高周波加熱法を用いて、昇温速度580℃/sec.〜720℃/sec.で、加熱時間1.0sec.〜2.3sec.の加熱処理を行い、冷却速度250℃/sec.〜350℃/secで急冷して、当該筒状金属部材の内周面の焼入れ処理を行い、その後、焼戻し処理を行い均一な厚さの焼入れ深さを備える内周側焼入れ領域を形成する。
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