JP5748203B2 - 調味料の製造方法 - Google Patents
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係る日本酒の特色(調味料としての優れた側面)に着目して、日本酒としての風味を生かした上で、その旨味を向上して、調味料として効果がより優れているものを製造したいという要請が存在する。
しかし、係る要請に応えることが出来る日本酒或いは調味料は、未だに提案されていない。
しかし、係る従来技術(特許文献1)は甘酒を用いるものであり、日本酒としての風味を有するものではなく、上記した要請に応えることは出来ない。
ここで、前記魚醤としては、例えば、鮭を原料とした醤油であるのが好ましいが、鮭以外の魚を原料とする醤油(鮭醤油以外の魚醤)であっても良い。
そのため、本発明で製造される調味料は、大量のアミノ酸により、極めて豊かな旨味を有する。
従って、本発明により製造される調味料は、料理の調味料として、特に、いわゆる「和食」の調味料として、極めて優秀である。
そして、酒税が課税されないため、本発明で製造された調味料は、一般消費者に対して安価に提供することが可能になる。
図1は、製造ライン(全体の符号Lで示す)の構成を、製造工程に関連したブロック(或いは、装置)で示している。
図1において、製造ラインLは、材料投入装置1、攪拌装置2、圧搾装置3、オリ除去装置4、加熱装置5、冷却装置6、充填装置7、梱包装置8を有している。
攪拌装置2は、攪拌容器(以下、「醸造用タンク」と言う)20と、攪拌機(例えば、攪拌翼)21とを備えている。
圧搾装置3は、圧搾容器30と圧搾機31とを有している。
オリ除去装置4は、オリ引き用タンク40と沈殿物除去機構41を備えている。
加熱装置5は、加熱容器50とプレートヒーター51と備えている。
図2において、先ず、仕込み工程S1では、材料投入装置(例えばホッパー)1を用いて、以下の投入材料を、攪拌装置2の醸造用タンク20に投入する。醸造用タンク20に代えて、桶を使用しても良い。
投入材料として、白米の蒸米、すなわち、通常の「うるち米」を蒸して醸造用タンク20に投入する。
白米の蒸米に代えて、「飯」(炊いた白米)を用いても良い。なお、白米ではなく酒米を使用することも可能である。
ただし、白米の蒸米(或いは、飯)の配合率は、10%〜50%の範囲とすることが出来る。白米の蒸米(或いは、飯)の配合率が10%未満では、生成されるアルコールの量が少なくなる。一方、白米の蒸米(或いは、飯)の配合率が50%を超える場合には、アルコールは生成されるが、風味が劣ることが発明者の実験で確認されている。また、白米の蒸米或いは、飯の配合率が50%を超えると、米が分解しきらずに、糖化されず、アルコールも生成せずに、硬くなった状態で残存してしまい、不経済である。
図示の実施形態では、米麹の全材料に対する配合率は、配合率4%であった。
ただし、米麹の全材料に対する配合率は、2%〜30%の範囲内とすることが出来る。米麹の配合率が2%未満では米が分解することなく、したがって、アルコールの原料である糖が十分に生成されない。一方、米麹の配合率が30%を超えると米の分解は進むが、米麹を大量に投入する分だけ費用が嵩み、不経済である。
ここで、水の全材料に対する配合率は、10%〜70%の範囲内であれば良い。水の配合率が10%未満だと固すぎて、後の工程で搾ることが出来なくなってしまう。一方、水の配合率が70%を超えると、後の醗酵過程において、相対的にアルコール分が低くなってしまい、味も薄くなり、調味料としての風味が不十分になってしまう。
ここで、乳酸の全材料に対する配合率は、0.5%以下であれば良い。
但し、乳酸を投入しないことは不都合である。乳酸を使用しないと雑菌に汚染され易いからである。一方、乳酸の配合率が0.5%を超えると酸味が強くなり、調味料としての味に影響を及ぼしてしまう。
その後、発酵、醸造して、最終的に本発明の製品(日本酒風の調味料)になる。
図示の実施形態では、鮭醤油の配合率は23.3%である。ただし、鮭醤油の全材料に対する配合率は、5%〜40%の範囲とすることが出来る。
鮭醤油の配合率が5%未満では、旨味の基であるアミノ酸が不足すると共に、塩分が不足して、調味料として味が薄くなり過ぎてしまう。
一方、鮭醤油の配合率が40%を超えると日本酒感が薄れ、且つ、塩分が過剰となり、醗酵に支障を来たす。酵母菌は、塩分濃度(配合率)が5%以下であれば機能するが、0.5%を超えると機能は鈍化するからである。換言すれば、塩分濃度が5%よりも高いと、耐塩性酵母は活動出来ても、酵母菌は機能しなくなってしまうのである。
図示の実施形態では、酵母菌の配合率は0.19%である。ただし、酵母菌の配合率は、0.5%以下であれば良い。
ここで、酵母菌を投入しないと、アルコールの産出が鈍化してしまうので不都合である。
一方、酵母菌の配合率が0.5%を超えると、酵母菌投入量が増加する分だけ、生産コストを押し上げてしまう。
図示の実施形態では、耐塩性酵母の配合率は0.04%であった。ここで、耐塩性酵母の配合率は、0.2%以下であれば良い。
しかし、耐塩性酵母を使用しないと、醗酵速度が遅くなり、アルコールの産出が鈍化するので、不都合である。
一方、耐塩性酵母の配合率が0.2%を超えると、耐塩性酵母の投入量が増加するため、生産コストを押し上げてしまう。
図2において、攪拌・醗酵工程S2の内、攪拌過程では、攪拌装置20の攪拌翼21を回転して、醸造用タンク20内の材料(ステップS1で投入された材料)を攪拌する。攪拌は、特に、白米をほぐして、全ての材料が均一の混合されるようにするために行なわれる。
なお、攪拌装置20の攪拌翼21による機械的な攪拌に代えて、櫂を使った手作業で攪拌しても良い。
図示の実施形態では、仕込みの際に、醸造用タンク20の温度は、20℃に維持されている。ただし、醸造用タンクの温度は15℃〜30℃の範囲内であれば良い。醸造用タンクの温度が15℃未満であると、麹や酵母の活性が低くなってしまう。一方、醸造用タンクの温度が30℃を超えると、雑菌が繁殖してしまうからである。
攪拌・醗酵工程S2の発酵過程(もろみ製造)の間も、攪拌が行なわれる。
発酵は、米麹で澱粉を糖化する段階と、糖からアルコールを生成する段階の2段階で行なわれる。
図示の実施形態では、酒母の生成の過程では、醸造用タンク20の温度を20℃で、14日間行なった。そして、アルコール生成の過程では、醸造用タンク20の温度を13℃で、15日間行なった。
ここで、「酒母」の生成過程では、醸造用タンク内の温度は10℃〜30℃の範囲内とする。ただし、温度条件にもよるが、酒母の生成には、少なくとも3日間が必要である。
アルコールの生成過程では、醸造用タンク内の温度を10℃〜20℃とするべきである。温度条件にもよるが、アルコール濃度が10%に達するには、少なくとも7日間が必要である。
圧搾機31で搾り出した「オリ」を含んだ液体は、オリ除去装置4のオリ引き用タンク40に移される。
搾り袋32の布を透過した液体には一部が「オリ」(にごり分)となってオリ引き用タンク40内の液体に混じっている。そこで、オリ引き用タンク40において、低温で静置させて、オリを沈殿させる。そして、沈殿したオリは、オリ除去機構41によって吸引され、除去される。そして、ステップS5に進む。
「火入れ」をして、酵母を失活させないと、製造された調味料内で生物学的反応が進行してしまい、賞味期限前に変質してしまう恐れがある。従って、「火入れ」は必須工程である。
図示の実施形態では、火入れ工程では、65℃で材料を20分加熱している。ここで、火入れ工程は、加熱温度及び加熱時間は、60℃(加熱時間:30分間)〜100℃(加熱時間:1分間)の範囲で行なわれる。加熱温度が60℃未満では微生物は失活せず、加熱温度が100℃以上では、製造された調味料の風味を損なってしまう。
火入れについては、温度のみならず、加熱時間も影響する。
また、温度と時間について、何れか一方或いは双方が超過すると、調味料の風味を損ねてしまう。
また、当該調味料を用いて調理した料理は、日本酒の不可飲処置で食塩を投入した場合に比較して、アミノ酸の含量が非常に多い調味料として推奨できる。
そのため、本発明で製造された調味料は、不可飲処置が施されることになり、税法上は、酒税が課税される「酒」ではなく、「食品」に分類される。
酒税が課税されないため、本発明で製造された調味料は、一般消費者に対して安価に提供することが可能になる。
以下において、図示の実施形態における配合や条件の範囲に関する実験について、説明する。
白米の蒸米、米麹(Aspergillus oryzae)、水、乳酸、鮭醤油、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)、耐塩性酵母を図示の実施形態と同一の配合で、醸造用タンク20に投入し、実施形態と同一の条件で攪拌して、タンク20内の温度を10℃〜20℃の範囲で、2.5℃ずつ変化させて、米麹(Aspergillus oryzae)及び酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)の活性をチェックした。
米麹(Aspergillus oryzae)の活性のチェックは、糖化の割合を調べることにより行なった。
酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)の活性のチェックは、アルコール生成量を調べることにより行なった。
表1に実験例1の結果を示す。
表1
表1より、醸造用タンク内の温度は15℃以上が適当であることが分る。
実験例1と同様な条件で、ただし、醸造タンク内の温度を25℃〜40℃の範囲で、5.0℃ずつ変化させて、雑菌の繁殖をチェックした。
雑菌の繁殖は、醸造用タンク内の攪拌された内容物を微小の単位量だけ取り出し、標準寒天平板培養法により、一般生菌数をチェックした。
表2に実験例2の結果を示す。
表2
表2より、醸造用タンク20内の温度は30℃以下が適当であることが分る。
実験例1、実験例2から、醸造用タンク20内の温度は15℃〜30℃の範囲とするべきことが確認された。
米麹(Aspergillus oryzae)、水、乳酸、鮭醤油、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)、耐塩性酵母を図示の実施形態と同一の配合で、醸造用タンク20に投入し、実施形態と同一の温度で攪拌した。そして、白米の蒸米の配合率を、6.0%〜14.0%の範囲で、2.0%ずつ変化させて、アルコール生成量をチェックした。
実験例3の結果を表3に示す。
表3
表3より、白米の配合率は10%以上が適正であることが分る。
実験例3と同様な条件で、ただし、白米の蒸米の配合率を、40.0%〜60.0%の範囲で、5.0%ずつ変化させて、5種類のサンプルを作成した。そして、各配合率のサンプル毎に、発酵、搾り、オリ引き、火入れ、冷却を行ない、製造された調味料の風味をチェックした。
風味のチェックは、10人の被験者の味覚により行なった。
実験例4の結果を表4に示す。
表4
なお、白米の蒸米の配合率が40.0%のサンプル、45.0%のサンプル、50.0%のサンプルでは、絞りの段階で、分解していない白米は確認されなかったが、白米の蒸米の配合率が55.0%のサンプル、60.0%のサンプルでは、分解されていない白米が確認された。
表4より、製造された調味料において、日本酒のような独特の風味或いは旨味を得るためには、白米の蒸米の配合率は50%までとするのが適当であることが分った。
実験例3、実験例4から、白米の蒸米の配合率は、10%〜50%にするべきことが確認された。
白米の蒸米、水、乳酸、鮭醤油、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)、耐塩性酵母を図示の実施形態と同一の配合で、醸造用タンク20に投入し、実施形態と同一の温度で攪拌した。そして、米麹(Aspergillus oryzae)の配合率を、1.0%〜3.0%の範囲で、0.5%ずつ変化させて、糖の生成量をチェックした。
実験例5の結果を表5に示す。
表5
実験例5から、米麹(Aspergillus oryzae)の配合率は、2.0%以上とするべきことが分かった。
実験例5と同様な条件で、ただし、米麹(Aspergillus oryzae)の配合率を、25.0%〜45.0%の範囲で、5.0%ずつ変化させて、4種類のサンプルを作成した。そして、各配合率のサンプル毎に、発酵、搾り、オリ引き、火入れ、冷却を行ない、製造された調味料の風味をチェックした。
風味のチェックは、10人の被験者の味覚により行なった。
実験例6の結果を表6に示す。
表6
表6から、米麹(Aspergillus oryzae)の配合率が多くても、製造された調味料の風味や旨味に悪影響を及ぼさないことが確認された。
しかしながら、米麹(Aspergillus oryzae)の配合率が多過ぎると、不経済となることが判明した。
発明者の試算によれば、米麹(Aspergillus oryzae)の配合率において、不経済になるか否かのしきい値は、「30.0%」であった。
実験例5、実験例6から、米麹(Aspergillus oryzae)の配合率は2.0%〜30.0%とするべきことが確認された。
白米の蒸米、米麹(Aspergillus oryzae)、乳酸、鮭醤油、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)、耐塩性酵母を図示の実施形態と同一の配合で、醸造用タンク20に投入し、実施形態と同一の温度で攪拌した。そして、水の配合率を、5.0%〜15.0%の範囲で、2.5%ずつ変化させて、攪拌のし易さについて確認した。
攪拌のし易さについては、醸造用タンク20の攪拌装置2における攪拌翼21を回転するのに必要なトルクを計測することにより行なった。
実験例7の結果を表7に示す。
表7
水の配合率が5.0%のサンプルと、7.5%のサンプルでは、醸造用タンク20内の内容物が硬くて、攪拌翼21が回転しなかった。
表7の結果から、水の配合率は10.0%以上とするべきことが分かる。
実験例7と同様な条件で、ただし、水の配合率を、60.0%〜80.0%の範囲で、5.0%ずつ変化させて、5種類のサンプルを作成した。そして、各配合率のサンプル毎に、発酵、搾り、オリ引き、火入れ、冷却を行ない、製造された調味料の風味をチェックした。
風味のチェックは、10人の被験者の味覚により行なった。
実験例8の結果を表8に示す。
表8
水の配合率が75.0%のサンプルと、80.0%のサンプルについて、被験者は、何れも、「味が薄く、風味にかける」という感想を述べた。また、75.0%のサンプルと、80.0%のサンプルでは、水の配合率が70.0%以下の3種類のサンプルに比較して、アルコール生成量が有意に少なかった。
係る実験結果から、水の配合率は70.0%以下とするべきことが分かった。
そして、実験例7、実験例8から、水の配合率は10.0%〜70.0%とするべきことが確認された。
白米の蒸米、米麹(Aspergillus oryzae)、水、鮭醤油、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)、耐塩性酵母を図示の実施形態と同一の配合で、醸造用タンク20に投入し、実施形態と同一の温度で攪拌した。そして、乳酸を添加したサンプルと、添加していないサンプルを作成し、各サンプルにおける雑菌の繁殖状況をチェックした。
ここで、雑菌の繁殖状況は、実験例2と同様な手法でチェックした。
実験例9の結果を表9に示す。
表9
表9から、乳酸菌は必ず添加するべき旨が理解される。
白米の蒸米、米麹(Aspergillus oryzae)、水、鮭醤油、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)、耐塩性酵母を図示の実施形態と同一の配合で、醸造用タンク20に投入し、実施形態と同一の温度で攪拌した。そして、乳酸の配合率を、0.1%〜0.7%の範囲で、0.1%ずつ変化させて、7種類のサンプルを作成した。そして、各配合率のサンプル毎に、発酵、搾り、オリ引き、火入れ、冷却を行ない、製造された調味料の風味をチェックした。
風味のチェックは、10人の被験者の味覚により行なった。
実験例10の結果を表10に示す。
表10
表10の結果から、乳酸の配合率が0.5%以下にするべきことが分かった。
そして、実験例9、実験例10から、乳酸は添加するべきであるが、その配合率は0.5%以下とするべきことが確認された。
白米の蒸米、米麹(Aspergillus oryzae)、水、乳酸、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)、耐塩性酵母を図示の実施形態と同一の配合で、醸造用タンク20に投入し、実施形態と同一の温度で攪拌した。そして、鮭醤油(塩分15%含有)の配合率を、3.0%〜7.0%の範囲で、1.0%ずつ変化させて、5種類のサンプルを作成した。そして、各配合率のサンプル毎に、発酵、搾り、オリ引き、火入れ、冷却を行ない、製造された調味料の風味をチェックした。
風味のチェックは、10人の被験者の味覚により行なった。
実験例11の結果を表11に示す。
表11
その他のサンプル(鮭醤油の配合率が5.0%以上である3種類のサンプル)については、図示の実施形態と同様な風味があると判定した(表11の「○」)。
表11から、鮭醤油の配合率が5.0%以上にするべきことが分かった。
実験例11と同様な条件で、ただし、鮭醤油の配合率を、30.0%〜50.0%の範囲で、5.0%ずつ変化させて、5種類のサンプルを作成した。そして、各配合率のサンプル毎に、発酵、搾り、オリ引き、火入れ、冷却を行ない、製造された調味料の風味をチェックした。
風味のチェックは、10人の被験者の味覚により行なった。
実験例12の結果を表12に示す。
表12
その他のサンプル(鮭醤油の配合率が40.0%以下の3種類のサンプル)については、図示の実施形態と同様な風味があると判定した(表12の「○」)。
表12から、鮭醤油の配合率が40.0%以下にするべきことが分かった。
そして、実験例11、実験例12から、鮭醤油の配合率は5.0%〜40.0%にするべきことが確認された。
白米の蒸米、米麹(Aspergillus oryzae)、水、乳酸、鮭醤油、耐塩性酵母を図示の実施形態と同一の配合で、醸造用タンク20に投入し、実施形態と同一の温度で攪拌した。そして、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)を添加したサンプルと、添加していないサンプルを作成し、各サンプルにおけるアルコール生成量を比較した。
その結果を、表13に示す。
表13
表13から、酵母菌は添加するべきことが判明した。
実験例13と同様な条件で、ただし、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)の配合率を、0.1%〜0.7%の範囲で、0.1%ずつ変化させて、アルコールの生成量をチェックした。
実験例14の結果を表14に示す。
表14
表14から明らかなように、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)の配合率が0.1%〜0.7%の範囲では、アルコール生成量は適正であった。
しかしながら、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)の配合率が多過ぎると、不経済となることが判明した。
発明者の試算によれば、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)の配合率において、不経済になるか否かのしきい値は、「0.5%」であった。
実験例13、実験例14から、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)の配合率は、0.5%以下とするべきことが確認された。
白米の蒸米、米麹(Aspergillus oryzae)、水、乳酸、鮭醤油、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)を図示の実施形態と同一の配合で、醸造用タンクに投入し、実施形態と同一の温度で攪拌した。そして、耐塩性酵母を添加したサンプルと、添加していないサンプルを作成し、各サンプルにおけるアルコール生成量を比較した。
その結果を、表15に示す。
表15
表15から、耐塩性酵母は添加するべきことが判明した。
実験例15と同様な条件で、ただし、耐塩性酵母の配合率を、0.1%〜0.5%の範囲で、0.1%ずつ変化させて、アルコールの生成量をチェックした。
実験例16の結果を表16に示す。
表16
表16から明らかなように、耐塩性酵母の配合率が0.1%〜0.5%の範囲では、アルコール生成量は適正であった。
しかしながら、耐塩性酵母の配合率が多過ぎる場合も、不経済である。発明者の試算によれば、耐塩性酵母の配合率において、不経済になるか否かのしきい値は、「0.2%」であった。
実験例15、実験例16から、耐塩性酵母の配合率は、0.2%以下とするべきことが確認された。
白米の蒸米、米麹(Aspergillus oryzae)、水、乳酸、鮭醤油、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)、耐塩性酵母を図示の実施形態と同一の配合で、醸造用タンク20に投入し、実施形態と同一の条件で攪拌した。その後、発酵工程における醸造用タンク20内の温度を0℃〜35℃の範囲で、5.0℃ずつ変化させて、酒母(もろみを発酵させるための酵母を培養したもの)の生成状態をチェックした。
表17に実験例17の結果を示す。
表17
表17において、「×」となった温度が0℃、5℃の場合は、低温過ぎて、酒母が生成されなかったと推定される。一方、温度が35℃の場合は、高温過ぎて、酒母の活動能力が阻害されたと推定される。
実験例17から、発酵の第1段階(「酒母」の生成過程)では、醸造用タンク内の温度を10℃〜30℃とするべきことが確認された。
なお、発明者の実験では、温度条件にもよるが、酒母の生成には、少なくとも3日間が必要であった。
白米の蒸米、米麹(Aspergillus oryzae)、水、乳酸、鮭醤油、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)、耐塩性酵母を図示の実施形態と同一の配合で、醸造用タンク20に投入し、実施形態と同一の条件で攪拌し、醸造用タンク20内の温度を14日間に亘って20℃に維持して、酒母を生成した。
そして、醸造用タンク20内の温度を0℃〜30℃の範囲で、5.0℃ずつ変化させて、アルコールの生成状態をチェックした。アルコールの生成状態のチェックは、アルコール濃度が10%以上に達したか否かで判断した。
表18に実験例18の結果を示す。
表18
表18において、「×」となった温度が0℃、5℃の場合は、低温過ぎて、もろみの糖化と発酵が十分に行なわれなかったためであると推定される。一方、温度が25℃、30℃の場合は、高温過ぎて、酒母(或いは酵母)の活動能力が衰退したと推定される。
実験例18から、発酵の第2段階(もろみの糖化と発酵)では、醸造用タンク内の温度を10℃〜20℃とするべきことが確認された。
発明者の実験では、温度条件にもよるが、アルコール濃度が10%に達するには、少なくとも7日間が必要であった。
白米の蒸米、米麹(Aspergillus oryzae)、水、乳酸、鮭醤油、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)、耐塩性酵母を図示の実施形態と同一の配合で、醸造用タンク20に投入し、図示の実施形態と同一の条件で攪拌し、発酵、オリ引きを行なった。
そして、「火入れ」の温度を50℃〜70℃の範囲で5℃ずつ変化させて、酵素、酵母が失活したか否かをチェックした。
実験例19の結果を、表19で示す。
表19
実験例19から、火入れにより酵母や酵素を失活させるには、60℃以上に加熱するべきことが分かった。
実験例19と同じ条件で、ただし、「火入れ」の温度を90℃〜110℃の範囲で5℃ずつ変化させて、出来上がった調味料の風味をチェックした。
風味のチェックについては、実験例12と同様に、10人の被験者の味覚により行なった。
実験例20の結果を、表20で示す。
表20
実験例20から、調味料の風味を損なわないためには、加熱温度は100℃以下にするべきことが分かった。
実験例19、実験例20から、火入れの際の加熱温度は、60℃〜100℃の範囲とするべきことが明らかになった。
なお、火入れに際しては、加熱温度と同様に、加熱時間も関係する。
発明者の実験では、加熱温度が60℃であっても、加熱時間が30分を超えると、風味が損なわれた。また、加熱温度が100℃の場合には、風味を損なわないためには、加熱時間を1分以内とするべきことが分かった。
実験例21では、図示の実施形態の配合と異なる配合の調味料(表21の配合の調味料)と、図示の実施形態と同様の配合の調味料(表22の配合の調味料)における成分を分析した。
醸造タンク20内を20℃に保ち、2週間かけて発酵させた。なお、火入れ工程では、加熱温度を65℃とし、これを20分間維持した。
下表21で示す配合では鮭醤油は添加されていないが、下表22で示す配合では鮭醤油が添加されている。
表21
表22
表23において、「w/v」は比重を示している。
表23
一方、鮭醤油を添加した場合(表22)は、鮭醤油を添加しない場合(表21)に比較して、たんぱく質が顕著に増加している。
また、アミノ酸含有量についても、鮭醤油を添加した場合(表22)は、鮭醤油を添加しない場合(表21)に比較して、顕著に増加している。
実験例21から、図示の実施形態で製造とされた調味料は、旨味が際立って増加することが確認された。
例えば、図示はされていないが、鮭醤油に代えて、通常の醤油を使用しても、風味に富んだ調味料を製造することができた。
また、鮭醤油(鮭の魚醤)以外の魚醤として、鰹、さば、鰯、ハタハタ、その他の魚醤を用いても、風味に富んだ調味料を製造することができた。
さらに、鮭醤油に代えて、味噌を使用しても、風味に富んだ調味料を製造することができた。
これ等において、使用する材料の配合率は、図示の実施形態で説明した数値或いは範囲と全く同一にして、風味に富んだ調味料を製造することが出来た。
2・・・攪拌装置
3・・・圧搾装置
4・・・オリ除去装置
5・・・加熱装置
6・・・冷却装置
20・・・醸造用タンク
21・・・攪拌翼
30・・・圧搾容器
31・・・圧搾機
40・・・オリ引き用タンク
50・・・加熱容器
51・・・プレートヒーター
Claims (1)
- 米を原料とする調味料の製造方法において、蒸した白米或いは炊いた白米を10〜50重量%と、米麹を2〜30重量%と、水を10〜70重量%と、乳酸を0.16〜0.2重量%と、魚醤を5〜40重量%と、酵母菌を0.1〜0.5重量%と、耐塩性酵母を0.1〜0.2重量%とを醸造用容器(20)に投入する仕込み工程(S1)と、前記醸造用容器(20)内に投入された材料を撹拌し発酵する発酵工程(S2)と、前記醸造用容器内で発酵した材料を搾り袋(32)に入れて圧搾機(31)でプレスする搾り工程(S3)と、搾り袋(32)の布を透過して濾過した液体に混じっているオリを沈殿させて除去するオリ引き工程(S4)と、前記オリ引き工程で得た濾液を加熱する火入れ工程(S5)とを有することを特徴とする調味料の製造方法。
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