JP5742637B2 - 透明導電フィルム用樹脂組成物及び透明導電フィルム - Google Patents
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Description
(1)イオン含有ポリマーと、フィルム形成用ポリマーと、を含むことを特徴とする透明導電フィルム用樹脂組成物。
本発明の透明導電フィルム用樹脂組成物は、イオン含有ポリマーと、フィルム形成用ポリマーと、を含むことを特徴としている。
本発明の透明導電フィルム用樹脂組成物においては、イオン含有ポリマーが、(1)Si−H基を有するポリマーに、イオン液体と、硬化性化合物とが結合してなる態様と、(2)Si−H基を有するポリマーに、イオン液体と、ラジカル重合性化合物とが結合してなる態様とがある。(1)の態様は、硬化性化合物としてエポキシ基を有する化合物を主として説明することから、便宜上「エポキシ硬化の態様」と呼び、後者は「ラジカル硬化の態様」と呼び、以下にそれぞれについて分説する。
[イオン含有ポリマー]
イオン含有ポリマーは、電気伝導の担い手として機能するポリマーであり、本態様においては、Si−H基を有するポリマーに、イオン液体と、硬化性化合物とが結合してなり、該硬化性化合物の一部にはさらに前記フィルム形成用ポリマーとの相溶性を付与する化合物が結合している。
以下に、Si−H基を有するポリマー、イオン液体、及び硬化性化合物の各々について説明する。
当該ポリマーとしては、例えば、Si−H基を有する、ポリシロキサン、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、無色透明であるポリマーが用いられる。本発明において、当該ポリマーの重量平均分子量は、粘度を適正範囲に限定するため及びイオン性ポリマとの相溶性を確保する観点から1000〜1000000であることが好ましく、3000〜500000であることがより好ましく、10000〜300000であることがさらに好ましい。
また、Si−H基を有するポリマーは、溶媒への溶解性が高いことが好ましい。特に、活性プロトン(OH基、NH基、COOH基等)を有さない有機溶媒への溶解性が高いことが好ましい。このようなSi−H基を有するポリマーの溶媒に対する溶解度は10質量%以上であることが好ましい。
イオン液体は、カチオンとアニオンとからなり、常温において液体で存在する物質である。本発明においては、導電性及び透明性に優れた透明導電フィルムを得るためには、イオン液体はイオン伝導性及び透明性が高いものを用いることが好ましい。また、既述のSi−H基を有するポリマーのSi−H基と結合させるため、カチオン部位に、Si−H基との反応性が高いアリル基又は水酸基を有することが好ましく、特にアリル基を有することが好ましい。
以下に、イオン液体のカチオン及びアニオンについて順次説明する。
本発明において、イオンを構成するカチオン成分は、置換又は非置換のイミダゾリウムイオン、置換又は非置換のピリジニウムイオン、置換又は非置換のピロリウムイオン、置換又は非置換のピラゾリウムイオン、置換又は非置換のピロリニウムイオン、置換又は非置換のピロリジニウムイオン、置換又は非置換のピペリジニウムイオン、置換又は非置換のトリアジニウムイオン、および置換又は非置換のアンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
アニオンの具体例としては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオン、硝酸イオン(NO3 −)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4 −)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6 −)、(FSO2)2N−、AlCl3 −、乳酸イオン、酢酸イオン(CH3COO−)、トリフルオロ酢酸イオン(CF3COO−)、メタンスルホン酸イオン(CH3SO3 −)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF3SO3 −)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン((CF3SO2)2N−)、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドイオン((C2F5SO2)2N−)、BF3C2F5 −、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)炭素酸イオン((CF3SO2)3C−)、過塩素酸イオン(ClO4 −)、ジシアンアミドイオン((CN)2N−)、有機硫酸イオン、有機スルホン酸イオン、R1COO−、HOOCR1COO−、−OOCR1COO−、NH2CHR1COO−(この際、R1は置換基であり、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、エーテル基、エステル基、またはアシル基である。また、前記置換基はフッ素原子を含んでもよい。)などが挙げられる。
硬化性化合物は、エポキシ基、イソシアネート基等の硬化性反応基を有する化合物であり、中でも、硬化性反応基としてエポキシ基を有するものが好ましい。
また、本発明において、硬化性化合物としては、前記Si−H基を有するポリマーのSi−H基と結合(反応)させるため、アリル基又は水酸基を有することが好ましく、特にアリル基を有することが好ましい。本発明においては以上の観点から、硬化性化合物としては、アリルグリシジルエーテル、グリシドール等が挙げられ、中でも、アリルグリシジルエーテル、が特に好ましい。
フィルム形成用ポリマーとの相溶性を付与する化合物としては、2級アミンが好ましい。2級アミンとしては、例えば、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−エチルメタノールアミン、ピペリジン、N−メチルピペラジン、N−エチルアニリン、1−シクロヘキシルピペラジン、ジブチルアミン等が挙げられ、中でも、着色が少ないこと、及びアクリルとの高い相溶性との観点から、1−メチルピペラジン、N−エチルメタノールアミン、1−シクロヘキシルピペラジン、ジブチルアミンが好ましい。
フィルム形成用ポリマーは、フィルム形成能の担い手として機能するポリマーである。特に、本発明においては、透明であって、かつ既述のイオン含有ポリマーとの分子レベルでの相溶化を図るため、前記イオン含有ポリマー(具体的には、イオン含有ポリマーに結合した、フィルム形成用ポリマーとの相溶性を付与する化合物)との相溶性を付与するモノマーを有することが好ましい。従って、フィルム形成用ポリマーは、高い透明性を有するベースモノマーと、イオン含有ポリマーとの相溶性を付与するモノマーとが共重合してなるコポリマーであることが好ましい。
なお、本明細書中、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリロイル基などの表記はそれぞれ、「アクリル酸及びメタクリル酸」や「アクリロイル基及びメタクリロイル基」を包含して意味するものである。
[イオン含有ポリマー]
本態様においては、イオン含有ポリマーが、Si−H基を有するポリマーに、イオン液体と、ラジカル重合性化合物とが結合してなる。Si−H基を有するポリマー、及びイオン液体は、既述の(1)エポキシ硬化の態様と同じであるから、ラジカル重合性化合物について以下に説明する。
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を有する化合物であり、ラジカル重合性基としては、具体的には、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基(アリル基とメタアリル基を含む。以下も同様である。)、エチニル基、イソプロペニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、ビニルケトン基、ビニルエステル基、ビニルアミノ基などが挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基、ビニル基が好ましい。
なお、本態様における重合はラジカル重合であるため、酸素阻害の影響を考慮し、加熱硬化時には酸素を遮断することが好ましい。
フィルム形成用ポリマーは、イオン含有ポリマーとの相溶性を付与するモノマーが必須ではない点で、既述の(1)エポキシ硬化の態様とは異なる。フィルム形成用ポリマーは、既述のベースモノマーのみが重合したホモポリマーであってもよい。
本発明の透明導電フィルムは、既述の本発明の透明導電フィルム用樹脂組成物を硬化してなることを特徴としている。
本発明の透明導電フィルムは、既述の本発明の透明導電フィルム用樹脂組成物をPETやガラスなどの基板上に塗布し、乾燥、硬化することで得られる。この場合において、乾燥温度は、50〜120℃とすることが好ましく、乾燥時間は0.1〜1時間とすることが好ましい。また、透明導電フィルムの厚みは、透明導電フィルム用樹脂組成物の塗膜の膜厚を調節することで制御することができる。本発明の透明導電フィルムの厚みは特に制限はないが、例えば、0.5〜80μmとすることができる。
なお、本発明の透明導電フィルムは、上述の通り、PETやガラス等の基板に塗布し、乾燥、硬化して製造されるものであるが、製造後は基板から剥離し、そのまま透明導電フィルムとして使用することができる。すなわち、本発明の透明導電フィルムは、従来のような基板上に透明導電膜を形成してなるような積層構造ではなく、単一の樹脂組成物からなるフィルムでありながら透明性及び導電性を有する。
(イオン含有ポリマーの合成)
攪拌装置、冷却管を備えた200mlの3口フラスコに、Si−H基を有するポリマーとしてポリシロキサン(旭化成ワッカー社製)を10.0g、イオン液体として1−ブチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(関東化学社製)を37.0g、硬化性化合物としてアリルグリシジルエーテル(和光純薬社製)を9.5g、更にメチルエチルケトンを113g入れて、均一になるまで攪拌した後、白金触媒としてPlatinum(0)-2,4,6,8-tetravinyl-2,4,6,8-tetramethyl-cyclotetrasiloxane complex(和光純薬製)を0.17g投入し、約80℃の温度で24時間かけて還流し中間体を得た。還流後、減圧下に脱溶剤を行った後、中間体をメタノールに溶解し、さらにN−メチルピペラジンを1.7g添加し60℃で3時間かけて反応させた。次いで、脱溶剤を行い新たにメタノール・メチルエチルケトンの混合溶媒を投入しイオン含有ポリマーの50%溶液を得た。以上の反応をまとめると以下のようになる。
攪拌装置、冷却管を備えた200mlの3口フラスコに、メタクリル酸ブチルモノマー44.5gと、メタクリル酸11.5gと、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.07gとを投入し、窒素ガスを400ml/分の流量で15分間吹き込み、酸素を除去した後65℃で14時間反応しフィルム形成用ポリマーを得た。重合率は98%であった。
上記のようにして得られたイオン含有ポリマー溶液10.0gと、フィルム形成用ポリマー溶液6.7gとを混合し、透明導電フィルム用樹脂組成物溶液を調製した。調製した樹脂組成物溶液は、相分離することなく均一に混合しているのが確認できた。
上記のようにして調製した透明導電フィルム用樹脂組成物を、ガラス基板の上に塗工し、150℃で1時間乾燥させ硬化し、透明導電フィルム(厚み:30μm)を得た。
作製した透明導電フィルムについて、以下の評価項目について評価を行った。
(1)比抵抗
三菱化学社製、MCP−T360を用い、室温にて表面比抵抗を測定したところ、0.45×104[Ω・cm]であった。
(2)透明性
日立製作所社製、U−3410を用い、波長450nmの光に対する透過率(透明性)を測定したところ、91.2[%]であった。
実施例1の「透明導電フィルム用樹脂組成物の調製」において、イオン含有ポリマー及びフィルム形成用ポリマーの使用量をそれぞれ10.0g、12.5gに変更したこと以外は実施例1と同様にして透明導電フィルムを作製した。作製した透明導電フィルムについて、実施例1と同様に評価を行ったところ、比抵抗は1.21×104[Ω・cm]であり、透過率(透明性)は、92.5[%]であった。
実施例1の「透明導電フィルム用樹脂組成物の調製」において、イオン含有ポリマー及びフィルム形成用ポリマーの使用量をそれぞれ10.0g、15.3gに変更したこと以外は実施例1と同様にして透明導電フィルムを作製した。作製した透明導電フィルムについて、実施例1と同様に評価を行ったところ、比抵抗は7.85×105[Ω・cm]であり、透過率(透明性)は、92.5[%]であった。
(イオン含有ポリマーの合成)
攪拌装置、冷却管を備えた200mlの3口フラスコに、Si−H基を有するポリマーとしてポリシロキサン(旭化成ワッカー社製)を10.0g、イオン液体として1−ブチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(関東化学社製)を37.0g、ラジカル重合性化合物としてアリルメタクリレート(和光純薬社製)を10.5g、ハイドロキノン(和光純薬社製)を0.005g、更にメチルエチルケトン113gを入れ、均一になるまで攪拌した後、白金触媒を0.08g投入し、約80℃の温度で24時間かけて還流し、イオン含有ポリマーを得た。この溶液を減圧下に脱溶剤を行いイオン含有ポリマーを50%に調製した。以上の反応をまとめると以下のようになる。
フィルム形成用ポリマーとしてはポリアクリル酸ブチルを用い、上記のようにして得られたイオン含有ポリマー10.0gと、ジプロピレングリコールジメタクリレート5gを混合し、減圧下に脱溶剤を行い溶媒を除去したのち、ベンゾイルパーオキサイドを0.01g添加溶解し、透明導電フィルム用樹脂組成物を調製した。調製した樹脂組成物は、相分離することなく均一に混合しているのが確認できた。
上記のようにして調製した透明導電フィルム用樹脂組成物を、ガラス基板の上に塗工し、もう一枚のガラス基板でサンドイッチし、そのまま150℃で1時間硬化し、透明導電フィルム(厚み:30μm)を得た。次いで、実施例1と同様に評価を行ったところ、比抵抗は1.34×104[Ω・cm]であり、透過率(透明性)は、91.5[%]であった。
Claims (13)
- イオン含有ポリマーと、フィルム形成用ポリマーと、を含む透明導電フィルム用樹脂組成物であって、
前記イオン含有ポリマーが、ポリシロキサンに、イオン液体と、硬化性化合物とが結合してなり、
前記イオン液体が、置換又は非置換のイミダゾリウムイオン、置換又は非置換のピリジニウムイオン、置換又は非置換のピロリジニウムイオン、及び置換又は非置換のアンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種であるカチオンと、ハロゲン化物イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、有機硫酸イオン、及び有機スルホン酸イオンからなる群より選択される少なくとも1種であるアニオンとからなり、
前記硬化性化合物が、エポキシ基及びアリル基を有する化合物、又は(メタ)アクリロイル基及びアリル基を有するラジカル重合性化合物であり、
前記フィルム形成用ポリマーが、ベースモノマーと、前記イオン含有ポリマーとの相溶性を付与するモノマーとが共重合してなるコポリマーであることを特徴とする透明導電フィルム用樹脂組成物。 - 前記硬化性化合物の一部にはさらに前記フィルム形成用ポリマーとの相溶性を付与する化合物が結合していることを特徴とする請求項1に記載の透明導電フィルム用樹脂組成物。
- 前記硬化性化合物がアリルグリシジルエーテルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明導電フィルム用樹脂組成物。
- 前記フィルム形成用ポリマーとの相溶性を付与する化合物が2級アミンであることを特徴とする請求項2又は3に記載の透明導電フィルム用樹脂組成物。
- 前記2級アミンが、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−エチルメタノールアミン、ピペリジン、N−メチルピペラジン、N−エチルアニリン、1−シクロヘキシルピペラジン、及びジブチルアミンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載の透明導電フィルム用樹脂組成物。
- 前記2級アミンがN−メチルピペラジンであることを特徴とする請求項4又は5に記載の透明導電フィルム用樹脂組成物。
- 前記カチオンが置換又は非置換のイミダゾリウムイオンであり、前記アニオンがトリフルオロメタンスルホン酸イオン、臭化物イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、及びテトラフルオロボレートイオンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明導電フィルム用樹脂組成物。
- 前記ベースモノマーが(メタ)アクリル酸ブチルモノマーであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明導電フィルム用樹脂組成物。
- 前記イオン含有ポリマーとの相溶性を付与するモノマーが、カルボン酸及び/又はフェノール性水酸基を有するモノマーであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の透明導電フィルム用樹脂組成物。
- 前記ラジカル重合性化合物がアリル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の透明導電フィルム用樹脂組成物。
- 請求項1〜12のいずれか1項に記載の透明導電フィルム用樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする透明導電フィルム。
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