JP5742572B2 - 硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents
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Description
(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着形成された、1〜15μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム(以下、Al2O3で示す)層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる従来被覆工具が知られている。
(a)まず、従来被覆工具の硬質被覆層は、例えば、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、TiCl4:2〜10%、CH3CN:0.5〜3%、N2:10〜30%、H2:残り、
反応雰囲気温度:800〜900℃、
反応雰囲気圧力:6〜20kPa、
の条件(通常条件という)でl−TiCN層からなる下部層を蒸着した後、この上に、Al2O3層を蒸着することにより形成される。
(b)本発明者らは、前記Al2O3層を蒸着した後、この上に、前述の通常の条件でl−TiCN層からなる上部層を蒸着した。
(c)このとき、前記l−TiCN層を通常条件で蒸着する成膜工程の途中段階で、前記反応雰囲気圧力を低下させ、同時に、微量のCO2成分を短時間反応ガス中に添加して成膜を行い、その後は、前記通常条件にしたがって、所定目標層厚のl−TiCN層が形成されるまで蒸着を継続したところ、成膜されたl−TiCN層の表層近傍には酸素濃化領域が形成され、成膜されたl−TiCN層の酸素濃化領域における結晶粒は微細化組織となる。しかも、通常、Al2O3層上のl−TiCN層は、粗粒化組織となりやすいが、本発明によれば、微細化組織を形成することができることを見出したのである。
(d)また、本発明者らは、前記の酸素濃化領域が形成されているl−TiCN層について、その縦断面研磨面に沿ってオージェ電子分光法により、その層厚方向に酸素含有量を線分析したところ、Al2O3層(中間層)とl−TiCN層(上部層)の界面から、l−TiCN層の内部側に酸素濃化領域が形成されると同時に、図2に示すようにl−TiCN層の結晶組織が微細化されており、さらに、該l−TiCN層の表面から層厚方向に沿って内部側に、0.5〜4.0μmの範囲内の間隔をおいて、酸素含有量の複数のピークが現れ、また、該ピーク位置における酸素含有量OMAXを測定したところ、OMAX=3〜8原子%である酸素濃化領域を1つ以上含むl−TiCN層(以下、「改質l−TiCN層」という)が形成されることを見出した。
(e)そして、Al2O3層(中間層)を蒸着形成した上に、前記少なくとも1つの酸素濃化領域を備え、かつ、微細化された組織を有する改質l−TiCN層(上部層)を蒸着形成した硬質被覆層を備えた本発明の被覆工具は、中間層と上部層との密着性が向上すると同時に、Al2O3の上にl−TiCN層(上部層)を形成しているにもかかわらず、上部層の結晶粒粗大化が抑制されることから、高熱発生を伴い、かつ、切刃部に断続的・衝撃的負荷がかかる高速連続切削に用いた場合でも、すぐれた耐チッピング性を発揮し、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するのである。
「 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)3〜20μmの合計平均層厚を有し、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなる下部層、
(b)1〜15μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層からなる中間層、
(c)4〜14μmの平均層厚の縦長成長結晶組織をもつ改質Ti炭窒化物層からなる上部層、
前記(a)、(b)、(c)の硬質被覆層が化学蒸着により形成された表面被覆切削工具において、
(d)上部層を構成する前記縦長成長結晶組織をもつ改質Ti炭窒化物層は、その縦断面研磨面について、オージェ電子分光法により、その層厚方向に沿って酸素含有量を線分析した場合、表面から層厚方向に沿って内部側に、深さ0.5〜4.0μmの範囲内の間隔をおいて、酸素含有量の少なくとも1つのピークが現れ、該ピーク位置における酸素含有量OMAXは、OMAX=3〜8原子%である酸素濃化領域を少なくとも1つ備えることを特徴とする表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
(a)下部層(Ti化合物層)
TiC層、TiN層、TiCN層(l−TiCN層も含む)、TiCO層、TiCNO層のうち1層または2層以上からなるTi化合物層は、自体が高温強度を有し、これの存在によって硬質被覆層が高温強度を具備するようになるほか、工具基体と中間層であるAl2O3層にも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方、その合計平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴う高速連続切削でチッピングを起し易くなることから、その合計平均層厚を3〜20μmと定めた。
(b)中間層(Al2O3層)
Al2O3層からなる中間層は、すぐれた高温硬さと耐熱性を有し、硬質被覆層の耐摩耗性向上に寄与する。
(c)上部層の改質l−TiCN層
中間層は前記のとおりAl2O3層で構成するが、中間層の上に形成する上部層については、少なくとも、4μm以上の平均層厚の改質l−TiCN層で構成することが必要である。
ついで、中間層としてのAl2O3層を同じく、表3に示される条件で、かつ、同じく表5に示される目標層厚で蒸着形成し、その後、表4に示される条件にて、上部層としての改質l−TiCN層を同じく表5に示される組み合わせ、かつ、目標層厚で蒸着形成することにより本発明被覆工具1〜13をそれぞれ製造した。
=(酸素濃化領域における改質l−TiCN結晶粒の単位面積当たりの粒界長さ)/(酸素濃化領域より内部側にある改質l−TiCN結晶粒の単位面積当たりの粒界長さ)
=(GBLO/GAO)/(GBLI/GAI)
である。
なお、本発明被覆工具および従来被覆工具の下部層、中間層、上部層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(同じく縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
被削材:JIS・S45Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:400m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.30mm/rev.、
切削時間:18分、
の条件(切削条件A)での炭素鋼の乾式高速連続切削試験
(通常の切削速度は、250m/min)、
被削材:JIS・SNCM439の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:350m/min.、
切り込み:1.8mm、
送り:0.32mm/rev.、
切削時間:13分、
の条件(切削条件B)での合金鋼の乾式高速連続切削試験
(通常の切削速度は、250m/min.)、
被削材:JIS・FC300の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:450m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.30mm/rev.、
切削時間:20分、
の条件(切削条件C)での鋳鉄の乾式高速連続切削試験
(通常の切削速度は、300m/min)、
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
この測定結果を表7に示した。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)3〜20μmの合計平均層厚を有し、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなる下部層、
(b)1〜15μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層からなる中間層、
(c)4〜14μmの平均層厚の縦長成長結晶組織をもつ改質Ti炭窒化物層からなる上部層、
前記(a)、(b)、(c)の硬質被覆層が化学蒸着により形成された表面被覆切削工具において、
(d)上部層を構成する前記縦長成長結晶組織をもつ改質Ti炭窒化物層は、その縦断面研磨面について、オージェ電子分光法により、その層厚方向に沿って酸素含有量を線分析した場合、表面から層厚方向に沿って内部側に、深さ0.5〜4.0μmの範囲内の間隔をおいて、酸素含有量の少なくとも1つのピークが現れ、該ピーク位置における酸素含有量OMAXは、OMAX=3〜8原子%である酸素濃化領域を少なくとも1つ備えることを特徴とする表面被覆切削工具。
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