JP5742103B2 - 既埋設体の撤去方法 - Google Patents

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Description

本発明は、既埋設体の撤去方法に関する。より詳しくは、建築分野や土木分野等において、地盤や水硬性組成物中から既埋設体を引き抜く作業を安全に実施するために好適に用いられる既埋設体の撤去方法に関する。
建築分野や土木分野の基礎工事等において、地盤中に土留め擁壁等の構造物を埋設する場合や、ケーソン等に代表される構造物を埋設する場合には、鋼矢板等の鋼材(支持体)や構造物を直接地盤に埋設する方法が一般に利用されている。
仮設の土留め鋼矢板を工事終了後に引抜き撤去するとき、鋼矢板の表面に土が付着した状態で引き抜かれるため、地盤に大きな空隙(大穴)が生じ、周辺地盤を変形させて緩ませ、隣接の民家や地中の下水管、電線管、ボックスカルバート等の近接構造物に損傷被害を与える問題がある。
また、鋼材や構造物を地盤に埋設した後には、必要に応じ、セメントミルクや生コンクリート等の水硬性組成物を地盤中に圧入したり、掘削孔を形成し水硬性組成物を注入してソイルセメント層を形成した後にH型鋼を鋼材(芯材)として埋め込んだりすることが行われている。水硬性組成物を使用するか否かは、基礎工事を行う周囲の地下水の状況に応じて決定されることになる。
ところで、これまでは、ソイルセメント層に投入されたH形鋼等の芯材は、硬化後のセメントとの付着力が大きく引き抜くことが困難なために、通常工事終了後においても埋められた状態で放置されていたのが実情である。
一般的に、芯材として使用されていた鋼材は、工事終了後は必要としないことが多く、硬化したソイルセメント層から引き抜いて回収し再利用することができれば、非常に経済的であり省資源化に貢献する。また、建設物の増設・改修又は下水・上水道工事等の2次工事の障害となることや、地下水脈の遮断やそれに続く地盤沈下の発生も未然に防止することができる。このように、鋼矢板等の鋼材を使用する場合、工事終了後においては地中に埋めている必要のないことが多く、引き抜いて回収し、再利用することが望まれるところである。
従来、既に埋設された杭や硬化したソイルセメント層から芯材を撤去する工法として、ケーシング杭抜き工法、オールケーシング工法と呼ばれる方法がある。これは、杭の周りや芯材周囲を地盤ごとケーシング(筒状体、円筒体)でくり抜いて、地盤と杭との縁を切り、土が付着した状態で引き抜き撤去する方法である。
しかしながら、この場合、くり抜き撤去時に大きな空隙が地盤にできるため、周辺地盤を緩め、近接する家屋や地中の埋設管の構造物が変形するなど悪影響を及ぼし、問題を引き起こしている。また、使用可能条件の制限(スペースの確保等)や、工期の長期化、高コストなど多くの問題を抱えている。この問題を回避するためにくり抜き時に土砂やモルタルの埋め戻しを並行して実施する方法があるが、その埋め戻し材が大量に必要となる問題がある。
また鋼材表面にワックスやグリース等の潤滑油を予め塗布したり、吸水性樹脂を含む処理剤等を鋼材表面に塗布したりすることによって、鋼材の引き抜き作業を容易に行う技術も種々提案されている。例えば、鋼材等の埋設物の表面に形成させる摩擦低減材が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2008−303628号公報(第1−2頁)
上述したように、これまでに鋼材を地盤や水硬性組成物中から引き抜き撤去する方法について検討が行われているが、ケーシング杭抜き工法、オールケーシング工法といった方法においては、芯材撤去時に大穴が形成されることや経済性などから、既に埋設された杭や硬化したソイルセメント層から芯材を撤去する工法として広く採用することはできないというのが実情である。また、特許文献1のように、鋼材の表面を処理して鋼材を引き抜く場合には、長期間埋設された後の撤去や既に埋設されている杭や芯材の撤去工法としては有効なものではない。更に、鋼材の引き抜き性の向上や、現場作業を更に簡便かつ効率的に行うことができるようにすることが望まれている。
現状では、地中には膨大な量の既存の埋設杭が残置されており、今後、撤去の需要が増加することが見込まれている。そのような中、膨大な量の既存の埋設杭の撤去を安全にかつ効果的に実施する技術が求められるところであった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、既埋設体の撤去を安全に、かつ、既埋設体を撤去した後の周辺地盤の緩みを低減することができるなど効果的に低コストで実施することができる既埋設体の撤去方法を提供することを目的とするものである。
本発明者は、既埋設体を地中から引き抜き撤去する方法について種々検討を行ったところ、既埋設体を地中から引き抜く際に既埋設体に多くの土が付着し、それが既埋設体の引き抜き作業に負荷を掛け、また、既埋設体があった近傍の地盤の緩みを引き起こすなどの不具合を生じる大きな原因となっていることに着目した。例えば、鋼矢板を撤去する場合、鋼矢板が長く、土との接触面積が大きいことなどに起因して、鋼材表面に多くの土が付着し、しかも上面から見て凹状に開いた形状の鋼矢板の場合には、コの字型に曲がって内に向かって閉じた構造となっていることから、土を閉じた構造の中に保持するような状態となり、多くの土を伴って引き抜かれることになる。そこで、このような既埋設体の引き抜き時に表面に付着する土を低減するための工夫の一つとして、既埋設体とは別の打設体を予め既埋設体の周囲の一部に打設した後に、既埋設体を引き抜くこととすると、該打設体によって既埋設体と地盤との縁が切られ、既埋設体に付着する土を低減させることができることを見出した。更に検討を進めたところ、表面が摩擦低減剤で処理された打設体を用いると、既埋設体に付着する土と打設体との摩擦が低減されることになり、それによって更に、既埋設体の引き抜きが容易となり、既に埋設された杭や硬化したソイルセメント層から芯材を撤去する工法として有効なものとなることを見出した。このように、打設体を既埋設体の周囲の一部に打設した後に、既埋設体を引き抜くこととし、その際、打設体にはその表面の少なくとも一部を摩擦低減剤で処理しておくことによって、上記課題を見事に解決できることに想到し、本発明に到達したものである。これにより、既埋設体が地中に残存することによって生じる種々や従来の工法における問題を解決することが可能となる。
なお、現在、地中には膨大な量の既埋設体が残置されており、これら既埋設体を撤去する需要が増加することが見込まれることから、既埋設体の撤去を安全に、かつ低コストで実施することのできる本発明の工法の意義は大きいと言える。
すなわち本発明は、既埋設体を地中から引き抜き撤去する既埋設体の撤去方法であって、上記撤去方法は、打設体を既埋設体の周囲の一部に打設した後に、上記既埋設体を引き抜く工程を含み、上記打設体は、表面の少なくとも一部が摩擦低減材で処理されている既埋設体の撤去方法である。
以下に本発明を詳述する。
本発明の既埋設体の撤去方法は、既埋設体を地中から引き抜き撤去する際に、打設体を既埋設体の周囲の一部に打設し、その後に該既埋設体を引き抜く工程を含むものであるが、上記工程を含む限り、その他の工程を含んでいてもよい。
上記既埋設体は、本発明の撤去方法を行う際には既に地中に埋設された状態にある埋設物であり、そのような埋設物としては、地中に鋼矢板等を連続打設して構築される、遮断壁や土留め擁壁、圧密沈下促進壁、又は、地中に埋設されるボックスカルバートや鋼管、タンク等、地中に埋設されているものであれば特に制限されないが、例えば、鋼矢板(シートパイル)、鋼管、ヒューム管、H形鋼、I型鋼、鋼管杭(鋼管パイル)、鉄柱、コンクリート杭、ポール、筒状のパイル(中空パイル)、平板、波板等が挙げられる。これらの中でも、連続打設が容易であるため最も施工性が高く、経済的な埋設物であることからよく用いられる鋼矢板、鋼管杭が好適である。鋼矢板としては、ハット形、U形のような埋設後に上面から見ると凹状に開いた形状である鋼矢板や、U形鋼矢板を2枚向かい合わせに溶接した組み合わせ鋼矢板、直線形のもの等があるが、これらいずれのものも好適に用いられる。
なお、上記既埋設物の形状、長さ、材質、表面の粗度等は特に限定されず、表面に錆びや汚れが付着したものであっても、汚れ等のない平滑な表面を有するものであってもよい。
上記既埋設体の厚み、地中深さ方向の長さとしては、通常使用される範囲であれば特に制限されない。
上記打設体としては、鋼矢板、平板等が好適に用いられるが、上記既埋設体と同様のものを用いることができる。例えば、打設体として平板を用いる形態としては、図1−1に示す形態が挙げられる。図1−1は、既埋設体である上面から見て凹状に開いた形状の鋼矢板に対して、打設体として平板を用いる場合の一形態を地上から見た様子を概念的に表したものである。また、打設体として鋼矢板と平板を組み合わせて用いる形態も好適である。そのような形態の一例について地上から見た様子を概念的に表したものが図1−2である。図1−2にあるとおり、既埋設体である上面から見て凹状に開いた形状の鋼矢板に対してその凹状の開いた方に、既埋設体の鋼矢板に沿って、凹状に開いた形状の鋼矢板2aを打設し、既埋設体の凹状の閉じた方に平板2bを打設する形態が挙げられる。
また、上記打設体を地面に打設する深さは、上記既埋設体の地中深さの10〜200%であることが好ましい。このような範囲の深さで打設体を打設することによって、本発明の効果をより顕著に発揮することができる。打設体の打設深さとしてより好ましくは、上記既埋設体の地中深さの50〜150%であり、更に好ましくは、75〜120%である。
本発明の撤去方法においては、打設体を既埋設体の周囲の一部に打設することとなるが、該周囲の一部としては、本発明の効果が発揮されることとなる限りにおいて、既埋設体の周囲の一部分に打設されることであってもよく、既埋設体の周囲を全て囲んで打設されることであってもよい。また、既埋設体1つに対してその周囲に打設される打設体は、1つであってもよく、複数であってもよい。
上記既埋設体と打設体との相対的なサイズや位置関係については、上述したそれぞれの好適な形態である、既埋設体が鋼矢板、特に凹状に開いた形状の鋼矢板であり、打設体が平板であるケースを用いて説明するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
平板を、凹状に開いた形状の鋼矢板の周囲の一部に打設する場合、平板は、該鋼矢板の辺のうち、平板と最も近い位置にある辺と略平行の向きになるように打設することが好ましい。なお、平板を鋼矢板の凹状の開いた方に打設する場合には、平板は、鋼矢板の辺のうち、凹状の底部に当たる辺と略平行の向きになるように打設することが好ましい。
打設する平板と凹状に開いた形状の鋼矢板との位置関係としては、例えば、図2の(a)〜(d)の少なくとも1ヶ所に平板を打設した形態が挙げられる。なお、図2は、(a)〜(d)の少なくとも1ヶ所に打設された平板と地中に埋まっている凹状に開いた形状の鋼矢板とを地上から見た時の概念図である。なお、図2においては、概念図として、鋼矢板の一辺に対しては、打設される平板が1つの形態を示しているが、鋼矢板の一辺に対して、複数の平板を打設することとしてもよい。
ここで、打設体を打設せずに地中に埋まっている凹状に開いた形状の鋼矢板を単独で引き抜いた場合に、土がどのように付着するのかを図3に概念的に表したが、このように、主には鋼矢板の凹状に開いた方の土が鋼矢板と一緒に引き抜かれていくこととなる。図3中、点線部は、凹状に開いた形状の鋼矢板を引き抜く時に付着する土を表している。このことから、図3中の鋼矢板の凹状に開いた方に付着する土を低減させることで、凹状に開いた形状の鋼矢板を引き抜く時に一緒に引き抜かれる土を低減させることに繋がることが分かる。そこで、例えば、図2の(c)の箇所に平板を打設すると、地盤が平板により分断されるので、図4に示したように、鋼矢板に付着する土を低減させることができる。図4中、点線部が鋼矢板を引き抜く時に付着する土を表している。したがって、図2の、(c)の箇所に平板を打設する形態、(b)及び(c)の箇所に平板を打設する形態、(a)及び(c)の箇所に平板を打設する形態、(a)、(b)及び(c)の箇所に平板を打設する形態、(b)、(c)及び(d)の箇所に平板を打設する形態、又は、(a)、(b)、(c)及び(d)の箇所に平板を打設する形態とするのが好ましい。これらの中でも、本発明の効果と打設する平板の本数による作業性や経済性とのバランスの観点から、図2の、(c)の箇所に平板を打設する形態、(a)及び(c)の箇所に平板を打設する形態とするのがより好ましい。特に好ましくは、(a)及び(c)の箇所に平板を打設する形態である。
このように、既埋設体が上面から見て凹状に開いた形状である鋼矢板であり、打設体を既埋設体の凹状の開いた方に打設することもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。この形態について実施している様子の一例を概念的に表したものが図5である。図5にある通り、鋼矢板は連続的に打設して用いられていることが多く、そのように埋設されている鋼矢板に対して、1つの鋼矢板に1つの平板を打設して、1つずつ鋼矢板を引き抜いていくという形態が一例として挙げられる。
平板を鋼矢板の周囲の一部に打設する場合の、平板と鋼矢板との間の距離としては、打設体を打設せずに地中に埋まっている鋼矢板を単独で引き抜いた場合よりも鋼矢板に付着する土を低減させることができれば特に制限されないが、打設され地中に埋まっている平板と鋼矢板とを地上から見た時に、鋼矢板の辺のうち平板と略平行の関係にある辺と平板との間の距離が、鋼矢板の辺のうち平板と略平行の関係にない辺の長さより短い又は同じであることが好ましい。具体的には、0〜22.5cmであることが好ましい。この距離が長すぎると、打設体を打設せずに地中に埋まっている鋼矢板を単独で引き抜いた場合よりも鋼矢板に付着する土を低減させることができないおそれがある。平板と鋼矢板との間の距離としてより好ましくは、0〜15cmであり、更に好ましくは、0〜10cmである。
平板を鋼矢板の周囲の一部に打設する場合、平板はある程度幅がないと本発明の効果を奏することができなくなるおそれがあるが、平板の幅は、鋼矢板の辺のうち平板と略平行の関係にある辺の10〜100%であることが好ましい。より好ましくは、25〜100%であり、更に好ましくは、50〜100%である。
上記平板と鋼矢板との相対的なサイズや位置関係について、特に好ましい形態である、図2の(a)及び(c)の箇所に平板を打設する形態を例にとり、その好ましいサイズ、位置関係を図6にまとめて示した。(A)で表される(a)の箇所に打設される平板と鋼矢板との間の距離は、0〜22.5cmであることが好ましい。より好ましくは、0〜15cmであり、更に好ましくは、0〜10cmである。(B)で表される(c)の箇所に打設される平板と鋼矢板との間の距離は、鋼矢板の辺のうち平板と略平行の関係にない辺の長さの5〜100%であることが好ましい。より好ましくは、10〜75%であり、更に好ましくは、15〜50%である。また具体的には、(B)で表される(c)の箇所に打設される平板と鋼矢板との間の距離は、0〜22.5cmであることが好ましい。より好ましくは、0〜15cmであり、更に好ましくは、0〜10cmである。(C)で表される平板の幅は、鋼矢板の辺のうち平板と略平行の関係にある辺の50〜100%であることが好ましい。
本発明において用いられる打設体は、表面の少なくとも一部が摩擦低減材で処理されているものであり、表面の少なくとも一部が処理されていれば、処理される箇所については、特に制限されないが、打設体表面のうちの50%以上が処理されていることが好ましい。また、既埋設体の引き抜きを容易にするという本発明の効果がより顕著に発揮されるためには、打設された時に、既埋設体に面することとなる打設体の面を処理することが好ましい。すなわち、打設体が、地面に打設されたときに既埋設体と対向する側の面の表面が摩擦低減材で処理されていることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
そして更には、打設体自身を撤去する際の引き抜き易さという点から、打設体の全表面が摩擦低減材で処理されていることが特に好ましい。
上記摩擦低減材としては、潤滑性を発揮できるものであれば特に限定されないが、例えば、吸水性樹脂やフッ素系樹脂、オレフィン系樹脂等の潤滑性の樹脂類、ワックス、グリース、タール、アスファルト等の油類や、ベントナイト等の鉱物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、吸水性樹脂が好適であり、吸水性樹脂と水とを含む樹脂組成物や、吸水性樹脂と、吸水性樹脂を打設体に密着させるためのバインダー樹脂とを含む樹脂組成物とするのが好適な形態である。更に、該バインダー樹脂としては、アルカリ水可溶性樹脂であることが特に好ましく、吸水性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂とを含む樹脂組成物を摩擦低減材として用いることにより、吸水性樹脂が水を吸収して膨潤する際の体積膨張を阻害するおそれが低減され、吸水性樹脂の吸水性能を充分に発揮させることが可能となり、吸水性樹脂が水で充分に膨潤することとなる。その結果、埋設物表面の摩擦を大幅に低減させることができる。
このように、摩擦低減材が、吸水性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂とを必須成分として含むこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、上記樹脂組成物は、必要に応じて溶剤を含んでもよい。
上記吸水性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂とを含む樹脂組成物において、吸水性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂との質量比(吸水性樹脂/アルカリ水可溶性樹脂)としては、これらの組成や組み合わせ、作業環境等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1/99〜99/1であることが好ましい。より好ましくは、10/90〜90/10であり、更に好ましくは、25/75〜75/25である。
上記吸水性樹脂としては、水を吸水することによって膨潤し、かつ、25℃で1時間置いた後の、自重に対するイオン交換水の吸水倍率が3倍以上であることが好ましい。より好ましくは、吸水倍率が10倍以上である。
このような吸水性樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸架橋体、ポリ(メタ)アクリル酸塩架橋体、スルホン酸基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリオキシアルキレン基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリ(メタ)アクリルアミド架橋体、(メタ)アクリル酸塩と(メタ)アクリルアミドとの共重合架橋体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架橋体、ポリジオキソラン架橋体、架橋ポリエチレンオキシド、架橋ポリビニルピロリドン、スルホン化ポリスチレン架橋体、架橋ポリビニルピリジン、デンプン−ポリ(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合体のケン化物、デンプン−ポリ(メタ)アクリル酸(塩)グラフト架橋共重合体、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸(塩)との反応生成物、架橋ポリビニルアルコールスルホン酸塩、ポリビニルアルコール−アクリル酸グラフト共重合体、ポリイソブチレンマレイン酸(塩)架橋重合体等の水溶性又は親水性化合物(単量体及び/又は重合体)を架橋剤で架橋させた合成吸水性樹脂;ゼラチン、寒天等の天然水膨潤性物;等の1種又は2種以上が好適である。
これらの中でも、水溶性又は親水性化合物を架橋剤で架橋させた合成吸水性樹脂が好ましく、これにより、膨潤倍率、水可溶分、吸水速度、強度等のバランスが良好となり、更にそのバランスの調整も容易に行うことが可能となる。
上記吸水性樹脂の好ましい形態としては、ノニオン性基及び/又はスルホン酸(塩)基を有する吸水性樹脂である。より好ましくは、アミド基又はヒドロキシアルキル基を有する吸水性樹脂であり、例えば、(メタ)アクリル酸塩と(メタ)アクリルアミドとの共重合架橋体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架橋体等が挙げられる。これらの形態では、アルカリ水や海水等の金属イオンを含む水に対する吸水性が向上することになり、土質の影響による摩擦低減性能の低下を防ぐことができる。
上記吸水性樹脂としてはまた、水溶性を有するエチレン性不飽和単量体と、必要に応じて架橋剤とを含む単量体成分を重合することにより得られる樹脂を用いることができる。エチレン性不飽和単量体を(共)重合してなる吸水性樹脂は、水に対する膨潤性により優れ、かつ一般的に安価であるため、このような吸水性樹脂を用いることにより、摩擦低減性能を向上させ、かつ経済的に行うことができる。
なお、上記架橋剤は、特に限定されるものではない。また、直鎖状の高分子に架橋剤を添加して架橋することにより、又は、電子線を照射して架橋することにより、吸水性樹脂を形成することもできる。
上記エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、並びに、これら単量体のアルカリ金属塩やアンモニウム塩;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、並びに、その四級化物;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド類、並びに、これら単量体の誘導体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルスクシンイミド等のN−ビニル単量体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド等のN−ビニルアミド単量体;ビニルメチルエーテル;等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記エチレン性不飽和単量体の中でも、ノニオン性基及び/又はスルホン酸(塩)基を有するエチレン性不飽和単量体が好ましく、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の1種又は2種以上を使用することができる。これらを含む単量体成分を重合して得られる吸水性樹脂は、アルカリ水や海水等の金属イオンを含む水に対する膨潤性に特に優れているため好ましく、該吸水性樹脂を用いることにより、摩擦低減性能を向上させる。
上記吸水性樹脂において、単量体成分としてエチレン性不飽和単量体を2種類以上併用する場合においては、全単量体成分に占める、ノニオン性基及び/又はスルホン酸(塩)基を有するエチレン性不飽和単量体の割合を1質量%以上にすることが好適である。1質量%未満であると、鋼材等の引抜き作業の作業性を更に向上することができないおそれがある。より好ましくは、10質量%以上である。
なお、単量体成分としてエチレン性不飽和単量体を2種類以上併用する場合における好適な組み合わせとしては、例えば、アクリル酸ナトリウム等の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩とアクリルアミドとの組み合わせ、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩とメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの組み合わせ等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
上記吸水性樹脂としては、上述した単量体成分を(共)重合することにより得ることができるが、その(共)重合方法は特に限定されず、通常用いられている方法により行うことができる。また、吸水性樹脂の平均分子量や形状、平均粒子径、更に、このような吸水性樹脂等を有する潤滑層の厚みや塗布量は、使用用途や作業環境等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。例えば、平均粒子径としては、上限が1000μmであることが好ましい。1000μmを超えると、潤滑層を形成させるための塗布性(コーティング性)が充分とはならず、また、潤滑層における吸水性樹脂の分布が均一とはならず、潤滑性能に優れたものとすることができないおそれがある。より好ましい上限は500μmであり、更に好ましい上限は200μmである。また、下限は1μmであることが好ましい。より好ましい下限は5μmであり、更に好ましい下限は10μmである。
上記アルカリ水可溶性樹脂としては、酸性又は中性を呈する水には溶解せず、アルカリ性を呈する水には溶解する樹脂を意味する。ここで、「中性を呈する水」とは、pH値が6〜8の範囲内の水であり、「酸性を呈する水」とは、pH値が該中性の範囲未満の水であり、「アルカリ性を呈する水」とは、pH値が該中性の範囲よりも大きい水である。
なお、上記アルカリ水可溶性樹脂としては、アルカリ水への溶解性の程度として、下記評価試験によって求められる減少率が50〜100%のものが好ましい。より好ましくは、60〜100%であり、更に好ましくは、70〜100%である。
(アルカリ水への溶解性の評価試験)
二軸押出機を用いて得ることができるアルカリ水可溶性樹脂を、直径5mm、長さ5mmの円筒状のペレット形状に成形したものを用いて測定する。この成形体10gを、1Lのビーカーに入れた0.4質量%濃度のNaOHの水溶液500gに投入し、25℃にて、直径が40mm、4枚はねを用い、300rpmで24時間攪拌を行う。その後のアルカリ水可溶性樹脂の成形体におけるアルカリ水へ溶解した質量の、元の成形体からの減少率で評価する。すなわち、24時間攪拌後に溶解せずに残った樹脂分について、ろ別等を行い、水で洗浄し、乾燥後の質量を求め、溶解性試験にかける前における元のアルカリ水可溶性樹脂の質量からの減少率(%);(元の質量−溶解性試験後の質量)/(元の質量)で評価する。また、ペレット化されていなくても、5mm角以下の任意の形状の成形品であっても、アルカリ水への溶解性を示す場合には、上記アルカリ水可溶性樹脂の範囲である。
上記アルカリ水可溶性樹脂としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の置換基を有する樹脂;フェノール性ヒドロキシル基を含むノボラック樹脂;ポリビニルフェノール樹脂等の1種又は2種以上を用いることができる。中でも、アルカリ水に対する溶解性や経済性、樹脂組成物の各種物性等に優れる点で、α,β−不飽和カルボン酸系単量体と、α,β−不飽和カルボン酸系単量体以外のビニル系単量体とを共重合して得られる樹脂が好適である。
なお、カルボン酸基を有する樹脂であるヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートヘキサヒドロフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタレート等のセルロース誘導体を用いることもできる。
上記α,β−不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸無水物;マレイン酸モノエステル、フマル酸モノエステル、イタコン酸モノエステル等のα,β−不飽和ジカルボン酸モノエステル等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。中でも、柔軟性や靭性に優れることから、アクリル酸及び/又はメタクリル酸が好適である。
上記ビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ステアリル等の炭素数1〜18の一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系単量体;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等の水酸基含有ビニル系単量体;メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有ビニル系単量体;アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛等のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニル等の脂肪族ビニル系単量体;塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン基含有ビニル系単量体;アリルエーテル類;無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等のマレイン酸誘導体;フマル酸モノアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル等のフマル酸誘導体;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体;イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、イタコンアミド類、イタコンイミド類、イタコンアミドエステル類等のイタコン酸誘導体;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。
これらのビニル系単量体の中でも、柔軟性、耐候性及び靭性に優れる点で、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルが好適である。より好ましくは、これら炭素数1〜18の一価アルコールと(メタ)アクリル酸とをエステル化して得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量を、用いられるビニル系単量体全量100質量%に対して、30〜100質量%とすることが好ましく、これにより、樹脂組成物の柔軟性や耐候性、靭性を更に向上できることとなる。より好ましくは、50〜100質量%である。
上記α,β−不飽和カルボン酸系単量体とビニル系単量体との質量比としては、これらの合計量100質量%に対して、α,β−不飽和カルボン酸系単量体が9質量%以上であることが好ましく、これにより、アルカリ水に対する溶解性をより向上することが可能となる。また、α,β−不飽和カルボン酸系単量体の範囲としては、9〜40質量%であることが好適であり、この場合には、アルカリ水に対する溶解性のみならず、柔軟性や耐候性、靭性に特に優れたアルカリ水可溶性樹脂を得ることができる。
上記アルカリ水可溶性樹脂としては、上述したα,β−不飽和カルボン酸系単量体及びビニル系単量体等の単量体成分を(共)重合することにより得ることができるが、(共)重
合方法は、通常用いられている方法により行うことができる。
上記アルカリ水可溶性樹脂等のアルカリ水可溶性樹脂において、重量平均分子量(Mw)としては、地盤を構成する土壌や水硬性組成物の組成、アルカリ水のpH、作業環境等に応じて適宜設定すればよいが、下限が1万、上限が200万であることが好ましい。この範囲においては、打設体への密着性及び作業性がより充分に発揮されることとなる。より好ましい下限は3万であり、更に好ましい下限は5万であり、特に好ましい下限は10万である。また、より好ましい上限は150万であり、更に好ましい上限は100万であり、特に好ましい上限は90万である。
なお、上記重量平均分子量(Mw)は、分子量校正用標準物質としてTSK標準ポリスチレンPS−オリゴマーキット(東ソー社製)を使用し、溶媒としてテトラヒドロフラン(安定剤含有(和光純薬工業社製、試薬特級)を使用して、高速GPC装置・HLC−8120GPC(東ソー社製)により測定することができる。
上記アルカリ水可溶性樹脂の酸価(mgKOH/g)としては、15以上であることが好ましい。15未満であると、アルカリ水に対する溶解性が低下するので、既埋設体の引き抜き易さや摩擦低減効果が低下するおそれがあり、また、引き抜き作業をより容易化することができないおそれがある。より好ましくは、30以上であり、更に好ましくは、50以上であり、特に好ましくは、70以上である。また、500以下であることが好ましい。500を超えると、アルカリ水可溶性樹脂の耐水性が充分とはならず、雨等の中性域又は酸性域のpHを示す水と接触すると溶解して損傷するおそれがあり、打設体の打設作業や既埋設体の引き抜き作業等をより効率的に行うことができないおそれがある。
なお、上記酸価は、JIS K6901「液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法」の適用箇条5.3に記載の試験方法に基づいて測定して求めることができる。その際、酸価の値は、酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表される。
上記アルカリ水可溶性樹脂のガラス転移温度としては、打設体表面への密着性及び打設体を土中へ打設する際における樹脂組成物の強靭性の両立という点から、−80〜120℃にガラス転移温度(Tg)を少なくとも1つ有することが好ましく、より好ましくは、2つ以上有することである。ガラス転移温度を上記範囲内に設定することにより、摩擦低減材層の強度や柔軟性を充分なものとすることが可能となり、作業効率をより高めることができる。上記アルカリ水可溶性樹脂の特に好ましい形態としては、−30〜20℃の範囲内に低温側のTgを1つ以上有し、かつ、40〜100℃の範囲内に高温側のTgを1つ以上有する形態であり、これにより、柔軟化成分と形状保持成分とのバランスをより向上することができる。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC;differential scanning calorimetry)によって得られるDSC微分曲線のピークトップ(DSC曲線の変曲点)として求めることができる。
上記樹脂組成物において、含有してもよい溶剤としては特に限定されず、例えば、通常の塗料等に用いられる溶剤を使用すればよい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール誘導体、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール誘導体等の1種又は2種以上を用いることができる。
なお、溶剤として、アルカリ水可溶性樹脂中に含まれる溶媒を使用することもできる。
上記溶剤(溶媒)としては、アルカリ水可溶性樹脂を溶解する性質を有することが好ましい。溶剤がアルカリ水可溶性樹脂を溶解することによって、アルカリ水可溶性樹脂を樹脂組成物中により均一に分散させることができ、アルカリ水可溶性樹脂としての性能を好ましく発現させることが可能となる。アルカリ水可溶性樹脂を溶解する溶媒としては、極性溶媒を使用することが好ましい。より好ましくは、アルカリ水可溶性溶解性の点から、アルコール、ケトン、脂肪族エステル、アルキレングリコールから選択される少なくとも1種である。
上記樹脂組成物としてはまた、その作用効果を阻害しない範囲内で、他の樹脂や、顔料、界面活性剤、各種安定剤、各種充填材等の添加剤を含んでもよい。
本発明において用いられる摩擦低減材の形態としては、液体や粘性体(分散体も含む)、粉体、シート形態等が挙げられ、打設体表面の摩擦を低減できれば特に制限されるものではないが、打設体表面に形成させる観点から、液体またはシート形態が好ましい。
上記摩擦低減材が液体の場合、直接、打設体表面に塗布でき、経済的で好ましい。なお、摩擦低減材が液体である場合には、塗布可能な適度な粘度を持った液体とする必要があり、好適なバインダー樹脂を選択したり、溶剤を選択したりすることによって調製することができる。
また、上記摩擦低減材がシート形態の場合は、接着剤等を介して、打設体表面に貼付けることとなる。
上記シート形態の摩擦低減材は、潤滑性の樹脂を溶融や成型などの加工によりシート形状にする方法や、粉体状の摩擦低減材を布などのシート状基材にバインダー樹脂と共に塗布(コーティング)する方法等により得られる。シート形態の摩擦低減材は、摩擦低減材を直接打設体に塗布する場合に比べて、打設体表面への貼付け施工が簡便で施工作業性を向上させ、塗り斑が発生せず均一な摩擦低減材層を形成できるので、好ましい形態の一つである。
シート状基材表面に摩擦低減材層を形成する方法としては、潤滑性の物質(潤滑剤)や基材の材質等に応じて適宜選択すればよく特に限定されないが、例えば、塗布機による塗布、噴霧(スプレー)塗り、刷毛塗り、ローラー塗りの他、基材に潤滑剤を含む溶液を含浸させる方法等が挙げられる。
具体的には、例えば、アルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂とを含む樹脂組成物を用いる場合においては、両者を有機溶剤や水等の分散媒に分散(又は溶解)してなる分散液(樹脂溶液)を基材表面に、噴霧(スプレー)する方法;樹脂溶液を刷毛塗り又はローラーを用いて塗布する方法;基材に樹脂溶液を含浸させる方法等;アルカリ水可溶性樹脂を含む溶液又は分散液を基材表面に噴霧又は塗布した後、該表面に吸水性樹脂を均一に撒布し、更にこの上に該溶液又は分散液を噴霧又は塗布する方法等が挙げられる。
上記摩擦低減材層の膜厚としては、その成分等に応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、例えば、下限が0.01mm、上限が5mmであることが好ましい。0.01mm未満であると、それぞれの層の作用効果を充分に発揮できないおそれがあり、5mmを超えると、シートの取り扱い性や保存性が充分とはならないおそれがある。より好ましい下限は0.02mm、上限は1mmであり、更に好ましい下限は0.05mm、上限は0.5mmである。
また、基材に対する摩擦低減材層の割合、すなわち基材の単位面積当たりに対する潤滑剤の付着量は、両者の組成や組み合わせ、作業環境等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、1〜10000g/mの範囲内であることが好ましい。より好ましくは、10〜5000g/mであり、更に好ましくは、20〜1000g/mである。なお、基材100重量部に対する潤滑剤の割合としては、1〜10000重量部であることが好ましい。より好ましくは、10〜1000重量部であり、更に好ましくは、20〜500重量部である。
本発明の撤去方法が適用される地盤は、特に制限はないが、通常使用される撤去方法によって既埋設体を撤去すると、地盤沈下を引き起こす可能性が高いような軟弱層であると、本発明の撤去方法によれば地盤沈下を防ぐことができることが期待できるため好ましい。上記軟弱層としては、N値が40以下であると本発明の効果が顕著となり好ましい。より好ましくは、N値が25以下の軟弱層に適用することであり、更に好ましくは、N値が10以下の軟弱層に適用することである。N値が5以下の軟弱層に適用することが特に好ましい。
なお、上記N値は、土の強さ又は堅さの指標として用いられているものであり、地盤の強度の指標とすることのできるものである。N値は、JIS A1219「標準貫入試験方法」に記載の試験方法に基づいて求めることができる。
本発明は、上述の構成よりなり、既埋設体を撤去した後に周辺の地盤が緩むのを低減することができることから、既埋設体の撤去を安全に、かつ低コストで実施するために好適に用いることができる既埋設体の撤去方法である。
図1−1は、打設体として平板を用いる形態の一例を表した概念図である。 図1−2は、打設体として鋼矢板と平板とを組み合わせて用いる形態の一例を表した概念図である。 図2は、打設された平板と地中に埋まっている凹状に開いた形状の鋼矢板とを地上から見た時の、平板と鋼矢板との位置関係の概念図である。 図3は、地中に埋まっている凹状に開いた形状の鋼矢板を、打設体を打設せずに引き抜いた時の様子を表した概念図である。 図4は、図2の(c)の箇所に平板を打設して、鋼矢板を引き抜いた時の様子を表した概念図である。 図5は、既埋設体が上面から見て凹状に開いた形状である鋼矢板であり、打設体を既埋設体の凹状の開いた方に打設する形態について、その形態を実施している様子の一例を表した概念図である。 図6は、図2の(a)及び(c)の箇所に平板を打設する形態における、平板と鋼矢板とのサイズ及び位置関係を模式的に表した模式図である。 図7は、実施例及び比較例で用いた一面せん断試験装置の概観を表したモデル図である。 図8は、実施例1及び比較例1において、豊浦砂を供試体とした時の、垂直圧力とせん断力との関係を表したグラフである。 図9は、実施例2及び比較例2において、笠岡粘土を供試体とした時の、垂直圧力とせん断力との関係を表したグラフである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
(摩擦低減材として,吸水性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂とを必須成分とする組成物を塗布した鋼材の一面せん断試験)
実施例1
試験には,土質試験法(JIS 0560−2000,JIS 0561−2000)に準拠した一面せん断試験装置を用いた。試料として、豊浦砂(密度:2.702g/cm,最大密度:1.634g/cm,最小密度:1.341g/cm)を用いた。豊浦砂は気乾状態であり,相対密度D=80%程度で高さ10mmになるように空中落下法により供試体を作製した。鋼材(SS400)は,表面を防錆処理されており,滑らかである。摩擦低減材としては,吸水性樹脂と特殊バインダー樹脂を有機溶剤に分散させたフリクションカッター(商品名、日本触媒社製;上記吸水性樹脂は、平均粒子径100μmのアクリル酸塩共重合体系架橋体であり、上記特殊バインダー樹脂は、重量平均分子量が14万、酸価が118mgKOH/gであり、16℃と61℃の2つのガラス転移温度(Tg)を有するアルカリ水可溶性樹脂である。)を用いた。摩擦低減材の塗布厚は、0.2mmとした。なお,摩擦低減材は吸水することによりゲル状に変化する。試験装置の概観を図7に示す。図7に示したように,下せん断箱内に高さ10mmの鋼材を挿入し,その上に供試体を設置した。圧密圧力(垂直圧力)=147,196,245,294kN/mの各圧力で充分圧密した後,隙間設定用スペーサーを引き抜くことにより上下せん断箱のすき間を0.2mmに設定し,水浸箱に純水を十分に注水して1時間程度水浸した。そして、定載荷圧条件で,手動で制御しながらせん断変位速度0.2mm/min(せん断時間:約1時間)で水平変位7mmまでせん断を行った。
実施例2
試料として,笠岡粘土(土粒子密度:2.649g/cm,液性限界:58.4%,塑性限界:23.3%,塑性指数:35.1)を用い、練り返して鉛直圧密圧力98kN/mで予圧密した試料を直径60mm,高さ10mmに成形して供試体としたこと、及び、せん断を定体積条件で行ったこと以外は、実施例1と同様に行った。
比較例1
摩擦低減材を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして試験を行った。
比較例2
摩擦低減材を使用しなかったこと以外は実施例2と同様にして試験を行った。
実施例1及び比較例1において、豊浦砂を供試体とした時の、垂直圧力(垂直応力)とせん断力との関係を図8に、実施例2及び比較例2において、笠岡粘土を供試体とした時の、垂直圧力とせん断力との関係を図9に示した。
図8から分かるように、豊浦標準砂(豊浦砂)と摩擦低減材(鋼材に処理)との摩擦角は,δ=2.4°と小さな値を示したのに対して,摩擦低減材を処理しない無処理の鋼材と豊浦標準砂との摩擦角は,δ=21.6°であった。
また,図9から分かるように、笠岡粘土と摩擦低減材(鋼材に処理)との摩擦角は,δ=1.5°と小さな値を示したのに対して,摩擦低減材を処理しない無処理の鋼材と笠岡粘土との摩擦角は,δ=22.4°であった。
これらの結果から、摩擦低減材を処理することで鋼材表面の摩擦を1/10以下にすることができることが分かった。実施例及び比較例において実施した試験における、鋼材を打設体、供試体を既埋設体に付着する土とみなせば、既埋設体を引き抜く際にも同様の現象が起こっていると考えることができるため、この摩擦低減材を処理した打設体を既埋設体の周囲に打設することで、既埋設体引き抜き時に既埋設体に付着する土と打設体との摩擦が低減され、引き抜きに必要な力が低減されるということができる。
1:鋼矢板
2:平板
2a:鋼矢板
2b:平板
3:水浸箱
4:上せん断箱
5:下せん断箱
6:載荷板
7:ポーラスストーン
8:ロードセル
9:スペーサー
10:純水
11:供試体
12:鋼材
13:摩擦低減材

Claims (1)

  1. 既埋設体を地中から引き抜き撤去する既埋設体の撤去方法であって、
    該撤去方法は、平板の打設体を凹状に開いた形状の鋼矢板、U形鋼矢板を2枚向かい合わせに溶接した組み合わせ鋼矢板、鋼管、ヒューム管、H形鋼、I型鋼、鋼管杭、鉄柱(平板状のものを除く)、コンクリート杭(平板状のものを除く)、ポール、筒状のパイル、波板のいずれかの既埋設体の周囲の一部に打設した後に、該既埋設体を引き抜く工程を含み、該打設体は、地面に打設されたときに既埋設体と対向する側の面の表面が摩擦低減材で処理されており、
    摩擦低減材は、吸水性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂とを必須成分として含む
    ことを特徴とする埋設体の撤去方法。
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