JP5741303B2 - ペロブスカイト型酸化物膜形成用水溶液 - Google Patents
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Description
Z1−CO−CH2−CO−Z2 (1)
(式中、Z1およびZ2は、独立して、アルキル基またはアルコキシ基である。)
カルボキシラートである第2の配位子と、アルコキシドおよび水酸化物イオンからなる群から、独立してそれぞれ選択される第3の配位子および第4の配位子と、H2Oである第5の配位子と、がチタンイオンに配位してなるチタン錯体と、
ペロブスカイト型チタン酸化物におけるAサイトを占め得る金属のイオンと、
溶媒としての水と、
を少なくとも含んでなることを特徴とするものである。
本発明に用いられるチタン錯体は、チタンイオンに対する配位数が6であるチタン錯体であって、5つの配位子がチタンイオンに配位してなることを特徴する。そして、その第1の配位子は、下記一般式(1)で表され、二座配位子として機能するものである。
Z1−CO−CH2−CO−Z2 (1)
(式中、Z1およびZ2は、独立して、アルキル基またはアルコキシ基であり、好ましくはC1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基である。)
本発明によるチタン水溶液は、ペロブスカイト型チタン酸化物におけるAサイトをしめ得る金属イオンを含む。この金属イオンは、好ましくはCa、Sr、BaおよびPbからなる群から選択される金属元素のイオンである。
本発明によるチタン水溶液は、溶媒として水を含んでなる。さらに本発明の好ましい態様によれば、溶媒として、水よりも比誘電率が低く、水と相溶性があり、かつ非アルカリ性の第二溶媒を含んでなることが、上記チタン錯体の溶解度を高めることができることから好ましい。第二溶媒の好ましい具体例としては、一価アルコール、ジオールグリコール系溶媒、エチレングリコール系溶媒、グリセリン系溶媒、セロソルブ系溶媒、およびカルビトール系溶媒が挙げられる。
本発明に用いられる水溶性チタン錯体は、チタン前駆体を原料として、逐次的に式(1)で表わされるジケトン化合物及びカルボキシラートをチタンイオンに結合させることにより得ることが出来る。
上記の様にして得た、本発明によるチタン錯体を含む含水溶液に対して、二価の金属イオン化合物を添加して、本発明によるチタン水溶液を得る。この水溶液は、ペロブスカイト型チタン酸化物被膜を製造するために用いることができる。
チタン錯体及びストロンチウムを含む含水溶液の作製
20mLサンプル瓶に、アセチルアセトン(和光純薬製)0.02mol(2.003g)を添加し、室温で撹拌しながら、チタンテトライソプロポキシド(和光純薬製)0.02mol(5.684g)を約5分かけて約0.2gずつ添加した。添加後、5分間撹拌を行うことで、チタン‐アセチルアセトン錯体を含む黄色溶液を作製した。このチタン‐アセチルアセトン黄色溶液を、0.32mol/Lの酢酸水溶液50mLに、室温で攪拌しながら、約0.2mLずつ、約5分かけて添加した。添加後、室温で約1時間攪拌を行い、更に60℃で約1時間撹拌を行うことで、水溶性チタン錯体を含む黄色透明な水溶液を作製した。次いで、硝酸ストロンチウム(和光純薬製)0.02mol(4.236g)を蒸留水に50mLに溶解したものを、チタン錯体を含む水溶液に添加し、室温で1時間、50℃で3時間撹拌を行い、黄色懸濁液を作製した。この懸濁液を遠心分離機にて4000rpmで5分処理することで、黄白色ゲルを沈殿として回収した(含水量:5.0g)。この黄白色ゲルにエタノール45mLを添加して、30分撹拌することで、黄色透明な水溶液を得た。このコーティング液は、室温で半年間静置した後も、凝集することなく安定な性状を維持していた。
前記のように作製した含水系コーティング液を用いて、施釉タイル(6cm×4cm×1cm厚)を基板として、スピンコート法による製膜を行った。作製条件としては、含水系コーティング液を約1mL分取して、基板に展開し、5000rpmで10秒間スピンすることで製膜を行った。室温で約1時間、更に60℃で1時間乾燥した後、800℃で1時間焼成することで、SrTiO3膜を作製した。
チタン錯体及びストロンチウムを含む含水溶液の作製
20mLサンプル瓶に、アセチルアセトン(和光純薬製)0.02mol(2.003g)を添加し、室温で撹拌しながら、チタンテトライソプロポキシド(和光純薬製)0.02mol(5.684g)を約5分かけて約0.2gずつ添加した。添加後、5分間撹拌を行うことで、チタン‐アセチルアセトン錯体を含む黄色溶液を作製した。このチタン‐アセチルアセトン黄色溶液を、0.32mol/Lの酢酸水溶液50mLに、室温で攪拌しながら、約0.2mLずつ、約5分かけて添加した。添加後、室温で約1時間攪拌を行い、更に60℃で約1時間撹拌を行うことで、水溶性チタン錯体を含む黄色透明な水溶液を作製した。次いで、酢酸ストロンチウム0.5水和物(和光純薬製)0.02molを蒸留水に10mLに溶解したものを、チタン錯体を含む水溶液に添加し、室温で1時間、50℃で3時間撹拌を行い、黄色懸濁液を作製した。この懸濁液に、エタノール10mLを添加して、30分撹拌することで、黄色透明な水溶液を得た。このコーティング液は、室温で半年間静置した後も、凝集することなく安定な性状を維持していた。
含水系コーティング液によるペロブスカイト型SrTiO 3 膜の作製
前記のように作製した含水系コーティング液を用いて、石英基板(5cm×5cm×1mm厚)を基板として用いた以外は、実施例1と同様の方法で製膜した。乾燥後、900℃で5時間焼成を行い、SrTiO3膜を作製した。
各種アルコールを添加した含水溶液の作製
実施例2で使用した共溶媒であるエタノールに変えて、それぞれメタノール(和光純薬製)、1−プロパノール(和光純薬製)、1−ブタノール(和光純薬製)、またはエチレングリコール(和光純薬製)を添加した以外は、実施例2と同様の方法で各種含水溶液を作製した。これらの含水溶液は、すべて黄色透明な水溶液であり、このコーティング液は、室温で1カ月間静置した後も、凝集することなく安定な性状を維持していた。
実施例2で作製した含水溶液に、塩化ロジウム(III)三水和物のブタノール溶液(9.38重量%[Rh])を徐々に添加し、室温で30分撹拌することで、黄色透明な水溶液を作製した。これを、実施例1と同様の方法で製膜した。乾燥後、900℃で5時間焼成を行い、SrTiO3膜を作製した。
走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−800)により、実施例1のSrTiO3膜表面の構造観察を行った。低倍率(倍率 30,000倍)での電子顕微鏡写真を図1に示す。この膜表面には、目立ったクラックがなく、非常に平滑な表面を有することが分かる。また高倍率(倍率 100,000倍)での観察写真を図2に示す。この写真から20nm程度の一次粒子が非常に緻密にパッキングされていることが分かる。また、実施例2および実施例4の高倍率での観察写真を図3および図4として示す。この写真から、900℃という高温で焼成後も、約30nmの微粒子が緻密にパッキングされた膜であることが確認できた。また、X線回折測定(XRD:パナリティカル製、“X−pert Pro”)により、膜の結晶構造を調べた。その結果、実施例1のSrTiO3膜は、ペロブスカイト型SrTiO3の単相膜からなることが明らかとなった。さらに、実施例2および実施例4の結晶構造を同様に調べた。その結果、図5および図6にそれぞれ示されるXRD回折パターンから、実施例1と同様のペロブスカイト型SrTiO3の単相膜であることが確認された。
SrTiO3膜表面に紫外線を照射することで、水接触角が低下する光誘起親水性の評価を行った。光源としては、ブラックライト(東芝ライテック製)を用い、紫外線照度を1mW/cm2とした。初期の水接触角は、19.4°であったが、紫外線照射8時間後には、4.0°まで低下し、親水化反応が起こることを確認した。
20mLサンプル瓶に、アセチルアセトン(和光純薬製)0.02mol(2.003g)を添加し、室温で撹拌しながら、チタンテトライソプロポキシド(和光純薬製)0.02mol(5.684g)を約5分かけて約0.2gずつ添加した。次いで、溶媒としてエタノールを50mL添加して、室温で30分撹拌を行った。このチタン−アセチルアセトン−エタノール溶液に、硝酸ストロンチウムを0.02mol(4.236g)添加した。添加後、室温で約1時間攪拌を行ったが、加水分解反応が進行したため、黄白色の沈殿がすぐに生成し、コーティング液としては不適な性状となった。
Claims (17)
- チタンと金属元素とを含んでなるチタン水溶液であって、
チタンイオンに対する配位数が6であり、下記一般式(1)で表され、二座配位子として機能する第1の配位子と、
Z1−CO−CH2−CO−Z2 (1)
(式中、Z1およびZ2は、独立して、アルキル基またはアルコキシ基である。)
カルボキシラートである第2の配位子と、アルコキシドおよび水酸化物イオンからなる群から、独立してそれぞれ選択される第3の配位子および第4の配位子と、H2Oである第5の配位子と、がチタンイオンに配位してなるチタン錯体と、
ペロブスカイト型チタン酸化物におけるAサイトを占め得る金属のイオンと、
溶媒としての水と、
を少なくとも含んでなることを特徴とする、チタン水溶液。 - 前記ペロブスカイト型チタン酸化物におけるAサイトを占めうる金属のイオンが、Ca、Sr、BaおよびPbからなる群から選択される金属元素のイオンである、請求項1に記載のチタン水溶液。
- ペロブスカイト型チタン酸化物被膜を製造するため用いられる、請求項1または2に記載のチタン水溶液。
- 前記Z1およびZ2が、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のチタン水溶液。
- 前記第2の配位子であるカルボキシラートが、式R1−COO−(式中、R1はC1−4アルキル基である)で表わされる基であるか、または炭素数1〜6のヒドロキシ酸またはジカルボン酸の共役塩基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のチタン水溶液。
- 前記第3または第4の配位子であるアルコキシドが、式R2−O−(式中、R2はC1−6アルキル基である)で表わされる基である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のチタン水溶液。
- 前記第1の配位子が、アセチルアセトナトまたはアセト酢酸エチルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のチタン水溶液。
- 前記第2の配位子が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、およびクエン酸から選ばれるカルボン酸の共役塩基である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のチタン水溶液。
- 前記第2の配位子が、酢酸の共役塩基である酢酸イオンである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のチタン水溶液。
- 前記第3の配位子および第4の配位子が、イソプロポキシ基である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のチタン水溶液。
- 溶媒としてさらに、水よりも比誘電率が低く、水と相溶性があり、かつ非アルカリ性の第二溶媒を含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のチタン水溶液。
- 前記第二溶媒が、一価アルコール、グリコール系溶媒、エチレングリコール系溶媒、グリセリン系溶媒、セロソルブ系溶媒、およびカルビトール系溶媒からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項11に記載のチタン水溶液。
- 前記第二溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールからなる群から選択されるものである、請求項12に記載のチタン水溶液。
- 請求項1〜13のいずれか一項に記載のチタン水溶液の製造方法であって、
チタン前駆体と、一般式(1)で表される化合物とを混合し、チタン‐アセチルアセトン錯体を得て、この溶液とカルボン酸イオンを含む水溶液とを混合し、さらに、得られた溶液とアルカリ土類金属イオンを含む水溶液とを混合した後に、場合によって水よりも比誘電率が低く、水と相溶性があり、かつ非アルカリ性の第二溶媒を混合することを少なくとも含んでなることを特徴とする、製造方法。 - 前記チタン前駆体が、チタンアルコキシドまたは四塩化チタンである、請求項14に記載の製造方法。
- チタン及びアルカリ土類金属を含むペロブスカイト型酸化物被膜の製造方法であって、
基材上に、請求項1〜13に記載のチタン水溶液を塗布し、
該基材を焼成して被膜を形成させる工程を含んでなる、製造方法。 - 前記基材が、アモルファスガラス層を少なくともその表面に有するものであり、該アモルファスガラス層にチタン水溶液が塗布され、該層上にペロブスカイト型チタン酸化物被膜が形成される、請求項16に記載の製造方法。
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