JP5736648B2 - エンジン始動・停止制御装置 - Google Patents

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本発明は、ディーゼルエンジンのエンジン始動・停止制御装置に係り、エンジン始動時及びエンジン停止時の車体振動を低減するエンジン始動・停止制御装置に関する。
ディーゼルエンジンは、軽油の着火に好適な圧縮比がガソリンに好適な圧縮比よりも高いため、高圧縮となる。図6に示されるように、ディーゼルエンジンにおける筒内圧のピークは、ガソリンエンジンのそれに比べ5〜7倍大きい。例えば、ディーゼルエンジンでは、上死点、すなわちクランク角が0°のとき、筒内圧は4MPaにも達する。
特開2006−112366号公報
ディーゼル車において、エンジン始動あるいはエンジン停止を行うとき、車体振動が大きく、不快である。車体振動が大きいのは、エンジン始動時に無回転からアイドル回転に至る途中で、エンジン回転数に随伴して変化するパワープラント(エンジン本体とトランスミッションを含むエンジンマウント上の全体)における振動の周波数がパワープラントの共振周波数を通過するからである。エンジン停止時には、逆にアイドル回転から無回転に至る途中で、パワープラントの振動の周波数がパワープラントの共振周波数を通過する。パワープラントが大きく振動することにより、大きな車体振動が発生する。なお、本明細書では、「エンジン停止時」とは、運転されているエンジンが停止される時の意味である。エンジンが停止したままの状態は、エンジン停止状態という。
図7にエンジン始動時における車体振動の様子をグラフで示す。エンジン回転数が0から上昇するにつれて、パワープラントの振動の周波数が上昇する。周波数がパワープラントの共振周波数Frの近傍にあるとき、車体振動が顕著に大きいことが分かる。なお、パワープラントは、その共振周波数Frがアイドル回転数Riに対応する周波数Fiより低くなるよう設計されている。これにより、アイドル回転数Riやそれより高いエンジン回転数にてパワープラントが共振することが回避されている。従って、エンジン始動時やエンジン停止時にパワープラントが一時的に共振してしまう。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、エンジン始動時及びエンジン停止時の車体振動を低減するエンジン始動・停止制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明は、ディーゼルエンジンの燃焼室の内外間を連通させるために開閉されるバルブと、前記バルブを駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータを制御して、エンジン始動指令を受けてからエンジン回転数があらかじめ設定された閾値に達するまでの所定期間、前記バルブが開いた状態を維持する制御部と、を備え、前記バルブは、燃焼サイクル中の吸排気のために所定のクランク角で開閉されるよう設定された吸気バルブ及び排気バルブとは別途に設けたバルブであり、前記制御部は、燃焼サイクルにかかわらず、前記所定期間にわたり継続して前記バルブが開いた状態を維持するエンジン始動・停止制御装置である。
前記制御部は、前記アクチュエータを制御して、エンジン停止指令を受けたのち、前記バルブを開いた状態に維持するとよい。
前記制御部は、エンジン回転数が前記閾値に達したとき前記バルブを閉じるとよい。
また、本発明は、ディーゼルエンジンの燃焼室の内外間を連通させるために開閉されるバルブと、前記バルブを駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータを制御して、エンジン停止指令を受けたのち、前記バルブを開いた状態に維持する制御部と、を備え、前記バルブは、燃焼サイクル中の吸排気のために所定のクランク角で開閉されるよう設定された吸気バルブ及び排気バルブとは別途に設けたバルブであり、前記制御部は、燃焼サイクルにかかわらず、前記アクチュエータを非作動とする指示があるまでの所定期間にわたり継続して前記バルブが開いた状態を維持するエンジン始動・停止制御装置である。
前記バルブを開いた状態に維持する期間に、少なくともエンジン回転数がパワープラントの共振周波数に相当する回転数をまたいで遷移する時期を含むとよい。
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
(1)エンジン始動時及びエンジン停止時の車体振動を低減することができる。
本発明の一実施形態によるエンジン始動・停止制御装置を示すバルブ開時とバルブ閉時の構造図である。 本発明のエンジン始動・停止制御装置のエンジン始動時における各部信号の時刻歴を示すタイミングチャートである。 本発明のエンジン始動・停止制御装置のエンジン停止時における各部信号の時刻歴を示すタイミングチャートである。 本発明のエンジン始動時におけるエンジン回転数と車体振動の遷移を示すグラフである。 本発明の一実施形態によるエンジン始動・停止制御装置を示す1燃焼サイクル中の構造図である。 ディーゼルエンジンとガソリンエンジンのクランク角に対する筒内圧の特性グラフである。 従来のディーゼルエンジンのエンジン始動時におけるエンジン回転数と車体振動の遷移を示すグラフである。
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
図1に示されるように、本発明に係るエンジン始動・停止制御装置1は、ディーゼルエンジンの燃焼室2の内外間を連通させるために開閉されるバルブ3と、バルブ3を駆動するアクチュエータ4と、アクチュエータ4を制御して、エンジン始動時及びエンジン停止時の所定期間、バルブ3を開くことにより、ディーゼルエンジンの回転による起振力を低減する制御部5とを備える。
燃焼室2には、ピストン6に対向するシリンダヘッド部分7に吸気バルブ3aと排気バルブ3bが設けられる。吸気バルブ3aは、燃焼室2がインテークマニホールド8に通じるように開閉されるものである。排気バルブ3bは、燃焼室2がエキゾーストマニホールド9に通じるように開閉されるものである。吸気バルブ3a及び排気バルブ3bは、燃焼サイクル中の吸排気のために、ピストン6の往復動作と同期して所定のクランク角で開閉されるよう設定されたものであり、図示しないカム機構により駆動される。
本実施形態では、バルブ3は、吸気バルブ3a及び排気バルブ3bとは別途に設けたバルブ(以下、燃焼室開放バルブという)3cである。バルブ3は、燃焼室2の外側で配管に接続する必要はなく、直接、燃焼室2を大気開放するように構成してよい。
アクチュエータ4は、燃焼室開放バルブ3cを燃焼室2内に押し込むことにより、燃焼室開放バルブ3cを開き、燃焼室開放バルブ3cを引いてシリンダヘッド部分7に密着させることにより、燃焼室開放バルブ3cを閉じるようにストローク運動するものである。アクチュエータ4としては、ソレノイド、油圧シリンダ、モータなどがある。
制御部5は、プログラム式のデジタル回路であり、アクチュエータ4を制御して燃焼室開放バルブ3cを開閉させることができる。制御部5は、車両の燃料噴射等を制御する電子制御装置(ECU)に組み込むのが好ましい。制御部5は、エンジン始動時及びエンジン停止時の所定期間、燃焼室開放バルブ3cを開くようになっている。ここでは、エンジン始動時には、エンジン始動指令と同時に燃焼室開放バルブ3cを開き、エンジン回転数があらかじめ設定された閾値に達したとき燃焼室開放バルブ3cを閉じるものとする。エンジン停止時には、エンジン停止指令と同時に燃焼室開放バルブ3cを開き、エンジン停止状態になった後など適宜なときに、燃焼室開放バルブ3cを閉じるものとする。
エンジン始動指令と同時とは、具体的には、キースイッチ操作からのエンジン始動時において、イグニッション信号がオフからオンに転じたときを指し、アイドル停止機能を有する車両の場合、ECU内のアイドル停止解除信号(アイドル停止を解除してエンジンを再始動させる信号)がオフからオンに転じたときも含む。エンジン停止指令と同時とは、具体的には、キースイッチ操作からのエンジン停止時において、イグニッション信号がオンからオフに転じたときを指し、アイドル停止機能を有する車両の場合、ECU内のアイドル停止信号(アイドル停止条件成立時にエンジンを停止させる信号)がオフからオンに転じたときも含む。
エンジン始動時に燃焼室開放バルブ3cを閉じるエンジン回転数の閾値としては、燃焼室開放バルブ3cを開いている期間が少なくともエンジン回転数がパワープラントの共振周波数に相当する回転数をまたいで遷移する時期を含むようにする。一例として、エンジン回転数がアイドル回転数に達したときに燃焼室開放バルブ3cを閉じるとよい。
次に、エンジン始動・停止制御装置1の動作を説明する。
まず、エンジン始動時について図2を用いて説明する。
エンジン停止状態において、イグニッション信号がオフからオンに転じたとき、ただちに制御部5は、アクチュエータ4を非作動から作動に制御する。これにより、燃焼室開放バルブ3cが閉から開になる。一方、イグニッション信号がオフからオンに転じたことにより、エンジン始動が開始され、エンジン回転数は上昇するが、エンジン回転数が閾値に達するまでは、制御部5は、アクチュエータ4を作動している状態に保つ。
燃焼室2内でのピストン6の往復動作とカム機構による吸気バルブ3a及び排気バルブ3bの動作においては、圧縮行程に入ると、吸気バルブ3a及び排気バルブ3bは共に閉じられる。したがって、従来であれば図6のようにクランク角が上死点に近づくと、筒内圧が高まる。ところが、本発明では、図1のようにアクチュエータ4が作動しているバルブ開の期間、燃焼室開放バルブ3cが開であるため、筒内圧が高まらない。この結果、エンジン回転による起振力が低減される。
図2に示されるように、エンジン回転数が閾値に達すると、制御部5は、アクチュエータ4を非作動に制御する。これにより、燃焼室開放バルブ3cが開から閉になる。燃焼室開放バルブ3cが閉になった後には、ピストン6の往復動作とカム機構による吸気バルブ3a及び排気バルブ3bの動作により、吸気、圧縮、膨張、排気が行われるので、エンジンは適切に始動される。
図2の筒内圧に注目すると、燃焼室開放バルブ3cが開の期間はピークが小さく、燃焼室開放バルブ3cが閉になるとピークが大きくなる。すなわち、エンジン停止状態からエンジン回転数が閾値に達するまでの期間は、エンジン回転数が閾値に達した後に比べて、筒内圧が高くならない。このような制御手順と筒内圧のふるまいは、アイドル停止解除信号がオフからオンに転じたときも、同じである。
エンジン停止時について図3を用いて説明する。
イグニッション信号がオンからオフに転じたとき、ただちに制御部5は、アクチュエータ4を非作動から作動に制御する。これにより、燃焼室開放バルブ3cが閉から開になる。
筒内圧に注目すると、燃焼室開放バルブ3cが閉のときはピークが大きく、燃焼室開放バルブ3cが開の期間に入るとピークが小さくなる。すなわち、エンジン停止時には、筒内圧が高くならない。このような制御手順と筒内圧のふるまいは、図3の括弧内に示したように、アイドル停止信号がオフからオンに転じたときも、同じである。
次に、本発明の効果を図4と図7を比較しつつ説明する。
図4及び図7は、横軸に時間をとり、縦軸に車体振動(例えば、加速度センサで検出した加速度から求めた上下、左右、前後、ロール、ヨー、ピッチいずれかの変位)をとり、エンジン始動時の車体振動の遷移を示したグラフである。時間軸に併せて、エンジン回転数と、パワープラントの振動の周波数を示してある。
図7のように、従来は、エンジン回転数が0からアイドル回転数Riに至る過程で、パワープラントの振動の周波数がパワープラントの共振周波数Frを通過するとき、車体振動が顕著となり、不快であった。これに対し、本発明では、図4に示されるように、エンジン回転数がRrであってパワープラントの振動の周波数がFrのときであっても、車体振動は小さいままである。これは、エンジン回転数がRrに達した時期が燃焼室開放バルブ3cが開の期間中にあるからである。燃焼室開放バルブ3cが開であるため、圧縮行程において筒内圧が高まらず、エンジン回転による起振力が低減されてパワープラントの振動が小さく、よって、車体振動の振幅も小さく、快適となる。
燃焼室開放バルブ3cを閉に戻すためのエンジン回転数の閾値は、パワープラントの共振周波数Frに相当するエンジン回転数Rrより十分高いことが必要であり、アイドル回転数Ri以下が好ましく、実験等により適宜設定するとよい。
図には示さなかったが、エンジン停止時にはエンジン回転数がアイドル回転数Riまたはアイドル回転数Riより高い回転数から0に至るので、ちょうど図4及び図7を右から左に見るように、パワープラントの振動の周波数がパワープラントの共振周波数Frを通過する。このため、従来は、車体振動が大きく、不快であったが、本発明では、パワープラントの振動の周波数がパワープラントの共振周波数Frを通過するときも車体振動の振動が小さく、快適となる。
以上説明したように、本発明に係るエンジン始動・停止制御装置1によれば、エンジン始動時及びエンジン停止時の所定期間、燃焼室開放バルブ3cを開くことにより、エンジン回転による起振力を低減するようにしたので、パワープラントの振動の周波数がパワープラントの共振周波数Frを通過するときにパワープラントの振動が小さく押さえられ、車体振動の振幅が低減される。
次に、本発明の他の実施形態を説明する。
前記実施形態では、筒内圧を低下させるためのバルブ3として、吸気バルブ3a及び排気バルブ3bとは別途に燃焼室開放バルブ3cを設けたが、ここでは、吸気バルブ3aもしくは排気バルブ3bを利用して筒内圧を低下させる。すなわち、吸気バルブ3a及び排気バルブ3bは、燃焼サイクル中の吸排気のために所定のクランク角で開閉されるようカム機構にて設定されているが、所定期間のみ、前記設定に加えて吸気バルブ3aもしくは排気バルブ3bが開かれるようにする。このためには、図示しないアクチュエータにより吸気バルブ3aもしくは排気バルブ3bをカム機構の設定とは異なるタイミングで開く必要がある。従来より、圧縮開放ブレーキ機構や可変バルブタイミング機構としてこのようなアクチュエータが設けられているので、このアクチュエータを本発明に利用する。
図5に示されるように、吸気行程において、吸気バルブ3aを開き、排気バルブ3bを閉じ、ピストン6を燃焼室2のエンド側(図示下方)に移動させることにより、吸気が行われる。圧縮行程において、吸気バルブ3aを閉じ、排気バルブ3bを閉じ、燃料噴射はしない状態にて、ピストン6を燃焼室2のヘッド側に移動させることにより、圧縮が行われる。
従来であれば、上死点に至るまでが圧縮行程であり、上死点から膨張行程に移行するが、本発明では、圧縮行程において上死点前の適宜なクランク角にて、圧縮開放の動作が行われる。すなわち、ピストン6が上死点に近づいてくる途中、排気バルブ3bを開く。さらに、膨張行程において上死点後の適宜なクランク角まで圧縮開放の動作を続け、それから排気バルブ3bを閉じて本来の膨張行程に入る。
膨張行程においては、吸気バルブ3aを閉じ、排気バルブ3bを閉じ、ピストン6を燃焼室2のエンド側に移動させることにより、膨張が行われる。排気行程では、吸気バルブ3aを閉じ、排気バルブ3bを開き、ピストン6を燃焼室2のヘッド側に移動させることにより、排気が行われる。なお、圧縮開放の動作において開くバルブは、排気バルブ3bのみに限らず、吸気バルブ3aのみを開いてもよく、吸気バルブ3a及び排気バルブ3bを共に開いてもよい。
この実施形態においても、エンジン始動時及びエンジン停止時の所定期間、吸気バルブ3aもしくは排気バルブ3bを開くことにより、エンジン回転による起振力を低減するようにしたので、パワープラントの振動の周波数がパワープラントの共振周波数Frを通過するときにパワープラントの振動が小さく押さえられ、車体振動の振幅が低減される。
1 エンジン始動・停止制御装置
2 燃焼室
3 バルブ
3a 吸気バルブ
3b 排気バルブ
3c 燃焼室開放バルブ
4 アクチュエータ
5 制御部
6 ピストン

Claims (5)

  1. ディーゼルエンジンの燃焼室の内外間を連通させるために開閉されるバルブと、
    前記バルブを駆動するアクチュエータと、
    前記アクチュエータを制御して、エンジン始動指令を受けてからエンジン回転数があらかじめ設定された閾値に達するまでの所定期間、前記バルブが開いた状態を維持する制御部と、
    を備え、
    前記バルブは、燃焼サイクル中の吸排気のために所定のクランク角で開閉されるよう設定された吸気バルブ及び排気バルブとは別途に設けたバルブであり、
    前記制御部は、燃焼サイクルにかかわらず、前記所定期間にわたり継続して前記バルブが開いた状態を維持することを特徴とするエンジン始動・停止制御装置。
  2. ディーゼルエンジンの燃焼室の内外間を連通させるために開閉されるバルブと、
    前記バルブを駆動するアクチュエータと、
    前記アクチュエータを制御して、エンジン停止指令を受けたのち、前記バルブを開いた状態に維持する制御部と、
    を備え、
    前記バルブは、燃焼サイクル中の吸排気のために所定のクランク角で開閉されるよう設定された吸気バルブ及び排気バルブとは別途に設けたバルブであり、
    前記制御部は、燃焼サイクルにかかわらず、前記アクチュエータを非作動とする指示があるまでの所定期間にわたり継続して前記バルブが開いた状態を維持することを特徴とするエンジン始動・停止制御装置。
  3. 前記制御部は、前記アクチュエータを制御して、エンジン停止指令を受けたのち、前記バルブを開いた状態に維持することを特徴とする請求項1記載のエンジン始動・停止制御装置。
  4. 前記制御部は、エンジン回転数が前記閾値に達したとき前記バルブを閉じることを特徴とする請求項1又は3記載のエンジン始動・停止制御装置。
  5. 前記バルブを開いた状態に維持する期間に、少なくともエンジン回転数がパワープラントの共振周波数に相当する回転数をまたいで遷移する時期を含むことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のエンジン始動・停止制御装置。
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