1.全体的な構成の説明
[1−1.全体構成]
図1は、この発明の一実施形態に係る燃料電池車両10(以下「FC車両10」又は「車両10」という。)の概略全体構成図である。図2は、FC車両10の電力系のブロック図である。図1及び図2に示すように、FC車両10は、燃料電池システム12(以下「FCシステム12」という。)と、走行モータ14(以下「モータ14」という。)と、インバータ16とを有する。
FCシステム12は、燃料電池ユニット18(以下「FCユニット18」という。)と、高電圧バッテリ20(以下「バッテリ20」ともいう。)(蓄電装置)と、DC/DCコンバータ22と、電子制御装置24(以下「ECU24」という。)とを有する。
[1−2.駆動系]
モータ14は、FCユニット18及びバッテリ20から供給される電力に基づいて駆動力を生成し、当該駆動力によりトランスミッション26を通じて車輪28を回転させる。また、モータ14は、回生を行うことで生成した電力(回生電力Preg)[W]をバッテリ20等に出力する(図2参照)。
インバータ16は、3相ブリッジ型の構成とされて、直流/交流変換を行い、直流を3相の交流に変換してモータ14に供給する一方、回生動作に伴う交流/直流変換後の直流をDC/DCコンバータ22を通じてバッテリ20等に供給する。
なお、モータ14とインバータ16を併せて負荷30という。負荷30には、後述するエアポンプ60、ウォータポンプ80、エアコンディショナ90等の構成要素を含めることもできる。
[1−3.FC系]
(1−3−1.全体構成)
図3は、FCユニット18の概略構成図である。FCユニット18は、燃料電池スタック40(以下「FCスタック40」又は「FC40」という。)と、FCスタック40のアノードに対して水素(燃料ガス)を給排するアノード系と、FCスタック40のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス)を給排するカソード系と、FCスタック40を冷却する冷却系と、セル電圧モニタ42とを備える。
(1−3−2.FCスタック40)
FCスタック40は、例えば、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで両側から挟み込んで形成された燃料電池セル(以下「FCセル」という。)を積層した構造を有する。
(1−3−3.アノード系)
アノード系は、水素タンク44、レギュレータ46、エゼクタ48及びパージ弁50を有する。水素タンク44は、燃料ガスとしての水素を収容するものであり、配管44a、レギュレータ46、配管46a、エゼクタ48及び配管48aを介して、アノード流路52の入口に接続されている。これにより、水素タンク44の水素は、配管44a等を介してアノード流路52に供給可能である。なお、配管44aには、遮断弁(図示せず)が設けられており、FCスタック40の発電の際、当該遮断弁は、ECU24により開とされる。
レギュレータ46は、導入される水素の圧力を所定値に調整して排出する。すなわち、レギュレータ46は、配管46bを介して入力されるカソード側の空気の圧力(パイロット圧)に応じて、下流側の圧力(アノード側の水素の圧力)を制御する。従って、アノード側の水素の圧力は、カソード側の空気の圧力に連動し、後記するように、酸素濃度を変化させるべくエアポンプ60の回転数等を変化させると、アノード側の水素の圧力も変化する。
エゼクタ48は、水素タンク44からの水素をノズルで噴射することで負圧を発生させ、この負圧によって配管48bのアノードオフガスを吸引する。
アノード流路52の出口は、配管48bを介して、エゼクタ48の吸気口に接続されている。そして、アノード流路52から排出されたアノードオフガスは、配管48bを通って、エゼクタ48に再度導入されることでアノードオフガス(水素)が循環する。
なお、アノードオフガスは、アノードにおける電極反応で消費されなかった水素及び水蒸気を含んでいる。また、配管48bには、アノードオフガスに含まれる水分{凝縮水(液体)、水蒸気(気体)}を分離・回収する気液分離器(図示せず)が設けられている。
配管48bの一部は、配管50a、パージ弁50及び配管50bを介して、後記する配管64bに設けられた希釈ボックス54に接続されている。パージ弁50は、FCスタック40の発電が安定していないと判定された場合、ECU24からの指令に基づき所定時間、開となる。希釈ボックス54は、パージ弁50からのアノードオフガス中の水素を、カソードオフガスで希釈する。
(1−3−4.カソード系)
カソード系は、エアポンプ60、加湿器62、背圧弁64、循環弁66、流量センサ68、70及び温度センサ72を有する。
エアポンプ60は、外気(空気)を圧縮してカソード側に送り込むものであり、その吸気口は、配管60aを介して車外(外部)と連通している。エアポンプ60の吐出口は、配管60b、加湿器62及び配管62aを介して、カソード流路74の入口に接続されている。エアポンプ60がECU24の指令に従って作動すると、エアポンプ60は、配管60aを介して車外の空気を吸気して圧縮し、この圧縮された空気が配管60b等を通ってカソード流路74に圧送される。
加湿器62は、水分透過性を有する複数の中空糸膜62eを備えている。そして、加湿器62は、中空糸膜62eを介して、カソード流路74に向かう空気とカソード流路74から排出された多湿のカソードオフガスとの間で水分交換させ、カソード流路74に向かう空気を加湿する。
カソード流路74の出口側には、配管62b、加湿器62、配管64a、背圧弁64及び配管64bが配置されている。カソード流路74から排出されたカソードオフガス(酸化剤オフガス)は、配管62b等を通って、車外に排出される。
背圧弁64は、例えば、バタフライ弁で構成され、その開度がECU24によって制御されることで、カソード流路74における空気の圧力を制御する。より具体的には、背圧弁64の開度が小さくなると、カソード流路74における空気の圧力が上昇し、体積流量当たりにおける酸素濃度(体積濃度)が高くなる。逆に、背圧弁64の開度が大きくなると、カソード流路74における空気の圧力が下降し、体積流量当たりにおける酸素濃度(体積濃度)が低くなる。
配管64bは、配管66a、循環弁66及び配管66bを介して、エアポンプ60の上流側の配管60aに接続されている。これにより、排気ガス(カソードオフガス)の一部が、循環ガスとして、配管66a、循環弁66及び配管66bを通って、配管60aに供給され、車外からの新規空気に合流し、エアポンプ60に吸気される。
循環弁66は、例えば、バタフライ弁で構成され、その開度がECU24によって制御されることで循環ガスの流量を制御する。
流量センサ68は、配管60bに取り付けられ、カソード流路74に向かう空気の流量[g/s]を検出してECU24に出力する。流量センサ70は、配管66bに取り付けられ、配管60aに向かう循環ガスの流量Qc[g/s]を検出してECU24に出力する。
温度センサ72は、配管64aに取り付けられ、カソードオフガスの温度を検出してECU24に出力する。ここで、循環ガスの温度は、カソードオフガスの温度と略等しいため、温度センサ72の検出するカソードオフガスの温度に基づいて、循環ガスの温度を検知することができる。
(1−3−5.冷却系)
冷却系は、ウォータポンプ80、ラジエータ82、ラジエータファン84及び温度センサ86等を有する。ウォータポンプ80は、FC40内に冷却水(冷媒)を循環させることでFC40を冷却する。FC40を冷却して温度が上昇した冷却水は、ラジエータファン84による送風を受けるラジエータ82で放熱される。温度センサ86は、冷却水の温度(以下「水温Tw」という。)を検出し、ECU24に出力する。
(1−3−6.セル電圧モニタ42)
セル電圧モニタ42は、FCスタック40を構成する複数の単セル毎のセル電圧Vcellを検出する機器であり、モニタ本体と、モニタ本体と各単セルとを接続するワイヤハーネスとを備える。モニタ本体は、所定周期で全ての単セルをスキャニングし、各単セルのセル電圧Vcellを検出し、平均セル電圧及び最低セル電圧を算出する。そして、平均セル電圧及び最低セル電圧をECU24に出力する。
(1−3−7.電力系)
図2に示すように、FC40からの電力(以下「FC電力Pfc」という。)は、インバータ16及びモータ14(力行時)とDC/DCコンバータ22及び高電圧バッテリ20(充電時)とに加え、前記エアポンプ60、前記ウォータポンプ80、前記エアコンディショナ90、ダウンバータ92(降圧型DC−DCコンバータ)、低電圧バッテリ94、アクセサリ96、ECU24及びラジエータファン84に供給される。なお、図1に示すように、FCユニット18(FC40)とインバータ16及びDC/DCコンバータ22との間には、逆流防止ダイオード98が配置されている。また、FC40の発電電圧(以下「FC電圧Vfc」という。)は、電圧センサ100(図4)により検出され、FC40の発電電流(以下「FC電流Ifc」という。)は、電流センサ102により検出され、いずれもECU24に出力される。
[1−4.高電圧バッテリ20]
バッテリ20は、複数のバッテリセルを含む蓄電装置(エネルギストレージ)であり、例えば、リチウムイオン2次電池、ニッケル水素2次電池又はキャパシタ等を利用することができる。本実施形態ではリチウムイオン2次電池を利用している。バッテリ20の出力電圧(以下「バッテリ電圧Vbat」という。)[V]は、電圧センサ104(図2)により検出され、バッテリ20の出力電流(以下「バッテリ電流Ibat」という。)[A]は、電流センサ106により検出され、それぞれECU24に出力される。ECU24は、バッテリ電圧Vbatとバッテリ電流Ibatとに基づいて、バッテリ20の残容量(以下「SOC」という。)[%]を算出する。
[1−5.DC/DCコンバータ22]
DC/DCコンバータ22は、FCユニット18からのFC電力Pfcと、バッテリ20から供給された電力(以下「バッテリ電力Pbat」という。)[W]と、モータ14からの回生電力Pregとの供給先を制御する。
図4には、本実施形態におけるDC/DCコンバータ22の詳細が示されている。図4に示すように、DC/DCコンバータ22は、一方がバッテリ20のある1次側1Sに接続され、他方が負荷30とFC40との接続点である2次側2Sに接続されている。
DC/DCコンバータ22は、1次側1Sの電圧(1次電圧V1)[V]を2次側2Sの電圧(2次電圧V2)[V](V1≦V2)に昇圧するとともに、2次電圧V2を1次電圧V1に降圧する昇降圧型且つチョッパ型の電圧変換装置である。
図4に示すように、DC/DCコンバータ22は、1次側1Sと2次側2Sとの間に配される相アームUAと、リアクトル110とから構成される。
相アームUAは、上アーム素子(上アームスイッチング素子112と逆並列ダイオード114)と下アーム素子(下アームスイッチング素子116と逆並列ダイオード118)とで構成される。上アームスイッチング素子112と下アームスイッチング素子116には、それぞれ例えば、MOSFET又はIGBT等が採用される。
リアクトル110は、相アームUAの中点(共通接続点)とバッテリ20の正極との間に挿入され、DC/DCコンバータ22により1次電圧V1と2次電圧V2との間で電圧を変換する際に、エネルギを蓄積及び放出する作用を有する。
上アームスイッチング素子112は、ECU24から出力されるゲート駆動信号(駆動電圧)UHのハイレベルによりオンにされ、下アームスイッチング素子116は、ゲートの駆動信号(駆動電圧)ULのハイレベルによりオンにされる。
なお、ECU24は、1次側の平滑コンデンサ122に並列に設けられた電圧センサ120により1次電圧V1を検出し、電流センサ124により1次側の電流(1次電流I1)[A]を検出する。また、ECU24は、2次側の平滑コンデンサ128に並列に設けられた電圧センサ126により2次電圧V2を検出し、電流センサ130により2次側の電流(2次電流I2)[A]を検出する。
[1−6.ECU24]
ECU24は、通信線140(図1等)を介して、モータ14、インバータ16、FCユニット18、バッテリ20及びDC/DCコンバータ22を制御する。当該制御に際しては、メモリ(ROM)に格納されたプログラムを実行し、また、セル電圧モニタ42、流量センサ68、70、温度センサ72、86、電圧センサ100、104、120、126、電流センサ102、106、124、130等の各種センサの検出値を用いる。
ここでの各種センサには、上記センサに加え、開度センサ150及びモータ回転数センサ152(図1)が含まれる。開度センサ150は、アクセルペダル154の開度θp[度]を検出する。回転数センサ152は、モータ14の回転数(以下「モータ回転数Nm」又は「回転数Nm」という。)[rpm]を検出する。ECU24は、回転数Nmを用いてFC車両10の車速V[km/h]を検出する。さらに、ECU24には、メインスイッチ156(以下「メインSW156」という。)が接続される。メインSW156は、FCユニット18及びバッテリ20からモータ14への電力供給の可否を切り替えるものであり、ユーザにより操作可能である。
ECU24は、マイクロコンピュータを含み、必要に応じて、タイマ、A/D変換器、D/A変換器等の入出力インタフェースを有する。なお、ECU24は、1つのECUのみからなるのではなく、モータ14、FCユニット18、バッテリ20及びDC/DCコンバータ22毎の複数のECUから構成することもできる。
ECU24は、FCスタック40の状態、バッテリ20の状態及びモータ14の状態の他、各種スイッチ及び各種センサからの入力(負荷要求)に基づき決定したFC車両10全体としてFCシステム12に要求される負荷から、FCスタック40が負担すべき負荷と、バッテリ20が負担すべき負荷と、回生電源(モータ14)が負担すべき負荷の配分(分担)を調停しながら決定し、モータ14、インバータ16、FCユニット18、バッテリ20及びDC/DCコンバータ22に指令を送出する。
2.本実施形態の制御
次に、ECU24における制御について説明する。
[2−1.基本制御]
図5には、ECU24における基本的な制御のフローチャートが示されている。ステップS1において、ECU24は、メインSW156がオンであるかどうかを判定する。メインSW156がオンでない場合(S1:NO)、ステップS1を繰り返す。メインSW156がオンである場合(S1:YES)、ステップS2に進む。ステップS2において、ECU24は、FCシステム12に要求される負荷(システム負荷Psys)[W]を計算する。
ステップS3において、ECU24は、FCシステム12のエネルギマネジメントを行う。ここにいうエネルギマネジメントは、主として、FC40の発電量(FC電力Pfc)及びバッテリ20の出力(バッテリ電力Pbat)を算出する処理であり、FCスタック40の劣化を抑制しつつ、FCシステム12全体の出力を効率化することを企図している。
ステップS4において、ECU24は、FCスタック40の周辺機器、すなわち、エアポンプ60、背圧弁64、循環弁66及びウォータポンプ80の制御(FC発電制御)を行う。ステップS5において、ECU24は、モータ14のトルク制御を行う。
ステップS6において、ECU24は、メインSW156がオフであるかどうかを判定する。メインSW156がオフでない場合(S6:NO)、ステップS2に戻る。メインSW156がオフである場合(S6:YES)、今回の処理を終了する。
[2−2.システム負荷Psysの計算]
図6には、システム負荷Psysを計算するフローチャートが示されている。ステップS11において、ECU24は、開度センサ150からアクセルペダル154の開度θpを読み込む。ステップS12において、ECU24は、回転数センサ152からモータ14の回転数Nmを読み込む。
ステップS13において、ECU24は、開度θpと回転数Nmに基づいてモータ14の予想消費電力Pm[W]を算出する。具体的には、図7に示すマップにおいて、開度θp毎に回転数Nmと予想消費電力Pmの関係を記憶しておく。例えば、開度θpがθp1であるとき、特性160を用いる。同様に、開度θpがθp2、θp3、θp4、θp5、θp6であるとき、それぞれ特性162、164、166、168、170を用いる。そして、開度θpに基づいて回転数Nmと予想消費電力Pmとの関係を示す特性を特定した上で、回転数Nmに応じた予想消費電力Pmを特定する。
ステップS14において、ECU24は、各補機から現在の動作状況を読み込む。ここでの補機には、例えば、エアポンプ60、ウォータポンプ80及びエアコンディショナ90を含む高電圧系の補機や、低電圧バッテリ94、アクセサリ96、ECU24及びラジエータファン84を含む低電圧系の補機が含まれる。例えば、エアポンプ60及びウォータポンプ80であれば、回転数Nap、Nwp[rpm]を読み込む。エアコンディショナ90であれば、その出力設定を読み込む。
ステップS15において、ECU24は、各補機の現在の動作状況に応じて補機の消費電力Pa[W]を算出する。ステップS16において、ECU24は、モータ14の予想消費電力Pmと補機の消費電力Paの和をFC車両10全体での予想消費電力(すなわち、システム負荷Psys)として算出する。
[2−3.エネルギマネジメント]
上記のように、本実施形態におけるエネルギマネジメントでは、FCスタック40の劣化を抑制しつつ、FCシステム12全体の出力を効率化することを企図している。
(2−3−1.前提事項)
図8は、FCスタック40を構成するFCセルの電位(セル電圧Vcell)[V]とセルの劣化量Dとの関係の一例を示している。すなわち、図8中の曲線180は、セル電圧Vcellと劣化量Dとの関係を示す。
図8において、電位v1(例えば、0.5V)を下回る領域(以下「白金凝集増加領域R1」又は「凝集増加領域R1」という。)では、FCセルに含まれる白金(酸化白金)について還元反応が激しく進行し、白金が過度に凝集する。電位v1から電位v2(例えば、0.8V)までは、還元反応が安定的に進行する領域(以下「白金還元領域R2」又は「還元領域R2」という。)である。
電位v2から電位v3(例えば、0.9V)までは、白金について酸化還元反応が進行する領域(以下「白金酸化還元進行領域R3」又は「酸化還元領域R3」という。)である。電位v3から電位v4(例えば、0.95V)までは、白金について酸化反応が安定的に進行する領域(以下「白金酸化安定領域R4」又は「酸化領域R4」という。)である。電位v4からOCV(開回路電圧)までは、セルに含まれるカーボンの酸化が進行する領域(以下「カーボン酸化領域R5」という。)である。
上記のように、図8では、セル電圧Vcellが白金還元領域R2又は白金酸化安定領域R4にあれば、隣り合う領域と比較してFCセルの劣化の進行度合が小さい。一方、セル電圧Vcellが白金凝集増加領域R1、白金酸化還元進行領域R3、又はカーボン酸化領域R5にあれば、隣り合う領域と比較してFCセルの劣化の進行度合が大きい。
なお、図8では、曲線180を一義的に定まるような表記としているが、実際は、単位時間当たりにおけるセル電圧Vcellの変動量(変動速度Acell)[V/sec]に応じて曲線180は変化する。
図9には、変動速度Acellが異なる場合の酸化の進行と還元の進行の様子の例を示すサイクリックボルタンメトリ図である。図9において、曲線190は、変動速度Acellが高い場合を示し、曲線192は、変動速度Acellが低い場合を示す。図9からわかるように、変動速度Acellに応じて酸化又は還元の進行度合が異なるため、必ずしも各電位v1〜v4は一義的に特定されない。また、FCセルの個体差によっても各電位v1〜v4は変化し得る。このため、電位v1〜v4は、理論値、シミュレーション値又は実測値に誤差分を反映させたものとして設定することが好ましい。
また、FCセルの電流−電圧(IV)特性は、一般的な燃料電池セルと同様、セル電圧Vcellが下がるほど、セル電流Icell[A]が増加する(図10参照)。加えて、FCスタック40の発電電圧(FC電圧Vfc)は、セル電圧VcellにFCスタック40内の直列接続数Nfcを乗算したものである。直列接続数Nfcは、FCスタック40内で直列に接続されるFCセルの数であり、以下、単に「セル数」ともいう。
以上を踏まえ、本実施形態では、DC/DCコンバータ22が、電圧変換動作を行っている際、FCスタック40の目標電圧(目標FC電圧Vfctgt)[V]を、主として、白金還元領域R2内に設定しつつ、必要に応じて白金酸化安定領域R4内に設定する(具体例は、図10等を用いて説明する。)。このような目標FC電圧Vfctgtの切替えを行うことにより、FC電圧Vfcが、領域R1、R3、R5(特に、白金酸化還元進行領域R3)内にある時間を極力短縮し、FCスタック40の劣化を防止することができる。
なお、上記の処理では、FCスタック40の供給電力(FC電力Pfc)と、システム負荷Psysが等しくならない場合が存在する。この点、FC電力Pfcがシステム負荷Psysを下回っている場合、その不足分は、バッテリ20から供給する。また、FC電力Pfcがシステム負荷Psysを上回っている場合、その余剰分は、バッテリ20に充電する。
なお、図8では、電位v1〜v4を具体的な数値として特定したが、これは、後述する制御を行うためであり、当該数値は、あくまで制御の便宜を考慮して決定するものである。換言すると、曲線180からもわかるように、劣化量Dは連続的に変化するため、制御の仕様に応じて、電位v1〜v4は、適宜設定することができる。
但し、白金還元領域R2は、曲線180の極小値(第1極小値Vlmi1)を含む。白金酸化還元進行領域R3では、曲線180の極大値(極大値Vlmx)を含む。白金酸化安定領域R4は、曲線180の別の極小値(第2極小値Vlmi2)を含む。
(2−3−2.エネルギマネジメントで用いる電力供給制御及び電力供給モード)
図10は、本実施形態における複数の電力供給モードの説明図である。本実施形態では、エネルギマネジメントで用いる電力供給の制御方法(電力供給モード)として、7つの制御方法(電力供給モード)を用いる。すなわち、本実施形態では、エネルギマネジメントで用いる電力供給モード(動作モード)として、通常モード及び第1〜第6暖機モードを切り替えて用いる。通常モードは、目標FC電圧Vfctgt及びFC電流Ifc(FC電力Pfc)がいずれも可変である電圧可変・電流可変制御(電圧可変・出力可変制御)である。第1〜第6暖機モードは、目標FC電圧Vfctgtが一定でありFC電流Ifc(FC電力Pfc)が可変である電圧固定・電流可変制御(電圧固定・出力可変制御)である。
通常モード(電圧可変・電流可変制御)は、FC40の暖機完了後に用いられるものであり、目標酸素濃度Cotgtを固定(或いは、酸素を豊潤な状態に維持)した状態で、目標FC電圧Vfctgtを調整することによりFC電流Ifcを制御する。これにより、基本的に、FC電力Pfcによりシステム負荷Psysをまかなうことが可能となる。
第1〜第6暖機モード(電圧固定・電流可変制御)は、FC40の暖機時に用いられるものであり、目標セル電圧Vcelltgt(=目標FC電圧Vfctgt/セル数)を、所定の電位{第1・第2暖機モードでは、補機作動可能最低電圧Vamin、第3・第4暖機モードでは、モータ駆動可能最低電圧Vmotmin1、第5・第6暖機モードでは、モータ性能保証最低電圧Vmotmin2}に固定すると共に、目標酸素濃度Cotgtを基本的に可変とすることにより、FC電流Ifcを可変とする。これにより、FCシステム12を暖機しつつ、基本的に、FC電力Pfcによりシステム負荷Psysをまかなうことが可能となる(詳細は後述する。)。FC電力Pfcの不足分は、バッテリ20からアシストする。
(2−3−3.エネルギマネジメントの全体フロー)
図11及び図12は、ECU24が、FCシステム12のエネルギマネジメント(図5のS3)を行う第1及び第2フローチャートである。図13は、図11及び図12のフローチャートで用いる補機作動可能最低電圧Vamin、モータ駆動可能最低電圧Vmotmin1及びモータ性能保証最低電圧Vmotmin2の説明図である。
図11のステップS21において、ECU24は、FCユニット18の暖機が必要であるか否かを判定する。具体的には、温度センサ86からの水温Twが、暖機の必要性を判断するための閾値(以下「暖機判定閾値THTw」又は「閾値THTw」という。)以下であるか否かを判定する。閾値THTwは、例えば、0〜10℃までのいずれかの値から選択することができる。暖機が必要でない場合(S21:NO)、ステップS22において、ECU24は、通常モードを選択してFC40を発電させる。この際、ECU24は、目標FC電圧Vfctgtをモータ性能保証最低電圧Vmotmin2(図13)以上に設定する。暖機が必要である場合(S21:YES)、ステップS23に進む。
ステップS23において、ECU24は、FC発電可能電圧Vfcpを判定する。FC発電可能電圧Vfcpは、FC40が発電することが可能な電圧を示す。本実施形態において、FC発電可能電圧Vfcpは、温度センサ86からの水温Twに応じて判定する。より具体的には、水温Twが低いほど、FC発電可能電圧Vfcpが低く、水温Twが高いほど、FC発電可能電圧Vfcpが高い。水温TwとFC発電可能電圧Vfcpとの関係は、ECU24の図示しない記憶部に予め記憶しておく。
ステップS24において、ECU24は、FC発電可能電圧Vfcpが、モータ性能保証最低電圧Vmotmin2以上であるか否かを判定する。モータ性能保証最低電圧Vmotmin2は、モータ14の性能を保証することができる最低電圧(性能保証電圧の最低値)であり(図13参照)、モータ14の仕様に応じて決まる。なお、FC電圧Vfcは、セル電圧Vcell×セル数に近似するため、モータ性能保証最低電圧Vmotmin2/セル数により、モータ性能保証最低電圧Vmotmin2に対応するセル電圧Vcellを求めることができる。本実施形態では、モータ性能保証最低電圧Vmotmin2に対応するセル電圧Vcellが、図8の還元領域R2となるように、モータ性能保証最低電圧Vmotmin2(モータ14の仕様)又はセル数を設定する。FC発電可能電圧Vfcpが、モータ性能保証最低電圧Vmotmin2以上でない場合(S24:NO)、ステップS25に進む。
ステップS25において、ECU24は、FC発電可能電圧Vfcpが、モータ駆動可能最低電圧Vmotmin1以上であるか否かを判定する。モータ駆動可能最低電圧Vmotmin1は、モータ14を駆動することができる最低電圧(駆動可能電圧の最低値)であり(図13参照)、モータ14の仕様に応じて決まる。なお、上記のように、FC電圧Vfcは、セル電圧Vcell×セル数に近似するため、モータ駆動可能最低電圧Vmotmin1/セル数により、モータ駆動可能最低電圧Vmotmin1に対応するセル電圧Vcellを求めることができる。本実施形態では、モータ駆動可能最低電圧Vmotmin1に対応するセル電圧Vcellが、図8の還元領域R2となるように、モータ駆動可能最低電圧Vmotmin1(モータ14の仕様)又はセル数を設定する。FC発電可能電圧Vfcpが、モータ駆動可能最低電圧Vmotmin1以上でない場合(S25:NO)、ステップS26に進む。
ステップS26において、ECU24は、FC発電可能電圧Vfcpが、補機作動可能最低電圧Vamin以上であるか否かを判定する。補機作動可能最低電圧Vaminは、補機を作動させることができる最低電圧(作動可能電圧の最低値)であり(図13参照)、補機の仕様に応じて決まる。ここでの補機は、本実施形態では、エアポンプ60を指す。しかし、FC40の発電に用いるもの(例えば、エアポンプ60、ウォータポンプ80、循環弁64)及びFC40の発電に用いないもの(例えば、エアコンディショナ90)のいずれも含むことができる。また、後述するように、複数の補機の補機作動可能最低電圧Vaminを用いることも可能である。
なお、上記のように、FC電圧Vfcは、セル電圧Vcell×セル数に近似するため、補機作動可能最低電圧Vamin/セル数により、補機作動可能最低電圧Vaminに対応するセル電圧Vcellを求めることができる。本実施形態では、補機作動可能最低電圧Vaminに対応するセル電圧Vcellが、図8の還元領域R2となるように、補機作動可能最低電圧Vamin(補機の仕様)又はセル数を設定する。
FC発電可能電圧Vfcpが、補機作動可能最低電圧Vamin以上でない場合(S26:NO)、ステップS27においてECU24は、バッテリ20からの電力(バッテリ電力Pbat)により、補機(エアポンプ60、ウォータポンプ80等)を作動させ、FC40を暖機する。この際、FC40に酸素及び水素を供給するものの、FC電力Pfcの出力は行わない。図示しないコンタクタ(スイッチ)を、FC40側の配線に設けておき、当該コンタクタを閉じておくことにより、FC電力Pfcの出力を停止してもよい。
FC発電可能電圧Vfcpが、補機作動可能最低電圧Vamin以上である場合(S26:YES)、ステップS28において、ECU24は、バッテリ20のSOCに余分があるか否かを判定する。具体的には、SOCが閾値THsoc1以上であるか否かを判定する。閾値THsoc1は、バッテリ20のSOCに余分があるか否かを判定するための閾値である。
バッテリ20のSOCに余分がない場合(S28:NO)、ステップS29において、ECU24は、第1暖機モードを選択する。第1暖機モードは、電圧固定・電流可変制御の一種であり、目標FC電圧Vfctgtを補機作動可能最低電圧Vaminで一定としつつ、目標FC電流Ifctgt及び目標酸素濃度Cotgtを可変とすることにより、FC電流Ifcを可変とする。この際、ECU24は、FC電力Pfcによる補機(エアポンプ60等)の作動を許可する。バッテリSOCに余分がないため、目標FC電流Ifctgt及び目標酸素濃度Cotgtは、システム負荷Psysに相当する値に設定される(詳細は後述する。)。
バッテリ20のSOCに余分がある場合(S28:YES)、ステップS30において、ECU24は、第2暖機モードを選択する。第2暖機モードは、電圧固定・電流可変制御の一種であり、目標FC電圧Vfctgtを補機作動可能最低電圧Vaminで一定とし、目標FC電流Ifctgt及び目標酸素濃度Cotgtを可変とすることにより、FC電流Ifcを可変とする。この際、ECU24は、FC電力Pfcによる補機(エアポンプ60等)の作動を許可する。バッテリSOCに余分があるため、目標FC電流Ifctgt及び目標酸素濃度Cotgtは、システム負荷Psysに相当する値よりも低い値に設定される(詳細は後述する。)。
ステップS25に戻り、FC発電可能電圧Vfcpが、モータ駆動可能最低電圧Vmotmin1以上である場合(S25:YES)、図12のステップS31において、ECU24は、バッテリ20のSOCに余分があるか否かを判定する。具体的には、SOCが閾値THsoc2以上であるか否かを判定する。閾値THsoc2は、バッテリ20のSOCに余分があるか否かを判定するための閾値であり、閾値THsoc1と同じ値又は異なる値にすることができる。
バッテリSOCに余分がない場合(S31:NO)、ステップS32において、ECU24は、第3暖機モードを選択する。第3暖機モードは、電圧固定・電流可変制御の一種であり、目標FC電圧Vfctgtをモータ駆動可能最低電圧Vmotmin1で一定とし、目標FC電流Ifctgt及び目標酸素濃度Cotgtを可変とすることにより、FC電流Ifcを可変とする。この際、ECU24は、FC電力Pfcによる補機(エアポンプ60等)の作動及びモータ14の駆動を許可する。バッテリSOCに余分がないため、目標FC電流Ifctgt及び目標酸素濃度Cotgtは、システム負荷Psysに相当する値に設定される(詳細は後述する。)。
バッテリ20のSOCに余分がある場合(S31:YES)、ステップS33において、ECU24は、第4暖機モードを選択する。第4暖機モードは、電圧固定・電流可変制御の一種であり、目標FC電圧Vfctgtをモータ駆動可能最低電圧Vmotmin1で一定とし、目標FC電流Ifctgt及び目標酸素濃度Cotgtを可変とすることにより、FC電流Ifcを可変とする。この際、ECU24は、FC電力Pfcによる補機(エアポンプ60等)の作動及びモータ14の駆動を許可する。バッテリSOCに余分があるため、目標FC電流Ifctgt及び目標酸素濃度Cotgtは、システム負荷Psysに相当する値よりも低い値に設定される(詳細は後述する。)。
図11のステップS24に戻り、FC発電可能電圧Vfcpが、モータ性能保証最低電圧Vmotmin2以上である場合(S24:YES)、図12のステップS34において、ECU24は、バッテリ20のSOCに余分があるか否かを判定する。具体的には、SOCが閾値THsoc3以上であるか否かを判定する。閾値THsoc3は、バッテリ20のSOCに余分があるか否かを判定するための閾値であり、閾値THsoc1又は閾値THsoc2と同じ値又は異なる値にすることができる。
バッテリSOCに余分がない場合(S34:NO)、ステップS35において、ECU24は、第5暖機モードを選択する。第5暖機モードは、電圧固定・電流可変制御の一種であり、目標FC電圧Vfctgtをモータ性能保証最低電圧Vmotmin2で一定とし、目標FC電流Ifctgt及び目標酸素濃度Cotgtを可変とすることにより、FC電流Ifcを可変とする。この際、ECU24は、FC電力Pfcによる補機(エアポンプ60等)の作動及びモータ14の駆動を許可する。バッテリSOCに余分がないため、目標FC電流Ifctgt及び目標酸素濃度Cotgtは、システム負荷Psysに相当する値に設定される(詳細は後述する。)。
バッテリ20のSOCに余分がある場合(S34:YES)、ステップS36において、ECU24は、第6暖機モードを選択する。第6暖機モードは、電圧固定・電流可変制御の一種であり、目標FC電圧Vfctgtをモータ性能保証最低電圧Vmotmin2で一定とし、目標FC電流Ifctgt及び目標酸素濃度Cotgtを可変とすることにより、FC電流Ifcを可変とする。この際、ECU24は、FC電力Pfcによる補機(エアポンプ60等)の作動及びモータ14の駆動を許可する。バッテリSOCに余分があるため、目標FC電流Ifctgt及び目標酸素濃度Cotgtは、システム負荷Psysに相当する値よりも低い値に設定される(詳細は後述する。)。
(2−3−4.通常モード)
上記のように、通常モードは、FC40の暖機完了後に用いられるものであり、目標酸素濃度Cotgtを固定(或いは、酸素を豊潤な状態に維持)した状態で、目標FC電圧Vfctgtを調整することによりFC電流Ifcを制御する。
すなわち、図10に示すように、通常モードでは、FC40の電流−電圧特性(IV特性)が通常のもの(図10中、実線で表されるもの)を用いる。通常の燃料電池と同様、FC40のIV特性は、セル電圧Vcell(FC電圧Vfc)が低くなるほど、セル電流Icell(FC電流Ifc)が大きくなる。このため、通常モードでは、システム負荷Psysに応じて目標FC電流Ifctgtを算出し、さらに目標FC電流Ifctgtに対応する目標FC電圧Vfctgtを算出する。そして、FC電圧Vfcが目標FC電圧Vfctgtとなるように、ECU24は、DC/DCコンバータ22を制御する。すなわち、2次電圧V2が目標FC電圧Vfctgtとなるように1次電圧V1をDC/DCコンバータ22により昇圧することで、FC電圧Vfcを制御してFC電流Ifcを制御する。
なお、酸素が豊潤な状態にあるとは、例えば、図14に示すように、カソードストイキ比を上昇させても、セル電流Icellが略一定となり、実質的に飽和した状態となる通常ストイキ比以上の領域における酸素を意味する。水素が豊潤であるという場合も、同様である。なお、カソードストイキ比とは、カソード流路74に供給するエアの流量/FC40の発電により消費されたエアの流量であり、カソード流路74における酸素濃度に近似する。また、カソードストイキ比の調整は、例えば、酸素濃度の制御により行う。
以上のような通常モードによれば、基本的にシステム負荷Psysの全てをFC電力Pfcによりまかなうことが可能となる。
(2−3−5.第1〜第6暖機モードの全体)
上記のように、第1〜第6暖機モードは、FC40の暖機時に用いられるものであり、目標FC電圧Vfctgt(=目標セル電圧Vcelltgt×セル数)を、所定の電位{第1・第2暖機モードでは、補機作動可能最低電圧Vamin、第3・第4暖機モードでは、モータ駆動可能最低電圧Vmotmin1、第5・第6暖機モードでは、モータ性能保証最低電圧Vmotmin2}に固定すると共に、目標酸素濃度Cotgtを基本的に可変とすることにより、FC電流Ifcを可変とする。
すなわち、図10に示すように、第1〜第6暖機モードでは、FC電圧Vfcを一定に保った状態で目標酸素濃度Cotgtを変化させることで酸素濃度Coを調整する。
より具体的には、第1・第2暖機モードでは、FC電圧Vfc(又は目標FC電圧Vfctgt)を補機作動可能最低電圧Vaminに保った状態で、目標酸素濃度Cotgtを変化させることで酸素濃度Coを調整する。FC電圧Vfcを補機作動可能最低電圧Vaminに保つには、DC/DCコンバータ22により2次電圧V2を制御する。この際、ECU24は、補機(エアポンプ60等)の作動を許可する。すなわち、FC40の発電に用いる補機に対するFC40からの電力供給を許可すると共に、当該補機に対して動作指令を出す。上記のように、第2暖機モードでは、バッテリ電力Pbatも用いる。このため、目標FC電流Ifctgtが等しい場合、第2暖機モードの方が第1暖機モードよりも目標酸素濃度Cotgtが低くなる。
第3・第4暖機モードでは、FC電圧Vfc(又は目標FC電圧Vfctgt)をモータ駆動可能最低電圧Vmotmin1に保った状態で、目標酸素濃度Cotgtを変化させることで酸素濃度Coを調整する。FC電圧Vfcをモータ駆動可能最低電圧Vmotmin1に保つには、DC/DCコンバータ22により2次電圧V2を制御する。この際、ECU24は、補機(エアポンプ60等)の作動に加え、モータ14の駆動を許可する。すなわち、FC40の発電に用いる補機及びモータ14に対するFC40からの電力供給を許可すると共に、当該補機及びモータ14に対して動作指令を出す。上記のように、第4暖機モードでは、バッテリ電力Pbatも用いる。このため、目標FC電流Ifctgtが等しい場合、第4暖機モードの方が第3暖機モードよりも目標酸素濃度Cotgtが低くなる。
第5・第6暖機モードでは、FC電圧Vfc(又は目標FC電圧Vfctgt)をモータ性能保証最低電圧Vmotmin2に保った状態で、目標酸素濃度Cotgtを変化させることで酸素濃度Coを調整する。FC電圧Vfcをモータ性能保証最低電圧Vmotmin2に保つには、DC/DCコンバータ22により2次電圧V2を制御する。この際、ECU24は、補機(エアポンプ60等)の作動に加え、モータ14の駆動を許可する。すなわち、FC40の発電に用いる補機及びモータ14に対するFC40からの電力供給を許可すると共に、当該補機及びモータ14に対して動作指令を出す。上記のように、第6暖機モードでは、バッテリ電力Pbatも用いる。このため、目標FC電流Ifctgtが等しい場合、第6暖機モードの方が第5暖機モードよりも目標酸素濃度Cotgtが低くなる。
図14に示すように、カソードストイキ比(酸素濃度Co)が低下するとセル電流Icell(FC電流Ifc)も低下する。このため、セル電圧Vcellを一定に保った状態で目標酸素濃度Cotgtを増減させることで、セル電流Icell(FC電流Ifc)及びFC電力Pfcを制御することが可能となる。なお、FC電力Pfcの不足分は、バッテリ20からアシストする。
図15は、セル電圧VcellとFC40(単位セル)の放熱量Hfc[kW]との関係を示す図である。図15に示すように、FC40の放熱量Hfcは、セル電圧Vcellに依存し、セル電流Icellには依存しない。従って、第1〜第6暖機モードにおいて、目標FC電圧Vfctgtを一定にすると、放熱量Hfcも一定に維持することが可能となる。
上記のように、第1・第2暖機モードでは、目標FC電圧Vfctgtを補機作動可能最低電圧Vaminに設定し、第3・第4暖機モードでは、目標FC電圧Vfctgtをモータ駆動可能最低電圧Vmotmin1に設定し、第5・第6暖機モードでは、目標FC電圧Vfctgtをモータ性能保証最低電圧Vmotmin2に設定する。また、補機作動可能最低電圧Vaminはモータ駆動可能最低電圧Vmotmin1よりも低く、モータ駆動可能最低電圧Vmotmin1はモータ性能保証最低電圧Vmotmin2よりも低い。このため、目標FC電圧Vfctgtが補機作動可能最低電圧Vaminであるときの放熱量Hfcは、目標FC電圧Vfctgtがモータ駆動可能最低電圧Vmotmin1であるときよりも高く、目標FC電圧Vfctgtがモータ駆動可能最低電圧Vmotmin1であるときの放熱量Hfcは、目標FC電圧Vfctgtがモータ性能保証最低電圧Vmotmin2であるときよりも高い。
従って、目標FC電圧Vfctgt及びFC電圧Vfcを補機作動可能最低電圧Vaminに設定することにより、放熱量Hfcを大きくし、迅速に暖機をすることが可能となる。
図16には、第1〜第6暖機モード(電圧固定・電流可変制御)に共通のフローチャートが示されている。ステップS41において、ECU24は、DC/DCコンバータ22の昇圧率を調整することにより、目標FC電圧Vfctgtを所定の電位に固定する。すなわち、第1・第2暖機モードでは、目標FC電圧Vfctgtを補機作動可能最低電圧Vaminに固定し、第3・第4暖機モードでは、目標FC電圧Vfctgtをモータ駆動可能最低電圧Vmotmin1に固定し、第5・第6暖機モードでは、目標FC電圧Vfctgtをモータ性能保証最低電圧Vmotmin2に固定する。
ステップS42において、ECU24は、目標FC電流Ifctgtを算出する。すなわち、第1・第3・第5暖機モードでは、システム負荷Psysに相当する目標FC電流Ifctgtを算出し、第2・第4・第6暖機モードでは、システム負荷Psysよりも低い負荷に相当する目標FC電流Ifctgtを算出する。
ステップS43において、ECU24は、目標FC電流Ifctgtに対応する目標酸素濃度Cotgtを算出する(図10及び図17参照)。なお、図17は、目標FC電流Ifctgtと目標酸素濃度Cotgtとの関係の一例を示す。図17のような関係は、目標FC電圧Vfctgtに応じて変化する。
ステップS44において、ECU24は、目標酸素濃度Cotgt(又は目標FC電流Ifctgt)に応じて各部への指令値を算出及び送信する。ここで算出される指令値には、エアポンプ60の回転数(以下「エアポンプ回転数Nap」又は「回転数Nap」という。)、ウォータポンプ80の回転数(以下「ウォータポンプ回転数Nwp」又は「回転数Nwp」という。)、背圧弁64の開度(以下「背圧弁開度θbp」又は「開度θbp」という。)及び循環弁66の開度(以下「循環弁開度θc」又は「開度θc」という。)が含まれる。
すなわち、図18及び図19に示すように、目標酸素濃度Cotgtに応じて目標エアポンプ回転数Naptgt、目標ウォータポンプ回転数Nwptgt及び目標背圧弁開度θbptgtが設定される。また、循環弁66の目標開度θctgtは、初期値(例えば、循環ガスがゼロとなる開度)に設定される。
ステップS45において、ECU24は、FC40による発電が安定しているか否かを判定する。当該判定として、ECU24は、セル電圧モニタ42から入力される最低セル電圧が、平均セル電圧から所定電圧を減算した電圧よりも低い場合{最低セル電圧<(平均セル電圧−所定電圧)}、FC40の発電が不安定であると判定する。なお、前記所定電圧は、例えば、実験値、シミュレーション値等を用いることができる。
発電が安定している場合(S45:YES)、今回の処理を終える。発電が安定していない場合(S45:NO)、ステップS46において、ECU24は、流量センサ70を介して循環ガスの流量Qc[g/s]を監視しながら、循環弁66の開度θcを大きくし、流量Qcを一段階増加する(図20参照)。なお、図20では、循環弁66を全開とした場合、流量Qcが4段階目の増加となり、最大流量となる場合を例示している。
但し、循環弁66の開度θcが増加すると、エアポンプ60に吸気される吸気ガスにおいて、循環ガスの割合が増加する。すなわち、吸気ガスについて、新規空気(車外から吸気される空気)と、循環ガスとの割合において、循環ガスの割合が増加するように変化する。従って、全単セルへの酸素の分配能力が向上する。ここで、循環ガス(カソードオフガス)の酸素濃度Coは、新規空気の酸素濃度Coに対して低い。このため、循環弁66の開度θcの制御前後において、エアポンプ60の回転数Nap及び背圧弁64の開度θbpが同一である場合、カソード流路74を通流するガスの酸素濃度Coが低下することになる。
そこで、ステップS46では、ステップS43で算出した目標酸素濃度Cotgtが維持されるように、循環ガスの流量Qcの増加に連動して、エアポンプ60の回転数Napの増加及び背圧弁64の開度θbpの減少の少なくとも一方を実行することが好ましい。
例えば、循環ガスの流量Qcを増加した場合、エアポンプ60の回転数Napを増加させ、新規空気の流量を増加することが好ましい。そして、このようにすれば、カソード流路74に向かうガス(新規空気と循環ガスとの混合ガス)全体の流量が増加するので、全単セルへの酸素の分配能力がさらに向上し、FC40の発電性能が回復し易くなる。
このようにして、目標酸素濃度Cotgtを維持しつつ、循環ガスを新規空気に合流させるので、カソード流路74を通流するガスの体積流量[L/s]が増加する。これにより、目標酸素濃度Cotgtが維持されつつ体積流量の増加したガスが、FC40内で複雑に形成されたカソード流路74全体に行き渡り易くなる。したがって、各単セルに前記ガスが同様に供給され易くなり、FC40の発電の不安定が解消され易くなる。また、MEA(膜電極接合体)の表面やカソード流路74を囲む壁面に付着する水滴(凝縮水等)も除去され易くなる。
ステップS47において、ECU24は、流量センサ70を介して検出される循環ガスの流量Qcが上限値以上であるか否か判定する。判定基準となる上限値は、循環弁66の開度θcが全開となる値に設定される。
この場合において、循環弁開度θcが同一であっても、エアポンプ60の回転数Napが増加すると、流量センサ70で検出される循環ガスの流量Qcが増加するので、前記上限値は、エアポンプ回転数Napに関連付けて、つまり、エアポンプ60の回転数Napが大きくなると、前記上限値が大きくなるように設定されることが好ましい。
循環ガスの流量Qcが上限値以上でないと判定した場合(S47:NO)、ステップS45に戻る。循環ガスの流量Qcが上限値以上であると判定した場合(S47:YES)、ステップS48に進む。
ここで、ステップS46、S47では、流量センサ70が直接検出する循環ガスの流量Qcに基づいて処理を実行したが、循環弁開度θcに基づいて処理を実行してもよい。すなわち、ステップS46において、循環弁開度θcを開方向に一段階(例えば30°)にて増加する構成とし、ステップS47において、循環弁66が全開である場合(S47:YES)、ステップS48に進む構成としてもよい。
また、この場合において、循環弁66の開度θcと、循環ガスの温度と、図21のマップとに基づいて、循環ガスの流量Qc[g/s]を算出することもできる。図21に示すように、循環ガスの温度が高くなるにつれて、その密度が小さくなるので、流量Qc[g/s]が小さくなる関係となっている。
ステップS48において、ECU24は、ステップS45と同様に、発電が安定しているか否かを判定する。発電が安定している場合(S48:YES)、今回の処理を終える。発電が安定していない場合(S48:NO)、ステップS49において、ECU24は、目標酸素濃度Cotgtを1段増加させる(通常の濃度に近づける)。具体的には、エアポンプ60の回転数Napの増加及び背圧弁64の開度θbpの減少の少なくとも一方を1段階行う。
ステップS50において、ECU24は、目標酸素濃度Cotgtが通常のIV特性における目標酸素濃度(通常酸素濃度Conml)以下であるか否かを判定する。目標酸素濃度Cotgtが通常酸素濃度Conml以下である場合(S50:YES)、ステップS48に戻る。目標酸素濃度Cotgtが通常酸素濃度Conml以下でない場合(S50:NO)、ステップS51において、ECU24は、FCユニット18を停止する。すなわち、ECU24は、FC40への水素及び空気の供給を停止し、FC40の発電を停止する。そして、ECU24は、図示しない警告ランプを点灯させ、運転者にFC40が異常であることを通知する。なお、ECU24は、バッテリ20からモータ14に電力を供給し、FC車両10の走行は継続させる。
以上のような第1〜第6暖機モードによれば、セル電圧Vcellを一定にした状態で、酸素濃度Co(カソードストイキ比)を調整することにより、FCシステム12を暖機しつつ、基本的にシステム負荷Psysの全てをFC電力Pfcによりまかなうことが可能となる。特に、第1・第2暖機モードでは、モータ駆動可能最低電圧Vmotmin1よりも低い補機作動可能最低電圧Vaminに目標FC電圧Vfctgtを設定するため、より速やかに暖機することが可能となる。
[2−4.FC発電制御]
上記のように、FC発電制御(図5のS4)として、ECU24は、FCスタック40の周辺機器、すなわち、エアポンプ60、背圧弁64、循環弁66及びウォータポンプ80を制御する。具体的には、ECU24は、エネルギマネジメント(図5のS3)で算出したこれらの機器の指令値(例えば、図16のS44)を用いてこれらの機器を制御する。
[2−5.モータ14のトルク制御]
図22には、モータ14のトルク制御のフローチャートが示されている。ステップS61において、ECU24は、回転数センサ152からモータ回転数Nmを読み込む。ステップS62において、ECU24は、開度センサ150からアクセルペダル154の開度θpを読み込む。
ステップS63において、ECU24は、モータ回転数Nmと開度θに基づいてモータ14の仮目標トルクTtgt_p[N・m]を算出する。具体的には、図示しない記憶手段に回転数Nmと開度θと仮目標トルクTtgt_pを関連付けたマップを記憶しておき、当該マップと、回転数Nm及び開度θとに基づいて仮目標トルクTtgt_pを算出する。
ステップS64において、ECU24は、FCシステム12からモータ14に供給可能な電力の限界値(限界供給電力Ps_lim)[W]に等しいモータ14の限界出力(モータ限界出力Pm_lim)[W]を算出する。具体的には、限界供給電力Ps_lim及びモータ限界出力Pm_limは、FCスタック40からのFC電力Pfcとバッテリ20から供給可能な電力の限界値(限界出力Pbat_lim)[W]との和から補機の消費電力Paを引いたものである(Pm_lim=Ps_lim←Pfc+Pbat_lim−Pa)。
ステップS65において、ECU24は、モータ14のトルク制限値Tlim[N・m]を算出する。具体的には、モータ限界出力Pm_limを車速Vで除したものをトルク制限値Tlimとする(Tlim←Pm_lim/V)。
一方、ステップS64において、ECU24は、モータ14が回生中であると判定した場合には、限界供給回生電力Ps_reglimを算出する。限界供給回生電力Ps_reglimは、バッテリ20に充電可能な電力の限界値(限界充電Pbat_chglim)とFCスタック40からのFC電力Pfcとの和から補機の消費電力Paを引いたものである(Pm_reglim=Pbat_chglim+Pfc−Pa)。回生中である場合、ステップS65において、ECU24は、モータ14の回生トルク制限値Treglim[N・m]を算出する。具体的には、限界供給回生電力Ps_reglimを車速Vsで除したものをトルク制限値Tlimとする(Tlim←Ps_reglim/Vs)。
ステップS66において、ECU24は、目標トルクTtgt[N・m]を算出する。具体的には、ECU24は、仮目標トルクTtgt_pに対してトルク制限値Tlimによる制限を加えたものを目標トルクTtgtとする。例えば、仮目標トルクTtgt_pがトルク制限値Tlim以下である場合(Ttgt_p≦Tlim)、仮目標トルクTtgt_pをそのまま目標トルクTtgtとする(Ttgt←Ttgt_p)。一方、仮目標トルクTtgt_pがトルク制限値Tlimを超える場合(Ttgt_p>Tlim)、トルク制限値Tlimを目標トルクTtgtとする(Ttgt←Tlim)。
そして、算出した目標トルクTtgtを用いてモータ14を制御する。
3.各種制御の例
図23には、本実施形態に係る各種制御を用いた場合のタイムチャートの例が示されている。図示していないが、図23では、バッテリ20のSOCには余分がない状況が続くものとする。従って、第2・第4・第6暖機モードは選択されない(図11のS28:YES、図12のS31:YES、S34:YES参照)。
時点t1では、既にFCユニット18の暖機が行われている最中であり、温度センサ86が検出した水温Twが閾値THTw以下であると共に(S21:YES)、FC発電可能電圧Vfcpが補機作動可能最低電圧Vamin以上(S26:YES)且つモータ駆動可能最低電圧Vmotmin1未満(S25:NO)となっている。このため、ECU24は、第1暖機モード(S29)を選択し、FC電圧Vfc(及び目標FC電圧Vfctgt)が補機作動可能最低電圧VaminとなるようにDC/DCコンバータ22を制御する。
時点t2から時点t3までは、水温Twが閾値THTw以下であると共に(S21:YES)、FC発電可能電圧Vfcpがモータ駆動可能最低電圧Vmotmin1以上(S25:YES)且つモータ性能保証最低電圧Vmotmin2未満(S24:NO)となる。そこで、ECU24は、第3暖機モード(S32)を選択し、FC電圧Vfc(及び目標FC電圧Vfctgt)がモータ駆動可能最低電圧Vmotmin1となるようにDC/DCコンバータ22を制御する。
時点t3から時点t4までは、水温Twが閾値THTw以下であると共に(S21:YES)、FC発電可能電圧Vfcpがモータ性能保証最低電圧Vmotmin2以上となる(S24:YES)。そこで、ECU24は、第5暖機モード(S35)を選択し、FC電圧Vfc(及び目標FC電圧Vfctgt)がモータ性能保証最低電圧Vmotmin2となるようにDC/DCコンバータ22を制御する。なお、FC発電可能電圧Vfcpがモータ性能保証最低電圧Vmotmin2以上となる場合、FC電圧Vfc(及び目標FC電圧Vfctgt)をFC発電可能電圧Vfcpに一致させるように目標FC電圧Vfctgtを設定してもよい。
時点t4において、水温Twが暖機判定閾値THTwを上回る(S21:NO)。従って、ECU24は、FC40の暖機を終了し、通常モードを選択する(S22)。
4.本実施形態の効果
以上説明したように、本実施形態によれば、低温時におけるFC40の起動時間を短縮することが可能となる。
すなわち、本実施形態によれば、FC発電可能電圧Vfcpが補機作動可能最低電圧Vamin以上になると、FC電圧Vfc(又は目標FC電圧Vfctgt)を補機作動可能最低電圧Vaminに設定して補機(エアポンプ60等)の作動を許可する。このため、補機の作動を許可しつつ、FC電圧Vfcを補機作動可能最低電圧Vaminにした状態でFC40を暖機することができる。また、FC発電可能電圧Vfcpが補機作動可能最低電圧Vaminよりも高いモータ駆動可能最低電圧Vmotmin1以上になると、FC電圧Vfcをモータ駆動可能最低電圧Vmotmin1に設定してモータ14の駆動を許可する。このため、モータ14の作動を許可しつつ、FC電圧Vfcをモータ駆動可能最低電圧Vmotmin1にした状態でFC40を暖機することができる。従って、FC発電出力可能電圧Vfcpがモータ駆動可能最低電圧Vmotmin1以上になる前であっても、FC発電可能電圧Vfcpが補機作動可能最低電圧Vamin以上になれば、FC40の暖機を行うことができる。よって、より早い段階でFC40の暖機を開始し、FC40の起動時間を短縮することが可能となる。
また、一般に、燃料電池の出力電圧が低いほど、燃料電池の放熱量は多くなる(図15参照)。従って、モータ駆動可能最低電圧Vmotmin1よりも低い補機作動可能最低電圧Vaminで暖機をすることにより、FC40の放熱量Hfcを増大させることが可能となり、この点からもFC40の起動時間を短縮することが可能となる。
本実施形態では、第1〜第6暖機モードの選択中は、システム負荷Psysに追従するように酸素濃度Coを変化させる。これにより、FC電圧Vfcを補機作動可能最低電圧Vamin、モータ駆動可能最低電圧Vmotmin1又はモータ性能保証最低電圧Vmotmin2に維持した状態で、FC電力Pfcをシステム負荷Psysに追従することが可能となる。このため、補機又はモータ14に十分な電力を供給することが可能となり、補機又はモータ14を良好に作動させることができる。
5.変形例
なお、この発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
[5−1.搭載対象]
上記実施形態では、FCシステム12をFC車両10に搭載したが、これに限らず、FC40の暖機を要する別の対象に搭載してもよい。例えば、FCシステム12を船舶や航空機等の移動体に用いることもできる。或いは、FCシステム12を、ロボット、製造装置、家庭用電力システム又は家電製品に適用してもよい。
[5−2.FCシステム12の構成]
上記実施形態では、FC40と高電圧バッテリ20を並列に配置し、バッテリ20の手前にDC/DCコンバータ22を配置する構成としたが、これに限らない。例えば、図24に示すように、FC40とバッテリ20を並列に配置し、昇圧式、降圧式又は昇降圧式のDC/DCコンバータ22をFC40の手前に配置する構成であってもよい。或いは、図25に示すように、FC40とバッテリ20を並列に配置し、FC40の手前に昇圧式、降圧式又は昇降圧式のDC/DCコンバータ22aを、バッテリ20の手前にDC/DCコンバータ22を配置する構成であってもよい。或いは、図26に示すように、FC40とバッテリ20を直列に配置し、バッテリ20とモータ14の間にDC/DCコンバータ22を配置する構成であってもよい。
[5−3.ストイキ比]
上記実施形態では、ストイキ比を調整する手段又は方法として、目標酸素濃度Cotgtを調整するものを用いたが、これに限らず、目標水素濃度を調整することも可能である。また、目標濃度の代わりに、目標流量又は目標濃度と目標流量の両方を用いることもできる。
上記実施形態では、酸素を含む空気を供給するエアポンプ60を備える構成を例示したが、これに代えて又は加えて、水素を供給する水素ポンプを備える構成としてもよい。
[5−4.電力供給モード]
上記実施形態では、電力供給モードとして、通常モード及び第1〜第6暖機モードを用いたが、少なくとも第1・第2暖機モードの一方さえ用いれば、本発明を適用可能である。また、通常モード及び第1〜第6暖機モードに加え、更なる電力供給モードを設けることもできる。例えば、暖機を終了した後であっても、電圧固定・電流可変モードを実行してもよい。
上記実施形態では、電力供給モードの選択に際し、ウォータポンプ80の水温TwからFC発電可能電圧Vfcpを算出し、FC発電可能電圧Vfcpと、補機作動可能最低電圧Vamin、モータ駆動可能最低電圧Vmotmin1及びモータ性能保証最低電圧Vmotmin2とを比較した。しかしながら、FC40の温度(暖機状態)に基づいて電力供給モードを選択するものであれば、これに限らない。例えば、補機作動可能最低電圧Vamin、モータ駆動可能最低電圧Vmotmin1及びモータ性能保証最低電圧Vmotmin2それぞれに対応する水温Twを、水温Tw1、水温Tw2及び水温Tw3として設定し、水温Twと比較することで電力供給モードを選択することもできる。
上記実施形態では、補機作動可能最低電圧Vaminとして、エアポンプ60の作動可能最低電圧を用いたが(図13)、補機作動可能最低電圧Vaminは他の補機(特に、FC40の発電に用いる補機)とすることも可能である。例えば、アノード側に水素ポンプを設ける場合、水素ポンプの作動可能最低電圧を用いてもよい。また、複数の補機の作動可能最低電圧を対象とする場合、個別に作動させる意味のある複数の補機(例えば、エアポンプ60とエアコンディショナ90)であれば、補機作動可能最低電圧Vaminを複数設定し、段階的に目標FC電圧Vfctgtとすることもできる。或いは、複数の補機の作動可能最低電圧を対象とする場合、最も高い作動可能最低電圧を補機作動可能最低電圧Vaminとすることも可能である。
上記実施形態では、第1〜第6暖機モードにおいて酸素濃度Coを制御するために、循環弁開度θc、エアポンプ回転数Nap及び背圧弁開度θbpを可変としたが、酸素濃度Coを制御できるものであれば、これに限らない。例えば、エアポンプ回転数Napは一定とし、循環弁開度θcを可変とすることもできる。これにより、エアポンプ60の出力音が一定となるため、当該出力音が可変となることにより乗員に与える違和感を防止することが可能となる。