1.全体的な構成の説明
[1−1.全体構成]
図1は、この発明の一実施形態に係る燃料電池車両10(以下「FC車両10」又は「車両10」という。)の概略全体構成図である。図2は、FC車両10の電力系のブロック図である。図1及び図2に示すように、FC車両10は、燃料電池システム12(以下「FCシステム12」という。)と、走行用のモータ14と、インバータ16とを有する。
FCシステム12は、燃料電池ユニット18(以下「FCユニット18」という。)と、高電圧バッテリ20(以下「バッテリ20」ともいう。)(蓄電装置)と、DC/DCコンバータ22と、電子制御装置24(以下「ECU24」という。)とを有する。
[1−2.駆動系]
モータ14は、FCユニット18及びバッテリ20から供給される電力に基づいて駆動力を生成し、当該駆動力によりトランスミッション26を通じて車輪28を回転させる。また、モータ14は、回生を行うことで生成した電力(回生電力Preg)[W]をバッテリ20等に出力する(図2参照)。
図3は、インバータ16の回路構成図である。インバータ16は、3相ブリッジ型の構成とされて、直流/交流変換を行い、直流を3相の交流に変換してモータ14に供給する一方、回生動作に伴う交流/直流変換後の直流をDC/DCコンバータ22を通じてバッテリ20等に供給する。
図3に示すように、インバータ16は、3相の相アーム100u、100v、100wを有する。U相アーム100uは、上スイッチング素子104u(以下「上SW素子104u」という。)及びダイオード106uを有する上アーム素子102uと、下スイッチング素子110u(以下「下SW素子110u」という。)及びダイオード112uとを有する下アーム素子108uとで構成される。
同様に、V相アーム100vは、上スイッチング素子104v(以下「上SW素子104v」という。)及びダイオード106vを有する上アーム素子102vと、下スイッチング素子110v(以下「下SW素子110v」という。)及びダイオード112vを有する下アーム素子108vとで構成される。W相アーム100wは、上スイッチング素子104w(以下「上SW素子104w」という。)とダイオード106wを有する上アーム素子102wと、下スイッチング素子110w(以下「下SW素子110w」という。)とダイオード112wを有する下アーム素子108wとで構成される。
上SW素子104u、104v、104wと下SW素子110u、110v、110wには、例えば、MOSFET又はIGBTが採用される。
なお、以下では、各相アーム100u、100v、100wを相アーム100と総称し、各上アーム素子102u、102v、102wを上アーム素子102と総称し、各下アーム素子108u、108v、108wを下アーム素子108と総称し、各上SW素子104u、104v、104wを上SW素子104と総称し、各下SW素子110u、110v、110wを下SW素子110と総称する。
各相アーム100において、上アーム素子102と下アーム素子108の中点114u、114v、114wは、モータ14の巻線116u、116v、116wに連結されている。以下では、巻線116u、116v、116wを巻線116と総称する。
各上SW素子104及び各下SW素子110は、ECU24からの駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLにより駆動される。
なお、モータ14とインバータ16を併せて負荷30という。負荷30には、後述するエアポンプ220、ウォータポンプ240、エアコンディショナ300等の構成要素を含めることもできる。
[1−3.FC系]
(1−3−1.全体構成)
図4は、FCユニット18の概略構成図である。FCユニット18は、燃料電池スタック200(以下「FCスタック200」又は「FC200」という。)と、FCスタック200のアノードに対して水素(燃料ガス)を給排するアノード系と、FCスタック200のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス)を給排するカソード系と、FCスタック200を冷却する冷却系と、セル電圧モニタ202とを備える。
(1−3−2.FCスタック200)
FCスタック200は、例えば、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで両側から挟み込んで形成された燃料電池セル(以下「FCセル」という。)を積層した構造を有する。
(1−3−3.アノード系)
アノード系は、水素タンク204、レギュレータ206、エゼクタ208及びパージ弁210を有する。水素タンク204は、燃料ガスとしての水素を収容するものであり、配管204a、レギュレータ206、配管206a、エゼクタ208及び配管208aを介して、アノード流路212の入口に接続されている。これにより、水素タンク204の水素は、配管204a等を介してアノード流路212に供給可能である。なお、配管204aには、遮断弁(図示せず)が設けられており、FCスタック200の発電の際、当該遮断弁は、ECU24により開とされる。
レギュレータ206は、導入される水素の圧力を所定値に調整して排出する。すなわち、レギュレータ206は、配管206bを介して入力されるカソード側の空気の圧力(パイロット圧)に応じて、下流側の圧力(アノード側の水素の圧力)を制御する。従って、アノード側の水素の圧力は、カソード側の空気の圧力に連動し、後記するように、酸素濃度を変化させるべくエアポンプ220の回転数等を変化させると、アノード側の水素の圧力も変化する。
エゼクタ208は、水素タンク204からの水素をノズルで噴射することで負圧を発生させ、この負圧によって配管208bのアノードオフガスを吸引する。
アノード流路212の出口は、配管208bを介して、エゼクタ208の吸気口に接続されている。そして、アノード流路212から排出されたアノードオフガスは、配管208bを通って、エゼクタ208に再度導入されることでアノードオフガス(水素)が循環する。
なお、アノードオフガスは、アノードにおける電極反応で消費されなかった水素及び水蒸気を含んでいる。また、配管208bには、アノードオフガスに含まれる水分{凝縮水(液体)、水蒸気(気体)}を分離・回収する気液分離器(図示せず)が設けられている。
配管208bの一部は、配管210a、パージ弁210及び配管210bを介して、後記する配管224bに設けられた希釈ボックス214に接続されている。パージ弁210は、FCスタック200の発電が安定していないと判定された場合、ECU24からの指令に基づき所定時間、開となる。希釈ボックス214は、パージ弁210からのアノードオフガス中の水素を、カソードオフガスで希釈する。
(1−3−4.カソード系)
カソード系は、エアポンプ220、加湿器222、背圧弁224、循環弁226、流量センサ228、230及び温度センサ232を有する。
エアポンプ220は、外気(空気)を圧縮してカソード側に送り込むものであり、その吸気口は、配管220aを介して車外(外部)と連通している。エアポンプ220の吐出口は、配管220b、加湿器222及び配管222aを介して、カソード流路234の入口に接続されている。エアポンプ220がECU24の指令に従って作動すると、エアポンプ220は、配管220aを介して車外の空気を吸気して圧縮し、この圧縮された空気が配管220b等を通ってカソード流路234に圧送される。
加湿器222は、水分透過性を有する複数の中空糸膜222eを備えている。そして、加湿器222は、中空糸膜222eを介して、カソード流路234に向かう空気とカソード流路234から排出された多湿のカソードオフガスとの間で水分交換させ、カソード流路234に向かう空気を加湿する。
カソード流路234の出口側には、配管222b、加湿器222、配管224a、背圧弁224及び配管224bが配置されている。カソード流路234から排出されたカソードオフガス(酸化剤オフガス)は、配管222b等を通って、車外に排出される。
背圧弁224は、例えば、バタフライ弁で構成され、その開度がECU24によって制御されることで、カソード流路234における空気の圧力を制御する。より具体的には、背圧弁224の開度が小さくなると、カソード流路234における空気の圧力が上昇し、体積流量当たりにおける酸素濃度Co(体積濃度)が高くなる。逆に、背圧弁224の開度が大きくなると、カソード流路234における空気の圧力が下降し、体積流量当たりにおける酸素濃度Co(体積濃度)が低くなる。
配管224bは、配管226a、循環弁226及び配管226bを介して、エアポンプ220の上流側の配管220aに接続されている。これにより、排気ガス(カソードオフガス)の一部が、循環ガスとして、配管226a、循環弁226及び配管226bを通って、配管220aに供給され、車外からの新規空気に合流し、エアポンプ220に吸気される。
循環弁226は、例えば、バタフライ弁で構成され、その開度がECU24によって制御されることで循環ガスの流量を制御する。
流量センサ228は、配管220bに取り付けられ、カソード流路234に向かう空気の流量[g/s]を検出してECU24に出力する。流量センサ230は、配管226bに取り付けられ、配管220aに向かう循環ガスの流量Qc[g/s]を検出してECU24に出力する。
温度センサ232は、配管224aに取り付けられ、カソードオフガスの温度を検出してECU24に出力する。ここで、循環ガスの温度は、カソードオフガスの温度と略等しいため、温度センサ232の検出するカソードオフガスの温度に基づいて、循環ガスの温度を検知することができる。
(1−3−5.冷却系)
冷却系は、ウォータポンプ240、ラジエータ242及びラジエータファン244を有する。ウォータポンプ240は、FC200内に冷却水(冷媒)を循環させることでFC200を冷却する。FC200を冷却して温度が上昇した冷却水は、ラジエータ242で放熱される。ラジエータファン244は、ラジエータ242に送風することでラジエータ242を冷却する。
(1−3−6.セル電圧モニタ202)
セル電圧モニタ202は、FCスタック200を構成する複数の単セル毎のセル電圧Vcellを検出する機器であり、モニタ本体と、モニタ本体と各単セルとを接続するワイヤハーネスとを備える。モニタ本体は、所定周期で全ての単セルをスキャニングし、各単セルのセル電圧Vcellを検出し、平均セル電圧及び最低セル電圧を算出する。そして、平均セル電圧及び最低セル電圧をECU24に出力する。
(1−3−7.電力系)
図2に示すように、FC200からの電力(以下「FC電力Pfc」という。)は、インバータ16及びモータ14(力行時)とDC/DCコンバータ22及び高電圧バッテリ20(充電時)とに加え、前記エアポンプ220、前記ウォータポンプ240、前記ラジエータファン244、前記エアコンディショナ300、ダウンバータ302(降圧型DC−DCコンバータ)、低電圧バッテリ304、アクセサリ306及びECU24に供給される。なお、図1に示すように、FCユニット18(FC200)とインバータ16及びDC/DCコンバータ22との間には、逆流防止ダイオード40が配置されている。また、FC200の発電電圧(以下「FC電圧Vfc」という。)は、電圧センサ400(図5)により検出され、FC200の発電電流(以下「FC電流Ifc」という。)は、電流センサ402により検出され、いずれもECU24に出力される。
[1−4.高電圧バッテリ20]
バッテリ20は、複数のバッテリセルを含む蓄電装置(エネルギストレージ)であり、例えば、リチウムイオン2次電池、ニッケル水素二次電池又はキャパシタ等を利用することができる。本実施形態ではリチウムイオン2次電池を利用している。バッテリ20の出力電圧(以下「バッテリ電圧Vbat」という。)[V]は、電圧センサ404(図2)により検出され、バッテリ20の出力電流(以下「バッテリ電流Ibat」という。)[A]は、電流センサ406により検出され、それぞれECU24に出力される。ECU24は、バッテリ電圧Vbatとバッテリ電流Ibatとに基づいて、バッテリ20の残容量(以下「SOC」という。)[%]を算出する。
[1−5.DC/DCコンバータ22]
DC/DCコンバータ22は、FCユニット18からのFC電力Pfcと、バッテリ20から供給された電力(以下「バッテリ電力Pbat」という。)[W]と、モータ14からの回生電力Pregとの供給先を制御する。
図5には、本実施形態におけるDC/DCコンバータ22の詳細が示されている。図5に示すように、DC/DCコンバータ22は、一方がバッテリ20のある1次側1Sに接続され、他方が負荷30とFC200との接続点である2次側2Sに接続されている。
DC/DCコンバータ22は、1次側1Sの電圧(1次電圧V1)[V]を2次側2Sの電圧(2次電圧V2)[V](V1≦V2)に昇圧するとともに、2次電圧V2を1次電圧V1に降圧する昇降圧型且つチョッパ型の電圧変換装置である。
図5に示すように、DC/DCコンバータ22は、1次側1Sと2次側2Sとの間に配される相アーム408と、リアクトル410とから構成される。
相アーム408は、上アーム素子(上スイッチング素子412と逆並列ダイオード414)と下アーム素子(下スイッチング素子416と逆並列ダイオード418)とで構成される。上スイッチング素子412と下スイッチング素子416には、それぞれ例えば、MOSFET又はIGBT等が採用される。
リアクトル410は、相アーム408の中点(共通接続点)とバッテリ20の正極との間に挿入され、DC/DCコンバータ22により1次電圧V1と2次電圧V2との間で電圧を変換する際に、エネルギを蓄積及び放出する作用を有する。
上スイッチング素子412は、ECU24から出力されるゲート駆動信号(駆動電圧)AHのハイレベルによりオンにされ、下スイッチング素子416は、ゲート駆動信号(駆動電圧)ALのハイレベルによりオンにされる。
なお、ECU24は、1次側の平滑コンデンサ422に並列に設けられた電圧センサ420により1次電圧V1を検出し、電流センサ424により1次側の電流(1次電流I1)[A]を検出する。また、ECU24は、2次側の平滑コンデンサ428に並列に設けられた電圧センサ426により2次電圧V2を検出し、電流センサ430により2次側の電流(2次電流I2)[A]を検出する。
[1−6.ECU24]
ECU24は、通信線50(図1等)を介して、モータ14、インバータ16、FCユニット18、バッテリ20及びDC/DCコンバータ22を制御する。当該制御に際しては、メモリ(ROM)に格納されたプログラムを実行し、また、セル電圧モニタ202、流量センサ228、230、温度センサ232、電圧センサ400、404、420、426、電流センサ402、406、424、430等の各種センサの検出値を用いる。
ここでの各種センサには、上記センサに加え、開度センサ500及びモータ回転数センサ502(以下「回転数センサ502」という。)(図1)が含まれる。開度センサ500は、アクセルペダル504の開度θp[度]を検出する。回転数センサ502は、モータ14の回転数(以下「モータ回転数Nm」又は「回転数Nm」という。)[rpm]を検出する。ECU24は、回転数Nmを用いてFC車両10の車速V[km/h]を検出する。さらに、ECU24には、メインスイッチ506(以下「メインSW506」という。)が接続される。メインSW506は、FCユニット18及びバッテリ20からモータ14への電力供給の可否を切り替えるものであり、ユーザにより操作可能である。
ECU24は、マイクロコンピュータを含み、必要に応じて、タイマ、A/D変換器、D/A変換器等の入出力インタフェースを有する。なお、ECU24は、1つのECUのみからなるのではなく、モータ14、FCユニット18、バッテリ20及びDC/DCコンバータ22毎の複数のECUから構成することもできる。
ECU24は、FCスタック200の状態、バッテリ20の状態及びモータ14の状態の他、各種スイッチ及び各種センサからの入力(負荷要求)に基づき決定したFC車両10全体としてFCシステム12に要求される負荷から、FCスタック200が負担すべき負荷と、バッテリ20が負担すべき負荷と、回生電源(モータ14)が負担すべき負荷の配分(分担)を調停しながら決定し、モータ14、インバータ16、FCユニット18、バッテリ20及びDC/DCコンバータ22に指令を送出する。
2.本実施形態の制御
次に、ECU24における制御について説明する。
[2−1.基本制御]
図6には、ECU24における基本的な制御のフローチャートが示されている。ステップS1において、ECU24は、メインSW506がオンであるかどうかを判定する。メインSW506がオンでない場合(S1:NO)、ステップS1を繰り返す。メインSW506がオンである場合(S1:YES)、ステップS2に進む。ステップS2において、ECU24は、FCシステム12に要求される負荷(以下「システム負荷Psys」という。)[W]を計算する。
ステップS3において、ECU24は、FCシステム12のエネルギマネジメントを行う。ここにいうエネルギマネジメントは、主として、FC200の発電量(FC電力Pfc)及びバッテリ20の出力(バッテリ電力Pbat)を算出する処理であり、FCスタック200の劣化を抑制しつつ、FCシステム12全体の出力を効率化することを企図している。
ステップS4において、ECU24は、FCスタック200の周辺機器、すなわち、エアポンプ220、背圧弁224、循環弁226及びウォータポンプ240の制御(FC発電制御)を行う。ステップS5において、ECU24は、モータ14のトルク制御を行う。
ステップS6において、ECU24は、メインSW506がオフであるかどうかを判定する。メインSW506がオフでない場合(S6:NO)、ステップS2に戻る。メインSW506がオフである場合(S6:YES)、今回の処理を終了する。
[2−2.システム負荷Psysの計算]
図7には、システム負荷Psysを計算するフローチャートが示されている。ステップS11において、ECU24は、開度センサ500からアクセルペダル504の開度θpを読み込む。ステップS12において、ECU24は、回転数センサ502からモータ14の回転数Nm[rpm]を読み込む。
ステップS13において、ECU24は、開度θpと回転数Nmに基づいてモータ14の予想消費電力Pm[W]を算出する。具体的には、図8に示すマップにおいて、開度θp毎に回転数Nmと予想消費電力Pmの関係を記憶しておく。例えば、開度θpがθp1であるとき、特性600を用いる。同様に、開度θpがθp2、θp3、θp4、θp5、θp6であるとき、それぞれ特性602、604、606、608、610を用いる。そして、開度θpに基づいて回転数Nmと予想消費電力Pmとの関係を示す特性を特定した上で、回転数Nmに応じた予想消費電力Pmを特定する。
ステップS14において、ECU24は、各補機から現在の動作状況を読み込む。ここでの補機には、例えば、エアポンプ220、ウォータポンプ240及びエアコンディショナ300を含む高電圧系の補機や、ラジエータファン244、低電圧バッテリ304、アクセサリ306及びECU24を含む低電圧系の補機が含まれる。例えば、エアポンプ220及びウォータポンプ240であれば、回転数Nap、Nwp[rpm]を読み込む。エアコンディショナ300であれば、その出力設定を読み込む。また、ウォータポンプ240、ラジエータファン244及びエアコンディショナ300は、対象物の冷却を行うシステム冷却系デバイス(冷却系補機)である。
ステップS15において、ECU24は、各補機の現在の動作状況に応じて補機の消費電力Pa[W]を算出する。ステップS16において、ECU24は、モータ14の予想消費電力Pmと補機の消費電力Paの和をFC車両10全体での予想消費電力(すなわち、システム負荷Psys)として算出する。
[2−3.エネルギマネジメント]
上記のように、本実施形態におけるエネルギマネジメントでは、FCスタック200の劣化を抑制しつつ、FCシステム12全体の出力を効率化することを企図している。
(2−3−1.前提事項)
図9は、FCスタック200を構成するFCセルの電位(セル電圧Vcell)[V]とセルの劣化量Dとの関係の一例を示している。すなわち、図9中の曲線620は、セル電圧Vcellと劣化量Dとの関係を示す。
図9において、電位v1(例えば、0.5V)を下回る領域(以下「白金凝集増加領域R1」又は「凝集増加領域R1」という。)では、FCセルに含まれる白金(酸化白金)について還元反応が激しく進行し、白金が過度に凝集する。電位v1から電位v2(例えば、0.8V)までは、還元反応が安定的に進行する領域(以下「白金還元領域R2」又は「還元領域R2」という。)である。
電位v2から電位v3(例えば、0.9V)までは、白金について酸化還元反応が進行する領域(以下「白金酸化還元進行領域R3」又は「酸化還元領域R3」という。)である。電位v3から電位v4(例えば、0.95V)までは、白金について酸化反応が安定的に進行する領域(以下「白金酸化安定領域R4」又は「酸化領域R4」という。)である。電位v4からOCV(開回路電圧)までは、セルに含まれるカーボンの酸化が進行する領域(以下「カーボン酸化領域R5」という。)である。
上記のように、図9では、セル電圧Vcellが白金還元領域R2又は白金酸化安定領域R4にあれば、隣り合う領域と比較してFCセルの劣化の進行度合が小さい。一方、セル電圧Vcellが白金凝集増加領域R1、白金酸化還元進行領域R3、又はカーボン酸化領域R5にあれば、隣り合う領域と比較してFCセルの劣化の進行度合が大きい。
なお、図9では、曲線620を一義的に定まるような表記としているが、実際は、単位時間当たりにおけるセル電圧Vcellの変動量(変動速度Acell)[V/sec]に応じて曲線620は変化する。
図10には、変動速度Acellが異なる場合の酸化の進行と還元の進行の様子の例を示すサイクリックボルタンメトリ図である。図10において、曲線630は、変動速度Acellが高い場合を示し、曲線632は、変動速度Acellが低い場合を示す。図10からわかるように、変動速度Acellに応じて酸化又は還元の進行度合が異なるため、必ずしも各電位v1〜v4は一義的に特定されない。また、FCセルの個体差によっても各電位v1〜v4は変化し得る。このため、電位v1〜v4は、理論値、シミュレーション値又は実測値に誤差分を反映させたものとして設定することが好ましい。
また、FCセルの電流−電圧(IV)特性は、一般的な燃料電池セルと同様、セル電圧Vcellが下がるほど、セル電流Icell[A]が増加する(図11参照)。加えて、FCスタック200の発電電圧(FC電圧Vfc)は、セル電圧VcellにFCスタック200内の直列接続数Nfcを乗算したものである。直列接続数Nfcは、FCスタック200内で直列に接続されるFCセルの数であり、以下、単に「セル数」ともいう。
以上を踏まえ、本実施形態では、DC/DCコンバータ22が、電圧変換動作を行っている際、FCスタック200の目標電圧(目標FC電圧Vfctgt)[V]を、主として、白金還元領域R2内に設定しつつ、必要に応じて白金酸化安定領域R4内に設定する(具体例は、図11等を用いて説明する。)。このような目標FC電圧Vfctgtの切替えを行うことにより、FC電圧Vfcが、領域R1、R3、R5(特に、白金酸化還元進行領域R3)内にある時間を極力短縮し、FCスタック200の劣化を防止することができる。
なお、上記の処理では、FCスタック200の供給電力(FC電力Pfc)と、システム負荷Psysが等しくならない場合が存在する。この点、FC電力Pfcがシステム負荷Psysを下回っている場合、その不足分は、バッテリ20から供給する。また、FC電力Pfcがシステム負荷Psysを上回っている場合、その余剰分は、バッテリ20に充電する。
なお、図9では、電位v1〜v4を具体的な数値として特定したが、これは、後述する制御を行うためであり、当該数値は、あくまで制御の便宜を考慮して決定するものである。換言すると、曲線620からもわかるように、劣化量Dは連続的に変化するため、制御の仕様に応じて、電位v1〜v4は、適宜設定することができる。
但し、白金還元領域R2は、曲線620の極小値(第1極小値Vlmi1)を含む。白金酸化還元進行領域R3では、曲線620の極大値(極大値Vlmx)を含む。白金酸化安定領域R4は、曲線620の別の極小値(第2極小値Vlmi2)を含む。
(2−3−2.エネルギマネジメントで用いる電力供給制御及び電力供給モード)
図11は、本実施形態における複数の電力供給モードの説明図である。本実施形態では、エネルギマネジメントで用いる電力供給の制御方法(電力供給モード)として、5つの制御方法(電力供給モード)を用いる。すなわち、本実施形態では、エネルギマネジメントで用いる電力供給モード(動作モード)として、第1〜第5モードを切り替えて用いる。第1モードは、目標FC電圧Vfctgt及びFC電流Ifc(FC電力Pfc)がいずれも可変である電圧可変・電流可変制御(電圧可変・出力可変制御)である。第2〜第4モードは、目標FC電圧Vfctgtが一定でありFC電流Ifc(FC電力Pfc)が可変である電圧固定・電流可変制御(電圧固定・出力可変制御)である。第5モードは、目標FC電圧Vfctgtが一定でありFC電流Ifc(FC電力Pfc)が一定である電圧固定・電流固定制御(電圧固定・出力固定制御)である。
第1モード(電圧可変・電流可変制御)は、主として、システム負荷Psysが相対的に高いときに用いられるものであり、目標酸素濃度Cotgtを固定(或いは、酸素を豊潤な状態に維持)した状態で、目標FC電圧Vfctgtを調整することによりFC電流Ifcを制御する。これにより、基本的に、FC電力Pfcによりシステム負荷Psysをまかなうことが可能となる。
第2モード(電圧固定・電流可変制御)は、主として、システム負荷Psysが相対的に中くらいのときに用いられるものであり、目標セル電圧Vcelltgt(=目標FC電圧Vfctgt/セル数)を、酸化還元領域R3よりも低い電位以下で設定された基準電位{本実施形態では、電位v2(=0.8V)}に固定すると共に、目標酸素濃度Cotgtを可変とすることにより、FC電流Ifcを可変とする。これにより、基本的に、FC電力Pfcによりシステム負荷Psysをまかなうことが可能となる(詳細は後述する。)。FC電力Pfcの不足分は、バッテリ20からアシストする。
第3モード及び第4モード(電圧固定・電流可変制御)は、主として、システム負荷Psysが相対的に低いとき(特に、FC車両10のストール時)に用いられるものであり、目標セル電圧Vcelltgt(=目標FC電圧Vfctgt/セル数)を、酸化還元領域R3よりも低い電位以下且つ第2モードの基準電位よりも低い値に設定された基準電位{本実施形態では、電位v2(=0.8V)よりも低い電圧(例えば、0.6V)}に固定すると共に、目標酸素濃度Cotgtを可変とすることにより、FC電流Ifcを可変とする。
第3モードでは、FC電力Pfc及びバッテリ電力Pbatによりシステム負荷Psysをまかなうことが可能となる(詳細は図20等を参照して後述する。)。第4モードでは、基本的に、FC電力Pfcによりシステム負荷Psysをまかなうことが可能となる。但し、FC電力Pfcの不足分は、バッテリ20からアシストする。換言すると、第3モードでは、バッテリ電力Pbatを積極的に用いるが、第4モードでは、バッテリ電力Pbatを積極的には用いない。
第5モード(電圧固定・電流固定制御)は、主として、システム負荷Psysが相対的に低いとき(特に、ストール時以外)に用いられるものであり、目標セル電圧Vcelltgt(=目標FC電圧Vfctgt/セル数)を、酸化還元領域R3外の電位{本実施形態では、電位v3(=0.9V)}に固定し、FC電流Ifcを一定とする。FC電力Pfcの不足分は、バッテリ20からアシストし、FC電力Pfcの余剰分は、バッテリ20に充電する。
(2−3−3.エネルギマネジメントの全体フロー)
図12には、ECU24が、FCシステム12のエネルギマネジメント(図6のS3)を行うフローチャートが示されている。ステップS21において、ECU24は、車両10が高負荷状態であるか否かを判定する。具体的には、ECU24は、ステップS2で計算したシステム負荷Psysが、高負荷を判定するための閾値P1以上であるか否かを判定する。ここにいう高負荷とは、例えば、酸素が豊潤な状態とし且つセル電圧Vcellを還元領域R2内の値にして(FC電圧Vfcを還元領域R2内の値×セル数にして)FC200を発電させた際に得られるFC電力Pfcが、システム負荷Psysと釣り合うような場合を意味する。
システム負荷Psysが閾値P1以上である場合、車両10が高負荷状態であり、システム負荷Psysが閾値P1以上でない場合、車両10は高負荷状態ではない。なお、高負荷状態の判定は、その他の方法によって行ってもよい。例えば、車速Vが、高負荷を判定するための閾値THV以下であるか否かにより高負荷状態を判定することもできる。或いは、車両10の加速度(車速Vの変化量)が、高負荷を判定するための閾値以下であるか否かにより高負荷状態を判定してもよい。
車両10が高負荷状態である場合(S21:YES)、ステップS22において、ECU24は、第1モード(電圧可変・電流可変制御)を行う(詳細は後述する)。車両10が高負荷状態でない場合(S21:NO)、ステップS23に進む。
ステップS23において、ECU24は、車両10が中負荷状態であるか否かを判定する。具体的には、ECU24は、ステップS2で計算したシステム負荷Psysが、中負荷を判定するための閾値P2以上であるか否かを判定する。ここにいう中負荷とは、例えば、酸素が豊潤な状態とし且つセル電圧Vcellを酸化還元領域R3内の値にして(FC電圧Vfcを還元領域R3内の値×セル数にして)FC200を発電させた際に得られるFC電力Pfcが、システム負荷Psysと釣り合うような場合を意味する。
システム負荷Psysが閾値P2以上である場合、車両10が中負荷状態であり、システム負荷Psysが閾値P2以上でない場合、車両10は中負荷状態ではない。なお、中負荷状態の判定は、その他の方法によって行ってもよい。例えば、車速Vが、中負荷を判定するための閾値THV2以下であるか否かにより中負荷状態を判定することもできる。或いは、車両10の加速度(車速Vの変化量)が、中負荷を判定するための閾値以下であるか否かにより中負荷状態を判定してもよい。
車両10が中負荷状態である場合(S23:YES)、ステップS24において、ECU24は、第2モード(電圧固定・電流可変制御)を行う(詳細は図14を参照して後述する)。車両10が中負荷状態でない場合(S23:NO)、ステップS25において、ECU24は、低負荷時処理を行う。低負荷時処理では、上記第3〜第5モードのいずれかを用いる(詳細は図20等を参照して後述する)。
(2−3−4.第1モード)
上記のように、第1モードは、主として、システム負荷Psysが相対的に高いときに用いられるものであり、目標酸素濃度Cotgtを固定(或いは、酸素を豊潤な状態に維持)した状態で、目標FC電圧Vfctgtを調整することによりFC電流Ifcを制御する。
すなわち、図11に示すように、第1モードでは、FC200の電流−電圧特性(IV特性)が通常のもの(図11中、実線で表されるもの)を用いる。通常の燃料電池と同様、FC200のIV特性は、セル電圧Vcell(FC電圧Vfc)が低くなるほど、セル電流Icell(FC電流Ifc)が大きくなる。このため、第1モードでは、システム負荷Psysに応じて目標FC電流Ifctgtを算出し、さらに目標FC電流Ifctgtに対応する目標FC電圧Vfctgtを算出する。そして、FC電圧Vfcが目標FC電圧Vfctgtとなるように、ECU24は、DC/DCコンバータ22を制御する。すなわち、2次電圧V2が目標FC電圧Vfctgtとなるように1次電圧V1をDC/DCコンバータ22により昇圧することで、FC電圧Vfcを制御してFC電流Ifcを制御する。
なお、酸素が豊潤な状態にあるとは、例えば、図13に示すように、カソードストイキ比を上昇させても、セル電流Icellが略一定となり、実質的に飽和した状態となる通常ストイキ比以上の領域における酸素を意味する。水素が豊潤であるという場合も、同様である。なお、カソードストイキ比とは、カソード流路234に供給するエアの流量/FC200の発電により消費されたエアの流量であり、カソード流路234における酸素濃度Coに近似する。また、カソードストイキ比の調整は、例えば、酸素濃度Coの制御により行う。
以上のような第1モードによれば、システム負荷Psysが高負荷であっても、基本的にシステム負荷Psysの全てをFC電力Pfcによりまかなうことが可能となる。
(2−3−5.第2モードの全体)
上記のように、第2モードは、主として、システム負荷Psysが低負荷のときに用いられるものであり、目標セル電圧Vcelltgt(=目標FC電圧Vfctgt/セル数)を、酸化還元領域R3よりも低い電位以下で設定された基準電位{本実施形態では、電位v2(=0.8V)}に固定すると共に、目標酸素濃度Cotgtを可変とすることにより、FC電流Ifcを可変とする。
すなわち、図11に示すように、第2モードでは、セル電圧Vcellを一定に保った状態で目標酸素濃度Cotgtを下げていくことで酸素濃度Coを下げる。図13に示すように、カソードストイキ比(酸素濃度Co)が低下するとセル電流Icell(FC電流Ifc)も低下する。このため、セル電圧Vcellを一定に保った状態で目標酸素濃度Cotgtを増減させることで、セル電流Icell(FC電流Ifc)及びFC電力Pfcを制御することが可能となる。なお、FC電力Pfcの不足分は、バッテリ20からアシストする。
図14には、第2モードのフローチャートが示されている。ステップS31において、ECU24は、DC/DCコンバータ22の昇圧率を調整することにより、酸化還元領域R3よりも低い電位以下で設定された基準電位{本実施形態では、電位v2(=0.8V)}に目標FC電圧Vfctgtを固定する。ステップS32において、ECU24は、システム負荷Psysに対応する目標FC電流Ifctgtを算出する。
ステップS33において、ECU24は、目標FC電圧Vfctgtが基準電位であることを前提として、目標FC電流Ifctgtに対応する目標酸素濃度Cotgtを算出する(図11及び図15参照)。なお、図15は、FC電圧Vfcが基準電位であるときの目標FC電流Ifctgtと目標酸素濃度Cotgtとの関係を示す。
ステップS34において、ECU24は、目標酸素濃度Cotgtに応じて各部への指令値を算出及び送信する。ここで算出される指令値には、エアポンプ220の回転数(以下「エアポンプ回転数Nap」又は「回転数Nap」という。)、ウォータポンプ240の回転数(以下「ウォータポンプ回転数Nwp」又は「回転数Nwp」という。)、背圧弁224の開度(以下「背圧弁開度θbp」又は「開度θbp」という。)及び循環弁226の開度(以下「循環弁開度θc」又は「開度θc」という。)が含まれる。
すなわち、図16及び図17に示すように、目標酸素濃度Cotgtに応じて目標エアポンプ回転数Naptgt、目標ウォータポンプ回転数Nwptgt及び目標背圧弁開度θbptgtが設定される。また、循環弁226の目標開度θctgtは、初期値(例えば、循環ガスがゼロとなる開度)に設定される。
ステップS35において、ECU24は、FC200による発電が安定しているか否かを判定する。当該判定として、ECU24は、セル電圧モニタ202から入力される最低セル電圧が、平均セル電圧から所定電圧を減算した電圧よりも低い場合{最低セル電圧<(平均セル電圧−所定電圧)}、FC200の発電が不安定であると判定する。なお、前記所定電圧は、例えば、実験値、シミュレーション値等を用いることができる。
発電が安定している場合(S35:YES)、今回の処理を終える。発電が安定していない場合(S35:NO)、ステップS36において、ECU24は、流量センサ230を介して循環ガスの流量Qc[g/s]を監視しながら、循環弁226の開度θcを大きくし、流量Qcを一段階増加する(図18参照)。なお、図18では、循環弁226を全開とした場合、流量Qcが4段階目の増加となり、最大流量となる場合を例示している。
但し、循環弁226の開度θcが増加すると、エアポンプ220に吸気される吸気ガスにおいて、循環ガスの割合が増加する。すなわち、吸気ガスについて、新規空気(車外から吸気される空気)と、循環ガスとの割合において、循環ガスの割合が増加するように変化する。従って、全単セルへの酸素の分配能力が向上する。ここで、循環ガス(カソードオフガス)の酸素濃度Coは、新規空気の酸素濃度Coに対して低い。このため、循環弁226の開度θcの制御前後において、エアポンプ220の回転数Nap及び背圧弁224の開度θbpが同一である場合、カソード流路234を通流するガスの酸素濃度Coが低下することになる。
そこで、ステップS36では、ステップS33で算出した目標酸素濃度Cotgtが維持されるように、循環ガスの流量Qcの増加に連動して、エアポンプ220の回転数Napの増加及び背圧弁224の開度θbpの減少の少なくとも一方を実行することが好ましい。
例えば、循環ガスの流量Qcを増加した場合、エアポンプ220の回転数Napを増加させ、新規空気の流量を増加することが好ましい。そして、このようにすれば、カソード流路234に向かうガス(新規空気と循環ガスとの混合ガス)全体の流量が増加するので、全単セルへの酸素の分配能力がさらに向上し、FC200の発電性能が回復し易くなる。
このようにして、目標酸素濃度Cotgtを維持しつつ、循環ガスを新規空気に合流させるので、カソード流路234を通流するガスの体積流量[L/s]が増加する。これにより、目標酸素濃度Cotgtが維持されつつ体積流量の増加したガスが、FC200内で複雑に形成されたカソード流路234全体に行き渡り易くなる。したがって、各単セルに前記ガスが同様に供給され易くなり、FC200の発電の不安定が解消され易くなる。また、MEA(膜電極接合体)の表面やカソード流路234を囲む壁面に付着する水滴(凝縮水等)も除去され易くなる。
ステップS37において、ECU24は、流量センサ230を介して検出される循環ガスの流量Qcが上限値以上であるか否か判定する。判定基準となる上限値は、循環弁226の開度θcが全開となる値に設定される。
この場合において、循環弁開度θcが同一であっても、エアポンプ220の回転数Napが増加すると、流量センサ230で検出される循環ガスの流量Qcが増加するので、前記上限値は、エアポンプ回転数Napに関連付けて、つまり、エアポンプ220の回転数Napが大きくなると、前記上限値が大きくなるように設定されることが好ましい。
循環ガスの流量Qcが上限値以上でないと判定した場合(S37:NO)、ステップS35に戻る。循環ガスの流量Qcが上限値以上であると判定した場合(S37:YES)、ステップS38に進む。
ここで、ステップS36、S37では、流量センサ230が直接検出する循環ガスの流量Qcに基づいて処理を実行したが、循環弁開度θcに基づいて処理を実行してもよい。すなわち、ステップS36において、循環弁開度θcを開方向に一段階(例えば30°)にて増加する構成とし、ステップS37において、循環弁226が全開である場合(S37:YES)、ステップS38に進む構成としてもよい。
また、この場合において、循環弁226の開度θcと、循環ガスの温度と、図19のマップとに基づいて、循環ガスの流量Qc[g/s]を算出することもできる。図19に示すように、循環ガスの温度が高くなるにつれて、その密度が小さくなるので、流量Qc[g/s]が小さくなる関係となっている。
ステップS38において、ECU24は、ステップS35と同様に、発電が安定しているか否かを判定する。発電が安定している場合(S38:YES)、今回の処理を終える。発電が安定していない場合(S38:NO)、ステップS39において、ECU24は、目標酸素濃度Cotgtを1段増加させる(通常の濃度に近づける)。具体的には、エアポンプ220の回転数Napの増加及び背圧弁224の開度θbpの減少の少なくとも一方を1段階行う。
ステップS40において、ECU24は、目標酸素濃度Cotgtが通常のIV特性における目標酸素濃度Cotgt(通常酸素濃度Conml)以下であるか否かを判定する。目標酸素濃度Cotgtが通常酸素濃度Conml以下である場合(S40:YES)、ステップS38に戻る。目標酸素濃度Cotgtが通常酸素濃度Conml以下でない場合(S40:NO)、ステップS41において、ECU24は、FCユニット18を停止する。すなわち、ECU24は、FC200への水素及び空気の供給を停止し、FC200の発電を停止する。そして、ECU24は、図示しない警告ランプを点灯させ、運転者にFC200が異常であることを通知する。なお、ECU24は、バッテリ20からモータ14に電力を供給し、FC車両10の走行は継続させる。
以上のような第2モードによれば、システム負荷Psysが中負荷である場合に、セル電圧Vcellを一定にした状態で、酸素濃度Co(カソードストイキ比)を調整することにより、基本的にシステム負荷Psysの全てをFC電力Pfcによりまかなうことが可能となる。
(2−3−6.低負荷時処理の概要)
図20は、低負荷時処理(図12のS25)のフローチャートである。ステップS51において、ECU24は、FC車両10がストール状態であるか否か(モータ14がロック状態であるか否か)を判定する。当該判定は、モータ14に電力が供給されているにもかかわらず、モータ14が回転していない又はモータ14の回転がほとんどないか否かにより判定する。モータ14に電力が供給されているにもかかわらず、モータ14が回転していない又はモータ14の回転がほとんどない場合、ストール状態であると判定する。モータ14に電力が供給されていない、又はモータ14が回転している若しくはモータ回転数Nmが閾値を超える場合、ストール状態でないと判定する。或いは、当該判定は、モータ14に電力が供給されているにもかかわらず、車両10が変位していない又は車両10の変位がほとんどないか否かにより判定してもよい。
モータ14に電力が供給されているか否かの判定は、例えば、システム負荷Psysが閾値(以下「閾値Ps1」という。)以上であるか否か、モータ予想消費電力Pm(図8)が閾値以上であるか否か、モータ14に流れる電流(モータ電流)が正の閾値以上であるか否か、又はアクセルペダル504の開度θpが0より大きいか否かにより行うことができる。
また、モータ14が回転していない又はモータ14の回転がほとんどないか否かの判定は、例えば、モータ回転数Nmが閾値(以下「Nms1」という。)(例えば、0又はその近傍値)以下であるか否か、車速V[km/h]が閾値(例えば、0又はその近傍値)以下であるか否か、又は加速度Δav[km/h/sec]が閾値(例えば、0又はその近傍値)以下であるか否かにより行うことができる。
併せて、モータ14の駆動力が車輪28に伝達可能な状態であるか否かを判定してもよい。当該判定は、例えば、シフト位置が「P」(パーキング)又は「N」(ニュートラル)でないか否か、換言すると、シフト位置が「D」(ドライブ)又は「R」(リバース)であるか否かにより行うことができる。
ストール状態であると判定した場合(S51:YES)、ステップS52において、ECU24は、FC電圧Vfcを低下させる。具体的には、目標FC電圧Vfctgtをストール時電圧Vs1に設定する。そして、2次電圧V2(FC電圧Vfc)が、ストール時電圧Vs1となるようにDC/DCコンバータ22を制御する。
ストール時電圧Vs1は、セル電圧Vcellの平均値又は最高値が酸化還元領域R3を下回る電圧{すなわち、セル電圧Vcellの平均値又は最高値が還元領域R2内のいずれかの値(本実施形態では、例えば、0.6V)}となるように設定される。すなわち、ストール時電圧Vs1は、FC電圧Vfcが電位v2×セル数から電位v3×セル数までの範囲を下回る電圧に設定される。この場合、ストール時電圧Vs1をセル数で割った値がストール時のセル電圧Vcellの目標値となる。また、ストール時電圧Vs1を比較的低い値に設定する場合、上スイッチング素子412及び下スイッチング素子416のいずれにも駆動信号を出力しないことで、又はDC/DCコンバータ22の下スイッチング素子416に駆動信号ALを連続的に出力することで、DC/DCコンバータ22には電圧変換を行わせない(いわゆる直結状態とする)ことも可能である。
ステップS53において、ECU24は、バッテリ20が過充電状態であるか否かを判定する。具体的には、ECU24は、バッテリ20のSOCが、過充電状態を判定するための閾値THSOC1以上であるか否かを判定する。ここでの過充電状態は、例えば、車両10の次の加速時にバッテリ20によるアシスト走行が可能な最低限のSOCとすることができる。或いは、メインSW506がオフにされた後、再度、車両10を起動することができる最低限のSOCとしてもよい。
バッテリ20が過充電状態である場合(S53:YES)、ステップS54において、ECU24は、第3モードを選択する。上記のように、第3モードは、目標FC電圧Vfctgtをストール時電圧Vs1に固定すると共に、目標酸素濃度Cotgtを可変とすることにより、FC電流Ifcを可変とする電圧固定・電流可変制御である(図11参照)。ここでの目標酸素濃度Cotgtは、設定下限値まで逓減される。従って、FC電流Ifcは設定下限値まで徐々に低下していく。この場合、FC電力Pfcのみではシステム負荷Psysをまかなうことができないため、不足分はバッテリ電力Pbatでまかなうこととなる。
第3モードは、第2モードと同様、電圧固定・電流可変制御であり、主たる相違点は、目標FC電圧Vfctgtがストール時電圧Vs1である点、目標酸素濃度Cotgtは設定下限値まで逓減する点である。これらの点を除けば、第3モードでは、第2モード(図14)と同様の処理を行うことができる。なお、本実施形態の第3モードでは、エアポンプ回転数Napを一定にした状態で循環弁開度θcを可変とすることにより酸素濃度Coを調整する点でも第2モードと相違する(具体的な処理は後述する。)。
以上のような第3モードによれば、車両10がストール状態である場合、FC電力Pfc及びバッテリ電力Pbatによりシステム負荷Psysをまかなうことが可能となる。換言すると、第3モードでは、バッテリ20の過充電分を積極的に用いる。
バッテリ20が過充電状態でない場合(S53:NO)、ステップS55において、ECU24は、第4モードを選択する。上記のように、第4モードは、目標FC電圧Vfctgtをストール時電圧Vs1に固定すると共に、目標酸素濃度Cotgtを可変とすることにより、FC電流Ifcを可変とする電圧固定・電流可変制御である(図11参照)。ここでの目標酸素濃度Cotgtは、システム負荷Psysに追従して設定される。この場合、基本的に、FC電力Pfcのみでシステム負荷Psysをまかなうこととなり、バッテリ20からは放電されない。但し、FC電力Pfcの遅れによって不足分が発生した場合、バッテリ20から電力が補われる。
第4モードは、第2モードと同様、電圧固定・電流可変制御であり、主たる相違点は、目標FC電圧Vfctgtがストール時電圧Vs1である点である。この点を除けば、第3モードでは、第2モード(図14)と同様の処理を行うことができる。なお、第3モードと同様、本実施形態の第4モードでは、エアポンプ回転数Napを一定にした状態で循環弁開度θcを可変とすることにより酸素濃度Coを調整する点でも第2モードと相違する(具体的な処理は後述する。)。
以上のような第4モードによれば、車両10がストール状態である場合、主として、FC電力Pfcによりシステム負荷Psysをまかなうことが可能となる。換言すると、第4モードでは、バッテリ20に過充電分がなく、バッテリ電力Pbatは積極的には用いず、FC電力Pfcの不足分のみ、バッテリ20からアシストする。
ステップS51に戻り、FC車両10がストール状態でない場合(S51:NO)、ステップS56において、ECU24は、第5モードを選択する。上記のように、第5モードは、主として、システム負荷Psysが相対的に低いとき(特に、ストール時以外のとき)に用いられるものであり、目標セル電圧Vcelltgt(=目標FC電圧Vfctgt/セル数)を、酸化還元領域R3外の電位{本実施形態では、電位v3(=0.9V)}に固定し、FC電流Ifcを一定とする。FC電力Pfcの不足分は、バッテリ20からアシストし、FC電力Pfcの余剰分は、バッテリ20に充電する。目標酸素濃度Cotgtは、通常酸素濃度Conmlに固定(或いは、酸素を豊潤な状態に維持)される。
すなわち、図11に示すように、第5モードでは、FC200の電流−電圧特性(IV特性)が通常のもの(図11中、実線で表されるもの)とした状態で、セル電圧Vcellを電位v3に固定する(FC電圧Vfcを電位v3×セル数とする。)。FC200の電流−電圧特性(IV特性)が通常のものとするため、ECU24は、目標酸素濃度Cotgtとして通常酸素濃度Conmlを設定し、この目標酸素濃度Cotgtに応じてエアポンプ220の回転数Nap、ウォータポンプ240の回転数Nwp、背圧弁224の開度θbp及び循環弁226の開度θcを設定する。また、セル電圧Vcellを電位v3に固定するため、ECU24は、FC電圧Vfcが電位v3×セル数となるように、2次電圧V2をDC/DCコンバータ22により昇圧する。
以上のような第5モードによれば、システム負荷Psysが低負荷である場合、システム負荷PsysをFC電力Pfcとバッテリ電力Pbatによりまかなうことが可能となる。
(2−3−7.低負荷時処理における酸素濃度Coの調整)
上記のように、本実施形態の第3モード及び第4モードでは、酸素濃度Coの調整を、主として、循環弁226の開度θcを制御することにより行う。図21は、低負荷時処理(第3モード及び第4モード)において酸素濃度Coを調整するフローチャートである。
ステップS61において、ECU24は、目標FC電圧Vfctgtを一定にする。上記のように、ここでの目標FC電圧Vfctgtは、ストール時電圧Vs1に設定される。
ステップS62において、ECU24は、目標エアポンプ回転数Naptgtを一定にする。これにより、エアポンプ回転数Napは一定となり、エアポンプ220の出力音も一定となる。
ステップS63において、ECU24は、目標FC電流Ifctgtを算出する。第3モードが選択されている場合、目標FC電流Ifctgtは、設定下限値まで逓減していく。第4モードが選択されている場合、目標FC電流Ifctgtは、システム負荷Psysに対応する値が算出される。
ステップS64において、ECU24は、目標FC電圧Vfctgtがストール時電圧Vs1であることを前提として、目標FC電流Ifctgtに対応する目標酸素濃度Cotgtを算出する。当該算出は、図14のステップS33と同様に行われる。
ステップS65において、ECU24は、目標酸素濃度Cotgtに応じて循環弁226の目標開度(目標循環弁開度θctgt)を設定する。図22には、目標酸素濃度Cotgtと目標循環弁開度θctgtとの関係の一例が示されている。図22に示すように、目標酸素濃度Cotgtを高くするほど、目標循環弁開度θctgtは小さくなる。
[2−4.FC発電制御]
上記のように、FC発電制御(図6のS4)として、ECU24は、FCスタック200の周辺機器、すなわち、エアポンプ220、背圧弁224、循環弁226及びウォータポンプ240を制御する。具体的には、ECU24は、エネルギマネジメント(図6のS3)で算出したこれらの機器の指令値(例えば、図14のS34)を用いてこれらの機器を制御する。
[2−5.モータ14のトルク制御]
図23には、モータ14のトルク制御(図6のS5)のフローチャートが示されている。ステップS71において、ECU24は、回転数センサ502からモータ回転数Nmを読み込む。ステップS72において、ECU24は、開度センサ500からアクセルペダル504の開度θpを読み込む。
ステップS73において、ECU24は、モータ回転数Nmと開度θに基づいてモータ14の仮目標トルクTtgt_p[N・m]を算出する。具体的には、図示しない記憶手段に回転数Nmと開度θと仮目標トルクTtgt_pを関連付けたマップを記憶しておき、当該マップと、回転数Nm及び開度θとに基づいて仮目標トルクTtgt_pを算出する。
ステップS74において、ECU24は、FCシステム12からモータ14に供給可能な電力の限界値(限界供給電力Ps_lim)[W]に等しいモータ14の限界出力(モータ限界出力Pm_lim)[W]を算出する。具体的には、限界供給電力Ps_lim及びモータ限界出力Pm_limは、FCスタック200からのFC電力Pfcとバッテリ20から供給可能な電力の限界値(限界出力Pbat_lim)[W]との和から補機の消費電力Paを引いたものである(Pm_lim=Ps_lim←Pfc+Pbat_lim−Pa)。
ステップS75において、ECU24は、モータ14のトルク制限値Tlim[N・m]を算出する。具体的には、モータ限界出力Pm_limを車速Vで除したものをトルク制限値Tlimとする(Tlim←Pm_lim/V)。
一方、ステップS74において、ECU24は、モータ14が回生中であると判定した場合には、限界供給回生電力Ps_reglimを算出する。限界供給回生電力Ps_reglimは、バッテリ20に充電可能な電力の限界値(限界充電Pbat_chglim)とFCスタック200からのFC電力Pfcとの和から補機の消費電力Paを引いたものである(Ps_reglim=Pbat_chglim+Pfc−Pa)。回生中である場合、ステップS75において、ECU24は、モータ14の回生トルク制限値Treglim[N・m]を算出する。具体的には、限界供給回生電力Ps_reglimを車速Vsで除したものをトルク制限値Tlimとする(Tlim←Ps_reglim/Vs)。
ステップS76において、ECU24は、目標トルクTtgt[N・m]を算出する。具体的には、ECU24は、仮目標トルクTtgt_pに対してトルク制限値Tlimによる制限を加えたものを目標トルクTtgtとする。例えば、仮目標トルクTtgt_pがトルク制限値Tlim以下である場合(Ttgt_p≦Tlim)、仮目標トルクTtgt_pをそのまま目標トルクTtgtとする(Ttgt←Ttgt_p)。一方、仮目標トルクTtgt_pがトルク制限値Tlimを超える場合(Ttgt_p>Tlim)、トルク制限値Tlimを目標トルクTtgtとする(Ttgt←Tlim)。
そして、算出した目標トルクTtgtを用いてモータ14を制御する。
3.各種制御の例
図24には、本実施形態に係る各種制御と比較例に係る各種制御を用いた場合のタイムチャートの例が示されている。図24の「FC電圧Vfc」及び「電圧固定・電流可変制御」において実線で示されるものが本実施形態に係るものであり、一点鎖線で示されるものが比較例に係るものである。また、図24の「FC電力Pfc」は、本実施形態に係るものである。一点鎖線で示される比較例は、低負荷時に第5モードを用い、第3モード及び第4モードは用いない。
図24では、常に、システム負荷Psysが低負荷である(図12のS23:NO)。このため、比較例では、常に、第5モードが選択される。
時点t1までは、システム負荷Psysが閾値Ps1未満であるため、本実施形態においても、第5モードが選択される。また、時点t1から時点t3までは、モータ回転数Nmが閾値Nms1以上となるため、本実施形態においても、第5モードが選択される。なお、時点t2では、手動によりエアコンディショナ300がオンにされる。
時点t3では、要求負荷としてのシステム負荷Psysが閾値Ps1を上回り且つモータ回転数Nmが閾値Nms1を下回るため、ECU24は、FC車両10がストール状態にあると判定する(図20のS51:YES)。そこで、ECU24は、FC電圧Vfcをストール時電圧Vs1に調整すると共に、電圧固定・電流可変制御(第3モード又は第4モード)を実行する。
また、FC車両10がストール状態にあるため、ウォータポンプ240の消費電力(WP消費電力)、低電圧系補機(ラジエータファン244、低電圧バッテリ304、アクセサリ306及びECU24)の消費電力(12V系消費電力)及びエアコンディショナ300の消費電力(AC消費電力)並びにシステム負荷Psysは、徐々に増加していく。すなわち、車両10のストール時には、車両10が停止しているため、各車載機器周囲のエアの流れが小さく、エアがこもり易い。こもったエアは、各車載機器からの廃熱により熱せられ、この熱せられたエアによりシステム冷却系デバイス(例えば、ウォータポンプ240、エアコンディショナ300)のラジエータ(例えば、ラジエータ242)を冷却することとなる。この場合、冷却効率が悪化し、消費電力が増大してしまう。ラジエータファン244についても同様のことがいえる。
ここで、比較例では、第5モードを選択するため、FC電力Pfcは、システム負荷Psysを十分にまかなうことができなくなるが、本実施形態では、第3モード又は第4モードを選択するため、FC電力Pfcが、システム負荷Psysを十分にまかなうことが可能となる。但し、第3モードが選択された場合、バッテリ20の余剰電力を積極的に利用する。
4.本実施形態の効果
以上説明したように、本実施形態によれば、車両10のストール時にFC電圧Vfcをストール時電圧Vs1に設定するため、インバータ16に対して大きな電圧がかかることを防ぐことが可能となると共に、FC200の劣化を防止することができる。
また、ストール時におけるFC電力Pfcは、モータ14及びエアポンプ220の負荷分に加え、ウォータポンプ240、ラジエータファン244及びエアコンディショナ300等のシステム冷却系デバイス(冷却系補機)の負荷分に追従する。このため、ストール時においてシステム冷却系デバイスの要求電力が増加した場合であっても、システム冷却系デバイスを十分に作動させ、システム冷却系デバイスによる冷却対象を良好に冷却することが可能となる。加えて、第4モードでは、FC電力Pfcによりモータ14、エアポンプ220及びシステム冷却系デバイスの要求電力をまかなうことでバッテリ20の充放電を抑制することが可能になるため、FC200及びバッテリ20を合わせた発電効率が向上すると共に、バッテリ20の過放電を回避することが可能となる。
本実施形態において、車両10がストール状態であるときにバッテリ20のSOCが閾値THSOC1以上である場合、FC200の出力を低下させ、FC電力Pfc及びバッテリ電力Pbatを用いる。これにより、バッテリ20に余剰電力が存在する場合には、当該余剰電力を用いることが可能となるため、FC200とバッテリ20を合わせた発電効率を向上することが可能となる。
本実施形態において、ECU24は、車両10がストール状態である場合に、エアポンプ回転数Napを一定としつつ、目標酸素濃度Cotgtに応じて循環弁266を制御して、エアオフガスの還流量を調整して電圧固定・電流可変制御を行う。
本実施形態によれば、車両10がストール状態である場合に、エアポンプ回転数Napを一定とする。このため、ストール状態においてバッテリSOCが設定上限値に到達したことに伴ってエアポンプ220を停止することにより、エアポンプ220の出力音が不意に変化することなどがない。従って、ストール状態におけるエアポンプ220の出力音について搭乗者に違和感を与えることなく、バッテリSOCを適切に保つことが可能となる。
また、単にエアポンプ回転数Napを一定とするだけでなく、目標酸素濃度Cotgtに応じて循環弁226を制御して、エアオフガスの還流量を調整する。エアオフガスは酸素濃度Coが低いため、エアオフガスの還流量を多くすると、FC200内部で生成される水分が少なくなり、FC200内部が乾燥状態になる。FC200内部が乾燥状態になるとFC200の劣化が促進されるおそれがある。その一方、エアオフガスは、水分を生成するFC200の内部を通過したものであるため、相対的に水分を多く含んでいる。このため、エアオフガスの還流量を調整することにより、FC200の電解質膜を良好に加湿することが可能となり、FC200の劣化を抑制することができる。
さらに、上記のような効果を得つつ、ストール状態に応じてFC電流Ifcを小さくすることにより、バッテリSOCを管理すること(例えば、SOCの設定上限値を超えないように制御することや不要な充電を避けること)が可能となる。
5.変形例
なお、この発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
[5−1.搭載対象]
上記実施形態では、FCシステム12をFC車両10に搭載したが、これに限らず、車両10のストール状態又はモータ14のロック状態(モータ14に電力が供給されているにもかかわらず、モータ回転数Nmがゼロ又はその近傍値にある状態)が発生し得る別の対象に搭載してもよい。例えば、FCシステム12を船舶等の移動体又はロボットアーム、クレーン若しくはバランサ等の可動機構に用いることもできる。。
[5−2.駆動系]
上記実施形態では、モータ14を3相交流モータとし、インバータ16を3相ブリッジ型としたが、車両10のストール状態又はモータ14のロック状態が発生し得るものであれば、駆動系の構成は、これに限らない。例えば、モータ14を直流モータとすることも可能である。
[5−3.FCシステム12の構成]
上記実施形態では、FC200と高電圧バッテリ20を並列に配置し、バッテリ20の手前にDC/DCコンバータ22を配置する構成としたが、これに限らない。例えば、図25に示すように、FC200とバッテリ20を並列に配置し、昇圧式、降圧式又は昇降圧式のDC/DCコンバータ22をFC200の手前に配置する構成であってもよい。或いは、図26に示すように、FC200とバッテリ20を並列に配置し、FC200の手前に昇圧式、降圧式又は昇降圧式のDC/DCコンバータ22aを、バッテリ20の手前にDC/DCコンバータ22を配置する構成であってもよい。或いは、図27に示すように、FC200とバッテリ20を直列に配置し、バッテリ20とモータ14の間にDC/DCコンバータ22を配置する構成であってもよい。
[5−4.ストイキ比]
上記実施形態では、ストイキ比を調整する手段又は方法として、目標酸素濃度Cotgtを調整するものを用いたが、これに限らず、目標水素濃度を調整することも可能である。また、目標濃度の代わりに、目標流量又は目標濃度と目標流量の両方を用いることもできる。
上記実施形態では、酸素を含む空気を供給するエアポンプ220を備える構成を例示したが、これに代えて又は加えて、水素を供給する水素ポンプを備える構成としてもよい。
上記実施形態では、カソードオフガスを新規空気に合流させる合流流路(配管226a、226b)と、循環弁226とを備える構成を例示したが、これに代えて又は加えて、アノード側も同様に構成してもよい。例えば、配管208bに循環弁を設け、この循環弁により、新規水素に合流するアノードオフガスの流量を制御してもよい。
[5−5.電力供給モード]
上記実施形態では、電力供給モードとして、第1〜第5モードを用いたが、ストール時の電力供給モード、すなわち、第3モード又は第4のモードのいずれか一方のみを用いるものであれば、その他の電力供給モードは用いなくてもよい。
第3モード及び第4モードでは、酸素濃度Coを変化させるために循環弁開度θcを制御したが、FC電圧Vfcを固定した状態でFC電流Ifc(FC電力Pfc)を可変とすることができれば、これに限らない。例えば、エアポンプ回転数Napを可変としてもよい。エアポンプ回転数Napをシステム負荷Psysに対して追従させることで、ストール時に水を良好に排出でき、FC200の発電安定を良好に保つことが可能となる。