以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態のハイブリッド車両のパワートレインの一例の概略構成図を示している。なお、ハイブリッド車両のパワートレインの構成、特に第2クラッチ5の位置は図1に示すものに限定されない。
エンジン1の出力軸とモータジェネレータ2の入力軸とが、トルク容量可変の第1クラッチ4を介して、モータジェネレータ2の出力軸と自動変速機3の入力軸とが連結されている。自動変速機3の出力軸にはディファレンシャルギア6を介してタイヤ7が連結されている。
エンジン1はガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、後述するエンジンコントローラ21からの制御指令に基づいて、スロットルバルブの開度等が制御される。エンジン出力軸であるクランクシャフトの後端にはフライホイール1aが設けられている。第1実施形態ではガソリンエンジンの場合で説明する。
モータジェネレータ2は、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータである。モータジェネレータ2は、後述するモータジェネレータコントローラ22からの制御指令に基づいて、インバータ8(図2参照)により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータジェネレータ2は、強電バッテリ9(図2参照)からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することも、ロータが外力により回転している場合にはステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として強電バッテリ9を充電することもできる。
自動変速機3内には、シフト状態に応じて異なる動力伝達を担っているトルク容量可変のクラッチを有するので、これらのクラッチのうちの1つを第2クラッチ5として用いる。これにより自動変速機3は、第1クラッチ4を介して入力されるエンジン1の動力と、モータジェネレータ2から入力される動力を合成してタイヤ7へ出力する。上記の第1クラッチ4とこの第2クラッチ5とには、例えば比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多版クラッチを用いればよい。
ハイブリッド車両のパワートレインには、第1クラッチ4の接続状態に応じて2つの運転モードを有している。まず、第1クラッチ4の切断状態では、モータジェネレータ2の動力のみで運転(走行)する電気運転モード(以下「EVモード」という。)となる。第1クラッチ4の接続状態では、エンジン1とモータジェネレータ2の双方の動力で運転(走行)するハイブリッド運転モード(以下「HEVモード」という。)となる。なお、第2クラッチ5は後述するようにエンジンの始動時に半クラッチとされるくらいで、車両運転中は常に接続状態にある。
一方、強電バッテリ9の出力が低下する極低温時のエンジン始動用に、スタータモータ31が設けられている。スタータモータ31は、マグネチックシフト式またはリダクションギヤ式など公知の構成のものである。スタータモータ31の出力軸にはピニオンギヤ32が、またフラホイール1aの外周にはリングギヤ(図示しない)が設けられている。そして、極低温時にピニオンギヤ32がこのリングギヤに噛み合わされてエンジン1が起動され、エンジン1の始動後にピニオンギヤ32がリングギヤから離脱するように構成されている。
図2は制御装置を含んだハイブリッドシステムの構成図を示している。
ハイブリッドシステムは、主にパワートレインの動作点を統合制御する統合コントローラ20、エンジン1を制御するエンジンコントローラ21、モータジェネレータ2を制御するモータジェネレータコントローラ22からなっている。
統合コントローラ20には、パワートレインの動作点を決定するために、エンジンの回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ10からの信号と、モータジェネレータ2の回転速度Nmを検出するモータジェネレータ回転速度センサ11からの信号と、自動変速機3の入力軸回転速度Niを検出する自動変速機入力軸回転速度センサ12からの信号と、自動変速機3の出力軸回転速度Noを検出する自動変速機出力軸回転速度センサ13からの信号と、アクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ17からの信号と、ブレーキ油圧BPSを検出するブレーキ油圧センサ23からの信号と、強電バッテリ9の充電状態を検出するSOCセンサ16からの信号とが入力する。
統合コントローラ20は、アクセル開度APOと強電バッテリ9の充電状態SOCと、車速VSP(自動変速機出力軸回転速度Noに比例)とに応じて、運転者が望む駆動力を実現できる運転モードを選択すると共に、モータジェネレータコントローラ22に目標モータジェネレータトルクもしくは目標モータジェネレータ回転速度を、エンジンコントローラ21に目標エンジントルクを、第1クラッチ4の油圧を制御するソレノイドバルブ14、第2クラッチ5の油圧を制御するソレノイドバルブ15に駆動信号を指令する。
モータジェネレータコントローラ22は、統合コントローラ20からの目標モータジェネレータトルク指令等に応じ、モータジェネレータ2のモータ動作点(Nm、Tm)を制御する指令をインバータ8へ出力する。モータジェネレータ2にはインバータ8を介して強電バッテリ9が接続されている。
エンジンコントローラ21は、統合コントローラ20からの目標エンジントルク指令等に応じ、エンジン動作点(Ne、Te)を制御する指令を、例えば、スロットルバルブアクチュエータ(図示しない)へ出力する。
スタータモータ31には、常開のスイッチ41を介して弱電バッテリ42が接続されている。常開のスイッチ41はエンジンコントローラ21によって極低温時に閉成される。エンジンコントローラ21によって常開のスイッチ41が閉成されると、弱電バッテリ42からの電力がスタータモータ31に供給されエンジン1が始動される。
ここで、上記の強電バッテリ9とこの弱電バッテリ42との2つのバッテリを比較すると、強電バッテリ9としては、弱電バッテリ42よりも相対的に大容量でかつ弱電バッテリ42よりも相対的に低出力のバッテリを用いている。一方、弱電バッテリ42としては、強電バッテリ9よりも相対的に小容量でかつ強電バッテリ9よりも相対的に高出力のバッテリを用いている。
極低温時を除くエンジン1の始動処理は、統合コントローラ20が次にように行う。すなわち、EVモード状態で図3に示すエンジン始動線をアクセル開度APOが超えた時点で、第2クラッチ5を半クラッチ状態にスリップさせるように第2クラッチ5のトルク容量を制御し、第2クラッチ5がスリップを開始したと判断した後に第1クラッチ4の締結を開始してエンジン回転速度Neを上昇させる。エンジン回転速度Neが初爆可能な回転速度に到達したらエンジン1を作動させ、モータジェネレータ回転速度Nmとエンジン回転速度Neが近くなったところで第1クラッチ4を完全に締結し、その後第2クラッチ5をロックアップさせてHEVモードに遷移させる。
図4はエンジン始動時にエンジン回転速度Ne、エンジン起動トルクがどのように変化するのかをモデルで示したタイミングチャートである。従来のエンジン起動方法を図4中段に一点鎖線で、本発明の第1実施形態のエンジン起動方法を図4下段に実線で示している。
従来のエンジン起動方法から説明する。t0をエンジン起動の開始タイミングとして、t2のタイミングでエンジン回転速度Neが目標エンジン起動回転速度に到達するように、t0からt2までの期間、モータジェネレータ2から一定値aのトルクをエンジン1に供給している(図4中段参照)。ここで、図4上段にある「目標エンジン起動回転速度」とはエンジン1が自立運転し得る回転速度の目標値のことである。エンジン回転速度Neが目標エンジン起動回転速度に到達するt2のタイミングで、モータジェネレータ2からトルクをエンジン1に供給することは不要となるので、t2のタイミングでモータジェネレータ2からエンジン1に供給するトルクがゼロとなっている。また、図4上段にある「目標エンジン起動時間」とはエンジン回転速度Neが目標エンジン起動回転速度に到達するまでの時間の目標値のことである。これら目標エンジン起動回転速度と目標エンジン起動時間とは適合により予め定めることになる。
図4上段ではエンジン回転速度Ne(一点鎖線)は直線的に上昇している。これは、図4中段のようにモータジェネレータ2からエンジン1に供給するトルクを一定値aとしたとき、エンジン回転速度Neが直線で上昇するためである。このように一点鎖線は、あくまでモータジェネレータ2からエンジン1に供給するトルクのみによって上昇するエンジン回転速度Neの変化を示している。実際には、エンジン1の出力軸をクランキングしつつ、筒内の混合気に火花火を行って燃焼させ、この燃焼力でエンジン1を自立運転へと至らせるので、実際のエンジン回転速度はこのように直線的には上昇しない。
ここで、「エンジン始動」とは、一般的にはモータジェネレータ2の働きに加えて、エンジン1への燃料供給と火花点火とを含めた概念として用いられるものである。一方、「エンジン起動」はモータジェネレータ2の働きに特に着目した言葉として用いており、「エンジン始動」とは厳密には概念が異なるが、同様の意味で用いられることがある。
さて、目標エンジン起動回転速度より低い位置に、駆動系の共振周波数帯があり(図4上段のハッチング部参照)、この駆動系の共振周波数帯は所定の幅を有している。エンジン始動時にエンジン回転速度Neがこの駆動系の共振周波数帯を横切って上昇する際に騒音や振動が発生する。この騒音や振動を抑制するには、エンジン回転速度Neの上昇のスピード(傾き)を従来のエンジン起動方法より大きくしてエンジン回転速度Neが駆動系の共振周波数帯を短時間で通過させることである。この要求を実現するためにはモータジェネレータ2からエンジン1に供給するトルクを一定値aよりも大きくしなければならない。
しかしながら、モータジェネレータ2からエンジン1に供給するトルクを一定値aよりも大きくしたのでは、モータジェネレータ2から駆動輪側に配分(供給)できるトルクが小さくなってしまう。これはモータジェネレータ2に車両を駆動させる機能だけでなく、エンジン1を起動する機能をも負担させているためである。
これを図5を参照してさらに説明する。図5はモータジェネレータ2のモータ(電動機)としてのトルク特性図である。従来の場合、図5上段に示したように、エンジン回転速度Neが所定値N1までの低回転速度域でモータジェネレータ2からトルクをエンジン1に供給することでエンジン1を起動するようにしている。つまり、エンジン起動用のトルク分を余裕トルクとして残している。このため、モータ最大トルクからこの余裕トルクを差し引いた残りのトルクをEVモードでの走行に充てている。従って、音振対策のためにエンジン起動用のトルク分である余裕トルクを従来の場合より大きくしたのでは、EVモードで走行できる領域を狭めてしまうこととなる。EVモードで走行できる領域が狭まればそれだけ燃費が悪くなる。
そこで本発明の第1実施例では、極低温時にしか用いていないスタータモータ31を有効活用するものとする。すなわち、モータジェネレータ2からのトルクでエンジン1を起動する際にはスタータモータ31からもトルクをエンジン1に供給し、スターモータ31からのトルクとモータジェネレータ2からのトルクとの合計でエンジン1を起動し、エンジン回転速度Neを目標エンジン起動回転速度へと至らせる。具体的には図4下段に示したように、t0のエンジン起動開始タイミングからt1(t1<t2)のタイミングまでの短期間にスターモータ31に高出力を与えてスタータモータ31から上記一定値aよりも大きな一定値cのトルク(以下、この一定値cのトルクを「第1エンジン起動用トルク」という。)をエンジン1に供給し、この第1エンジン起動用トルクcでエンジン回転速度Neが駆動系の共振周波数帯を急速に横切るようにする。
これによって、モータジェネレータ2からエンジン1に供給するトルクを増やすことなく、エンジン回転速度Neが共振周波数帯を横切って上昇する際に発生する騒音や振動を従来のエンジン起動方法よりも抑制できる。そして、駆動系の共振周波数帯を横切った後にはエンジン回転速度Neは所定値d(d<目標エンジン起動回転速度)に到達するものとする(図4上段参照)。
一方、スタータモータ31から第1エンジン起動用トルクcを供給してエンジン回転速度Neが駆動系の共振周波数帯を急速に横切るようにすることで、t1の後にはt2のタイミングで目標エンジン起動回転速度に到達するように、モータジェネレータ2からトルクをエンジン1に供給すればよい。t1のタイミングでエンジン回転速度Neは所定値に到達しているので、t2のタイミングで目標エンジン起動回転速度に到達するようにするには、モータジェネレータ2からエンジン1に供給するトルクを従来の一定値aよりも小さい一定値bのトルク(以下、この一定値bのトルクを「第2エンジン起動用トルク」という。)へと減らすことができる。
このように、第1実施形態では、スタータモータ31からのトルクを追加してエンジン1に供給することで、エンジン回転速度Neを従来のエンジン起動方法より急上昇させることができる。エンジン1の筒内における燃焼開始後には、両モータ(2、31)からのトルクに加えエンジン1の発生するトルクを用いてエンジン回転速度Neがさらに上昇する。
また、第1実施例では、第1エンジン起動用トルクcと第2エンジン起動用トルクbとからエンジン駆動用トルクを構成し、モータジェネレータ2が負担していたエンジン起動用トルクの一部を、スタータモータ31が肩代わりすることにより、図5下段に示したようにモータジェネレータ2からエンジン1に供給するトルクは従来のエンジン起動方法より小さくなる。モータジェネレータ2からエンジン1に供給するトルクが従来のエンジン起動方法より小さくなった分だけモータジェネレータ2から駆動輪側に配分できるトルクが大きくなる。
モータジェネレータ2から駆動輪側に配分できるトルクが従来のエンジン起動方法より大きくなると、そのぶんEVモードで走行できる領域を拡大できることから燃費が向上する。これを図6を参照してさらに説明すると、図6は横軸にモータジェネレータ2のエンジン起動トルク占有率(以下単に「エンジン起動トルク占有率」という。)を、縦軸に燃費向上率をそれぞれ採った特性図である。ここで、「エンジン起動トルク占有率」とはモータジェネレータ2からエンジン1に供給するトルクがエンジン起動トルクの全体に占める割合のことである。モータジェネレータ2から供給するトルクのみでエンジン1を起動するときに、エンジン起動トルク占有率は100%となり、モータジェネレータ2から供給するトルクを用いないでエンジン1を起動するときにエンジン起動トルク占有率は0%となる。ただし、図6では最大のエンジン起動トルク占有率を100%より小さな値としている。従来のエンジン起動方法での燃費向上率を0%の基準に採って考えるため、図6においては右端の位置が従来のエンジン起動方法でのエンジン起動トルク占有率である。
一方、図6においてエンジン起動トルク占有率が0%となる左端の位置では、モータジェネレータ2のモータ最大トルクまで用いたEVモードでの走行が可能となり燃費向上率が最も大きくなる。つまり、モータジェネレータ2から駆動輪側に配分できるトルクが大きくなることは図6においてエンジン起動トルク占有率が小さくなる側(左側)に移動することを意味し、モータジェネレータ2から駆動輪側に配分できるトルクが大きくなるほど燃費向上率が大きくなるのである。
なお、図4下段及び図5下段にはモータジェネレータ2からエンジン1に供給するトルクがゼロでない場合を示しているが、モータジェネレータ2が負担していたエンジン起動用トルクの全部を、スタータモータ31に肩代わりさせることも可能である。このとき、モータジェネレータ2からエンジン1に供給するトルクがゼロとなり、モータ最大トルクの全てをEVモードでの走行に充てることができる。図6においてはエンジン起動トルク占有率が0%(左端)となり最大の燃費向上率を得ることができるのである。
次に、図4下段に示したt1としては、エンジン回転速度Neが目標エンジン起動回転速度に到達するタイミングであるt2よりも時間的に前のタイミングを採ることとなる。このt1のタイミングを時間的に早めるほど、エンジン回転速度Neが駆動系の共振周波数帯を横切るのに要する時間が短縮される。しかしながら、t1をt0に近づけようとするほどエンジン回転速度Neを急上昇させる必要があり、スタータモータ31に与える出力を高くしなければならない。弱電バッテリ42は強電バッテリ9と比較すれば、強電バッテリ9よりも相対的に高出力ではあるが、エンジン回転速度Neを従来のエンジン起動方法より急上昇させたいという要求に応えられない場合があることも考えられる。言い換えると、弱電バッテリ42によれば、図4下段に実線で示したようにt0のエンジン起動開始タイミングからt1のタイミングまでの短期間にスターモータ31から第1エンジン起動用トルクcをエンジン1に供給することができない事態が考えられる。
そこで第1実施形態では、t0のエンジン起動開始タイミングからの短期間にスターモータ31から第1エンジン起動用トルクcをエンジン1に供給するため、弱電バッテリ42とは別に新たに高出力の電源を追加して設ける。この新たな高出力の電源は、図2に示したようにキャパシタ(capacitor)45及び常開スイッチ46からなるものである。これらキャパシタ45及び常開スイッチ46は、常開スイッチ41に対して並列に接続する。以下、2つの常開スイッチ41、46を区別するため、一方の常開スイッチ41を「第1常開スイッチ」、他方の常開スイッチ42を「第2常開スイッチ」という。
キャパシタ45は、静電容量(キャパシタンス)により電荷(電気エネルギー)を蓄えたり放出したりする受動素子である。第2常開スイッチ46が開成しているときにはキャパシタ45に弱電バッテリ42からの電荷が蓄えられ、第2常開スイッチ46を閉成すると、キャパシタ45に蓄えられていた電力がスタータモータ31に供給される。すなわち、第1実施例では、第2常開スイッチ46付きのキャパシタ45を高出力の電源として、スタータモータ31からトルクをエンジン1に供給してエンジン1を起動する。t0のエンジン起動開始タイミングからt1のタイミングまでの短期間にスターモータ31から第1エンジン起動用トルクcがエンジン1に供給されるようにキャパシタ45の仕様と容量とを予め定めておく。
第2常開スイッチ46はエンジンコントローラ21からの指令によって開成と閉成とを切換える。
キャパシタ45への蓄電は、弱電バッテリ42からの充電によって行う場合に限られない。例えば、ハイブリッド車両の減速時に発生する減速エネルギーをスタータモータ31により回生してキャパシタ45に蓄えるようにしてもかまわない。強電バッテリ9からの電力供給によりキャパシタ45に蓄電させることもできる。このように、キャパシタ45には、スタータモータ31による回生、強電バッテリ9からの充電、弱電バッテリ42からの充電の三通りによって蓄電することが可能である。
統合コントローラ20で行われる制御を図7のフローチャートに基づいて説明する。図7はエンジン起動処理を行わせるためのもので、一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。
図7においてステップ1では起動完了フラグをみる。このフラグはエンジンの起動完了後に1となるフラグである。ここでは、起動完了フラグ=0であるとしてステップ2以降に進む。
ステップ2では今回にエンジン1の始動要求があるか否か、ステップ3では前回にエンジン1の始動要求があったか否かをみる。今回にエンジン1の始動要求がなかったときにはそのまま今回の処理を終了する。
今回にエンジン1の始動要求がありかつ前回にエンジン1の始動要求がなかった、つまり今回にエンジン1の始動要求があったときには、ステップ2、3よりステップ4に進みタイマを起動する(タイマ値=0)。タイマ値はエンジン始動要求の開始からの経過時間を計測するためのものである。
ステップ5では第2常開スイッチ46を閉成してキャパシタ46に蓄えられている電力をスタータモータ31に供給する。これによってスタータモータ31から第1エンジン起動用トルクcがエンジン1に供給されるので、エンジン回転速度Neは共振周波数帯に向かって従来のエンジン起動方法よりも急上昇してゆく。
ステップ2、3で今回に始動要求がありかつ前回にも始動要求があった、つまり始動要求が継続しているときには、ステップ6に進みタイマ値と所定値1を比較する。ここで、所定値1は図4下段においてt0からt1までの期間、つまりスタータモータ31を駆動する目標時間を定めるものである。所定値1は、適合により予め定めておく。タイマを起動したばかりのときにはタイマ値は所定値1未満であるので、ステップ7に進んでタイマ値をインクリメントした後、ステップ5の操作を実行する。
タイマ値が所定値1未満である限りステップ6、7、5の操作を繰り返すと、やがてタイマ値が所定値1に到達する。このときにはエンジン回転速度Neは共振周波数帯を横切り終わっているので、スタータモータ31からの第1エンジン起動用トルクcの供給を終了し、次にはモータジェネレータ2からのの第2エンジン起動用トルクbの供給に切換えるため、ステップ8以降に進む。
ステップ8ではタイマ値と所定値2を比較する。ここで、所定値2は図4においてt2に到達したタイミング、つまり目標エンジン起動時間を定めるものある。所定値2は、適合により予め定めておく。タイマ値が所定値2を超えたばかりのときにはタイマ値は所定値2未満であるのでステップ9に進んでタイマ値をインクリメントした後、ステップ10でモータジェネレータ2から第2エンジン起動用トルクbをエンジン1に供給する。これによってエンジン回転速度Neはゆっくりと上昇してゆく。ステップ11では第2常開スイッチ46を開成してキャパシタ45からスタータモータ31への電力供給を終了し、スタータモータ31を停止させる。
タイマ値が所定値2未満である限りステップ9、10、11の操作を繰り返すと、やがてタイマ値が所定値2に到達する。このときにはエンジン起動(=エンジン始動)が完了しているはずなので、ステップ8よりステップ12に進み、モータジェネレータ2からの第2エンジン起動用トルクbの供給を終了させる。ステップ13ではエンジン起動が完了したことを示すため、起動完了フラグ=1とする。この起動完了フラグ=1により次回以降、ステップ1よりステップ2以降に進むことができない。
ハイブリッド車両では、車両の運転中にエンジン1の運転が不要になれば、エンジン1の運転が停止される。このとき、起動完了フラグをゼロにリセットしておく。すると、図7においてステップ1からステップ2以降に進めることになり、エンジン1の始動要求があれば、上記の操作を繰り返す。
ここで、第1実施形態の作用効果を説明する。
第1実施形態によれば、電力の供給を受けてエンジン1に起動トルクを供給し得るモータジェネレータ2を備え、モータジェネレータからのトルクを供給してエンジン1を起動させるようにするエンジンの始動装置において、電力の供給を受けてエンジン1に起動トルクを供給付与し得るスタータモータ31と、スタータモータ31に電力を供給するキャパシタ45とを有し、目標エンジン起動回転速度よりも低い位置にある共振周波数帯をエンジン回転速度Neが横切って上昇する際に、キャパシタ45からの電力でスタータモータ31を駆動する。すなわち、高出力の電力を応答性良く放電できるキャパシタ45によりスタータモータ31を駆動するので、モータジェネレータ2から駆動輪側に配分できるトルクを従来のエンジン起動方法より小さくすることなく、エンジン回転速度Neが共振周波数帯を通過する時間を短縮でき、エンジン始動時の騒音や振動を従来のエンジン起動方法より抑制できる。
第1実施形態によれば、キャパシタ45からの電力でスターモータ31を駆動するとき、目標エンジン起動時間が経過したタイミングでエンジン回転速度が前記目標エンジン起動回転速度に到達するように、キャパシタ45からの電力を用いずにスタータモータ31を駆動する従来の場合に比して前記モータジェネレータからエンジンに供給するトルクを従来の一定値aのトルクから第2エンジン起動用トルクbへと減らしている。モータジェネレータ2が負担するエンジン起動トルクが従来の一定値aのトルクから第2エンジン起動用トルクbへと低減するため、モータジェネレータ2のトルクをより多く車両の駆動に利用することができる。これにより、EVモードで走行できる条件(エンジン1を停止した状態でモータジェネレータ2のみで走行できる条件)が、高車速側、高加速度域側に拡大できるため、燃費性能が向上する。
付加的な効果として、エンジン起動に伴う強電バッテリ9の高出力な放電の頻度が減少するため、強電バッテリ9の出力低下及び容量劣化を抑制できる。
第1実施形態は、スタータモータ31からの第1エンジン起動用トルクcの供給開始タイミングをt0のエンジン起動開始タイミングとするものであったが、これに限られるものでない。例えば、図8に示したように、スタータモータ31からの第1エンジン起動用トルクcの供給開始タイミングをt0以降の任意のタイミング、例えばt5のタイミングとすることもできる。t5からt6までの期間は図4のt0からt1までの期間と同じである。
(第2実施形態)
図9は第2実施形態のエンジン始動時のエンジン回転速度、エンジン起動トルクの変化を示すタイミングチャートで、第1実施形態の図4と置き換わるものである。キャパシタ45の充電状態SOCが下限値SOC2low未満であるとき(図9では「キャパシタの充電不足のとき」と記載)のエンジン起動方法を図9中段に二点鎖線で、本発明の第2実施形態のエンジン起動方法を図9下段に実線で示している。
第1実施形態の図4は、キャパシタ45の充電状態SOCが上限値SOC2upと下限値SOC2lowの間にあることを前提としたものであった。ここで、上限値SOC2upとしては、キャパシタ45が過度の充電状態とならないように、100%未満の値を予め定めている。一方、下限値SOC2lowは、これよりキャパシタ45の充電状態SOCが低下すると、キャパシタ45より電力をスタータモータ31に供給したときスタータモータ31から第1エンジン起動用トルクcをエンジン1に供給することを保障し得ない値である。下限値SOC2lowとしては、0%を越えている値を予め定めている。
実際には、キャパシタ45の充電状態SOCが下限値SOC2low未満となってしまうことがある。すなわち、キャパシタ45の充電状態SOCが下限値SOC2low未満であるとき、図9中段に二点鎖線で示したように第1エンジン起動用トルクcより小さな一定値eのトルクしかエンジン1に供給できなくなって、エンジン回転速度Neの上昇スピードが図9上段に二点鎖線で示したように、第1実施形態の場合より鈍ることとなる。このエンジン回転速度Neの上昇スピードの低下を受けて、エンジン回転速度Neが共振周波数帯を横切る時間が第1実施形態の場合より長引き、その分、共振周波数帯を通過するときに発生する騒音や振動が大きくなる。また、エンジン起動時間は目標エンジン起動時間を超えて長引く。
従って、スタータモータ31及びモータジェネレータ2のエンジン起動トルク全体に対するトルク分担は、キャパシタ45及び強電バッテリ9の放電能力で決まる両モータ(31、2)の発生可能トルクに応じて決定する必要がある。例えば、キャパシタ45の充電状態SOCが下限値SOC2low以上である場合には、第1実施形態で前述したようにスタータモータ31からエンジン1に供給し得るトルクを最大限に活用すればよい(図4下段参照)。
一方、キャパシタ45の充電状態SOCが下限値SOC2low未満で第1エンジン起動用トルクcより小さな一定値eのトルクしかエンジン1に供給できない場合に、第2実施形態では、図9下段に示したようにスタータモータ31からの供給トルクの不足分(つまりc−eのトルク)をモータジェネレータ2から供給するものである。
このため第2実施形態では、図10に示したように、キャパシタ45の充電状態SOCを検出するSOCセンサ51を新たに設け、このSOCセンサ51からの信号を統合コントローラ20に入力させている。ここで、図2と同一部分には同一番号を付している。以下、キャパシタ45の充電状態と強電バッテリ9の充電状態とを区別するため、強電バッテリ9の充電状態を「SOC1」、キャパシタ45の充電状態を「SOC2」とする。
図11、図12は第2実施形態のエンジン起動処理を行わせるためのもので、統合コントローラ20が一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。第1実施形態の図7と同一部分には同一のステップ番号を付している。
第1実施形態の図7と相違する部分を主に説明する。今回にエンジン1の始動要求があったときには、図11のステップ2、3よりステップ4に進みタイマを起動した後、図12のステップ21でSOCセンサ51により検出されるキャパシタ45の充電状態SOC2と下限値SOC2lowとを比較する。下限値SOC2lowは、キャパシタ45より電力をスタータモータ31に供給したときスタータモータ31から第1エンジン起動用トルクcをエンジン1に供給することを保障し得る充電状態SOC2の下限値で、予め適合により求めておく。キャパシタ5の充電状態SOC2が下限値SOC2low以上であれば、キャパシタ45より電力をスタータモータ31に供給したときスタータモータ31から第1エンジン起動用トルクcをエンジン1に供給することを保障し得ると判断する。このときの処理は第1実施形態と同じである。すなわち、図12のステップ21より図11のステップ5に進んで第2常開スイッチ46を閉成する。これによってキャパシタ46に蓄えられている電力をスタータモータ31に供給する。
一方、キャパシタ5の充電状態SOC2が下限値SOC2low未満であるときには、キャパシタ45より電力をスタータモータ31に供給したときスタータモータ31から第1エンジン起動用トルクcをエンジン1に供給することを保障し得ないと判断する。このときには、モータジェネレータ2からのトルクを追加してエンジン1に供給するため、図12のステップ21から図12のステップ23、24に進む。ステップ23では、キャパシタ45の充電状態SOC2から図13を内容とするテーブルを検索することにより、不足トルクを求める。
キャパシタ5の充電状態SOC2が下限値SOC2low未満であるので、キャパシタ45からスタータモータ31に電力を供給したとき、スタータモータ31からエンジン1に供給するトルクが第1エンジン起動用トルクcより不足する。この第1エンジン起動用トルクcからの不足分が、ここでいう不足トルクである。この不足トルクは、図13に示したようにキャパシタ45の充電状態SOC2が下限値SOC2low以上の領域でゼロとなる値である。また、キャパシタ45の充電状態SOC2が下限値SOC2low未満の領域で、キャパシタ45の充電状態SOC2が小さくなるほど大きくなる値である。
図12のステップ24ではモータジェネレータ2からこの不足トルクをエンジン1に供給すると共に、図11のステップ5の操作を実行する。これによって、スタータモータ31及びモータジェネレータ2からエンジン1に供給するトルクの合計が第1エンジン起動用トルクcと同じトルクとなる。
一方、図11のステップ2、3で始動要求が継続しているときかつステップ6でタイマ値が所定値1未満であるときにはステップ7に進んでタイマ値をインクリメントした後、図12のステップ22に進む。ステップ22ではキャパシタ45の充電状態SOC2と下限値SOC2lowを比較する。キャパシタ5の充電状態SOC2が下限値SOC2low以上であれば、キャパシタ45より電力をスタータモータ31に供給したときスタータモータ31から第1エンジン起動用トルクcの供給を保障し得ると判断する。このときの処理は第1実施形態と同じである。すなわち、図12のステップ22から図11のステップ5に進んで第2常開スイッチ46を閉成する。
図12のステップ22でキャパシタ5の充電状態SOC2が下限値SOC2low未満であるときには、キャパシタ45より電力をスタータモータ31に供給したときスタータモータ31から第1エンジン起動用トルクcの供給を保障し得ないと判断する。このときには、モータジェネレータ2からのトルクを追加してエンジン1に供給するため、図12のステップ24に進み、ステップ23で算出した不足トルクをモータジェネレータ2からエンジン1に供給すると共に、図11のステップ5の操作を実行する。
このように、第2実施形態ではキャパシタ45の充電状態SOC2が下限値SOC2low未満であるためにスタータモータ31からエンジン1に供給するトルクが第1エンジン起動用トルクcより不足する分を、モータジェネレータ2からのトルクで補助するので、エンジン起動に要するトルクの合計は第1実施形態と同じになる。すなわち、第2実施形態によれば、キャパシタ45の充電状態SOC2が下限値SOC2low未満となることがあっても、第1実施形態と同じに共振周波数帯を短時間で通過でき、エンジン始動時の騒音や振動を抑制できる。
(第3実施形態)
図14は第3実施形態のエンジン始動時のエンジン回転速度、エンジン起動トルクの変化を示すタイミングチャートで、第1実施形態の図4と置き換わるものである。ここで、第1実施形態の起動方法を図14下段に実線で、第3実施形態の起動方法を図14中段に破線で示している。
さて、第2実施形態では、キャパシタ45の充電状態SOC2が下限値SOC2low未満となった場合を扱ったが、第3実施形態はキャパシタ45の充電状態SOC2が上限値SOC2upを超える場合を扱うものである。キャパシタ45の充電状態SOC2が上限値SOC2upを超える場合(図14では「キャパシタの充電が十分であるとき」と記載)には、キャパシタ45よりスタータモータ31に供給する電力を増やし、その分、スタータモータ31からエンジン1に供給するトルクを増やすことができる。例えば、図14中段に破線で示したように、スタータモータ31から第1エンジン起動用トルクcよりも大きな一定値g(g>c)のトルクをエンジン1に供給することができる。これによって、エンジン回転速度Neの上昇スピードが、図14上段に破線で示したように、実線で示す第1実施形態より大きくなり、その分、共振周波数帯を通過するときに発生する騒音や振動をより小さくすることができる。
また、t1のタイミングで到達するエンジン回転速度Neが所定値dよりも高い所定値fとなる。この所定値fから、t2のタイミングで目標エンジン起動回転速度に到達させるには、モータジェネレータ2からエンジン1に供給するトルクを第2エンジン起動用トルクbから一定値h(h<b)へと減らすことができる。モータジェネレータ2からエンジン1に供給するトルクを第2エンジン起動用トルクbから一定値hへと減らすことができると、その分、モータジェネレータ2から駆動輪側に配分できるトルクが大きくなり、燃費向上率が大きくなる。
このため第3実施形態では、図15に示したように、第2常開スイッチ46とスタータモータ31の間に電流制御手段61(電力制御手段)を追加して設けている。この電流制御手段61がOFF状態のときには、スタータモータ31からエンジン1に供給されるトルクが第1エンジン起動用トルクcとなるようにキャパシタ45からスタータモータ31に電流(電力)が供給される。このときキャパシタ45からスタータモータ31に供給される電流値(電力値)を「規定電流値」とすると、電流制御手段61がON状態であるときには、キャパシタ45から規定電流値を超える電流をスタータモータ31に供給することが可能である。そして、この規定電流値からの増加量をエンジンコントローラ21からの制御信号に基づいて制御できるようになっている。ここで、図2と同一部分には同一番号を付している。
図16、図17は第3実施形態のエンジン起動処理を行わせるためのもので、統合コントローラ20が一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。第2実施形態の図11、図12と同一部分には同一のステップ番号を付している。
第2実施形態の図11、図12と相違する部分を主に説明する。今回にエンジン1の始動要求があったときには、図16のステップ2、3よりステップ4に進みタイマを起動した後、図17のステップで31でSOCセンサ51により検出されるキャパシタ45の充電状態SOC2と上限値SOC2upとを比較する。上限値SOC2upは、キャパシタ45より電力をスタータモータ31に供給したときスタータモータ31から第1エンジン起動用トルクcの供給を保障し得る充電状態SOC2の上限値で、予め適合により求めておく。キャパシタ5の充電状態SOC2が上限値SOC2up以下であれば、キャパシタ45より電力をスタータモータ31に供給したときスタータモータ31から第1エンジン起動用トルクcの供給を保障し得ると判断する。このときには図17のステップ33に進み、電流制御手段61をOFF状態とする。
この後の処理は第2実施形態と同じである。すなわち、図17のステップ33より図16のステップ5に進んで第2常開スイッチ46を閉成する。電流制御手段61がOFF状態であるので、第2常開スイッチ46を閉成したときには、キャパシタ45から規定電流値の電流がスタータモータ31に供給され、スタータモータ31から第1エンジン起動用トルクcがエンジン1に供給される。
一方、キャパシタ5の充電状態SOC2が上限値SOC2upを超えているときには、キャパシタ45より電力をスタータモータ31に供給したときスタータモータ31から第1エンジン起動用トルクcを超えるトルクの供給が可能であると判断する。このときには、図17のステップ31から図17のステップ34、35に進む。ステップ35では、キャパシタ45の充電状態SOC2から図18を内容とするテーブルを検索することにより、規定電流値からの電流値増加量(電力増加量)を求める。
規定電流値からの電流値増加量は、キャパシタ45からスタータモータ31に電力を供給したとき、第1エンジン起動用トルクcに追加してエンジン1に供給し得る余剰トルク分を生じさせるためのものである。この規定電流値からの電流値増加量は、図18に示したようにキャパシタ45の充電状態SOC2が上限値SOClup以下の領域でゼロとなる値である。また、キャパシタ45の充電状態SOC2が上限値SOC2upを超える領域で、キャパシタ45の充電状態SOC2が大きくなるほど大きくなる値である。規定電流値からの電流値増加量が大きくなるほどスタータモータ31からエンジン1に供給するトルクが第1エンジン起動用トルクcより大きくなる。
図17のステップ35ではこの規定電流値からの電流値増加量の分だけ余分にキャパシタ45から電流がスタータモータ31に供給されるように電流制御手段61を制御する。この後は図16のステップ5の操作を実行する。
一方、図16のステップ2、3で始動要求が継続しているときかつステップ6でタイマ値が所定値1未満であるときにはステップ7に進んでタイマ値をインクリメントした後、図17のステップ32に進む。ステップ32ではキャパシタ45の充電状態SOC2と上限値SOC2upを比較する。キャパシタ5の充電状態SOC2が上限値SOC2up以下であれば、キャパシタ45より電力をスタータモータ31に供給したときスタータモータ31から第1エンジン起動用トルクcの供給が可能であると判断する。このときにはステップ33に進み、電流制御手段61をOFF状態としたあと、図16のステップ5に進んで第2常開スイッチ46を閉成する。
図17のステップ32でキャパシタ45の充電状態SOC2が上限値SOC2upを超えているときには、キャパシタ45より電力をスタータモータ31に供給したときスタータモータ31から第1エンジン起動用トルクcを超えるトルクの供給が可能であると判断する。このときには、図17のステップ35に進み、規定電流値からの電流値増加量の分だけ余分にキャパシタ45から電流がスタータモータ31に供給されるように電流制御手段61を制御すると共に、図16のステップ5の操作を実行する。
つぎに、図16のステップ8でタイマ値が所定値2に到達した後には、ステップ9でタイマ値をインクリメントした後、ステップ36に進む。図16のステップ36ではキャパシタ45の充電状態SOC2と上限値SOC2upを比較する。キャパシタ5の充電状態SOC2が上限値SOC2up以下であるときには、第2実施形態と同じに、ステップ10、11の操作を実行する。このとき、モータジェネレータ2からエンジン1に第2エンジン起動用トルクbが供給される。
一方、図16のステップ36でキャパシタ45の充電状態SOC2が上限値SOC2upを超えているときには、ステップ37に進み、キャパシタ45の充電状態SOC2から図19を内容とするテーブルを検索することにより、トルク減量を求める。ステップ38では第2エンジン起動用トルクbからこのトルク減量を差し引いた値のトルクをエンジン1に供給する。
トルク減量は、図19に示したようにキャパシタ45の充電状態SOC2が上限値SOClup以下の領域でゼロとなる値である。また、キャパシタ45の充電状態SOC2が上限値SOC2upを超える領域で、キャパシタ45の充電状態SOC2が大きくなるほど大きくなる値である。図19の特性は、エンジン回転速度Neがt2のタイミングで目標エンジン起動回転速度に到達するように適合により予め定めておく。
このように、第3実施形態によれば、キャパシタ45の充電状態SOC2を検出するSOCセンサ51(充電状態検出手段)を備え、この検出されるキャパシタの充電状態SOC2が予め定めた上限値SOCupを超える場合に、キャパシタ45からスタータモータ31に供給する電流(電力)を増やすと共に(図17のステップ31、34、35、ステップ32、35参照)、この増やした電流分(電力分)に応じてモータジェネレータ2からエンジン1に供給するトルクを減らす(図16のステップ36、37、38参照)ので、エンジン1を起動可能なトルクを確保しつつモータジェネレータ2からトルクをより多く駆動輪側に配分できるようになり、燃費性能が向上する。
(第4実施形態)
図20は第4実施形態のエンジン始動時のエンジン回転速度、エンジン起動トルクの変化を示すタイミングチャートで、第1実施形態の図4と置き換わるものである。ここで、第1実施形態の起動方法を図20下段に実線で、第4実施形態の起動方法を図20中段に破線で示している。
第1実施形態の図4は、強電バッテリ9の充電状態SOC1が上限値SOC1upと下限値SOC1lowの間にあることを前提としたものであった。ここで、上限値SOC1upとしては、強電バッテリ9が過度の充電状態とならないように、100%未満の値を予め定めている。一方、下限値SOC1lowは、これより強電バッテリ9の充電状態SOC1が低下すると、強電バッテリ9より電力をモータジェネレータ2に供給したときモータジェネレータ2から第2エンジン起動用トルクbの供給を保障し得ない値である。下限値SOC1lowとしては、0%を越えている値を予め定めている。
実際には、強電バッテリ9の充電状態SOC1が下限値SOC1low未満となってしまうことがある。強電バッテリ9の充電状態SOC1が下限値SOC1low未満であるとき(図20では「強電バッテリが充電不足であるとき」と記載)には、キャパシタ45よりスタータモータ31に供給する電力を増やし、その分、スタータモータ31からエンジン1に供給するトルクを増やすことができる。例えば、図20中段に破線で示したようにスタータモータ31から第1エンジン起動用トルクcよりも大きな一定値jのトルクをエンジン1に供給することができる。これによって、エンジン回転速度Neの上昇スピードが、図20上段に破線で示したように、実線で示す第1実施形態より大きくなり、その分、共振周波数帯を通過するときに発生する騒音や振動をより小さくすることができる。
また、t1のタイミングで到達するエンジン回転速度Neが所定値dよりも高い所定値iとなる。この所定値iから、t2のタイミングで目標エンジン起動回転速度に到達させるには、モータジェネレータ2からエンジン1に供給するトルクを第2エンジン起動用トルクbから一定値k(k<b)へと減らすことができる。モータジェネレータ2からエンジン1に供給するトルクを第2エンジン起動用トルクbから一定値kへと減らすことができると、その分、モータジェネレータ2から駆動輪側に配分できるトルクが大きくなり、燃費向上率が大きくなる。
第4実施形態のハイブリッドシステムの構成は第3実施形態と同じである。すなわち、第4実施形態においても、図15に示したように、第2常開スイッチ46とスタータモータ31の間に電流制御手段61を追加して設けている。この電流制御手段61がOFF状態のときには、スタータモータ31からエンジン1に供給されるトルクが第1エンジン起動用トルクcとなるようにキャパシタ45からスタータモータ31に電流(電力)が供給される。このときキャパシタ45からスタータモータ31に供給される電流値(電力値)を「規定電流値」とすると、電流制御手段61がON状態であるときには、キャパシタ45から規定電流値を超える電流をスタータモータ31に供給することが可能である。そして、この規定電流値からの増加量をエンジンコントローラ21からの制御信号に基づいて制御できるようになっている。ここで、図2と同一部分には同一番号を付している。
図21、図22は第4実施形態のエンジン起動処理を行わせるためのもので、統合コントローラ20が一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。第3実施形態の図16、図17と同一部分には同一のステップ番号を付している。
第3実施形態の図16、図17と相違する部分を主に説明する。今回にエンジン1の始動要求があったときには、図21のステップ2、3よりステップ4に進みタイマを起動した後、図22のステップで41でSOCセンサ16により検出される強電バッテリ9の充電状態SOC1と下限値SOC1lowとを比較する。下限値SOC1lowは、強電バッテリ9より電力をモータジェネレータ2に供給したときモータジェネレータ2から第2エンジン起動用トルクbの供給を保障し得る充電状態SOC1の下限値で、予め適合により求めておく。強電バッテリ9の充電状態SOC1が下限値SOC1low以上であれば、強電バッテリ9より電力をモータジェネレータ2に供給したときモータジェネレータ2から第2エンジン起動用トルクbの供給を保障し得ると判断する。このときには図22のステップ33に進み、電流制御手段61をOFF状態とする。
この後の処理は第3実施形態と同じである。すなわち、図21のステップ5に進んで第2常開スイッチ46を閉成する。電流制御手段61がOFF状態であるので、第2常開スイッチ46を閉成したときには、キャパシタ45から規定電流値の電流がスタータモータ31に供給され、スタータモータ31から第1エンジン起動用トルクcがエンジン1に供給される。
一方、強電バッテリ9の充電状態SOC1が下限値SOC1low未満であるときには、強電バッテリ9より電力をモータジェネレータ2に供給したときモータジェネレータ2から第2エンジン起動用トルクbの供給が不可能であると判断し、図22のステップ41から図22のステップ43、35に進む。ステップ43では、強電バッテリ9の充電状態SOC1から図23を内容とするテーブルを検索することにより、規定電流値からの電流値増加量(電力増加量)を求める。
規定電流値からの電流値増加量は、キャパシタ45からスタータモータ31に電力を供給したとき、第1エンジン起動用トルクcに追加して供給し得る余剰トルク分を生じさせるためのものである。この規定電流値からの電流値増加量は、図23に示したように強電バッテリ9の充電状態SOC1が下限値SOC1low以上の領域でゼロとなる値である。また、強電バッテリ9の充電状態SOC1が下限値SOC1low未満である領域で、強電バッテリ9の充電状態SOC1が小さくなるほど大きくなる値である。規定電流値からの電流値増加量が大きくなるほどスタータモータ31からエンジン1に供給するトルクが第1エンジン起動用トルクcより大きくなる。
図22のステップ35ではこの規定電流値からの電流値増加量の分だけ余分にキャパシタ45から電流がスタータモータ31に供給されるように電流制御手段61を制御する。この後は図21のステップ5の操作を実行する。
一方、図21のステップ2、3で始動要求が継続しているときかつステップ6でタイマ値が所定値1未満であるときにはステップ7に進んでタイマ値をインクリメントした後、図22のステップ42に進む。ステップ42では強電バッテリ9の充電状態SOC1と下限値SOC1lowを比較する。強電バッテリ9の充電状態SOC1が下限値SOC1low以上であれば、強電バッテリ9より電力をモータジェネレータ2に供給したときモータジェネレータ2から第2エンジン起動用トルクbの供給が可能であると判断する。このときには図22のステップ33に進み、電流制御手段61をOFF状態としたあと、図21のステップ5に進んで第2常開スイッチ46を閉成する。
図22のステップ42で強電バッテリ9の充電状態SOC1が下限値SOC1low未満であるときには、強電バッテリ9より電力をモータジェネレータ2に供給したときモータジェネレータ2から第2エンジン起動用トルクbの供給が不可能であると判断する。このときには、図22のステップ35に進み、規定電流値からの電流値増加量の分だけ余分にキャパシタ45から電流がスタータモータ31に供給されるように電流制御手段61を制御する。その後には、図21のステップ5の操作を実行する。
このように、第4実施形態によれば、モータジェネレータ2に電力を供給する強電バッテリ9と、この強電バッテリ9の充電状態を検出するSOCセンサ16(充電状態検出手段)とを備え、この検出される強電バッテリ9の充電状態SOC1が予め定めた下限値SOC1low未満である場合に、キャパシタ45からスタータモータ31に供給する電力を増やすので(図22のステップ41、43、35、ステップ42、35参照)、共振周波数帯を通過するときに発生する騒音や振動をより小さくすることができると共に、強電バッテリ9の充電状態SOC1が下限値SOC1low未満であっても、エンジン回転速度Neを目標エンジン起動時間が経過するタイミング(t2)で目標エンジン起動回転速度に到達させることができる。
第4実施形態では、強電バッテリ9の放電性能が不十分となる場合として強電バッテリ9の充電状態SOC1が下限値SOC1未満となる場合を挙げて説明したが、強電バッテリ9の放電性能が不十分となる場合として外気温度が低い低温時がある。従って、第4実施形態を低温時に適用することもできる。つまり、エンジン水温が予め定めた所定値以下となる低温時に、キャパシタ45からスタータモータ31に供給する電力を増やすのである。これによって、共振周波数帯を通過するときに発生する騒音や振動をより小さくすることができると共に、強電バッテリ9の放電性能が不十分となる低温時においても、エンジン回転速度を目標エンジン起動時間が経過するタイミングで目標エンジン起動回転速度に到達させることができる。
(第5、第6の実施形態)
図24、図25は第5、第6の実施形態のエンジン始動時のエンジン回転速度、エンジン起動トルクの変化を示すタイミングチャートで、第1実施形態の図4と置き換わるものである。ここで、従来の起動方法を図24中段、図25中段に一点鎖線で、第5実施形態の起動方法を図24下段に実線で、第6実施形態の起動方法を図25下段に実線で示している。
第1、第2の実施形態は、スタータモータ31からエンジン1へのトルク供給をエンジン回転速度Neが共振周波数帯に入る前に開始し、共振周波数帯を脱した後にスタータモータ31からのトルク供給を終了させるものであった。一方、第5実施形態は、図24下段に実線で示したようにスタータモータ31からのトルク供給をエンジン回転速度Neが共振周波数帯にあるときに(例えばt7のタイミングで)開始し、共振周波数帯を脱した後に(例えばt8のタイミングで)スタータモータ31からのトルク供給を終了させるするものである。第5実施形態は、図25下段に実線で示したようにスタータモータ31からのトルク供給をエンジン回転速度Neが共振周波数帯に入る前に(例えばt10のタイミングで)開始し、エンジン回転速度Neが共振周波数帯にあるときに(例えばt11のタイミングで)スタータモータ31からのトルク供給を終了させるものである。図示しないが、スタータモータ31からのトルク供給をエンジン回転速度Neが共振周波数帯にあるときに開始し、エンジン回転速度Neが共振周波数帯にあるときにスタータモータ31からのトルク供給を終了させるようにしてもかまわない。要は、エンジン回転速度Neが駆動系の共振周波数帯の全部または一部を急速に横切るようにするわけである。
第5、第6の実施形態によっても第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
第2、第3、第4の実施形態では、キャパシタ45の充電状態SOC2や強電バッテリ9の充電状態SOC1をSOCセンサ51、16により検出する場合で説明したが、これに限られるものでない。SOCセンサ51、16を設けることなく、キャパシタ45の充電状態SOC2や強電バッテリ9の充電状態SOC1を推定するようにしてもかまわない。
ハイブリッド車両ではないエンジンのみを駆動源とする従来車両においても、本発明の適用が可能である。例えば、スタータモータを有するマグネチック式やリダクションギヤ式のスタータ(第1のスタータ)に加えて、ベルト駆動のモータジェネレータを第2のスタータとして備えさせ、アイドリング時や車両減速時にエンジンを停止させる、いわゆるアイドルストップを行う従来車両がある。この従来車両では、アイドルストップを行う際には第2のスタータを専ら用いると共に、極低温時に限って第1のスタータでエンジンを始動するようにしている。この従来車両においては、第2のスタータを用いるアイドルストップからのエンジン再始動時に本発明を適用することができる。すなわち、エンジン再始動時において目標エンジン起動回転速度よりも低い位置にある共振周波数帯をエンジン回転速度が横切って上昇する際に、キャパシタからの電力で第1のスタータの有するスタータモータを駆動することで、エンジン回転速度が共振周波数帯を通過する時間を短縮できると共に、エンジン再始動時間を短縮できる。また、再始動可能車速を高車速側に拡大できることから、そのぶん燃費が向上する。