JP5727740B2 - バッキングプレートの製造方法 - Google Patents

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本発明は、スパッタリングターゲットを保持するためのバッキングプレートの製造方法に関する。
従来から、基板上への薄膜形成技術としてスパッタリング法が知られている。このスパッタリング法では、真空容器内に導入されたアルゴン等の希ガス元素がプラズマ化し、このプラズマ化された希ガス元素がスパッタリングターゲット(以下、単に、ターゲットともいう)に衝突することによって、スパッタ粒子がターゲットから飛び出し、これが基板上に堆積して薄膜が形成される。
このようなスパッタリング法においては、ターゲットから飛び出したスパッタ粒子が、基板上のみならず、ターゲットのスパッタ効率が低い部分、いわゆる非エロージョン領域や、ターゲットを保持するバッキングプレート、又は、真空容器内の各部にも堆積し、膜が形成される。この堆積膜は、部分的に剥離し、微粒子や粗大粒子を含む不要な粒子のパーティクルとなり、基板上の薄膜内に異物として混入し、薄膜の品質低下を招くことがある。特に、近年、基板上に形成される薄膜の配線パターンの微細化が進むにつれて、薄膜内へのパーティクルの混入は、少量であっても問題となっている。
このような問題に対しては、例えば、特許文献1,2に、ターゲットの表面又はバッキングプレートの表面をブラスト処理により粗面化することが提案されており、スパッタリングの際、このブラスト処理を施した部分が、上記のようなパーティクルをトラップし、基板上に飛散させることを防止することができることが記載されている。
しかしながら、特許文献1,2に記載されているようなブラスト処理により粗面化した場合、ブラスト材がブラスト処理部に突き刺さって残留し、この残留ブラスト材上への堆積膜が、容易に剥離し、突発的なパーティクルを生じるという問題を生じていた。
また、スパッタリングの際、残留ブラスト材自体も脱落して基板上に飛散し、ブラスト材によって基板が汚染されるという問題も生じていた。特に、基板表面において、ブラスト材に含まれるNaを始めとするアルカリ金属の濃度が高くなる傾向があり、高純度であることが要求される半導体基板の薄膜の形成には好ましくない事態を招いていた。
しかしながら、上記のように突き刺さった状態の残留ブラスト材は、単純な洗浄では、ブラスト処理部から取り除くことは困難である。
これに対しては、例えば、特許文献3に、上記のようなブラスト処理部を、超音波洗浄、エッチング処理、超音波洗浄の順に3段階で洗浄することにより、突き刺さったブラスト材の除去が可能となり、突発的なパーティクルの発生を減少させることができることが記載されている。
また、特許文献4には、ターゲットの処理基板面側(表面)をエロージョン部分のみとなるように、ターゲット外周部にサンドブラストやアルミ溶射により粗面化した防着板を設けて、処理基板にパーティクルが付着することを防止することが記載されている。
さらに、特許文献5には、ターゲットやバッキングプレートに、90°未満の俯角を有する傾斜した多数の突起からなる放電加工痕を形成し、さらに、化学的エッチング処理を施して、不要な膜が堆積する面を粗化することにより、パーティクルの発生を少なくすることが記載されている。
特開平4−301074号公報 特開平10−30174号公報 特開2009−191324号公報 特開2007−107024号公報 特開2008−285754号公報
しかしながら、上記特許文献3に記載されたような3段階洗浄を行う方法では、ブラスト処理部に突き刺さっているブラスト材を除去するために、このブラスト材のみをエッチングすることは困難であり、ブラスト材が残る可能性があり、上述したように、スパッタリングの際、ブラスト材に起因する基板表面の汚染を十分に防止することは困難であった。また、ブラスト材を完全に除去しようとすると、本来エッチングが不要なバッキングプレートもエッチングされ、必要以上のエッチング処理を行うこととなる。
また、上記特許文献4に記載されたような方法では、ターゲットを別途、加工装置により加工しなければならない。しかも、この方法は、ターゲットの形状や材質によっては、所望の形状に加工することが困難であり、適用することができない場合がある。
さらに、上記特許文献5に記載の方法は、ターゲットやバッキングプレートの粗面化に放電加工を利用するものであるが、一般に、放電加工は、他の加工方法に比べて加工時間が長く、コストも高くなるという課題を有している。
以上のような事情に鑑み、スパッタリング法により基板上に形成される薄膜の品質及び製造効率の向上を図るために、スパッタリングの際、バッキングプレート等から、上述したような突発的なパーティクルの発生及び金属不純物汚染を効果的かつ簡便に低減させることができる方法が求められていた。
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、スパッタリングの際のパーティクルの発生を効果的に低減し、かつ、Naを始めとするアルカリ金属不純物による汚染防止を図ることができるバッキングプレートを簡便に得られるバッキングプレートの製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明に係るバッキングプレートの製造方法は、スパッタリングターゲットを保持する単一金属又は合金からなるバッキングプレートを製造する方法において、前記バッキングプレート表面の前記スパッタリングターゲットが接合される領域以外の少なくとも一部を、レーザ加工により凹凸を形成して粗面化する工程を備えていることを特徴とする。
このように、ブラスト処理に代えて、レーザでバッキングプレート表面に凹凸を形成することにより、スパッタリングの際の突発的なパーティクルの発生を低減させることができ、また、ブラスト材に起因する不純物金属汚染を防止することができる。
前記製造方法における粗面化工程においては、表面粗さRaが0.3μm以上50μm以下の凹凸を形成することが好ましい。
レーザ加工により形成する凹凸をこのような表面粗さとすることにより、上述したパーティクルの発生をより効果的に低減させることができる。
本発明に係る製造方法によれば、スパッタリングの際のパーティクルの発生を効果的に低減し、かつ、Naを始めとするアルカリ金属不純物による汚染防止を図ることができるバッキングプレートを簡便に得ることができる。
したがって、本発明に係る製造方法により得られたバッキングプレートを用いることにより、スパッタリング法により基板上に形成される薄膜の品質及び製造効率の向上を図ることができる。
ターゲット及びバッキングプレートを模式的に示した断面図である。
以下、本発明について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に、ターゲットを保持するバッキングプレートの断面図を示す。図1は、バッキングプレート1にターゲット2が接合されている状態を示したものである。
この接合は、ターゲット及びバッキングプレートの材質により異なるが、一般に用いられている方法で行うことができ、ロウ付け、接着剤等による接着、拡散接合等の方法が挙げられる。
なお、バッキングプレート1及びターゲット2は、同一材料でもよく、この場合には、両者は、別部材として形成されたものを接合しても、あるいはまた、一体的に形成されていてもよい。
本発明においては、バッキングプレート1表面のターゲット2が接合される領域以外の少なくとも一部、すなわち、バッキングプレート1の表面のターゲット2が接合される領域以外の部分(以下、外周部という)1a及び側周面1bのうちの少なくとも一部を、レーザ加工により凹凸を形成して粗面化する。
レーザ加工による粗面化処理を施す領域は、バッキングプレートの形態や使用態様、スパッタリングの目的等に応じて適宜変更可能であり、外周部1a及び側周面1bのいずれかの一部であってもよいが、全体であることがより好ましい。
このように、スパッタリングの際に被処理基板に対して露出している面に粗面化処理を施すことにより、これらの露出面に形成された堆積膜の剥離を防止することができ、突発的なパーティクルの発生を低減させることができる。
前記バッキングプレートの材質は、特に限定されるものではなく、一般的に用いられているものでよく、単一金属又は合金が好適に用いられ、例えば、銅、チタン、アルミニウム、又はこれらの金属を主成分とする合金、ステンレス鋼等が挙げられる。
また、バッキングプレートの形状も、特に限定されるものではなく、使用するスパッタ装置の態様等に応じて適宜定めることができ、通常は平板状であり、円板状に限られず、矩形板状又はその他の形状であってもよい。
なお、スパッタリングターゲットの材質は、スパッタにより基板上に形成させる薄膜の材料であり、単一金属もしくは合金、又はこれらの酸化物もしくは窒化物等のセラミックスが一般的に用いられる。
また、スパッタリングターゲットの形状は、バッキングプレート同様に、通常は平板状であり、バッキングプレートよりもサイズが小さい。
本発明に係る製造方法において、例えば、バッキングプレート1の表面の外周部1a及び側周面1b全体に粗面化処理を施す場合は、当該部分にのみレーザ加工によって凹凸を形成して粗面化すればよい。
ブラスト処理の場合は、バッキングプレート1の表面のターゲット2が接合される領域及び裏面1cを保護領域としてマスキングする必要があるのに対して、レーザ加工は、所望の部分にのみ局所的な加工が可能であるため、このようなマスキングをする必要はない。すなわち、レーザ加工によれば、マスキング工程を省略することができ、バッキングプレートの製造工程の簡素化を図ることができるという利点も有している。
なお、バッキングプレート1とターゲット2とが一体的に形成されている場合も、レーザ加工によれば、ブラスト処理とは異なり、バッキングプレート1の裏面1c、ターゲット2の表面2a及び側周面2bにマスキングする必要はない。
前記レーザ加工において用いられるレーザ媒質としては、例えば、Nd:YAGやNd:YVO4等を利用することが好ましい。
また、レーザ出力は、レーザ媒質や発振形態により異なるが、例えば、Nd:YAGレーザで連続波の場合は3〜6kW、パルス波の場合は0.3〜3kWであることが好ましい。また、Nd:YVO4レーザでパルス波の場合は20〜200Wであることが好ましい。
従来のブラスト処理に代えて、このようなレーザによりバッキングプレート表面に凹凸を形成する加工を施すことにより、スパッタリングの際、上述したようなブラスト処理部に突き刺さった残留ブラスト材による突発的なパーティクルの発生が起きることがない。また、前記残留ブラスト材を除去するための複数工程の洗浄処理等を経る必要がなく、粗面化処理の簡便化を図ることができる。
上記のようなレーザ加工による粗面化処理においては、バッキングプレートに形成された凹凸は、表面粗さRaが0.3μm以上50μm以下であることが好ましい。
前記表面粗さRaが0.3μm未満では、凹凸がほとんど認められず、スパッタリングの際、粗面化処理を施した面上に形成された堆積膜の剥離を防止する効果が十分に得られない。
一方、前記表面粗さRaが50μmを超える場合、凹凸が大きすぎ、この場合にも、スパッタリングの際、粗面化処理を施した部分に形成された堆積膜の剥離を十分に防止することが困難となる。
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
[実施例1]
図1に示すような銅からなるバッキングプレート1の表面1a及び側周面1bに、レーザ加工により表面に凹凸を形成し、粗面化処理したバッキングプレートを作製した。レーザ媒質としては、発振波長1064nmのNd:YAGレーザを用い、出力2kWのパルス波とした。
前記粗面化処理を施したバッキングプレート表面1a及び側周面1bについて、粗さ測定器により表面粗さRaを測定した。その結果を表1に示す。
上記により得られたバッキングプレートに、純度5Nのチタンからなるスパッタリングターゲットをインジウムにより接合させ、これを用いて、スパッタリングを行った。
スパッタリングにおいては、基板として直径200mmシリコンウェーハを用い、アルゴンガス雰囲気下で、シリコンウェーハ上に膜厚50nmのチタン薄膜を形成した。
前記シリコンウェーハ上に形成された薄膜表面について、パーティクルカウンタにより粒径0.2μm以上のパーティクルをカウントし、また、ICP−MS分析装置によりNa濃度を分析した。これらの結果を表1に示す。
[実施例2〜4]
実施例1において、表面粗さRaを表1に示すような値となるように粗面化処理を行い、それ以外については、実施例1と同様にして、バッキングプレートを作製した。
また、このバッキングプレートを用いて、実施例1と同様にして、スパッタリングを行い、パーティクルのカウントを行った。これらの結果を表1に示す。
[比較例1]
まず、図1に示すような銅からなるバッキングプレート1の表面1aのスパッタリングターゲット2が接合される領域及び裏面1cをマスキングした。
次に、表面1a及び側周面1bをブラスト処理により表面に凹凸を形成し、粗面化処理したバッキングプレートを作製した。ブラスト材としては、粒径40〜160μmのシリカ粉を用いた。
前記粗面化処理を施したバッキングプレート表面1a及び側周面1bについて、粗さ測定器により表面粗さRaを測定した。その結果を表1に示す。
また、このバッキングプレートを用いて、実施例1と同様にして、スパッタリングを行い、パーティクルのカウント及びNa濃度分析を行った。これらの結果を表1に示す。
[比較例2]
図1に示すような銅からなるバッキングプレート1をそのままの状態で用いて、実施例1と同様にして、スパッタリングを行い、パーティクルのカウント及びNa濃度分析を行った。これらの結果を表1に示す。
Figure 0005727740
上記表1に示したとおり、レーザ加工により粗面化処理したバッキングプレート(実施例1〜4)は、ブラスト処理したもの(比較例1)及び未処理のもの(比較例2)に比べて、該バッキングプレートを用いてスパッタリングを行った際、基板上に形成した薄膜に混入するパーティクル数が低減しており、かつ、基板表面のNa濃度も低減していることが認められた。なお、Na濃度は、未処理のもの(比較例2)についても、検出限界以下であったことから、ブラスト材に起因する不純物であると認められる。
特に、表面粗さRaを0.3μm以上50μm以下とした場合(実施例1,2)に、前記パーティクルの発生をより低減させることができることが認められた。
1 バッキングプレート
2 スパッタリングターゲット

Claims (2)

  1. スパッタリングターゲットを保持する単一金属又は合金からなるバッキングプレートを製造する方法において、前記バッキングプレート表面の前記スパッタリングターゲットが接合される領域以外の少なくとも一部を、レーザ加工により凹凸を形成して粗面化する工程を備えていることを特徴とするバッキングプレートの製造方法。
  2. 前記粗面化工程において、表面粗さRaが0.3μm以上50μm以下の凹凸を形成することを特徴とする請求項1記載のバッキングプレートの製造方法。
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