JP5727735B2 - 芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法および芳香族ビニル化合物重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
メタロセン触媒においては、環状配位子の選択や置換基の導入等により、重合時におけるモノマーと伸長中の重合鎖との位置関係を制御することができ、当該触媒を用いることで特定の立体規則性(アイソタクチック性やシンジオタクチック性等)を有する重合体を製造することができる。
また、メタロセン錯体中の中心金属に関しては、従来はチタン、ジルコニウム、ハフニウム等の4族遷移金属がよく用いられていたが、近年、スカンジウム、イットリウム、ランタン等の3族遷移金属やランタノイド金属を用いるメタロセン錯体を用いた重合反応が報告されている。
例えば、特許文献1は、スカンジウム、イットリウム、ランタン又はランダニド金属を利用するハーフメタロセン錯体や、当該錯体を用いて極性若しくは非極性オレフィン性不飽和モノマー又はラクトンを(共)重合させて(共)重合体を製造する方法を開示する。
シンジオタクチックポリマーを製造する際の触媒に関しても、4族遷移金属以外の金属を利用するメタロセン触媒についての報告があり、例えば、特許文献2は、第3族金属原子またはランタノイド金属原子を含むハーフメタロセン錯体を含む重合触媒組成物およびそれを用いて得られるシンジオタクチシティーが高い重合体を開示する。
例えば、特許文献1の課題として、種々のモノマーを配位重合して均質で高純度の生成物を工業的規模で得ることができる安定な金属錯体を見出すことが挙げられているが、特許文献1には工業的規模で行う際の特有の問題について記載がなく、また実施例で開示する態様は実験室規模で実施したものである。したがって、工業的規模で実施した際に初めて生じる問題に対しては、特許文献1に記載の技術は十分ではない。
また、特許文献2には、重合活性やオレフィンやジエンとの共重合性に優れる触媒や、当該触媒により得られる分子量分布が狭く、高いシンジオタクチシティーを有する重合体が記載されているが、特許文献2が実施例で開示する態様も実験室規模で実施したものであり、工業的規模で実施する場合においても同様の結果を得るためにはさらなる技術開発が必要である。
すなわち本発明は、
1.以下の工程Aおよび工程Bを含む、芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法、
工程A:周期律表第3族またはランタノイド系列の遷移金属を含むハーフメタロセン錯体、前記ハーフメタロセン錯体に対するモル比が20〜500となる量の有機アルミニウム化合物、および非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物を用いてイオン性錯体を形成する工程
工程B:前記工程Aで形成されたイオン性錯体と芳香族ビニル化合物を接触させる工程
2. 不活性溶媒の存在下で、前記工程Aおよび工程Bを行う前記1に記載の芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法、
3. 不活性溶媒に、前記ハーフメタロセン錯体、前記有機アルミニウム化合物、および前記イオン性化合物を添加して前記工程Aおよび工程Bを行う前記2に記載の芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法、
4. 不活性溶媒に、前記有機アルミニウム化合物、前記ハーフメタロセン錯体、前記イオン性化合物をこの順で添加して前記工程Aおよび工程Bを行う前記2または3に記載の芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法、
5. 前記不活性溶媒が、芳香族炭化水素溶媒または脂肪族炭化水素溶媒である前記2〜4のいずれかに記載の芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法、
6. 前記工程Bで用いる芳香族ビニル化合物の添加が、前記工程Aの途中及び/または終了後である前記2〜5のいずれかに記載の芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法、
7. 前記工程Bで用いる芳香族ビニル化合物の存在下で、前記工程Aおよび工程Bを行う前記1に記載の芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法、
8. 前記工程Bで用いる芳香族ビニル化合物に、前記有機アルミニウム化合物、前記ハーフメタロセン錯体および前記イオン性化合物をこの順で添加して前記工程Aおよび工程Bを行う前記7に記載の芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法、
9. 前記ハーフメタロセン錯体が、以下の式(I)で表される錯体である前記1〜8のいずれかに記載の芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法、
RMXa-1Yb (I)
[式(I)中、Rは少なくとも一つが飽和環である縮合多環式シクロペンタジエニルπ配位子を示し、Mは周期律表第3族またはランタノイド系列の遷移金属を示し、Xはσ配位子を示し、Yはルイス塩基を示す。aはMの価数、bは0、1または2を示す。]
10. 前記有機アルミニウム化合物が、以下の式(VI)で表される前記1〜9のいずれかに記載の芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法、
R’R’’R’’’Al (VI)
[式(VI)中、R’、R’’およびR’’’はそれぞれ独立に炭素数3〜5のアルキル基を示す。]
11. 前記イオン性化合物が、置換又は無置換のトリアリールカルベニウムまたは置換又は無置換のアニリニウムから選ばれるカチオンと以下の式(VII)で表される非配位性アニオンからなるイオン性化合物である前記1〜10のいずれかに記載の芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法、
(BZ1Z2Z3Z4)- (VII)
[式(VII)中、Z1〜Z4は、それぞれ水素原子、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基(ハロゲン置換アリール基を含む)、アルキルアリール基、アリールアルキル基、置換アルキル基及び有機メタロイド基又はハロゲン原子を示す。]
12. 前記1〜11のいずれかに記載の方法で調製された芳香族ビニル化合物の重合用触媒を用いて、芳香族ビニル化合物を重合して、芳香族ビニル化合物から構成される繰り返し単位連鎖の立体規則性[rrrr]が80モル%以上である芳香族ビニル化合物重合体を製造する方法、
13. 前記1〜11のいずれかに記載の方法で調製された芳香族ビニル化合物の重合用触媒を用いて、芳香族ビニル化合物およびオレフィン系モノマーを重合して、芳香族ビニル化合物から構成される繰り返し単位連鎖の立体規則性[rrrr]が80モル%以上である芳香族ビニル化合物重合体を製造する方法
を提供するものである。
工程A:周期律表第3族またはランタノイド系列の遷移金属を含むハーフメタロセン錯体、前記ハーフメタロセン錯体に対するモル比が20〜500となる量の有機アルミニウム化合物、および非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物を用いてイオン性錯体を形成する工程
工程B:前記工程Aで形成されたイオン性錯体と芳香族ビニル化合物を接触させる工程
本発明においては、前記ハーフメタロセン錯体に対するモル比が20〜500となる量の前記有機アルミニウム化合物が用いられる。当該モル比が20未満のときは、触媒を保存した後の重合反応において重合活性が低下しやすくなる。また、経済的な理由で当該モル比は500以下が好ましい。当該観点から、当該モル比は好ましくは50〜400であり、より好ましくは100〜300である。
本発明においては、好ましくは、前記ハーフメタロセン錯体に対するモル比が0.5〜3.0となる量の前記イオン性化合物が用いられる。当該モル比が0.5以上のときは、高い重合活性が得られる。また、経済的な理由で当該モル比は3.0以下が好ましい。当該観点から、当該モル比は好ましくは0.5〜2.5であり、より好ましくは0.5〜2.0である。
本発明においては、好ましくは、工程Aで用いられたハーフメタロセン錯体に対するモル比が0.5〜500となる量の前記芳香族ビニル化合物が用いられる。当該モル比が0.5以上のときは、触媒を保存した後の重合反応においても十分に高い重合活性が得られる。また、過剰量の芳香族ビニル化合物を使用すると触媒保存中に重合反応が進行して生成物が析出する場合があるが、当該モル比が500以下であることでこの析出を抑えることができ、悪影響を与えることなく反応器に触媒を投入することができる。当該観点から、当該モル比は好ましくは1〜200であり、より好ましくは1〜50である。
芳香族ビニル化合物の添加が工程Aの途中である場合(すなわち、芳香族ビニル化合物の添加時期が、前記ハーフメタロセン錯体、前記有機アルミニウム化合物、および前記イオン性化合物を添加し、工程Aの反応が完了するまでの間である場合)は、工程Aの反応が進行する一方で、すでに形成したイオン性錯体と芳香族ビニル化合物が接触して工程Bが進行する。したがって、この場合は工程Aと工程Bの反応が同時に進む態様に該当する。
また、芳香族ビニル化合物の添加が工程Aの終了後である場合は、工程Aの反応と工程Bの反応が同時に起こることがないため、工程Aと工程Bが明確に分けられた態様に該当する。
したがって、芳香族ビニル化合物を含めた添加方法としては、例えば、前記有機アルミニウム化合物、前記芳香族ビニル化合物、前記ハーフメタロセン錯体、前記イオン性化合物の順に添加する方法や、前記有機アルミニウム化合物、前記ハーフメタロセン錯体、前記イオン性化合物、前記芳香族ビニル化合物の順に添加する方法や、前記有機アルミニウム化合物、前記ハーフメタロセン錯体、前記芳香族ビニル化合物、前記イオン性化合物の順に添加する方法等が挙げられる。
さらに、本発明の芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法においては、芳香族ビニル化合物の添加を工程Aの途中と終了後の両方で行ってもよい。
触媒を保存する際の温度に関しては特に制限はない。例えば−40〜60℃が挙げられ、−20〜30℃が好ましく、0〜30℃がより好ましい。
触媒を保存する際は、窒素ガス等の不活性ガスの存在下で保存することが好ましい。
前記ハーフメタロセン錯体としては、例えば、以下の式(I)で表される遷移金属化合物が挙げられる。
RMXa-1Yb (I)
式(I)において、Rは少なくとも一つが飽和環である縮合多環式シクロペンタジエニルπ配位子を示し、Mは周期律表第3族またはランタノイド系列の遷移金属を示す。Xはσ配位子を示し、Xが複数ある場合には複数のXは同じでも異なっていてもよく、また、互いに任意の基を介して結合していてもよい。Yはルイス塩基を示し、Xと架橋していてもよい。aはMの価数、bは0、1または2を示す。
式(I)中のRは、以下の式(II)、(III)および(IV)で表されるいずれかの縮合多環式シクロペンタジエニルπ配位子であることが好ましい。
R’R’’R’’’Al (VI)
式(VI)中、R’、R’’およびR’’’はそれぞれ独立に炭素数3〜5のアルキル基を示す。アルキル基の炭素数が3〜5の範囲であれば十分な重合活性が得られるため好ましい。炭素数3〜5のアルキル基としては、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基が挙げられる。
本発明においては、前記有機アルミニウム化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
(BZ1Z2Z3Z4)- (VII)
式(VII)中、Z1〜Z4は、それぞれ水素原子、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基(ハロゲン置換アリール基を含む)、アルキルアリール基、アリールアルキル基、置換アルキル基及び有機メタロイド基又はハロゲン原子を示す。
〔CR47R48R49〕+ (VIII)
式(VIII)中、R47、R48及びR49は、それぞれフェニル基,置換フェニル基,ナフチル基及びアントラセニル基等のアリール基であって、それらは互いに同一であっても、異なっていてもよい。
C6H5-kR50 k (IX)
式(IX)中、R50は、炭素数1〜10のヒドロカルビル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、チオアルコキシ基、チオアリーロキシ基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基及びハロゲン原子を示し、kは1〜5の整数である。kが2以上の場合、複数のR50は同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、置換又は無置換のアニリニウムの具体例としては例えば、N,N−ジメチルアニリニウムが挙げられる。
本発明において、前記イオン性化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
本発明の芳香族ビニル化合物重合体の製造方法においては、前記方法で製造された触媒を用いて重合反応を行い、芳香族ビニル化合物重合体を製造する。なお、本明細書において「芳香族ビニル化合物重合体」とは、芳香族ビニル化合物単量体単位が1モル%以上である重合体をいい、具体的には、1種の芳香族ビニル化合物からなる単独重合体、2種以上の芳香族ビニル化合物からなる共重合体、芳香族ビニル化合物とその他の単量体(オレフィン系モノマー)からなる共重合体を含むものである。
本発明の芳香族ビニル化合物重合体の製造方法においては、前記芳香族ビニル化合物とオレフィン系モノマーを組み合わせて共重合をしてもよい。
前記オレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、α−オレフィン、ジエン、環状オレフィン、環状ジエン等が挙げられる。
α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、4−フェニル−1−ブテン、6−フェニル−1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、5−メチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン等が挙げられる。
ジエンとしては、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、イソプレン等が挙げられる。
環状オレフィンとしては、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン等が挙げられる。環状ジエンとしては、シクロペンタジエン等が挙げられる。
また、前記以外のオレフィン系モノマーとしては、ビニルシクロヘキサン、ヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレン、2−フルオロプロペン、フルオロエチレン、1,1−ジフルオロエチレン、3−フルオロプロペン、トリフルオロエチレン、3,4−ジクロロ−1−ブテン、アセチレン等が挙げられる。
前記の中で、エチレン、プロピレン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
立体規則性〔rrrr〕とは、芳香族ビニル化合物重合体中のペンタッド(五連鎖)単位でのラセミ分率(モル%)であり、立体規則性分布を表す指標である。この立体規則性〔rrrr〕は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠し、13C−NMRスペクトルの測定によって算出することができる。具体的には、共重合体中のスチレン連鎖のフェニルC1炭素領域(146.3ppm〜144.5ppm)のうち、ノイズ(サテライトピークやスピニングサイドバンド)を除いたピークの分率で表される。
分子量分布は、ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)から与えられる。GPCの測定は、例えば、GPCカラムShodex UT806L(GLサイエンス社製)を用いて、温度145℃、溶媒1,2,4−トリクロロベンゼン、流速1.0ml/min.の条件で行うことができる。
また、本発明の芳香族ビニル化合物重合体の重量平均分子量は特に限定されないが、耐衝撃性の観点から、ポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、10,000〜3,000,000、好ましくは50,000〜900,000の範囲である。
また、重量平均分子量は、分子量の指標である極限粘度[η]を測定することにより求めることができる。実施例において、極限粘度[η]は、(株)離合社製粘度計(VMR−053U−PC・F01)、ウベローデ型粘度管(測時球容積:2〜3ml、毛細管直径:0.44〜0.48mm)、溶媒として1,2,4−トリクロルベンゼンを用いて、0.02〜0.16g/dLの溶液を145℃にて測定した。本発明の芳香族ビニル化合物重合体を極限粘度[η]で表すと、通常、0.1〜16dl/g(重量平均分子量で10,000〜3,000,000)、好ましくは0.2〜5.0dl/g(重量平均分子量で50,000〜900,000)の範囲である。
N,N−ジメチル‐o‐トルイジン(18ml、0.12mmol)のヘキサン(50ml)−ジエチルエーテル(16ml)溶液にn−BuLiのヘキサン溶液(2.6mol/L,50ml)を25分かけて滴下した。45時間撹拌した後、ろ過により沈殿をろ別した。得られた固体をヘキサンにより洗浄(40ml×3回)した後に、減圧乾燥してジメチルアミノベンジルリチウムを13g(収率77%)得た。
無水ScCl3(1.0g,6.6mmol)のテトラヒドロフラン(THF)懸濁液(10ml)を室温で1時間撹拌し、ここへ製造例1で合成したジメチルアミノベンジルリチウム(2.8g,20mmol)のTHF溶液を滴下し、12時間撹拌した。溶媒を留去した後にトルエンで抽出し、さらに再結晶により精製し、トリス(ジメチルアミノベンジル)スカンジウムを淡黄色の結晶として得た。収率は80%であった。
フルオレン(30g,0.18mol)をエチレンジアミン175ml−THF175mlの混合溶液に溶解させた。この溶液に、0℃で金属リチウム(5.6g,0.812mol)を50分間かけて投入した。反応終了後、水を添加し、ジエチルエーテルにより抽出後、塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。ジエチルエーテル層に硫酸マグネシウムを入れ、冷蔵庫にて一晩乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ別し、ジエチルエーテル留去することによって、オレンジ色の目的物(1,2,3,4−テトラヒドロフルオレン)を得た。収率は90%であった。
製造例2で得られた(1,2,3,4−テトラヒドロ−1−フルオレニル)ビス(N,N−ジメチルアミノベンジル)スカンジウム(2.0g,4.5mmol)のTHF溶液10mlに、製造例3で得られた1,2,3,4−テトラヒドロフルオレン(0.92g,5.4mmol)のTHF溶液10mlをいれ、70℃で12時間攪拌した。反応終了後、溶媒を除去し、ヘキサン50mlで3回洗浄後、トルエンで抽出し、さらに再結晶により精製し、(1,2,3,4−テトラヒドロ−1−フルオレニル)ビス(N,N−ジメチルアミノベンジル)スカンジウムを淡黄色の結晶として得た。収率は22%であった。
〔触媒の調製工程および保存工程〕
パイロット装置のジャケット付き触媒調合槽(50L)の温度を25℃に設定し、この触媒調合槽にエチルベンゼン12.7Lを入れた。その後、トリノルマルブチルアルミニウムを5.2mol、スチレンモノマーを0.13mol、製造例4で得られたスカンジウム錯体を0.026mol、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートを0.031molをこの順に加えた。
その後、20℃で20時間そのまま保存した。
〔重合活性の評価〕
加熱乾燥した30mLのワインボトル型バイアル瓶に、窒素雰囲気下、室温でスチレン5mL、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)0.79μmolを加え、インナーキャップ及びアルミシールにより封印した。このワインボトル型バイアル瓶を60℃のウオーターバスに入れた。このバイアル瓶に前記方法で保存した触媒を加え、重合反応を行った。60分後に反応系にメタノールを加え、攪拌後にろ別し、得られたポリマーを200℃、3時間で乾燥した。重合活性は、実施例9の重合結果を基準とする相対活性として表した。
触媒調製工程に関して、第1表−1、第1表−2に記載の条件に変えた他は実施例1に記載の方法で、触媒2〜14を調製した。さらに、第2表−1、第2表−2に記載の保存条件に変えた他は実施例1と同様にして触媒を保存し、その重合活性の評価を行った。
実施例においてはいずれも高い重合活性を示しているが、芳香族ビニル化合物を触媒調製時に用いない比較例1〜4や有機アルミニウム化合物の量が少ない比較例5においては重合活性が大きく劣っており、保存中に失活していることが考えられる。
Claims (11)
- 以下の工程Aおよび工程Bを含む、芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法。
工程A:下記式(I)で表される遷移金属化合物であるハーフメタロセン錯体、前記ハーフメタロセン錯体に対するモル比が20〜500となる量の有機アルミニウム化合物、および前記ハーフメタロセン錯体に対するモル比が0.5〜3.0となる量の、下記式(VII)で表される非配位性アニオンと置換若しくは無置換のトリアリールカルベニウムまたは置換若しくは無置換のアニリニウムから選ばれるカチオンからなるイオン性化合物を用いてイオン性錯体を形成する工程
工程B:前記工程Aで形成されたイオン性錯体と前記ハーフメタロセン錯体に対するモル比が0.5〜500となる量の芳香族ビニル化合物を接触させる工程
RMXa−1Yb (I)
[式(I)において、Rは下記式(V)で表される縮合多環式シクロペンタジエニルπ配位子を示し、Mは周期律表第3族またはランタノイド系列の遷移金属を示し、Xはσ配位子を示し、Yはルイス塩基を示す。aはMの価数、bは0、1または2を示す。]
(BZ1Z2Z3Z4)− (VII)
[式(VII)中、Z1〜Z4は、それぞれ、水素原子、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基(ハロゲン置換アリール基を含む)、アルキルアリール基、アリールアルキル基、置換アルキル基、有機メタロイド基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる。] - 不活性溶媒の存在下で、前記工程Aおよび工程Bを行う請求項1に記載の芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法。
- 不活性溶媒に、前記ハーフメタロセン錯体、前記有機アルミニウム化合物、および前記イオン性化合物を添加して前記工程Aおよび工程Bを行う請求項2に記載の芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法。
- 不活性溶媒に、前記有機アルミニウム化合物、前記ハーフメタロセン錯体、前記イオン性化合物をこの順で添加して前記工程Aおよび工程Bを行う請求項2または3に記載の芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法。
- 前記不活性溶媒が、芳香族炭化水素溶媒または脂肪族炭化水素溶媒である請求項2〜4のいずれかに記載の芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法。
- 前記工程Bで用いる芳香族ビニル化合物の添加が、前記工程Aの途中及び/または終了後である請求項2〜5のいずれかに記載の芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法。
- 前記工程Bで用いる芳香族ビニル化合物の存在下で、前記工程Aおよび工程Bを行う請求項1に記載の芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法。
- 前記工程Bで用いる芳香族ビニル化合物に、前記有機アルミニウム化合物、前記ハーフメタロセン錯体および前記イオン性化合物をこの順で添加して前記工程Aおよび工程Bを行う請求項7に記載の芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法。
- 前記有機アルミニウム化合物が、以下の式(VI)で表される請求項1〜8のいずれかに記載の芳香族ビニル化合物の重合用触媒の調製方法。
R’R’’R’’’Al (VI)
[式(VI)中、R’、R’’およびR’’’はそれぞれ独立に炭素数3〜5のアルキル基を示す。] - 請求項1〜9のいずれかに記載の方法で調製された芳香族ビニル化合物の重合用触媒を用いて、芳香族ビニル化合物を重合して、芳香族ビニル化合物から構成される繰り返し単位連鎖の立体規則性[rrrr]が80モル%以上である芳香族ビニル化合物重合体を製造する方法。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の方法で調製された芳香族ビニル化合物の重合用触媒を用いて、芳香族ビニル化合物およびオレフィン系モノマーを重合して、芳香族ビニル化合物から構成される繰り返し単位連鎖の立体規則性[rrrr]が80モル%以上である芳香族ビニル化合物重合体を製造する方法。
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