払い出し硬貨検知センサによる硬貨の有無の確認を行うためには、払い出し手段を動作させる必要があるが、単に、払い出し手段を動作させた場合には、払い出し手段の動作回数が増加してしまう。このため、本発明に係る硬貨処理装置では、特許文献1に記載された技術と同様に、硬貨処理装置が電源投入時に各部の動作確認等のために行う初期動作の際に、払い出し硬貨検知センサで硬貨の有無を検知するとともに、釣銭の払い出しを行った際に、払い出し対象ではなかった硬貨の有無を検知するようにしている。これは、払い出し手段が動作するものの、払い出し硬貨検知センサによる硬貨の検知を行わなかったとしても、払い出し手段は動作するため、払い出し手段の動作の増加とはならない。
同様に、本発明に係る硬貨処理装置は、硬貨立ちを解消するために払い出し手段を動作させた際にも、払い出し硬貨検知センサによる硬貨の検知を行う。これも、払い出し硬貨検知センサによる硬貨の検知を行わなかったとしても、払い出し手段は動作するため、払い出し手段の動作の増加とはならないからである。
例えば、釣銭の払い出しが終了する毎に、硬貨払い出し手段を動作させて硬貨立ちを解消するとすれば、同時に行う払い出し硬貨検知センサによる硬貨の有無の確認により、蓄積している硬貨を釣銭として有効利用することは可能となる。
しかしながら、例えば、特許文献2に記載されているように、硬貨処理装置の耐久性の向上等のために、硬貨立ちの解消のための空打ち動作の回数を低減させた場合、蓄積している硬貨を釣銭として有効利用するには、払い出し硬貨検知センサによる硬貨の検知の数が不足する可能性がある。
図1は、硬貨処理装置の構成例の概略を示した図である。なお、同図は、硬貨処理装置の断面を模式的に表したものである。なお、硬貨処理装置の構成自体は、従来のものと同様であるため、ここでは、概略のみを説明する。
同図に示すように、硬貨処理装置1は、硬貨投入口10と、識別センサ11、受入検知センサ12、振分手段13、硬貨収容部14、満杯検知スイッチ15(15−1〜15−4)、エンプティスイッチ16(16−1〜16−3)、払い出し手段17、払い出し硬貨検知センサ18(18−1〜18−5)を有している。
硬貨投入口10は、投入された硬貨を受け入れる入り口である。
識別センサ11は、硬貨投入口10から投入され、硬貨処理装置1内を転動する硬貨の材質や直径、模様等を検出する複数のセンサ群である。
受入検知センサ12は、識別センサ11による検出結果に基づいて、後述する制御部が正貨と判定し、振分手段13の動作により受け入れ側に振り分けられた硬貨を検知するセンサである。
振分手段13は、識別センサ11による検出結果に基づいて、後述する制御部が正貨と判定した硬貨を受け入れ、さらに、識別センサ11による検出結果に基づいて、後述する制御部が判定した金種毎に硬貨収容部14の対応する箇所に受け入れた硬貨を振り分ける。また、硬貨収容部14の満杯が検知されていた場合は、図示しない金庫に、受け入れた硬貨を振り分ける。
硬貨収容部14は、複数のコインチューブから構成されており、複数金種の硬貨を、その金種別に各コインチューブにに蓄積する。この硬貨収容部14は、硬貨処理装置1に対して着脱自在なものである。また、硬貨収容部14の一部のコインチューブを、硬貨の受け入れを行わない払い出し専用の硬貨を蓄積するように利用することも可能である。なお、図1に示した硬貨収容部14は、最大で5金種の硬貨を蓄積することが可能なものであり、そのうちの1金種を払い出し専用として利用するものである。もちろん、複数個所に同一金種を蓄積するようにした場合には、蓄積可能な金種の数は減少する。
満杯検知スイッチ15−1、満杯検知スイッチ15−2、満杯検知スイッチ15−3、満杯検知スイッチ15−4は、それぞれ、硬貨収容部14の各コインチューブに蓄積された硬貨が満杯となったことを検知するセンサである。なお、硬貨収容部14の複数のコインチューブのうち、払い出し専用として利用する硬貨を蓄積する箇所には、満杯検知スイッチは、設けられていない。
エンプティスイッチ16−1、エンプティスイッチ16−2、エンプティスイッチ16−3は、それぞれ、硬貨収容部14の各コインチューブに蓄積された硬貨が所定数よりも少なくなったことを検知するセンサである。エンプティスイッチ16−1、エンプティスイッチ16−2、エンプティスイッチ16−3が検知する所定数は、これらが配設された位置と蓄積する硬貨の厚みにより異なる。なお、エンプティスイッチは、全ての金種に対応して設ける必要は無い。
払い出し手段17は、上記特許文献1に開示された従来の硬貨払い出し部の機構と同様のものであって、ペイアウトスライド(スライド手段)と複数のチェンジスライド(払い出し選択手段)により、硬貨収容部14に蓄積されている硬貨を選択的に払い出すものであり、モータやソレノイド等を利用して電力により払い出し動作を行うものである。
払い出し硬貨検知センサ18−1、払い出し硬貨検知センサ18−2、払い出し硬貨検知センサ18−3、払い出し硬貨検知センサ18−4、払い出し硬貨検知センサ18−5は、それぞれ、ペイアウトスライドが動作した際に、ペイアウトスライドが同時に引き出した各金種の硬貨の有無を検知するセンサである。この払い出し硬貨検知センサ18−1等による検知結果により、硬貨の払い出しが正常に行われた否かの確認を行うとともに、払い出し対象とならなかった硬貨が、少なくとも1枚、硬貨収容部14内に蓄積されているか否かを確認することができる。
なお、硬貨収容部14には、例えば、硬貨収容部14の各コインチューブのうち満杯検知スイッチ15−1とエンプティスイッチ16−1が設けられ、払い出し手段17の動作時に払い出し硬貨検知センサ18−1で検知される箇所に500円硬貨、硬貨収容部14のうち満杯検知スイッチ15−2とエンプティスイッチ16−2が設けられ、払い出し手段17の動作時に払い出し硬貨検知センサ18−2で検知されるコインチューブに100円硬貨、硬貨収容部14のうち満杯検知スイッチ15−3とエンプティスイッチ16−3が設けられ、払い出し手段17の動作時に払い出し硬貨検知センサ18−3で検知されるコインチューブに10円硬貨、硬貨収容部14のうち満杯検知スイッチ15−4が設けられ、払い出し手段17の動作時に払い出し硬貨検知センサ18−4で検知されるコインチューブに50円硬貨、硬貨収容部14のうち満杯スイッチ、エンプティスイッチが設けられておらず、払い出し手段17の動作時に払い出し硬貨検知センサ18−5で検知される払い出し専用の硬貨を蓄積する箇所に10円硬貨が蓄積される。
次に、硬貨処理装置1を制御する制御部について説明する。図2は、制御部の構成例を示した図である。
同図に示すように、制御部100は、自動販売機の全体を制御する自動販売機主制御部2と通信可能に接続されるとともに、識別センサ11と、受入検知センサ12、満杯検知スイッチ15(15−1〜15−4)、エンプティスイッチ16(16−1〜16−3)、払い出し硬貨検知センサ18(18−1〜18−5)の各検知結果を取得し、振分手段13と、払い出し手段17の両者を動作させる。
また、制御部100は、演算部110と記憶部120に大別される。
演算部110は、例えば、マイコンと称されるプロセッサやメモリ等を集積化したものを、プログラム等のソフトウェアにより実現される機能部の総称であり、硬貨識別部111、振分制御部112、硬貨有無判別部113、払い出し算出部114、払い出し制御部(払出制御手段)115、検知条件確認部(条件検出手段)116、エンプティ枚数カウンタ(カウンタ手段)117等の各機能部を含む。
記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)等のメモリに確保される記憶領域の総称であり、カウンタ値121、硬貨有無情報122、金種・枚数バッファ123等に記憶領域が割り当てられている。
硬貨識別部111は、予め不揮発性の記憶部(不図示)に記憶された処理対象となる各種硬貨の特徴と、識別センサ11が検知した硬貨の特徴と比較することにより、硬貨投入口10に投入された硬貨の正為と、正貨であった場合の金種を識別する。なお、硬貨識別部111による処理は、従来の硬貨処理装置と同様のものである。
振分制御部112は、硬貨識別部111による識別結果にしたがって、振分制御手段13を動作させる。なお、振分制御部112による処理は、従来の硬貨処理装置と同様のものである。
硬貨有無判別部113は、払い出し硬貨検知センサ18の検知結果にしたがって、金種毎に(同一の金種であっても、硬貨収容部14の異なる箇所コインチューブに蓄積されているものは、別の金種とみなす)、硬貨収容部14内に少なくとも1枚の硬貨が蓄積されているか否かを判定する。判定の結果、硬貨収容部14内に少なくとも1枚の硬貨が蓄積されているとした金種については、硬貨有無情報122を、少なくとも1枚の硬貨が存在することを示す「有り」に設定する。
払い出し算出部114は、硬貨処理装置1から釣銭等を払い出す際に、払い出す金種と、各金種の払い出し枚数を算出する。算出結果は、金種・枚数バッファ123に一時的に記憶される。
払い出し制御部115は、金種・枚数バッファ123に記憶されている払い出し算出部114による算出結果にしたがって、払い出し手段17を制御する。また、払い出し制御部115は、硬貨の払い出しを行わない場合にも、必要に応じて払い出し手段17を動作させる。
検知条件確認部116は、払い出し硬貨検知センサ18による硬貨の有無を検知することを目的として、払い出し手段17を動作させるための検知条件が成立したか否かを確認する。検知条件は、払い出し手段17が釣銭を払い出した際に、払い出し対象となった硬貨に対応するカウンタ値121(後述するように、エンプティ枚数カウンタ117の計数結果である)が「0」となった場合である。また、払い出し対象となった硬貨が、硬貨収容部14内のエンプティスイッチ16が設けられたコインチューブに蓄積されている場合には、エンプティスイッチ16が硬貨無し(所定数の硬貨が蓄積されていない)であることを検出していることが検知条件に加えられる。
エンプティ枚数カウンタ117は、振分制御部112が振分手段13を制御して硬貨を受け入れた際に、該当する金種の数を増加し、払い出し制御部115が払い出し手段17を制御して硬貨を払い出した際に該当する金種の数を減少させ、その結果をカウンタ値121に記憶させる。また、エンプティ枚数カウンタ117は、満杯スイッチ15やエンプティスイッチ16、払い出し硬貨検知センサ18の検知結果に応じて、カウンタ値121を補正する。
ここで、エンプティ枚数カウンタ117の動作について説明する。図3および図4は、エンプティ枚数カウンタ117の動作の流れを示すフローチャートである。なお、図3は、硬貨収容部14のうち、満杯スイッチ15とエンプティスイッチ16による検出が行われるコインチューブに蓄積される硬貨を計数する場合の処理を示したものであり、図4は、硬貨収容部14のうち、満杯スイッチ15による検出が行われ、エンプティスイッチ16による検出が行われないコインチューブに蓄積される硬貨を計数する場合の処理を示したものである。なお、硬貨収容部14のうち、払い出し専用に用いられるコインチューブは、硬貨を受け入れることが無いため、エンプティ枚数カウンタ117による計数は行わない。
硬貨収容部14のうち、満杯スイッチ15とエンプティスイッチ16による検出が行われるコインチューブに蓄積される硬貨を計数する場合、硬貨処理装置1の電源が投入されると、エンプティ枚数カウンタ117は、動作を開始する。このとき、カウンタ値121は、電源投入に伴う初期化により、「0」に設定される(ステップ201)。
続いて、対応するエンプティスイッチ16が未検知、つまり、対応する硬貨が所定数以上存在する場合には(ステップ202でYES)、エンプティ枚数カウンタ117は、カウンタ値121を、その所定数(以下、エンプティ値と称する)に設定する(ステップ203)。
また、対応する満杯検知スイッチ15が対応する硬貨が満杯であることを検知していれば(ステップ204でYES)、エンプティ枚数カウンタ117は、カウンタ値121を、満杯時の枚数(以下、満杯値と称する)に設定する(ステップ205)。
その後、対応する硬貨が受け入れられた場合には(ステップ206でYES)、エンプティ枚数カウンタ117は、カウンタ値121に「1」を加算し(ステップ207)、対応する硬貨が払い出された場合には(ステップ208でYES)、エンプティ枚数カウンタ117は、カウンタ値121から「1」を減算する(ステップ209)。
また、対応する硬貨の受け入れや払い出しにより、エンプティスイッチ16の検知状態が未検知から検知または検知から未検知に変化した場合には(ステップ210でYES)、エンプティ枚数カウンタ117は、カウンタ値121を、エンプティ値に設定する(ステップ211)。
その後、エンプティ枚数カウンタ117は、ステップ204以降の処理を繰り返し行う。
硬貨収容部14のうち、満杯スイッチ15による検出が行われ、エンプティスイッチ16による検出が行われないコインチューブに蓄積される硬貨を計数する場合は、硬貨処理装置1の電源が投入されると、エンプティ枚数カウンタ117は、動作を開始する。このとき、カウンタ値121は、電源投入に伴う初期化により、「0」に設定される(ステップ251)。
続いて、対応する満杯検知スイッチ15が対応する硬貨が満杯であることを検知していれば(ステップ252でYES)、エンプティ枚数カウンタ117は、カウンタ値121を、満杯値に設定する(ステップ253)。
また、対応する硬貨が受け入れられた場合には(ステップ254でYES)、エンプティ枚数カウンタ117は、カウンタ値121に「1」を加算し(ステップ255)、対応する硬貨が払い出された場合には(ステップ256でYES)、エンプティ枚数カウンタ117は、カウンタ値121から「1」を減算する(ステップ257)。
その後、エンプティ枚数カウンタ117は、ステップ252以降の処理を繰り返し行う。
ここで説明した動作から明らかなように、硬貨収容部14のうち、満杯スイッチ15による検出が行われ、エンプティスイッチ16による検出が行われないコインチューブに蓄積される硬貨を計数する場合は、対応する硬貨が満杯とならない限り、カウンタ値121は、受け入れた硬貨の枚数から払い出した硬貨の枚数を減じた値となり、従来のように、カウンタ値121が「0」となった場合に、当該硬貨を払い出し対象から除外するとすれば、多くの硬貨が蓄積されているにも関わらず、払い出し対象から除外されることとなる。
次に、硬貨処理装置1の払い出し硬貨検知センサ18による硬貨有無確認処理の動作について説明する。図5は、硬貨処理装置1の払い出し硬貨検知センサ18による硬貨有無確認処理の動作の流れを示すフローチャートである。
硬貨処理装置1が動作を開始すると、硬貨有無確認処理としては、払い出し手段17が動作するのを待つ(ステップ301でNO)。このとき、硬貨処理装置1は、他の動作を実行している場合がある。
ここで、硬貨処理装置1が初期動作、硬貨立ちを解消するための処理、釣銭払い出し処理等を行い、払い出し手段17が動作すると(ステップ301でYES)、制御部100の硬貨有無判別部113が、払い出し硬貨検知センサ18による検知結果を取得する(ステップ302)。
その結果、硬貨が検知されれば(ステップ303でYES)、硬貨有無判別部113が硬貨有無情報122として硬貨「有」を記憶する(ステップ304)。硬貨が検知されなければ(ステップ303でNO)、硬貨有無判別部113が硬貨有無情報122として硬貨「無」を記憶する(ステップ305)。この硬貨有無情報122の記憶は、金種毎に行われる。
なお、ステップ302で取得した検知結果は、払い出し手段17が硬貨立ちの解消のために動作した場合等、いずれの金種の硬貨も払い出し対象としていなかった場合には、全ての金種について硬貨の有無が検知可能であるが、払い出し手段17が釣銭の払い出しを行った場合には、払い出し対象とした硬貨の有無が検知できないものである。この場合には、検知結果を硬貨未検知として、硬貨有無判別部113が硬貨有無情報122として硬貨「無」を記憶する。
また、払い出し手段17が釣銭の払い出しを行った場合には(ステップ306でYES)、検知条件確認部116が検知条件の確認を行い、検知条件が成立していれば(ステップ307でYES)、払い出し制御部115が、いずれの硬貨も払い出し対象とせずに払い出し手段17を動作させる空打ちを行わせる(ステップ308)。検知条件は、前述したように、払い出し手段17が釣銭を払い出した際に、払い出し対象となった硬貨に対応するカウンタ値121が「0」となった場合であり、払い出し対象となった硬貨が硬貨収容部14内のエンプティスイッチ16が設けられた箇所に蓄積されている場合には、エンプティスイッチ16が硬貨無しであることを検出し、かつ、カウンタ値121が「0」となった場合である。
なお、エンプティ枚数カウンタ117が図3を参照して説明したように動作している場合には、エンプティスイッチ16が硬貨有りであることを検出していれば、カウンタ値121が「0」となることは無いため、カウンタ値121が「0」であることのみを検知条件としてもよい。
払い出し制御部115が払い出し手段17に空打ちを行わせると、払い出し手段17が動作することになるため(ステップ301でYES)、同様に、払い出し硬貨検知センサ18による硬貨の有無の検知が行われる。
なお、払い出し手段17が空打ちを行った場合には、当該動作は、払い出し動作では無いため(ステップ306でNO)、空打ちが繰り返されることは無い。
このように硬貨処理装置1が動作することで、
(1)硬貨処理装置1の初期動作時
(2)硬貨立ち解消のための払い出し手段17の動作時
(3)釣銭払い出し時(払い出し対象金種を除く)
(4)釣銭払い出し後に払い出し対象金種のカウンタ値が「0」となった場合
(5)釣銭払い出し後に払い出し対象金種のカウンタ値が「0」となり、かつ、エンプティスイッチ16が硬貨無しであることを検出している場合
のそれぞれで、払い出し硬貨検知センサ18による硬貨の有無の検知が行われることとなる。
次に、払い出し算出部114による払い出す硬貨の金種と金種毎の枚数の算出処理について説明する。図6は、払い出し算出部114による払い出す硬貨の金種と金種毎の枚数の算出処理の流れを示すフローチャートである。なお、当該処理で用いる金種番号は、金額が高額なものを小さい値としており、例えば、500円が「1」、100円が「2」、50円が「3」、10円が「4」であるものとする。
払い出し算出部114は、処理を開始すると、まず、変数Aに釣銭金額を代入し(ステップ401)、仮カウンタにカウンタ値121を代入する(ステップ402)。なお、仮カウンタは、金種毎に必要なものでありエンプティ枚数カウンタ117と同様にソフトウェアで実現されるものであるが、エンプティ枚数カウンタ117を流用(計数対象を増加させる)してもよい。
また、払い出し算出部114は、金種・枚数バッファ123をクリアするとともに(ステップ403)、変数Bに金種番号「1」を代入する(ステップ404)。
次に、金種Bに対応する仮カウンタの値が「0」よりも大きく(ステップ405でYES)、金種Bの金額が釣銭金額を代入した変数Aの値以下であれば(ステップ406でYES)、金種・枚数バッファ123に、金種Bを1枚追加し(ステップ407)、金種Bに対応する仮カウンタの値から1を減じ(ステップ408)、変数Aの値から金種Bの金額を減じる(ステップ409)。
その結果、変数Aの値が「0」になれば(ステップ410でYES)、算出処理を終了するが、変数Aの値が「0」でなければ(ステップ410でNO)、ステップ405に戻り、同様の処理を繰り返す。
一方、金種Bに対応する仮カウンタの値が「0」よりも大きい場合でも(ステップ405でYES)、金種Bの金額が釣銭金額を代入した変数Aの値よりも大きければ(ステップ406でNO)、変数Bの値を1だけ増加させ(ステップ411)、ステップ405に戻り、同様の処理を繰り返す。
また、金種Bに対応する仮カウンタの値が「0」である場合は(ステップ405でNO)、金種Bに対応する硬貨有無情報122が未確認であり(ステップ412でYES)、かつ、金種Bに対応する硬貨有無情報122が「有」を示していれば(ステップ413でYES)、金種Bに対応する仮カウンタの値が「0」よりも大きい場合の処理を行う。
また、金種Bに対応する仮カウンタの値が「0」である場合(ステップ405でNO)、金種Bに対応する硬貨有無情報122が確認済みであるか(ステップ412でNO)、金種Bに対応する硬貨有無情報122が未確認であっても金種Bに対応する硬貨有無情報122が「無」を示していれば(ステップ412でYES、ステップ413でNO)、変数Bの値を1だけ増加させ(ステップ411)、ステップ405に戻り、同様の処理を繰り返す。なお、金種Bに対応する硬貨有無情報122が確認済みである場合とは、金種Bの硬貨複数枚を払い出し対象とする場合に生じる事象であり、金種Bの硬貨を1枚だけ払い出し対象とする場合に生じることはない。
払い出し算出部114は、このような算出処理を行うことで、例えば、釣銭として880円を払い出す際に、500円に対応するカウンタ値121が「3」、100円に対応するカウンタ値121が「10」、50円に対応するカウンタ値121が「0」、10円に対応するカウンタ値121が「10」である場合でも、50円に対応する硬貨有無情報122が「有」を示していれば、500円硬貨1枚、100円硬貨3枚、50円硬貨1枚、10円硬貨3枚の組み合わせで、払い出しを行うような算出結果を得ることができる。
なお、硬貨有無情報122を用いた算出処理は、どの金種であっても可能であるが、500円硬貨や50円硬貨等、釣銭として複数枚を払い出す可能性の低い硬貨に対して効果的である。
また、10円硬貨に対して硬貨有無情報122を行うとすれば、払い出しが不可能となる場合も生じるが、10円硬貨に対応するエンプティスイッチ16がエンプティ状態を検出している場合は、自動販売機主制御部2に「釣銭なし」であることが通知されているため、実際には、10円硬貨に対して硬貨有無情報122を用いた算出処理を行う可能性は低くなる。
実施例1では、払い出し硬貨検知センサ18による硬貨の有無の検知を目的として払い出し手段17を動作させる場合(ステップ308での指示)、払い出し手段17を硬貨立ちを解消するために動作させる場合と同様、つまり、いずれの硬貨も払い出し対象としないが、ペイアウトスライド自体は、硬貨を払い出す場合と同様に一回、往復スライド動作をさせていた。
実施例2では、払い出し硬貨検知センサ18による硬貨の有無の検知を目的として払い出し手段17を動作させる場合に、払い出し手段17に当該目的に応じた動作を行わせる場合を説明する。
払い出し手段17に払い出し硬貨検知センサ18による硬貨の有無の検知を目的としての動作を行わせる場合、払い出し硬貨検知センサ18が硬貨があることを検知することで、当該目的を達成することとなる。このため、硬貨が検出出来れば、ペイアウトスライドを完全に引ききって硬貨を払い出す位置(往路の終点)までスライドをさせる必要はない。そこで第2の実施例では、前記払い出し硬貨検知センサ18によってペイアウトスライドが往路を移動中に引き出した硬貨を検出した場合には、ペイアウトスライドのスライド動作をその往路途中で一旦停止させ、モータを逆転させて停止させた位置から逆行動作させて元の位置(コインチューブの最下段)に戻す。
図7および図8は、払い出し手段17のペイアウトスライド17’と払い出し硬貨検知センサ18の関係を説明するための図である。
図7は、チェンジスライドによる支持側を下面とした場合の上面を示しており、硬貨を払い出す前の状態(払い出しをする前の位置)における、ペイアウトスライド17’と、硬貨C(C1〜C5)と、払い出し硬貨検知センサ18(18−1〜18−5)の位置関係を示している。なお、ペイアウトスライド17’は、往復スライド動作時に、図中の矢印Aの右方向に移動(スライド)し硬貨C(C1〜C5)を一枚ずつ引き出し、再び、元の払い出す前の状態に戻るように動作する。
図8は、ペイアウトスライド17’によって引き出された硬貨と払い出し硬貨検知センサの関係を説明するための図であって、ペイアウトスライド17’の往復スライド動作において、往路の各位置の硬貨Cと払い出し硬貨検知センサ18の関係を示している。
硬貨Cを払い出し対象としない場合、ペイアウトスライド17’が往復スライド動作を行うと、硬貨Cと払い出し硬貨検知センサ18の位置関係は、図8(a)に示す状態(コインチューブの位置)から、往路をペイアウトスライド17’が移動するに従って順次、図8(b)に示す状態、図8(c)に示す状態、図8(d)に示す状態と変遷する。図8(d)はペイアウトスライド17’が引ききった位置(硬貨を払い出す位置であって往路の終点)である。ペイアウトスライド17’によって図8(d)まで引き出された硬貨Cはその後、逆順で、図8(a)に示す状態まで戻ることとなる。
図9は、払い出し硬貨検知センサ18の検知出力の波形を示した図である。なお、同図中の横軸のa、b、c、dは、それぞれ、硬貨Cと払い出し硬貨検知センサ18の位置関係が図8(a)に示す状態、図8(b)に示す状態、図8(c)に示す状態、図8(d)に示す状態である場合に対応する。また、同図中の横軸は、硬貨C(ペイアウトスライド17’)の位置を示すが、ペイアウトスライド17’が移動するため、その時刻(時間の経過)を示すものでもある。
硬貨Cを払い出し対象としない場合、払い出し硬貨検知センサ18の検知出力は、図9(a)に示すように、その位置毎、つまり、時間の経過に伴って、弱から強に変化し、その後、強から弱に変化する。検知出力が最も強くなるのは、硬貨Cと払い出し硬貨検知センサ18の位置関係が図8(d)に示す状態となったときである。
硬貨Cを払い出し対象とする場合、払い出し硬貨検知センサ18の検知出力は、図9(b)に示すように、その位置毎、つまり、時間の経過に伴って、弱から強に変化し、その後、急激に弱くなる。これは、硬貨Cと払い出し硬貨検知センサ18の位置関係が図8(d)に示す状態となったときに、チェンジスライドによる支持が解除されている為、当該硬貨Cが払い出されるからである。
硬貨収容部14内に硬貨が存在しなかった場合、つまり、ペイアウトスライド17’により硬貨Cが引き出されなかった場合は、払い出し硬貨検知センサ18の検知出力は、図9(c)に示すように、一定のままとなる。
第2の実施例において、払い出し手段17に払い出し硬貨検知センサ18による硬貨の有無の検知を目的としての動作を行わせる場合は、図9(d)に示すように、払い出し硬貨検知センサ18の検知出力が予め定められた一定値(図9中に破線Bで示す)を超えた時点で、ペイアウトスライド17’を元の位置に戻すように、払い出し手段17を動作させる。
すなわち、硬貨有無判別部113が、ペイアウトスライド17’が往路を移動中に貨検知センサ18の検知出力が予め定められた一定値を超えたことを検知すると硬貨があると判定し、この判定に基づいて払い出し制御部115がペイアウトスライド17’のスライド動作をその往路途中で停止させ、さらにモータを逆転させて停止させた位置から逆行動作させて元の位置(コインチューブの最下段)に戻す。
尚、図9(d)に示した例では、硬貨Cと払い出し硬貨検知センサ18の位置関係が図8(b)に示す状態と図8(c)に示す状態との間となる位置で、一定値(図9中に破線Bで示す)を超えた為、ペイアウトスライド17’を元の位置に戻している。
このように第2の実施例における硬貨処理装置は、硬貨の有無の確認を行うための払い出し手段を動作させる際に、硬貨が検出されると払い出し動作を中断して逆行して元の位置に戻すので、無駄な動作を減少させることができる。
上記のとおり、第一の実施例によれば、硬貨を金種毎に整列積みで保留する複数のコインチューブで構成された硬貨収納部14と、
該複数のコインチューブの底部を往復スライド運動し、その運動の往路で前記複数のコインチューブの最下段の硬貨を1枚ずつ引き出し、その運動の復路で元の位置に戻るペイアウトスライド17’(スライド手段)と、該ペイアウトスライドが引き出した前記コインチューブ毎の硬貨の下面支持とその解除とを選択的に行って該引き出した硬貨を払い出すか否かを決める複数のチェンジスライド(払い出し選択手段)とで構成する払い出し手段17と、
前記ペイアウトスライドで引き出した硬貨を前記コインチューブ毎に検出する払い出し硬貨検知センサ18(硬貨検知手段)とを具備し、
更に、受け入れて金種毎に各コインチューブに収納した硬貨の枚数を加算した値から払い出した硬貨の枚数を減算した値を保持するエンプティ枚数カウンタ117(カウンタ手段)とを具備する硬貨処理装置において、
前記払い出し手段が硬貨を払い出した後で、前記エンプティ枚数カウンタ117が保持する値が零となった金種を検出する条件確認部116(検知条件検出手段)と、
該条件確認部116が前記カウンタ手段が保持する値が零となった金種を検出した場合に、前記ペイアウトスライド17’動作させるとともに該検出された金種の硬貨を保留するコインチューブに対応した前記複数のチェンジスライドを前記ペイアウトスライドが引き出した全ての硬貨を下面支持する状態すなわち硬貨非払い出し状態にする払い出し制御部115(払出制御手段)とを更に備え、
前記検知条件確認部116(条件検出手段)が前記エンプティ枚数カウンタ117が保持する値が零となった金種を検出した時、前記払い出し制御部115が前記チェンジスライドを前記硬貨非払い出し状態に制御して、前記ペイアウトスライド17’を動作するとともに、前記払い出し硬貨検知センサ18がペイアウトスライド17’によって硬貨を引き出したか否かを検出する。
これにより、払い出しが完了した時に、カウンタ手段の保持する値が零となった場合、払い出し硬貨検知センサによる硬貨の有無の確認を行うための払い出し手段の動作を実行するようにする。よって、払い出し手段の動作する回数を大幅に増加させることなく、少なくとも1枚の硬貨が蓄積されているか否かの確認を確実に行うことが可能となる。
従って、例えば、毎回払い出しの前に空打ちをして硬貨の有無を検出したり、払い出しの後に毎回空打ちをして硬貨の有無を検出したりすることが無いから、払い出し手段の動作する回数を大幅に増加することが無い。
さらに実施例2によれば、前記払い出し手段が硬貨を払い出した後で、前記条件検出手段が前記カウンタ手段が保持する値が零となった金種を検出した時、前記払い出し制御部115(払出制御手段)は、前記払い出し硬貨検知センサ18(硬貨検知手段)が前記ペイアウトスライド17’(スライド手段)が前記往路の動作中に硬貨を引き出したことを検出した場合には、前記ペイアウトスライド17’のスライド動作をその往路途中で一旦停止させ、停止させた位置から逆行動作させて元の位置に戻すようにするので、無駄な動作を減少させることができる。また早期に硬貨の有無の確認を終えることが出来るようになる。