JP5724460B2 - 繊維樹脂複合構造体の製造方法および成形体の製造方法 - Google Patents

繊維樹脂複合構造体の製造方法および成形体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、繊維樹脂複合構造体の製造方法および成形体の製造方法に関するものである。
機械部品等の構造体は、高い負荷に耐え得る必要性から、金属材料で構成されることが一般的である。
近年、機械部品の軽量化、静音化、低コスト化等の観点から、金属材料に代えて樹脂材料を繊維片で補強した複合材料の採用が進んでいる。
例えば、特許文献1には、繊維補強材に樹脂を含浸させてなる繊維強化樹脂製歯車が開示されている。この歯車は以下のようにして製造されている。
まず、繊維片を水中に離解分散させ、スラリーを調製する。次いで、このスラリーから抄造法により不織布を得る。そして、打ち抜き加工により不織布をドーナツ型に打ち抜いた後、打ち抜かれた不織布に樹脂を含浸させ、さらに含浸させた樹脂を硬化させることで繊維強化樹脂成形体を得る。最後に、この繊維強化樹脂成形体に機械切削を施すことで歯車を得ている。
ところが、このような方法で製造された歯車には、外周部の機械的強度が低いという問題がある。
特開2007−138146号公報
本発明の目的は、機械的特性に優れた成形体を効率よく製造可能な成形体の製造方法、および、成形されることで前記成形体を簡単に製造することができる繊維樹脂複合構造体を効率よく製造可能な繊維樹脂複合構造体の製造方法を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜(8)の本発明により達成される。
(1) 複数の繊維片が樹脂を含むマトリックス中に分散してなる複合材料で構成された繊維樹脂複合構造体を製造する方法であって、
前記複数の繊維片の集合体で構成された基材に対して、前記繊維片同士を解離させることにより、前記基材を所定の形状に裁断する工程と、
前記裁断後の前記基材に前記樹脂を含む液状材料を含浸させ、繊維樹脂複合構造体を得る工程と、
を有し、
前記繊維樹脂複合構造体の前記裁断による加工面近傍より内側に含まれる前記繊維片の平均長さを1としたとき、前記裁断による加工面近傍に含まれる前記繊維片の平均長さは0.6〜1であることを特徴とする繊維樹脂複合構造体の製造方法。
(2) 前記繊維片同士を解離させる加工は、ウォータージェット加工である上記(1)に記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
(3) 前記ウォータージェット加工は、媒体として液体のみを用いる加工である上記(2)に記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
(4) 前記基材は、前記複数の繊維片からなる不織布である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
(5) 前記樹脂は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
(6) 前記切断後の前記基材に含浸させる前記樹脂は、半硬化状態の熱硬化性樹脂である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
(7) 前記繊維片は、樹脂繊維片、ガラス繊維片および炭素繊維片のうちの少なくとも1種である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
(8) 上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法により得られた繊維樹脂複合構造体を成形型内で成形し、成形体を得ることを特徴とする成形体の製造方法。
本発明によれば、機械的特性に優れた成形体を効率よく製造することができる。特に、裁断を施されて得られた加工面についても、機械的特性の低下を防止することができるので、駆動する機械部品等に好適に利用可能な成形体を効率よく製造することができる。
また、本発明によれば、成形することで上記成形体を簡単に製造可能な繊維樹脂複合構造体を効率よく製造することができる。
本発明の成形体の製造方法により製造される成形体を模式的に示す断面図である。 本発明の成形体の製造方法の実施形態を説明するための図である。 本発明の成形体の製造方法の実施形態を説明するための図である。 本発明の成形体の製造方法の実施形態を説明するための図である。
以下、本発明の繊維樹脂複合構造体の製造方法および成形体の製造方法について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の成形体の製造方法により製造される成形体は、樹脂と繊維片とを含む複合材料で構成されたものであり、機械部品のような複雑な形状の構造体にも適用できるように、所望の形状をとり得る。本発明では、成形体の製造過程において繊維片からなる基材を所望の形状に裁断する過程を経ることで、最終的に所望の形状の成形体を実現している。このため、成形体の表面の少なくとも一部は裁断に伴う加工面になっている。
本発明の成形体の製造方法は、基材を裁断する際に、基材中の繊維片を実質的に切断することなく、繊維片同士を解離させる加工を施す工程と、裁断後の基材に樹脂を含む液状材料を含浸させる工程と、成形型内で成形する工程と、を有するものである。このような工程を有することにより、加工面近傍における繊維片が、裁断する前の当初の長さ、すなわち成形体を補強するのに十分な長さを維持するものとなる。その結果、成形体の加工面近傍は、内部と同等の機械的特性を有するものとなる。
また、裁断後の基材に樹脂を含む液状材料を含浸させることにより得られる繊維樹脂複合構造体は、形成しようとする成形体の最終形状に対応したキャビティを有する成形型により成形されることで、所望の形状の成形体を形成し得るものである。すなわち、繊維樹脂複合構造体は、前記成形体を製造するための前駆体であり、成形型等を用いて成形体がとるべき最終形状に成形されることで、前記成形体を容易に製造し得るよう構成されたものである。
なお、成形体の機械的特性とは、表面の変形し難さといった機械的強度、耐摩耗性、疲労強度等の物理的特性の総称である。
<成形体>
まず、本発明の成形体の製造方法により製造される成形体について説明する。
図1は、本発明の成形体の製造方法により製造される成形体を模式的に示す断面図である。
図1に示す成形体1は、前述したように、樹脂材料と繊維片2とを含む複合材料で構成されている。すなわち、繊維片2は、樹脂材料やその他の成分からなるマトリックス3中に分散しており、複合材料全体を補強するよう作用する。
(繊維片)
成形体1中に含まれる繊維片2は、いかなる材料で構成されたものでもよいが、具体的には、ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維、ポリアミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、セルロース繊維片のような樹脂繊維片の他、ガラス繊維片、炭素繊維片、金属繊維片、セラミック繊維片、ロックウール、綿繊維片、絹繊維片、木質繊維片等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合したものが用いられる。
このうち、繊維片2としては、樹脂繊維片、ガラス繊維片および炭素繊維片のうちの少なくとも1種であるのが好ましい。これらの繊維片2は、十分な引張強度を有するとともに、優れた耐候性を有するものとなるため、複合材料を補強する繊維片2として有用である。
成形体1中に含まれる繊維片2としては、平均長さが好ましくは0.5〜20mm程度、より好ましくは1〜15mm程度のものが用いられる。繊維片2の長さが前記範囲内であれば、繊維片2の分散状態が均一になるので、成形体1の機械的特性をムラなく均一に高めることができる。
なお、繊維片2の平均長さが前記下限値未満である場合、繊維片2同士が絡まる確率が低下し、成形体1の機械的特性を十分に高めることができないおそれがある。一方、繊維片2の平均長さが前記上限値を超える場合、多数の繊維片2が絡まり合う確率が高くなり、繊維片2を均一に分散させることができないおそれがある。
また、繊維片2の繊維径は、0.5〜30μm程度であるのが好ましく、1〜20μm程度であるのがより好ましい。繊維片2の繊維径が前記範囲内であれば、繊維片2に十分な引張強度と均一な分散性とが付与される。
なお、繊維片2の繊維径が前記下限値未満である場合、繊維片2の構成材料によっては繊維片2の引張強度が低下するおそれがある。一方、繊維片2の繊維径が前記上限値を超える場合、成形体1中において繊維片2を均一に分散させることができず、機械的特性が不均一になるおそれがある。
また、成形体1中の繊維片2の濃度(含有量)は、10〜90体積%程度であるのが好ましく、20〜80体積%程度であるのがより好ましい。これにより、成形体1の機械的特性を確実に高めることができる。
また、繊維片2には、樹脂との密着性、親和性を高める表面処理をあらかじめ施してもよい。表面処理としては、例えば、紫外線照射処理、電子線照射処理、プラズマ照射処理、表面層形成処理等が挙げられる。
このうち、表面層としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤のようなカップリング剤、各種界面活性剤、各種油剤等が挙げられる。
(樹脂)
樹脂としては、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂が挙げられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレン サルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
(繊維片の状態)
成形体1は、前述したように、基材を裁断する過程を経た後、樹脂を含む液状材料を含浸させ、最終形状に成形されることにより形成されたものである。
従来、このような基材の裁断は、バイト、エンドミルのような工具、打ち抜き金型等を用いて行われていた。
しかしながら、これらの加工ツールは、基材を完全に切断するよう加工するので、樹脂材料はもちろん、繊維片も切断されてしまう。このため、裁断後の加工面近傍では、繊維片が短く切断されてしまい、繊維片が本来有する補強機能が損なわれる。その結果、得られた成形体では、加工面(端面)近傍の機械的特性が著しく低下し、機械部品等としての利用が困難になっていた。
これに対し、成形体1は、裁断による加工面近傍において、繊維片2が実質的に切断されることなく残存している。このため、このような成形体1は、加工面近傍においても繊維片2の補強機能が保持されることとなり、加工面における機械的特性の低下が防止される。その結果、所望の形状を有し、大きな負荷に耐え得る機械部品等に適用可能な成形体1が得られる。
ここで、成形体1の加工面近傍とは、加工面の表面から繊維片2の平均長さに相当する厚さの領域である。この厚さの領域は、成形体1の加工面の機械的特性に大きな影響を及ぼす領域であるが、従来の成形体では、この領域に含まれる繊維片は短く切断されていたため、機械的特性の低下を招いていた。
しかしながら、本発明により製造される成形体1では、この領域の繊維片2は、加工面近傍より内側に含まれる繊維片2と同等の長さを維持している。具体的には、加工面近傍より内側に含まれる繊維片2の平均長さを1としたとき、加工面近傍に含まれる繊維片2の平均長さは、0.6〜1に相当する長さになっている。このような長さを維持していれば、加工面近傍においても内側と同等の高い機械的特性を有するものが得られる。
また、成形体1の内側に含まれる繊維片2の平均長さを1としたとき、加工面近傍に含まれる繊維片2の平均長さは0.6〜1とされるが、好ましくは0.7〜1とされ、より好ましくは0.8〜1とされる。
なお、成形体1中に含まれる繊維片2の平均長さは、以下のようにして測定される。
加工面近傍や内部に含まれる繊維片2については、引っ張って抜き取ったものあるいは全体が表面に露出しているものを合計100本選び、その平均値を算出することで繊維片2の平均長さが求められる。場合によっては、マトリックス3を溶融または溶解し、繊維片2を抜き取り易くしてもよい。
一方、成形体1の内側に含まれる繊維片2の単位体積当たりの含有量を1としたとき、加工面近傍に含まれる繊維片2の単位体積当たりの含有量は、質量比で1〜1.4であるのが好ましく、1.1〜1.4であるのがより好ましく、1.2〜1.4であるのがさらに好ましい。これにより、成形体1は、加工面近傍に含まれる繊維片2の長さが単に長いだけでなく、加工面近傍に含まれる繊維片2の濃度(密度)までもが高いものとなる。その結果、加工面近傍における機械的特性をさらに強化することができ、より大きな負荷に耐え得る機械部品等に適用することが可能になる。
なお、成形体1に含まれる繊維片2の単位体積当たりの含有量は、5mmの体積の成形体1を切り出し、マトリックス3を溶融または溶解して除去するとともに、残存した繊維片2の質量を測定することで求められる。また、樹脂抽出が困難な場合は、繊維片2およびマトリックス3の真比重と、成形体1の比重から、成形体1に含まれる繊維片2の単位体積当たりの含有量を求めることもできる。
また、繊維片2同士は、絡み合っているのが好ましいが、互いに離れていても補強機能は十分に発揮される。
また、繊維片2の分散状態は、端面近傍以外では均一に分散しているのが好ましく、繊維片2の分布方向は、全体でランダムであっても、所定の面内においてランダムであっても、あるいは所定の方向に配向していてもよい。
<成形体の製造方法>
次に、上述した成形体1の製造方法(本発明の成形体の製造方法)について説明する。
図2〜4は、それぞれ本発明の成形体の製造方法の実施形態を説明するための図である。
成形体1の製造方法は、複数の繊維片2の集合体で構成された基材用シート10’に対して、繊維片2自体を実質的に切断することなく繊維片同士を解離させる加工を施すことにより、前記基材用シート10’を所定の形状に裁断し、基材10を得る裁断工程と、得られた基材10に樹脂等を含浸させ、繊維樹脂複合構造体100を得る含浸工程と、得られた繊維樹脂複合構造体100を成形型20に投入し、最終形状に成形することで成形体1を得る成形工程と、を有する。
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、図2に示す複数の繊維片2の集合体で構成された基材用シート10’を得る。
この基材用シート10’は、織布であってもよいが、複数の繊維片2からなる不織布であるのが好ましい。不織布であれば、繊維片2同士の絡み合いがほとんどないため、後述する裁断工程において繊維片2同士を容易に解離させることができ、成形体1の製造効率を高めることができる。
不織布からなる基材用シート10’は、公知の方法により製造される。具体的な方法としては、繊維片2を気流に乗せて一定方向またはランダムに並べてシート状にする乾式法、繊維片2を分散媒に分散させ、抄き上げる湿式法等が挙げられる。
このようにして得られた基材用シート10’は、繊維片2同士が接した状態で集合し、これによりシート状をなしている。なお、必要に応じて、繊維片2同士を接着するための接着剤、糊等を使用してもよい。
[2]次に、基材用シート10’に裁断を施し、基材10を得る(裁断工程)。
この裁断は、基材用シート10’のうち、繊維片2自体を実質的に切断することなく繊維片2同士を解離させる加工である。具体的には、例えば、ウォータージェット加工、エアージェット加工、サンドブラスト加工、ショットブラスト加工のような加工媒体を吹き付ける加工方法等が用いられる。
図3は、ウォータージェット加工により図2に示す基材用シートを裁断する様子を説明するための図である。
ウォータージェット加工は、細いノズルから加工対象に向けて高圧の水を噴射しつつノズルを走査させることにより、走査パターンに沿って所定の形状の裁断を行う加工方法である。
基材用シート10’に対して、図3(a)に示すようにウォータージェットWを当てると、基材用シート10’の一部の領域において、接していた繊維片2同士が水勢により解離する。これは、繊維片2が極細い繊維であり、しかも一般にしなやかであるため、ウォータージェットWが当たっても繊維片2自体は切断されず、水勢のほとんどを受け流すとともに、繊維片2同士の接着が解消されるためである。これにより、基材用シート10’がこの領域で裁断されることとなる。その結果、基材用シート10’を所定の形状に裁断することができ、図3(b)に示す基材10が切り出される。
なお、基材10は、成形体1の形状(最終形状)に近く、それよりやや大きい形状に切り出される。具体的には、後述する成形工程において端部近傍の繊維片2が折り曲げられることを踏まえ、それによる縮小量を加味した分だけ最終形状より大きい形状であるのが好ましい。
ウォータージェット加工の条件は、特に限定されない。例えば、水圧は10〜500MPa程度であるのが好ましく、30〜300MPa程度であるのがより好ましい。水圧を前記範囲内に設定すれば、繊維片2自体を切断することなく、繊維片2同士を確実に解離させることができる。
また、ウォータージェット加工に用いる水には、水道水、純水、蒸留水、中水等が用いられ、特に限定されず、必要に応じてその他の液体(有機溶剤、または有機溶剤と水との混合液等)を使用してもよい。また、水に研磨材を混合するようにしてもよい。混合する研磨材としては、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ダイヤモンド、ガーネット、砂、カーボン、窒化ホウ素等が挙げられ、これらの1種または2種以上が組み合わせて用いられる。また、研磨材を用いる場合、その平均粒径は、特に限定されないが、50〜300μmであることが好ましく、100〜250μmであることがより好ましい。これにより、繊維片2自体が切断されてしまうのを防止することができる。
また、ウォータージェットWの外径(噴射ノズルの口径)は、特に限定されないが、繊維片2の平均長さの30%以下であるのが好ましく、0.5〜20%程度であるのがより好ましく、1〜15%程度であるのがさらに好ましい。これにより、裁断痕の幅を最小限に抑えつつ、基材用シート10’を確実に裁断することができるので、精密な加工が可能になる。一例として、噴射ノズルの口径は、0.1〜1mm程度であるのが好ましい。
さらに、噴射ノズルの先端と被加工物である基材用シート10’との離間距離は、噴射ノズルと被加工物とが接触しなければ特に限定されないが、一例として1〜50mm程度であるのが好ましく、3〜30mm程度であるのがより好ましい。
なお、裁断に時間がかかる場合もあるが、できるだけ研磨材を添加しないで水(液体)のみを用いた方が、繊維片2自体を切断することなく繊維片2同士を解離させるという点では有効である。
一方、エアージェット加工は、水の代わりに空気等のガスを使用し、これを加工媒体として使用する加工方法である。エアージェット加工では、ガスを超音速まで加速し、得られた超音速噴流を基材用シート10’に当てて裁断を行う。噴射ノズルの入り口におけるガス圧力は、2〜50MPa程度であるのが好ましく、3〜30MPa程度であるのがより好ましい。
また、サンドブラスト加工およびショットブラスト加工は、ガスの噴流に研磨材を添加して裁断を行う加工方法である。研磨材としては、前述したようなものが用いられる。
なお、エアージェット加工、サンドブラスト加工およびショットブラスト加工のいずれにおいても、噴流の外径(噴射ノズルの口径)は、繊維片2の平均長さの30%以下であるのが好ましく、0.5〜20%程度であるのがより好ましく、1〜15%程度であるのがさらに好ましい。
また、上記裁断を行う際には、加工媒体、例えばウォータージェット加工の場合はウォータージェットを基材用シート10’の表面に対して二次元的に走査しつつ加工するが、三次元的に走査するようにしてもよい。これにより、立体形状を切り出すことも可能になる。
[3]次に、得られた基材10に樹脂等を分散させ、図3(c)に示すような繊維樹脂複合構造体100を得る(分散工程)。
この分散は、樹脂材料およびその他の成分を分散媒に分散させてなる分散液を用い、これに基材10を浸漬する方法、基材10に分散液を塗布する方法、基材10に分散液を噴霧する方法等により行われる。
樹脂は、粒子状、針状、鱗片状のような粉体として分散媒中に添加される(図3(c)に示す樹脂粉30)。このうち、粒子状であるのが好ましく、その平均粒径は0.5〜100μm程度であるのが好ましく、1〜50μm程度であるのがより好ましい。
また、樹脂には、前述した各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂が用いられるが、熱溶融型および自硬化型に設定された状態で用いられるのが好ましい。これにより、後述する加圧成形における固化または硬化を容易に行うことができる。
具体的には、上記のような状態に設定された熱硬化性樹脂としては、もともと自硬化型の樹脂の場合、加熱等により半硬化させたもの(半硬化物)、あるいは、非自硬化型の樹脂の場合、硬化剤の添加により半硬化させたもの(半硬化物)等が挙げられる。なお、このような状態は「Bステージ」ともいわれる。
例えば、フェノール樹脂の半硬化物は、フェノール類とアルデヒド類とを混合し、さらに樹脂化触媒を添加し、加熱した後、還流反応を行い、最後に未反応物および反応残渣を除去することにより製造される。加熱温度は、樹脂を完全に硬化させない程度に設定され、例えば100〜140℃程度であるのが好ましい。
また、変性樹脂を得る場合は、樹脂化触媒とともに変性剤を添加するようにすればよい。
なお、例えば自硬化型のレゾール型フェノール樹脂を製造する場合には、樹脂化触媒として、ナトリウム、カリウムのようなアルカリ金属の水酸化物または酸化物、バリウム、カルシウムのようなアルカリ土類金属の水酸化物または酸化物、アンモニア、トリエチルアミンのようなアミン類等の中から選択された1種または2種以上が用いられる。
以上のようにして、自硬化型の樹脂を、熱溶融型に設定することができる。
一方、例えば非自硬化型のノボラック型フェノール樹脂を製造する場合には、自硬化型の場合と同様のプロセスで製造されるが、樹脂化触媒としては異なるものが用いられる。この樹脂化触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルフォン酸、ベンゼンスルフォン酸、シュウ酸、マレイン酸、ギ酸、酢酸等の酸の中から選択された1種または2種以上が用いられる。
その後、得られたノボラック型フェノール樹脂に所定量の硬化剤を添加する。この硬化剤としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミンのような硬化剤が挙げられる。硬化剤の添加量は、樹脂を完全に硬化させない程度に設定され、一例として、樹脂100質量部に対して1〜20質量部程度とされる。
以上のようにして、非自硬化型の樹脂を、熱溶融型および自硬化型に設定することができる。
また、得られた半硬化物は、必要に応じて粉砕することにより、前述した粉体の樹脂が得られる。粉砕方法としては、例えば、ハンマーミル、ジェットミル等の粉砕装置が得られる。さらに、ふるいがけ等の分級処理を施すことにより、樹脂の粒径を調整することができる。
また、樹脂が熱可塑性樹脂である場合、加熱により溶融し、その後の加熱終了後には固化するため、後述する加圧加熱成形における固化を容易に行うことができる。なお、熱可塑性樹脂の場合、溶媒等に溶解させてなる溶液を調製し、これを基材10に含浸させるようにしてもよい。含浸の方法は、上記分散の方法と同様である。
分散媒(溶媒)としては、上記構成要素を均一に分散し得るものであれば、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール等が挙げられる。
また、分散液における樹脂の濃度は、特に限定されないが、0.1〜10質量%程度であるのが好ましく、0.2〜5質量%程度であるのがより好ましい。
このようにして製造された繊維樹脂複合構造体100は、基材10に樹脂およびその他の成分が付着したものとなる。すなわち、繊維樹脂複合構造体100は、基材10とそれを覆うように設けられたマトリックス3とで構成されたものとなる。
なお、樹脂等を含浸させる際には、基材10の端部近傍を残し、それより内側のみに含浸させるのが好ましい。これにより、得られた繊維樹脂複合構造体100は、図3(c)に示すように、マトリックス3の端面に基材10の端部近傍が突出してなるものとなる。このとき、基材10の端部近傍の突出長さは、繊維片2の平均長さに応じて適宜設定されればよく、具体的には、繊維片2の平均長さの1〜90%程度であるのが好ましく、10〜80%程度であるのがより好ましく、20〜70%程度であるのがさらに好ましい。突出長さを前記範囲内に設定すれば、マトリックス3の端面から突出している基材10を構成している各繊維片2では、それぞれその一部がマトリックス3中に固定され、残る一部が突出した状態になる確率が高くなる。その結果、繊維片2による補強機能を十分に発現しつつ、端部近傍の繊維片2が繊維樹脂複合構造体100から脱落するのを確実に防止することができる。なお、図3(c)において、各繊維片2のうち、マトリックス3の端部から突出している部分を特に突出部2aとし、突出部2aを有する繊維片2を特に突出繊維片という。
なお、分散液に添加する前記その他の成分としては、例えば、硬化剤、酸化防止剤、難燃剤、耐光剤、紫外線吸収剤、光安定剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、分散剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、劣化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤、導電剤、粘度調整剤、抗菌剤等が挙げられる。
また、繊維樹脂複合構造体100中におけるこれらの成分の含有量は、特に限定されないが、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
[4]次に、繊維樹脂複合構造体100を成形型20のキャビティ21内に投入し、加圧成形する(図4(d)参照)。これにより、成形体1を得る(成形工程)。
繊維樹脂複合構造体100のうち、マトリックス3の形状および寸法を、成形型20のキャビティ21の形状および寸法に合わせて設定されるのが好ましい。これにより、成形型20のキャビティ21内に納められた繊維樹脂複合構造体100のうち、突出部2aを有する繊維片2の少なくとも一部は、図4(e)に示すように、キャビティ21の内壁によってマトリックス3側に折り曲げられ、マトリックス3の端面に押さえつけられることとなる。その結果、突出部2aを有する繊維片2は、その一端側が成形体1の内側方向を指向するとともにマトリックス3によって固定され、他端側(突出部2a)はマトリックス3の端面に沿って延在するよう配置されたものとなる。なお、成形体1の内側方向とは、成形体1の加工面より内側の方向であれば、特に限定されない。
また、突出部2aがこの状態を維持したまま、繊維樹脂複合構造体100のマトリックス3は、加熱によって一旦溶融し、その後加圧成形されつつ固化または硬化する。その結果、繊維片2がマトリックス3中に分散してなる成形体1が得られる。そして、突出部2aを有する繊維片2の少なくとも一部は、マトリックス3の加工面に沿って延在した状態で固定される。
なお、得られた成形体1には、上述したように、加工面近傍に、一端側が成形体1の内側方向を指向し、他端側が加工面に沿って延在するよう配置された繊維片2が多数含まれることとなる。具体的には、加工面近傍に含まれた繊維片2のうち、個数基準で20%以上のものが前記配置をとるよう構成されていれば、成形体1は優れた機械的特性を享受するものとなる。なお、この割合は、好ましくは30%以上とされ、より好ましくは50%以上とされる。
加圧加熱成形における加圧力は、マトリックス3の組成等に応じて適宜設定されるが、例えば、0.5MPa以上であるのが好ましく、1〜50MPa程度であるのがより好ましく、2〜30MPa程度であるのがさらに好ましい。加圧力を前記範囲内とすることにより、繊維片2を切断することなく、複合材料の機械的強度を十分に高めることができる。そして、寸法精度が高く固化または硬化後の変形が抑制された成形体1の製造が可能になる。
また、加圧成形時における加熱温度は、マトリックス3中の樹脂が溶融温度以上(熱可塑性樹脂の場合)または硬化温度以上(熱硬化性樹脂の場合)であればよく、それに応じて適宜設定されるが、一例を挙げると、140〜350℃程度であるのが好ましく、150〜300℃程度であるのがより好ましい。
さらに、加圧成形時における固化(冷却)時間(熱可塑性樹脂の場合)または硬化時間(熱硬化性樹脂の場合)は、樹脂の固化または硬化速度にもよるが、例えば、30秒〜30分程度であるのが好ましく、1〜20分程度であるのがより好ましい。これにより、変形の少ない成形体1の製造が可能になる。
このようにして製造された成形体1では、裁断により得られた加工面に沿って繊維片2の一部(突出部2a)が延在している(図4(e)参照)。このため、成形体1では、加工面近傍Sに繊維片2が集中して配置されることとなり、加工面近傍Sの機械的特性の低下が防止される。特に、加工面に沿って繊維片2が延在するように配置された結果、加工面近傍Sは、成形体1の内部Cに比べて機械的特性にとりわけ優れたものとなる。よって、成形体1は、駆動する機械部品等に好適に利用することができる。
また、突出部2aが加工面近傍Sに沿って配置された結果、加工面近傍Sにおける単位体積当たりの繊維片2の含有量は相対的に高くなる。したがって、この含有量は、内部Cにおける単位体積当たりの繊維片2の含有量よりも高い値になる。
以上のようにして機械的強度および耐摩耗性に優れた成形体1を効率よく製造することができる。
なお、成形体1としては、例えば、平歯車、内歯車、ラック、はすば歯車、すぐばかさ歯車、フェースギア、ウォームギアのような各種歯車、スプロケット、カム、リンク機構、軸、軸受等の各種機械要素の他、自動車、自転車、航空機、鉄道車両、建設機械、船舶のような乗り物、工作機械、加工機、産業用ロボットのような産業機械等の各種構成部品等に適用可能である。特に各種歯車等の機械要素では、歯面やキー溝等の摩擦が発生する箇所が多いため、本発明が好適に適用される。
以上、本発明について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば成形体には、その表面に任意の構成物(例えば被覆層等)が付加されていてもよい。また、本発明の成形体の製造方法は、さらに任意の目的の工程を有していてもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.歯車の製造
(実施例1)
まず、平均長さ3mm、繊維径12μmのパラ型アラミド繊維の繊維片(帝人テクノプロダクツ(株)製「テクノーラ」)を、繊維片の濃度が0.5質量%となるように水に分散させて分散液を調製した。
次いで、湿式抄造機により、分散液から不織布からなる基材用シートを抄造した。基材用シートの形状は、縦50mm×横50mm×厚さ5mmである。
次に、ウォータージェット加工により、基材用シートに裁断を施し、平歯車用の基材を切り出した。なお、ウォータージェット加工における加工条件は以下の通りである。
<加工条件>
・水圧 :200MPa
・加工媒体 :水道水のみ
・ノズル口径:100μm
・離間距離 :10mm(噴射ノズルの先端と基材用シートとの距離)
・走査速度 :500mm/分
一方、平均粒径15μmの半硬化状のフェノール樹脂粉末(住友ベークライト(株)製の、PR−50731、PR−51723、PR−53529を1:1:1の質量比で混合したフェノール樹脂粉末)を、樹脂材料の濃度が1質量%となるように水に分散させて分散液を調製した。
そして、切り出した平歯車用の基材に調製した分散液を噴霧し、乾燥させることで繊維樹脂複合構造体を得た。なお、分散液は、基材の外縁から2mmの範囲を残し、その内側に噴霧した。なお、繊維樹脂複合構造体における繊維片と樹脂との存在量が質量比で4:6になるよう、分散液の噴霧量を調整した。
次いで、得られた繊維樹脂複合構造体を成形型のキャビティ内に投入し、以下の成形条件で加圧加熱成形した。
<成形条件>
・加熱温度 :200℃
・加圧力 :30MPa
・成形時間 :10分
以上のようにして成形体からなる平歯車を得た。得られた歯車は、歯先円直径50mm、基準円直径48mm、歯数48個の平歯車である。
得られた平歯車の加工面を光学顕微鏡で観察したところ、繊維樹脂複合構造体で観察された繊維片の突出部は折り曲げられ、加工面に沿うように分布していることが認められた。
(実施例2)
繊維片として、平均長さ3mm、繊維径12μmのパラ型アラミド繊維の繊維片(帝人テクノプロダクツ(株)製「テクノーラ」)と、平均長さ3mm、繊維径10μmのメタ型アラミド繊維の繊維片(帝人テクノプロダクツ(株)製「コーネックス」)と、を質量比で1:1となるよう混合した混合繊維片を用いるようにした以外は、実施例1と同様にして平歯車を得た。なお、繊維片と樹脂との混合比は、質量比で2:3になるよう調整した。
(実施例3)
繊維片として、平均長さ3mm、繊維径12μmのパラ型アラミド繊維の繊維片(帝人テクノプロダクツ(株)製「テクノーラ」)と、平均長さ6mm、繊維径9μmのガラス繊維の繊維片と、を質量比で1:1となるよう混合した混合繊維片を用いるようにした以外は、実施例1と同様にして平歯車を得た。なお、繊維片と樹脂との混合比は、質量比で1:1となるよう調整した。
(実施例4)
繊維片を、平均長さ3mm、繊維径15μmのポリアリレート繊維の繊維片((株)クラレ製「ベクトランHT」)に変更した以外は、実施例1の場合と同様にして平歯車を得た。
(実施例5)
ウォータージェット加工における加工媒体として、平均粒径110μmのガーネット粉末(研磨材)を添加した水道水を用いるようにした以外は、実施例1と同様にして平歯車を得た。なお、水道水中のガーネット粉末の濃度は10質量%とした。
(実施例6)
ウォータージェット加工における加工媒体として、平均粒径180μmのガーネット粉末(研磨材)を添加した水道水を用いるようにした以外は、実施例1と同様にして平歯車を得た。なお、水道水中のガーネット粉末の濃度は10質量%とした。
(実施例7)
ウォータージェット加工に代えてサンドブラスト加工を施すようにした以外は、実施例1と同様にして平歯車を得た。なお、加工条件は、以下の通りである。
<加工条件>
・ガス圧 :1MPa
・加工媒体 :空気+窒化ホウ素粉末(平均粒径3μm)
・ノズル口径:300μm
・離間距離 :0.5mm(噴射ノズルの先端と基材用シートとの距離)
(実施例8)
縦50mm×横50mm×厚さ1mmの不織布5枚をそれぞれウォータージェット加工で同様の形状、大きさに切り出した後、切り出した5枚の不織布を積層し、これを基材として用いるようにした以外は、実施例1と同様にして平歯車を得た。
(実施例9)
繊維片を、平均長さ6mm、繊維径9μmのガラス繊維の繊維片に変更した以外は、実施例1と同様にして平歯車を得た。
(実施例10)
繊維片を、平均長さ6mm、繊維径8μmの炭素繊維の繊維片に変更した以外は、実施例1と同様にして平歯車を得た。
(実施例11)
フェノール樹脂粉末に代えてエポキシ樹脂粉末(三菱化学(株)製、YX4000の粉末)を用いるようにした以外は、実施例1と同様にして平歯車を得た。なお、成形温度は150℃とした。
(実施例12)
フェノール樹脂粉末に代えてナイロンMC901粉末を用いるようにした以外は、実施例1と同様にして平歯車を得た。なお、成形温度は250℃とした。
(比較例1)
ウォータージェット加工に代えて、打ち抜き型による打ち抜き成形加工を施すようにした以外は、実施例1と同様にして平歯車を得た。
(比較例2)
ウォータージェット加工に代えて、打ち抜き型による打ち抜き成形加工を施すようにした以外は、実施例8と同様にして平歯車を得た。
(比較例3)
ウォータージェット加工に代えて、打ち抜き型による打ち抜き成形加工を施すようにした以外は、実施例9と同様にして平歯車を得た。
(比較例4)
ウォータージェット加工に代えて、打ち抜き型による打ち抜き成形加工を施すようにした以外は、実施例10と同様にして平歯車を得た。
(比較例5)
ウォータージェット加工に代えて、打ち抜き型による打ち抜き成形加工を施すようにした以外は、実施例11と同様にして平歯車を得た。
(比較例6)
ウォータージェット加工に代えて、打ち抜き型による打ち抜き成形加工を施すようにした以外は、実施例12と同様にして平歯車を得た。
2.歯車の評価
2.1 繊維片の長さおよび単位体積当たりの含有量の評価
各実施例および各比較例で得られた平歯車(以下、「評価用歯車」という。)について、裁断による加工面近傍に含まれる繊維片の平均長さと、加工面近傍より内側に含まれる繊維片の平均長さとを測定した。そして、後者の平均長さを1としたとき、前者の平均長さの相対値を算出した。
また、各評価用歯車について、加工面近傍に含まれる繊維片の単位体積当たりの含有量と、加工面近傍より内側に含まれる繊維片の単位体積当たりの含有量とを測定した。そして、後者の含有量を1としたとき、前者の含有量の相対値を算出した。
2.2 疲労強度の評価
各評価用歯車について、以下のようにして疲労強度の評価を行った。
まず、評価用歯車に回転軸を装着し、モーターで回転させるよう設定した。
一方、ステンレス鋼(SUS304)で構成された相手歯車を用意し、所定の負荷がかかる回転軸を装着した。負荷(トルク)の大きさは、10N・mとした。また、相手歯車の形状、寸法は、各評価用歯車と同じにした。
次いで、評価用歯車と相手歯車とを噛合せ、評価用歯車に接続したモーターを駆動させた。この際、モーターの回転数は1000rpmとした。
そして、評価用歯車が壊れ、空回りが生じるまでの時間を評価した。なお、この評価は、比較例1、2、3、4、5、6で得られた評価用歯車で計測された時間をそれぞれ1として、対応する実施例1〜7、8、9、10、11、12で得られた評価用歯車で計測された時間の相対値を比較することで行った。
2.3 表面強度の評価
各評価用歯車について、以下のようにして加工面の表面強度の評価を行った。
まず、評価用歯車を切断し、歯部の1つを切り出した。そして、歯部の歯面に外径1mmのピンゲージを歯面に対して垂直方向に2.5mm/分の速度で押し当て、歯部が破壊されるときの荷重を測定した。なお、歯部が破壊したか否かは、歯面の亀裂の有無を目視で確認することにより判断した。そして、比較例1、2、3、4、5、6で得られた評価用歯車で測定された荷重をそれぞれ1として、対応する実施例1〜7、8、9、10、11、12で得られた評価用歯車で測定された荷重の相対値を評価した。
以上、2.1〜2.3の評価結果を表1に示す。
Figure 0005724460
表1から明らかなように、各実施例で得られた平歯車(以下、「実施例の平歯車」という。)では、加工面近傍に含まれる繊維片の長さが、加工面近傍より内側に含まれる繊維片の長さと同等程度であることが認められた。このことから、実施例の平歯車の加工面近傍では、繊維片が実質的に切断されることなく残存していることが推察される。
一方、各比較例で得られた平歯車(以下、「比較例の平歯車」という。)では、加工面近傍に含まれる繊維片の長さが、加工面近傍より内側に含まれる繊維片の長さより著しく短くなっていた。このことから、比較例の平歯車の加工面近傍では、繊維片が切断されていることが推察される。
また、疲労強度の評価から、実施例の平歯車は、比較例の平歯車に比べて十分な疲労強度を有していることが認められた。なお、実施例の平歯車の歯面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、歯面に沿って繊維片が延在している様子が認められたのに対し、比較例の平歯車の歯面には、歯面に繊維片の横断面が露出していた。
また、表面強度の評価から、実施例の平歯車は、比較例の平歯車に比べて高い表面強度を有していることが認められた。
2.4 断面の観察
平歯車の歯面の様子を確認するため、各平歯車を厚さが半分になるように切断した。そして、切断面をSEMで観察したところ、実施例の平歯車では、歯面近傍の繊維片の多くは、その一端部が歯面よりも内側に入り込んでいる一方、他端部は歯面に沿って延在している様子が認められた。したがって、このような繊維片は、一端部が歯面より内側に入り込んでいることで確実に固定されている一方、他端部が歯面を覆うように延在していることとなる。このように配置された繊維片が存在することで、実施例の平歯車では、疲労強度および歯面の表面強度が高くなっていると推察される。
一方、比較例の平歯車では、繊維片が短く切断されており、歯面に沿って延在する繊維片はほとんど存在していなかった。
1 成形体
10 基材
10’ 基材用シート
100 繊維樹脂複合構造体
2 繊維片
2a 突出部
20 成形型
21 キャビティ
3 マトリックス
30 樹脂粉
W ウォータージェット
S 加工面近傍
C 内部

Claims (8)

  1. 複数の繊維片が樹脂を含むマトリックス中に分散してなる複合材料で構成された繊維樹脂複合構造体を製造する方法であって、
    前記複数の繊維片の集合体で構成された基材に対して、前記繊維片同士を解離させることにより、前記基材を所定の形状に裁断する工程と、
    前記裁断後の前記基材に前記樹脂を含む液状材料を含浸させ、繊維樹脂複合構造体を得る工程と、
    を有し、
    前記繊維樹脂複合構造体の前記裁断による加工面近傍より内側に含まれる前記繊維片の平均長さを1としたとき、前記裁断による加工面近傍に含まれる前記繊維片の平均長さは0.6〜1であることを特徴とする繊維樹脂複合構造体の製造方法。
  2. 前記繊維片同士を解離させる加工は、ウォータージェット加工である請求項1に記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
  3. 前記ウォータージェット加工は、媒体として液体のみを用いる加工である請求項2に記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
  4. 前記基材は、前記複数の繊維片からなる不織布である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
  5. 前記樹脂は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
  6. 前記切断後の前記基材に含浸させる前記樹脂は、半硬化状態の熱硬化性樹脂である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
  7. 前記繊維片は、樹脂繊維片、ガラス繊維片および炭素繊維片のうちの少なくとも1種である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法により得られた繊維樹脂複合構造体を成形型内で成形し、成形体を得ることを特徴とする成形体の製造方法。
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