JP2019005984A - 樹脂製歯車の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
樹脂製歯車の一態様について、図1及び2に基づいて説明する。図1は樹脂製歯車の平面図であり、図2は図1の樹脂製歯車におけるII−II断面図である。樹脂製歯車10は、外周部に歯形形状1aが形成された円環状の樹脂部材1と、当該樹脂部材1の内周部に配置されたブッシュ3とを有する。
また、ブッシュ3の中央部には、回転軸(図示せず)を嵌合するための貫通孔5が形成されている。なお、ブッシュ3は回転軸と一体となって形成されたものであってもよい。
ブッシュ3の材質は、特に限定されるものではないが、強度の点から、金属製のものが好ましい。
抄造素形体形成工程では、抄造法により円環状の抄造素形体をブッシュの周囲に形成する。抄造素形体は、短繊維のみを含むものであっても、短繊維及び樹脂を含むものであってもよい。
このような短繊維としては、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリイミド繊維、及びポリビニルアルコール系繊維から選ばれた少なくとも1種以上の短繊維を使用することが好ましい。特に、パラ系アラミド繊維と、メタ系アラミド繊維との混合繊維を短繊維として用いた場合には、耐熱性、強度、樹脂成形後の加工性のバランスが優れている。
有機溶媒を用いる場合には、安全面に充分注意し、メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、ジエチルエーテル等の有機溶媒を使用することも可能である。
これらの中でも、樹脂硬化物の強度、耐熱性等の点からポリアミノアミド樹脂が好ましく、耐熱性、強度が優れる2,2’−(1,3フェニレン)ビス2−オキサゾリンとアミン硬化剤の混合物100質量部に対し、触媒には硬化促進剤として、例えば、n−オクチルブロマイドが5質量部以下からなる樹脂を使用することが好ましい。
なお、樹脂は抄造素形体形成工程において短繊維と一緒に抄造されてもよく、短繊維のみを含む抄造素形体を形成した後に、樹脂部材形成工程において抄造素形体に含浸されてもよい。
歯形形状加工工程では、水圧加工法により歯形形状を形成して、歯形形状素形体を得る。本実施形態の製造方法においては、水圧加工法を適用するので、比較的柔らかく加工が難しい抄造素形体を加工することができる。
樹脂部材形成工程では、歯形形状を有する金型内に、上記歯形形状素形体を配置し、樹脂を硬化させて樹脂部材を形成する。抄造素形体形成工程において樹脂を用いなかった場合には、金型内に樹脂を注入して歯形形状素形体に含浸させた後に、樹脂を硬化させる。金型における歯形形状は特に限定されず、平歯形状又ははす歯形状のいずれであってもよい。
歯切加工工程では、樹脂部材の歯切加工を行う。樹脂部材は、樹脂部材形成工程において歯形形状を付与されているので、そのまま樹脂製歯車として用いることもできるが、樹脂製歯車の精度を高めるために歯切加工を行うことが好ましい。適用される歯切加工としては、ホブ盤又はシェービング盤による仕上げ加工が挙げられる。ホブ盤としては、例えば三菱重工株式会社製のGE15A(商品名)を用いることができる。なお、ホブ盤による切削量は200μm以上になる。シェービング盤としては、例えば三菱重工株式会社製のFE30A(商品名)を用いることができる。なお、シェービング加工による切削量は少なく、20〜150μm程度になる。
(抄造用スラリの調製)
抄造用スラリを製造するために、投入時の短繊維と粉末状樹脂の濃度が4g/リットルとなる量の水を満たしたタンクを用意した。そしてこのタンク内に、樹脂部材中の短繊維の繊維総量が40体積%となる量の短繊維(パラ型全芳香族ポリアミド繊維、メタ型全芳香族ポリアミド繊維、及びフィブリル化処理した微細繊維との混合物)と、樹脂部材中の樹脂の総量が60体積%となる量の粉末状樹脂を入れた。
本実施例において用いた短繊維は、具体的には、アスペクト比:200、単繊維繊度:1.7detx、繊維長:3mmのパラ型全芳香族ポリアミド繊維(帝人テクノプロダクツ製「テクノーラ(登録商標)」)を50質量%、アスペクト比:200、単繊維繊度:2.2detx、繊維長:3mmのメタ型全芳香族ポリアミド繊維(帝人テクノプロダクツ製「コーネックス(登録商標)」)を45質量%、及びフリーネス値:300mlまでフィブリル化処理した微細繊維(デュポン株式会社製「ケブラー(登録商標)」)を5質量%混合したものである。また、粉末状樹脂としては、粒子径20μmのフェノール樹脂粉末(エア・ウォーター・ベルパール株式会社製「ベルパール(登録商標)」)を用いた。
次に攪拌機でタンク内の水を攪拌し短繊維と樹脂粉末を分散させ、抄造用スラリを得た。
図5(A)〜(D)に示す手順で、抄造装置8を用いて、抄造素形体7を形成した。抄造装置8は、ブッシュ3を挟持するための上支持台11及びブッシュ支持台12、抄造用スラリを圧縮成形するための上圧縮型13及び下圧縮型14、及びブッシュ支持台12及び下圧縮型14を収納する筒状金型9を備える。下圧縮型14は、ブッシュ支持台12及び筒状金型9の間に設けられ、下圧縮型14の上面に抄造用スラリが投入される。下圧縮型14には、スラリ中の溶媒を排出するための、複数の通液管15が設けられ、下圧縮型14の上面には、短繊維及び樹脂粉末が流出することを防止するための金網16が設けられている。なお、金網16としては、20メッシュのものを用いた。以下、順を追って説明する。
本実施例に使用したブッシュ3の各寸法は、以下のとおりである。
・ブッシュ内径:30mm
・ブッシュ外径:50mm
・ブッシュ全体厚み:13mm
・突出部の外径:54mm
次に、図5(B)に示すように、上支持台11を下方向に移動して、ブッシュ支持台12と上支持台11との間に、ブッシュ3を挟持した。ここで、下圧縮型14の位置は、ブッシュ3の軸方向中央から金網16上面までの距離が、50mmとなる位置とした。この状態で、下圧縮型14の上面に、上述の抄造用スラリを投入した。そして、真空吸引をして下圧縮型14に設けた複数の通液管15から水を排水することにより、抄造スラリ中の水を分離して、円環状の集積体17を得た。
次に、図5(C)に示すように、上圧縮型13を、ブッシュ3の軸方向中央から上圧縮型13下面までの距離が、50mmとなる位置まで下降させた。この状態では、ブッシュ3が、下圧縮型14と上圧縮型13との間の中央に位置する。
次に、図5(D)に示すように、ブッシュ3が、下圧縮型14と上圧縮型13との間の、中央に位置する状態を保持しながら、下圧縮型14と上圧縮型13とをそれぞれ同速度で相互に近づく方向に移動させ、集積体17が、厚み:20mmとなるまで圧縮した。圧縮を1分間行なうことにより、ブッシュ3と一体化した抄造素形体7を得た。
なお、圧縮の際、下圧縮型14の通液管15から、継続的に真空吸引した状態で圧縮した。
次に、作製した抄造素形体7をウォータジェット加工機にセットし、噴射ノズルを抄造素形体7の上面から1mmの位置に調整した。ウォータジェット加工機に、加工形状のデータを入力し、加工開始とともに入力したデータ形状でノズルを可動させ抄造素形体7の一部を切断し、ねじれ角が30度となるはす歯形状を有する歯形形状素形体を形成した。
この時、ウォータジェット加工機に使用する水には研磨剤等を添加せず、ポンプ圧力やノズル径を適正値することで水圧を上げ、抄造素形体7を切断した。
この歯形形状素形体を水分含有率が0.5質量%以下になるまで乾燥した。本実施例では、乾燥により歯形形状素形体の厚みは20〜50mmとなる。
図6に示す成形金型19を用いて、歯形形状素形体18を加熱加圧成形して、樹脂部材を得た。成形金型19は、固定金型20、固定金型20の中心に配置され、上下方向に変位する移動金型23、歯形形状素形体18を上から押圧するための上金型21、及び固定金型20等を保持する支持部材22を備える。固定金型20は、歯形形状素形体の歯形形状と同形状、すなわちねじれ角が30度であるはす歯形状を有する。移動金型23は、移動金型23を加熱するための加熱装置(図示せず)を有する。上金型21は、歯形形状素形体を押圧するための押圧部21Aを有する。以下、手順について説明する。
まず、歯形形状素形体18を、ブッシュ3が移動金型23に保持され、且つ歯形形状素形体18の歯形形状が固定金型20の歯形形状と一致するように配置する。次に、移動金型23を200℃に加熱した状態で、上金型21を下げて、押圧部21Aを歯形形状素形体18に接触、押圧することにより、加熱加圧成形した。この時、固定金型20の歯形形状に沿いながら型込めされる。
加熱加圧成形により、歯形形状素形体18中の粉末状樹脂が硬化され、歯形形状を有する樹脂部材が得られた。樹脂の硬化が不十分な場合は、必要に応じて後加熱工程を付与して、樹脂の硬化を確実に進めるようにしてもよい。本実施例では、厚み20〜50mmであった歯形形状素形体18は、加熱加圧成形により、ブッシュ3とほぼ同厚みの13mmとなった。
樹脂部材の外周を切削加工することにより歯部の精度を高め、樹脂製歯車を得た。
上記製造方法で作製した樹脂製歯車と、歯切形状加工を行わないこと以外は上記製造方法と同様の方法で作製した樹脂製歯車(比較例)の歯車強度を相対比較した。具体的には、樹脂製歯車を固定された金属製歯車と噛み合わせた状態で、基準ピッチ円上の周速が毎分0.33mmとなるように樹脂製歯車を回転させて、歯部が破壊する荷重を測定した。比較例における荷重を1とした場合の実施例1の荷重を表1に示す。
上記実施例1のウォータジェット加工で得られた切削片と水を離解機に投入し、短繊維と樹脂を一度分散させ、分散した水及び短繊維と樹脂を再度タンク内に投入し、抄造用スラリを再調製した。再調製した抄造用スラリを用いて実施例1の方法で樹脂製歯車を作製したところ、切削片を再利用した場合であっても、問題なく樹脂製歯車を作製可能であることが確認できた。
(抄造用スラリの調製、抄造素形体の形成及び歯切形状加工)
粉末樹脂を投入せず短繊維のみを分散させた抄造用スラリを調製した他は、上記実施例1と同様の工程を通して、抄造素形体の形成、歯切形状加工及び乾燥を行い、短繊維のみからなる歯形形状素形体を作製した。
なお、抄造素形体の形成の際に、上圧縮型13を、ブッシュ3の軸方向中央から上圧縮型13下面までの距離が、40mmとなるようにした。
またこの時、乾燥後の歯形形状素形体の厚みは20〜40mmとなる。
上述の図6に示す成形金型19を用いて、樹脂部材を得た。以下、手順について説明する。
まず、歯形形状素形体18を、ブッシュ3が移動金型23に保持され、且つ歯形形状素形体18の歯形形状が固定金型20の歯形形状と一致するように配置する。次に、移動金型23を180℃に加熱した状態で、上金型21を下げて、押圧部21Aを歯形形状素形体18に接触、押圧し、固定金型20の歯形形状に沿いながら型込めされる。
歯形形状素形体18を型込めした後に、上金型21と固定金型20を閉じて完全に塞ぐ。完全に塞いだ後に、成形金型19内に液状樹脂と硬化促進剤を注入して歯形形状素形体18に樹脂を含浸させ、加熱により樹脂は硬化され、歯形形状を有する樹脂部材が得られた。
液状樹脂を注入する際に、成形金型19内を真空にすることで素早く注入することができる。
本実施例では、厚み20〜40mmであった歯形形状素形体18は、樹脂注入成形により、ブッシュ3とほぼ同厚みの13mmとなった。
なお、上記液状樹脂としては、液状ポリアミノアミド樹脂(2,2’−(1,3フェニレン)ビス2−オキサゾリン(三国製薬工業株式会社製「1,3−PBO」)69質量%、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(三井化学株式会社製「MDA」)31質量%を混合し、140℃で溶融させたもの)を用いた。硬化促進剤としては、オクチルブロマイドを樹脂総質量に対して1質量%分を用いた。液状ポリアミノアミド樹脂の中に硬化促進剤を投入し、撹拌したものを成形金型19に注入した。
樹脂部材の外周を切削加工することにより歯部の精度を高め、樹脂製歯車を得た。
Claims (4)
- 外周部に歯形形状が形成された円環状の樹脂部材と、当該樹脂部材の内周部に配置されたブッシュと、を有する樹脂製歯車の製造方法であって、
抄造法により、短繊維を含む円環状の抄造素形体をブッシュの周囲に形成する抄造素形体形成工程と、
当該抄造素形体の外周部に、水圧加工法により歯形形状を形成して、歯形形状素形体を得る歯形形状加工工程と、
歯形形状を有する金型内に、前記歯形形状素形体を配置し、樹脂を注入及び硬化させて前記樹脂部材を形成する樹脂部材形成工程と、
を備える製造方法。 - 外周部に歯形形状が形成された円環状の樹脂部材と、当該樹脂部材の内周部に配置されたブッシュと、を有する樹脂製歯車の製造方法であって、
抄造法により、短繊維及び樹脂を含む円環状の抄造素形体をブッシュの周囲に形成する抄造素形体形成工程と、
当該抄造素形体の外周部に、水圧加工法により歯形形状を形成して、歯形形状素形体を得る歯形形状加工工程と、
歯形形状を有する金型内に、前記歯形形状素形体を配置し、前記樹脂を硬化させて前記樹脂部材を形成する樹脂部材形成工程と、
を備える製造方法。 - 前記樹脂部材形成工程後に、前記樹脂部材の歯切加工を行う歯切加工工程を更に備える、請求項1又は2に記載の樹脂製歯車の製造方法。
- 前記水圧加工法はウォータジェット加工法である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂製歯車の製造方法。
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JP2012180415A (ja) * | 2011-02-28 | 2012-09-20 | Sumitomo Bakelite Co Ltd | 繊維樹脂複合構造体の製造方法および成形体の製造方法 |
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