次に、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる。
また、以下に示す実施例はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
(実施例1)
本発明の実施例1は、画像形成装置としてインク循環システムを採用する複合型インクジェットプリンタを用い、この画像形成装置がLANを通じて複数の外部端末に接続される画像形成システムに本発明を適用した例を説明するものである。なお、画像形成装置をこの複合型インクジェットプリンタに限定するものではなく、非複合型インクジェットプリンタに本発明を適用することができる。
[画像形成システムの構成]
図1に示すように、実施例1に係る画像形成システム1は、画像形成装置10及び外部端末8を備え、これら画像形成装置10及び外部端末8を通信経路9によって接続している。画像形成装置10はここではインク循環システムを有する複合型カラーインクジェットプリンタである。外部端末8は複数の外部端末81、82、83、…を有し、これらには少なくともデスクトップ型パーソナルコンピュータ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯情報端末(PDA:personal digital assistance)等が含まれる。外部端末8は、画像情報を作成し、又は画像情報を保持し(記憶し)、この画像情報を印刷情報に変換して印刷ジョブを生成する。外部端末8はこの印刷ジョブを画像形成装置10に送信可能な機能を少なくとも有する。
通信経路9は、例えばオフィス内、複数のオフィス間、オフィスと家庭との間、オフィスと外出先との間等において、外部端末8と画像形成装置10との間を接続するデータ転送経路である。この通信経路9には、有線LAN、無線LAN、インターネット、電話回線、光ケーブル、USB(universal serial bus)ケーブル、SCSI(small computer system interface)規格に基づく例えばIEEE1394ケーブル等の少なくともいずれか1つのデータ転送経路が含まれる。
画像形成装置10は複数の外部端末81、82、83、…に共用され使用される。ここでは1つの画像形成装置10を例示しているが、画像形成装置10は1台に限定されるものではなく、複数の外部端末81等に対して2台以上の画像形成装置10が共用されてもよい。
[外部端末の構成]
実施例1に係る外部端末8は、図示していない中央演算処理ユニット(CPU)、記憶装置、入力装置(例えば、キーボード、マウス等)、表示装置(例えば、液晶表示モニタ等)、プリンタドライバ、通信処理部等の基本的構成を備えている。中央演算処理ユニットは、外部端末8の大半の制御を司り、又記憶装置に格納されたプログラムに基づき演算処理を実行する。この外部端末8においては、アプリケーションソフトウエアを用いて、文章、図面、記号、写真等の画像情報を生成することができ、又外部から画像情報を取り込むことができ、又外部に画像情報を送信することができる。
プリンタドライバを用いて画像情報から生成された印刷ジョブは、外部端末8から通信経路9を通じて画像形成装置10に送信される。
[画像形成装置の構成]
図1に示すように、実施例1に係る画像形成装置10は、印刷動作を行うレディモードと印刷動作を行わずに消費電力を減少するスリープモードとの間を遷移する機能を備えている。この画像形成装置10は、主電源スイッチ181と、電源ユニット182と、通信処理部130と、パネルユニット131と、制御部(コントローラ)6と、記憶部16と、印刷エンジン170と、スキャナユニット151及びファクシミリユニット152とを備えている。印刷エンジン170は、給紙トレイユニット100と、搬送ユニット3と、インク循環ユニット7とを備えている。ここで、制御部6は本発明の請求項に係る印刷手段である。
更に、実施例1に係る画像形成装置10は、印刷ジョブの情報に基づきスリープモード復帰直後からインク循環ユニット(第1のインク循環ユニット)7の稼働を要するとき、スリープモードに遷移する前のレディモードにおいて印刷ジョブの印刷を行うスリープモード前印刷手段61と、印刷ジョブの情報に基づきスリープモード復帰直後からインク循環ユニット7の稼働を要しないとき、印刷ジョブを格納し、スリープモードから復帰した後にスリープモードに遷移する前に格納された印刷ジョブの印刷を行うスリープモード後印刷手段62とを備える。
画像形成装置10の主電源スイッチ181には商用電源が接続され、この主電源スイッチ181は画像形成装置10の全体の電源のON、OFFを行うスイッチである。詳細には、主電源スイッチ181は、画像形成装置10をOFF状態からスタンバイモードに遷移し、又OFF状態以外(例えばスタンバイモード、スリープモード、レディモード等)からOFF状態に遷移するためのスイッチである。電源ユニット182は、主電源スイッチ181を通して供給される電源の調節を行い、この調節された電源を通信処理部130、パネルユニット131、制御部6、記憶部16、印刷エンジン170、スキャナユニット151、ファクシミリユニット152の各ユニットに供給する。
ここで、実施例1において、OFF状態とは、主電源スイッチ181がOFFの状態であって、各ユニットのすべてに電力が供給されていない状態である。スタンバイモードとは、主電源スイッチ181をOFFからONに操作した状態であって、電源ユニット182及びパネルユニット131にのみ電力が供給される状態である。また、スタンバイモードにおいては、パネルユニット131の表示部の表示はOFF状態にある。
スリープモードとは、主電源スイッチ181及び図示しない電源キーがON状態(電源が投入され切られていない状態)であって、無印刷動作状態(印刷処理が行われない状態)である。このスリープモードは、予め設定された一定時間なんらかの操作が無い場合、或いは予め設定された一定時間印刷ジョブが受信されない場合等に、自動的に遷移する省電力待機状態(電力削減状態)である。また、実施例1に係る画像形成装置10においては、スリープモードには、予め設定された日時から一定時間(一定期間)、例えばオフィスにおける昼休みの12時から13時までの期間、意図的に遷移するスリープモードが含まれる。スリープモードは、各ユニットの大半に電力が供給されない状態であり、特に画像形成装置10において電力消費が大きい、給紙トレイユニット100、搬送ユニット3及びインク循環ユニット7を含む印刷エンジン170には電力が供給されない。
ローパワーモードとは、パネルユニット131の表示部の表示はOFF状態(例えば、液晶型表示部の場合にはバックライトがOFF状態)であり、電力消費が大きい印刷エンジン170等の動作を実行しない状態である。レディモードとは、画像形成装置10の制御部6及び印刷エンジン170を含む大半のユニットに電力が供給された状態であって、即座に印刷ジョブに従って印刷動作が実行可能な状態である。
通信処理部130は、通信経路9に接続され、画像形成装置10と外部端末8との間において情報の送信、受信を行う。実施例1に係る画像形成装置10において、通信処理部130は、外部端末81から送信される印刷ジョブを通信経路9を通して受信する。また、通信処理部130は、外部端末8において作成された画像情報、印刷ジョブ等の電子情報を記憶した可搬性記憶装置、例えばUSBメモリ、IC(integrated circuits)カード、SD(secure digital)カード等の差込スロットを備え、これらの可搬性記憶装置から電子情報の読み出し書き込みを行える機能を備えてもよい。
パネルユニット131は、ユーザが直接画像形成装置10を操作し、例えば印刷、複写等の印刷動作又はスキャナユニット151やファクシミリユニット152を利用した画像読み取り動作を行うための操作制御部である。パネルユニット131には、図示しないが、例えば動作状態等を表示する表示部、操作を行うタッチパネル、キー、ボタン等が組み込まれている。
記憶部16には例えば大記憶容量を有するハードディスクが使用されている。記憶部16には、実施例1において、通信処理部130を通して受信された印刷ジョブ、この印刷ジョブの印刷動作を管理する印刷ジョブリスト、画像形成装置10の制御に必要なプログラム等が格納されている。実施例1に係る画像形成装置10において、記憶部16には、更にスリープモード後印刷手段62を構築し、スリープモード前又はスリープモード中に印刷ジョブリストに溜まっている印刷ジョブの一部をスリープモード復帰後まで一時的に格納する印刷ジョブ格納手段(印刷ジョブ格納部)161が配設されている。この印刷ジョブ格納手段161は、記憶部16の記憶領域の一部を割り当てて構成してもよいが、別の記憶装置として装備してもよい。別の記憶装置としては、ハードディスク、不揮発性メモリ(例えば、EEPROM:electronically erasable and programmable read only memory)等を実用的に使用することができる。
印刷エンジン170は、記録媒体を格納する給紙トレイユニット100と、給紙トレイユニット100から供給される記録媒体をプリントヘッド(2)に搬送する搬送ユニット3と、プリントヘッドに印刷用のインクを循環させるインク循環ユニット7とを少なくとも備えている。この印刷エンジン170の各ユニットの具体的な構成は後述する。
制御部6は、通信処理部130、パネルユニット131、記憶部16、印刷エンジン170、スキャナユニット151、ファクシミリユニット152等の大半の各ユニットに接続され、これらの各ユニットの制御を司る。
更に、制御部6は、スリープモードに遷移する前に印刷ジョブリストに溜まっている印刷ジョブの情報に基づき、スリープモードから復帰した後に印刷動作を行うときにインク循環ユニット7の稼働を要しないか要するかを判定する判定手段(実施例1において、第1の判定手段又は第1の判定ユニット)63を備えている。ここで、インク循環ユニット7の稼働を要しないとは、インク循環ユニット7の稼働、特に大きな消費電力を要する装置(ここでは、図5に示すインク循環ポンプ75、インク温度調整部76及び77が少なくとも該当する。)の稼働を行わず、従って一定の印刷品質を保証する温度範囲内にインク温度を調整しなくても(インク温度を高めなくても)、良好な印刷品質を得ることができるという意味において使用されている。
実施例1において、判定手段63のインク循環ユニット7の稼働を要しないとの判定は、印刷ジョブの印刷のときに低温ミストの発生がし難い又は低温ミストの発生が目立たないとの判定に等価である。また、インク循環ユニット7の稼働を要するとは、インク循環ユニット7の稼働、特に上記の大きな消費電力を要する装置の稼働を行い、従って一定の印刷品質を保証する温度範囲内にインク温度を調整し(インク温度を高め)、良好な印刷品質を得ることができるという意味において使用されている。実施例1において、判定手段63のインク循環ユニット7の稼働を要するとの判定は、印刷ジョブの印刷のときに低温ミストの発生がし易い又は低温ミストの発生が目立つとの判定に等価である。
印刷品質が保証されるインク温度例えば20度から25度の範囲に満たない低いインク温度を有するインクの粘度は高くなり、インク温度が低すぎるとプリントヘッド(2)のインク吐出ノズルからインクを吐出させるには吐出電圧(圧電素子に印加する電圧)が高くなり、インクが霧状に飛散する。これが低温ミストである。この低温ミストが発生し難いかし易いかは印刷ジョブの画像情報に対応させて実験的に算出することができる。また、低温ミストの発生が目立たないか目立つかは、同様に、印刷ジョブの画像情報に対応させて実験的に算出することができる。
印刷ジョブには印刷頁数、印刷部数の情報が含まれており、この印刷頁数、印刷部数の情報から低温ミストの発生し難さ、し易さ、又は低温ミストの発生が目立たない、目立つを判定することができる。印刷頁数、印刷部数が少ない場合には、インクが霧状に飛散する確立が低く、低温ミストの発生がし難い傾向又低温ミストの発生が目立たない傾向を示し、判定手段63はこのように判定する。一方、印刷ジョブの印刷頁数、印刷部数が多い場合には、インクが霧状に飛散する確立が高く、低温ミストの発生がし易い傾向又は低温ミストの発生が目立つ傾向を示し、判定手段63はこのように判定する。
図2(A)に示すように、記録媒体(100P)に対するインク滴のドロップ数(吐出数)である画像率(単位面積当たりのドロップ数)が低い場合、低温ミストの発生がし難い。また、低温ミストの発生が目立たない。図2(B)に示すように、画像率が高い場合、低温ミストの発生がし易い。また、低温ミストの発生が目立つ。印刷ジョブに含まれる画像情報から画像率を算出することができ、閾値を任意に設定すれば、判定手段63において低温ミストの発生し難さ、し易さ又は低温ミストの発生が目立たない、目立つを判定することができる。なお、インク吐出ノズルから吐出されるインク滴のドロップ数が1〜2の範囲内の極端に少ない場合には、インク滴が一定の体積にならずに逆に霧状に飛散し易い傾向を示し、このような場合には判定手段63は低温ミストが発生し易い又は低温ミストの発生が目立つと判定する。
更に、記録媒体(100P)の端部特にプリントヘッド2への搬送方向の先端部と後端部においては、図3(A)に示すように、記録媒体の端部に画像が無い場合、低温ミストの発生がし難く又は低温ミストの発生が目立たない。逆に、図3(B)に示すように、記録媒体の端部に画像が有る場合、低温ミストの発生がし易い又は低温ミストの発生が目立つ。記録媒体の端部においては、吸引装置5の吸引力や記録媒体の搬送に伴い空気に流れが発生し、この空気の流れが低温ミストを誘発する。印刷ジョブに含まれる画像情報の該当個所において画像の有無から、判定手段63において低温ミストの発生し難さ、し易さ又は低温ミストの発生が目立たない、目立つを判定することができる。
また、実施例1に係る画像形成装置10は、記録媒体の中央部分の印字率は高くないが、記録媒体のプリントヘッド2への搬送方向の先端部或いは後端部の印字率が高い場合、低温ミストの発生がし易い又は低温ミストの発生が目立つ範疇に含む。逆に、画像形成装置10は、記録媒体の中央部分の印字率は低くないが、記録媒体のプリントヘッド2への搬送方向の先端部或いは後端部の印字率が低い場合、低温ミストの発生がし難い又は低温ミストの発生が目立たない範疇に含む。
実施例1に係る判定手段63は、印刷ジョブに含まれる、印刷頁数、印刷部数、画像率の情報、又は記録媒体の端部に印刷される画像の有無の情報のいずれか1つの情報を用いて低温ミストの発生のし難さ、し易さの判定を行う(低温ミストの発生が目立たない、目立つの判定についても以下同様。)。なお、判定手段63においては、2以上の情報に基づき、低温ミストが発生し難いかし易いかを判定することができる。また、判定手段63は、図1において、ハードウエア構成(回路構成)として図示しているが、制御部6或いは記憶部16に格納されたソフトウエア(プログラム)とそれを実行する制御部6に内蔵される中央演算処理ユニットとを用いて構成してもよい。
実施例1に係る画像形成装置10において、スリープモード前印刷手段61は、判定手段63と、判定手段63において低温ミストの発生がし易い(又は低温ミストの発生が目立つ)と判定された印刷ジョブの印刷をスリープモードに遷移する前に行う印刷手段(第1の印刷手段)とを備えている。印刷手段は、印刷エンジン170の給紙トレイユニット100と、搬送ユニット3と、インク循環ユニット7と、これらのユニットの制御を行う制御部6とにより構成されている。スリープモード前印刷手段61において、インク循環ユニット7は、スリープモードに遷移する前までのインク温度を、インク温度調整部(76、77)を用いて低温ミストが発生しないような適温に維持する。つまり、スリープモード前印刷手段61は、その動作モードはレディモードであり、図5に示すインク循環ユニット7の特にインク循環ポンプ(75)、インク温度調整部76若しくは77を稼働し、インク循環を行うとともに、インク温度を適温に調整した状態において、低温ミストが発生し易い又は低温ミストの発生が目立つ印刷ジョブの印刷を行う。スリープモード前印刷手段61には結果的に制御部6が含まれ、スリープモード前印刷手段61の動作制御の大半は制御部6を用いて行われている。
スリープモード前印刷手段61の基本動作は、スリープモードに遷移する前、具体的には後述する印刷動作の制御方法において説明するが、スリープモードに遷移する直前の遷移時間に到達したタイミングにおいて、印刷ジョブリストに溜まっている印刷ジョブのうち、低温ミストの発生がし易い又は低温ミストの発生が目立つと判定された印刷ジョブの印刷を行う。また、スリープモードの遷移時間に到達したタイミングを含みスリープモードに遷移するまでの間に印刷ジョブを受信した場合には、スリープモード前印刷手段61は、受信された印刷ジョブのうち、低温ミストの発生がし易い又は低温ミストの発生が目立つと判定された印刷ジョブの印刷を行う。複数の印刷ジョブを連続して受信する場合も同様に、スリープモード前印刷手段61は、低温ミストの発生がし易い又は低温ミストの発生が目立つと判定された印刷ジョブの印刷を行う。
ここで、複数の印刷ジョブを連続して受信するとは、例えば1つの印刷ジョブを受信してこの印刷ジョブの展開処理を行い印刷動作が実行可能になるまでの間に他の1つの印刷ジョブが受信されることを意味する。なお、複数の印刷ジョブが連続して受信され、スリープモードに遷移するまでの時間が長時間になる場合には、消費電力化を考慮に入れて、複数の印刷ジョブを連続して受信する時間を一定時間内に設定することができる。
スリープモード後印刷手段62は、判定手段63と、判定手段63において低温ミストの発生がし難い(又は低温ミストの発生が目立たない)と判定された印刷ジョブを一時的に格納する印刷ジョブ格納手段161と、印刷ジョブ格納手段161に格納された印刷ジョブの印刷をスリープモードから復帰し後に行う印刷手段(第1の印刷手段)とを備えている。この印刷手段は、印刷エンジン170の給紙トレイユニット100と、搬送ユニット3と、これらのユニットの制御を行う制御部6とにより構成されている。画像形成装置10において、スリープモードはインク循環ユニット7の稼働を停止した状態にあり、インクの循環は行われず、インク温度の調整は行われない。従って、環境温度にもよるが、スリープモードにおいて、インク循環ユニット7のインク温度は時間経過に伴い低くなる。
スリープモード後印刷手段62の基本動作は、スリープモードの復帰直後に図5に示すインク循環ユニット7の特にインク温度の調整に係るインク温度調整部76若しくは77の稼働を行わず、スリープモードの復帰直後のインク温度の状態のまま、低温ミストが発生し難い又は低温ミストの発生が目立たない印刷ジョブの印刷を行う。このとき、印刷ジョブの印刷を行うので、インク循環ユニット7のインク温度の調整に係るインク温度調整部76若しくは77の稼働は行われないが、インク循環に係るインク循環ポンプ(75)等は稼働を行う。
また、スリープモード後印刷手段62の基本動作において、スリープモードの復帰直後のインク温度が低過ぎる場合、若しくは適正なインク吐出量を確保し難しい場合には、プリントヘッド(2)内の図示しない圧電素子に通常のインク吐出を行う電圧よりも高い電圧を印加してプリントヘッドを駆動することができる。高い電圧駆動により、粘度の高いインクを吐出することで、インク低温時にインク吐出時には、ミストが発生し、記録媒体(印刷物)にミストの発生が目立ち易くなる。なお、基本動作の終了後には、インク循環ユニット7は通常の稼働を行い、インク温度が調整される。
スリープモード後印刷手段62はスリープモード前印刷手段61と同様に結果的に制御部6を含む。従って、スリープモード後印刷手段62の動作制御の大半は制御部6を用いて行われている。
また、実施例1において、印刷ジョブ格納手段161に格納された印刷ジョブは、スリープモードから復帰した後、インク循環ユニット7が稼働しインク温度調整部(76又は77)を用いてインク温度が低温ミストの発生を誘発しない適温になるまでの間に印刷される。この場合には、原則として、スリープモード後印刷手段62は、スリープモードの復帰直後のインク温度のまま、インク温調を行わずに印刷ジョブの印刷を行う。上記の通り、インク温度が低過ぎる場合若しくは適正なインク吐出量を確保し難しい場合には、プリントヘッドの圧電素子に高い電圧を印加した状態において、印刷ジョブの印刷が行われる。
これにより、通常の印刷ジョブの印刷において、インク低温時のインク吐出では、ミストが発生し易くなるか又は記録媒体にミストが目立ち易くなるが、ミストが発生し難い又はミストが目立ち難い印刷ジョブの印刷の場合には、ミストの影響をさほど受けない状態で、インクの温度を低温のままで印刷を開始することができる。
なお、スリープモード後印刷手段62は、インク循環ユニット7が稼働しインク温度が適温になる所定時間経過後に、印刷ジョブ格納手段161に格納された印刷ジョブ(低温ミストが発生し難い又は低温ミストの発生が目立たない印刷ジョブ)を印刷する場合には、インク温度が適温になっているので、プリントヘッドの圧電素子に高い電圧を印加することもなく、印刷ジョブの印刷を行う。スリープモード復帰後から適温になるまでの所定時間はインク適温温度と現在のインク温度の上昇傾向とから算出し、この所定時間を越えているか否かが判断される。
更に、スリープモード後印刷手段62は、インク温度が適温になる途中(所定時間に至らない場合又は所定時間を越えない場合)において印刷ジョブ格納手段161に格納された印刷ジョブの印刷を行ってもよい。この場合、スリープモードの復帰直後のインク温度のまま、又はプリントヘッドの圧電素子に高い電圧を印加した状態において、印刷ジョブの印刷が行われる。
また、スリープモード後印刷手段62においては、インク温度が適温になるまでの時間に至らない場合、プリントヘッドの圧電素子に高い電圧を印加するのではなく、インク温度そのものを適正な温度に調整してから印刷ジョブの印刷を行うことができる。
実施例1に係る画像形成装置10においては、特に印刷エンジン170の給紙トレイユニット100、搬送ユニット3及びインク循環ユニット7のメカニカル動作を伴うユニットの稼働に伴い消費電力が増大する。従って、スリープモード機能を有する画像形成装置10は、印刷動作や印刷ジョブの受信をしていないときに電源を供給せずに停止状態にある(スリープモードの状態にある)ので、電力消費を大幅に減少可能である。
なお、実施例1に係る画像形成装置10において、スリープモード後印刷手段62を構築する印刷ジョブ格納手段161は記憶部16に配設されているが、この印刷ジョブ格納手段161を制御部6の内部に配設することができる。この場合、印刷ジョブ格納手段161は、制御部6に本来組み込まれている記憶部の一部を用いて(割り当てて)構成されるか、或いは専用の記憶部を新たに増設し構成される。
[画像形成装置の具体的構成:給紙トレイユニット及び搬送ユニットの構成]
図4に示すように、実施例1に係る画像形成装置10は、印刷を行う記録媒体100Pを供給し、この記録媒体100Pに印刷を行い、この印刷された記録媒体100Pを排出する搬送ユニット3を有する。搬送ユニット3は、給紙トレイユニット100(100A−100E)から供給される記録媒体100Pを搬送経路に導く給紙ローラ31と、記録媒体100Pの位置合わせや斜行修正を行うレジストローラ32と、搬送経路であって印字部に配設された搬送ベルト37と、搬送経路中に配設された搬送ローラ33と、切換機構34と、スイッチバック機構36等を備えている。ここで、記録媒体100Pは用紙、封筒、フィルム、ディスク等のいずれかである。また、用紙には、薄紙、普通紙等のインク使用量が少ないものと、マット紙、高品位紙等のインク使用量が多いものとがいずれも含まれる。
給紙トレイユニット100は、画像形成装置10の符号を付けていない筐体の左側側面にこの筐体から外側に突出する着脱自在に配設された給紙台100Aと、筐体内部に配設された複数の給紙トレイ100B−100Eとを備えている。これらの給紙台100A−100Eには印刷前の記録媒体100Pが格納されている。また、画像形成装置10の筐体の左側上部には排紙台100Fが配設されている。排紙台100Fには印刷後の記録媒体100Pが排出される。
画像形成装置10は、搬送経路中の印字部において、給紙トレイユニット100から供給される記録媒体100Pの搬送方向に対して直交する方向に多数のノズルが配列されたプリントヘッド2を複数備えている。それぞれのプリントヘッド2は、ブラックインク、シアンインク、マゼンダインク、イエローインクを吐出し、ライン単位において印刷動作を行う。実施例1に係る画像形成装置10は、インクジェット方式を採用するカラーインクジェット型画像形成装置である。
なお、実施例1に係る画像形成装置10は、ライン単位において印刷動作を行う方式だけに限定されるものではなく、ライン方向に走査して印刷動作を行うシリアル方式に適用してもよい。
[画像形成装置の印刷動作]
図4に示すインクジェット型画像形成装置10の印刷動作は、前述の制御部6を用いて以下の通り実行される。まず最初に、給紙トレイユニット100から供給された記録媒体100Pは、図示しないモータによって駆動される給紙ローラ31によって搬送経路に導かれ、レジストローラ32に搬送される。レジストローラ32は、搬送された記録媒体100Pの供給方向先端の位置合わせ、斜行修正等を行う。記録媒体100Pは、所定のタイミングにおいてプリントヘッド2が配列された印字部の方向に搬送される。
レジストローラ32から搬送された記録媒体100Pは搬送ベルト37によってプラテンプレート4上に更に搬送される。プラテンプレート4上において、記録媒体100Pは吸引装置5からの吸引力によって搬送ベルト3の表面上に吸引されながら搬送される。印字部に搬送された記録媒体100Pにはプリントヘッド2から各色インクが吐出され、カラー印刷、モノクロ印刷又はグレースケール印刷が行われる。
印刷が完了した記録媒体100Pは、搬送ローラ33によって搬送され、片面印刷の場合にはそのまま排紙台100Fに導かれて排紙される。また、両面印刷の場合には、片面印刷済みの記録媒体100Pが切換機構122を通してスイッチバック機構36に導かれ、この記録媒体100Pは印刷面を反転させて再び印字部に搬送される。片面印刷の場合と同様に、記録媒体100Pは再度印字部に搬送され、印刷を行った後に排紙台100Fに排紙される。
[インク循環ユニットの具体的構成]
実施例1に係る画像形成装置10のインク循環ユニット7は、図5に示すように、プリントヘッド2と、インクの貯溜を行う第1のタンク(上流タンク又は第1のインクタンク)71及び第2のタンク(下流タンク又は第2のインクタンク)72と、インク循環経路700と、インクを貯溜し第2のタンク72にインクを補充するインクボトル73と、第2のタンク72に接続された圧力調整器74と、第2のタンク72に貯溜されたインクを第1のタンク71に循環させるインク循環ポンプ75と、インク循環経路701に配設されたインク温度調整部(加熱装置)76及びインク温度調整部(冷却装置)77とを備えている。インク循環経路700は、第1のタンク71に貯溜されたインクをプリントヘッド2に供給するインク供給経路701、プリントヘッド2から回収されたインクを第2のタンク72に回収させるインク回収経路702、第2のタンク72に貯溜されたインクを第1のタンク71に循環させるインク回収経路703のそれぞれが直列に接続されて構築されている。
第1のタンク71には、第2のタンク72に貯溜されたインク又はインクボトル73から補充されたインクがインク回収経路703を通して循環され、この循環されたインクが貯溜される。インク回収経路703においてインクはインク循環ポンプ75を用いて強制的に循環される。この第1のタンク71には大気開放経路711が接続され、この大気開放経路711には制御部6によって開閉動作が制御される大気開放弁が配設されている。この大気開放弁の開閉動作に基づき、第1のタンク71に貯溜され循環されるインクの圧力が調整される。第1のタンク71はプリントヘッド2に供給されるインクの流量並びに圧力を一定に保持する機能を有している。第1のタンク71はインク供給経路701の一端に接続されている。インク供給経路701の他端はインク分配器21を通してプリントヘッド2に接続されている。
インク分配器21は、第1のタンク71からインク供給経路701を通して複数のプリントヘッド2のそれぞれに均等にインクを供給する機能を有する。インク分配器21は、プリントヘッド2の直前に配設され、プリントヘッド2にインクを供給する点においてインク供給経路に属し、インク循環経路700を構築する。
また、複数のプリントヘッド2のそれぞれはインク集配器22を通してインク回収経路702の一端に接続され、このインク回収経路702の他端は第2のタンク72に接続されている。インク集配器22は、プリントヘッド2において使用されない余剰のインクを回収し、第2のタンク72に循環する機能を有する。インク集配器22は、プリントヘッド2の直後に配設され、プリントヘッド2からインクを回収する点においてインク回収経路に属し、インク循環経路700を構築する。
実施例1において、印刷動作に使用される直前の最も正確なインク温度を測定するために、インク分配器21には温度計(温度センサ)210が配設されている。温度計210を用いて測定されたインク温度は制御部6に送られる。また、プリント動作に使用される直後の最も正確なインク温度を測定するために、インク集配器22には温度計(温度センサ)220が配設されている。温度計220を用いて測定されたインク温度は制御部6に送られる。
複数のプリントヘッド2のそれぞれのインク吐出ノズルが配列されたノズル面側には、ヘッドキャップ23が配設されている。このヘッドキャップ23はヘッドキャップ駆動部24に接続されている。ヘッドキャップ23は、必要に応じてプリントヘッド2のノズル面を塞ぎ、インクの吐き出しを停止させるとともに、インク循環経路700内を経路外に対して閉じる機能を有する。ヘッドキャップ23の動作は、制御部6からの制御信号に基づき、ヘッドキャップ駆動部24によって実行される。
第2のタンク72にはプリントヘッド2においてプリントに使用されなかった余剰のインクが回収され貯溜される。インク回収経路702の他端側には制御部6によって開閉動作が制御される開閉弁が配設されている。第2のタンク72には、圧力調整経路707を通して、第2のタンク72内の圧力を調整する圧力調整器74が接続されている。圧力調整器74は、必ずしもこの構成に限定されるものではないが、実施例1において、簡易な構成を有しかつ製作費用を減少することができる、伸縮動作に伴い加圧又は減圧を行うベローズ機構により構成されている。圧力調整器74は、制御部6に接続され、この制御部6からの制御信号に基づき圧力調整を行う。この圧力調整器74は、プリントヘッド2に適正な負圧を掛ける負圧調整器としての主機能を有する。また、圧力調整経路707には大気開放経路708が接続され、この大気開放経路708には制御部6によって開閉動作が制御される大気開放弁が配設されている。第2のタンク72は、基本的に第1のタンク71と同様に、循環されるインクの流量並びに圧力(ここでは負圧)を一定に保持する機能を有している。
第2のタンク72にはインク補充経路706を通してインクボトル73が接続されている。インク補充経路706には制御部6によって開閉動作が制御される補充量調整弁が配設されている。インクボトル73は循環されるインク量が減少した場合にインクを補充する機能を有している。
インク温度調整部76及び77はインク循環経路700に沿って配設されている。インク温度調整部76及び77は良好な印刷結果を得ることができるインク温度に調整する機能を有する。インク温度調整部76には実施例1において熱電ヒータが使用されている。インク温度調整部77は、熱交換によってインクの温度を下げる冷却フィンと熱気の吸引若しくは冷気の送風によってインク温度を下げる冷却ファンとを併用して構成されている。
ここで、図5に示すインク循環ユニット7は1色分である。実施例1に係る画像形成装置10はカラーインクジェット型画像形成装置であるので、図示しないが同様のインク循環ユニット7は他に3つ組み込まれ、画像形成装置10には合計4個のインク循環ユニット7が組み込まれている。
なお、プリントヘッド2には前述のように図示しない圧電素子が組み込まれ、制御部6からの駆動信号に基づき圧電素子に電圧が印加され、プリントヘッド2のインク吐出ノズルからインクを吐出すように構成されている。インク温度が低過ぎる場合等に圧電素子に印加する電圧の調整は制御部6からの制御信号に基づき行われる。
[インク循環ユニットのインク循環動作]
図5に示すインク循環ユニット7の全体のインク循環動作は以下の通りである。まず、第1のタンク71に貯溜されたインクがインク供給経路701、インク分配器21のそれぞれを通してプリントヘッド2に供給される。第1のタンク71からインク供給経路701を通してプリントヘッド2に供給されるインクは、インク温度調整部76又は77を通して良好な印刷結果を得られる温度に調整される。
プリントヘッド2においては記録媒体100Pに印刷を行うために供給されたインクが消費される。印刷に使用されなかった余剰のインクはインク集配器22を通して回収され、この回収されたインクはインク回収経路702を通して第2のタンク72に回収され貯溜される。第2のタンク72に貯溜されたインクはインク回収経路703、インク循環ポンプ75を通して第1のタンク71に強制的に循環される。インク回収経路703を通して第1のタンク71に循環され回収されたインクは、再度プリントヘッド2に供給するために貯溜される。
ここで、インク分配器21に配設された温度計210又はインク集配器22に配設された温度計220の少なくともいずれか一方を用いてインクの温度が測定される。インク温度が低く、良好な印刷結果を得ることができない場合には、制御部6はインク温度調整部76を駆動し、循環されるインクが温められる。インク温度が高く、やはり良好な印刷結果を得ることができない場合には、制御部6はインク温度調整部77を駆動し、循環されるインクが冷却される。
また、インク循環ユニット7において、第1のタンク71内に貯溜されたインク量、第2のタンク72に貯溜されたインク量は符号を省略した液面検出センサを用いて管理されている。印刷動作が継続して実行され、インクが消費されることによって第1のタンク71又は第2のタンク72に貯溜されたインク量が減少し規定値に満たない場合には、制御部6は補充量調整弁を開き、インクボトル73からインク補充経路706を通して第2のタンク72にインクの補充が行われる。
[画像形成装置の印刷動作の制御方法]
次に、実施例1に係る画像形成装置10において印刷動作の制御方法は以下の通りである。
図6に示すように、まず、実施例1に係る画像形成装置10において、スリープモードの遷移時間に到達する(S1)と、記憶部16に格納された印刷ジョブリストに印刷ジョブが存在するか否かを確認する(S2)。印刷ジョブリストに印刷ジョブがない場合にはスリープモードに遷移する(S5)。
ここで、印刷ジョブリストには、図7に示すように、例えばジョブ番号、ユーザ名、画像情報、印刷頁数、印刷部数等の情報を含む印刷ジョブが格納される。更に、ここでは、印刷ジョブの情報に、画像率の情報及び端部に画像が存在するか否かの情報が含まれる。なお、画像率の情報は、低温ミストが発生し難いかし易い又は低温ミストの発生が目立たないか目立つかを判定手段63において判定するときに、画像情報の容量と印刷範囲の情報とを用いてから算出してもよい。また、端部に画像が存在するか否かの情報は、同様に、低温ミストが発生し難いかし易い又は低温ミストの発生が目立たないか目立つかを判定手段63において判定するときに、画像情報から判定してもよい。
図7に例示する印刷ジョブ1においては、文字主体の画像情報であり容量が小さく、印刷頁数2枚及び印刷部数1部と印刷量が少ないので、画像率は低く、又端部に画像が存在しない。印刷ジョブ2においては、図形や写真主体の画像情報であり容量が大きく、印刷頁数100枚及び印刷部数2部と印刷量が多いので、画像率は高く、又端部に画像が存在する。印刷ジョブ3においては、文字主体の画像情報であり容量が小さく、印刷頁数1枚及び印刷部数1部と印刷量が少ないので、画像率は低く、又端部に画像が存在しない。
印刷ジョブリストに印刷ジョブの存在が確認されると、判定手段63によって、印刷ジョブを印刷するときに低温ミストが発生し難い印刷ジョブか、低温ミストが発生し易い印刷ジョブかが判定される(S3)。また、判定手段63は、印刷ジョブを印刷したときに低温ミストの発生が目立たない印刷ジョブか、低温ミストの発生が目立つ印刷ジョブかを判定してもよい。実施例1において、判定手段63は、いずれの判定であってもよく、双方を組み合わせて総合的に判定してもよい。図7に示す印刷ジョブ2は低温ミストの発生がし易い(又は低温ミストの発生が目立つ)と判定され、これらの印刷ジョブ2は、スリープモード前印刷手段61を用いて、スリープモードに遷移する前に印刷が実行される(S4)。スリープモードに遷移する前の画像形成装置10の動作状態は例えばレディモードであり、インク循環ユニット7が稼働状態か稼働後の状態にあって、インク温度が適正な状態にある。従って、インク循環ユニット7を改めて稼働し、インク温度を低温から適正な温度まで高める必要が無く、即座に印刷ジョブ2の印刷を実行することができる。また、印刷ジョブ2の印刷動作に際して、印刷ジョブ2の容量が大きく、印刷が完了するまでに多少の時間を要し、インク温度が低下し、適正なインク温度から逸脱する場合には、インク循環ユニット7を稼働し(又は稼働を継続し)、インク温度の調整が行われる。
一方、図7に示す印刷ジョブ1及び3は低温ミストの発生がし難い(又は低温ミストの発生が目立たない)と判定され、この印刷ジョブ2は、スリープモード後印刷手段62の印刷ジョブ格納手段161に一時的に格納される(S6)。印刷ジョブ2の印刷が実行され、印刷ジョブ1及び3が格納された後、画像形成装置10はスリープモードに遷移する(S25)。
画像形成装置10のユーザによる操作、画像形成装置10において新たな印刷ジョブの受信、又は一定時間経過後、画像形成装置10はスリープモードから復帰する(S7)。ここで、インク循環ユニット7のプリントヘッド2の近傍に配設された温度計210、220(図5参照。)を用いてインク温度が測定され(S8)、インク循環ユニット7に循環されるインク温度が印刷品質を保証する適正な温度範囲内であるか否かが判定される(S9)。
適正な温度範囲内である場合、スリープモード後印刷手段62の印刷ジョブ格納手段161に一時的に格納された印刷ジョブがあるか否かが判定される(S10)。ここでは、印刷ジョブ格納手段161に一時的に印刷ジョブ1及び3が格納されているので、この印刷ジョブ1及び3の印刷が実行される(S11)。印刷ジョブ1及び3は、低温ミストが発生し難い(又は低温ミストの発生が目立たない)印刷ジョブであるが、インク温度が適正な範囲内にあるので、勿論、低温ミストを発生することなく(又は低温ミストの発生が目立たない状態において)印刷を行える。しかも、スリープモードから復帰した直後であって、インク循環ユニット7を稼働することがなく、印刷動作を実行することができる。印刷が完了した後、画像形成装置10は印刷待機状態(例えば、スタンバイモード、ローパワーモード又はレディモード)への移行を行う(S12)。また、ステップS10において、印刷ジョブ格納手段161に印刷ジョブが格納されていない場合には、画像形成装置10は印刷待機状態への移行を行う(S12)。
ステップS9において、適正な温度範囲外の場合(具体的には低い場合)、適正な温度範囲内の場合と同様にまずスリープモード後印刷手段62の印刷ジョブ格納手段161に一時的に格納された印刷ジョブがあるか否かが判定される(S13)。ここでは、印刷ジョブ格納手段161に一時的に印刷ジョブ1及び3が格納されているので、この印刷ジョブ1及び3の印刷が実行される(S14)。印刷ジョブ1及び3は、低温ミストが発生し難い印刷ジョブであり、インク温度が適正な範囲外であっても低温ミストを発生することなく印刷を行える。しかも、スリープモードから復帰した直後であって、インク循環ユニット7の特にインク温度の調整に係るインク温度調整部76及び77を稼働することがなく、印刷動作を実行することができる。なお、前述のように、スリープモードにおいては、インク循環ユニット7が稼働していない状態であり、インク温度の調整はなされず、通常、インク温度は環境温度に影響受けて低くなる。スリープモードの復帰直後のインク温度が低過ぎる場合、若しくは適正なインク吐出量を確保し難しい場合には、プリントヘッド2内の図示しない圧電素子に通常のインク吐出を行う電圧よりも高い電圧を印加してプリントヘッドを駆動し、印刷ジョブ1及び3の印刷が実行される。
印刷が完了した後、又はスリープモードから復帰した直後のステップS9以降において、インク循環ユニット7の稼働が開始され(S15)、インク温度の調整が行われる。インク温度の調整が行われ、適正なインク温度に調整されると、画像形成装置10は印刷待機状態への移行を行う(S12)。また、ステップS13において、印刷ジョブ格納手段161に印刷ジョブが格納されていない場合には、インク循環ユニット7を稼働した後(S15)、画像形成装置10は印刷待機状態への移行を行う(S12)。
なお、インク循環ユニット7の稼働において、インク温度が低い場合には、インク循環ポンプ75を稼働しインクを循環し、インク温度調整部76を稼働し循環されるインクを加熱し、インク温度が高められる。インク温度が高い場合には、インク循環ポンプ75を稼働しインクを循環し、インク温度調整部77を稼働し循環されるインクを冷却し、インク温度が下げられる。また、実施例1に係る画像形成装置10において、低温ミストが発生し難い印刷ジョブを早急に印刷する必要がある場合には、ユーザの画像形成装置10の直接操作により、或いは印刷ジョブに含まれる早急に印刷する旨の情報により、スリープモードに遷移する前に印刷を行うことができる。
[実施例1の特徴]
以上説明したように、実施例1に係る画像形成装置10においては、インク循環ユニット7の稼働を要する印刷ジョブにおいてはスリープモード前印刷手段61を用いてスリープモードに遷移する前に印刷を行い、インク循環ユニット7の稼働を要しない印刷ジョブにおいてはスリープモード後印刷手段を用いてスリープモードの復帰後に印刷を行うことができる。従って、スリープモードの復帰後において、インク制循ユニット7を稼働してインクの温度調整をすることなく、かつインクの温度調整に要する時間を経過することなくスリープモードに遷移する前に格納された印刷ジョブの印刷を行えるので、この印刷ジョブの印刷においてはインク循環ユニット7の稼働に要する消費電力を低減することができ、かつ印刷時間を短縮することができる。
また、実施例1に係る画像形成装置10においては、低温ミストが発生し易い(又は低温ミストの発生が目立つ)印刷ジョブをスリープモード前印刷手段61を用いてスリープモードに遷移する前に印刷を行い、低温ミストが発生し難い(又は低温ミストの発生が目立たない)印刷ジョブをスリープモード後印刷手段62を用いてスリープモードの復帰後に印刷を行うことができる。従って、低温ミストが発生し易い印刷ジョブにおいては、スリープモードに遷移する前のインク循環ユニット7が稼働中であって低温ミストが発生し難いインク適温状態において印刷を終えることができる。一方、低温ミストが発生し難い印刷ジョブにおいては、ミストの影響をさほど受けない状態で、インクの温度を低温のままで印刷を開始することができる。このため、インク循環ユニット7を稼働してインクの温度調整を行うことなく、かつインクの温度調整に要する時間を経過することなくスリープモードに復帰後に印刷を行うことができるので、この印刷ジョブの印刷においてはインク循環ユニット7の特にインク温度の調整に係る装置の稼働に要する消費電力を低減することができ、かつ印刷時間を短縮することができる。
更に、実施例1に係る画像形成装置10によれば、判定手段63において印刷ジョブに含まれる情報に基づき低温ミストが発生し難いかし易いかを判定することができ、この判定結果に基づき消費電力を低減しつつ、印刷時間を短縮することができる。
(実施例2)
本発明の実施例2は、前述の実施例1に係る画像形成装置10において、印刷ジョブのインク使用量に応じてスリープモードに遷移する前かスリープモードから復帰した後かに印刷ジョブの印刷を実行する例を説明するものである。
[画像形成装置並びにそのインク循環ユニットの構成]
実施例2に係る画像形成装置10は、基本的には前述の図1に示す実施例1に係る画像形成装置10と同様の構成を有し、印刷ジョブの情報に基づきスリープモード復帰直後にインク循環ユニット7(以下、実施例2において「第1のインク循環ユニット7」として説明する。)の稼働を要しないとき、スリープモードに遷移する前に印刷ジョブの印刷を行うスリープモード前印刷手段61と、印刷ジョブの情報に基づきスリープモード復帰直後に第1のインク循環ユニット7の稼働を要するとき、印刷ジョブを格納し、スリープモードから復帰した後に印刷ジョブ格納手段161に一時的に格納された印刷ジョブの印刷を行うスリープモード後印刷手段62とを備える。
実施例2に係る画像形成装置10において、スリープモード前印刷手段61は、低温ミストが発生し難いかし易いか又は低温ミストの発生が目立たないか目立つかの判定に代えて印刷ジョブの印刷のときのインク使用量が少ないか多いかを判定する判定手段(実施例2において、第2の判定手段又は第2の判定ユニット)63と、判定手段63においてインク使用量が多いと判定された印刷ジョブの印刷をスリープモードに遷移する前に行う印刷手段と、この印刷手段において印刷に使用されるインクを循環する第1のインク循環ユニット7とを備えている(図1参照。)。実施例2において、判定手段63の第1のインク循環ユニット7の稼働を要するとの判定は、印刷ジョブの印刷のときにインク使用量が多いとの判定に等価である。
スリープモード後印刷手段62は、判定手段63と、判定手段63においてインク使用量が少ないと判定された印刷ジョブを格納する印刷ジョブ格納手段161と、印刷ジョブ格納手段161に格納された印刷ジョブの印刷をスリープモードから復帰した後に行う印刷手段とを備えている。実施例2において、判定手段63の第1のインク循環ユニット7の稼働を要しないとの判定は、印刷ジョブの印刷のときにインク使用量が少ないとの判定に等価である。
印刷エンジン170の第1のインク循環ユニット7は、基本的には前述の図5に示す実施例1に係るインク循環ユニット7と同様であるが、実施例2においては、図8に示すように、インク循環迂回経路720を備えている。このインク循環迂回経路720はインク循環経路700のインクの回収側であるインク回収経路702から供給側であるインク供給経路701に連結されている。このインク循環迂回経路720は、第1のタンク71及び第2のタンク72のいずれも通さずに、インク温度調整部76及び77を通している。つまり、インク循環迂回経路720は、インク循環経路700においてプリントヘッド2のインク回収側とインク供給側とを直結し、プリントヘッド2との間において直接インクの循環を行い、インク循環経路700の経路長のショートカットを行う第2のインク循環ユニットを構築する。
この実施例2に係る画像形成装置10の第2のインク循環ユニットは、第1のインク循環ユニット7のインク循環経路700を循環するインク量に比べて絶対量が少ない、プリントヘッド2及びインク循環迂回経路720を循環するインク量の範疇において、スリープモードから復帰した直後の、印刷ジョブ格納手段161に一時的に格納されたインク使用量が少ない印刷ジョブの印刷に使用される。
前述の実施例1に係る画像形成装置10において説明したように、印刷ジョブには印刷頁数、印刷部数の情報が含まれており、この印刷頁数、印刷部数の情報からインク使用量が少ないか多いかを判定することができる。印刷頁数、印刷部数が少ない場合には当然のことながらインク使用量は少ない。判定手段63はこのように判定する。印刷ジョブの印刷頁数、印刷部数が多い場合にはインク使用量が多く、判定手段63はこのように判定する。
実施例2においては、印刷ジョブに含まれる画像率、記録媒体100Pの用紙種類も、同様に、インク使用量が少ないか多いかの判定に使用することができる。用紙種類とは、薄紙、普通紙、マット紙、高品位紙等であり、前者の薄紙、普通紙はインク使用量が少ないと判定し、後者のマット紙、高品位紙はインク使用量が多いと判定する。
実施例2に係る判定手段63は、印刷ジョブに含まれる、印刷頁数、印刷部数、画像率の情報、又は用紙種類の情報のいずれか1つの情報を用いてインク使用量が少ないか多いかの判定を行う。なお、判定手段63においては、2以上の情報に基づき、インク使用量が少ないか多いかを判定することができる。
[画像形成装置の印刷動作の制御方法]
次に、実施例2に係る画像形成装置10において印刷動作の制御方法は以下の通りである。
図9に示すように、まず、実施例2に係る画像形成装置10において、スリープモードの遷移時間に到達する(S21)と、記憶部16に格納された印刷ジョブリストに印刷ジョブが存在するか否かを確認する(S22)。印刷ジョブリストに印刷ジョブがない場合にはスリープモードに遷移する(S25)。
ここで、印刷ジョブリストは、前述の実施例1に係る図7に例示する印刷ジョブリストと同様に、例えばジョブ番号、ユーザ名、画像情報、印刷頁数、印刷部数等の情報を含む印刷ジョブが格納される。更に、ここでは、印刷ジョブの情報に、画像率の情報及び用紙種類の情報が含まれる。なお、用紙種類の情報は、ユーザが印刷ジョブを作成するときに印刷ジョブに情報の1つとして追加するか、画像形成装置10の操作パネルをユーザが直接操作して印刷ジョブに手動において追加するか、又は画像形成装置10において給紙トレイの記録媒体の用紙種類を用紙種類検出センサを用いて自動的に取得し印刷ジョブに追加するか、いずれかの方法を用いて印刷ジョブに追加してもよい。
ここでは、前述の図7に示す例と同様に、印刷ジョブ1及び3はインク使用量が少ない印刷ジョブとして、印刷ジョブ2はインク使用量が多い印刷ジョブとして説明する。
印刷ジョブリストに印刷ジョブの存在が確認されると、判定手段63によって、印刷ジョブを印刷するときにインク使用量が少ない印刷ジョブか、インク使用量が多い印刷ジョブかが判定される(S23)。印刷ジョブ2はインク使用量が多いと判定され、この印刷ジョブ2は、スリープモード前印刷手段61を用いて、スリープモードに遷移する前に印刷が実行される(S24)。スリープモードに遷移する前の画像形成装置10の動作状態は例えばレディモードであり、第1のインク循環ユニット7が稼働状態か稼働後の状態にあって、インク温度が適正な状態にある。従って、インク循環ユニット7を改めて稼働し、インク温度を低温から適正な温度まで高める必要が無く、即座に印刷ジョブ2の印刷を実行することができる。また、印刷ジョブ2の印刷動作に際して、印刷ジョブ2の容量が大きく、印刷が完了するまでに多少の時間を要し、インク温度が低下し、適正なインク温度から逸脱する場合には、第1のインク循環ユニット7を稼働し(又は稼働を継続し)、インク温度の調整が行われる。
一方、印刷ジョブ1及び3はインク使用量が少ないと判定され、この印刷ジョブ2は、スリープモード後印刷手段62の印刷ジョブ格納手段161に一時的に格納される(S26)。印刷ジョブ2の印刷が実行され、印刷ジョブ1及び3が格納された後、画像形成装置10はスリープモードに遷移する(S25)。
画像形成装置10のユーザによる操作、画像形成装置10において新たな印刷ジョブの受信、又は一定時間経過後、画像形成装置10はスリープモードから復帰する(S27)。ここで、第1のインク循環ユニット7のプリントヘッド2の近傍に配設された温度計210、220(図8参照。)を用いてインク温度が測定され(S28)、インク循環ユニット7に循環されるインク温度が印刷品質を保証する適正な温度範囲内であるか否かが判定される(S29)。
適正な温度範囲内である場合には、スリープモード後印刷手段62の印刷ジョブ格納手段161に一時的に格納された印刷ジョブがあるか否かが判定される(S30)。ここでは、印刷ジョブ格納手段161に一時的に印刷ジョブ1及び3が格納されているので、この印刷ジョブ1及び3の印刷が実行される(S31)。印刷ジョブ1及び3はインク使用量が少ない印刷ジョブである。インク温度が適正な範囲内にあるので、スリープモードから復帰した直後であっても、第1のインク循環ユニット7を稼働することがなく、即座に印刷ジョブ1及び3の印刷動作を実行することができる。印刷が完了した後、画像形成装置10は印刷待機状態(例えば、スタンバイモード、ローパワーモード又はレディモード)への移行を行う(S32)。また、ステップS30において、印刷ジョブ格納手段161に印刷ジョブが格納されていない場合には、画像形成装置10は印刷待機状態への移行を行う(S32)。
ステップS29において、適正な温度範囲外の場合(具体的には低い場合)、適正な温度範囲内の場合と同様にまずスリープモード後印刷手段62の印刷ジョブ格納手段161に一時的に格納された印刷ジョブがあるか否かが判定される(S33)。ここで、印刷ジョブ格納手段161に一時的に印刷ジョブ1及び3が格納されていると判定されると、第1のインク循環ユニット7の全体を稼働しインク循環経路700の全体のインク温度を調整するのではなく、前述の第2のインク循環ユニットを稼働し、インク循環迂回経路720及びプリントヘッド2を循環するインク温度が調整される(S34)。
図8に示す、第2のインク循環ユニットを構築するインク温度調整部76を稼働することによって、ここではインク供給経路701内のインク温度が調整され(インク温度が高められ)、インク供給経路701、プリントヘッド2、インク回収経路702、インク循環迂回経路720のショートカットされた経路内の少量のインクが自然対流により循環され、インク温度が調整される。つまり、第2のインク循環ユニットに循環されるインク温度が調整される。プリントヘッド2に循環されるインク温度は温度計210、220によって測定されているので、適正なインク温度に達した段階において、印刷ジョブ格納手段161に一時的に格納された印刷ジョブ1及び3の印刷が実行される(S35)。
印刷ジョブ1及び3は、インク使用量が少ない印刷ジョブであり、スリープモードから復帰した直後のインク温度が適正な範囲外であっても、スリープモードから復帰した直後に第2のインク循環ユニットを稼働することによって印刷動作を実行することができる。第2のインク循環ユニット、ここでは第2のインク循環ユニットのインク温度の調整に係るインク温度調整部76を稼働することによってインク循環迂回経路720及びプリントヘッド2に循環するインク温度の調整を行うことができる。従って、第2のインク循環ユニットの稼働に要する消費電力を減少することができ、又印刷開始までの時間を短縮することができる。第2のインク循環ユニットにおいては、インク温度の調整ではなくインク循環に係るインク循環ポンプ75等は稼働しない。なお、印刷ジョブ1及び3の印刷は、インク温度が低過ぎる場合等には、プリントヘッド2の圧電素子に高い電圧を印加し、インクを吐出して行ってもよい。
印刷ジョブ1及び3の印刷が完了した後、又はスリープモードから復帰した直後のステップS29以降において、第1のインク循環ユニット7の全体の稼働が開始され(S36)、インク循環経路700の全体のインク温度の調整が行われる。インク温度の調整が行われ、適正なインク温度に調整されると、画像形成装置10は印刷待機状態への移行を行う(S32)。また、ステップS33において、印刷ジョブ格納手段161に印刷ジョブが格納されていない場合には、第1のインク循環ユニット7を稼働した後(S36)、画像形成装置10は印刷待機状態への移行を行う(S32)。
なお、第1のインク循環ユニット7の稼働において、インク温度が低い場合には、インク循環ポンプ75を稼働しインクを循環し、インク温度調整部76を稼働し循環されるインクを加熱し、インク温度が高められる。インク温度が高い場合には、インク循環ポンプ75を稼働しインクを循環し、インク温度調整部77を稼働し循環されるインクを冷却し、インク温度が下げられる。また、実施例2に係る画像形成装置10において、インク使用量が少ない印刷ジョブを早急に印刷する必要がある場合には、ユーザの画像形成装置10の直接操作により、或いは印刷ジョブに含まれる早急に印刷する旨の情報により、スリープモードに遷移する前に印刷を行うことができる。
また、印刷ジョブ格納手段161に一時的に格納された印刷ジョブはスリープモードから復帰後に第2のインク循環ユニットに循環されるインクのすべてを用いて原則的に印刷されるが、インク量が不足した場合には、第1のインク循環ユニット7からインクを補充することができる。そして、印刷ジョブ格納手段161に一時的に格納された印刷ジョブの印刷が終了した後、第1のインク循環ユニット7の稼働が行われる。
[実施例2の特徴]
以上説明したように、実施例2に係る画像形成装置10においては、インク使用量が多い印刷ジョブはスリープモード前印刷手段61を用いスリープモードに遷移する前の適正なインク温度範囲内において印刷を行い、インク使用量が少ない印刷ジョブは、スリープモード後印刷手段62を用いて印刷ジョブ格納手段161に一時的に格納し、スリープモードから復帰し第2のインク循環ユニットを稼働した後に印刷を行える。従って、インク使用量が少ない印刷ジョブは、第2のインク循環ユニットに循環されるインクの温度調整を行うだけで、かつ短時間のインクの温度調整によって印刷を行えるので、インクの温度調整に要する消費電力を低減することができ、かつ印刷時間を短縮することができる。
更に、実施例2に係る画像形成装置10によれば、判定手段63において印刷ジョブに含まれる情報に基づきインク使用量が少ないか多いかを判定することができ、この判定結果に基づき消費電力を低減しつつ、印刷時間を短縮することができる。
(実施例3)
本発明の実施例3は、前述の実施例2に係る画像形成装置10の応用例であり、スリープモードから復帰した後に、印刷ジョブのインク使用量に応じてインク温度の調整方法を選別する例を説明するものである。
[画像形成装置の構成]
実施例3に係る画像形成装置10は、基本的には前述の実施例2に係る画像形成装置10と同様の構成を有するが、更に加えて、図10に示すように、制御部6に記録媒体種類判定手段64と、インク温調選別手段65とを備えている。
記録媒体種類判定手段64は記録媒体100Pの用紙種類を判定する機能を有する。前述の実施例2に係る画像形成装置10において説明したように、記録媒体100Pには、インク使用量が少ない薄紙、普通紙と、インク使用量が多いマット紙、高品質紙とが少なくとも一般的に多用されている。ここではその詳細な図示は省略するが、給紙トレイ及びそれからプリントヘッド2に至るまでの搬送経路(図4参照。)に配設された光センサと、この光センサから出力される光の記録媒体100Pの表面において反射光を受光する受光センサとを備え、この受光センサの出力に基づき記録媒体種類判定手段64は用紙種類を判定する。例えば、記録媒体種類判定手段64は、反射光量が少ない場合には薄紙、普通紙と判定し、反射光量か多い場合にはマット紙、高品質紙と判定する。
なお、用紙種類は外部端末8においてユーザが印刷ジョブを生成するときに決定してもよい。また、用紙種類は画像形成装置10の操作パネルからユーザが直接決定してもよい。
インク温調選別手段65は、記録媒体種類判定手段65の出力結果に基づき、インク温度の温調方法を選別する機能を有する。実施例3に係る画像形成装置10において、インク温調選別手段65は、前述の図8に示すインク循環ユニット7のプリントヘッド2内に配設されたインク吐出のための図示しない圧電素子を用いたインク温調方法、インク循環ユニット7を通常稼働させてインク温度調整部76を用いたインク温調方法のいずれかを選別し、インク温度の調整を行う。圧電素子を用いたインク温調方法は、インク使用量が少ない印刷ジョブの印刷動作(薄紙等の印刷動作)に使用される。インク温度調整部76を用いたインク温調方法は、インク使用量が多い印刷ジョブの印刷動作(マット紙等の印刷動作)に使用される。
[画像形成装置のインク温調方法]
次に、実施例3に係る画像形成装置10においてインク温調方法は以下の通りである。
図11に示すように、まず、実施例3に係る画像形成装置10がスリープモードから復帰し、又は画像形成装置10の電源が投入され(S41)、画像形成装置10はレディモードに遷移する。図示しない印刷ジョブリストにある印刷ジョブの印刷に際してこの印刷に使用される記録媒体100Pの用紙種類が記録媒体種類判定手段64を用いて判定される(S42)。
記録媒体種類判定手段64において、記録媒体100Pがインク使用量の多いマット紙、高品質紙であると判定された場合には、インク循環ユニット7がインク温調選別手段65によって選別され、このインク循環ユニット7を用いてインク温調が行われる(S43)。ここで、インク循環ユニット7が選別されると、前述の図8に示すインク温度調整部76、インク循環ポンプ75等が稼働され、インク循環経路700に循環される全体のインク温度が調整される。引き続き、インク温度が良好な印刷品質を保証する適切な温度範囲内であるか否か判定され(S45)、インク温度が適切な温度範囲内であれば、印刷ジョブの印刷が実行される(S46)。インク温度が適切な温度範囲内にない場合には、適切な温度範囲内になるまでインク温調が行われる。
一方、記録媒体種類判定手段64において、記録媒体100Pがインク使用量の少ない薄紙、普通紙であると判定された場合には、インク循環ユニット7の一部ここではプリントヘッド2内の図示しない圧電素子がインク温調選別手段65によって選別され、この圧電素子の稼働によってインク温調が行われる(S43)。このインク温調方法は、プリントヘッド2内(インク室内)のインクに対してインク吐出が生じない程度の電圧を圧電素子に印加し、圧電素子を振動させてその発熱によってインク温度を高める方法である。インク温度が良好な印刷品質を保証する適切な温度範囲内であるか否か判定され(S45)、インク温度が適切な温度範囲内であれば、印刷ジョブの印刷が実行される(S46)。インク温度が適切な温度範囲内にない場合には、適切な温度範囲内になるまでインク温調が行われる。なお、インク温度は前述の図8に示す温度計210、220を用いて測定される。
[実施例3の特徴]
以上説明したように、実施例3に係る画像形成装置10においては、記録媒体100Pの用紙種類に応じてインク温調方法を選別することができる。インク使用量が少ない用紙種類を用いる印刷ジョブの印刷には、インク循環ユニット7の全体を稼働させるインク温調方法ではなく、一部のプリントヘッド2内の圧電素子に電圧を与え振動させるインク温調方法が使用されるので、消費電力を減少しつつ、プリントヘッド2内の一部のインクの温調を行いインク循環経路700に循環される全体のインクの温調を行わないので、インク温調に要する時間が短く印刷開始時間を短縮することができる。また、インク使用量が多い用紙種類を用いる印刷ジョブの印刷には、インク循環ユニット7そのものを稼働させるインク温調方法が使用されるので、良好な印刷品質を保証することができる適正な温度範囲内のインクを十分に確保することができる。
なお、実施例3に係る画像形成装置10は、前述の実施例2に係る画像形成装置10においてスリープモードに遷移する前に一時的に格納されインク使用量が少ない印刷ジョブに対してインク温調方法を選別するようにしてもよい。この場合、インク温調選別手段65は、インク循環ユニット7の全体の稼働によるインク温調方法、インク循環ユニット7の一部のプリントヘッド2の圧電素子の稼働によるインク温調方法、インク循環ユニット7の一部の前述の図8に示すインク循環迂回経路720及びインク温調部76、77を用いたインク温調方法のいずれかを選別する。
(実施例4)
本発明の実施例4は、前述の実施例1乃至実施例3に係る画像形成装置10において、記録媒体100Pのサイズ、種類が変更されたときの表示方法並びにサイズ、種類の設定方法を説明するものである。
画像形成装置10において、給紙トレイの記録媒体100Pのサイズ、用紙種類を変更した場合、パネルユニットの操作画面をユーザが操作し、給紙トレイの変更後の記録媒体100Pのサイズ、用紙種類を設定する必要がある。画像形成装置10がレディモード、スタンバイモード、ローパワーモード等の稼働中であれば、変更後の設定が可能である。電源OFF状態又はスリープモード状態において給紙トレイの記録媒体100Pのサイズ、用紙種類を変更した場合、操作画面が表示されないので、変更後の設定を行うことができない。このような場合、電源投入後又はスリープモードからの復帰後に印刷動作を行うと、記録媒体100Pのサイズ、用紙種類が印刷ジョブの意図したサイズ、用紙種類に適合せず、ユーザが意図した印刷画像のサイズや印刷画質を得ることができない。実施例4に係る画像形成装置10はこのような課題を解決することができる。
[画像形成装置の構成]
実施例4に係る画像形成装置10は、図11に示すように、制御部6に記録媒体設定変更判定手段66を備えている。この記録媒体設定変更判定手段66は、記録媒体残量検知手段661と、記録媒体サイズ検知手段662と、記録媒体種類検知手段663とを備えている。
記録媒体残量検知手段661は、給紙トレイに配設されたセンサからの出力に基づき記録媒体100Pの残量(残り枚数)を検知する。記録媒体サイズ検知手段662は、給紙トレイに配設されたセンサからの出力に基づき、記録媒体100Pのサイズ例えばA4版サイズ、B4版サイズ等のサイズを検知する。記録媒体種類検知手段663は、給紙トレイに配設されたセンサ、例えば前述の光センサからの反射光を受光する受光センサからの出力に基づき、記録媒体100Pの用紙種類例えば薄紙、普通紙、マット紙、高品質紙等の用紙種類を検知する。記録媒体設定変更判定手段66は、記録媒体残量検知手段661、記録媒体サイズ検知手段662、記録媒体種類検知手段663の少なくとも1つの変更情報から、電源OFF状態又はスリープモード状態のときに記録媒体100Pに変更があったか否かを判定する。
記録媒体設定変更判定手段66において変更があったと判定された場合には、記録媒体設定変更判定手段66は、電源を投入した後又はスリープモードから復帰した後にパネルユニット131の操作画面に変更があった旨の表示を行う。
[画像形成装置における記録媒体の変更表示方法及び設定変更方法]
次に、実施例4に係る画像形成装置10において、記録媒体100Pの変更表示方法及び設定変更方法は以下の通りである。
図13に示すように、まず、実施例4に係る画像形成装置10がスリープモードから復帰する、又は電源が投入される(S51)。記録媒体設定変更判定手段66は、記録媒体残量検知手段661、記録媒体サイズ検知手段662、記録媒体種類検知手段663の少なくともいずれかの出力結果に基づき、スリープモード状態又は電源OFF状態において給紙トレイの記録媒体100Pにサイズの変更、用紙種類の変更があったか否かを判定する(S52)。変更がない場合には、画像形成装置10はレディモードに遷移する(S53)。
変更があった場合には、記録媒体設定変更判定手段66はパネルユニット131の操作画面に設定画面を表示させる(S54)。ここでは、図14(A)に示す記録媒体100Pのサイズの変更を設定することができる設定画面と、図14(B)に示す記録媒体100Pの用紙種類の変更を設定することができる設定画面とが表示される。記録媒体100Pのサイズ、用紙種類は操作画面上に表示されているボタンにユーザがタッチすることによって変更可能である。記録媒体100Pのサイズを変更すると印刷された画像サイズが変化する。また、記録媒体100Pの用紙種類を変更するとカラープロファイルが変化する。
操作画面に表示された設定画面においてユーザが設定変更を行う(S55)。設定変更後、設定画面を閉じると、画像形成装置10はレディモードに遷移する(S53)。
[実施例4の特徴]
以上説明したように、実施例4に係る画像形成装置10においては、電源OFF状態又はスリープモード状態に記録媒体100Pのサイズや用紙種類が変更された場合でも電源投入後又はスリープモード復帰後に設定変更画面を表示することができるので、ユーザが意図した記録媒体100Pのサイズや用紙種類を設定し、印刷を実行することができる。従って、ユーザの意図した印刷画像サイズや印刷品質を得ることができる。
また、電源投入後又はスリープモード復帰後に設定変更画面を表示することができるので、メニュー画面を経由して設定変更画面を表示する必要がなく、簡易に設定変更を行うことができる。
(その他の実施例)
上記のように、本発明を実施例1乃至実施例4によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものでない。本発明は様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術に適用することができる。