JP5720109B2 - エピスルフィド化合物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録基盤、フィルター、接着剤等の光学製品、中でも、眼鏡用プラスチックレンズの製造に使用するエピスルフィド化合物を製造する方法に関するものである。
プラスチック材料は軽量かつ靭性に富み、また染色が容易であることから、近年では各種光学材料、特に眼鏡レンズに多く用いられている。光学材料、中でも眼鏡レンズに最も要求される主たる性能は高屈折率であり、高屈折率化によりレンズの薄肉化が実現される。近年、高屈折率化を目的としてエピスルフィド化合物を使用した光学材料が多数報告されており、例えば特許文献1、2のようなものが挙げられる。このエピスルフィド化合物の製造方法についても、多数報告されている。例えば特許文献3には、トルエンなどの溶媒ならびに無水酢酸などの酸もしくは酸無水物の存在下において、チオ尿素などのチア化剤を用いてエポキシ化合物のチア化反応を行い、トルエンなどの抽出剤を用いて目的のエピスルフィド化合物を抽出する方式が開示されている。しかし、上記のエピスルフィド化合物を熱重合させて硬化物を得る際に、硬化物が白濁する現象が発生する場合があり、品質にばらつきがみられることがある。白濁の発生による硬化物の歩留まり低下の改善を目的として、例えば特許文献4ではエピスルフィド化合物を極性溶媒で洗浄する精製方法が報告されているが、精製工程に関するコストが増大するため経済性の面で問題があった。また、特許文献5において、エピスルフィド化合物に残存する溶媒量を5wt%以下とすることによりエピスルフィド単独の硬化物の透明性を確保する手法が報告されているが、特許文献6、7に挙げたように最近では硬化物の組成が多様化しており、エピスルフィド化合物単独での評価方法のみでは、得られる硬化物の白濁の有無を確認することが困難となってきている。エピスルフィド化合物とその他の複数の化合物からなる組成物では、その重合硬化反応も複雑となるため、硬化物の白濁を抑制するためには、溶媒の残留量だけではなく、溶媒中の不純物の残留量による影響についても規定する必要があった。また、評価に供する硬化物の形状に対しても、特許文献6に記載の平板状だけではなく、硬化物の形状を実際の眼鏡用プラスチックレンズの形状、好ましくは中心部の厚みが大きくなるプラス度数を有するレンズの形状において、白濁を生じないことが要求されてきている。プラス度数レンズは透過光を集約させるため、僅かな透明性の低下であっても肉眼で視認されやすく、白濁の有無の評価に適した形状であるといえる。
特開平9−71580号公報 特開平11−322930号公報 特開2000−186087号公報 特開2001−163876号公報 特開2000−309584号公報 特開平10−298287号公報 特開平11−292950号公報
そこで、本発明が解決しようとする課題は、エピスルフィド化合物を重合硬化させて得られる硬化物の白濁の発生を十分に抑制できるエピスルフィド化合物の製造方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、エピスルフィド化合物を製造する際に、反応溶媒として用いるトルエンに含まれる高沸点不純物が、重合硬化物の白濁の発生に大きな影響を及ぼすという新たな事実を見出し、高沸点不純物の含有量が少ないトルエンを用いることにより、新規な精製工程を追加することなく上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
1.エポキシ化合物を、トルエンを含む反応溶媒の存在下にチオエポキシ化してエピスルフィド化合物を得るエピスルフィド化合物の製造方法において、前記トルエンとして、高沸点不純物の含有量が0.10質量%以下であるトルエンを用い、前記高沸点不純物が8個の炭素原子を有する芳香族炭化水素であることを特徴とする、下記(1)式で表されるエピスルフィド化合物の製造方法。
Figure 0005720109
(mは0〜4の整数、nは0〜2の整数を表す)
2.前記エピスルフィド化合物が、抽出剤を用いて抽出することにより得られ、前記抽出剤として、高沸点不純物の含有量が0.10質量%以下であるトルエンを用い、前記高沸点不純物が8個の炭素原子を有する芳香族炭化水素であることを特徴とする第1項に記載のエピスルフィド化合物の製造方法。
なお、本発明において、「高沸点不純物」とは、110℃以上の有機化合物であって、トルエン以外の有機化合物を言うものとする。
以下、本発明によるエピスルフィド化合物の製造方法について詳細に説明する。
(1)式で表わされるエピスルフィド化合物の製造方法としては、下記(2)式で表わされるエポキシ化合物を、トルエンを含む混合溶媒の存在下でチオ尿素もしくはチオシアン酸塩と反応させてチオエポキシ化した後、トルエンを抽剤としてエピスルフィド化合物を抽出し、最後にそのトルエンを除去する手法が好適に用いられる。すなわち、トルエンは、反応工程および抽出工程の2つの工程において使用される。
Figure 0005720109
(mは0〜4の整数、nは0〜2の整数を表す)
本発明の(1)式で表されるエピスルフィド化合物の具体例としては、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)トリスルフィド、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1,6−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)スルフィド、などが挙げられる。本発明の用途として特に好ましい化合物は、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド((1)式においてn=0のもの)、ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド((1)式においてm=0、n=1のもの)であり、最も好ましい化合物は、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド((1)式においてn=0のもの)である。
本発明の(2)式で表されるエポキシ化合物の具体例としては、ビス(β−エポキシプロピル)スルフィド、ビス(β−エポキシプロピル)ジスルフィド、ビス(β−エポキシプロピル)トリスルフィド、ビス(β−エポキシプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エポキシプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エポキシプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(β−エポキシプロピルチオ)プロパン、1,4−ビス(β−エポキシプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(β−エポキシプロピルチオ)ペンタン、1,6−ビス(β−エポキシプロピルチオ)ヘキサン、ビス(β−エポキシプロピルチオエチル)スルフィド、などが挙げられる。本発明の用途として特に好ましい化合物は、ビス(β−エポキシプロピル)スルフィド((1)式においてn=0のもの)、ビス(β−エポキシプロピル)ジスルフィド((1)式においてm=0、n=1のもの)であり、最も好ましい化合物は、ビス(β−エポキシプロピル)スルフィド((1)式においてn=0のもの)である。
本発明の反応においては、エピスルフィド化合物を溶解可能なトルエンと、チオ尿素もしくはチオシアン酸塩などのチア化剤を溶解可能な極性溶媒との混合溶媒を使用することが好ましい。使用するエポキシ化合物とトルエンの比率は、通常は重量比でトルエン/エポキシ化合物=0.1〜20であるが、好ましくは1〜10である。重量比が0.1未満では反応の進行が早くなりすぎるため制御が困難となり、20を超えると反応の進行が遅くなりすぎるため経済的ではない。使用する極性溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソブル等のヒドロキシエーテル類が挙げられるが、好ましくはアルコール類であり、最も好ましくはメタノールである。極性溶媒とトルエンの比は、通常は体積比で極性溶媒/トルエン=0.1〜10.0であるが、好ましくは0.2〜5.0である。体積比が0.1未満ではチア化剤の溶解が不十分となるため反応が十分に進行せず、10.0を超えると反応の進行が早くなりすぎるため制御が困難となる。
本発明で用いるチア化剤として好ましいものは、チオ尿素もしくはチオシアン酸塩であり、最も好ましいものはチオ尿素である。チア化剤の使用量は、使用するエポキシ化合物に対して量論以上であればよいが、経済性を考慮すれば通常は1〜5当量、好ましくは1〜2.5当量、最も好ましくは1.1〜2.0当量である。
反応液中に酸および酸無水物等を重合抑制剤として添加することは、反応成績を上げる面から有効な手段である。使用する酸および酸無水物の具体例としては、硝酸、塩酸、硫酸、発煙硫酸、ホウ酸、ヒ酸、リン酸、青酸、酢酸、過酢酸、チオ酢酸、シュウ酸、酒石酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、マレイン酸、安息香酸、無水硝酸、無水硫酸、酸化ホウ素、五酸化ヒ素、五酸化リン、無水クロム酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水安息香酸、無水フタル酸、シリカゲル、シリカアルミナ、塩化アルミニウムなどが挙げられるが、好ましいものは酢酸、プロピオン酸、無水酢酸、無水プロピオン酸であり、最も好ましいものは酢酸、無水酢酸である。酸および酸無水物の使用量は、通常は重量比でエポキシ化合物に対して3〜50%であるが、好ましくは5〜30%である。使用量が3%未満では重合抑制剤としての効果が小さく、50%を超えるとエピスルフィド化合物の収率が低下するため経済的ではない。
反応温度は通常0〜60℃であるが、10〜50℃が好ましく、最も好ましくは10〜40℃である。反応温度が0℃より低い場合は反応速度が低下するため経済的ではなく、60℃より高い場合は得られるエピスルフィド化合物が着色する場合がある。反応時間は、上記の条件下で反応が完結する時間であれば構わないが、通常は20時間以下、好ましくは15時間以下である。圧力については、減圧、常圧、加圧のいずれでも構わないが、常圧が好ましい。反応雰囲気については、通常は空気雰囲気もしくは窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気であるが、原料及び製品等の酸化および着色や反応溶媒への引火を防止するため窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気が好ましく、経済性の点から窒素雰囲気が最も好ましい。
チア化反応の完了後、反応液に抽出剤としてトルエンを投入し、エピスルフィド化合物を抽出した後、得られた有機層からトルエンを留去してエピスルフィド化合物を得る。使用するエポキシ化合物とトルエン量の比率は、通常は重量比でトルエン/エポキシ化合物=1〜50であるが、好ましくは5〜30である。重量比が1未満では有機層へのエピスルフィド化合物の分配が不十分となるためエピスルフィド化合物の収率が低下し、50を超えるとトルエンの留去に要するエネルギーが過大となるため経済的ではない。さらに、得られるエピスルフィド化合物の安定性向上を目的として、有機層を水もしくは無機酸の水溶液を用いて洗浄することができる。使用する無機酸の具体例としては硝酸、塩酸、硫酸、ホウ酸、ヒ酸、リン酸、青酸、酢酸、過酢酸、チオ酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸などが挙げられるが、好ましいものは硝酸、塩酸、硫酸であり、最も好ましいものは硫酸である。最終的に、有機層に含まれるトルエンを留去することにより、目的のエピスルフィド化合物が得られる。
反応溶媒もしくは抽出剤として使用されるトルエンに含まれる高沸点不純物は110℃以上の有機化合物であって、トルエン以外の有機化合物であり、高沸点不純物としては、例えば8個の炭素原子を有する芳香族炭化水素(以下、「C8芳香族」と表記する)、ベンゼン、非芳香族炭化水素などが挙げられる。C8芳香族としては、例えばエチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレンなどが挙げられ、非芳香族炭化水素としては、ヘキサンまたはヘプタンまたはそれらの異性体などが挙げられる。これらの不純物はトルエンの製造工程に起因するものである。工業的なトルエンの製法としては、石油留分またはそれを接触改質したものから非芳香族化合物を分離し、得られた芳香族化合物を溶剤抽出ならびに蒸留してトルエンを得る石油系製法、ナフサを分解してエチレンやプロピレンなどのオレフィン類を製造する際に副生する分解油を蒸留してトルエンを得る分解系製法などが挙げられる。一般的に、石油留分に含まれる芳香族化合物は多い順にC8芳香族、トルエン、ベンゼンであり、分解油に含まれる芳香族化合物は多い順にベンゼン、トルエン、C8芳香族である。蒸留原料の製法や蒸留条件の設定により不純物の組成は異なり、その含有量は製品トルエン重量に対する濃度として表現される。なお、化学工業用として市販されているトルエンからは、炭素数9以上の有機化合物は検出されないことが多い。ここで、トルエン中の高沸点不純物の含有量が高いと、得られるエピスルフィド化合物を重合硬化して得られる硬化物の白濁の発生を十分に抑制することができなくなる。そこで、トルエン中の高沸点不純物の含有量は0.10質量%以下とする。トルエン中の高沸点不純物の含有量は好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下である。
トルエンよりも沸点の低い不純物、すなわちベンゼンやヘプタンなどは、エピスルフィド化合物を含むトルエン溶液からトルエンを留去する工程において同時に除去されるため、低沸点不純物による影響は無視できる。一方、トルエンよりも沸点の高い不純物、すなわちC8芳香族が高濃度で含まれている場合、エピスルフィド化合物を含むトルエン溶液からトルエンを留去する工程において、エピスルフィド化合物中からC8芳香族を完全に除去することが難しくなる。そのため、高沸点不純物の中でもC8芳香族の含有量が少ないトルエンを使用することが好ましい。好ましいC8芳香族の含有量は0.10質量%以下であり、更に好ましくは0.05質量%以下、最も好ましくは0.01質量%以下である。
得られたエピスルフィド化合物は、再結晶、再沈殿、カラム分離操作、吸着剤処理、イオン交換樹脂処理等の精製法により精製してもよい。なお、これらの処理については、通常は空気雰囲気下もしくは窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行われるが、原料及び製品等の酸化を防止するため窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましく、経済性の点から窒素雰囲気下で行われることが最も好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、トルエンならびに硬化物の評価は、以下の方法で実施した。
1.トルエン中の高沸点不純物
ガスクロマトグラフを用いて、トルエン中の高沸点不純物について分析した。その結果、炭素数9以上の有機不純物濃度はいずれも定量下限(0.01重量%)未満であった。また、ベンゼン濃度も、いずれも定量下限未満であった。そのため、C8芳香族の定量結果以外の記載は省略した。
2.硬化物の白濁
暗室内で硬化物に蛍光灯を照射し、硬化物の濁りの有無を目視で観察した。硬化物の形状は、直径が76mmであり、中心厚が8mm、10mmならびに12mmである3種類のプラス度数レンズとした。なお、市販されているプラス度数レンズの最高度数は概ね+6.00〜+8.00Dであり、レンズの中心厚は概ね6〜8mmとなる。
評価の格付けについては、全ての中心厚において白濁が全くみられない場合を「極めて良好」、中心厚12mmに限り極めてわずかな白濁がみられる場合を「非常に良好」、中心厚10mmと12mmに限り極めてわずかな白濁がみられる場合を「良好」、全ての中心厚において白濁がみられる場合を「不良」、と定義した。
実施例1
撹拌機、温度計、窒素導入管を装着したフラスコに、ビス(β−エポキシプロピル)スルフィド365.0g(2.5mol)、チオ尿素761.2g(10.0mol)、および無水酢酸43.8g(0.43mol)、さらに溶媒としてメタノール3.4リットル、分解ガソリンを原料として製造されC8芳香族の含有量が0.01質量%であるトルエン1.7リットルを順次投入し、これらを撹拌しながら窒素雰囲気下20℃で10時間反応させた。反応後、C8芳香族の含有量が0.01質量%であるトルエン4.3リットルで反応物を抽出し、10wt%硫酸520mリットルで洗浄、水520mリットルで4回洗浄を行った。得られた有機層を40℃、1kPaの減圧下で過剰の溶媒を留去し、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド338.8g(収率76%)を得た。得られたビス(β−エピチオプロピル)スルフィドに残留するトルエンをガスクロマトグラフにより分析し、残留するトルエン濃度が0.2%未満であることを確認した。
ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド90重量部、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド5重量部、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート5重量部、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミド0.05重量部からなる重合組成物を混合、室温で撹拌し均一液とした。次いでこれを脱気し、孔径0.5μmのPTFE製メンブランフィルターでろ過し、プラスレンズ用モールドに注入した。オーブン中で、20℃から90℃まで20時間かけて昇温して重合硬化させ、硬化物を製造した。得られた硬化物の白濁状態を評価したところ、硬化物の白濁評価結果は極めて良好であった。結果を表1に示した。
実施例2
実施例1で得られたビス(β−エピチオプロピル)スルフィド88重量部、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン4重量部、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド8重量部、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミド0.1重量部、抗酸化剤として2,6−ジ−tert.−ブチル−4−メチルフェノール0.1重量部、紫外線吸収剤として2−(2−ヒドロキシ−5−tert.−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール0.1重量部からなる重合組成物を混合、室温で撹拌し均一液とした。次いでこれを脱気し、孔径0.5μmのPTFE製メンブランフィルターでろ過し、プラスレンズ用モールドに注入した。オーブン中で、10℃から120℃まで22時間かけて昇温して重合硬化させ、硬化物を製造した。得られた硬化物の白濁状態を評価したところ、硬化物の白濁評価結果は極めて良好であった。結果を表1に示した。
実施例3
分解ガソリンを原料として製造されC8芳香族の含有量が0.05質量%であるトルエンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物の白濁状態を評価したところ、硬化物の白濁評価結果は非常に良好であった。結果を表1に示した。
実施例4
分解ガソリンを原料として製造されC8芳香族の含有量が0.05質量%であるトルエンを用いたこと以外は、実施例2と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物の白濁状態を評価したところ、硬化物の白濁評価結果は非常に良好であった。結果を表1に示した。
実施例5
ナフサを原料として製造されC8芳香族の含有量が0.10質量%であるトルエンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物の白濁状態を評価したところ、硬化物の白濁評価結果は良好であった。結果を表1に示した。
実施例6
ナフサを原料として製造されC8芳香族の含有量が0.10%であるトルエンを用いたこと以外は、実施例2と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物の白濁状態を評価したところ、硬化物の白濁評価結果は良好であった。結果を表1に示した。
比較例1
ナフサを原料として製造されC8芳香族の含有量が0.15質量%であるトルエンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物には白濁が認められた。結果を表1に示した。
比較例2
ナフサを原料として製造されC8芳香族の含有量が0.15質量%であるトルエンを用いたこと以外は、実施例2と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物には白濁が認められた。結果を表1に示した。
Figure 0005720109
化合物略号
BES:ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド
BMES:ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド
PHPA:3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート
BIC:1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン
TBPB:テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミド
表1に示す結果より、エポキシ化合物を、トルエンを含む反応溶媒の存在下にチオエポキシ化してエピスルフィド化合物を得るに際し、トルエンとして、高沸点不純物の含有量が0.10質量%以下のトルエンを用いることで、エピスルフィド化合物を重合硬化させて得られる硬化物の白濁の発生を十分に抑制できることが確認された。

Claims (2)

  1. エポキシ化合物を、トルエンを含む反応溶媒の存在下にチオエポキシ化してエピスルフィド化合物を得るエピスルフィド化合物の製造方法において、
    前記トルエンとして、高沸点不純物の含有量が0.10質量%以下であるトルエンを用い、前記高沸点不純物が8個の炭素原子を有する芳香族炭化水素であることを特徴とする、下記(1)式で表されるエピスルフィド化合物の製造方法。
    Figure 0005720109
    (mは0〜4の整数、nは0〜2の整数を表す)
  2. 前記エピスルフィド化合物が、抽出剤を用いて抽出することにより得られ、前記抽出剤として、高沸点不純物の含有量が0.10質量%以下であるトルエンを用い、前記高沸点不純物が8個の炭素原子を有する芳香族炭化水素であることを特徴とする請求項1に記載のエピスルフィド化合物の製造方法。

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