まず、本発明の実施例1に係る多方向入力装置について図1乃至図4Bを参照しつつ説明する。この多方向入力装置は、操作部材100を原点位置から周囲の16方向に各々第1、第2傾倒角の傾倒操作入力が可能な装置である。前記多方向入力装置は、図1、図2A及び図2Bに示すように、操作部材100と、導電金属板200(導電部材)と、8つの第1スイッチ手段300aと、基板400と、接続用スプリング500(接続手段)と、ケース600と、弾性部材700と、復帰機構800とを備えている。以下、前記入力装置の各部について詳しく説明する。なお、本実施例1における操作部材100の原点位置は、図2A及び図2Bに示すように、操作部材100の後述する本体部110の下面が基板400に対して略平行な状態にある位置を言う。前記16方向は、8つの正面方向と、8つの斜め方向とを有する。前記正面方向とは、操作部材100が第1スイッチ手段300aに向けて傾倒する方向であって、図1においてY方向、XY方向、X方向、X−Y方向、−Y方向、−X−Y方向、−X方向、−XY方向として示している。前記斜め方向とは、操作部材100が2つの第1スイッチ手段300aの間に向けて傾倒する方向(すなわち、Y方向とXY方向との間の方向、XY方向とX方向との間の方向、X方向とX−Y方向との間の方向、X−Y方向と−Y方向との間の方向、−Y方向と−X−Y方向との間の方向、−X−Y方向と−X方向との間の方向、−X方向と−XY方向との間の方向、−XY方向とY方向との間の方向)であるが、図示省略されている。図2A、図2B、図4A及び図4Bにおいて操作部材100の軸方向をαにて示している。第2傾倒角は第1傾倒角よりも大きい。
操作部材100は絶縁樹脂製の射出成型品である。この操作部材100は、図2A〜図3Bに示すように、本体部110と、傾倒軸120と、フランジ130と、4つの凸脈140と、4つの溶着用ボス150とを有している。円柱状の本体部110は、ケース600の後述する開口621aから露出する上端部111(操作部材の一部)と、ケース600内に収容される下端部112とを有している。本体部110の下端部112の外周面には、リング状のフランジ130が突設されている。また、本体部110の外周面には、軸方向αに延びる略矩形状の4つの凸脈140が90°ピッチ間隔で突設されている。本体部110の下面には、第1凹部113aが設けられている。この第1凹部113aは、その中心が本体部110の軸心に一致している。第1凹部113aの底面には第2凹部113bが設けられている。第2凹部113bも、その中心が本体部110の軸心に一致している。第2凹部113bの底面の中心部には半球状の突起である傾倒軸120が突設されている。本体部110の第1凹部113aの底面には、4つの溶着用ボス150が90°ピッチ間隔で配設されている。
導電金属板200は、図2A〜図3Bに示すように、外径がフランジ130の外径よりも小さい導電金属製の円板であって、操作部材100の本体部110の下面に固着されている。導電金属板200は本体部110の下面の形状に一致するように三段状にプレス形成されている。すなわち、導電金属板200は、上段部201と、中段部202と、下段部203とを有している。上段部201は、操作部材100の第2凹部113bに嵌合する天有円筒体である。上段部201の天板の中心部には、中心孔210が開設されている。この中心孔210には、操作部材100の傾倒軸120が挿入されている。中段部202は、上段部201の円筒部に連続し且つ操作部材100の第1凹部113aに嵌合する断面L字状の円筒台形である。中段部202の天板には、4つの周辺孔220が90°ピッチ間隔で開設されている。この周辺孔220に操作部材100の溶着用ボス150が挿入され溶着されている。これにより導電金属板200が操作部材100に固着され、操作部材100の傾倒に応じて揺動自在となっている。下段部203は、中段部202の円筒部の下端に連続し且つ操作部材100の本体部110の下面に当接する平板状のリングである。この下段部203には、傾倒軸120の周囲(すなわち、操作部材100の軸周り)に半球状の突起である8つの押下部230が45°ピッチ間隔で突設されている。押下部230は、操作部材100の周囲の上記8つの正面方向(すなわち、Y方向、XY方向、X方向、X−Y方向、−Y方向、−X−Y方向、−X方向、−XY方向)に対応するように配置されている。すなわち、押下部230は、第1スイッチ手段300aの後述するスナッププレート320aに接触、押圧可能に配置されている。導電金属板200の硬度は、押下部230が第1スイッチ手段300aのスナッププレート320aに接触、押圧した際に弾性変形しない程度の硬度を有している。本実施例1では、導電金属板200は、操作部材100よりも硬く且つスナッププレート320aよりもバネ定数が大きい金属板を用いている。
基板400としてはフレキシブルプリント基板を用いている。この基板400は、図2A〜図3Bに示すように、導電金属板200の下方に対向配置された略8角形の基板本体410と、この基板本体410に延設された長尺矩形状の導出部420とを有している。基板本体410の中心部には、円形の孔部411が開設されている。また、基板本体410の上面の孔部411の縁部には、リング状のコモン電極412が設けられている。基板本体410の上面のコモン電極412の周りには、8つの第1スイッチ手段300aが押下部230に対向するように45°ピッチ間隔で配設されている。すなわち、第1スイッチ手段300aは、基板本体410上の後述するボス613の周囲(すなわち、操作部材100の軸周り)に上記8つの正面方向に対応するように配設されている。なお、基板本体410及び導出部420には、コモン電極412及び第1スイッチ手段300aの電極311a、312aに各々接続された図示しない導電ラインが形成されている。導出部420は、ケース600の後述する導出孔614を通じてケース600外に突出し、図示しない電子機器に接続されている。
各第1スイッチ手段300aは、図2A〜図3Bに示すように、電極311a、312a(第1、第2電極)と、スナッププレート320a(第1導電プレート)とを有している。電極311aは、基板本体410の上面に形成されたリング状の導体である。電極312aは、基板本体410の上面の電極311aの内側に同心円状に形成された円形の導体である。スナッププレート320aは、弾性変形により反転可能なドーム状の導電金属板であって、外周縁部が電極311aに接触し且つ頂部が電極312aに対向配置されている。この状態で、全スナッププレート320aが、リング状の絶縁テープt1により基板400の上面に固定されている。絶縁テープt1の中心部には、円形の中心孔t1aが開設されている。この中心孔t1aの外径は、基板400のコモン電極412の外径よりも大きくなっている。この中心孔t1aからコモン電極412が露出している。また、絶縁テープt1の中心孔t1aの周りには、8つの周辺孔t1bが45°ピッチ間隔で開設されている。この周辺孔t1bからスナッププレート320aの頂部が露出し、導電金属板200の押下部230に対向している。
接続用スプリング500は、図2A〜図3Bに示すように、外径が基板400のコモン電極412の外径及び導電金属板200の上段部201の裏側の凹部の内径よりも小さく、内径がコモン電極412の内径よりも大きい導電性を有するコイルスプリングである。この接続用スプリング500の上端部が導電金属板200の前記凹部に収容され、当該凹部の底面(すなわち、上段部201の天板の下面)に弾性的に当接している。接続用スプリング500の下端部は、基板400のコモン電極412に弾性的に当接している。すなわち、接続用スプリング500は、導電金属板200の上段部201と基板400のコモン電極412との間に圧縮状態で介在している。これにより接続用スプリング500が、導電金属板200と基板400のコモン電極412とを電気的に接続し且つ導電金属板200及び操作部材100を上方に向けて付勢している。
弾性部材700は弾性ゴムで構成されている。この弾性部材700は、図2A〜図3Bに示すように、台座部710と、8つの突起720とを有している。台座部710は、基板400の上面の第1スイッチ手段300aの内側に載置されるリング状の板である。この台座部710の外周縁部には円弧状の8つの切欠き部が形成されている。この切欠き部により台座部710と第1スイッチ手段300aとの干渉と避けている。台座部710上には、半球状の突起720が45°ピッチ間隔で突設されている。この突起720は、導電金属板200の中段部202の天板の下面に当接している。すなわち、弾性部材700は、基板400と導電金属板200の中段部202との間に介在している。よって、導電金属板200が揺動し、中段部202に押圧されると、導電金属板200の揺動方向(すなわち、操作部材100の傾倒方向)の突起720が弾性変形し、操作部材100の傾倒操作の操作感をソフトにする。
ケース600は、図2A〜図3Bに示すように、操作部材100の下端部112と、導電金属板200と、8つの第1スイッチ手段300aと、基板400と、接続用スプリング500と、弾性部材700と、復帰機構800の後述する可動リング810及び復帰用スプリング820とを収容している。このケース600は、下ケース610と、この下ケース610に組み合わされた上ケース620とを有している。
下ケース610は絶縁樹脂製の8角形のカップである。この下ケース610は、底板部611(第2板部)と、周壁部612と、ボス613と、導出孔614とを有している。底板部611は、外形が基板400の基板本体410よりも大きい8角形の板部である。この底板部611の面上には、基板本体410が両面テープt2で固着されている。底板部611の中心部にはボス613が突設されている。このボス613は、外径が基板400の孔部411及び接続用スプリング500の内径よりも若干小さい円柱状の突起である。このボス613は基板400の孔部411に挿入されている。ボス613の上面には、半球状の支持凹部613aが開設されている。ボス613の支持凹部613aに操作部材100の傾倒軸120が嵌合し、原点位置から操作部材100の周囲の任意方向に傾動自在に軸支されている。また、ボス613は、操作部材100の傾倒軸120と共に接続用スプリング500内に挿入されている。ボス613が接続用スプリング500の下端部(基板400側の端部)の内側に位置し、当該接続用スプリング500の下端部を支持している。
また、底板部611の外周縁部には8角形の環状の周壁部612が立設されている。周壁部612には、当該周壁部612を貫通する矩形状の導出孔614が開設されている。底板部611及び周壁部612の4つの角部には上下方向(軸方向α)に貫通する4つのネジ孔612aが開設されている。周壁部612の先端面の前記角部の間の4つの角部には、4つの嵌合孔612bが開設されている。
上ケース620は絶縁樹脂製の8角形のカップである。この上ケース620は、天板部621(第1板部)と、周壁部622とを有している。天板部621は、底板部611に対向する当該底板部611と同じ外形を有する8角形の板部である。天板部621の外周縁部には8角形の環状の周壁部622が立設されている。周壁部622の厚み寸法は周壁部612の厚み寸法よりも小さい。このため、周壁部622の先端面と周壁部612の先端面とが当接した状態で、周壁部612の内側に8角形の環状の段部が生じている。周壁部622の先端面の4つの角部には4つのネジ穴622aが開設されている。周壁部622の先端面の前記角部の間の4つの角部には、4つの嵌合凸部622bが開設されている。嵌合凸部622bが嵌合孔612bに嵌合し、ネジ孔612a及びネジ穴622aにネジが螺合することにより、上下ケース620、610が組み合わせられた状態で維持されている。この状態で、天板部621、周壁部622、底板部611及び周壁部612が、操作部材100の下端部112、導電金属板200、8つの第1スイッチ手段300a、基板400と、接続用スプリング500、弾性部材700、可動リング810及び復帰用スプリング820を収容するための内部空間を区画している。
天板部621の中心部には、操作部材100の本体部110の外径よりも若干径が大きい円形の開口621aが開設されている。天板部621の開口621aの周縁部には、開口621aに連通しており且つ幅寸法が操作部材100の凸脈140の幅寸法よりも若干大きい略矩形状の凹部621bが90°ピッチ間隔で設けられている。凹部621bは、開口621a周りのY方向、X方向、−Y方向、−X方向に配置され且つ開口621aから放射状に延びている。開口621a内には操作部材100の本体部110の上端部111が原点位置から傾動自在に挿入されている。凹部621bには操作部材100の凸脈140が軸方向αに上下動自在に挿入されている。このように操作部材100の凸脈140が上ケース620の凹部621bに挿入されることにより、操作部材100の周方向への回転が防止されている。
復帰機構800は、操作部材100を原点位置で保持している。この復帰機構800は、図2A及び図2Bに示すように、可動リング810(可動部材)と、4つの復帰用スプリング820(付勢手段)と、4つの支持部830と、当て止め部840とを有している。支持部830は、開口621a周りのY方向、X方向、−Y方向、−X方向に対応して配置されている。具体的には、支持部830は、天板部621の開口621aの周縁部の凹部621bの奥側領域831と、この奥側領域831に下方に立設された円柱832とを有している。当て止め部840は、下ケース610の周壁部612の前記段部であって、全第1スイッチ手段300aの周囲に配置され且つ支持部830に部分的に対向している。
可動リング810は、図3A及び図3Bに示すように、リング状の金属板である。可動リング810は、外側端部811と、内側端部812と、中間部813とを有している。外側端部811は、図2A及び図2Bに示すように、外径が当て止め部840の内径よりも大きいリング状の板である。内側端部812は、外径が外側端部811の内径よりも小さく、内径が操作部材100のフランジ130の外径よりも小さく且つ全ての凸脈140の外面を通る仮想円の径よりも大きいリング状の板である。中間部813は、外側端部811の内周縁部と内側端部812の外周縁部との間を接続する円筒体であって、内側端部812を外側端部811よりも上方位置で支持している。外側端部811は支持部830と当て止め部840との間に挿入され、当て止め部840に上方(すなわち、操作部材100の傾倒方向側)から当接している。内側端部812は操作部材100のフランジ130に上方(すなわち、操作部材100の傾倒方向側)から当接している。
各復帰用スプリング820は、図2A乃至図3Bに示すように、コイルスプリングである。この復帰用スプリング820の長さ方向の一端部に円柱832が内挿され、当該一端部の先端が奥側領域831に弾性的に当接している。復帰用スプリング820の長さ方向の他端部は、可動リング810の外側端部811に弾性的に当接している。すなわち、復帰用スプリング820は、支持部830の奥側領域831と可動リング810の外側端部811との間で圧縮状態で介在している。この復帰用スプリング820により可動リング810の外側端部811が当て止め部840に向けて(すなわち、下方に)弾発付勢され、当該当て止め部840に押し付けられている。これと共に、可動リング810の内側端部812が操作部材100のフランジ130に押し付けられ、当該フランジ130及び操作部材100の下面が基板400に対して略平行となる。このようにして操作部材100が復帰機構800により原点位置で保持されている。なお、全復帰用スプリング820の弾性力(合力)は、接続用スプリング500の弾性力よりも大きくなっている。すなわち、復帰用スプリング820の下向きの合力が、接続用スプリング500の上向きの弾性力よりも大きいため、操作部材100及び導電金属板200が接続用スプリング500に上方に付勢され、浮き上がるのを抑制している。
以下、上述した構成の多方向入力装置の組み立て手順について説明する。まず、操作部材100及び導電金属板200を用意する。その後、操作部材100の傾倒軸120を導
電金属板200の中心孔210に挿入すると共に、操作部材100の溶着用ボス150を導電金属板200の周辺孔220に各々挿入する。このとき、導電金属板200の上段部201が操作部材100の第2凹部113bに嵌合し、中段部202が操作部材100の第1凹部113aに嵌合し、下段部203が操作部材100の本体部110の下面に当接する。その後、溶着用ボス150を導電金属板200の中段部202に溶着させる。このようにして操作部材100に導電金属板200が固着される。
その後、上ケース620を用意し、上下逆にセットする。その後、上ケース620の4つの円柱832を4つの復帰用スプリング820に各々挿入し、当該復帰用スプリング820の前記一端部を上ケース620の奥側領域831に各々当接させる。その後、可動リング810の外側端部811を復帰用スプリング820の前記他端部上に載置する。その後、操作部材100の上端部111を可動リング810内、上ケース620の開口621aに順次挿入する。これと共に、操作部材100の凸脈140を上ケース620の凹部621bに各々挿入する。すると、操作部材100のフランジ130が可動リング810の内側端部812に当接する。その後、接続用スプリング500に操作部材100の傾倒軸120を挿入しつつ、当該接続用スプリング500を導電金属板200の上段部201の天板上に載置する。その後、弾性部材700を導電金属板200の中段部202の天板上に載置する。すると、弾性部材700の突起720が中段部202の下面に各々当接する。
その一方で、基板400を用意する。この基板400は、基板本体410の面上にコモン電極412、電極311a、312a及び導電ラインが、導出部420に導電ラインが予め形成されている。その後、電極311a上にスナッププレート320aの外周縁部を各々載置する。この状態で、絶縁テープt1を基板400の基板本体410に貼付する。これにより、スナッププレート320aが基板本体410の面上に固定される。その後、下ケース610を用意にする。その後、下ケース610の導出孔614に基板400の導出部420を挿入して下ケース610外に導出させ、下ケース610の底板部611上に両面テープt2で基板400の基板本体410を接着する。このとき、下ケース610のボス613が基板本体410の孔部411に挿入される。
その後、下ケース610を上ケース620に被せ、上ケース620の嵌合凸部622bを下ケース610の嵌合孔612bに挿入する。すると、下ケース610の周壁部612が上ケース620の周壁部622に当接し、上ケース620のネジ穴622aと下ケース610のネジ孔612aが連通する。このとき、下ケース610のボス613が接続用スプリング500に挿入され、操作部材100の傾倒軸120が当該ボス613の凹部613aに嵌合すると共に、接続用スプリング500が基板本体410と導電金属板200との間で圧縮される。可動リング810の外側端部811が下ケース610の当て止め部840に当接し、復帰用スプリング820が可動リング810と上ケース620の支持部830との間で圧縮される。弾性部材700の台座部710が基板本体410上に設置される。その後、ネジ孔612a及びネジ穴622aにネジを螺合させる。これにより、下ケース610と上ケース620とが組み合わせられる。
以下、このように組み立てられた多方向入力装置の使用方法について説明すると共に、当該入力装置の各部の動作について説明する。図4Aに示すように操作部材100が上記8つの正面方向の何れか一つの正面方向に第1傾倒角、傾倒操作されると、当該操作部材100が傾倒軸120を支点に前記正面方向に傾倒する。これに伴って導電金属板200が傾倒軸120を支点に前記正面方向に揺動し、当該導電金属板200の前記正面方向側の一つの押下部230が、前記正面方向側の一つの第1スイッチ手段300aのスナッププレート320aに接近して接触する。これにより、コモン電極412と第1スイッチ手段300aの電極311aが、接続用スプリング500、導電金属板200及びスナッププレート320aを介して閉成され、操作部材100の前記正面方向及び第1傾倒角を示すデジタル信号が上記電子機器の制御部に出力される。このように操作部材100の上記8つの正面方向の第1傾倒角の傾倒操作時には、スナッププレート320aの反転を伴わないため、クリック感なしの操作入力となる。
図4Bに示すように操作部材100が上記8つの正面方向の何れか一つの正面方向に第2傾倒角、傾倒操作されると、当該操作部材100が傾倒軸120を支点に前記正面方向に傾倒し、これに伴って導電金属板200が傾倒軸120を支点に前記正面方向に揺動する。すると、導電金属板200の前記正面方向側の一つの押下部230が、前記正面方向側の一つの第1スイッチ手段300aのスナッププレート320aに接近して押圧する。これにより、スナッププレート320aが反転し、第1スイッチ手段300aの電極312aに接触する。これにより、コモン電極412と電極312aが接続用スプリング500、導電金属板200及びスナッププレート320aを介して閉成され、操作部材100の前記正面方向及び第2傾倒角を示すデジタル信号が上記電子機器の制御部に出力される。なお、スナッププレート320aが反転する際に、クリック感が生じる。
前記正面方向の上記第1、第2傾倒角の傾倒操作時に、導電金属板200の揺動に伴って接続用スプリング500の上端部が前記正面方向に弾性変形しつつ傾斜し、弾性部材700の前記正面方向側の突起720が導電金属板200の中段部202と基板本体410との間で圧縮され、弾性変形する。このとき、接続用スプリング500の下端部はボス613により支持されている。また、操作部材100の傾倒により、フランジ130の前記正面方向側の部分が下方に移動して可動リング810の内側端部812の前記正面方向側の部分から離れる一方、当該フランジ130の前記正面方向の反対側の部分が上方に移動し、可動リング810の前記正面方向の反対側の部分を押し上げる。これにより、前記正面方向の反対側で複数の復帰用スプリング820が可動リング810と上ケース620の奥側領域831との間で圧縮される。
上述の如く傾倒操作された操作部材100が解放されると、圧縮された復帰用スプリング820の付勢力により、可動リング810の外側端部811の前記正面方向の反対側の部分が押し下げられ、当該可動リング810の内側端部812の前記正面方向の反対側の部分がフランジ130の前記正面方向の反対側の部分を押し下げる。その後、可動リング810の外側端部811の前記正面方向の反対側の部分が当て止め部840の前記正面方向の反対側の部分に当接する。これにより、操作部材100が原点位置に復帰する。
操作部材100が上記8つの斜め方向の何れか一つの斜め方向に第1傾倒角、傾倒操作されると、当該操作部材100が傾倒軸120を支点に前記斜め方向に傾倒する。これに伴って導電金属板200が傾倒軸120を支点に前記斜め方向に揺動する。すると、導電金属板200の前記斜め方向の両側の正面方向に位置する二つの押下部230が、前記正面方向に位置する二つの第1スイッチ手段300aのスナッププレート320aに接触する。例えば、操作部材100がY方向とXY方向との間の斜め方向に傾倒操作された場合、前記斜め方向の両側の正面方向(すなわち、Y方向及びXY方向)に位置する二つの押下部230が、Y方向及びXY方向に位置する二つの第1スイッチ手段300aのスナッププレート320aに接近して接触する。これにより、コモン電極412と二つの第1スイッチ手段300aの電極311aが、接続用スプリング500、導電金属板200及びスナッププレート320aを介して各々閉成され、操作部材100の前記斜め方向及び第1傾倒角を示すデジタル信号が上記電子機器の制御部に各々出力される。なお、操作部材100の上記8つの斜め方向の第1傾倒角の傾倒操作時にも、スナッププレート320aの反転を伴わないため、クリック感なしの操作入力となる。
操作部材100が上記8つの斜め方向の何れか一つの斜め方向に第2傾倒角、傾倒操作されると、当該操作部材100が傾倒軸120を支点に前記斜め方向に傾倒し、これに伴って導電金属板200が傾倒軸120を支点に前記斜め方向に揺動する。すると、導電金属板200の前記斜め方向の両側の正面方向に位置する二つの押下部230が、前記正面方向に位置する二つの第1スイッチ手段300aのスナッププレート320aを押圧する。例えば、操作部材100がX−Y方向と−Y方向との間の斜め方向に傾倒操作された場合、前記斜め方向の両側の正面方向(すなわち、X−Y方向及び−Y方向)に位置する二つの押下部230が、X−Y方向及び−Y方向に位置する二つの第1スイッチ手段300aのスナッププレート320aを接近して押圧する。これにより、スナッププレート320aが各々反転し、第1スイッチ手段300aの電極312aに各々接触する。これにより、コモン電極412と二つの第1スイッチ手段300aの電極312aが接続用スプリング500、導電金属板200及びスナッププレート320aを介して各々閉成され、操作部材100の前記斜め方向及び第2傾倒角を示すデジタル信号が上記電子機器の制御部に各々出力される。なお、スナッププレート320aが反転する際に、クリック感が生じる。
前記斜め方向の上記第1、第2傾倒角の傾倒操作時に、導電金属板200の揺動に伴って接続用スプリング500の上端部が前記斜め方向に弾性変形しつつ傾斜し、弾性部材700の前記斜め方向側の突起720が導電金属板200の中段部202と基板本体410との間で圧縮され、弾性変形する。このとき、接続用スプリング500の下端部はボス613により支持されている。また、操作部材100の傾倒により、フランジ130の前記斜め方向側の部分が下方に移動して可動リング810の前記斜め方向側の部分から離れる一方、当該フランジ130の前記斜め方向の反対側の部分が上方に移動し、可動リング810の前記斜め方向の反対側の部分を押し上げる。これにより、前記斜め方向の反対側で複数の復帰用スプリング820が可動リング810と上ケース620の奥側領域831との間で圧縮される。
上述の如く傾倒操作された操作部材100が解放されると、圧縮された復帰用スプリング820の付勢力により、可動リング810の外側端部811の前記斜め方向の反対側の部分が押し下げられ、当該可動リング810の内側端部812の前記斜め方向の反対側の部分がフランジ130の前記斜め方向の反対側の部分を押し下げる。その後、可動リング810の外側端部811の前記斜め方向の反対側の部分が当て止め部840の前記斜め方向の反対側の部分に当接する。これにより、操作部材100が原点位置に復帰する。
以上のような多方向入力装置による場合、硬質な導電金属板200の押下部230が第1スイッチ手段300aのスナッププレート320aに接触・押圧し、デジタル信号が各々出力される構成であるので、出力信号にバラツキが生じることがない。よって、前記多方向入力装置の操作部材100の傾倒の検出精度を向上させることができる。しかも、前記多方向入力装置が備えられる上記電子機器の制御部は、前記デジタル信号に基づいて操作部材100の傾倒方向及び第1、第2傾倒角を検出する構成であるから、当該制御部の回路構成及び/又は制御プログラムの構成の簡単化を図ることができる。
更に、従来の多方向入力装置は、8つの傾倒検出手段が操作部材の軸周りに45°ピッチ間隔で配設されている場合、操作部材が前記傾倒検出手段のうちの2つの傾倒検出手段の間の斜め方向に傾倒操作されると、当該斜め方向の両側に位置する二つの傾倒検出手段だけでなく、当該傾倒検出手段近傍の他の傾倒検出手段も抵抗値が可変することがある。具体的には、前記二つの傾倒検出手段の導電性弾性体が抵抗体に弾性接触する際に、前記他の傾倒検出手段の導電性弾性体が抵抗体に弾性接触し、各々がアナログ信号を出力する。このため、前記多方向入力装置が備えられる電子機器の制御部は、前記傾倒操作手段の三つのアナログ信号を処理して操作部材の傾倒方向を検出しなければならないため、前記制御部の回路構成及び/又は前記制御部に処理される制御プログラムが複雑になっていた。また、従来の多方向入力装置は、操作部材の軸周りに8つの傾倒検出手段を配置した場合、操作部材が前記傾倒検出手段のうちの一つの傾倒検出手段に向けて(すなわち、正面方向)に傾倒操作されると、当該傾倒検出手段の導電性弾性体が抵抗体に弾性接触すると共に、当該傾倒検出手段の両隣の傾倒検出手段の導電性弾性体も抵抗体に弾性接触し、各々がアナログ信号を出力することがある。よって、前記制御部は、操作部材の正面方向の傾倒操作時も、前記傾倒操作手段の三つのアナログ信号を処理して操作部材の傾倒方向を検出しなければならず、この点でも前記制御部の回路構成及び/又は前記制御部に処理される制御プログラムが複雑になっていた。
これに対して、本実施例1の多方向入力装置は、押下部230が第1スイッチ手段300aのスナッププレート320aに接触及び押圧する際に、導電金属板200が弾性変形しない。よって、操作部材100が上記斜め方向に傾倒操作されたとしても、前記斜め方向の両側の正面方向に位置する二つの押下部230が、前記正面方向に位置する二つの第1スイッチ手段300aのスナッププレート320aに接触・押圧するだけである。すなわち、前記斜め方向に傾倒操作時において、前記二つの第1スイッチ手段300a以外の第1スイッチ手段300aからデジタル信号が出力されることがない。また、操作部材100が上記正面方向に傾倒操作されたとしても、前記正面方向に位置する一つの押下部230が、前記正面方向に位置する一つの第1スイッチ手段300aのスナッププレート320aに接触・押圧するだけである。すなわち、操作部材100の軸周りに8つの第1スイッチ手段300aを配置しても、前記正面方向に傾倒操作時において、前記一つの第1スイッチ手段300aからデジタル信号が出力されるだけである。よって、前記多方向入力装置が備えられる電子機器の制御部の回路構成及び/又は前記制御部に処理される制御プログラムの構成の簡単化を図ることができる。
また、導電金属板200が接続用スプリング500を介してコモン電極412に接続されているため、導電金属板200を第1スイッチ手段300aのスナッププレート320aに接触させるだけでデジタル信号を出力させることができる。よって、操作部材100の第1、第2傾倒角を検出するために、2つのスナッププレートを必要としないので、第1スイッチ手段300aの構成の簡略化を図ることができる。しかも、接続用スプリング500が下ケース610のボス613により支持されているため、導電金属板200とコモン電極412との電気的な接続の安定性を向上させることができる。
次に、本発明の実施例2の多方向入力装置について図5乃至図8Cを参照しつつ説明する。この多方向入力装置は、上記16方向の各々第1、第2傾倒角の傾倒操作入力に加えて、操作部材100を原点位置から周囲のY方向、X方向、−Y方向、−X方向に各々第2傾倒角よりも大きい第3傾倒角の傾倒操作入力が可能な装置である。したがって、前記多方向入力装置は、次の第1、第2相違点で実施例1の多方向入力装置と相違している。第1相違点は、前記入力装置が基板400に代えて、揺動部材900及び4つの第2スイッチ手段300bを備えていることにある。第2相違点は、下ケース610’の構成が実施例1の下ケース610の構成と相違していることにある。以下、第1、第2の相違点について詳しく説明し、実施例1と重複する説明については省略する。なお、下ケースについては、’を付して実施例1の下ケース610と区別する。
下ケース610’は絶縁樹脂製の8角形のカップである。この下ケース610’は、図6A〜図7Bに示すように、底板部611’と、周壁部612’と、支持凸部613’と、導出孔614’と、4つの当接部615’と、4つのストッパー616’を有している。底板部611’及び周壁部622’は実施例1と略同じ形状である。底板部611’の中心部には半球状の支持凸部613’が立設されている。底板部611’の支持凸部613’の周囲には、突起状の4つの当接部615’が90°ピッチ間隔で配設されている。また、底板部611’の支持凸部613’の周囲には、突起状の4つのストッパー616’が当接部615’の間に位置するように90°ピッチ間隔で配設されている。すなわち、当接部615’は、底板部611’の支持凸部613’の周囲のY方向、X方向、−Y方向、−X方向に配設されており、ストッパー616’は、底板部611’の支持凸部613’の周囲のXY方向、X−Y方向、−X−Y方向、−XY方向に配設されている。周壁部612’の厚み寸法は、上ケース620の周壁部622の厚み寸法よりも大きい。このため、図6A及び図6Bに示すように、周壁部612’の先端面と周壁部622の先端面とが当接した状態で、周壁部612’の内側に段部が形成されている。この段部が実施例1と同様に復帰機構800の当て止め部840として機能している。また、周壁部612’には、図7Aに示すように、当該周壁部612’を貫通する矩形状の導出孔614’が開設されている。底板部611’及び周壁部612’の角部には、実施例1と同様に、上下方向(軸方向α)に貫通する4つのネジ孔612a’と、嵌合孔612b’が開設されている。
揺動部材900は、図6A〜図7Bに示すように、揺動部材本体910と、基板920とを有している。揺動部材本体910は絶縁樹脂製の射出成型品である。この揺動部材本体910は、板部911と、上側ボス912と、下側ボス913とを有している。板部911は、下ケース610’に収容される8角形の板体である。この板部911は上面911a及び下面911bを有している。板部911の下面911bの中心部には、円柱状の下側ボス913が突設されている。この下側ボス913の下面には、半球状の下側支持凹部913aが開設されている。この下側支持凹部913aに下ケース610’の支持凸部613’が嵌合することにより、揺動部材本体910が後述する初期位置から周囲の任意方向に揺動自在に支持されている。なお、初期位置とは、板部911が下ケース610’の底板部611’に対して略平行な位置である。板部911の上面911aの中心部には、下側ボス913と略同じ外径を有し且つ中心が下側ボス913の中心を通る仮想鉛直線(図示せず)上に位置する円柱状の上側ボス912が突設されている。この上側ボス912の上面には、半球状の支持凹部912aが開設されている。この支持凹部912aに操作部材100の傾倒軸120が挿入され、原点位置から操作部材100の周囲の任意方向に傾動自在に軸支されている。揺動部材900の傾倒軸の軸心と操作部材100の傾倒軸120の軸心とは、前記仮想鉛直線上に位置している。
基板920としてはフレキシブルプリント基板を用いている。この基板920は、図7A及び図7Bに示すように、略8角形の上側基板本体921と、略8角形の下側基板本体922と、接続部923と、導出部924とを有している。上側基板本体921は、板部911の上面911aに両面テープt3で貼付され且つ上面が(揺動部材の第1面)導電金属板200に対向している。上側基板本体921の中心部には、図7Aに示すように、揺動部材本体910の上側ボス912が挿入された円形の孔部921aが開設されている。また、上側基板本体921の上面の孔部921aの縁部には、リング状のコモン電極921bが設けられている。接続用スプリング500は、コモン電極921bと導電金属板200の上段部201の天板との間に介在している。上側基板本体921の上面のコモン電極921bの周りには、実施例1と同様に8つの第1スイッチ手段300aが押下部230に対向するように45°ピッチ間隔で配設されている。また、上側基板本体921の上面のコモン電極921bと第1スイッチ手段300aとの間には、弾性部材700が載置されている。すなわち、弾性部材700は、揺動部材900の上側基板本体921と導電金属板200の中段部202との間に介在している。上側基板本体921の8辺部のうちの1辺部には、長尺矩形状の導出部924が延設されている。この導出部924は、下ケース610’の導出孔614’から下ケース610’外に突出し、図示しない電子機器に接続されている。上側基板本体921と下側基板本体922とは、半円弧状に湾曲した接続部923により接続されている。なお、図7A及び図7Bにおいては、接続部923は中間部が破断している。
下側基板本体922は、板部911の下面911bに両面テープt4で貼付されている。下側基板本体922の中心部には、図7Bに示すように、揺動部材本体910の下側ボス913が挿入された円形の孔部922aが開設されている。また、上側基板本体921の上面の孔部922aの周りには、4つの第2スイッチ手段300bが90°ピッチ間隔で当接部615’に対向するように配設されている。すなわち、第2スイッチ手段300bは、孔部922aの周りのY方向、X方向、−Y方向、−X方向に第1スイッチ手段300aの裏側に位置するように配置されている。
各第2スイッチ手段300bは、図7Bに示すように、電極311b、312b(第3、第4電極)と、スナッププレート320b(第2導電プレート)とを有している。電極311bは、下側基板本体922の下面(揺動部材の第2面)に形成されたリング状の導体である。電極312bは、基板本体410の上面の電極311bの内側に同心円状に形成された円形の導体である。スナッププレート320bは、弾性変形により反転可能なドーム状の導電金属板であって、外周縁部が電極311bに接触し且つ頂部が電極312bに対向配置されている。この状態で、全スナッププレート320bが、リング状の絶縁テープt5により下側基板本体922の下面に固定されている。また、全スナッププレート320bは、絶縁テープt5を介して当接部615’に各々当接している。すなわち、4つの当接部615’が絶縁テープt5を介して4つのスナッププレート320bに当接することにより、揺動部材900が初期位置で保持されている。また、スナッププレート320bの弾性力(押圧変形力)は、スナッププレート320aの弾性力(押圧変形力)よりも大きく設定されている。このため、操作部材100が後述する第3傾倒角の傾倒操作時に、導電金属板200の押下部230がスナッププレート320aを押下して、当該スナッププレート320aを反転させると共に、揺動部材900を揺動させた後、スナッププレート320bが当接部615’に押し当てられて反転するようになっている。なお、上側基板本体921、下側基板本体922、接続部923及び導出部924には、コモン電極921b及び第1、第2スイッチ手段300a、300bの一対の電極311a、312a、311b、312bに各々接続された図示しない導電ラインが形成されている。
以下、上述した構成の多方向入力装置の組み立て手順について説明する。まず、実施例1と同様に操作部材100に導電金属板200を固着させる。その後、上ケース620を用意する。その後、実施例1と同様に、上ケース620に4つの復帰用スプリング820、可動リング810、操作部材100、導電金属板200、接続用スプリング500及び弾性部材700を組み込む。
その一方で、基板920を用意する。この基板920は、上側基板本体921の面上にコモン電極921b、電極311a、312a及び導電ラインが、下側基板本体922に電極311b、312b及び導電ラインが、接続部923及び導出部924に導電ラインが予め形成されている。その後、電極311a上にスナッププレート320aの外周縁部を各々載置する。この状態で、絶縁テープt1を上側基板本体921に貼付する。これにより、スナッププレート320aが上側基板本体921の面上に固定される。同様に、電極311b上にスナッププレート320bの外周縁部を各々載置する。この状態で、絶縁テープt5を下側基板本体922に貼付する。これにより、スナッププレート320bが下側基板本体922の面上に固定される。その後、揺動部材本体910を用意する。その後、揺動部材本体910の板部911の上面911aに両面テープt3で上側基板本体921を貼付すると共に、板部911の下面911bに両面テープt4で下側基板本体922を貼付する。その後、操作部材100の傾倒軸120を揺動部材本体910の上側ボス912の支持凹部912aに嵌合させる。すると、弾性部材700の台座部710が上側基板本体921上に設置される。
その後、下ケース610’を用意にする。その後、下ケース610’の導出孔614’に基板920の導出部924を挿入して下ケース610’外に導出させ、下ケース610’を上ケース620に被せる。このとき、上ケース620の嵌合凸部622bを下ケース610’の嵌合孔612b’に嵌合させる。すると、下ケース610’の周壁部612’が上ケース620の周壁部622に当接し、上ケース620のネジ穴622aと下ケース610’のネジ孔612a’が連通する。このとき、揺動部材本体910の下側ボス913の下側支持凹部913aに下ケース610’の支持凸部613’が嵌合する。これと共に、接続用スプリング500が揺動部材900の上側基板本体921と導電金属板200との間で圧縮される。可動リング810の外側端部811が下ケース610’の当て止め部840に当接し、復帰用スプリング820が可動リング810と支持部830の奥側領域831との間で各々圧縮される。その後、ネジ孔612a’及びネジ穴622aにネジを螺合させる。これにより、下ケース610’と上ケース620とが組み合わせる。
以下、このように組み立てられた多方向入力装置の使用方法について説明すると共に、当該入力装置の各部の動作について説明する。図8Aに示すように操作部材100が上記8つの正面方向の何れか一つの正面方向に第1傾倒角、傾倒操作されたときには、実施例1と同様に、前記多方向入力装置の各部が動作し、操作部材100の前記正面方向及び第1傾倒角を示すデジタル信号が上記電子機器の制御部に出力される。図8Bに示すように操作部材100が上記8つの正面方向の何れか一つの正面方向に第2傾倒角、傾倒操作されたときには、実施例1と同様に、前記多方向入力装置の各部が動作し、操作部材100の前記正面方向及び第2傾倒角を示すデジタル信号が上記電子機器の制御部に出力される。傾倒操作された操作部材100が解放されたときには、実施例1と同様に、前記多方向入力装置の各部が動作し、操作部材100が原点位置に復帰する。
図8Cに示すように操作部材100がY方向、X方向、−Y方向、−X方向の何れか一方向に第3傾倒角、傾倒操作されると、当該操作部材100が傾倒軸120を支点に前記一方向に傾倒し、これに伴って導電金属板200が傾倒軸120を支点に前記一方向に揺動する。すると、導電金属板200の前記一方向側の一つの押下部230が、前記一方向側の一つの第1スイッチ手段300aのスナッププレート320aを押圧反転させると共に、揺動部材900の前記一方向側部分を押圧する。これにより、揺動部材900が下ケース610’の支持凸部613’を支点として前記一方向に揺動し、前記一方向側の第2スイッチ手段300bのスナッププレート320bが前記一方向側の当接部615’に押し付けられる。これにより、スナッププレート320bが反転し、第2スイッチ手段300bの電極312bに接触する。これにより、電極311b、312bがスナッププレート320bを介して閉成され、操作部材100の前記一方向及び第3傾倒角を示すデジタル信号が上記電子機器の制御部に出力される。なお、スナッププレート320a、320bが反転する際に、クリック感が生じる。
前記Y方向、X方向、−Y方向、−X方向の何れか一方向の上記第3傾倒角の傾倒操作時に、導電金属板200の揺動に伴って接続用スプリング500の上端部が前記一方向に弾性変形しつつ傾斜する。このとき、接続用スプリング500の下端部がボス912により支持されている。これと共に、弾性部材700の前記一方向側の突起720が導電金属板200の中段部202と揺動部材900の上側基板本体921との間で圧縮され、弾性変形する。また、操作部材100の傾倒により、フランジ130の前記一方向側の部分が下方に移動して可動リング810の内側端部812の前記一方向側の部分から離れる一方、当該フランジ130の前記一方向の反対側の部分が上方に移動し、可動リング810の外側端部811の前記一方向の反対側の部分を押し上げる。これにより、前記一方向の反対側で複数の復帰用スプリング820が可動リング810と上ケース620の奥側領域831との間で圧縮される。
上述の如く傾倒操作された操作部材100が解放されると、復帰用スプリング820の付勢力により、可動リング810の外側端部811の前記一方向の反対側の部分が押し下げられ、当該可動リング810の内側端部812の前記一方向の反対側の部分がフランジ130の前記一方向の反対側の部分を押し下げる。その後、可動リング810の外側端部811の前記一方向の反対側の部分が当て止め部840の前記一方向の反対側の部分に当接する。これと共に、前記一方向側のスナッププレート320bが復元して前記一方向側の当接部615’を押圧する。これにより、操作部材100が原点位置に復帰すると共に、揺動部材900が初期位置に復帰する。
また、操作部材100が上記8つの斜め方向の何れか一つの斜め方向に第1傾倒角、傾倒操作されたときには、実施例1と同様に、前記多方向入力装置の各部が動作し、操作部材100の前記斜め方向及び第1傾倒角を示すデジタル信号が上記電子機器の制御部に各々出力される。操作部材100が上記8つの斜め方向の何れか一つの斜め方向に第2傾倒角、傾倒操作されたときには、実施例1と同様に、前記多方向入力装置の各部が動作し、操作部材100の前記斜め方向及び第2傾倒角を示すデジタル信号が上記電子機器の制御部に各々出力される。これらのように傾倒操作された操作部材100が解放されたときには、実施例1と同様に、前記多方向入力装置の各部が動作し、操作部材100が原点位置に復帰する。
操作部材100がXY方向、X−Y方向、−X−Y方向、−XY方向の何れか一方向に第2傾倒角以上傾倒操作されると、当該操作部材100が傾倒軸120を支点に前記一方向に傾倒し、これに伴って導電金属板200が傾倒軸120を支点に前記一方向に揺動する。すると、導電金属板200の前記一方向側の一つの押下部230が、前記一方向側の一つの第1スイッチ手段300aのスナッププレート320a及び揺動部材900の前記一方向側部分を押圧する。これにより、揺動部材900が下ケース610’の支持凸部613’を支点として前記一方向に揺動し、前記一方向側のストッパー616’に当接する。これにより、前記一方向側のストッパー616’の両側の第2スイッチ手段300bのスナッププレート320bの反転が防止される。したがって、操作部材100の前記一方向及び第3傾倒角を示すデジタル信号は出力されない。
以上のような多方向入力装置による場合、硬質な導電金属板200の押下部230が第1スイッチ手段300aのスナッププレート320aに接触・押圧することにより、デジタル信号が各々出力される。また、導電金属板200の押下部230が揺動部材900を押圧し、第2スイッチ手段300bのスナッププレート320bが当接部615’に押し付けられることにより、デジタル信号が出力される。このように多方向入力装置は、出力信号にバラツキが生じることがないので、操作部材100の傾倒の検出精度を向上させることができる。しかも、前記多方向入力装置が備えられる上記電子機器の制御部は、前記デジタル信号に基づいて操作部材100の傾倒方向及び第1、第2、第3傾倒角を検出する構成であるから、当該制御部の回路構成及び/又は制御プログラムの構成の簡単化を図ることができる。また、前記多方向入力装置は、前述の効果の他実施例1と同様の効果を得ることができる。
なお、本発明に係る多方向入力装置は、上記実施例1及び2に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の範囲において任意に設計変更することが可能である。以下、詳しく述べる。
操作部材100は、上記実施例1では、原点位置から周囲の16方向に各々第1、第2傾倒角の傾倒操作可能、上記実施例2では、原点位置から周囲の16方向に各々第1、第2傾倒角の傾倒操作可能であると共に、原点位置から周囲の4方向に第3傾倒角の傾倒操作が可能であるとしたが、操作部材は少なくとも原点位置から周囲に多方向に各々第1、第2傾倒角の傾倒操作可能な構成となっている限り任意に設計変更することが可能である。例えば、操作部材が原点位置の周囲のY方向、X方向、−Y方向、−X方向の4方向に第1、第2傾倒角、傾倒操作可能な構成に設計変形可能であるし、Y方向、XY方向、X方向、X−Y方向、−Y方向、−X−Y方向、−X方向、−XY方の8方向に第1、第2傾倒角、傾倒操作可能な構成に設計変更することも可能である。また、操作部材が原点位置からY方向、XY方向、X方向、X−Y方向、−Y方向、−X−Y方向、−X方向、−XY方の8方向に第3傾倒角、傾倒操作可能な構成に設計変更することも可能である。これらの場合、第1、第2スイッチ手段は、操作部材の検出する方向に応じて適宜配置すれば良い。また、操作部材の第1スイッチ手段間の斜め方向、第2スイッチ手段間の斜め方向の操作入力を検出可能とするか否かについては、任意に選択設定することが可能である。また、第2スイッチ手段300bは、実施例2の如く第1スイッチ手段300aの裏側に配置されている必要はなく、操作部材の傾倒に伴って揺動した導電部材に揺動部材が押下され、第2スイッチ手段300bが当接部に当接してオンとなる構成とすることが可能である。すなわち、操作部材が第1、第2傾倒角の傾倒方向と異なる方向で第3傾倒角の操作入力可能な構成とすることが可能である。
上記実施例1では、操作部材100は、傾倒軸120が底板部611のボス613に軸支され傾倒可能になっているとしたが、操作部材が底板部に傾倒自在に軸支されている限り任意に設計変更することが可能である。例えば、底板部の面上に半球状の凹部を設け、該凹部に傾倒軸120を軸支させることが可能である。また、操作部材の下面に設けられた半球状の凹部に、底板部に突設された突起状のボスの半球状の先端部を嵌合させ、当該ボスを操作部材の傾倒軸とすることが可能である。また、操作部材に固着された導電部材に傾倒軸を設け、この傾倒軸を底板部の半球状の凹部に傾倒自在に嵌合させる構成とすることが可能であるし、操作部材に固着された導電部材に前記凹部を設け、底板部のボスを嵌合させる構成とすることも可能である。上記実施例2では、操作部材100は、傾倒軸120が揺動部材900の上側ボス912に軸支され傾倒可能になっているとしたが、これに限定されるものではない。例えば、上側ボスを設けず、揺動部材に傾倒軸120を軸支する半球状の凹部を設けることが可能である。また、操作部材の下面に設けられた半球状の凹部に、揺動部材に突設された突起状のボスの半球状の先端部を嵌合させ、当該ボスを操作部材の傾倒軸とすることが可能である。また、操作部材に固着された導電部材に傾倒軸を設け、この傾倒軸を揺動部材の半球状の凹部に傾倒自在に嵌合させる構成とすることが可能であるし、操作部材に固着された導電部材に前記凹部を設け、揺動部材のボスを嵌合させる構成とすることも可能である。また、操作部材は、揺動部材以外の部材に傾倒自在に軸支される構成とすることも可能である。例えば、操作部材は、ケースの底板部に設けられ、揺動部材を貫通するボス等により支持される構成とすることが可能である。
また、上記実施例1及び2では、操作部材100の凸脈140が、上ケース620の凹部621bに上下動自在に挿入されることにより、操作部材100の周方向への回転が防止されるとしたが、これに限定されるものではない。例えば、前記操作部材の外周面に、当該操作部材の軸方向に延びた溝部を設ける一方、前記第1板部の開口の外周縁部に、内側に凸であり且つ前記溝部に前記軸方向に移動自在に挿入される凸部を設け、前記凸部及び溝部により操作部材の周方向への回転を防止するように設計変更することが可能である。また、操作部材の周方向への回転が他の機構により防止又は前記回転を許容し得る場合には、凸脈140、凹部621b、溝部及び凹部を省略することが可能である。
上記実施例1及び2では、導電金属板200は、操作部材に直接固定されているとしたが、他の部材を介して操作部材に間接的に固着されるように設計変更することが可能である。また、導電金属板200を操作部材に対して直接的又は間接的に固着させず、揺動部材900の如く、操作部材の傾倒により当該操作部材に押下され、導電金属板200が揺動するように設計変更することも可能である。また、上記実施例1及び2では、導電金属板200の押下部230は、突起であるとしたが、これに限定されるものではない。例えば、導電金属板200の外周縁部のフラットな複数の領域を押下部として用いることも可能である。すなわち、前記フラットな領域が第1スイッチ手段300aのスナッププレート320aに接触・押圧するように設計変更することが可能である。また、上記実施例2では当接部615’は、突起であるとしたが、押下部同様に底板部611’のフラットな領域とすることが可能である。また、当接部は底板部と別体とすることも可能である。上述した導電部材として導電金属板200を用いるとしたが、導電性を有しており且つ当該導電部材の押下部が第1スイッチ手段の第1導電プレートに接触及び押圧したときに弾性変形しない程度の硬度を有している限り任意に設計変更することが可能である。例えば、前記導電部材は、樹脂部材等の剛体の外面に導電金属を蒸着したものや、操作部材の下面に蒸着された導電性金属膜に設計変更することが可能である。これらの場合も、剛体である樹脂部材や操作部材に蒸着された導電性金属がスナッププレート320aに接触及び押圧することにより、上記実施例と同様の効果を得ることが可能である。
上記実施例1及び2では、接続用スプリング500が導電金属板200と基板400のコモン電極412又は揺動部材900の上側基板本体921のコモン電極921bとの間を接続するとしたが、導電部材とコモン電極との間を電気的に接続し得るものである限りどのような接続手段を用いても良い。例えば、前記接続手段として導電性を有するゴム等を用いることができる。また、コモン電極が、多方向入力装置外(例えば、電子機器の基板等)に設けられている場合には、導電部材を、多方向入力装置の導電性を有するケース等に電気的に接続し、当該ケース等を介して導電部材とコモン電極とを接続するように設計変更することも可能である。
上記実施例1及び2では、復帰機構800は、可動リング810と、復帰用スプリング820と、4つの支持部830と、当て止め部840とを有するとしたが、これに限定されるものではない。上記実施例1及び2では可動リング810及び当て止め部840は、環状であるとしたが、複数の部材に分割することが可能である。支持部830は、上ケース620の天板部621の開口621aの奥側領域831と円柱832とを有するとしたが、これに限定されるものではない。例えば、支持部830を奥側領域831のみとし、当該奥側領域831に復帰用スプリング820を当接させるだけの構成とすることが可能であるし、奥側領域を一つのリング状の領域とし、一つの復帰用スプリングを前記奥側領域と一又は複数の可動部材との間に介在させる構成とすることも可能である。また、支持部830及び当て止め部840は、ケース600の一部であるとしたが、別体とすることも当然可能である。可動リング810は、外側端部811と内側端部812との高さ位置が相違しているとしたが、同じとすることができるし、外側端部811の高さ位置が内側端部812の高さ位置よりも高くすることも可能である。なお、本多方向入力装置が小さい等の理由により復帰機構800を必要としない合には、復帰機構800は省略することが可能である。
上記実施例1及び2では、本多方向入力装置は、操作部材100の操作感をソフトにするために弾性部材700を備えているとしたが、弾性部材700は省略することが可能である。また、弾性部材700は、台座部710と突起720とを有するとしたが、基板と操作部材又は導電部材との間、或いは揺動部材と操作部材又は導電部材との間に介在し、操作部材の操作感を変えることができるものである限りどのような弾性部材を用いても構わない。
上記実施例1では、フレキシブルプリント基板400に第1スイッチ手段300aが設けられているとしたが、これに限定されるものではない。例えば、フレキシブルプリント基板400をリジットな基板に置換することが可能である。また、ケースの底板部の面(天板部対向面(第1板部対向面))を絶縁処理し、当該底板部の面上に第1スイッチ手段及びコモン電極を設けることが可能である。この場合、前記底板部の面がフレキシブルプリント基板400の代わりをなし、基板として機能する。また、ケースの底板部を絶縁樹脂等の絶縁性を有する材料で構成し、当該底板部上に第1スイッチ手段及びコモン電極を設けたり、当該底板部内に第1スイッチ手段の第1、第2電極及びコモン電極をインサート成型し、第1導電プレートを第1電極上に配置したりすることも可能である。この場合、前記底板部がフレキシブルプリント基板400の代わりをなし、基板として機能する。また、スナッププレート320a、320bは、上記実施例1及び2では、ドーム状であるとしたが、一方の電極に接触し且つ一部が他方の電極に対向しており、弾性変形により前記一部が他方の電極に接触する導電プレートである限りその形状を任意に設計変更することが可能である。よって、導電プレートの形状を変えることにより、クリック感なしで第2、第3傾倒角の傾倒操作を行えるようにすることが可能である。
上記実施例2では、揺動部材900は、揺動部材本体910の上面911aに上側基板本体921が、下面911bに下側基板本体922が貼付されているとしたが、これに限定されるものではない。例えば、揺動部材本体910の上面911a及び下面911bを絶縁処理し、上面911a上に第1スイッチ手段を、下面911b上に第2スイッチ手段を設けるように設計変更することが可能である。また、揺動部材本体910を絶縁樹脂で構成し、該揺動部材本体910に第1スイッチ手段の第1、第2電極及び第2スイッチ手段の第3、第4の電極をインサート成型し、第1、第2電極を上面911aから露出させ、第3、第4の電極を下面911bから露出させるように設計変更することも可能である。上述した揺動部材本体910は、樹脂製であるとしたが、リジットなプリント基板や金属板等の剛体等を用いることが可能である。
上述の説明では、第1板部がケースの天板部、第2板部がケースの底板部であるとしたが、これに限定されるものではない。例えば、第1、第2板部として電気機器の外部筐体や内部フレーム等を援用することも可能である。
上記実施例1及び2では、付勢手段である全復帰用スプリング820の合力が接続手段である接続用スプリング500の弾性力よりも強いとしたが、これに限定されるものではない。操作部材100の上方への抜け止めがなされている場合には、接続手段の弾性力が一又は複数の付勢手段の弾性力と略同じ又は強くても構わない。
なお、上記実施の形態では、多方向入力装置の各部を構成する素材、形状、寸法及び配置等はその一例を説明したものであって、同様の機能を実現し得る限り任意に設計変更することが可能である。