以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施の形態では、建物に設けられた空調設備に具体化されている。
最初に、その建物の構成を図1及び図2に基づいて説明する。図1は建物の間取りを示す平面外略図、図2は建物の構成を概略的に示す縦断面図(図1のA−A線部分断面図)である。
図1に示すように、建物10は、居室空間が設けられた建物本体20を備えている。建物本体20は外壁部21〜23等を有してなり、それら外壁部21〜23等によって建物10の屋内外が区画されている。外壁部21〜23には断熱材が内蔵され、建物本体20の断熱機能の向上が図られている。
建物本体20の内部空間(屋内空間IS)には、複数の居室31,32と、それら居室31,32の間に位置する連絡通路としての廊下33とが設けられている。より詳しくは、相対向する外壁部21,22を繋ぐようにして一対の仕切壁部24が設けられており、これら仕切壁部24によって屋内空間ISに居室空間31a,32a及び廊下空間33aが区画されている。
各仕切壁部24にはドア26が設けられており、これらドア26を開放することで廊下33を通じて居室31,32間の移動が可能となる。図2に示すように、ドア26の下部にはアンダーカット27が設けられている。このようにアンダーカット27を設けることで、ドア26の下端部と建物本体20の床面25との間に通気口28が形成されている。これら通気口28によって、廊下33と居室31,32との間での通気性が担保されている。
なお、居室31,32と廊下33との間での通気が担保されるのであれば、その具体的構成は任意であり、例えばドア26にガラリ等の通気手段を設けることも可能である。また、ドア26ではなく仕切壁部24に通気口28に相当する構成を配することも可能である。
建物10は建物本体20(詳しくは外壁部21)に対して隣接して設けられたサンルーム60を備えている。サンルーム60は、コンクリート等によって形成された土間61を有している。土間61は建物本体20の床面25よりも低位に位置しており、サンルーム60内に水等が撒かれた場合に、当該水が土間61を伝って建物本体20の居室31,32等へ流入することを回避している。
サンルーム60は土間61から起立する周壁部62と屋根部63とを有してなり、それら周壁部62、屋根部63、土間61及び建物本体20の外壁部21によって囲まれた空間がサンルーム内空間(半屋内空間又は半屋外空間)60aとなっている。サンルーム内空間60aは閉空間となるように構成されており、周壁部62及び屋根部63をガラス等の透明材料によって形成することで、太陽光がサンルーム内空間60aへ照射される構成となっている。サンルーム内空間60a内の空気等が太陽光によって暖められることで、サンルーム内空間60aと建物本体20の屋内空間IS及び屋外空間OSとの間に温度差が生じることとなる。言い換えれば、サンルーム内空間60aは、屋内空間IS及び屋外空間OSに対して環境が異なるように構成された空間となるように構成されている。なお、本実施の形態に示す屋外空間OSは、建物10によって区画されていない空間、すなわち屋内空間IS及びサンルーム内空間60aを除いた空間を示している。
図2に示すように、屋根部63には、屋外空間OSとサンルーム内空間60aとを連通させる連通部としての屋根開口65と、この屋根開口65を塞ぐ閉状態及び開放する開状態に切替可能な蓋体66とが設けられている。屋根開口65を開放することで、サンルーム内空間60aにて暖められた空気を屋外空間OSへ排出することができる。かかる排出機能に着目すれば、屋根開口65を「排出口」又は「換気口」と称することも可能である。
また、屋根部63には、蓋体66を閉状態及び開状態に切り替えるための駆動部(図示略)が設けられている。駆動部は、後述する空調制御装置に対して電気的に接続されており、当該空調制御装置から出力される駆動信号に基づいて蓋体66を閉状態又は開状態に切り替える。因みに、本実施の形態においては、屋根部63に開口65及び蓋体66を配設したが、これに限定されるものではなく、周壁部62の上部に開口及び蓋体に相当する構成を配設することも可能である。
再び図1を参照して、サンルーム60と建物本体20との関係について補足説明する。
サンルーム60は、その高さが建物本体20の天井部とほぼ同じ高さとなるように構成されている。このようにある程度の高さを確保することにより、サンルーム60の上部に存在する空気と下部に存在する空気に温度差を生じさせることが可能となっている。具体的には、サンルーム60内に存在する空気のうち相対的に暖かいものは屋根部63側に滞留し、相対的に冷たいものは土間61側に滞留する。
また、サンルーム60は、建物本体20において居室31,32が並設されている方向と同じ方向に延びており、サンルーム内空間60aが建物本体20の外壁部21を隔てて居室空間31a,32a及び廊下空間33aと対峙している。
外壁部21において居室空間31a,32aを区画している部分、詳しくは床面25寄りとなる部分には、開状態と閉状態とに切替可能な可動式の居室用通気ガラリ35が設けられている。より詳しくは、外壁部21には居室空間31a,32aとサンルーム内空間60aとを連通する開口部が形成されており、これら開口部を覆うようにして居室用通気ガラリ35が配設されている。これら居室用通気ガラリ35が開状態となることで、居室用通気ガラリ35の開放部分と通じてサンルーム内空間60a及び居室空間31a,32aの間での通気が許容され、閉状態となっている場合には当該通気が遮断されることとなる。
サンルーム60とは反対側に位置する外壁部22において居室空間31a,32aを区画している部分にも居室用通気ガラリ36が配設されており、これら居室用通気ガラリ36を開状態とすることで居室用通気ガラリ36の開放部分を通じて居室空間31a,32aと屋外空間OSとの間での通気が許容されることとなる。
また、外壁部21において廊下33を構成している部分には、開状態と閉状態とに切替可能な廊下用通気ガラリ37,38が設けられている。より詳しくは、外壁部21には廊下空間33aとサンルーム内空間60aとを連通する開口部が形成されており、これら開口部を覆うようにして廊下用通気ガラリ37,38が配設されている。廊下用通気ガラリが開状態となることで、当該廊下用通気ガラリの開放部分を通じてサンルーム内空間60aと廊下空間33aとの間での通気が許容されることとなる。
廊下用通気ガラリ37,38は上下に離して配設されている。詳しくは、廊下用通気ガラリ37,38のうち一方はサンルーム60の屋根部63寄りとなる位置に配されており、他方はサンルーム60の土間61寄りとなる位置に配されている。これは、サンルーム60内の空気のうち相対的に温度が高いもの又は相対的に温度が低いものを狙って廊下空間33a側へ取り込み可能とするための工夫である。
外壁部21,22には、各通気ガラリ35〜38を開状態及び閉状態に切り替えるための駆動部(図示略)が設けられている。この駆動部は、上述した空調制御装置に対して電気的に接続されており、当該空調制御装置から出力される駆動信号に基づいて開状態及び閉状態への切り替えを行う。
ここで、サンルーム60については、ユーザ等が自由に出入できるようにその出入口には施錠装置等の防犯手段が設けられておらず、サンルーム60に配設された蓋体66についても同様に開状態への切り替えを規制する施錠機構等の規制手段が設けられていない。一方、外壁部21,22には、通気ガラリ35〜38の開状態への切り替えを規制する規制手段(詳しくは施錠機構)が設けられている。これにより、サンルーム60を通じた屋内への侵入は外壁部21等によって規制され、建物10全体での防犯機能は担保されている。
図2に示すように、サンルーム内空間60aには、サンルーム内空間60aに水を霧状にしたミストを噴射する散水装置68が設けられている。散水装置68は、空調制御装置に対して電気的に接続されており、この空調制御装置からの駆動信号に基づいて散水を行う構成となっている。散水装置68は、土間61に沿うようにして配置されており、上方に撒かれた水が自重によって土間61に落下することで、土間61が湿ることとなる。なお、散水装置68から噴射される水を土間61に向けて噴射する構成とすることも可能である。
サンルーム60においては、屋外空間OSと比べて暖かくなりやすいため、土間61の蒸発が促進される。そして、水が蒸発する際に土間61から熱を奪うことにより、土間61が冷却されることとなる。そして、上述した屋根開口65を開放して、暖かく湿った空気を屋外空間OSへ排出することで、サンルーム60が冷却されることとなる。つまり、サンルーム60においては、散水装置68を採用することで、空気を冷やす機能が付与されている。つまり、太陽光等の自然エネルギを利用して、サンルーム内空間60aに存在する空気の温度と屋外空間OSに存在する空気の温度(以下、単に外気温と称する)との間に高低差を生じさせることが可能となっている。
次に、建物本体20にて空調を行うための構成を、図1及び図2に基づいて説明する。なお、本実施の形態における空調とは、冷暖/暖房/換気手段による室温調節や加湿/除湿手段による湿度調節を意味する。
図1に示すように、建物10に設けられた空調設備は、エアコン等の空調装置40、建物10の屋外に配置された室外機41、空調装置40及び室外機41を繋ぐ配管42、空調装置40に空調用の空気を取り込む取込ダクト43〜47、空調空気を居室31,32等へ供給する供給ダクト48,49、屋外へ空気を排出する排気ダクト(図示略)、更にはそれら空調装置40等を制御する空調制御装置を備えている。
空調装置40は、少なくとも冷房や暖房等の各機能を有する室内機であり、廊下33(詳しくは廊下33の一部を区画した機械室34)に配設されている。建物10は高気密・高断熱住宅となるように構成されており空調負担が比較的小さくなっていることから、本実施の形態では廊下33に設けられた1の空調装置40によって建物10における全館の空調を賄うことが可能となっている。
なお、廊下33に設けられた機械室34を仕切る壁部には、廊下空間33aと機械室34とに連通する連通口が形成されている。空調装置40においてその連通口を向いている部分には吸込口40aが設けられており、廊下空間33aに存在する空気を連通口→吸込口40aを通じて空調用の空気(加熱/冷却対象の空気)として取り込むことが可能となっている。
居室31には取込ダクト43に設けられた吸込口43aと供給ダクト48に設けられた供給口48aが配されており、居室32についても取込ダクト44に設けられた吸込口44aと供給ダクト49に設けられた供給口49aが配されている。これにより、本実施の形態における空調装置40については、全館空調のみならず、各居室31,32を個別に空調対象とすることが可能となっている。
取込ダクト45,46は、居室31,32ではなくサンルーム60に延びており、それら取込ダクト45,46の吸込口445a,46aはサンルーム60内に配設されている。これにより、空調装置40は、サンルーム60内の空気を空調空気として取り込むことが可能となっている。
より具体的には、図2に示すように、一方の吸込口45aがサンルーム60の屋根部63寄りに配置され、他方の吸込口46aがサンルーム60の土間61寄りに配置されている。既に説明したように、サンルーム60内で暖められた空気は屋根部63側へ上昇することで、相対的に暖かい空気が屋根部63寄りに滞留しやすい。つまり、上側の吸込口45aを通じてこの暖かい空気を取り込むことができる。一方、相対的に冷たい空気は土間61寄りに滞留しやすいため、下側の吸込口46aを通じてこの冷たい空気を取り込むことができる。
また、取込ダクト47は屋外へと延びており、取込ダクト47の吸込口47aは屋外空間OSに配設されている。これにより、空調装置40は、屋外の空気を空調空気として取り込むことが可能となっている。
ここで、図3及び図4を参照して、建物10における空調の様子について説明する。本実施の形態における空調設備においては、特定の居室空間を対象とする個別空調と、屋内空間全体を対象とする全館空調とが可能となっている。これら2つの空調態様のうち個別空調に関しては、居室31を対象とした場合について例示する。図3(a)はサンルーム60を利用した換気の様子を示す概略図、図3(b)はサンルーム60を利用した居室31の冷房の様子を示す概略図、図4(c)はサンルーム60を利用した居室31の暖房の様子を示す概略図、図4(d)はサンルーム60を利用した全館空調の様子を示す概略図である。なお、これら各図においては、空気の流れを矢印によって表示しており、特にサンルーム60から建物本体20側へ取り込まれる空気については「OA」を用いて区別している。
本実施の形態における空調装置においては、冷房を行う場合又はユーザによって自動換気の指示があった場合に、屋内空間IS(詳しくは居室空間31a,32a)の自動換気を行うことを特徴の1つとしている。そこで先ず、図3(a)を参照して、自動換気の様子について説明する。
建物10において自動換気を行う場合には、図3(a1)に示すようにサンルーム60の散水装置68が動作して予め設定された量の水がミスト状となるようにしてサンルーム60内にて散布される。散布された水は自重で落下して土間61等に付着する。サンルーム60においては、屋根開口65を閉じてサンルーム内空間60aを閉状態としておくことで屋外空間OSよりも高温となっており、更には太陽光によって土間61が暖められているため、散布された水の蒸発が促進される。
土間61に付着した水が蒸発する際に土間61の熱が奪われることとなり、土間61の熱を奪うことで高温多湿となった空気はサンルーム60内を上昇する。これにより、サンルーム60上部と下部とでの温度差が大きくなる。更には、サンルーム内空間60a内にて暖められた空気が膨張することでサンルーム60内の気圧が高くなる。
その後、図3(a2)に示すようにサンルーム60の屋根開口65を開放することで、サンルーム60内の空気が屋根開口65を通じて屋外に排出される。これに乗じて居室用通気ガラリ35,36を開放することで、屋外空間OS→居室用通気ガラリ36の開放部分→居室31,32→居室用通気ガラリ35の開放部分→サンルーム60→屋根開口65→屋外空間OSという風の流れが発生し、居室空間31a,32aの換気が促されることとなる。
特に、屋外を流れる風が弱い場合には、建物の窓等を開放しただけでは効率よく換気を行うことが難しいと想定されるが、上述したように、強制的な空気の流れを発生させることで、屋外を流れる風に依存することなく、換気効率を向上することができる。
また、空調装置40を用いて冷房を行う場合には、上記換気によって居室空間31aに溜った暖かい空気を排出して、屋外空間OSの空気を取り込むことで(換気を行うことで)高くなっている室内温度を下げることにより、空調装置40にかかる初期負荷を抑えるとともに空調効率の向上に貢献することができる。
次に、図3(b)を参照して、空調装置40による特定居室の冷房の様子を説明する。なお、本説明では、空調の対象(特定居室)が居室31の場合について例示するが、居室32が空調の対象となっている場合であっても空調態様は同様である。
居室31の冷房を行う場合には、居室31の空気を取込ダクト43の吸込口43aを通じて取り込むとともに、当該取り込んだ空気を冷却して空調空気を生成した後、供給ダクト48の供給口48aを通じて同空調空気を居室31へ供給する。これにより、居室31の温度を下げることができる。
既に説明したように本実施の形態に示す建物10(詳しくは建物本体20)としては高気密・高断熱住宅が採用されており、空調効率の向上が図られている。このようなタイプの住宅においては特に、内気循環による運転を続けていると、例えば居室31の酸素濃度が低下するといった不都合が生じ得る。そこで、本実施の形態における空調装置40では適宜屋内空間IS外から空調用の空気を取り入れることで(換気を行うことで)上記不都合の発生を抑えている。
しかしながら、単に屋外から空調用の空気を取り込んだ場合、当該空気の温度が高くなることで空調に生じる負荷が大きくなったり空調効率が低下したりし得る。そこで、本実施の形態においては、そのような不都合の発生を抑える工夫がなされている。具体的には、冷房運転が開始された場合には、図3(b1)に示すように、サンルーム60の冷却が実行される。具体的には、上記自動換気を実行する場合と同様に、サンルーム60にミスト状の水が散布され、当該散布された水の気化を利用して土間61等を冷却する。これにより、サンルーム60下部に存在する空気(土間61付近に滞留している空気)は、屋外空間OSよりも低温となるように冷却される。
空調装置40にて外気を導入して空調空気を生成する場合には、図3(b2)に示すように、サンルーム60と空調装置40とを繋ぐ取込ダクト46の吸込口46a、詳しくは土間61に隣接する位置に配された吸込口46aから冷却された空気が取り込まれる。これにより、空調空気の設定温度と取り込んだ空気の温度との差を小さくすることができ、空調装置40にかかる負担の低減と空調効率の向上とに貢献することができる。
次に、図4(c)を参照して、空調装置40による特定居室の暖房の様子を説明する。なお、本説明では、空調の対象(特定居室)が居室31の場合について例示するが、居室32が空調の対象となっている場合であっても空調態様は同様である。
居室31の暖房を行う場合には、居室31の空気を取込ダクト43の吸込口43aを通じて取り込むとともに、当該取り込んだ空気を加熱して空調空気を生成した後、供給ダクト48の供給口48aを通じて同空調空気を居室31へ供給する。これにより、居室31の温度を上げることができる。
暖房運転が開始された場合には、図4(c1)に示すように、サンルーム内空間60aが閉状態で維持される。これにより、サンルーム60内の空気が暖められることとなる。
空調装置40にて屋内空間IS外の空気を導入して空調空気を生成する場合には、図4(c2)に示すように、サンルーム60と空調装置40とを繋ぐ取込ダクト45の吸込口45a、詳しくは屋根部63に隣接する位置に配された吸込口45aから暖められた空気が取り込まれる。これにより、空調空気の設定温度と取り込んだ空気の温度との差を小さくすることができ、空調装置40にかかる負担の低減と、空調効率の向上とに貢献することができる。なお、居室31における酸素濃度の担保についても、上記冷房時と同様の効果が期待できる。
本実施の形態の空調装置40においては、屋内空間IS全体を対象とする全館空調を実行可能となっている。以下、図4(d)を参照して全館空調の様子について説明する。
なお、本実施の形態における空調システムにおいては、上記特定居室用の空調機能と、全館空調機能とが付与されているが、同空調システムがこれら両機能を有する必要は必ずしもなく、両空調機能のうち一方のみを有する構成とすることも可能である。例えば、全館空調機能のみを有する構成とした場合には、上記特定居室用の空調機能専用となる構成(例えば取込ダクト43〜46等)を省略して空調システムにかかる構成の簡略化を図るとよい。
図4(d1)に示すように、空調装置40は、吸込口40aから廊下33の空気を還気RAとして取り込んで温度調整を行うことにより空調空気を生成する。空調装置40にて生成された空調空気は、供給ダクト48,49を通じて各居室31,32に供給され、供給口48a,49aを通じてそれら居室31,32に給気SAとして吹き出される。これにより、空調装置40の暖房運転時には居室31,32に空調空気として暖気が供給され、その暖気によって居室31,32が暖められる。一方、空調装置40の冷房運転時には、居室31,32に冷気が供給され、その冷気によって居室31,32が冷やされる。
各居室31,32へ供給された空調空気(給気SA)は通気口28を通じて廊下空間33aへ流入する。これにより、廊下33の温度調整がなされる。そして、廊下33に流入した空調空気は還気RAとして、空調装置40により取り込まれることとなる。言い換えれば、廊下33側を負圧、居室31,32側を正圧とすることで、居室31,32→廊下33への空気の流れを作り出し、廊下33の空調を実現している。
以上詳述した全館空調においても、屋外空間OSの空気を適宜取り込む工夫がなされている。具体的には、全館空調により冷房を行っている場合には、サンルーム60にて図3(b1)を用いて説明したのと同様の冷却処理を実行する。これにより、サンルーム60の下部に存在する空気の温度を下げることができる。そして、このように冷却した空気を、下側の廊下用通気ガラリ38を開放することで廊下33側へ流入させる。これにより、廊下33の温度を下げたり、廊下33の温度上昇を抑えつつ換気を行うことができたりする。
一方、全館空調により暖房を行っている場合には、サンルーム内空間60aを閉状態に維持することで、サンルーム60の上部に暖かい空気が溜ることとなる。そして、このようにして暖められた空気を、上側の廊下用通気ガラリ37を開放することで廊下33側へ流入させる。これにより、廊下33の温度を上げたり、廊下33の温度低下を抑えつつ換気を行うことができたりする。
なお、サンルーム60内の空気を廊下33(屋内)側へ流入させる場合には、空調装置40にて生成された空調空気の一部や空調装置40に取り込んだ空気の一部を排気ダクト(図示略)を通じて屋外へ排出するとよい。これにより屋内の気圧を下げて、廊下用通気ガラリ37,38を通じたサンルーム60内の空気の引き込むことができる。
次に、図5のブロック図を参照して本実施の形態の空調設備における電気的構成について説明する。
空調設備は、空調等に関する各種制御を実行する空調制御装置70を有している。空調制御装置70には、各種演算を行うMPUや入出力ポートが設けられている。
空調制御装置70の入力側には、外気温を検出する屋外用温度センサ81と、建物10周辺を流れる屋外風の風速を検出する風速センサ82と、サンルーム60の温度を検出するサンルーム用温度センサ83と、サンルーム60の湿度を検出するサンルーム用湿度センサ84と、屋内(詳しくは空調対象となる各居室等)の温度を検出する屋内用温度センサ85と、屋内(詳しくは空調対象となる各居室)の湿度を検出する屋内用湿度センサ86と、ユーザによって空調にかかる操作が行われる空調操作部87とが接続されている。空調制御装置70においては、これら各種構成81〜87から入力された情報に基づいて空調等に関する各種制御を実行する。
屋外用温度センサ81については外壁部22において取込ダクト47の吸込口47aに隣接する位置に配設されているが、屋外用温度センサ81の詳細な配置については任意である。サンルーム用温度センサ83及びサンルーム用湿度センサ84については、サンルーム60の高さ方向における中間部分(詳しくは散水装置68からの水が直接かからない位置)に配置しているが、それら各センサ83,84の詳細な配置についても任意である。また、屋内用温度センサ85は各居室31,32及び廊下33にそれぞれ配設され、屋内用湿度センサ86は各居室31,32にそれぞれ配設されている。
空調制御装置70の出力側には、サンルーム60の蓋体66を駆動させる蓋体用駆動部91と、散水装置68を駆動させる散水装置用駆動部92と、建物本体20の居室用通気ガラリ35,36を駆動させる居室用通気ガラリ駆動部93,94と、廊下用通気ガラリ37,38を駆動させる廊下用通気ガラリ駆動部95,96とが接続されており、空調制御装置70からそれら各種構成91〜96に対して駆動信号が出力されることで、蓋体66、各通気ガラリ35〜38が動作することとなる。
また、空調制御装置70の出力側には、空調装置40が接続されている。空調装置40については特に、空調を行う際に使用するダクト等を切り替える切替手段を有しており、この切替手段は空調制御装置70からの信号に基づいて動作する構成となっている。
(換気制御処理)
次に、図6のフローチャートを参照して、空調制御装置70にて定期的(例えば1sec毎)に実行される換気制御処理について説明する。
換気制御処理においては先ず、ステップS101にて空調操作部87の自動換気スイッチがオンになっているか否かを判定する。ステップS101にて否定判定をした場合には、そのまま換気制御処理を終了する。
一方、ステップS101にて肯定判定をした場合には、ステップS102に進み、自動換気を実行している最中であるか否かを判定する。ステップS102にて否定判定をした場合には、ステップS103に進む。
ステップS103では、建物10周辺を流れている風の速度が予め設定された値(規定値)以上であるか否かを判定する。具体的には、風速センサ82からの検出情報に基づいて判定を行う。ステップS103にて否定判定をした場合、すなわち上記居室用通気ガラリ35,36等を利用した自然換気を行うのに十分な風速が確保されていないと判定した場合には、ステップS104に進む。
ステップS104では散水用の設定処理を行う。具体的には、サンルーム用温度センサ83からの検出情報と、サンルーム用湿度センサ84からの検出情報とに基づいて、散水量を決定する。具体的には、温度が高く且つ湿度が低い場合には、温度が低く且つ湿度が高い場合と比較して散水量が多く且つ散水期間が長くなるように設定する。なお、本実施の形態における散水装置68においては、1secあたりの散水量が一定となるように設定されており、散水量は散水期間とインターバル期間とによって定まる構成となっている。
ステップS104の処理を実行した後、又はステップS103にて肯定判定をした場合(すなわち居室用通気ガラリ35,36等を利用した換気を行うのに十分な風速が担保されていると判定した場合)には、ステップS105に進む。ステップS105では、屋根開口開放用の設定処理を行う。具体的には、サンルーム用温度センサ83からの検出情報と、サンルーム用湿度センサ84からの検出情報とに基づいて、屋根開口65の開放タイミング及び開放期間を設定する。
ステップS105の処理を実行した後は、ステップS106にて居室ガラリ開放用の設定処理を実行して本換気制御処理を終了する。ステップS106の処理では、サンルーム用温度センサ83からの検出情報と、サンルーム用湿度センサ84からの検出情報とに基づいて、居室用通気ガラリ35,36の開放タイミング及び開放期間を設定する。
散水を行った場合には、温度及び湿度条件によって気化に要する期間が異なる。そこで、予め実験等で得られた効率のよく気化を促すことができる散水量(散水期間及びインターバル期間)、蓋体の開放タイミング及び開放期間、居室用通気ガラリ35,36の開放タイミング及び開放期間を情報群として空調制御装置70のROM等に記憶しておき、これら情報群を参照することで、ステップS104〜S106の各処理を行う。
再びステップS102の説明に戻り、ステップS102にて肯定判定をした場合、すなわち自動換気を実行している最中であると判定した場合には、ステップS107に進む。なお、ステップS106の処理を完了することで自動換気が実行中となり、以降は自動換気が終了するまでステップS102の判定処理では肯定判定を繰り返すこととなる。
ステップS107では、自動換気の終了タイミングであるか否かを判定する。具体的には、自動換気を開始してから予め設定された換気期間が経過したか否かに基づいて本判定を行う。ステップS107にて否定判定をした場合、すなわち自動換気の終了タイミングでないと判定した場合には、ステップS108に進む。
ステップS108では、散水装置68による散水を開始するタイミングであるか否かを判定する。ステップS108にて肯定判定をした場合には、ステップS109に進み散水実行処理を行う。散水実行処理では、散水装置用駆動部92に対して駆動信号の出力を開始する。これにより、ステップS104の処理にて設定された期間に亘って散水が継続されることとなる。
ステップS109の処理を実行した後、又はステップS108にて否定判定をした場合には、ステップS110に進む。ステップS110では、サンルーム60の屋根開口65を開放するタイミングであるか否かを判定する。具体的には、ステップS105の処理にて設定された開放タイミングとなったか否かを判定する。なお、ステップS110にて肯定判定をするタイミングは、サンルーム60の土間61に付着した水が気化することで高温多湿となった空気が屋根部63沿いに溜った後のタイミングとなるように設定されている。
ステップS110にて肯定判定をした場合にはステップS111に進み、屋根開口65の開放処理を実行する。具体的には、蓋体用駆動部91に対して駆動信号の出力を開始し、予め設定された期間に亘って駆動信号の出力を継続することで、屋根開口65を開放状態で維持する。これにより、上述の如く屋根部63によって上昇が抑えられていた高温多湿の空気が屋外へと排出され、サンルーム60内に上方に向う空気の流れが発生することとなる。
ステップS111の処理を実行した後、又はステップS110にて否定判定をした場合には、ステップS112に進む。ステップS112では、居室用通気ガラリ35,36を開放するタイミングであるか否かを判定する。具体的には、ステップS106にて設定された開放タイミングに基づいて、当該判定を行う。
ステップS112にて否定判定をした場合には、そのまま本換気制御処理を終了する。一方、ステップS112にて肯定判定をした場合には、ステップS113に進み、居室用通気ガラリ35,36の開放処理を実行したのち、本換気制御処理を終了する。
ステップS113の処理においては、通気ガラリ駆動部93,94に対して駆動信号の出力を開始し、当該駆動信号の出力を予め設定された期間に亘って継続する。これにより、居室用通気ガラリ35,36が開放状態に維持され、居室空間31a,32aとサンルーム内空間60a及び屋外空間OSとが連通し、サンルーム60内の空気の屋根開口65を通じた排出に乗じて、居室空間31a,32a内の空気がサンルーム60側へ吸い出されることとなる。この結果、居室31,32内に、外気が導入され、居室空間31a,32aの換気が実現される(図3(a2)に示した空気の流れを参照)。
ステップS107の説明に戻り、ステップS107にて肯定判定をした場合、すなわち自動換気の終了タイミングであると判定した場合には、ステップS114に進み、自動換気終了処理を実行した後、本換気制御処理を終了する。ステップS114の処理では、換気開始前の状態への復帰を行う。具体的には、散水装置68を非稼動状態とするとともに、居室用通気ガラリ35,36や蓋体66を閉状態とする。
なお、以上詳述した換気制御処理においては、自動換気スイッチがONとなっていることを条件としてステップS101〜S114の各処理が実行される構成とした。ここで、自動換気スイッチについては、必ずしもユーザによって手動で切り替えられるだけでなく、ユーザの操作によって冷房運転を開始する際に屋内の温度が規定温度を超えている場合にも自動的にONに切り替わる。すなわち、冷房運転を実行する前の事前準備として換気制御処理が実行される場合がある。
本実施の形態における空調設備においては、上記換気制御の他に特定の居室に限って空調を行う特定居室用空調制御と、建物本体20全体について空調を行う全館空調制御とが設定されており、これら各空調制御処理についても、空調制御装置70にて定期的(例えば1sec毎)に実行されている。以下、先ず特定居室用空調制御処理について説明し、その後、全館空調制御処理について説明する。
(特定居室用空調制御処理)
図7のフローチャートに示すように、特定居室用空調制御処理においては、先ずステップS201にて空調操作部87の特定居室用空調スイッチがONになっているか否かを判定する。特定居室用空調スイッチについては、例えば居室31に対応するものと居室32に対応するものとが存在しているが、これらスイッチがONになっていない場合には、そのまま本特定居室用空調制御処理を終了する。
一方、何れかの特定居室用空調スイッチがONになっている場合には、ステップS201にて肯定判定をし、対象となっている居室に関して以下の空調制御処理を実行する。
具体的には、先ずステップS202にて特定居室にかかる空調を実行中であるか否かを判定する。ステップS202にて否定判定をした場合には、ステップS203にて空調開始処理を実行した後、本特定居室用空調制御処理を終了する。ステップS203の処理においては、空調装置40に対して駆動信号を出力し、空調装置40の運転を開始する(詳しくは暖房又は冷房を開始する)。また、空調開始時には空調装置40に設けられたダクト等の切替手段に対して駆動信号を出力し、使用する取込ダクト及び供給ダクトの切り替えを行う。これら各ダクトについては、特定居室(空調対象)として選択された居室に付随するものが選択される。例えば、居室31が特定居室として選択されている場合には、居室31に設けられた取込ダクト43及び供給ダクト48が選択される。
ステップS203の処理を実行することで、以降は当該特定居室用空調制御処理が終了するまでステップS202にて肯定判定を繰り返すこととなる。
ステップS202の説明に戻り、ステップS202にて肯定判定をした場合には、ステップS204に進む。ステップS204では、屋外の空気及びサンルーム60内の空気の何れかを給気として空調が実行されている又は当該空調の準備中であるか否かを判定する。ステップS204にて肯定判定をした場合には、そのまま本特定居室用空調制御処理を終了する。一方、ステップS204にて否定判定をした場合には、ステップS205に進む。
本実施の形態における空調設備においては、温度設定に加えて湿度設定が可能となっており、ステップS205では特定居室の湿度が設定範囲よりも低くなっているか否かを判定する。具体的には、屋内用湿度センサ86からの検出情報のうち、特定居室に対応するものが上記設定範囲内となっているか否かを判定する。
ステップS205にて肯定判定をした場合にはステップS206に進み、サンルーム内空間60aの空気の加湿処理を実行する。具体的には、散水装置68を駆動してサンルーム60にミストを散布する。これにより、サンルーム60内の湿度を強制的に引き上げる。
その後、ステップS207にて取込対象の切り替え処理を実行した後、本特定居室用空調制御処理を終了する。ステップS207の処理では、使用している取込ダクトを室内に繋がっているものからサンルーム60に繋がっているもの(上側の取込ダクト45又は下側の取込ダクト46)に切り替える処理を実行する。かかる処理を行った場合には、ミストの散布から予め設定された期間が経過した後に取込ダクトの切替を実行する。このようにしてダクトの切替処理を行った場合には、予め設定された期間に亘ってその状態が維持され、同期間の経過後に元の状態に復帰するように再度ダクトの切り替えを行う。
一方、ステップS205にて否定判定をした場合には、ステップS208に進む。なお、ステップS205にて否定判定をした場合には、特定居室の湿度が設定範囲を超えている可能性があるが、この場合には、空調装置40にて空調空気を生成する際に除湿が実行され、空調空気の湿度が上記設定範囲内となるように調整される。この除湿にかかる構成及び各種制御についての詳細な説明は省略する。
ステップS208では、内気循環による空調の連続運転時間が上限に達したか否かを判定する。つまり、取込ダクトを屋外空間OS又はサンルーム内空間60aに対応するものに切り替えることなく空調を続けた時間が上限に達したか否かを判定する。ステップS208にて否定判定をした場合には、そのまま本特定居室用空調制御処理を終了する。
一方、ステップS208にて肯定判定をした場合には、ステップS209〜S216の外気等導入用処理を実行する。具体的には、先ずステップS209にて暖房運転中であるか否かを判定する。ステップS209にて肯定判定をした場合には、ステップS210に進む。ステップS210では、サンルーム60の温度が外気温よりも高いか否かを判定する。具体的には、屋外用温度センサ81からの検出情報とサンルーム用温度センサ83からの検出情報とを比較することでステップS210の判定を行う。
サンルーム60については暖房運転を開始する際には閉状態(蓋体66を閉じた状態)となり、少なくとも当該暖房運転が終了するまで閉状態にて維持される。このため、基本的にはサンルーム60の温度が外気温を下回ることはなく、多くの場合ステップS210にて肯定判定がなされる。
ステップS210にて肯定判定をした場合にはステップS211に進み、取込対象をサンルーム60内の空気に切り替える処理を実行する。具体的には、空調装置40の上記切替手段に対して駆動信号を出力することで、使用する取込ダクトを屋内に繋がっているものからサンルーム60に繋がっているもの(上側の取込ダクト45)に切り替える。
ステップS210にて否定判定をした場合には、ステップS212に進み、取込対象を外気に切り替える処理を実行する。具体的には、空調装置40の上記切替手段に対して駆動信号を出力することで、使用する取込ダクトを屋内に繋がっているものから屋外に繋がっているもの(取込ダクト47)に切り替える。
なお、ステップS211,S212のダクトの切替処理を行った場合には、予め設定された期間に亘ってその状態が維持され、同期間の経過後に元の状態(内気循環)に復帰するように再度ダクトの切り替えを行う。
ステップS209の説明に戻り、ステップS209にて否定判定をした場合、すなわち冷房運転中であると判定した場合には、ステップS213に進む。ステップS213では、ステップS210と同様にサンルーム60の温度が外気温よりも高いか否かを判定する。具体的には、屋外用温度センサ81からの検出情報とサンルーム用温度センサ83からの検出情報とを比較することでステップS210の判定を行う。
サンルーム60については冷房運転を開始する際には、併せて上記冷却処理が実行される。このため、冷却初期を除く期間ではサンルーム60の温度が外気温よりも低く維持されやすくなっており、多くの場合ステップS210にて否定判定がなされる。
ステップS213にて肯定判定をした場合には、ステップS214に進み、取込対象を外気に切り替える処理を実行する。具体的には、空調装置40の上記切替手段に対して駆動信号を出力することで、使用する取込ダクトを屋内に繋がっているものから屋外に繋がっているもの(取込ダクト47)に切り替える。
一方、ステップS213にて否定判定をした場合にはステップS215に進み、取込対象をサンルーム60内の空気に切り替える処理を実行する。具体的には、空調装置40の上記切替手段に対して駆動信号を出力することで、使用する取込ダクトを屋内に繋がっているものからサンルーム60に繋がっているもの(下側の取込ダクト46)に切り替える。
なお、ステップS214,S215のダクトの切替処理を行った場合には、予め設定された期間に亘ってその状態が維持され、同期間の経過後に元の状態(内気循環)に復帰するように再度ダクトの切り替えを行う。
ステップS211,S212,S214,S215の各処理を行った後は、本特定居室用空調制御処理を終了する。
(全館空調制御処理)
次に、図8のフローチャートを参照して、全館空調制御処理について説明する。
全館空調制御処理においては、先ずステップS301にて空調操作部87の全館空調スイッチがONになっているか否かを判定する。当該全館空調スイッチがONになっていない場合には、そのまま本全館空調制御処理を終了する。
一方、全館空調スイッチがONになっている場合には、ステップS301にて肯定判定をし、ステップS302に進む。
ステップS302では、全館空調を実行中であるか否かを判定する。ステップS302にて否定判定をした場合には、ステップS303にて全館空調開始処理を実行した後、本全館空調制御処理を終了する。ステップS303の処理においては、空調装置40に対して駆動信号を出力し、空調装置40の運転を開始する(詳しくは暖房又は冷房を開始する)。
空調開始時には使用する取込手段(取込ダクト等)と供給ダクトとを選択する。具体的には、取込手段として空調装置40の吸込口40aを選択するとともに供給ダクト48,49を選択する。そして、空調装置40に設けられた上記切替手段に駆動信号を出力、ダクト等の切り替えを行う。これにより、図4(d1)に示した内気循環による空調が行われる。また、全館空調を行う場合には、定期的に屋外又はサンルーム60内の空気を導入して内気循環による空調から外気等の導入を伴う空調(換気を伴う空調)に切り替えられる構成となっており、この切り替えのタイミングを決定するためのタイマ設定処理を実行する。
ステップS303の処理を実行することで、以降は当該全館空調制御処理が終了するまでステップS302にて肯定判定を繰り返すこととなる。
ステップS302にて肯定判定をした場合、すなわち全館空調を実行中であると判定した場合には、ステップS304に進む。ステップS304では、定期的な外気等の導入が実行されている最中であるか否かを判定する。ステップS304にて肯定判定をした場合には、そのまま本全館空調制御処理を終了する。一方、ステップS304にて否定判定をした場合には、ステップS305に進む。
ステップS305では、内気循環による連続運転時間が上限に達しているか否かを判定する。ステップS305にて否定判定をした場合には、ステップS306に進む。ステップS306では、当該全館空調が暖房に対応するものであるか否かを判定する。ステップS306にて肯定判定をした場合にはステップS307に進み、サンルーム60の温度が廊下33の温度以上か否かを判定する。具体的には、屋内用温度センサ85(詳しくは廊下33に設けられた温度センサ)からの検出情報とサンルーム用温度センサ83からの検出情報とを比較することでステップS307の判定を行う。
ステップS307にて肯定判定をした場合には、続くステップS308にて廊下用換気口の開放処理を実行する。具体的には、廊下用上側ガラリ駆動部96に対して駆動信号を出力し、上側の廊下用通気ガラリ38を開状態に切り替える。また、これに合わせて空調装置40にて取り込んだ空気の一部を屋外に繋がる排気ダクトを介して排出する用の処理を行う。これにより、サンルーム60の上部に存在する空気(暖かい空気)が廊下用通気ガラリ38を通じて廊下33へ引き込まれることとなる。また、既に開状態となっている場合にはその状態のまま維持する。
一方、ステップS307にて否定判定をした場合にはステップS309に進み、廊下用換気口の閉鎖処理を実行する。具体的には、廊下用上側ガラリ駆動部96に対して駆動信号を出力し、上側の廊下用通気ガラリ38を閉状態に切り替える。これにより、サンルーム60の上部に存在する空気が廊下用通気ガラリ38を通じて廊下33へ引き込まれることが回避される。なお、既に閉状態となっている場合にはその状態のまま維持する。
ステップS306の説明に戻り、ステップS306にて否定判定をした場合、すなわち当該全館空調が冷房に対応するものであると判定した場合には、ステップS310に進む。ステップS310では、ステップS307と同様にサンルーム60の温度が廊下33の温度以上か否かを判定する。
ステップS310にて否定判定をした場合には、続くステップS311にて廊下用換気口の開放処理を実行する。具体的には、廊下用下側ガラリ駆動部95に対して駆動信号を出力し、下側の廊下用通気ガラリ38を開状態に切り替える。また、これに合わせて空調装置40にて取り込んだ空気の一部を屋外に繋がる排気ダクトを介して排出する用の処理を行う。これにより、サンルーム60の下部に存在する空気(冷たい空気)が廊下用通気ガラリ38を通じて廊下33へ引き込まれることとなる。なお、既に開状態となっている場合にはその状態のまま維持する。
一方、ステップS310にて否定判定をした場合にはステップS312に進み、廊下用換気口の閉鎖処理を実行する。具体的には、廊下用下側ガラリ駆動部95に対して駆動信号を出力し、下側の廊下用通気ガラリ38を閉状態に切り替える。これにより、サンルーム60の上部に存在する空気が廊下用通気ガラリ38を通じて廊下33へ引き込まれることが回避される。また、既に閉状態となっている場合にはその状態のまま維持する。
以上のステップS308,S309,S311,S312の各処理を実行した後は、本全館空調制御処理を終了する。
再びステップS305の説明に戻り、ステップS305にて肯定判定をした場合、すなわち内気循環による連続運転時間が上限に達したと判定した場合には、ステップS313に進み、サンルーム内空気の定期導入処理を実行した後、本全館空調制御処理を終了する。定期導入処理では、空調装置40の上記切替手段に対して駆動信号を出力し、廊下用通気ガラリ37,38を開状態に切り替える。詳しくは、暖房運転中は上側の廊下用通気ガラリ37を開状態とし、冷房運転中は下側の廊下用通気ガラリ38を開状態とする。さらに、空調装置40にて取り込んだ空気の一部を屋外に繋がる排気ダクトを介して排出する用の処理を行う。この状態は、所定の期間に亘って維持されることとなる。
以上、詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果を奏する。
空調設備を利用して冷房又は暖房を行う場合には、サンルーム60にて自然エネルギを利用して暖められた空気や冷やされた空気を空調用空気として利用することで、空調効率の向上や空調にかかる負荷の低減が期待できる。
具体的には、サンルーム60を閉状態としておくことで、サンルーム60の室温が外気温よりも高くなる。このようにして、事前に暖められた空気を加熱することで空調空気を生成する構成とすることにより、冷たい外気を加熱して空調空気を生成する場合よりも、空調効率の向上等が期待できる。
また、冷房を行う場合には、散水→気化によりサンルーム60の土間61の温度を下げることで、土間61付近に存在する空気の温度を、外気温よりも低くすることができる。このようにして、ある程度冷やされた空気を冷却して空調空気を生成する構成とすることにより、暖かい外気を冷却して空調空気を生成する場合よりも、空調効率向上等が期待できる。
本実施の形態に示したサンルーム60は、その外周部分が光透過性を有する透明材料によって形成されており、太陽光のサンルーム内空間60a内への照射を妨げない構成となっている。これにより、太陽光のエネルギ源としての利用を促進し、サンルーム60内の空気を暖めたり、サンルーム60内に散布された水を気化させたりする際の効率を高めることが可能となっている。更に、サンルーム60を閉状態とすることにより、サンルーム60内の空気が外部に漏れることを抑制することができ、上記効率の更なる向上に貢献している。
サンルーム60に蓄えられる空気については有限であるため、サンルーム60内の空気を暖めるにしても冷やすにしてもそれなりの準備期間を要することとなる。このため、常時サンルーム60の空気を利用することが必ずしも空調効率の向上に最適なわけではない。この点、本実施の形態においては、空調空気を生成する場合には、屋内の空気とサンルーム60内の空気とを併用する構成となっている。これにより、サンルーム60内の空気を効率よく活用することを可能としている。
特に、高気密・高断熱の住宅においては、屋内空間ISにおける内気循環によって空調を行うことで、空調効率を好適に高めることができる。しかしながら、内気循環に依存しすぎることは酸素濃度の低下等の空気環境の悪化の要因となり得るため、適度な換気を行うことが好ましい。しかしながら、屋外空間OSの空気(外気)を加熱/冷却することで空調機能を担保しつつ換気を行おうとすれば、空調装置40に生じる負荷が大きくなる。この点、上述の如くサンルーム60内の空気を利用することで、屋内空間ISの空気の温度に少しでも近い状態から加熱/冷却可能とすれば、換気に伴う空調負荷の増大を抑制することができる。
全館空調を行う場合には、給気対象としての居室31,32と比べて、廊下33での空調が弱くなりやすい。これは、空調空気が居室31,32→廊下33へ移動する過程で周辺空気との間で熱交換を行うことに起因する。本実施の形態においては、開状態に切り替えられた廊下用通気ガラリ37,38を通じて廊下にサンルーム内空間60aの空気を引き込むことにより、廊下33での空調機能をサポートすることが可能である。すなわち、冬場はサンルーム60から暖かい空気を廊下33に引き込むことで、廊下33を暖めることができ、夏場はサンルーム60から冷たい空気を廊下33に引き込むことで、廊下33を冷やすことができる。
廊下用通気ガラリ37,38については、上下に離して設けられており、暖かい空気と冷たい空気とを区別して取り込むことが可能となっている。これにより、上記引き込みを行う際の暖房/冷房のサポート機能を好適に発揮させることが可能となっている。
本実施の形態においては、サンルーム60に設けられた散水装置68から散布された水を用いてサンルーム60内の空気を加湿することが可能となっている。このように加湿された空気を加熱/冷却して空調空気を生成することで、屋内の調湿を行うことが可能となっている。
特に、散水装置68からの水はミスト状で散布されるため、蒸発(気化)に要する時間を短くすることが可能となっている。これにより、上記調湿を行う際の応答性を向上している。
サンルーム60の床面部については土間61となっており、屋内空間ISと比べて水の散布に起因した問題が生じにくい。更には、土間61については、太陽光の照射が継続されたとしてもそれに起因した問題が生じにくい。このように、水の散布及び気化を促進する上で効果的な構成として土間61を活用することで、上述した加湿機能や冷却機能を好適に発揮させることができる。
土間61については、面状をなしており、土間61付近に存在する空気が下方へ逃げることはない。このため、上述した水打ちにより土間61付近の空気が冷やされた場合であっても、当該冷やされた空気が下方へ移動することを回避でき、空調空気の生成への利用を担保することができる。
なお、上述した実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。因みに、以下の別形態の構成を、上記実施の形態における構成に対して、個別に適用してもよく、相互に組み合わせて適用してもよい。
(a)上記実施の形態では、空調装置40が特定居室を対象とした個別空調機能と全館空調機能とを有する構成としたが、少なくとも一方の機能を有していれば足り、両機能を必須とするものではない。
特に、高気密・高断熱でない住宅に対して上記空調設備を適用する場合には、全館空調にかかる機能については省略することも可能である。
(b)上記実施の形態では、「散布手段」を構成する散水装置68による水の散布対象を土間61としたが、散布対象を例えば建物本体20の外壁部21、サンルーム60の周壁部62、サンルーム60内に配置される植物用の棚等とすることも可能である。
また、散水装置68から排出される水は必ずしもミストである必要はない。但し、空調装置40による加湿機能等を考慮すれば、即効性の点でミストを散布する構成とすることが好ましい。
(c)屋外空間OSとサンルーム内空間60aとを連通させる連通口を、サンルーム60における屋根開口65以外の部位に設けることも可能である。例えば、周壁部62の下端部に可動式の通気用ガラリを設け、空調制御装置によって当該通気用ガラリを開閉制御する構成とすることも可能である。サンルーム60にて散水による冷却を実行する際(冷房を行う際)に、高温多湿となった空気を屋根開口65から排出する場合には、本変形例に示す通気用ガラリを開状態とすることで、外気がサンルーム60の下部から取り込まれることとなる。これにより、サンルーム60における換気効率を向上することができる。
(d)上記実施の形態では、空調設備がユーザの操作に基づいて動作する構成としたが、これに限定されるものではなく、空調制御装置70が室温等の環境条件に基づいて空調を行う構成とすることも可能である。例えば、居室31,32の温度が予め設定された上限温度を超えた場合には、上記換気を独自に行う構成とすることも可能である。これにより、ユーザが帰宅して冷房を行う際により迅速に居室31,32の室温を下げることができる。
このようにユーザの操作に関係なく換気を行う構成においては、仮に室内に人が存在している状況下にて換気が実行された場合、突如として強い空気の流れが発生することで当該人に不快感を与えることが懸念される。そこで、当該変形例を採用する場合には、居室31,32に人感センサを配設し、人が存在していると判定した場合には、換気効率が徐々に強くなるように、蓋体66や通気ガラリ35,36の開放量を調整することが好ましい。
(e)上記実施の形態では、「半屋外空間」としてのサンルーム60を閉状態に維持可能としたが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、サンルーム60の周壁部62や屋根部63を透明としたが、これに限定されるものではない。少なくとも、外気温や室内の温度との半屋外空間の温度とに差を生じさせることができるのであれば、半屋外空間が常に開状態に維持される構成としたり、周壁部等を半透明又は不透明としたりすることも可能である。例えば、「半屋外空間」としてバルコニやロジアを採用することも可能である。
バルコニやロジアにおいては、周壁部62相当する構成を有さず、半屋外空間が閉空間ではない場合が多い。しかしながら、このような構成においても、少なくとも屋根部63に相当する構成を有していることで、暖かい空気を半屋外空間に留めやすい。故に、当該半屋外空間の空気を空調装置に取り込んで暖房用の空調空気を生成する構成とすれば、屋外空間OSの空気を取り込んで暖房用の空調空気を生成する場合と比較して空調効率の向上に貢献できる。
また、バルコニやロジアにおいては、屋根部63を有色不透明とすることで、半屋外空間への日射を抑えることができる。日陰となるバルコニ等においては、日向と比べて温度が低くなりやすいため、当該半屋外空間の空気を空調装置に取り込んで冷房用の空調空気を生成する構成とすれば、屋外空間OSの空気を取り込んで冷房用の空調空気を生成する場合と比較して空調効率の向上に貢献できる。
更には、必ずしも太陽光(太陽エネルギ)を利用して上記温度差を生じさせる必要はなく、例えば地熱等の他の自然エネルギを利用して上記温度差を生じさせる構成とすることも可能である。
(f)上記実施の形態では、「通気用開閉手段」として可動式の通気用ガラリを採用したが、これに限定されるものではない。少なくとも屋内空間ISとサンルーム内空間60aとの通気を許容する状態と許容しない状態に切替可能な構成であればよく、例えば開閉式の窓パネルや、シャッタ等を採用してもよい。
(g)上記実施の形態に示す空調設備を、2階建ての建物に適用することも可能である。この場合、サンルーム60内の空気が建物の1階部分だけでなく2階部分に流入する構成とするとよい。このような変更を行う場合には、サンルームを建物の2階部分と重なる位置まで拡張し、建物の2階部分を構成する外壁に、当該2階部分とサンルーム内空間との通気を許容する状態と許容しない状態とに切替可能な開閉手段(例えば通気用ガラリに相当する構成)を配設するとよい。
また、このようなサンルーム60の大型化に合わせて、サンルーム内空間60aを上下に仕切るとともに空気の移動を遮蔽する遮蔽部を設けてもよい。かかる構成を採用することにより、サンルーム60内の空気のうち上部に存在する比較的暖かい空気と、下部に存在する比較的冷たい空気とが混ざることを抑制し、サンルーム内の空気を一層好適に利用することができる。
更には、2階建ての建物においては、サンルームを1階部分に隣接させて配置するのではなく、2階部分に隣接させて配置することも可能である。この場合、例えばバルコニ等にサンルームを構築するとよい。
(h)上記実施の形態に示すサンルーム60については出入口用のドアが存在している。このドアを閉位置へ移動させる駆動部を設け、上記空調を実行する場合には、空調制御装置によってこのドアを閉じる構成とすることにより、サンルーム60を利用した空調を一層好適なものとすることができる。
(i)サンルーム60内に可動式の棚を設け、当該棚によって室内への日射を遮る構成とすることも可能である。以下、図9(a)の概略図を参照して、具体例について説明する。
サンルーム60における上下方向の中間位置、詳しくは外壁部21に設けられた窓部100よりも上側には、土間61と対向するようにして棚101が設けられている。周壁部62は、棚101を移動可能に支持する支持レール102が設けられており、棚101は、外壁部21に対して近づく側と遠ざかる側とに移動可能となっている。また、サンルーム60には、棚101を駆動させる駆動部(図示略)が設けられており、当該駆動部は空調制御装置70に対して電気的に接続されている。空調制御装置70からの駆動信号に基づいて駆動部が動作することで、棚101が支持レール102に沿って移動することとなる。
また、サンルーム60には日射センサ(図示略)が設けられている。日射センサは空調制御装置70に対して電気的に接続されており、空調制御装置70ではこの日射センサからの検出情報に基づいて、太陽光の窓部100に対する入射量(日射量)を把握可能となっている。
空調制御装置70では、居室31の在室状況や室温更には上記日射量に応じて棚101を可動させることで、居室内への日射を制え、居室31の温度上昇を抑制する。これにより、空調装置40に生じる負荷を低減することができる。
なお、棚を設けてサンルーム60内で植物を育てる場合には、LEDからなる照明を設け、夜間にはこの照明によって植物に光を供給する構成とするとよい。これにより、植物の生育を促進することができる。また、空調制御装置70又はサンルーム用の他の制御装置によって、サンルームの温度管理や散水装置68等を用いた給水等の管理を行うことにより、植物の成長を管理することができる。
(j)上記空調装置40に代えて又は同空調装置40と併せて図9(b)に示す冷暖房システムを採用してもよい。具体的には、サンルーム60の周壁部62等に内蔵された熱線(図示略)、サンルーム60内に設けられた蓄熱材111、建物本体20の屋根に設けられた集熱装置112、地中内に温度が一定となるようにして埋設された地熱装置113等の熱源を設けるとともに、建物本体20の外壁部21〜23や床面25等に建物本体20と熱源とを繋ぐ略環状のパイプ114を内蔵し、上記熱源の熱から熱を与えられた流体が建物本体20内を循環することで輻射式の暖房を行う構成を採用してもよい。また、夏場には地熱装置113や井戸水とパイプ114内の流体との間で熱交換を行うヒートポンプ115を利用して、パイプ114内の流体を冷却し、この冷却された流体が建物本体20内を循環させることで輻射式の冷房を行う構成を採用してもよい。なお、井戸水を用いて冷却を行った場合には、その井戸水を最寄の川や池等に排出するとよい。