JP4758017B2 - 冷房システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水などの蒸散材の蒸散に際して潜熱を周囲から奪うことによる冷却効果を利用して、天井裏側から天井を冷却し、冷却した天井を介して天井下の空間を冷房する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、動力機器を用いた冷房システムとしては、圧縮式冷凍機を使用した構成と、吸収式冷凍機を使用した構成とが知られている。圧縮式冷凍機を使用するシステムは、高温の冷媒ガスを高圧にして凝縮させ、再び蒸発するときに得られる「蒸発潜熱」を利用して、媒体となる水や空気を冷却するシステムである。圧縮に用いられる機械の方式の違いにより、「往復式冷凍機」、「遠心式冷凍機」に区別される。また、大規模な凝縮器では大量の冷却水が必要となるため、建物屋上に「冷却塔」を設置している。
【0003】
吸収式冷凍機を使用するシステムは、冷媒ガスの「蒸発潜熱」を利用する点では、圧縮式冷凍機と同様のシステムである。しかし、圧縮式では、冷媒ガスを高圧にする際に機械の動力を使用するが、吸収式では高温に熱することによって得られる圧力を利用する。かかる圧縮式冷凍機を使用するシステムでも、冷却水が必要となるため、冷却塔の設置が必要となる。
【0004】
かかる動力機器を用いる冷房システムとは別に、近年、特別な動力機器を用いないで室内の気候調節を行なう自然エネルギーを利用したシステムが、積極的に提案されている。かかるシステムでは、太陽放射、夜間放射、水の蒸散、風の4要素が自然エネルギーとして利用されている。
【0005】
従来提案されている自然エネルギーを利用したシステムの適用対象は、主に戸建建物が中心である。それまでの動力機器を用いたシステムに対抗するものとして提案され、技術的にも新しい。そのため、実地適用が簡単に行なえ、その検証が比較的に行ない易い戸建建物を中心に応用技術の開発が図られてきた。
【0006】
かかるシステムは、主な自然エネルギーを「屋外空間」から得ることで成立するため、どうしても、冷房対象とする空間当たりの自然エネルギーとの接触割合が大きい建物表面積の広い低層建物が中心と成り易かった。例えば、冬期では、南開口部からの日射取得、夏期では屋根面における夜間放射、蒸散潜熱の取得を中心に、自然エネルギーの利用が図られてきた。
【0007】
このうち、水の蒸発作用に基づく自然エネルギーを利用する冷房システムとしては、例えば、特開平6−185131号公報がある。かかる公報には、工場や体育館等の金属又は膜屋根を持つ建造物に対して、屋根面からの日射による熱負荷を減少させる目的で、屋根面での滞留時間を長くした水を散水する構成が提案されている。水に石鹸などの薬剤を混入することで、噴霧時に泡を発生させ、泡を多量に含んだ泡状の散水が屋根勾配に沿ってゆっくりと降下するようになっている。
【0008】
水だけの場合に比べて、泡状の散水は屋根面上の滞留時間が長くなるため、その分、屋根面と十分に熱交換を行なうことができ、熱面を有効に冷却(顕熱冷却)することができるとしている。また、泡状の散水がゆっくりと降下する間には、当然に水の蒸発潜熱を屋根面から奪うことによる潜熱冷却も併せて行なわれ、顕熱冷却と潜熱冷却との双方の冷却効果が得られる旨記載されている。
【0009】
また、「 Passive And Low Energy Cooling Of Building 」(ISBN:0471284734著者: Givoni Brauch, 1997 年 12月、Van Nostrand Reinhold Company 刊)なる外国刊行物には、最上階の屋根に人工池を設け、この池に張った水の蒸散により、人工池を設けた屋根下方の室内空間の冷房を行なうソーラーポンドシステムの構成が示されている。かかる構成では、屋上のパラペット内に水が張られており、水には直射日光を必要に応じて適宜避けられるように、開閉可能な日除けが設けられている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
既存の機械設備による冷房システムでは、冷媒ガスを圧縮する際に大量の化石燃料(圧縮式では主に電気、吸収式では主にガス)によるエネルギーを必要とする。また、オフィスビル、ショッピングセンター、工場などの大規模施設で使用する際には、特別に冷凍機を設置しなければならなず、そのための設置空間を設けなければならない。併せて、屋上などに別途冷却塔を設置する必要もある。
また、かかる従来構成の冷房システムでは、実際に居室空間の室温を下げる際に、「空気調和室」、「ダクト・配管」、「送風機」など、複雑なシステムと機器類が必要とされる。
【0011】
かかる従来構成の冷熱源による空調システムでは、大量の化石燃料の使用(因みに、電力消費のピーク値は、ほぼ冷凍機の使用量で決定される)、設備配置用のスペースの確保(配管、ダクト、冷却塔、熱源器などの配置)、システムの複雑化によるメンテナンス性(保守・制御)などの問題点が指摘されている。
【0012】
一方、水の蒸散作用に基づく自然エネルギーを利用した冷房システムについては、前記の如く幾つか提案されてはいるが、しかし、その構成は屋根面を有する階に適用が限定されている。最上階の屋根の屋根面を冷却する構成でしかない。そのため、かかる構成の冷房システムは、屋根面のない中間階、あるいは最下階を有する建物構造では、最上階にしか適用できず、中間階などは適用外となる。
【0013】
また、屋根は、外気温の変化を遮る目的から、通常は、熱伝導抵抗が高くなるように構成されており、屋根表面が冷えても内部へは伝わりにくく、屋内を十分に冷却することはできない。
【0014】
通常は、複数階を有する建物では、中間階に属する空間容積の方が、最上階に属する空間容積よりも格段に大きい。そこで、本発明者は、屋根面を持たない中間階、最下階などの空間を自然エネルギーを利用したシステムに基づき冷房できるようにする技術の開発が極めて重要であると考えた。すなわち、中間階においても水の蒸散作用に基づく自然エネルギーを利用した冷房システムが図れないかと考えた。
【0015】
しかし、従来の技術的考えでは、中間階に水の蒸散作用に基づく自然エネルギーを利用した冷房システムを適用することについては、否定的な見解が多かった。例えば、中間階は、屋根面を持たない階であるため、一室当たりの自然エネルギーに触れる面積が少なく、必要とされる自然エネルギーとの接触面積という観点からは、その適用は困難と考えられていた。
【0016】
また、建物構造では、その雨仕舞、防水、漏水は特に神経を使う部分であるが、建物構造内には水が溜まり易い箇所を設けることは、設計的に嫌われる構成である。特に、中間階を設けた建物構造では、階下への漏水、壁面からの居室内への雨水の進入などは、致命的な構造欠陥となるため、設計上はかかる構成は極力避けることが求められていた。
【0017】
従って、本発明者が提案する水の蒸散作用に基づく自然エネルギーを利用した中間階における冷房システムは、それまでの技術常識に真っ向から反対する技術思想であると言える。
【0018】
また、従来構成の動力機器を用いた空調システムを使用するに際しても、その一部を自然エネルギーを利用したシステムに置き換えることができれば、従来構成の空調システムの冷房負荷を大幅に低減させることができ、電力消費などの省力化が積極的に図れると考えられる。
【0019】
本発明の目的は、屋根面を持たない階に適用できる自然エネルギーを利用した冷房技術を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、天井を有する空間の冷房システムであって、天井裏と、前記天井裏に連通する通風孔と、水などの蒸散材を天井裏側に収容する天井とを有し、前記通風孔を介して前記天井裏に導入する風により前記蒸散材を蒸散させて前記天井を冷却し、冷却した前記天井を介して天井下空間の冷房を行なうことを特徴とする。前記通風孔には、開閉可能な蓋が設けられていることを特徴とする。前記蓋は、その開放時には、前記通風孔より下方に設けた窓などの開口部への陽射しを遮る庇を兼ねることを特徴とする冷房システム。
【0021】
前記天井は、前記天井裏に面する側が、前記蒸散材の収容可能な皿状に形成されていることを特徴とする。前記蒸散材は、不織布などの保持材に含浸させられた状態で、前記天井に収容されていることを特徴とする。前記冷房システムが、複数階を有する建物の屋根面を持たない階に適用されていることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、水などの蒸散材の蒸散により冷却された天井を介して天井下空間の冷房を行なうために使用する天井であって、前記天井を、前記蒸散材を収容可能に構成されていることを特徴とする。
【0023】
本発明の冷房システムは、天井を有する空間の冷房システムであって、天井裏と、前記天井裏に連通する通風孔と、水などの蒸散材を天井裏側に収容する天井とを有し、複数階を有する建物の屋根面を持たない階に適用され、前記通風孔を介して前記天井裏に導入する風により前記蒸散材を蒸散させて前記天井を冷却し、冷却した前記天井を介して天井下空間の冷房を行なうことを特徴とする。
【0024】
かかる構成を有する本発明は、具体的には、例えば、天井を熱伝導率の高い材料で皿状に形成しておき、その皿部内に蒸散材として水の層を薄く張ったり、あるいは、水を十分にしみ込ませた不織布を設けておけばよい。外気を天井裏に通し、皿部内に張った水の水面、若しくは、不織布表面での水の蒸散を促すことにより、水温を湿球温度近くまで冷やすことができる。
【0025】
このようにして蒸発潜熱が奪われて冷やされた水により、天井が冷却されることとなるため、天井に使用する材質を熱伝導率の良好な材質にしておけば、天井の室内側表面もほぼ同時に冷やされることとなる。冷やされた天井の室内側表面と、天井面近傍の室内空気(熱気)との間で対流による熱交換が行なわれ、天井下空間である室内の冷房が行なわれる。
【0026】
本発明では、かかる作用により、室内冷房を水の蒸散作用に基づき、すなわち自然エネルギーを利用して行なうこととなるが、水面からの蒸散量は、その面での近傍風速と接する空気の温度や水蒸気圧に大きく依存するため、天井裏空間には十分な通風量が確保できるようにしなければならない。天井には、耐水性に優れ、熱貫流率の大きい材料を使用し、天井内部での温度勾配をできるだけ少なくする。
【0027】
また、かかる構成では、天井面の天井下空間である居室側表面温度は、湿球温度以下に下がることがないため、本システムによって結露が発生する心配はない。
【0028】
かかる構成の本発明は、従来構成の空調システムと併用することもできるが、勿論、単独で使用しても構わない。併用すれば、冷房負荷を軽減させることができる。夏期若しくは中間期の暑い日にのみ使用すればよく、またシステムを可動させないときは、通風孔を閉じたり、あるいは水分を抜くなどして、蒸散潜熱の発生を停止させるようにすればよい。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の冷房システムを中間階に適用した様子を示す断面説明図である。図2は通風孔に設けた蓋の開口状態を示す斜視図であり、(B)はその閉じ状態を示す斜視図である。図3(A)は4個の通風孔の蓋を一括開口する開閉機構を示す斜視図であり、(B)はその閉じ状態を示す斜視図である。図4は天井下空間の対流状況を模式的に示す断面説明図である。図5は、本発明の冷房システムの中高層建物への適用を模式的に示す断面説明図である。図6は、本発明の冷房システムの大規模平面単層建物への適用を模式的に示す断面説明図である。
【0031】
本発明の冷房システムは、建物の屋根面を持たない中間階、最下階などへの適用が図れるシステムである。図1では、建物10の中間階に適用した場合を示している。上階10aの床スラブ11(床スラブ11は、直下階10bの天井スラブに相当する。)の下方に天井12が設けられ、天井12により下階10bの天井下空間Aが区画されている。天井下空間Aは、図1に示す場合には、人Hが居住できる居室空間に構成されている。
【0032】
床スラブ11と天井12との間に形成された空間が天井裏13となる。また、かかる天井裏13に通じる通風孔14(14a、14b)がそれぞれ建物の外壁15側面に設けられている。通風孔14a、14bは、天井下空間Aにおける冷房が必要な夏期などに、天井裏13内への風通しが方向に設けられている。
【0033】
すなわち、かかる通風孔14a、14bは、例えば、4〜9月の平均的な風向データに基づき、設置位置を決めるようにすればよい。通風孔14a、14bには、通風量の調節ができるように開閉可能な蓋16が設けられている。図1に示す場合には、通風孔14a、14bに設けた蓋16が開け状態にされている。
【0034】
蓋16は、断熱性と気密性を有した素材で、例えば、図2に示すように、板状に形成されている。蓋16は、通風孔14の開口部に設けた略矩形状の枠17に、はね上げ式に設けておけばよい。蓋16には、開放用のばね18が設けられ、ばね18によりはね上げ式に自動的に開放できるようになっている。なお、ばね18は、油圧式ダンパーに構成しておいても構わない。
【0035】
蓋16には、閉鎖用のワイヤ19が取り付けられ、ばね18の付勢に抗してワイヤ19を巻き上げれば蓋16を閉鎖することができる。また、ワイヤ19を緩めれば、蓋16はばね18の付勢により自動的に開放することとなる。ワイヤ19の巻上げ加減で、蓋16の開口度合いを調節することができる。ワイヤ19の巻上げは、手動でも、電動でも構わない。
【0036】
また、蓋16の背後には、図2(A)に示すように、網戸16aを設けておき、通風孔14a、14bを通して天井裏13内に虫や小鳥などが入り込まないようにしておくとよい。図2(B)には、蓋16を閉じ状態にした場合を示したが、かかる状態では、通風孔14aを通して外部から天井裏13内には風が入らないように気密性が確保されている。
【0037】
本発明における通風孔14a、14bは、天井裏13内の湿気防止用に風通しを維持するという従来構成の通風孔設置目的とは異なり、後記する如く、天井裏13内における水などの蒸散材の蒸散作用を促すために外気を積極的に取り込むという目的を有している。そのため、例えば、図2(B)からも分かるように、通風孔14a、14bの大きさとしては、湿気防止用に風通しを維持するという程度の通気孔とは異なり、開口面の大きさを、例えば、約1500×約600mmといった大きなものに設定した。
【0038】
通風性を確保するには、上記の如く通風孔14の開口面積を大きくしてもよいが、通風孔14の設置数を増やしたりする方策も考えられる。数を増やす場合には、すなわち、天井裏13に通ずる外壁15に、複数の通風孔14を設ければよい。例えば、図3に示すように、4個の通風孔14c、14d、14e、14fを設け、ワイヤ19で、これらを一括して開閉制御できるようにしておけばよい。ワイヤ19の一端は、固定しておき、他端を室内から巻き上げるようにすればよい。図3(A)は開口状態を示し、(B)は閉じ状態を示している。
【0039】
天井12は、天井裏13に面する側が皿状に形成され、皿部内に蒸散材としての水Wを厚さ約30mm程度で薄く張ることができるようになっている。かかる天井12は、例えば、繊維強化プラスチック(FRP)を用いて型成形して製造しておけばよい。すなわち、繊維強化性プラスチック製の皿の底面が天井下空間A側に対する天井面に相当し、皿の表面側が天井裏13内に面することとなる。
【0040】
天井12の皿内には、水Wが蒸散材として、皿部の底面全面に亙って入れられている。天井12には、図示しないが、給水管が配管され、必要に応じて皿部内に給水できるようにしておけばよい。さらに、天井12には、排水管も配設しておき、必要に応じて皿部内から水Wを抜くことができるようにしておけばよい。天井12の皿部内に張った水W上を風が通過することにより、水Wの蒸散が促進されることとなる。
【0041】
かかる構成を有した本発明の冷房システムの作用について、以下説明する。図1に示すように、建物10の上階10aと下階10bとの間に設けた天井裏13では、天井12の皿部内に水Wが薄く張られている。天井裏13に通じる通風孔14a、14bを、ワイヤ19を緩めることにより、蓋16をばね18の付勢で開ける。建物の外からは、通風孔14aを通って、天井裏13内に風が入る。
【0042】
天井裏13内に入った風は、天井12の皿部内に張った水W上を通過して、通風孔14bから建物10外へ通り抜ける。天井裏13内を風が通過する際に、皿部内に張った水Wが蒸散させられることとなる。蒸散により、水の蒸発潜熱が水Wから奪われて、水Wの温度は天井裏13内に通された外気に対する湿球温度まで冷やされることとなる。因みに、夏期の日中であれば、かかる湿球温度は、外気温に対して約5℃程度低い温度となる。
【0043】
このようにして天井12の皿部内に張った水Wが外気温より約5℃程度低い温度に冷やされるため、かかる水Wを張った天井12の皿部の底面側も、すなわち天井下空間Aから見た天井12面も外気に対する湿球温度まで冷やされることとなる。冷えた天井12に沿った空気も冷やされ、図1に示すように、天井12面に沿って、冷気が天井下空間A内を天井側から下方に下って、室内冷房を行なうこととなる。例えば、外気温が約30℃の場合は、本発明の冷房システムでは、室温は約25℃程度にまで冷やされることとなる。
【0044】
このように天井裏13内で、天井12に張った水Wを天井裏13内を通過する風により積極的に蒸散させることにより、天井12側から冷気が天井下空間A内を下方に下り、その結果、図4に示すように、天井下空間A内の空気が自然対流を起こすこととなり、天井下空間A内全体が冷やされることとなる。
【0045】
かかる構成の本発明の冷房システムは、例えば、図5に示すように、基準階をもつようなオフィスビル、集合住宅などの中高層建物20の最下階21、中間階22および最上階23に設けることができる。また、図6に示すように、工場や、ショッピングセンター、倉庫など大規模平面を持つ単層の建物にも勿論適用することができる。
【0046】
図6に示す場合には、建物30の大面積の傾斜屋根31の下方に、階段状に天井32(32a、32b、32c、32d、32e)を形成し、天井32に形成した皿部内に水Wを蒸散材として張って、天井裏33に通風孔を34を介して下方から上方に向けて風を通す。通風孔34から導入された風により、各天井32a、32b、32c、32d、32eの各皿部に設けた水を蒸散させて、天井32下の天井下空間Bの冷房を行なう。
【0047】
また、図6に示す場合には、平坦屋根35を設け、かかる平坦屋根35に対応した天井裏36に面した天井37を皿状に形成して、皿部内に水を張っておく。
天井裏36に通風孔38を通して風を通せば、積極的な水の蒸散作用により天井37を冷却して、天井下空間C内の冷房をも行なうことができる。
【0048】
上記構成においては、通風孔34、38に設けた蓋34a、38aの開閉度合いを調節することにより、天井裏33、36内に通す通風量を調節し、冷房温度を調節するようにしてもよい。
【0049】
通風孔に設ける蓋の開閉制御の方法としては、幾つかの構成が考えられる。例えば、計画地の最寄りの「拡張アメダスデータ(標準年)」を利用して、最適な開放期間と、閉鎖期間とを設定するようにしてもよい。かかる開閉制御の方法では、夏期当初に開放して、夏期末に閉じる方式の制御で、年に2回の制御を行なうようにすればよい。
【0050】
かかる年に2回の制御方法では、蓋の開閉は、電動でなくても、手動で十分に対応することができる。例えば、本発明者の実験によれば、神奈川県の横浜地区では、開放期間を平均外気温が25℃を越える期間当初の7月10日に、閉鎖期間を9月10に設定すればよいことが分かった。
【0051】
また、別の制御方式としては、屋外に設置した通風式温度計(アスマン温度計)から得られるデータにより蓋の開閉制御をする方式が考えられる。かかる制御方式では、開閉が頻繁に行なわれるため、全自動の開閉機構の設置が必要となる。例えば、開放指示は乾球温度≧22℃、(乾球温度−湿球温度)≧2℃の場合に出され、閉鎖指示は、乾球湿度<22℃、(乾球温度−湿球湿度)≧6℃の場合に出されるように設定すればよい。
【0052】
かかる開放指示が信号で通風孔の蓋開閉機構に送られ、信号に基づき蓋開閉機構が始動して、ワイヤを緩めることにより、通風孔の蓋が自動的に開口するように構成しておけばよい。さらには、蓋の開閉機構部内にマイクロコンピュータを内蔵しておき、天井下空間内の温度センサからの温度により、開放指示の信号に基づき、開閉度を調節するようにした自動開閉調節機構を設けてもよい。このように通風孔の蓋の開閉を制御することにより、本発明に係るシステムによる冷房を自動的に行なうことができる。
【0053】
以上の説明では、天井を皿状に形成してこの皿部内に入れた水の蒸散作用を利用して天井を冷やす場合について説明したが、皿内に直接に水を入れることなく、水を一旦しみ込ませた不織布などの保水材を、皿部内に収容するようにしても構わない。保水材への水の供給は、例えば、保水材の一端側に管端を接した給水管から給水して、毛細管現象で全体的に行き渡るようにすればよい。
【0054】
天井面積がそれ程大きくない場合には、一枚天井を皿状に形成しても構わないが、天井面積が大面積になる場合には、所定単位面積に合わせて皿状の単位天井を形成しておき、複数個の単位天井を敷きつめるようにして大面積の天井形成を行なってもよい。また、かかる天井への自動給水方式には、例えば、ボールタップ方式、水位による制御、天井面温度による制御、目視確認などの従来より既知の構成を用いて行なえばよい。
【0055】
【実施例】
次に、本発明者は、上記構成の冷房システムの各構成について具体的構成条件を設定してシュミレートすることにより本発明の効果を検証した。
【0056】
天井裏13の水の蒸散によって天井下空間Aである居室側に流入する冷熱量を定量化するために、下記の条件にて熱収支シュミレーションを行なった。
【0057】
天井裏13では、十分な換気量が確保されていることを前提として、すなわち、天井裏空間の風速は屋外風速の20%に相当すると仮定した。水面に接する空気の「温度」と「水蒸気圧(hPa)」は、屋外空気と同等のものとして計算した。
【0058】
屋外気象データは、標準気象データ(東京より)に基づき、気温、絶対温度、屋外風速を決めた。室温設定は、常に26℃(平均室温)で空調されているものとした。天井12は、熱伝導率λ=0.26゜[W/mK]のFRP材を使用して形成した。
【0059】
水面での熱収支として以下の計算を行なった。なお、計算に際しては、天井裏13であるため、各種放射の影響は軽微であると考えて無視した。
Qw=ho(To-Tw) + 1.5ho(Eo-Ea) [W/m2]
ho=11.6×(0.48+0.272)×V' [W/m2K]
V'=V × 0.2 [m/s]
ここで、To:外気温(℃)、Eo:Twにおける飽和水蒸気圧[hPa]、Es:外気の飽和水蒸気圧[hPa]、ho:水面での対流熱伝導率[W/m2K]、V:屋外平均風速(標準気象データより)[m/s]、V':水面近傍風速 [m/s]を示している。
【0060】
水底での熱収支は、
Qb=hb(Tw-Tcw) [W/m2]
hb=200 [W/m2K]
であった。因みに、hb:水底の対流熱伝導率[W/m2K]、Tcw:天井の水面側表面温度[℃]を示している。
【0061】
天井面(居室側)での熱収支は、
Qi=hi(Tci-Ti) [W/m2]
hi=11.6 [W/m2K]
であった。因みに、hi:天井面での対流熱伝導率[W/m2K]、Tci:天井の室内側表面温度[℃]、Ti:天井面近傍の室温[℃]を示している。
【0062】
上記設定条件で、東京付近での本発明の冷房システムの適用を想定して、夏期における天井付近の各種温度の時系列変化と、そのときの天井面から室内へ流入する熱量[W/m2]のシュミレーションを行なった。その結果を、図7のグラフに示した。
【0063】
図7(A)からは、6月下旬までは、外気温が水温を下回る時間が多いことが分かる。この場合、天井12の皿部内に張った水Wの層は蒸散により熱抵抗としての働きを担っていることとなり、水Wの層による冷房効果は期待できない。従って、外気温が水温より低い場合に、冷房効果を得るためには、水Wを除いた状態で天井裏13に導入した外気で天井12を直接冷やす方がより効果的と言える。
【0064】
しかし、この期間での要冷房時間は少ないと考えられるため、実際の建物での使用に際しては、過冷却を防止するために天井裏13に通じる通風孔14は常時閉鎖しておいても問題はないと考えられる。従って、通常は、天井12の皿部内に張った水Wも排出しないでも済むと考えられる。
【0065】
図7(B)〜(D)に示すように、7月から9月上旬の期間は、水温の方が外気温より低いため、殆どの時間で天井面温度が湿球温度近くにまで下がる。また、外気温の変動に対しても、天井表面温度は、20〜26℃に安定しているため、過冷却の心配もない。
【0066】
7月の天井面からの平均入熱量は−43W/m2であり、8月は−39W/m2、9月は−51W/m2であり、人体、照明、家電といった室内発熱を十分に吸収できる量であることがわかる。
【0067】
次に、屋根面を設けない基準階、すなわち中間階、あるいは最下階などにおける熱負荷予測を行なった。RC造中高層建物への本発明の適応例を検証するため、3種の「基準モデル」を作成し、熱収支シミュレーションによる空調負荷のケーススタディを行った。
【0068】
天井付近での計算式は前述と同様のものを使用し、各躯体内の熱移動は差分法により非定常熱計算を行なった。本シミュレーションに使用する基準モデルの構造と物性を表1に示した。表2には、3種の基準モデルに共通の設定条件を示した。表3には、3種の基準モデルの仕様を示した。図8には、かかる基本モデルの空間構成を示した。
【0069】
【表1】
Figure 0004758017
【0070】
【表2】
Figure 0004758017
【0071】
【表3】
Figure 0004758017
【0072】
基準モデルは南面平行型のRC造の外断熱建物を想定した。基準モデルの中間階の各室は、東西方向と高さ方向にそれぞれ同じモデルが連続配置されているものとする。図8(A)に示す間取りの各室において、図8(B)に示すように、本発明の冷房システムを適用した。すなわち、天井裏13の高さを500mmとし、南北面は外気に開放できるように下開きの蓋を16を有する通風孔14を設けた。なお、図8(B)は、図8(A)のA−A断面図である。
【0073】
通風孔14に設けた蓋16は、開放時には夏期における南面への直達日射遮蔽にも有効に働くように開放角度αを設定し、冷房期以外の期問には閉鎖できるようにしておく。天井12となる水Wの皿部分は、3mm厚のFRP製パンとし、小型のものを縦横にならべるものとする。また、外気からの貫流負荷を抑えるため、南北面に設けた開口部40には、ペアガラス(K=3.0W/m2K)を使用した。
【0074】
天井下空間Aである居室内室温や空調負荷の計算は、表3に示す3つのタイプで行った。表2は3タイプ共通の計算条件である。また、発熱条件では、曜日による生活サイクルの変化を考慮せず、表に示された時間帯を全ての曜日に当てはめている。「計算2」「計算3」は24時間のモデルとし、常に居室内平均室温が26℃を上回らないように空調機が作動しているものとする。
【0075】
図9に東京の8月における室温の変化と空調負荷のシミュレーション結果を示す。図9(A)に示す「計算1」の結果は、天井裏蒸散システムによる冷房だけをあてにしたモデルだが、外気最高温度が35℃を上回る時間においても、居室内は最大28.2℃に抑えられていることが分かる。また、このシステムにより、居室内が26℃を超える時間は8月全体で108時間(1日あたり平均3.5時間)に抑えることができることも確認される。
【0076】
図9(B)に示す「計算2」の場合は、天井裏蒸散システムと空調設備を併用したモデルの場合である。かかる場合には、空調設備が作動したのは88時間(1日あたり平均218時間)で、冷房負荷の合計は262MJであった。
【0077】
一方、天井裏蒸散システムを持たない図9(C)に示す「計算3」では、冷房負荷の合計は4718MJであり、冷房負荷は本発明の冷房システムによって5.5%にまで圧縮されたことがわかる。また、他の月においても同様で、冷房負荷削減率は、6月で100%、7月では99%、9月では98%という計算結果が得られた。
【0078】
かかる結果から、7月から9月上旬までの期間では、ほとんどの時間で、天井面温度が湿球温度近くにまで下がり、居室側へは平均−45W/m3放熱が行なわれることが分かる。また、提案したモデルにおいて24時間空調を行う場合には、空調負荷は、本発明に係る天井裏蒸散システムを併用しないモデルに比べ10%以内に抑えることができることも確認できた。
【0079】
【表4】
Figure 0004758017
【0080】
また、モデルの居室内空気の熱収支を、要素別に分類したシミュレーション結果を上記表4に示す。冷房中の居室内空気の熱収支では、一番の熱源(空調負荷を増大させる要因)は、人体や電気機器等からの[内部発熱]であることがわかる。また、この発熱は居住者数により大幅に変化する。かかる内部発熱を抑えるためには、低電力機器を使用することが望ましい。また、照明設備やOA機器などの熱源近くに吸気口を設ける局所排熱が、空調負荷低減のための有効な手段となる。
【0081】
「RC部分表面から」と「間仕切壁表面から」の熱流は、主に窓からの透過日射の受熱によるものである。ここでの透過日射は散乱日射が主成分になるため(直達日射は庇によりほとんどがカットされている)、これ以上の透過量のカットは困難である。暖房中の空調負荷を見ると、本モデルは高断熱の南面平行型であるため、特別なシステムを用いなくても、一般のRC造に比べて低く抑えられている(一般RC造では約30MJ/m2・月)。この期間の熱収支を分類すると、空調負荷の主な要因は「換気から」と「窓表面から」であることがわかる。空調負荷の削減には「密閉型ペアガラス」や「熱交換器付きの換気設備」の設置が有効と考えられる。
【0082】
また、以上の構成の本発明を、図10に示すように、例えば、中高層建物に適用すると、従来より問題となっているビル周辺の高速風、所謂ビル風の改善に有効に機能することが本発明者により確認された。
【0083】
図10(A)に示す場合は、同じ高さの建物40に対して、ビル風の発生状況を示したものである。ビル周辺の風の流れを、破線表示で示した。ビル風は、ビル側面に突き当たり、ビル壁面を上昇し、屋上部分を通過して、ビル側面を急下降する。特に、かかるビル風の風速増加域Dを、網部分で示した。従来構成のビルでは、風速増加域Dは、風の上昇、下降が見られるビル側面の下方と、上昇側の屋上端周辺に発生することが分かる。
【0084】
一方、図10(B)に示すように、中間階の天井裏13に通じる側面に、蓋16を有する通気孔14を設けることにより、従来構成では壁面に沿って急上昇していたビル風が、各中間階の天井裏13に流れるため、ビル下方に風速増加域Dが発生することはない。
【0085】
また、ビル側面に突き当たる風は、通風孔14の開口から天井裏内に通るが、その際に太い流れが通風孔により狭められ急に細くなるため、ベンチュリー効果により加速されることとなる。そのため、天井裏を通過する風が天井裏内で滞留する心配がなく、速やかに通過する。併せて、かかる天井裏内の風の急速通過により、水の蒸散作用がより促進される。
【0086】
蓋16を下開きの構成とすることにより、蓋はビル側面を上昇しようとする風を効果的に通風孔へ導くウィンドキャッチャーとしの役目を果たすこととなる。ベンチュリー効果を利用して水の蒸散をより促進するためには、蓋の開口方向は、下開きの方が好ましい。
【0087】
また、本発明の冷房システムを採用したビルでは、図10(B)に示すように、ビルの屋上側では若干の風速増加域Dは発生するが、その範囲は、従来の場合に比べて小さいことが分かる。特に、ビル下方での風速増加域Dは解消するため、ビルの側方に沿った通行域でのビル風の影響を解消することができる。
【0088】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、前記実施の形態1で説明した通気孔の蓋に庇を兼用させる構成について説明する。本実施の形態では、通気孔14は、図11(A)の平面図に示すように、北側の側面と、これに対向する南側の側面とに各々4箇所ずつ設けた。通気孔14の各々には、蓋16が設けられ、前記実施の形態1の図3で説明したと同様の機構で開閉できるようになっている。
【0089】
蓋16は、図11(B)に示すように、開口した状態で、南側から照りつける入射光Lを十分に遮蔽できる庇として機能することができるようにその大きさが設定されている。本発明者により、蓋16を設けた通風孔14より下方に位置する窓下端から、蓋16の先端を見上げた際の仰角を60度に設定すると、4月4日から9月10日までの全直達日射を十分に遮蔽することができることが確認された。
【0090】
このように、直達日射を効率よく遮蔽することにより、前記実施の形態1の表4で述べたRC部分表面、窓表面からの発熱量を抑えることができ、室内温度の上昇を抑制することができる。そのため、本発明に係る冷房システムでは、図11(B)に示すように、上記通気孔14に設ける蓋16の巾aを、窓下端から蓋先端を見上げた仰角が60度以下になるように設定しておけば、窓への陽射しを十分に遮ることができる。
【0091】
しかし、蓋16の設置環境によっては、蓋16の巾aを十分に大きくできない場合も予想される。すなわち、仰角が60度より大きくなる場合も考えられるが、かかる場合でも、蓋16で日射の一部は遮ることができるので、庇の役目を持たせない場合に比べてその効果は大きい。
【0092】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で必要に応じて変更してもよい。
【0093】
例えば、上記実施の形態では、単層建物、中高層建物のへの適用例を説明したが、勿論戸建建物にも当然に適用できるものである。天井、天井裏に相当する構成を有する建築構造物であれば、当然に適用できるものである。さらには、元々天井、天井裏が形成されていない建物でも、別途天井、天井裏に相当する部分を追加構成することにより、既製建物に本発明の冷房システムを後付けで適用することができる。
【0094】
さらには、前記実施の形態では、建物などの構造物に対する適用を示したが、車両の天井側に、天井裏部分を設けることにより、車両室内の冷房に適用することも可能である。
【0095】
上記実施の形態の説明では、東京、横浜などの特定地域における夏期期間(6〜9月までの)に限定してシュミレーションを行なったが、かかる本発明の効果は、その他の地域、期間でも適用可能であることは当然である。建物の計画地の気象条件、地形、その他の風土条件の都合により、居室に冷房設備が必要となる際に有効に適用できるものである。従って、例えば、東北地方と、九州・沖縄地方とでは、適用期間は異なることとなるが、それでも構わない。
【0096】
上記実施の形態では、通風孔の蓋の開閉方向を下開きの場合について説明したが、開閉方向は上開き、スライド式など、下開き以外の構成を採用しても一向に構わない。
【0097】
また、通風孔には蓋を設けた場合を示したが、例えば、年間を通して平均気温が高く、通風孔に通した風による水の蒸散で過冷却が発生する心配がない地域では、蓋を設けなくても構わない。
【0098】
前記実施の形態では、蒸散材として、水を使用した場合について説明したが、安全に使用できるものであれば、他の蒸散材を使用しても一向に構わない。
【0099】
【発明の効果】
本発明によれば、天井裏に通す風により天井側の水を蒸散させて天井面を冷し、冷やした天井面により天井下空間の冷房を行なうため、天井と、天井裏を有する構成の屋根面を有しない階における冷房を、水の蒸散作用に基づく自然エネルギーの利用により行なうことができる。
【0100】
本発明は上記構成を有しているため、従来構成の動力機器を用いた冷房に比べてランニングコストの低減などの省エネルギー化が図れる。
【0101】
本発明によれば、天井裏に通す風により天井側の水を蒸散させることにより天井面を冷し、冷やした天井面により天井下空間の冷房を行なう構成であるため、動力機器を用いた冷房に比べて省エネルギー化が図れる。
【0102】
また、上記構成の本発明を、既存の動力機器を用いた空調設備と併用すれば、空調設備の冷却負荷の減少を図ることができる。
【0103】
本発明を適用することにより、夏期の電力使用のピークカットを積極的に図ることができる。
【0104】
本発明では、熱交換を動力機器を用いて行なう構成ではないため、従来構成の空調設備に比べて、動力機器に関する保守等のメンテナンスが不要となる。
【0105】
本発明の冷房システムをビルの中間階などの屋根面を持たない階に採用することにより、ビル風を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における冷房システムの中間階への適用を示す要部断面図である。
【図2】(A)は通風孔に設けた蓋の開口状態を示す斜視図であり、(B)はその閉じ状態を示す斜視図である。
【図3】(A)は4個の通風孔の蓋を一括開口する開閉機構を示す斜視図であり、(B)はその閉じ状態を示す斜視図である。
【図4】天井下空間の対流状況を模式的に示す断面説明図である。
【図5】本発明の冷房システムの中高層建物への適用を模式的に示す断面説明図である。
【図6】本発明の冷房システムの大規模平面の単層建物への適用を模式的に示す断面説明図である。
【図7】(A)、(B)、(C)、(D)はそれぞれ、6月、7月、8月、9月の外気温、湿球温度、水温、天井表面温度、放熱量を示すグラフ図である。
【図8】(A)は基準階モデルの仕様を示す平面図であり、(B)はその断面図である。
【図9】(A)、(B)、(C)は、基準モデルを使用した場合の東京の8月における室温の変化と空調負荷とをシュミレーションで示すグラフ図である。
【図10】(A)は従来構成のビルにおけるビル風の発生状況を模式的に示す説明図であり、(B)は本発明の冷房システムを中間階に適用した場合におけるビル風の発生状況を模式的に示す説明図である。
【図11】(A)は通風孔に設けた蓋を庇として兼用する場合の状況示す平面説明図であり、(B)は断面説明図である。
【符号の説明】
10 建物
10a 上階
10b 下階
11 床スラブ
12 天井
13 天井裏
14 通風孔
14a 通風孔
14b 通風孔
14c 通風孔
14d 通風孔
14e 通風孔
14f 通風孔
15 外壁
16 蓋
17 枠
18 ばね
19 ワイヤ
20 中高層建物
21 最下階
22 中間階
23 最上階
31 傾斜屋根
32 天井
32a、32b、32c、32d、32e 天井
33 天井裏
34 通風孔
34a 蓋
35 平坦屋根
36 天井裏
37 天井
38 通風孔
38a 天井裏
a 巾
A 天井下空間
B 天井下空間
C 天井下空間
H 人
W 水

Claims (9)

  1. 天井を有する空間の冷房システムであって、
    天井裏と、
    前記天井裏に連通する通風孔と、
    前記通風孔に設けられた開閉可能な蓋と、
    水などの蒸散材を天井裏側に収容する天井とを有し、
    前記通風孔を介して前記天井裏に導入する風により前記蒸散材を蒸散させて前記天井を冷却し、冷却した前記天井を介して天井下空間の冷房を行なうとともに、前記蓋が、その開放時に、前記通風孔より下方に設けた窓などの開口部への陽射しを遮る庇を兼ねることを特徴とする冷房システム。
  2. 請求項1記載の冷房システムにおいて、
    前記天井は、前記天井裏に面する側が、前記蒸散材の収容可能な皿状に形成されていることを特徴とする冷房システム。
  3. 請求項1または2記載の冷房システムにおいて、
    前記蒸散材は、不織布などの保持材に含浸させられた状態で、前記天井に収容されていることを特徴とする冷房システム。
  4. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の冷房システムにおいて、
    前記冷房システムが、複数階を有する建物の屋根面を持たない階に適用されていることを特徴とする冷房システム。
  5. 天井を有する空間の冷房システムであって、
    天井裏と、
    前記天井裏に連通する通風孔と、
    水などの蒸散材を天井裏側に収容する天井とを有し、
    複数階を有する建物の屋根面を持たない階に適用され、前記通風孔を介して前記天井裏に導入する風により前記蒸散材を蒸散させて前記天井を冷却し、冷却した前記天井を介して天井下空間の冷房を行なうことを特徴とする冷房システム。
  6. 請求項記載の冷房システムにおいて、
    前記通風孔には、開閉可能な蓋が設けられていることを特徴とする冷房システム。
  7. 請求項記載の冷房システムにおいて、
    前記蓋は、その開放時には、前記通風孔より下方に設けた窓などの開口部への陽射しを遮る庇を兼ねることを特徴とする冷房システム。
  8. 請求項ないしのいずれか1項に記載の冷房システムにおいて、
    前記天井は、前記天井裏に面する側が、前記蒸散材の収容可能な皿状に形成されていることを特徴とする冷房システム。
  9. 請求項ないしのいずれか1項に記載の冷房システムにおいて、
    前記蒸散材は、不織布などの保持材に含浸させられた状態で、前記天井に収容されていることを特徴とする冷房システム。
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