以下、本発明の実施の形態によるディスクブレーキを、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図8は本発明の第1の実施の形態を示している。図1中に二点鎖線で示すディスク1は、例えば車両が前進方向に走行するときに車輪(図示せず)と共に図1中の矢示A方向に回転し、車両が後退するときには矢示A方向とは逆方向に回転するものである。
車両の非回転部に取付けられキャリアと呼ばれる取付部材2は、図1、図2に示す如く、ディスク1の回転方向(即ち、ディスク周方向)に離間してディスク1の外周を跨ぐようにディスク1の軸方向(ディスク軸方向)に延びた一対の腕部2Aと、各腕部2Aの基端側を一体化するように連結して設けられ、ディスク1のインナ側となる位置で前記車両の非回転部に固定される厚肉の支承部2B等とを含んで構成されている。
取付部材2には、ディスク1のアウタ側となる位置で各腕部2Aの先端側を互いに連結する補強ビーム2Cが弓形状をなして一体に形成されている。これにより、取付部材2の各腕部2Aは、ディスク1のインナ側で支承部2Bにより一体的に連結されると共に、アウタ側では補強ビーム2Cにより一体的に連結されている。
取付部材2の各腕部2Aには、ディスク軸方向の中間部となる位置にディスク1の外周(回転軌跡)に沿って図2に示す如く円弧状に延びるディスクパス部3が形成されている。取付部材2の各腕部2Aには、ディスクパス部3に対してディスク軸方向の両側となる位置に、インナ側,アウタ側のパッドガイド部4がそれぞれ形成されている。
ここで、各パッドガイド部4は、図2に示す如く断面L字形状をなす、所謂、非入れ子式の溝部として各腕部2Aに形成され、後述のパッド10がディスク軸方向に摺動変位するのを案内するものである。即ち、非入れ子式の取付部材2において、各パッドガイド部4には、後述するパッド10の各突出部11Bがパッドスプリング14を介してディスク径方向外側から内側に向けて押圧され、この状態でパッド10の各突出部11Bは、各パッドガイド部4に沿ってディスク軸方向に摺動変位するものである。
各パッドガイド部4のうちディスク径方向に立上げられたほぼ垂直な壁面は、所謂トルク受部としてのトルク受面4Aを構成している。トルク受面4Aは、ブレーキ操作時に発生する制動トルクをパッド10から突出部11Bを介して受承するものである。各腕部2Aには、ピン穴2D(図2中に1個のみ図示)がそれぞれ設けられ、これらのピン穴2D内には、後述の摺動ピン7が摺動可能に挿嵌されている。
取付部材2を跨いだ位置に設けられたキャリパ5は、後述する一対のパッド10をディスク1に押圧するものである。キャリパ5は、図1に示す如くディスク1の一側であるインナ側に設けられたインナ脚部5Aと、取付部材2の各腕部2A間でディスク1の外周側を跨ぐようにインナ脚部5Aからディスク1の他側であるアウタ側へと延設されたブリッジ部5Bと、ブリッジ部5Bの先端側であるアウタ側からディスク1の径方向(ディスク径方向)の内方に向けて延び、先端側が二又状をなした爪部としてのアウタ脚部5Cとにより構成されている。
キャリパ5のインナ脚部5Aには、ピストン6が摺動可能に挿嵌されるシリンダ(図示せず)が形成されている。インナ脚部5Aには、図1中の左,右方向(即ち、ディスク周方向)に突出する一対の取付部5Dが設けられている。各取付部5Dによりキャリパ5は、取付部材2の各腕部2Aに対し後述の摺動ピン7を介して摺動可能に支持されている。
摺動ピン7は、図1に示す如くキャリパ5の各取付部5Dにそれぞれボルト8を用いて締結されている。各摺動ピン7の先端側は、取付部材2の各腕部2Aのピン穴2D内に向けて延び、該各ピン穴2D内に摺動可能に挿嵌されている。各腕部2Aと各摺動ピン7との間には、図1に示す如く保護ブーツ9がそれぞれ取付けられている。保護ブーツ9は、腕部2Aのピン穴2Dと摺動ピン7との間に雨水等が浸入するのを防いでいる。
摩擦パッドを構成するインナ側のパッド10とアウタ側のパッド10は、ディスク1を軸方向両側から挾む位置に配置され、取付部材2の各腕部2A間に移動可能に設けられている。各パッド10は、ディスク1の周方向(ディスク回転方向)に略扇形状をなして延びる平板状の裏板11と、ディスク1の表面に摩擦接触する摩擦材としてのライニング12等とにより構成されている。
パッド10の裏板11は、略扇形状に形成された中央の主部11Aと、中央の主部11Aから相反する方向(ディスク周方向)に凸形状をなして突出する一対の突出部11Bとを有している。裏板11の主部11Aには、ライニング12が接合(固着)されている。裏板11の各突出部11Bは、取付部材2の各パッドガイド部4に後述のパッドスプリング14を介してそれぞれ摺動可能に支持されている。
パッド10(裏板11)の各突出部11Bは、左,右対称に形成され、互いに同一の形状をなしている。一方の突出部11Bは、車両の前進時に矢示A方向に回転するディスク1の回転方向入口側(回入側)に配置され、他方の突出部11Bは、ディスク1の回転方向出口側(回出側)に配置される。裏板11の突出部11Bは、車両のブレーキ操作時にディスク1からパッド10が受ける制動トルクを取付部材2のトルク受面4Aに当接して伝達するトルク伝達部を構成するものである。
パッド10の裏板11には、その背面側に鳴き防止用のシム板13が着脱可能に設けられている。アウタ側のシム板13は、キャリパ5のアウタ脚部5Cと裏板11との間に配置され、両者が直に接触するのを防ぐことにより、両者の間で所謂ブレーキ鳴きの発生を抑える。一方、インナ側のシム板13は、キャリパ5のインナ脚部5Aに挿嵌されたピストン6と裏板11との間に配置され、ブレーキ鳴きの発生を抑えるものである。
取付部材2の各腕部2Aには、一対のパッドスプリング14が取付けられている。各パッドスプリング14は、それぞれインナ側,アウタ側のパッド10を弾性的に支持すると共に、これらのパッド10のディスク軸方向における摺動変位を滑らかにするものである。各パッドスプリング14は、ばね性を有するステンレス鋼板等を図3〜図7に示すように曲げ加工(プレス成形)することにより形成されている。
パッドスプリング14は、後述する一対の支持板部15、一対の押圧板部16、基板部17、一対の規制部18を含んで構成されている。ここで、取付部材2は、ディスク1に対して図1、図2に示す如く上側を跨ぐ位置に必ずしも取付けられるものではなく、ディスク1に対して車両の前側または後側となる位置に取付けられる場合がある。このため、取付部材2のパッドガイド部4、パッド10およびパッドスプリング14の各部位に関しては、「上側」、「上面」または「上向き」という語句を、ディスク1の径方向外側、径方向外方の面または径方向外向きを意味するものとして用い、「下側」、「下面」または「下向き」という語句は、ディスク1の径方向内側、径方向内方の面または径方向内向きを意味するものとして用いる。
パッドスプリング14を構成する一対の支持板部15は、取付部材2の各パッドガイド部4上でパッド10の突出部11Bの下面(ディスク径方向内方面)を支持するものである。各支持板部15は、ディスク軸方向に離間してインナ側のパッドガイド部4内とアウタ側のパッドガイド部4内とにそれぞれ配置されている。インナ側の支持板部15は、インナ側のパッド10の突出部11Bに下側(ディスク径方向内側)から当接し、アウタ側の支持板部15は、アウタ側のパッド10の突出部11Bに同じく下側から当接する。
各支持板部15には、ディスク1から離れる方向(ディスク軸方向外方)に向けて突出し、その先端(突出端)側がディスク径方向内方へと斜めに傾斜した挿入ガイド部15Aが一体に形成されている。該挿入ガイド部15Aは、パッド10の突出部11Bを各パッドガイド部4上でパッドスプリング14に組付けるときに、この突出部11Bを支持板部15上に滑らかに案内するものである。
パッドスプリング14を構成する一対の押圧板部16は、基板部17に対して縦方向(ディスク径方向)に折曲げて形成され、パッド10の突出部11B(ディスク径方向外方面)を各支持板部15に向けて弾性的に押圧してパッド10を支持するものである。各押圧板部16は、ディスク軸方向に平行に延びて形成され各パッド10の突出部11B上面に当接する当接部16Aと、基端側が後述する基板部17の連結板部17Bからディスク径方向外方に延出され、途中部分が略U字状に折返されてディスク周方向外側から内側に向け延びると共に、先端側がディスク径方向内方に延びて当接部16A(後述の一側長延部16A1 )に一体に結合された折返し部16Bとを有している。
ここで、各押圧板部16の当接部16Aは、折返し部16Bの先端側と同一の角度で径方向内方に延びディスク軸方向に細長く延出された一側長延部16A1 と、該一側長延部16A1 に対して略V字状にディスク径方向外方へと斜めに折曲げて形成されディスク軸方向に細長く延びた他側長延部16A2 とにより構成されている。一側長延部16A1 と他側長延部16A2 とは、図3に示すように寸法L1でディスク軸方向に延びた長方形状板片を折曲げ線16A3 の位置で略V字状に折曲げることにより形成されている。各押圧板部16の当接部16Aは、各支持板部15と上,下方向(ディスク径方向)で対向する位置に配置されている。
即ち、非入れ子式の取付部材2においては、パッド10の突出部11Bをパッドガイド部4に対しディスク径方向外側から内側に向けて強く付勢(押圧)してパッド10を抜止め状態に保持する必要がある。このために、パッドスプリング14の各押圧板部16は、押圧片となる当接部16Aと支持板部15との間でパッド10の突出部11Bを弾性的に挟持し、これにより、取付部材2のパッドガイド部4との間でパッド10の抜止めを行い、車両走行時のパッド10のガタ付きを抑制するものである。
換言すると、支持板部15から当接部16Aまでの高さ寸法H(図5参照)は、パッド10の突出部11Bの高さ寸法(ディスク径方向の高さ寸法)よりも予め小さい寸法に設定されている。これにより、パッド10の突出部11Bをパッドスプリング14の支持板部15と押圧板部16(当接部16A)との間に挿入したときに、押圧板部16の折返し部16Bは、当接部16Aと一緒にディスク径方向外方に弾性的に撓み変形される。この状態で、押圧板部16の当接部16Aは、パッド10の突出部11Bをディスク径方向内方(支持板部15)に向けて弾性的に付勢し、パッド10が取付部材2に対してディスク径方向にガタ付くのを抑えることができる。
各押圧板部16の折返し部16Bは、図3に示すようにディスク軸方向の寸法L2(即ち、板幅寸法L2)が当接部16Aの寸法L1よりも、例えば1/2以下まで十分に小さく、ディスク軸方向で弾性的に撓み変形できるように、基板部17よりも小さい剛性となるように形成されている。このため、各パッド10がディスク1の両面に向けて軸方向に押動されるときには、パッドスプリング14の各押圧板部16(当接部16A)がパッド10に追従して変位し、このときに板幅寸法L2が小さい折返し部16Bは、当接部16の変位を許すように弾性的に撓み変形する。
このように、パッド10の突出部11Bに対してディスク径方向での押圧片となる当接部16Aは、パッド10の軸方向移動に伴って折返し部16Bが弾性的に撓み変形することでパッド10と共にディスク軸方向に移動するようになっている。このため、ブレーキ操作を解除したときには、各押圧板部16の折返し部16Bにより当接部16Aをパッド10と一緒に元の位置に戻すような復元力(パッド戻し力)が発生する。即ち、パッドスプリング14は、各押圧板部16に生じたパッド戻し力によりパッド10をディスク1から速やかに離間させることができ、ディスク1によるパッド10の引き摺りを低減することができる。
パッドスプリング14を構成する基板部17は、一対の支持板部15と一対の押圧板部16とをディスク径方向と軸方向とで連結すると共に、パッド10の突出部11Bの端面と取付部材2の各トルク受面4Aとに面接触状態で取付けられるものである。ここで、基板部17は、ディスク軸方向に互いに離間して配置されディスク径方向に略長方形状をなして延びた一対の平板部17A(即ち、インナ側とアウタ側の平板部17A)と、これら一対の平板部17Aをディスク軸方向で一体的に連結した連結板部17Bとを含んで構成されている。
図7に示すように、基板部17は、その連結板部17Bによりインナ側とアウタ側の平板部17Aを左,右方向で連結し、全体として略コ字状をなす平板材として形成されている。即ち、基板部17の連結板部17Bは、各平板部17Aをディスク1のインナ側とアウタ側とで一体的に連結するため、ディスク1の外周側を跨いだ状態でディスク軸方向に延びて形成されている。連結板部17Bの長さ方向両端側には、各平板部17Aがディスク1の径方向内向きに延びて一体に形成されている。
連結板部17Bには、その下縁側(ディスク径方向内側の縁部)から斜め下向きに延び全体として逆U字形状をなす係合爪部17Cが一体に形成されている。ここで、係合爪部17Cは、腕部2Aのディスクパス部3に径方向内方から係合するように取付部材2に取付けられる。これにより、パッドスプリング14は、取付部材2の腕部2Aに対してディスク軸方向で位置決めされる。
基板部17の連結板部17Bには、その上縁側(係合爪部17Cとはディスク径方向の反対側)に左,右対称な切欠き17Dが形成され、該切欠き17Dの両側(ディスク軸方向両側)位置には、後述の各規制部18が一体形成されている。連結板部17Bの上縁側には、インナ側,アウタ側の平板部17Aの上縁と切欠き17Dとの間となる位置に各押圧板部16の折返し部16Bの基端側が一体形成され、この位置から各折返し部16Bの基端側がディスク径方向外方に延出されている。
一方、各平板部17Aの下端側(ディスク径方向内側の端部)には各支持板部15が一体形成され、支持板部15は、平板部17Aに対しほぼ直角に折曲げて成形されている。各平板部17Aには、ディスク軸方向外側の端部からディスク1から離れる方向に向けて突出する略コ字状の突起部17Eが一体に形成されている。突起部17Eは、パッド10の突出部11Bをパッドスプリング14の支持板部15と押圧板部16の当接部16Aとの間に挿入するときに、支持板部15の挿入ガイド部15Aと共にパッド10の突出部11Bを平板部17Aの表面側に案内するものである。
パッドスプリング14を構成する一対の規制部18は、ブレーキ操作に伴って各押圧板部16の当接部16Aがパッド10に追従して変位するときに、当接部16Aの所定量以上の移動を規制する。即ち、各規制部18は、基板部17の切欠き17Dの両側(ディスク軸方向両側)部位を当接部16Aとほぼ直交する方向(ディスク周方向の内側)に向けて折曲げることにより形成され、当接部16Aに対して寸法Eの隙間を介して対面する対向面部18Aと、対向面部18Aからディスク径方向外側に向けて延設され略U字状に折曲げて形成された折曲部18Bとにより構成されている。
上記した当接部16Aと対向面部18Aとの隙間は、ディスク1とパッド10との間の隙間、所謂、パッドクリアランスに基づいて設定されるようになっており、所望のパッドクリアランス、若しくは、パッドクリアランスに走行時のディスク1の面振れ分を加算して設定するようになっている。本実施形態においては、上記及びパッド10の傾き等を考慮して寸法Eを例えば、0.2mm程度として設定している。
各規制部18は、対向面部18Aの基端側が基板部17の連結板部17Bに切欠き17Dの位置で一体的に連結され、折曲部18Bの先端側は自由端となっている。そして、規制部18(特に、対向面部18A)は、ブレーキ操作時に各押圧板部16の当接部16Aがパッド10に追従して、図4中に例示した寸法E分だけ矢示B,B方向(ディスク軸方向)に変位すると、当接部16Aの端部に当たって所定量(即ち、寸法E)以上に当接部16Aが移動するのを規制するものである。
第1の実施の形態によるディスクブレーキは、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
車両のブレーキ操作時には、キャリパ5のインナ脚部5A(シリンダ)にブレーキ液圧を供給することによりピストン6をディスク1に向けて摺動変位させ、これによって、インナ側のパッド10をディスク1の一側面に押圧する。このときに、キャリパ5はディスク1からの押圧反力を受けるため、キャリパ5全体が取付部材2の腕部2Aに対してインナ側に摺動変位し、アウタ脚部5Cがアウタ側のパッド10をディスク1の他側面に押圧する。
これにより、インナ側とアウタ側のパッド10は、図1、図2中の矢示A方向(車両の前進時)に回転しているディスク1を、両者の間で軸方向両側から強く挟持することができ、このディスク1に制動力を与えることができる。ブレーキ操作を解除したときには、ピストン6への液圧供給が停止されることにより、インナ側とアウタ側のパッド10がディスク1から離間し、再び非制動状態に復帰する。
この場合、パッド10の各突出部11Bは、ディスク1の回入側,回出側に位置する各パッドガイド部4内にパッドスプリング14を介して摺動可能に挿嵌されている。ブレーキ操作時、解除時(非制動時)には、パッド10の各突出部11Bのうちディスク1の回出側に位置する突出部11Bが、パッドスプリング14の基板部17(平板部17A)を介してパッドガイド部4のトルク受面4Aに当接している。車両前進時のブレーキ操作時には、パッド10がディスク1から受ける制動トルク(矢示A方向の回転トルク)を、回出側の腕部2A(パッドガイド部4のトルク受面4A)により受承することができる。
パッド10の各突出部11Bは、パッドスプリング14の各押圧板部16によりディスク径方向内方へとパッドガイド部4に向けて付勢されている。これにより、パッド10の突出部11Bは、パッドスプリング14の支持板部15側へと弾性的に押付けられ、取付部材2のパッドガイド部4に対して保持されている。パッド10の突出部11Bは、ブレーキ操作時に押圧板部16と支持板部15との間でディスク軸方向(即ち、図4中の矢示B,B方向)に案内される。
このとき、パッドスプリング14の押圧板部16は、ディスク軸方向に延びる断面V字状の当接部16Aがパッド10の突出部11Bをディスク径方向内方(支持板部15)に向けて弾性的に付勢し、走行時の振動等によりパッド10が取付部材2に対してディスク径方向にガタ付くのを抑えている。しかも、各押圧板部16の折返し部16Bは、ディスク軸方向の寸法L2(図3参照)が当接部16Aの寸法L1よりも十分に小さく、ディスク軸方向で弾性的に撓み変形するように形成されている。
このため、ブレーキ操作時(制動時)に各パッド10がディスク1の両面に向けて軸方向に押動されるときには、パッドスプリング14の各押圧板部16(当接部16A)がパッド10に追従して変位し、このときに折返し部16Bが当接部16の変位を許すように弾性的に撓み変形する。パッドスプリング14の各規制部18は、ブレーキ操作時に各押圧板部16の当接部16Aがパッド10に追従して、図4中に例示した寸法E分だけ矢示B,B方向(ディスク軸方向)に変位すると、対向面部18Aが当接部16Aの端部に当たって所定量(即ち、当接部16Aと対向面部18Aとの隙間;寸法E)以上に当接部16Aが移動するのを規制する。
このように、パッド10の突出部11Bに対してディスク径方向での押圧片となる当接部16Aは、パッド10の軸方向移動に伴って折返し部16Bが弾性的に撓み変形することでパッド10と共にディスク軸方向に前記寸法E分だけ所定量の範囲で移動する。この結果、ブレーキ操作を解除したときには、各押圧板部16の折返し部16Bにより当接部16Aをパッド10と一緒に元の位置に戻すようなパッド戻し力が発生し、パッドスプリング14は、各押圧板部16に発生するパッド戻し力によって、パッド10をディスク1から速やかに離間させることができ、ディスク1によるパッド10の引き摺りを低減することができる。
ここで、図8の(A)〜(D)は、パッドスプリング14の押圧板部16によるパッド戻し機能を模式的に示したものである。図8(A)に示す制動前の状態では、パッド10がディスク1から軸方向に離間した状態で、パッドスプリング14とパッド10との間に、押圧板部16によるセット荷重(Fset )が制動解除位置での保持力として作用している。
次に、図8(B)に示す制動時にあっては、パッド10がピストン押圧力Fpによりディスク1側へ前進すると、パッドスプリング14の押圧板部16によるセット荷重(Fset )が垂直抗力となってパッド10に作用し、パッド10とパッドスプリング14(支持板部15と押圧板部16)の間の摩擦係数μに基づく摩擦力(μ×Fset )がパッド10とパッドスプリング14との間に発生する。この摩擦力(μ×Fset )は、パッドスプリング14の押圧板部16をディスク1側に前進させる力として作用をする。
前記ピストン押圧力Fp と摩擦力(μ×Fset )が釣り合う場合、押圧板部16がディスク1側へと弾性的に撓むため、この押圧板部16がパッド10と一体になってディスク1側へ変位する。パッドスプリング14の規制部18は、押圧板部16が所定の寸法Eを越えてディスク1側に変位するときに、押圧板部16に当接して、これ以上の変位を規制する。
次に、図8(C)に示すように制動を解除すると、前記ピストン押圧力Fp が解除されるため、ディスク1側に撓んでいた押圧板部16は、その復元力によって制動前の位置へ戻る。このため、パッドスプリング14の押圧板部16との間に作用している摩擦力(μ×Fset )により、パッド10は押圧板部16と一体となって制動前の位置、即ち所定のパッドクリアランスが生じる位置へ戻るようになる。
パッドスプリング14の押圧板部16とパッド10とを一体的に変位させるためには、予め決められた所定値以上の摩擦力(μ×Fset )が必要である。この摩擦力(μ×Fset )は、パッドスプリング14の押圧板部16によるセット荷重(Fset )に基づいた垂直抗力に前記摩擦係数μを乗じたものである。このため、パッドスプリング14の構造による剛性や、パッド10を挟む際の締め代を増やしたり、パッド10もしくはパッドスプリング14の表面粗さを増やしたりすることによって、摩擦力(μ×Fset )を調整することができる。
次に、図8(D)に示すようにパッド10の摩耗が進行してくると、制動の開始時にパッドスプリング14の押圧板部16は、パッド10と一体になってディスク1側に前進するように撓み変形する。しかし、押圧板部16が所定の寸法Eを越えてディスク1側に変位するときに、規制部18は押圧板部16に当接して、これ以上の変位を規制する。ピストン押圧力Fpは、パッド10とパッドスプリング14との間の摩擦力(μ×Fset )を介して規制部18に伝わる。
この状態で、ピストン押圧力Fp が増加して摩擦力(μ×Fset )の静止摩擦力よりも大きくなると、パッド10がパッドスプリング14の押圧板部16に対して摺動変位しつつ、ピストン押圧力Fp によってディスク1に押圧される。即ち、押圧板部16の当接部16Aの変位が規制されているため、変位しない当接部16Aに対してパッド10がディスク1に向かって移動するようになる。制動解除時には、上記図8(C)に示す動作と同様であり、パッドスプリング14の押圧板部16と規制部18と間のクリアランス(寸法E)分だけ変位していた押圧板部16がその復元力により制動前の位置へ戻る。パッド10は、押圧板部16の発生するパッド戻し力によりディスク1から離れる。
この結果、押圧板部16によるパッド戻し量は、パッド10の摩耗量に関わらず一定の戻し量に保つことができ、ディスクブレーキ1の応答性の低下を抑制することができる。即ち、パッド10がさらに摩耗した場合でも、前記と同様の動作を繰り返すため、制動の解除時には押圧板部16の同じ復元力(パッド戻し力)によってパッド10を制動前の位置に戻すことができる。
従って、第1の実施の形態によれば、パッドスプリング14の押圧板部16によるディスク径方向のパッド押え力を大きくした場合でも、パッド10を制動時にディスク1側に前進させることができ、制動解除時には安定したパッド戻し量でパッド10をディスク1から離間させることができる。これにより、パッド10の引き摺りを容易に低減することができる。また、従来技術によるパッド戻し機構では、パッド摩耗量に比例して戻し量が大きくなってしまう。このため、次のディスクブレーキ作動時に大きくなった戻し量分、パッド及びピストンを移動させなければならないので、キャリパ内に多くのブレーキ液を供給しなければならず、その分、ブレーキペダルの操作量が増えてディスクブレーキの応答性が低下することになる。しかし、第1の実施の形態では、前述の如くパッド摩耗量に関わらず、パッドスプリング14の押圧板部16と規制部18とにより、ほぼ均一な安定したパッド戻し量を生じさせることができ、ディスクブレーキの応答性の低下を抑制することができる。
次に、図9ないし図12は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、パッドスプリングの押圧板部にストッパ穴を設け、該ストッパ穴内に規制部を挿入状態で配置することにより、当接部の変位を所定の範囲に抑える構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
第2の実施の形態で採用したパッドスプリング21は、第1の実施の形態で述べたパッドスプリング14と同様に、一対の支持板部15、一対の押圧板部16を含んで構成されている。しかし、この場合のパッドスプリング21は、後述する一対のストッパ穴22、基板部23および一対の規制部24を備えている点で第1の実施の形態とは相違している。
ここで、各押圧板部16の当接部16Aのうち、折返し部16Bの先端側に一体化されてディスク軸方向に延出された一側長延部16A1 には、略四角形の長穴からなるストッパ穴22が形成されている。該ストッパ穴22は、一側長延部16A1 の長さ方向(ディスク軸方向)中間位置に穿設され、その内側には後述する規制部24の突出端側が隙間をもって挿入されている。ストッパ穴22と規制部24との間には、図10に示すように寸法Eの隙間が形成され、押圧板部16の当接部16Aは、この寸法Eの範囲内でディスク軸方向に変位できる構成としている。
即ち、パッドスプリング14の各押圧板部16(当接部16A)は、パッド10の軸方向移動に伴って折返し部16Bが弾性的に撓み変形することにより、寸法Eの範囲内でパッド10と共にディスク軸方向に移動する。このため、ブレーキ操作を解除したときには、各押圧板部16の折返し部16Bにより当接部16Aをパッド10と一緒に元の位置に戻すような復元力(パッド戻し力)が発生するものである。
パッドスプリング14の基板部23は、第1の実施の形態で述べた基板部17とほぼ同様に構成され、一対の平板部23A(即ち、インナ側とアウタ側の平板部23A)、連結板部23B、係合爪部23C、切欠き23Dおよび突起部23Eを有している。しかし、基板部23の連結板部23Bには、その上縁側(係合爪部23Cとはディスク径方向の反対側)に突出片部23Fが形成され、この場合の切欠き23Dは、突出片部23Fの両側にそれぞれ設けられている。
また、突出片部23Fは、ディスク軸方向で各押圧板部16の折返し部16B間に各切欠き23Dを介して配置され、折返し部16Bとほぼ同様に連結板部23Bからディスク径方向外方に延出されて先端部分が略U字状に折返された形状に形成されている。各切欠き23Dは、ディスク軸方向で各折返し部16Bと突出片部23Fとの間をU字状に切欠くことにより形成されている。
基板部23の連結板部23Bには、各平板部23Aの上端側(ディスク径方向の外方端側)となる位置に一対の接続部23Gが形成され、該各接続部23Gの外側(ディスク軸方向の外側)位置には、後述の各規制部24が一体形成されている。連結板部23Bの上縁側には、各切欠き23Dと各接続部23Gとの間となる位置に各押圧板部16の折返し部16Bの基端側が一体形成され、この位置から各折返し部16Bの基端側がディスク径方向外方に延出されている。
パッドスプリング21の各規制部24は、第1の実施の形態で述べた一対の規制部18と同様に、ブレーキ操作時に各押圧板部16の当接部16Aがパッド10に追従して変位するときに該当接部16Aの所定量以上の移動を規制するものである。しかし、この場合の各規制部24は、基板部23の接続部23Gの外側(ディスク軸方向外側)部位を当接部16Aとほぼ直交する方向(ディスク周方向の内側)に向けてL字状に折曲げることにより形成され先端側がストッパ穴22内に隙間を介して挿入された挿入突部24Aと、該挿入突部24Aの突出端側を略U字状に折返して形成され円弧状に湾曲した湾曲部24Bとにより構成されている。
各規制部24は、挿入突部24Aの基端側が基板部23の連結板部23Bに各接続部23Gを介して連結されるように一体形成されている。各規制部24の湾曲部24Bは、各押圧板部16の当接部16Aに形成したストッパ穴22内に寸法E(例えば、0.5mm程度)の隙間をもって挿入され、その先端側は自由端となっている。各規制部24の湾曲部24Bは、ブレーキ操作時に各押圧板部16の当接部16Aがパッド10に追従して、図10中に例示した寸法E分だけ矢示B,B方向(ディスク軸方向)に変位すると、各ストッパ穴22の端部に当たって所定量(即ち、寸法E)以上に当接部16Aが移動するのを規制するものである。
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、ブレーキ操作時には各押圧板部16の当接部16Aをパッド10に追従してディスク軸方向に移動させ、当接部16Aの軸方向移動をストッパ穴22と規制部24とにより寸法Eの範囲内に抑えることができ、制動解除時には安定したパッド戻し量でパッド10をディスク1から離間させることができる。従って、第1の実施の形態と同様にパッド10の引き摺りを容易に低減できると共に、パッド摩耗量に関わらず、ほぼ均一な安定したパッド戻し量を生じさせることができ、ディスクブレーキの応答性の低下を抑制することができる。
特に、第2の実施の形態では、各押圧板部16の当接部16Aにストッパ穴22を設け、各規制部24をストッパ穴22内に隙間を介して挿入する構成としているから、当接部16Aに対するストッパ穴22の穿設位置を変えることによって、規制部24の位置も変更することができ、ストッパ穴22と規制部24とをディスク軸方向の任意の位置に設けることができる。
次に、図13ないし図16は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、パッドスプリングの押圧板部をディスク径方向ではなく、ディスク軸方向に折曲げて形成したことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
第3の実施の形態で採用したパッドスプリング31は、第1の実施の形態で述べたパッドスプリング14と同様に、一対の支持板部15、一対の押圧板部32、基板部33および一対の規制部34を含んで構成されている。しかし、この場合のパッドスプリング31は、一対の押圧板部32をディスク軸方向である横方向に折曲げて形成しており、この折曲げ方向が第1の実施の形態で述べた押圧板部16とは異なっている。
この場合、パッドスプリング31の各押圧板部32は、第1の実施の形態で述べた押圧板部16と同様に、パッド10の突出部11Bを各支持板部15に向けて弾性的に押圧してパッド10を支持するものである。しかし、この場合の各押圧板部32は、基板部33に対して縦方向(ディスク径方向)ではなく、横方向(ディスク軸方向)に折曲げて形成されている点で第1の実施の形態とは相違している。
即ち、各押圧板部32は、ディスク軸方向に平行に延びて形成され各パッド10の突出部11Bの上面に当接する当接部32Aと、基端側が後述する基板部33の連結板部33Bからディスク軸方向外方に延出され、先端側が略U字状に折返されてディスク軸方向外側から内側へと延びる折返し部32Bとを有している。折返し部32Bの先端側には当接部32Aの一側長延部32A1 が一体に結合されている。
ここで、各押圧板部32の当接部32Aは、折返し部32Bの先端側からディスク軸方向に細長く延びディスク径方向外方から内方へと斜めに傾斜した一側長延部32A1 と、該一側長延部32A1 に対して略V字状にディスク径方向外方へと斜めに折曲げて形成されディスク軸方向に細長く延びた他側長延部32A2 とにより構成されている。一側長延部32A1 と他側長延部32A2 とは、図13、図16に示すようにディスク軸方向に延びた長方形状板片を折曲げ線32A3 の位置で略V字状に折曲げることにより形成されている。
各押圧板部32の当接部32Aは、各支持板部15と上,下方向(ディスク径方向)で対向する位置に配置されている。支持板部15から当接部32Aまでの高さ寸法H(図15参照)は、パッド10の突出部11Bの高さ寸法(ディスク径方向の高さ寸法)よりも予め小さく設定されている。これにより、パッド10の突出部11Bをパッドスプリング14の支持板部15と押圧板部32(当接部32A)との間に挿入したときに、押圧板部32の折返し部32Bは、ディスク径方向外方に弾性的に撓み変形される。この状態で、押圧板部32の当接部32Aは、パッド10の突出部11Bをディスク径方向内方(支持板部15)に向けて弾性的に付勢し、パッド10が取付部材2に対してディスク径方向にガタ付くのを抑えることができる。
このように、パッド10の突出部11Bに対してディスク径方向での押圧片となる当接部32Aは、パッド10の軸方向移動に伴って折返し部32Bが弾性的に撓み変形することでパッド10と共にディスク軸方向に移動するようになっている。このため、ブレーキ操作を解除したときには、各押圧板部32の折返し部32Bにより当接部32Aをパッド10と一緒に元の位置に戻すような復元力(パッド戻し力)が発生する。即ち、パッドスプリング31は、各押圧板部32に生じたパッド戻し力によりパッド10をディスク1から速やかに離間させることができ、ディスク1によるパッド10の引き摺りを低減することができる。
パッドスプリング31の基板部33は、第1の実施の形態で述べた基板部17とほぼ同様に構成され、一対の平板部33A(即ち、インナ側とアウタ側の平板部33A)、連結板部33B、係合爪部33C、切欠き33Dおよび突起部33Eを有している。しかし、この場合の基板部33は、連結板部33Bの外方部位(切欠き33Dとは反対側となるディスク軸方向外方部位)に各押圧板部32の折返し部32Bの基端側が一体形成されている。このため、基板部33の連結板部33Bは、第1の実施の形態で述べた連結板部17Bよりもディスク軸方向寸法が長く形成され、その両端側に各折返し部32Bが一体に結合されている。
パッドスプリング31の各規制部34は、第1の実施の形態で述べた一対の規制部18と同様に構成され、対向面部34Aと折曲部34Bとを有している。即ち、規制部34の対向面部34Aは、基板部33の切欠き33Dの両側(ディスク軸方向両側)部位を当接部32Aとほぼ直交する方向(ディスク周方向の内側)に向けて折曲げることにより形成され、当接部32Aに対して寸法Eの隙間を介して対面する位置に配置されている。折曲部34Bは、対向面部34Aの上端からディスク径方向外側に向けて延設され略U字状に折曲げて形成されている。
各規制部34は、対向面部34Aの基端側が基板部33の連結板部33Bに切欠き33Dの位置で一体的に連結され、折曲部34Bの先端側は自由端となっている。規制部34(特に、対向面部34A)は、ブレーキ操作時に各押圧板部32の当接部32Aがパッド10に追従して、図14中に例示した寸法E分だけ矢示B,B方向(ディスク軸方向)に変位すると、当接部32Aの端部に当たって所定量(即ち、寸法E)以上に当接部32Aが移動するのを規制するものである。
かくして、このように構成される第3の実施の形態でも、ブレーキ操作時には各押圧板部32の当接部32Aをパッド10に追従してディスク軸方向に移動させ、当接部32Aの軸方向移動を規制部34により寸法Eの範囲内に抑えることができ、制動解除時には安定したパッド戻し量でパッド10をディスク1から離間させることができる。従って、第1の実施の形態と同様にパッド10の引き摺りを容易に低減できると共に、パッド摩耗量に関わらず、ほぼ均一な安定したパッド戻し量を生じさせることができ、ディスクブレーキの応答性の低下を抑制することができる。
特に、第3の実施の形態では、パッドスプリング31の各押圧板部32をディスク軸方向である横方向に折曲げて形成する構成としているため、制動時にパッドスプリング31の押圧板部32が撓んでもディスク径方向への変位を抑えることができる。この結果、パッド10の突出部11Bに対する当接部32Aのセット荷重が変化するのを抑え、突出部11Bに対してほぼ均一な付勢力を付与しつつ、パッド10の動作を安定させることができる。
次に、図17ないし図20は本発明の第4の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、パッドスプリングの押圧板部を規制部の位置からディスク軸方向に折曲げて形成したことにある。なお、第4の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
第4の実施の形態で採用したパッドスプリング41は、第1の実施の形態で述べたパッドスプリング14と同様に、一対の支持板部15、一対の押圧板部42、基板部43および一対の規制部44を含んで構成されている。しかし、この場合のパッドスプリング41は、一対の押圧板部42と基板部43との間に一対の規制部44が配置され、この場合の押圧板部42は、規制部44の端部からディスク軸方向である横方向に折曲げて形成されている。
即ち、パッドスプリング41の各押圧板部42は、第1の実施の形態で述べた押圧板部16と同様に、パッド10の突出部11Bを各支持板部15に向けて弾性的に押圧してパッド10を支持するものである。しかし、この場合の各押圧板部42は、基板部43に対して縦方向(ディスク径方向)ではなく、横方向(ディスク軸方向)に折曲げて形成され、かつ当接部42Aが平板状に形成されている点で第1の実施の形態とは相違している。
各押圧板部42は、ディスク軸方向に平板状に延びて形成され各パッド10の突出部11B上面に当接する当接部42Aと、基端側が後述する規制部44の先端側からディスク軸方向外方に延出され、先端側が略U字状に折返されてディスク径方向外側から内側に向け延びる折返し部42Bと、該折返し部42Bの先端側(ディスク径方向内側の端部)を当接部42Aの基端側に円弧状に湾曲して一体に結合する内側曲部42Cとを含んで構成されている。
ここで、各押圧板部42の当接部42Aは、各支持板部15と上,下方向(ディスク径方向)で対向する位置に配置され、ディスク軸方向に支持板部15と平行に延びている。支持板部15から当接部42Aまでの高さ寸法H(図19参照)は、パッド10の突出部11Bの高さ寸法(ディスク径方向の高さ寸法)よりも予め小さく設定されている。これにより、パッド10の突出部11Bをパッドスプリング14の支持板部15と押圧板部42(当接部42A)との間に挿入したときに、押圧板部42の折返し部42Bは、ディスク径方向外方に弾性的に撓み変形される。この状態で、押圧板部42の当接部42Aは、パッド10の突出部11Bをディスク径方向内方(支持板部15)に向けて弾性的に付勢し、パッド10が取付部材2に対してディスク径方向にガタ付くのを抑えるものである。
このように、パッド10の突出部11Bに対してディスク径方向での押圧片となる当接部42Aは、パッド10の軸方向移動に伴って折返し部42Bが弾性的に撓み変形することでパッド10と共にディスク軸方向に移動できるようになっている。このため、ブレーキ操作を解除したときには、各押圧板部42の折返し部42Bにより当接部42Aをパッド10と一緒に元の位置に戻すような復元力(パッド戻し力)が発生する。即ち、パッドスプリング41は、各押圧板部42に生じたパッド戻し力によりパッド10をディスク1から速やかに離間させることができ、ディスク1によるパッド10の引き摺りを低減することができる。
パッドスプリング41の基板部43は、第1の実施の形態で述べた基板部17とほぼ同様に構成され、一対の平板部43A(即ち、インナ側とアウタ側の平板部43A)、連結板部43B、係合爪部43C、切欠き43Dおよび突起部43Eを有している。しかし、この場合の基板部43は、連結板部43Bの外方部位(切欠き43Dとは反対側となるディスク軸方向外方部位)に各規制部44を補強するための一対の補強部43Fが形成されている。該各補強部43Fは、基板部43の各平板部43A、連結板部43Bと規制部44との間の境界部における曲げ強度等を高めるものである。
パッドスプリング41の各規制部44は、第1の実施の形態で述べた一対の規制部18とほぼ同様に、基板部43の切欠き43Dの両側(ディスク軸方向両側)部位を補強部43Fに対して垂直な方向(ディスク周方向の内側)に向けて折曲げることにより形成され、押圧板部42の内側曲部42Cに対して寸法Eの隙間を介して対面する位置に配置されている。規制部44の上端(ディスク径方向外方端)側は、押圧板部42の折返し部42Bに一体に連結された幅広連結部44Aとなっている。
即ち、押圧板部42の折返し部42Bは、その基端側が規制部44の幅広連結部44Aからディスク軸方向外方に延出され、先端側が略U字状に折返されてディスク径方向外側から内側へと内側曲部42Cの位置まで延びている。押圧板部42のうち当接部42Aと内側曲部42Cとは、図19に示すように、折返し部42B、幅広連結部44Aよりも板幅寸法が小さく形成されている。
そして、規制部44の下端側(ディスク径方向内側部位)は、ブレーキ操作時に各押圧板部42の当接部42Aがパッド10に追従して、図18中に例示した寸法E分だけ矢示B,B方向(ディスク軸方向)に変位すると、押圧板部42の内側曲部42Cに当たって所定量(即ち、寸法E)以上に当接部42Aが移動するのを規制するものである。
かくして、このように構成される第4の実施の形態でも、ブレーキ操作時には各押圧板部42の当接部42Aをパッド10に追従してディスク軸方向に移動させ、当接部42Aの軸方向移動を規制部44により寸法Eの範囲内に抑えることができ、制動解除時には安定したパッド戻し量でパッド10をディスク1から離間させることができる。従って、第1の実施の形態と同様にパッド10の引き摺りを容易に低減できると共に、パッド摩耗量に関わらず、ほぼ均一な安定したパッド戻し量を生じさせることができ、ディスクブレーキの応答性の低下を抑制することができる。
特に、第4の実施の形態では、パッドスプリング41の各押圧板部42を一対の規制部44を介してディスク軸方向で互いに相反する方向に延びる構成としている。これにより、各押圧板部42を基板部43に連結する支持部はストッパとしての規制部44を兼ねる構成とすることができ、各押圧板部42の内側曲部42Cと基板部43との間の寸法Eの隙間により、当接部42Aの変位を所定量の範囲内に規制することができる。
なお、前記各実施の形態では、パッドガイド部4のうちディスク径方向に立上げられたほぼ垂直な壁面によりトルク受部となるトルク受面4Aを構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばパッドガイドから離間した位置(パッドガイドとは異なる位置)にトルク受けとしてのトルク受面を設ける構成とした型式のディスクブレーキにも適用できるものである。
次に、上記実施の形態に含まれる発明について述べる。押圧板部は、キャリパが摩擦パッドをディスク側へ移動させるときに、当接部が摩擦パッドの突出部と一緒にディスク軸方向に移動するような押圧力を有する構成としている。また、押圧板部は、キャリパが摩擦パッドをディスク側へ移動させるときに、当接部が前記摩擦パッドの突出部と一緒にディスク軸方向に移動するような摩擦係数を有する構成としている。
一方、規制部は、キャリパが摩擦パッドをディスク側へ移動させるときに、前記当接部が前記摩擦パッドの突出部と一緒にディスク軸方向に移動することを規制する構成としている。これにより、パッド摩耗量に関わらず一定のパッド戻し力に保つことができ、ブレーキフィーリングの変化を防ぐことができる。
また、前記規制部は、非制動時における前記ディスクと前記摩擦パッドとのパッドクリアランス以上の前記当接部の移動を規制する構成としている。前記折返し部は、前記基板部から前記ディスク径方向外側に延出した後に折返されて形成されている。また、前記折返し部は、前記ディスクから離間する方向に前記基板部から延出した後に折返されて形成されている。